[1]第1実施形態
図1に示すように、3相商用交流電源1にモータ駆動回路2が接続され、そのモータ駆動回路2にモータ3およびコントローラ4が接続されている。
モータ3は、互いに非接続状態の複数の相巻線Lu,Lv,Lwを有し、空気調和機等の熱源機器の冷凍サイクル用圧縮機を駆動する三相永久磁石同期モータであり、相巻線Lu,Lv,Lwのそれぞれ両端となる6つの端子を備えるいわゆるオープン巻線モータ(Open-Winding Motor)である。
モータ駆動回路2は、3相商用交流電源1に接続され、その3相交流電圧を直流電圧に変換し出力するコンバータ10、このコンバータ10の出力端からオープン巻線モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwのそれぞれ一端となる3つの端子への通電を制御するインバータ(第1インバータ)20、およびコンバータ10の出力端からオープン巻線モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwのそれぞれ他端となる3つの端子への通電を制御するインバータ(第2インバータ)30を含む。コンバータ10をインバータ20,30の共通の直流電源とするDCリンク共通方式を採用している。コンバータ10は全波整流器やPWMコンバータ等である。
インバータ20は、上側スイッチ素子Tuaと下側スイッチ素子Tubを直列接続しコンバータ10の出力電圧が印加されるU相直列回路、上側スイッチ素子Tvaと下側スイッチ素子Tvbを直列接続しコンバータ10の出力電圧が印加されるV相直列回路、上側スイッチ素子Twaと下側スイッチ素子Twbを直列接続しコンバータ10の出力電圧が印加されるW相直列回路を含む三相インバータである。これら直列回路における上側スイッチ素子と下側スイッチ素子の相互接続点Xu,Xv,Xwが相巻線Lu,Lv,Lwの一端にそれぞれ接続される。
インバータ30も、インバータ20と同じく、上側スイッチ素子Tuaと下側スイッチ素子Tubを直列接続しコンバータ10の出力電圧が印加されるU相直列回路、上側スイッチ素子Tvaと下側スイッチ素子Tvbを直列接続しコンバータ10の出力電圧が印加されるV相直列回路、上側スイッチ素子Twaと下側スイッチ素子Twbを直列接続しコンバータ10の出力電圧が印加されるW相直列回路を含む三相インバータである。インバータ30の直列回路における上側スイッチ素子と下側スイッチ素子の相互接続点Yu,Yv,Ywが相巻線Lu,Lv,Lwの他端にそれぞれ接続される。
これらインバータ20,30の各スイッチ素子は、例えばIGBTであり、それぞれのスイッチ素子本体に逆並列接続された還流ダイオード(フリー・ホイール・ダイオードともいう)Dを含む。IGBTに限らず、MOS-FET等の他の半導体スイッチ素子を用いてもよい。
インバータ20,30は、U相直列回路・V相直列回路・W相直列回路をブリッジ接続した主回路と、この主回路のスイッチ素子を駆動する駆動回路やスイッチ素子を保護する過電流保護回路などの周辺回路とを、単一のパッケージに収納したモジュールいわゆるIPM(Intelligent Power Module)が用いられる。なお、全ての各スイッチ素子および駆動回路をディスクリート部品として構成してもよい。インバータ20,30はそれぞれ三相インバータであるが、単相インバータを三個使用してインバータ20,30をそれぞれ構成してもよい。
モータ1Mの相巻線Luの他端と相巻線Lvの他端の相互間に、機械式の開閉接点を有する開閉器である例えばリレー12の常開形の開閉接点(リレー接点という)12aが接続されている。モータ1Mの相巻線Lvの他端と相巻線Lwの他端の相互間に、機械式の開閉接点を有する開閉器である例えばリレー13の常開形の開閉接点(リレー接点という)13aが接続されている。リレー12,13は、モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの他端側を共通接続して、モータ1Mをスター結線状態に変更するために設けられるものであり、リレー12,13が短絡する相巻線は、相巻線Luの他端と相巻線Lwの他端と、相巻線Luの他端と相巻線Lvの他端間でも良い。これらリレー12,13は、コントローラ4により、励磁電流の供給によるオン(付勢)と励磁電流の遮断によるオフ(消勢)が、互いに同期するタイミングで実行される。2つの常開接点を有する1つのリレーをリレー12,13に代えて用いる構成としてもよい。
リレー12,13がオンするとリレー接点12a,13aが閉成し、相巻線Luの他端と相巻線Lvの他端が相互接続されるとともに、相巻線Lvの他端と相巻線Lwの他端が相互接続されて、相巻線Lu,Lv,Lwがスター結線状態となる。リレー12,13がオフするとリレー接点12a,13aが開放し、相巻線Lu,Lv,Lwが非接続状態つまり電気的に分離したオープン巻線状態となる。このオープン巻線状態では、リレー接点12aに相巻線Lu,Lvの線間電圧Euvが加わり、リレー接点13aに相巻線Lv,Lwの線間電圧Evw加わり、リレー接点12a,13aの直列回路に相巻線Lw,Luの線間電圧Ewuが加わる。
インバータ20と相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の3つの通電ラインに電流センサ11u,11v,11wが配置され、これら電流センサの出力信号がコントローラ4に送られる。電流センサ11u,11v,11wは、相巻線Lu,Lv,Lwに流れる電流(モータ電流という)Iu,Iv,Iwを検知する。
コントローラ4は、モータ3の回転速度Nが上位の外部制御器50から指令される目標回転速度Ntとなるようリレー接点12a,13aの開閉およびインバータ20,30のPWM(パルス幅変調)によるスイッチング(PWMスイッチングという)を制御するもので、主制御部40、電流検出部41、リレー駆動部42、タイマー43,PWM信号生成部44,キャリア周波数切替部45を含む。外部制御器50は、例えば空気調和機の制御器である。
電流検出部41は、電流センサ11u,11v,11wで検知されるモータ電流Iu,Iv,Iwのそれぞれの瞬時値を検出する。リレー駆動部42は、主制御部40からの指令に応じてリレー12,13を付勢および消勢する。PWM信号生成部44は、外部制御器50から指令される上記目標回転速度Ntおよび主制御部40からの指令などに応じてU相PWMスイッチング用の駆動信号(U相上側駆動信号・U相下側駆動信号),V相PWMスイッチング用の駆動信号(V相上側駆動信号・V相下側駆動信号),W相PWMスイッチング用の駆動信号(W相上側駆動信号・W相下側駆動信号)を生成する。キャリア周波数切替部45は、PWM信号生成部44のPWMスイッチングのキャリア周波数を主制御部40からの指令に応じて切替えることが可能である。
主制御部40は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路により構成され、電流検出部41の検出結果に基づいてモータ3の回転速度Nを推定(検出)するとともに、PWM信号生成部44で生成される上記各駆動信号に応じてインバータ20,30の各スイッチ素子をオン,オフ駆動する。
主制御部40は、リレー接点12a,13aの開放により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を非接続状態としてインバータ20,30を互いに連係してPWMスイッチングするオープン巻線モード、及びリレー接点12a,13aの閉成により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を相互接続してインバータ20を単独でPWMスイッチングするスター結線モードを、上記推定した回転速度Nおよび外部制御器50からのモード指令などに応じて選択的に設定する。例えば、モータ回転数Nが低くてモータ電流Iu,Iv,Iwが所定値未満となる低負荷時はスター結線モードを設定し、モータ回転数Nが上昇してモータ電流Iu,Iv,Iwの値が所定値以上となる高負荷時はオープン巻線モードを設定する。これによりモータの運転範囲全域で高効率が得られる。
主制御部40は、インバータ20,30の各直列回路における上側スイッチ素子と下側スイッチ素子のオン,オフ駆動に際し、一方のスイッチ素子がオンすると他方のスイッチ素子はオフする相補的動作を行う。この際、直列接続された上側スイッチ素子および下側スイッチ素子が同時にオンしないように、いずれかのスイッチ素子をオフからオンに変更する際には両スイッチ素子が共にオフするデッドタイムtdを確保する。
主制御部40は、リレー接点12a,13aの開閉作動に際し、その閉動作前にリレー接点12a,13aに加わる線間電圧Euv,Evw,Ewuが0となるよう、インバータ30のPWMスイッチングの変調率を0%へと変更してインバータ30における各上側スイッチ素子と各下側スイッチ素子とを所定のオン,オフデューティたとえばオン,オフデューティ50%で交互にオン,オフする疑似中性点動作を実行する。
主制御部40は、この疑似中性点動作を実行に伴い、キヤリア周波数切替部45を制御することでインバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数を通常の値(第2所定値)たとえば5KHzより低い値(第1所定値)たとえば4KHzに低下させる。
つぎに、主制御部40が実行する主要な制御を図2のフローチャート、図3・図4のタイムチャート、および図5・図6の波形図を参照しながら説明する。フローチャート中のステップS1,S2…については単にS1,S2…と略称する。
モータ3の駆動中、主制御部40は、オープン巻線モードからスター結線モードへの切替えが必要か否かを確認するとともに(S1)、スター結線モードからオープン巻線モードへの切替えが必要か否かを確認する(S10)。
オープン巻線モードからスター結線モードへの切替えが必要な場合(S1のYES)、主制御部40は、インバータ20の出力電圧がそれまでの2倍となるようインバータ20のPWMスイッチングの変調率を増加方向へ徐々に変更するとともに、インバータ30の出力電圧が0となるようインバータ30のPWMスイッチングの変調率を0%へと徐々に変更し(S2)、これら変更の完了を確認する(S3)。
インバータ30のPWMスイッチングの変調率を0%へと変更することにより、インバータ30における各上側スイッチ素子と各下側スイッチ素子とをオン,オフデューティ50%で交互にオン,オフする疑似中性点動作が実行される。これにより、線間電圧Euv,Evw,Ewuが0に近づく。
上記変調率の変更が完了したとき(S3のYES)、主制御部40は、疑似中性点動作に入ったとの判断の下に、インバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数を通常の5KHzより低い4KHzに低下する(S4)。
このキャリア周波数の低下後、主制御部40は、リレー12,13をオン(付勢)する(S5)。そして、このリレー12,13のオンから実際にリレー接点12a,13aが閉成するまでに要する時間よりも長い一定時間t1がタイマー43の計時により経過した後(S6のYES)、主制御部40は、キャリア周波数切替部45を制御してインバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数を上記4KHzから通常の5KHzに戻す(S7)。続いて、主制御部40は、インバータ30のスイッチングを停止し(S8)、かつインバータ20の単独のPWMスイッチングを開始し(S9)、これによりスター結線モードへと移行する。この移行後、主制御部40は、上記S1,S10の判定に戻る。
上記疑似中性点動作の実行中、例えば図1に実線矢印で示すように、相巻線Lu,Lvからインバータ30の相互接続点Yu,Yvに向かってモータ電流Iu,Ivが流れ、インバータ30の相互接続点Ywから相巻線Lwに向かってモータ電流Iwが流れるタイミングにおいて、インバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数が通常の5KHz(キャリア周期Tが200μsec)のままであれば、リレー接点12aに加わる線間電圧Euvは0となるが、リレー接点13aに加わる線間電圧Evwは図4に示すように上側スイッチ素子と下側スイッチ素子が共にオフするデッドタイムtdの期間で0とならない。
この理由は、モータ電流Iu,Ivの流れ方向とモータ電流Iwの流れ方向とが異なること、および上側スイッチ素子Tua,Tva,Twaおよび下側スイッチ素子Tub,Tvb,Twbのいずれかの還流ダイオードDを通って電流経路が形成されることで、上側スイッチ素子Twaの両端電圧(コレクタ・エミッタ間電圧)Vwaと下側スイッチ素子Twbの両端電圧(コレクタ・エミッタ間電圧)Vwbとで定まる相互接続点Ywの電位と、上側スイッチ素子Tua,Tvaのそれぞれ両端電圧(コレクタ・エミッタ間電圧Vua,Vva)と下側スイッチ素子Tub,Tvbのそれぞれ両端電圧(コレクタ・エミッタ間電圧)Vub,Vvbとで定まる相互接続点Yu,Yvの電位とが、デッドタイムtdの期間だけ互いに異なる値となるからである。
仮に、線間電圧Evwが0とならないタイミングとリレー接点13aが閉成するタイミングとが偶然に重なると、線間電圧Evwが0Vまで急激に下降することにより、リレー接点13aの両端間に放電が生じたり、リレー接点13a間に存在する微小な容量成分を通して急峻な高周波電流が流れる。すなわち、インバータ30における上側スイッチ素子Tvaおよび下側スイッチ素子TwbであるIGBTの出力容量(Output Capacitance)すなわちコレクタ・エミッタ間容量が充電されることで、上側スイッチ素子Tvaおよび下側スイッチ素子Twbがオフであるにもかかわらず、上側スイッチ素子Tvaおよび下側スイッチ素子Twbのそれぞれ両端電圧が通常のスイッチング動作時の何倍もの速さで急増する。このとき、上側スイッチ素子Tvaおよび下側スイッチ素子Twbのそれぞれコレクタ・ゲート間寄生容量を通して高周波電流が流れる。
この高周波電流は、上側スイッチ素子Tvaおよび下側スイッチ素子Twbのそれぞれゲート・エミッタ間寄生容量を通ってそれぞれのエミッタ側へと流れていく。その際、上側スイッチ素子Tvaおよび下側スイッチ素子Twbのそれぞれゲート・エミッタ間電圧に高周波ノイズが重畳する。下側スイッチ素子Tvbおよび上側スイッチ素子Twaにおいてはそれぞれの両端電圧が通常のスイッチングの何倍もの速さで急減し、上記と同様の原理にて各スイッチ素子のゲート部に高周波ノイズが重畳する。これらの高周波ノイズのレベルが高かったり、あるいはその高周波ノイズの発生頻度が高いと、各スイッチ素子を駆動する駆動回路の誤動作や、その駆動回路の発振による熱破壊やゲート部の過電圧破壊に至る可能性がある。以上は線間電圧Evwの例で説明したが、この現象はいずれの相間においても発生する。
ここで、オープン巻線モードにおいては、インバータ20とインバータ30の同相(コモンモード)電圧の差分で発生する零軸電圧がモータ3に印加されることで各相に同相(コモンモード)で流れる成分である零軸電流Ioが流れる。この零軸電流Ioは、モータ電流Iu,Iv,Iwの各相に同じ方向で、かつ同じ値として重畳する。この零軸電流Ioは、インバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数が低いほど大きな値となる。
そこで、疑似中性点動作の実行中、モータ電流Iu,Iv,Iwが上記同様に図1の実線矢印の方向に流れるタイミングにおいて、インバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数が通常の5KHzより低い4KHz(キャリア周期Tが250μsec)とすれば、図1に破線矢印で示すように、インバータ30の相互接続点Yu,Yv,Ywから相巻線Lu,Lv,Lwに向かって流れる零軸電流Ioのリプル成分が通常の5KHz時より増加する。このとき、相巻線Lwに向かう零軸電流Ioは実線矢印で示すモータ電流Iwと流れ方向が同じであり、相巻線Lu,Lvに向かう零軸電流Io,Ioは実線矢印で示すモータ電流Iu,Ivと流れ方向が逆でしかもモータ電流Iu,Ivの値より上記リプル成分の増加分だけ大きくなる。
この時点の零軸電流Io,モータ電流Iu,Iv,Iw、線間電圧Evwの関係、および時間的に拡大した線間電圧Evwの波形を図5に示す。すなわち、キャリア周波数を低下したことにより、モータ電流Iu,Iv,Iwより大きい零軸電流Ioがモータ電流Iu,Iv,Iwに対し支配的に流れる。この零軸電流Ioのリプル成分がモータ電流Iu、Iv、Iwの基本波成分よりも大きい場合、モータ電流Iu、Iv、Iwの流れ方向が一致し、疑似中性点動作の実行中に、リレー接点12a,13aに加わる線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間の発生を防ぐことができる、あるいは、線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間を短縮することができる。
線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間を短縮すれば、線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間とリレー接点12a,13aの閉成のタイミングとが重なる確率を低減することができる。これにより、リレー接点12a,13aの両端間にサージ電圧やアーク放電が発生したり、高周波電流が流れるなどの不具合を生じる可能性を低くできる。よってインバータ20,30の各スイッチ素子が破壊に至る可能性も低くなる。
ちなみに、キャリア周波数を低下させない場合は、図6に示すように、零軸電流Ioがそれほど大きくならないので、リレー接点12a,13aに加わる線間電圧Euv,Evwが0とならない期間が長期に渡って発生する。
なお、キャリア周波数を低減することに加え、例えばリレー接点12a,13aの配線長を所定以上に長くしてリレー接点12a,13aの通電路に所定のインピーダンス成分を持たせる構成を採用すれば、たとえ線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間とリレー接点12a,13aの閉成のタイミングとが重なっても、リレー接点12a,13aの両端間にサージ電圧やアーク放電が発生したり高周波電流が流れるなどの不具合を解消することができる。
一方、スター結線モードからオープン巻線モードへの切替えが必要な場合(S1のNO,S10のYES)、主制御部40は、インバータ20の出力電圧がそれまでの1/2倍となるようインバータ20のPWMスイッチングの変調率を減少方向へ徐々に変更するとともに、インバータ30の出力電圧が0となるようインバータ30のPWMスイッチングを変調率0%で開始し(S11)、上記変調率の変更の完了を確認する(S12)。インバータ30のPWMスイッチングを変調率0%で開始することにより、インバータ30においてオン,オフデューティ50%の疑似中性点動作が開始となる。
上記変調率の変更が完了したとき(S3のYES)、主制御部40は、疑似中性点動作に入ったとの判断の下に、インバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数を通常の5KHzから上記4KHzに低下する(S13)。
このキャリア周波数の低下後、主制御部40は、リレー12,13をオフする(S14)。そして、このリレー12,13のオフから実際にリレー接点12a,13aが開放するまでに要する時間よりも長い一定時間t2がタイマー43の計時により経過した後(S15のYES)、主制御部40は、インバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数を上記4KHzから上記5KHzに戻す(S16)。続いて、主制御部40は、インバータ20,30の出力電圧が上記S11による変更前のインバータ20の出力電圧と同じ(1倍)となるようインバータ20,30のPWMスイッチングの変調率を徐々に変更し(S17)、その変更の完了を確認する(S18)。変更が完了すると(S18のYES)、主制御部40は、疑似中性点動作が終了したとの判断の下に、インバータ20,30の連係のPWMスイッチングを開始し(S19)、これによりオープン巻線モードに移行する。この移行後、主制御部40は、上記S1,S10の判定に戻る。
このオープン巻線モードへの移行に際しても、疑似中性点動作を実行しかつキャリア周波数を低下することにより、モータ電流Iu,Iv,Iwより大きい零軸電流Ioがモータ電流Iu,Iv,Iwに対し支配的に流れる。これにより、疑似中性点動作の実行中に、リレー接点12a,13aに加わる線間電圧Euv,Evwが0とならない期間の発生を防ぐことができる、あるいは発生期間を短縮できる。
線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間を短縮できるので、線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間とリレー接点12a,13aの開放のタイミングとが重なる確率を低減することができる。これにより、リレー接点12a,13aの両端間にサージ電圧やアーク放電が発生したり高周波電流が流れるなどの不具合を生じる可能性が低くなり、よってインバータ20,30の各スイッチ素子が破壊に至る可能性も低くなる。
上記一定時間t1,t2は互いに同じ時間でよく、かつ、できるだけ短い時間にすることが望ましい。機械式のリレー12,13の場合、励磁電流による付勢と消勢から実際にリレー接点12a,13aが開閉するまでに10~30msecの遅延がある。これを考慮すると、一定時間t1,t2は50msec~100msec程度が望ましい。
なお、機械式のリレー接点12a,13aに代えて半導体スイッチ素子を用いた場合、その半導体スイッチ素子のオンタイミングをμsec単位で制御することが可能である。このため、上記した問題は発生しないが、半導体スイッチ素子はリレーに較べるとオン抵抗が大きく、しかもスター結線時は半導体スイッチ素子に常に電流が流れるため、損失が大きくなり、放熱対策を施さねばならなくなる等の課題がある。
本実施形態では、抵抗が非常に小さい機械式のリレー接点12a,13aを用いるので、損失がほぼ発生せず、放熱対策も不要である。
[2]第2実施形態
第2実施形態は、主制御部40の機能が第1実施形態と少し異なり、その他の構成は第1実施形態の図1と同じである。その同一部分の説明については省略する。
主制御部40は、リレー接点12a,13aの開閉作動に際し、リレー接点12a,13aに加わる線間電圧Euv,Evw,Ewuが0となるよう、インバータ30のPWMスイッチングの変調率を0%へと変更してインバータ30における各上側スイッチ素子と各下側スイッチ素子とを所定のオン,オフデューティたとえば50%で交互にオン,オフする疑似中性点動作を実行する。
主制御部40は、疑似中性点動作の実行によって線間電圧Euv,Evw,Ewuが0に近づいたところで、インバータ30のオン,オフデューティを通常の50%から減少側(または増加側)に所定値たとえば3%だけシフトする。さらに、主制御部40は、キャリア周波数切替部45を制御してインバータ20,30のPWMスイッチングのキャリア周波数を通常の第2所定値たとえば5KHzより高い第3所定値たとえば6KHzに上昇する。
主制御部40が実行する主要な制御を図7のフローチャート、および図8~図13の波形図を参照しながら説明する。フローチャートにおいて、第1実施形態の図2と同一部分には同一符号を付している。
オープン巻線モードにおいて、インバータ20,30のPWMスイッチングの変調率、線間電圧Euv,Evw,Ewu、モータ電流Iu,Iv,Iw、零軸電流Ioの関係は図8に示す状態となる。零軸電流Ioを1つだけ示しているが、実際にはこの零軸電流Ioが各相巻線Lu,Lv,Lwに流れる。
オープン巻線モードからスター結線モードへの切替えが必要となった場合(S1のYES)、主制御部40は、モータ3の回転数を概ね維持するために、インバータ20の出力電圧がそれまでの2倍となるようインバータ20のPWMスイッチングの変調率を増加方向に徐々に変更するとともに、インバータ30の出力電圧が0となるようインバータ30のPWMスイッチングの変調率を0%へと徐々に変更し(S2)、これら変更の完了を確認する(S3)。
これら変調率が変化する過程でのインバータ20,30のPWMスイッチングの変調率、線間電圧Euv,Evw,Ewu、モータ電流Iu,Iv,Iw、零軸電流Ioの関係を図9に示す。モータ電流Iu,Iv,Iwの0レベルを中心とする振幅および零軸電流Ioの0レベルを中心とする振幅が図8の場合より増えている。
上記変調率の変更が完了したとき(S3のYES)、主制御部40は、疑似中性点動作に入ったとの判断の下に、インバータ30のオン,オフデューティをそれまでの50%から47%にシフトするとともに、インバータ30のPWMスイッチングのキャリア周波数を通常の5KHzより高い6KHzに上昇させる(S4´)。オン,オフデューティをシフトしても、線間電圧を0にするための疑似中性点動作は続くことに変わりはない。
この時点におけるインバータ20,30のPWMスイッチングの変調率、線間電圧Euv,Evw,Ewu、モータ電流Iu,Iv,Iw、零軸電流Ioの関係を図10に示す。インバータ30のオン,オフデューティを47%にシフトしたことにより、相巻線Lu,Lv,Lwからインバータ30の相互接続点Yu,Yv,Ywに向かって零軸電流Io,Io,Ioが流れるとともに、その零軸電流Io,Io,Ioが振幅を増しながらその振幅全体が当初の0レベルを中心とするところから正レベル側へ徐々にシフトしていく。
この零軸電流Ioの振幅のシフトに伴い、モータ電流Iu,Iv,Iwも振幅を増しながらその振幅全体が当初の0レベルを中心とするところから正レベル側へ徐々にシフトしていく。このモータ電流Iu,Iv,Iwのシフトが進むのに伴い、線間電圧Euv,Evw,Ewuが0に近づいていく。そして、図11に示すように、零軸電流Ioの振幅全体が0レベルから十分に離れたところで、モータ電流Iu,Iv,Iwの振幅全体も0レベルから十分に離れ、これにより線間電圧Euv,Evw,Ewuの発生を防ぐことができる、あるいは発生期間をほぼ0とできる。
こうして、線間電圧Euv,Evw,Ewuがほぼ0となるころ、主制御部40は、リレー12,13をオンする(S5)。このS5の処理のタイミングを図11中に矢印で示している。
リレー12,13のオンから実際にリレー接点12a,13aが閉成するまでに要する時間よりも長い一定時間t1がタイマー43の計時により経過した後(S6のYES)、主制御部40は、オン,オフデューティの47%へのシフトを解除してオン,オフデューティを通常の50%に戻すとともに、インバータ30のPWMスイッチングのキャリア周波数を上記6KHzから通常の5KHzに戻す(S7´)。続いて、主制御部40は、インバータ30のスイッチングを停止し(S8)、かつインバータ20の単独のPWMスイッチングを開始し(S9)、これによりスター結線モードへと移行する。
この時点におけるインバータ20,30のPWMスイッチングの変調率、線間電圧Euv,Evw,Ewu、モータ電流Iu,Iv,Iw、零軸電流Ioの関係を図12に示す。上記S8の処理のタイミングを図12中に矢印で示している。
以上のように、疑似中性点動作の実行中、インバータ30のオン,オフデューティを通常の50%から47%にシフトすることにより、リレー接点12a,13aに加わる線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間を短縮または解消できる。
線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間を短縮または解消できるので、線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならないままリレー接点12a,13aが閉成してしまう確率を低減することができる。これにより、リレー接点12a,13aの両端間にサージ電圧やアーク放電が発生したり高周波電流が流れるなどの不具合を生じる可能性が低くなり、よってインバータ20,30の各スイッチ素子が破壊に至る可能性も低くなる。
なお、インバータ20,30が過電流保護回路を内蔵したIPMである場合、オン,オフデューティのシフトによって零軸電流Ioの振幅が増した際に、その過電流保護回路が動作してしまう可能性がある。この不要な動作を防ぐため、上記S4´の処理において、オン,オフデューティをシフトするのに伴い、インバータ30のPWMスイッチングのキャリア周波数を通常の5KHzより高い6KHzに上昇している。キャリア周波数を通常の5KHzより高い6KHzに上昇させることにより、零軸電流Ioのリプル成分が減少する。これにより、過電流保護回路の不要な動作を回避することができる。
図11のように、零軸電流Ioの振幅全体が0レベルから十分に離れた波形、モータ電流Iu,Iv,Iwの振幅全体も0レベルから十分に離れた波形、これにより線間電圧Euv,Evw,Ewuが0となる波形の一部を時間的に拡大して示したのが図13であり、線間電圧が発生している期間は存在しない。これに対し、図8や図9のようにオン,オフデューティのシフトがないときの波形の一部を時間的に拡大して示したのが図14であり、線間電圧が発生する期間が存在している。
なお、オン,オフデューティをシフトすることに加え、例えばリレー接点12a,13aの配線長を所定以上に長くしてリレー接点12a,13aの通電路に所定のインピーダンス成分を持たせる構成を採用すれば、たとえ線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間とリレー接点12a,13aの閉成のタイミングとが重なっても、リレー接点12a,13aの両端間にサージ電圧やアーク放電が発生したり高周波電流が流れるなどの不具合を生じる可能性を確実に解消することができる。
一方、スター結線モードからオープン巻線モードへの切替えが必要な場合(S1のNO,S10のYES)、主制御部40は、インバータ20の出力電圧がそれまでの1/2倍となるようインバータ20のPWMスイッチングの変調率を減少方向へ徐々に変更するとともに、インバータ30の出力電圧が0となるようインバータ30のPWMスイッチングを変調率0%で開始し(S11)、上記変調率の変更の完了を確認する(S12)。インバータ30のPWMスイッチングを変調率0%で開始することにより、インバータ30においてオン,オフデューティ50%の疑似中性点動作が開始となる。
上記変調率の変更が完了したとき(S3のYES)、主制御部40は、疑似中性点動作に入ったとの判断の下に、インバータ30のオン,オフデューティをそれまでの50%から47%にシフトするとともに、インバータ30のPWMスイッチングのキャリア周波数を通常の5KHzより高い6KHzに上昇する(S13´)。
このキャリア周波数の低下後、主制御部40は、リレー12,13をオフする(S14)。そして、このリレー12,13のオフから実際にリレー接点12a,13aが開放するまでに要する時間よりも長い一定時間t2がタイマー43の計時により経過した後(S15のYES)、主制御部40は、オン,オフデューティの47%へのシフトを解除してオン,オフデューティを通常の50%に戻すとともに、インバータ30のPWMスイッチングのキャリア周波数を上記6KHzから通常の5KHzに戻す(S16´)。
続いて、主制御部40は、インバータ20,30の出力電圧が上記S11による変更前のインバータ20の出力電圧と同じ(1倍)となるようインバータ20,30のPWMスイッチングの変調率を徐々に変更し(S17)、その変更の完了を確認する(S18)。変更が完了すると(S18のYES)、主制御部40は、疑似中性点動作が終了したとの判断の下に、インバータ20,30の連係のPWMスイッチングを開始し(S19)、これによりオープン巻線モードに移行する。この移行後、主制御部40は、上記S1,S10の判定に戻る。
このオープン巻線モードへの移行に際しても、疑似中性点動作の実行中、インバータ30のオン,オフデューティを通常の50%から47%にシフトするので、リレー接点12a,13aに加わる線間電圧Euv,Evw,Ewuが0とならない期間を短縮または解消できる。
なお、インバータ30のオン,オフデューティを減少側にシフトしたが、増加側の例えば53%にシフトしてもよい。オン,オフデューティを53%にシフトした場合、インバータ30の相互接続点Yu,Yv,Ywから相巻線Lu,Lv,Lwに向かって零軸電流Ioが流れ、その零軸電流Ioが振幅を増しながらその振幅全体が当初の0レベルを中心とするところから負レベル側へ徐々にシフトしていく。この零軸電流Ioの振幅のシフトに伴い、モータ電流Iu,Iv,Iwも振幅を増しながらその振幅全体が当初の0レベルを中心とするところから負レベル側へ徐々にシフトしていく。このモータ電流Iu,Iv,Iwのシフトが進むのに伴い、線間電圧Euv,Evw,Ewuが0に近づいていく。
上記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。