各図面に基づいて、本発明の実施形態が説明される。複数の図面に示された同一の事項については同一の符号を付してその説明が省略される。図1には、本発明の実施形態に係る粒子線治療システム100の全体構成が示されている。
粒子線治療システム100は、粒子線照射装置1、粒子線到達位置モニタ2、粒子線制御装置10および表示部55を備えている。粒子線照射装置1は、粒子線制御装置10による制御に基づいて、被照射体20に粒子線11を照射する。被照射体20は、粒子線治療の対象となる患者である。粒子線到達位置モニタ2は、被照射体20に照射された粒子線11の到達位置をモニタする。表示部55は、粒子線11の到達位置をモニタした結果や粒子線到達位置モニタ2の動作状態を表示する。
粒子線到達位置モニタ2は、ガンマ線検出器30、遮蔽体40、遮蔽用検出器42および演算装置50を備えている。遮蔽体40は、ガンマ線検出器30と被照射体20との間に配置されている。遮蔽用検出器42は、遮蔽体40とガンマ線検出器30の間に配置されている。遮蔽体40は透過開口部41を有している。遮蔽用検出器42は、透過開口部41に対応する位置、すなわち、粒子線11が進行する照射軸zにおける同一の位置に欠損部39を有している。なお、遮蔽用検出器42が、ガンマ線を透過する材料で形成されている場合には、欠損部39は必ずしも設けられなくてもよい。
粒子線照射装置1は、例えば、粒子線発生装置、粒子線輸送装置、照射部等(いずれも図示せず)を含んでもよい。粒子線発生装置は、サイクロトロンやシンクロトロン等の加速器を有し、陽子や炭素等の粒子線を発生する。粒子線輸送装置は、粒子線発生装置から出力された粒子線を照射部へ輸送する。照射部は、粒子線11の照射方向および粒子線径(照射野)を制御し、被照射体20内の標的21、例えば腫瘍へ向けて粒子線11を照射する。
粒子線照射装置1によって粒子線11が被照射体20に照射されることで、即発ガンマ線13が発生する。ガンマ線検出器30は、透過開口部41および欠損部39を通過した即発ガンマ線13を検出する。演算装置50は、ガンマ線検出器30と遮蔽用検出器42に接続されている。演算装置50は、即発ガンマの検出結果に関する演算を実行する。
ガンマ線検出器30は、シンチレータとシンチレータから発せられた光を電気信号に変換する光電変換器を備えてもよい。シンチレータとしては、例えば、LaBr3、GSO、LYSOおよびBGO等が用いられてもよいし、これらとは異なる組成の放射線発光素子が用いられてもよい。
光電変換器としては、光電子増倍管、フォトダイオード等が用いられてよい。また、シンチレータではなく、例えば、CdTeやCZT等の半導体検出器が用いられてもよく、この場合、ガンマ線検出器30は光電変換器の代わりに前置増幅器が用いられる。
ガンマ線検出器30は、複数の検出素子が少なくとも一次元方向に配列されたアレイ型の検出器である。ガンマ線検出器30は、検出素子の配列方向が、粒子線11の照射軸zに揃えられるように配置されている。これにより、ガンマ線検出器30は、照射軸zに対して平行でない方向から飛来する即発ガンマ線13を捉える。照射軸zの位置は、治療計画で設定されている照射の目標位置に応じて決定される。
粒子線到達位置モニタ2では、1つのガンマ線検出器30が用いられてもよいし、後述の例に示すように、複数のガンマ線検出器30が、照射軸zの周りに配置されてもよい。これにより即発ガンマ線13の検出精度が高まる。ガンマ線検出器30の各検出素子が検出した即発ガンマ線13に基づく検出信号は演算装置50に出力される。
遮蔽体40は、ガンマ線を実質的に透過しない材料によって形成される。ガンマ線を実質的に透過しない材料としては、例えば、水銀、鉛を含む材料やタングステン等、質量数が大きく、密度の高い物質が用いられる。遮蔽体40は、ガンマ線検出器30の照射軸z側に設置され、ガンマ線検出器30の検出範囲を制限する。透過開口部41はガンマ線を透過する材料で形成されてもよいし、図の上下方向に遮蔽体40が切り込まれたスリットであってもよい。
遮蔽用検出器42は、粒子線11が照射された被照射体20の体内組織から発生した中性子、X線等の放射線の粒子のうち、遮蔽体40を通過したものを検出する。遮蔽用検出器42には、中性子に対して高感度である有機シンチレータが用いられてよい。シンチレータとしては、例えば、プラスチックシンチレータ、有機液体シンチレータ等が用いられてもよいし、これらとは異なる組成の放射線発光素子が用いられてもよい。
ガンマ線検出器30の各検出素子には、粒子線11の被照射体20への照射に伴って、透過開口部41および欠損部39を通過した即発ガンマ線13が到達する。ガンマ線検出器30が出力する検出信号は、透過開口部41および欠損部39を経て各検出素子に即発ガンマ線13が到達した事象を示し、演算装置50では、1事象に対して1つの計数が行われる。
ガンマ線検出器30の検出素子の配列方向に沿ってガンマ線検出器30の計数値をプロットしたものは、計数値のプロファイルあるいは単にプロファイルと定義される。プロファイルは、粒子線11の線量分布を反映している。
演算装置50は、ガンマ線検出器30のプロファイルを解析し、粒子線11の照射軸z方向の線量分布において線量が最大となる位置、すなわちブラッグピーク(BP)の位置を粒子線11の到達位置として求める。このため、演算装置50は、ガンマ線検出器30の検出信号を解析する信号解析部52、再構成演算部53および到達位置演算部54を備えている。演算装置50は、解析結果等を格納するデータベース(不図示)を備えてもよい。演算装置50が実行する具体的な処理は後に述べられる。
演算装置50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成される。
CPUが、メモリに格納されたコンピュータプログラムを読み込んで実行することで、信号解析部52、再構成演算部53および到達位置演算部54の機能がソフトウエアによって実現される。演算装置50は、その一部または全部の機能をハードウエアによって実現してもよい。
例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICが用いられてもよい。すなわち、プログラマブルICによって、信号解析部52、再構成演算部53および到達位置演算部54が構成され、その機能を実現するように回路設計が行われてもよい。
演算装置50が実行する処理の一部または全部は、外部のコンピュータが実行してもよい。外部のコンピュータは、粒子線到達位置モニタ2に直接接続されたものでもよいし、インターネット等の通信回線に接続されたものでもよい。演算装置50が実行する1つの処理は、分散処理を実行する外部の複数のコンピュータによって実行されてもよい。
本実施形態に係る粒子線治療システム100では、治療計画において標的21の位置が定まると、粒子線11の照射軸z方向に沿った線量分布が極大になるブラッグピークの位置が標的21における照射の目標位置と一致するように、粒子線11のエネルギが設定される。粒子線11の照射は、標的21を複数の小領域に分け、照射位置を変えながら、各小領域をスポット状に照射することで行われてよい。
図2には、粒子線11の照射軸z方向に沿った線量分布200が概念的に示されている。横軸は粒子線11の照射軸zを示し、縦軸は線量を示す。線量分布200は、治療計画で計算された照射位置に粒子線11を照射した場合において、照射軸z方向における各位置に線量を対応付けたものである。照射軸z方向の線量分布200は、粒子線11のエネルギに応じた位置で極大となる。ブラッグピークは、線量分布200におけるピークであり、ブラッグピークの位置BPが粒子線11が到達した位置に相当する。
粒子線照射装置1が粒子線11を標的21へ照射すると共に、粒子線到達位置モニタ2は即発ガンマ線13の検出を開始する。粒子線到達位置モニタ2は、ガンマ線検出器30により検出された事象と、遮蔽用検出器42により検出された事象とに基づき、同一時刻にガンマ線検出器30と遮蔽用検出器42で検出された事象をノイズとして識別する。
粒子線到達位置モニタ2は、ガンマ線検出器30の計数からノイズを除去した上でプロファイルを解析して、ブラッグピークの位置、すなわち粒子線11の到達位置を算出する。粒子線到達位置モニタ2により算出された粒子線11の到達位置は、表示部55に表示される。ユーザは、表示部55に表示された情報によって、照射の目標位置へ粒子線11が到達したか否かを確認してもよい。また、粒子線11の到達位置は、粒子線制御装置10に出力される。
標的21に粒子線11が当たっていないと粒子線制御装置10が判定した場合、粒子線制御装置10は、粒子線照射装置1に制御信号を送り、粒子線11の照射を中止する。さらに、粒子線制御装置10は、例えば、目標位置が変更されるように粒子線照射装置1を制御する。あるいは、粒子線制御装置10は、被照射体20へ粒子線11を照射する位置が修正されるように粒子線照射装置1を制御する。さらに必要に応じて、粒子線制御装置10は、ガンマ線検出器30の配置位置を変更させる指示または示唆を、表示部55に表示させてもよい。
次に、本実施形態に係る粒子線到達位置モニタ2で実行される処理が説明される。粒子線到達位置モニタ2は、粒子線11が被照射体20へ入射した際の飛程を到達位置として測定する。ここでは、粒子線到達位置モニタ2が粒子線治療システム100の一部として用いられた実施形態が示されているが、粒子線到達位置モニタ2は、高エネルギ物理実験に用いる装置、中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)に用いる装置等として用いられてよい。
粒子線照射に伴い被照射体20では即発ガンマ線13だけでなく中性子やX線等の粒子(放射線)が発生する。このような放射線は、被照射体20内や構造物で散乱し易く、粒子線到達位置の位置情報を持たないノイズとなる。特に、粒子線照射により発生した中性子はエネルギが高く、遮蔽体40等の構造物と核反応を生じて二次粒子を放出する。そのため、遮蔽体40のみではノイズ成分を除去しきれず、即発ガンマ線13がノイズに埋もれてしまうことがある。
そこで、粒子線到達位置モニタ2では、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30の両者で検出された事象はノイズとして識別され、計数がなされない。
粒子線到達位置モニタ2によるブラッグピークの位置の算出方法が説明される。本実施形態では、即発ガンマ線13を検出したガンマ線検出器30が出力する信号と、粒子線照射により被照射体20内で発生した中性子を検出したガンマ線検出器30が出力するノイズとを分離した上で、即発ガンマ線13のプロファイルが算出される。
すなわち、粒子線11を標的21へ照射すると即発ガンマ線13が発生し、その即発ガンマ線13はガンマ線検出器30によって検出される。一方、標的21へ粒子線11が照射されると被照射体20内で中性子が発生し、その中性子に由来するガンマ線もガンマ線検出器30により検出される。中性子に由来するガンマ線は、ブラッグピークの形成に寄与しないノイズであるため、即発ガンマ線13による検出信号と区別される。
実際の治療時には、治療計画で予め定められた位置に、ガンマ線検出器30と遮蔽体40が設置される。各々の粒子線照射の目標位置に対し、照射軸zと平行な検出器軸xにおける検出素子の位置x=x1~xNが予め定められる。
図3(a)には、遮蔽用検出器42から出力される参照検出信号の時間波形の概形が示されている。図3(b)には、ガンマ線検出器30における1つの検出素子から出力される検出信号の時間波形の概形が示されている。被照射体20で発生し、遮蔽体40の透過開口部41および遮蔽用検出器42の欠損部39を通過してガンマ線検出器30に到達した即発ガンマ線13は、ガンマ線検出器30で検出される。一方、この即発ガンマ線13は、遮蔽体40による遮蔽によって遮蔽用検出器42では検出されない。また、被照射体20で発生した中性子、X線等(以下、中性子等とされる)の放射線は、遮蔽体40および遮蔽用検出器42を通過してガンマ線検出器30へ到達し、ガンマ線検出器30で検出される。この放射線は、遮蔽用検出器42でも検出される。
演算装置50における信号解析部52は、遮蔽用検出器42から参照検出信号が出力されているときに、ガンマ線検出器30が出力した検出信号をノイズであると識別する。信号解析部52は、ガンマ線検出器30が出力した検出信号のうちノイズであると識別したものは、無効として計数値に寄与させない。
具体的には、信号解析部52は、参照検出信号が遮蔽用検出器42から出力された時から時間Δtが経過するまでの間に、ガンマ線検出器30から出力された検出信号を無効とし、この検出信号を計数しない。図3(a)および(b)に示されている例では、参照検出信号Rが遮蔽用検出器42から出力されていない時に、ガンマ線検出器30から検出信号Aが出力されている。そして、参照検出信号Rが遮蔽用検出器42から出力されてからΔtが経過するまでの間に、ガンマ線検出器30から検出信号Bが出力されている。したがって、信号解析部52は検出信号Aを計数するものの、検出信号Bはノイズであると識別して検出信号Bを計数しない。
なお、ガンマ線検出器30が放射線を検出してから、信号解析部52が検出信号を取得するまでの遅延時間と、遮蔽用検出器42が放射線を検出してから、信号解析部52が参照検出信号を取得するまでの遅延時間には相違があることがある。後述するように、信号解析部52は、このような遅延時間の相違を補償した上でノイズの識別および即発ガンマ線13の計数を実行する。ここでは、説明を簡略化するため、遅延時間の相違が補償されているものとして説明がされている。
信号解析部52は、検出器軸x上の座標値x=x1~xNの位置にあるN個の検出素子のそれぞれについて、ノイズであると識別された検出信号を除いた計数値を求め、各検出素子について求められた計数値を再構成演算部53に出力する。再構成演算部53は、検出器軸x上のN個の検出素子の位置に計数値を対応付けた計数値分布を再構成することによって、粒子線11の照射軸z上に即発ガンマ線13の線量を対応付けた測定線量分布を求める。ここで、再構成は、照射軸z上の各位置、透過開口部41の位置、および検出器軸x上での各検出素子の位置の幾何学的関係に基づいて、計数値分布から測定線量分布を求める演算である。再構成演算部53は、測定線量分布を示す情報を到達位置演算部54に出力する。
なお、粒子線11をスキャニングする場合、粒子線11とガンマ線検出器30との間の距離および角度が変化する。そこで、信号解析部52は、粒子線11のスキャニングに合わせて、計数値分布を修正してもよい。
到達位置演算部54は、予め定められた照射軸z上の基準位置(z=0)に粒子線11が到達した場合における線量分布である基準線量分布を記憶している。基準線量分布のブラッグピークは基準位置にある。到達位置演算部54は、基準線量分布に対する測定線量分布のシフト量を求める。
シフト量は、基準線量分布に対して、測定線量分布が照射軸z方向にずれている距離(シフトしている距離)を示す。シフト量は、照射軸zにおけるブラッグピークの位置を示す。到達位置演算部54は、基準線量分布に対する測定線量分布のシフト量、すなわち、ブラッグピークの位置を求め、粒子線11の到達位置を求める。シフト量は、基準線量分布を基準とした最大値のずれや、変曲点のずれに基づいて求められてよい。
図4には粒子線11の到達位置を求める処理を示すフローチャートが示されている。粒子線照射装置1は、標的21へ粒子線11を照射する(S41)。ガンマ線検出器30および遮蔽用検出器42は、標的21への粒子線11の照射に応じて発生した放射線を検出し、それぞれ、検出信号および参照検出信号を信号解析部52出力する(S42)。
信号解析部52は、遮蔽用検出器42から参照検出信号が出力された時から時間Δtが経過するまでの間に、ガンマ線検出器30から出力された検出信号をノイズであると識別する(S43)。信号解析部52は、ガンマ線検出器30が出力した検出信号のうちノイズであると識別したものは無効として計数値に寄与させず、その他の有効な検出信号を計数する(S44)。信号解析部52は、各検出素子について求められた計数値を再構成演算部53に出力する。
再構成演算部53は、各検出素子について求められた計数値に基づいて計数値分布を求める(S45)。再構成演算部53は、計数値分布を再構成することで測定線量分布を求める(S46)。到達位置演算部54は、基準線量分布に対する測定線量分布の照射軸z方向のシフト量を求め、粒子線11の到達位置を求める(S47)。
演算装置50は、粒子線11の到達位置を表示部55に表示させる。ユーザは、表示部55に表示された到達位置を確認することで、治療が適切に行われているか否かを確認してもよい。ユーザは、粒子線11の照射位置を変更しながら、実際の到達位置が目標位置となるように粒子線照射装置1を調整してもよい。
このように、本発明の実施形態に係る粒子線到達位置モニタ2は、以下の各構成要素を備えることで、被照射体20へ入射する粒子線11の到達位置を求める。すなわち、粒子線到達位置モニタ2は、遮蔽体40、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30を備えている。遮蔽体40は透過開口部41を有する。遮蔽用検出器42は、遮蔽体40の後方に配置されている。ここで、後方は、粒子線到達位置モニタ2から被照射体20側を見た方向を前方とした場合の方向を示す。ガンマ線検出器30は、遮蔽用検出器42の後方に設けられており、粒子線11の照射軸z方向に配列された複数の検出素子を備えている。
粒子線到達位置モニタ2は演算装置50を備えている。演算装置50は、遮蔽用検出器42から参照検出値が出力されたときに、検出素子から出力された主検出値を無効とする。ここで、参照検出値および主検出値は、それぞれ、参照検出信号および検出信号が示す値である。演算装置50は、各検出素子から出力された主検出値のうち、無効とされなかった主検出値に基づいて到達位置を求める。
演算装置50は、各検出素子から出力された主検出値のうち無効とされなかった主検出値と、各検出素子および透過開口部41の位置関係とに基づいて、照射軸z方向に沿った即発ガンマ線13の測定線量分布(線量分布)を求める。演算装置50は、測定線量分布に基づいて到達位置を求める。すなわち、演算装置50は、各検出素子および透過開口部41の位置関係に基づいて計数値分布を再構成し、照射軸z方向に沿ったガンマ線の線量分布を求める。
粒子線到達位置モニタ2では、次の(i)~(vi)の過程を含む粒子線到達位置モニタ方法が実行される。粒子線到達位置モニタ方法は、被照射体20へ入射する粒子線11の到達位置を求める方法である。
(i)複数の検出素子を備えるガンマ線検出器30を、検出素子の配列方向が粒子線11の照射軸z方向に揃えられるように配置すること。(ii)照射軸zとガンマ線検出器30との間に、照射軸zに交差する方向に即発ガンマ線13が通過する透過開口部41が設けられた遮蔽体40を配置すること。(iii)遮蔽体40とガンマ線検出器30との間に、遮蔽体40を透過したノイズを検出する遮蔽用検出器42を配置すること。(iv)遮蔽用検出器42から参照検出値が出力されたときに検出素子から出力された主検出値を無効とすること。(v)各検出素子から出力された主検出値のうち無効とされなかった主検出値と、各検出素子および透過開口部41の位置関係とに基づいて、ガンマ線の照射軸z方向に沿った線量分布を求めること。(vi)測定線量分布に基づいて到達位置を求めること。
本実施形態に係る粒子線到達位置モニタ2によれば、被照射体20で発生する中性子等によるノイズの影響が抑制され、粒子線の到達位置が高精度に求められる。
したがって、例えば、粒子線照射中の患者の姿勢変化や患者の体形の変化等により、腫瘍の位置が治療計画とは異なる位置にある場合に、粒子線の照射位置を変更したり、粒子線の照射を中止したりすることが容易となる。また、例えば、腫瘍の近傍に放射線感受性の高い臓器が存在するケースでも、粒子線治療を適用する可能性が高められる。
本実施形態に係る粒子線到達位置モニタ2では、上記の特許文献1および2に記載の技術に認められる課題が解決される。特許文献1に記載の技術では、即発ガンマ線と中性子とでは飛行時間差があることから、照射タイミングと同期したタイムゲートを設けた計測により、中性子由来の信号(ノイズ)を低減することが可能であることが記載されている。しかしながら、上述の飛行時間差以上の時間で、粒子線を1回で照射する場合、信号とノイズとを区別できない。一方、本実施形態に係る粒子線到達位置モニタ2では、粒子線の照射回数に関わらず、検出信号がノイズであるか否かが識別され得る。
特許文献2に記載の技術では、到来する粒子のエネルギを10MeV以上とすることで、粒子線の照射軸上から発生したガンマ線信号のみを検出可能である。しかし、ガンマ線のエネルギの条件等によっては、検出器において電子対が生成される確率が低下し、検出感度が低下する。一方、本実施形態に係る粒子線到達位置モニタ2の測定原理は、電子対の生成によるものではないため、このような問題は生じない。
上述のように、ガンマ線検出器30が放射線を検出してから、信号解析部52が検出信号を取得するまでの遅延時間と、遮蔽用検出器42が放射線を検出してから、信号解析部52が参照検出信号を取得するまでの遅延時間には相違があることがある。ここでは、このような遅延時間の相違を補償するための較正モードの動作が説明される。較正モードの動作は、粒子線の到達位置を測定する測定モードの動作とは別に実行される。
図5のフローチャートには、較正モードの動作(S51~S53)が示されている。較正モードの動作は、ガンマ線検出器30が備える複数の検出素子のそれぞれに対して実行される。較正モードでは、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30に外部トリガ信号が同時に入力され、各外部トリガ信号が信号解析部52で取得されたタイミングの差異が計測される。
遮蔽用検出器42とガンマ線検出器30に外部トリガ信号が同時に入力される(S51)。信号解析部52は、遮蔽用検出器42から出力された外部トリガ信号が信号解析部52で取得された第1時刻と、ガンマ線検出器30から出力された外部トリガ信号が信号解析部52で取得された第2時刻との時刻差を求める(S52)。時刻差は、第1時刻から第2時刻を減算した時間であってもよいし、第2時刻から第1時刻を減算した時間であってもよい。信号解析部52は時刻差を記憶する(S53)。
演算装置50は、信号解析部52が記憶した時刻差に基づいて、検出信号および参照検出信号の時間軸上での差異を、時刻差に基づいて補償した上で測定モードの動作を実行する(S54)。
信号解析部52は、次のような動作を実行してもよい。すなわち、信号解析部52は、ガンマ線検出器30および遮蔽用検出器42からそれぞれ出力された検出信号および参照検出信号を時刻に対応付けて、時刻データとして記憶する。信号解析部52は、参照検出信号を時間軸上で時刻差だけ遅延させて記憶する。あるいは、信号解析部52は、検出信号を時間軸上で時刻差だけ進めて記憶する。ここで、時刻差は、第1時刻から第2時刻を減算した時間(検出信号に対する参照検出信号の進みを表す時間)である。
なお、時刻差が、第2時刻から第1時刻を減算した時間である場合には、信号解析部52は、検出信号を時間軸上で時刻差だけ遅延させて記憶する。あるいは、信号解析部52は、参照検出信号を時間軸上で時刻差だけ進めて記憶する。測定モードでは、時刻差に基づき遅延時間の補償が実行された時刻データに基づいて、図4のフローチャートによって示される処理が実行されてよい(S54)。
このように、粒子線到達位置モニタ2が較正モードで動作するときは、遮蔽用検出器42および各検出素子は、同一事象を検出する。信号解析部52は、遮蔽用検出器42および各検出素子で同一事象が検出されたときに、検出信号が示す主検出値、および参照検出信号が示す参照検出値が演算装置50で取得される時刻の差異である時刻差を求める。粒子線到達位置モニタ2が測定モードで動作するときには、演算装置50は、主検出値および参照検出値の時間軸上での差異を時刻差に基づいて補償した上で、粒子線11の到達位置を求める。
図6には、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30に入力され、信号解析部52で取得された各外部トリガ信号の概念図が示されている。図6(a)には、遮蔽用検出器42に入力され、信号解析部52で取得された外部トリガ信号Tr1が示されている。図6(b)には、ガンマ線検出器30に入力され、信号解析部52で取得された外部トリガ信号Tr2が示されている。各図の横軸は時間を示し、縦軸は波高値を示す。外部トリガ信号Tr1が取得された第1時刻t1から外部トリガ信号Tr2が信号解析部52で取得された第2時刻t2を減算した時刻差δが信号解析部52に記憶される。
ここでは、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30に信号に対する同一事象として、外部トリガ信号を各検出器(42,30)に同時に入力する処理が示された。このような処理に代えて、遮蔽用検出器42とガンマ線検出器30に、同時に放射線を検出させてもよい。例えば、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30との間の領域で22Naを崩壊させることで、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30に同時に検出されるガンマ線を発生させる工程が実行されてもよい。
図7には測定モードにおけるその他の動作例を示すフローチャートが示されている。ステップS71、S72およびS75~S77では、それぞれ、図4のフローチャートに示されたステップS41、S42およびS45~S47と同様の処理が実行される。
粒子線照射装置1は、標的21へ粒子線11を照射する(S71)。ガンマ線検出器30および遮蔽用検出器42は、標的21への粒子線11の照射に応じて発生した放射線を検出し、それぞれ、検出信号および参照検出信号を信号解析部52に出力する(S72)。
信号解析部52は、遮蔽用検出器42から参照検出信号が出力された時から時間Δtが経過するまでの間、信号値がハイになり、その他の時間帯でローになるゲート信号を生成する(S73)。演算装置50は、ゲート信号がハイである間、ガンマ線検出器30による放射線の検出を停止する。これによって、信号解析部52は、ガンマ線検出器30が出力した検出信号のうちゲート信号がハイであるときに取得されたものは無効として計数値に寄与させず、その他の有効な検出信号を計数する。すなわち、信号解析部52は、ガンマ線検出器30が出力した検出信号のうちゲート信号がローであるときに取得されたものを計数する(S74)。信号解析部52は、各検出素子について求められた計数値を再構成演算部53に出力する。
再構成演算部53は、各検出素子について求められた計数値に基づいて計数値分布を求める(S75)。再構成演算部53は、計数値分布を再構成することで測定線量分布を求める(S76)。到達位置演算部54は、基準線量分布に対する測定線量分布の照射軸z方向のシフト量を求め、粒子線11の到達位置を求める(S77)。
ゲート信号がハイであるときは、中性子等のノイズが遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30で検出されている可能性がある。したがって、本動作によれば、ガンマ線検出器30が出力した検出信号のうちノイズである可能性のあるものは無効となり計数値に寄与しない。これによって、被照射体20で発生する中性子等によるノイズの影響が抑制され、粒子線11の到達位置が高精度に求められる。
図8には、遮蔽体40および遮蔽用検出器42の変形例が示されている。この変形例では、遮蔽体40に3つの透過開口部41が設けられている。遮蔽用検出器42には、遮蔽体40における透過開口部41に対応する位置、すなわち、透過開口部41の位置と同一の位置に欠損部39が設けられている。
このように、遮蔽体40に複数の透過開口部41が設けられ、遮蔽用検出器42に複数の欠損部39が設けられることで、透過開口部41および欠損部39が1つずつ設けられる場合に比べて、ガンマ線検出器30で検出される放射線の事象数が増加する。これによって、より多くの事象によって到達位置が求められることとなり、到達位置がより正確に求められる。
図9には、遮蔽用検出器の変形例が模式的に示されている。この図は、図8に示されている遮蔽体40を取り除き、遮蔽用検出器60を照射軸z側から眺めた図である。遮蔽用検出器60は、欠損部39によって分離された複数の発光部62を有している。各発光部62は、放射線を検出したときに光を発生する。
図9に示される例では、遮蔽用検出器60は3つの欠損部39を有し、3つの欠損部39によって分離された4つの発光部62を有している。また、遮蔽用検出器60は、光を電気信号に変換する変換器としての光電子増倍管66と、各発光部62と光電子増倍管66とを接続する光伝搬路64を備えている。
各発光部62は、シンチレータによって構成されている。複数の発光部62と光電子増倍管66とを接続する複数の光伝搬路64は、同一の光路長を有している。各光伝搬路64は、光ファイバで形成されてよい。発光部62で放射線が検出されると、発光部62は光を発生する。発光部62で発生した光は光伝搬路64を伝搬して光電子増倍管66に到達する。
このように、遮蔽用検出器60は、変換器としての光電子増倍管66と、複数の光伝搬路64とを備えている。光電子増倍管66は、複数の発光部62から出力された光を電気信号に変換する。複数の光伝搬路64は、複数の発光部62と光電子増倍管66との間に設けられ、光を同一の伝搬時間で伝搬させる。
光電子増倍管66は、複数の光伝搬路64のそれぞれから到来した光を電気信号に変換する。光電子増倍管66によって生成される電気信号は、複数の光伝搬路64のそれぞれから到来した光の論理和(OR)に相当する。光電子増倍管66は、参照検出信号としての電気信号を信号解析部52に出力する。
各発光部62と光電子増倍管66とは、同一の光路長を有する光伝搬路64によって接続されている。したがって、各発光部62で検出された同一の事象に基づく光が同時に光電子増倍管66に到達する。これによって、1つの発光部62を用いる場合に比べて、確実に放射線が検出され、粒子線11の到達位置が確実に求められる。
図1に示される粒子線到達位置モニタ2は、被照射体20、遮蔽体40、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30の位置関係に応じて、粒子線11の到達位置の照射軸z上の測定可能な範囲が定まる。しかし、標的21の位置は、被照射体20の広い範囲に存在し得る。
そこで、粒子線到達位置モニタ2は、遮蔽体40、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30を粒子線11の照射軸z方向と平行に移動させる移動機構を備えてもよい。移動機構は、ユーザの操作に応じて演算装置50によって制御されてよい。移動機構は、標的21が測定可能範囲に入るように、遮蔽体40、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30の照射軸z方向の位置を調整する。
図10には、複数の検出ユニット25が、照射軸の周囲に配置された実施形態が示されている。各検出ユニット25は、遮蔽体40、遮蔽用検出器42およびガンマ線検出器30を備えている。演算装置50は、各検出ユニット25ごとに粒子線11の到達位置を求める。各検出ユニット25ごとに粒子線11の到達位置を求める処理では、ノイズとして識別された放射線は無効とされ、計数値に寄与しない。演算装置50は、各検出ユニット25に対して得られた到達位置の平均値、中央値等の統計値に基づいて、総合的な到達位置を求める。
このような構成によれば、複数の検出ユニット25によって求められた複数の到達位置の統計的な処理に基づいて、総合的な到達位置が求められる。これによって、測定精度が向上する。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。これらの実施形態に対しては、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等が行われてよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。