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JP7526384B2 - 細胞培養基材 - Google Patents
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JP7526384B2 - 細胞培養基材 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞培養基材に関する。
医薬品の生産や、遺伝子治療、再生医療、免疫療法等の分野において、細胞や組織を効率よく大量に培養することが求められている。細胞等の大量培養技術として、マイクロキャリア培養法が知られている。マイクロキャリア培養法は、培養容器内に、細胞、培養液、および細胞の接着足場となるマイクロキャリアを導入し、培養液を間欠的に攪拌して細胞とマイクロキャリアを浮遊させ、浮遊した細胞が下降しながらマイクロキャリアに接触することにより、マイクロキャリアの表面に接着して増殖する方法である(例えば、特許文献1参照)。マイクロキャリアは、体積比に対し、非常に大きい接着および増殖表面積を提供することが可能であり、細胞の大量培養には有利である。
バクテリアセルロース(以下、「BC」と称する場合がある)は、高い生体適合性や、生分解性などの特性を有することから、様々な用途への応用が期待されている。
これまでに、チューブ状のBCを作製する方法、球状のBCを作製する方法、および中空球状のBCを製造する方法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。また、特許文献3には、ポリガラクツロン酸化合物を含む基質と、ポリガラクツロン酸化合物の表面にある接着性ポリマーとを含むことを特徴とする細胞培養物品が開示されている。しかしながら、BC粒子の製造方法については全く知られておらず、ましてBC粒子を細胞培養基材として用いることも全く知られていない。
国際公開第2010/138702号公報 特開2014-121314号公報 特表2016-523086号公報
バクテリアセルロース産生菌を培養すると培地表面にBC膜が形成されるが、細胞や組織を効率よく大量に培養するためには微小なBCを製造することが必要であり、バクテリアセルロース産生菌をウエルに適切に注入して培養する必要がある。しかしながら、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を単にウエルに注ぐだけでは、ウエルへの適切な注入は実現しない。
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を、減圧下および/または超音波下でウエルに注入することにより、またはウエル表面を親水性溶媒で湿らせた後、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエルに注入することにより、ウエル内にバクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を適切に注入できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明の一つの態様によれば、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を含む細胞培養基材が提供される。
本発明の別の態様によれば、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を含む細胞培養基材を含む培養液が提供される。
本発明の別の態様によれば、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を含む細胞培養基材または当該細胞培養基材を含む培養キットが提供される。
本発明の別の態様によれば、
バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を、減圧下および/または超音波下でウエルに注入する工程、
ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程、および
培養後に得られたバクテリアセルロースをフィルターで濾過する工程
を含む、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子の製造方法が提供される。
本発明の別の態様によれば、
ウエル表面を親水性溶媒で湿らせた後、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエルに注入する工程、
ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程、および
培養後に得られたバクテリアセルロースをフィルターで濾過する工程
を含む、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子の製造方法が提供される。
本発明の上記の態様においては、親水性溶媒としてはアルコール、ケトンが挙げられ、より望ましくは、エタノールおよび/またはイソプロピルアルコールが用いられる。
本発明の上記の態様においては、ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程が、ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌に、更にシリコンオイルまたは流動パラフィンを積層して培養する工程であることが好ましい。
本発明の上記の態様においては、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子が細胞培養基材であることが好ましい。
本発明の別の態様によれば、
培養容器に、細胞、培養液、および1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を導入する工程、
前記細胞と前記粒子とを接触させ、前記粒子の表面に前記細胞を接着させる工程、および
前記粒子の表面に前記細胞を接着させたまま、前記粒子の表面に接着した前記細胞を増殖させる工程
を含む、細胞培養方法が提供される。
本発明の上記の態様においては、前記粒子の表面に接着した前記細胞の増殖後、セルラーゼを前記培養液に加えて前記粒子を加水分解する工程を更に含むことが好ましい。
本発明の製造方法により、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液のウエルへの適切な注入を実現することができ、1mm以下のBCの粒子を製造することができる点で有利である。
図1は、減圧法により菌体懸濁液をウエル内へ注入して、シリコンオイルをマルチウエルプレートのウエルに積層して2日間培養して作製したBCゲル粒子の画像を示す。 図2Aは、セルラーゼによるBCゲル粒子(シリコンオイル培養品)の分解前の細胞(7日間培養後)のカルセイン蛍光染色像を示す。図2Bは、セルラーゼによるBCゲル粒子(シリコンオイル培養品)の分解後の細胞のカルセイン蛍光染色像を示す。図2B中の細胞生存率は92%である。
<細胞培養基材>
本発明の一つの態様によれば、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を含む細胞培養基材が提供される。本発明の細胞培養基材は、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を含むものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、700μm以下のバクテリアセルロースの粒子を含むものであり、より好ましくは、300μm以下のバクテリアセルロースの粒子を含むものである。また、本発明の細胞培養基材は、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を含むものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは50μm以上の粒子を含むものであり、より好ましくは、100μm以上のバクテリアセルロースの粒子を含むものである。また、バクテリアセルロースの粒子の形状は、形状の中の最長が1mm以下であれば当該粒子の形状は特に限定されるものではないが、例えば、球状、円錐状、円盤状等のどのような形状であってもよい。本明細書において、円錐状とは、平面上の円(内部を含む)の全ての点と、その平面上に無い一点とを結ぶ線分によってできる立体のみならず、長方形をその一辺のまわりに回転させて得られる円柱の形態も含み、円柱の片方の円と、別の片方の円とが異なる面積を有する立体(以下、「バケツ状」(台形形状)ともいう)も含む。バクテリアセルロースの粒子の形状は、好ましくは円錐状であり、より好ましくはバケツ状である。また、バクテリアセルロースの粒子は、ゲル状(バクテリアセルロースのゲル粒子)であることが好ましい。さらに、バクテリアセルロースとは、微生物が生産することができるセルロースをいい、後述のバクテリアセルロース産生菌により生産できるものをいう。本発明の好ましい態様によれば、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子である細胞培養基材が提供される。
細胞培養基材とは、種々の細胞を培養するための基材をいい、例えば、当該基材の表面に細胞等を接着させたまま、当該基材の表面に接着した細胞等を培養して増殖させることができる。本発明の細胞培養基材は、バクテリアセルロースの粒子以外のものも含まれてよく、本発明の細胞培養基材に含まれてよいものとして、例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ゼラチン、ビトロネクチン、ラミニン、RGD配列を含むペプチドなどが挙げられる。また、細胞培養基材は、動物細胞および植物細胞等のいずれの細胞の培養基材であってもよいが、好ましくは動物細胞の培養基材である。
本発明の好ましい態様によれば、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を含む細胞培養基材を含む培養液が提供される。ここで、当該培養液は、細胞を培養することができればどのようなものが含まれてもよいが、例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩、およびグルコースなどの炭素源に加えて、血清などを更に添加したものを用いてもよい。
本発明の別の好ましい態様によれば、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を含む細胞培養基材または当該細胞培養基材を含む培養液が含まれる培養キットが提供される。ここで、当該培養キットは、細胞培養基材や培養液以外にも、培養容器、希釈用緩衝液、使用説明書などが含まれていてもよい。
<バクテリアセルロースの粒子の製造方法(I)>
本発明の別の態様によれば、
バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を、減圧下および/または超音波下でウエルに注入する工程、
ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程、および
培養後に得られたバクテリアセルロースをフィルターで濾過する工程
を含む、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子の製造方法が提供される。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(I)は、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を、減圧下および/または超音波下でウエルに注入する工程を含む。
バクテリアセルロース産生菌としては、特に限定されるものではないが、Acetobacter属、Agrobacterium属、Rhizobium属、Sarcina属、Pseudomonas属、Achromobacter属、Alcaligenes属、Aerobacter属、Azotobacter属、Gluconacetobacter属などがある。これらのうち、入手および取り扱いのしやすさから、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アセトバクター・パスツリアヌス(A.pasteurianus)、グルコナセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)等の酢酸菌が挙げられ、これらの中でも、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)が好ましく、Acetobacter xylinum(NBRC13693)が特に好ましい。
本発明の製造方法において用いるバクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液は、常法により培養して調製することができるが、例えば、入手したバクテリアセルロース産生菌を、寒天培地上で培養してコロニー(菌塊)を形成させ、形成したコロニーを液体培地に接種して液体培養(振とう培養)を行い、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を調製してもよい。寒天培地や液体培地の組成は、バクテリアセルロース産生菌を培養することができればどのような組成の培地であってもよいが、例えば、ポリペプトン、酵母エキス、ブドウ糖、硫酸マグネシウム、エタノール等が含まれる。
ウエルとは、区画された空間であればどのような形状であってもよいが、当該空間の縦、横、および高さがいずれも1mm以下であれば特に限定されるものではなく、好ましくは、縦が50~700μmであり、横が50~700μmであり、高さが50~700μmである。ウエルがマルチウエルプレート内のウエルである場合、例えば、当該ウエルの開口径は1mm以下であり、好ましくは50~700μmである。
バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を減圧下でウエルに注入するとは、例えば、マルチウエルプレート上に一定量のバクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を滴下して、その後にウエル内を減圧することにより、当該菌体懸濁液をウエルに注入することをいう。減圧は、例えば、真空デシケーターなどにより行うことができる。ウエル内に菌体懸濁液を注入することができ、細胞へのダメージを抑えることができれば減圧の程度は限定されないが、例えば、0.05~0.001MPa、好ましくは0.03~0.005MPaまでウエル内を減圧して、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエル内に注入してもよい。本発明の製造方法の一つの好ましい態様によれば、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を減圧下でのウエルへの注入した後、注入されたバクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液に対して、後述する超音波を更に行うことが好ましい。バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液に対して、減圧し、かつ超音波を適用することにより、より確実にバクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエル内に適切に注入することができる。
バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を超音波下でウエルに注入するとは、例えば、マルチウエルプレート上に一定量のバクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を注入して、その後にウエル内への超音波を適用して、当該菌体懸濁液をウエルに注入することをいう。超音波の適用は、例えば、超音波発生機、超音波洗浄機、超音波ホモジナイザーなどにより行うことができる。ウエル内に菌体懸濁液を注入することができ、細胞へのダメージを抑えることができれば超音波の程度は限定されるものではないが、例えば、発信周波数28~1000KHz、好ましくは発信周波数35~50KHzで行って、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエル内に注入してもよい。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(I)は、ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程を含む。ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌の培養は、菌体懸濁液にシリコンオイル等を積層せずに行ってもよいし、ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌に、菌液の乾燥を防止するために酸素透過性のシリコンオイルまたは流動パラフィンを更に積層してもよい。または、ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌に、更に植物油(好ましくは、オリーブオイル)を積層してもよい。シリコンオイル等の積層量は各区画当たり、0.05~0.5mLであってもよい。また、ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌の培養条件は、特に限定されるものではないが、25~37℃で、1~14日間静置して培養することができる。ここで用いられるバクテリアセルロース作製培地の組成は、バクテリアセルロースが作製できればどのような組成の培地であってもよいが、例えば、ポリペプトン、酵母エキス、ブドウ糖、硫酸マグネシウム、エタノール等が含まれる。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(I)は、培養後に得られたバクテリアセルロースをフィルターで濾過する工程を含む。バクテリアセルロースは、フィルターで濾過することにより回収することができる。用いられるフィルターは、培養後に得られたバクテリアセルロースを濾過して回収することができればどのようなものを用いてもよいが、好ましくはフィルターの孔径が50μm以下であり、より好ましくはフィルターの孔径が30μm以下である。また、当該フィルターの材質はどのようなものを用いてもよく、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、セルロースアセテート、セルロースナイトレート等のセルロース誘導体などが挙げられるが、好ましくはポリカーボネートである。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(I)において製造されたバクテリアセルロースの粒子の形状は、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を注入するウエルに形状に依拠するものであり、どのような形状のものであっても製造することができ、例えば、球状、円錐状、円盤状等のどのような形状であってもよい。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(I)の好ましい態様によれば、製造された1mm以下のバクテリアセルロースの粒子は細胞培養基材である。ここで、細胞培養基材とは上記の<細胞培養基材>と同じであってもよい。
<バクテリアセルロースの粒子の製造方法(II)>
本発明の製造方法の別の態様によれば、
ウエル表面を親水性溶媒で湿らせた後、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエルに注入する工程、
ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程、および
培養後に得られたバクテリアセルロースをフィルターで濾過する工程
を含む、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子の製造方法が提供される。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(II)におけるバクテリアセルロース産生菌、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液、およびウエル等は、<バクテリアセルロースの粒子の製造方法I>と同じであってもよい。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(II)は、ウエル表面を親水性溶媒で湿らせた後、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエルに注入する工程を含む。本発明の製造方法において用いられる親水性溶媒は、表面張力が低い溶媒であれば特に限定されるものではないが、アルコール、ケトンが挙げられ、より望ましくは、エタノールおよび/またはイソプロピルアルコールが用いられる。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(II)において、ウエル表面を親水性溶媒で湿らせるとは、ウエル表面を親水性溶媒で湿らせることができればどのような方法であってもよいが、例えば、上記の親水性溶媒(好ましくは、エタノール、イソプロピルアルコール)をマイクロピペットなどでウエル内に注入および吸引を繰り返すことにより、ウエル表面を親水性溶媒で湿らせることが可能である。また、ウエル表面を親水性溶媒で湿らせた後、すぐにバクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエルに注入してもよいが、当該菌体懸濁液をウエルに注入する前に、培地等をウエル内へ注入および吸引を繰り返して、親水性溶媒をできるだけ除いた後に菌体懸濁液をウエルに注入することが好ましい。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(II)のこれ以降の工程、例えば、「本発明の製造方法に含まれるウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程」や、「培養後に得られたバクテリアセルロースをフィルターで濾過する工程」については、<バクテリアセルロースの粒子の製造方法I>と同じ工程であってもよい。
本発明のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(II)の好ましい態様によれば、製造された1mm以下のバクテリアセルロースの粒子が細胞培養基材である。ここで、細胞培養基材とは上記の<細胞培養基材>と同じであってもよい。
<細胞培養方法>
本発明の別の態様によれば、
培養容器に、細胞、培養液、および1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を導入する工程、
前記細胞と前記粒子とを接触させ、前記粒子の表面に前記細胞を接着させる工程、および
前記粒子の表面に前記細胞を接着させたまま、前記粒子の表面に接着した前記細胞を増殖させる工程
を含む、細胞培養方法が提供される。
本発明の細胞培養方法の好ましい態様によれば、
培養容器に、細胞、培養液、および1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を導入する工程、
前記細胞と前記粒子とを接触させ、前記粒子の表面に前記細胞を接着させる工程、
前記粒子の表面に前記細胞を接着させたまま、前記粒子の表面に接着した前記細胞を増殖させる工程、および
前記粒子の表面に接着した前記細胞の増殖後、セルラーゼを培養液に加えて前記粒子を加水分解する工程
を含む、細胞培養方法が提供される。
本発明の細胞培養方法は、培養容器に、細胞、培養液、および1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を導入する工程を含む。本発明の細胞培養方法に用いられる培養容器は、細胞、培養液、および1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を導入して培養することができれば、どのような容器であってもよいが、例えば、容器本体と、撹拌手段とにより主に構成されていてもよい。培養容器は、さらに細胞の培養に必要とされる、ガス導入機構、温度調整機構、センサー機構等の種々の構成を備えるものであってもよい。
本発明の細胞培養方法に用いられる細胞は、動物細胞および植物細胞等のいずれの細胞であってもよいが、好ましくは動物細胞である。培養容器中の培養液に播種される細胞の数は、培養容器の容量により異なるが、例えば、培養容器当たり1×10~1×10個程度を播種し、好ましくは培養容器当たり1×10~1×10個程度を播種して導入される。
本発明の細胞培養方法に用いられる培養液は、播種された細胞を培養することができればどのようなものであってもよいが、例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩、およびグルコースなどの炭素源に加えて、血清などを更に添加してもよい。
本発明の細胞培養方法に用いられる1mm以下のバクテリアセルロースの粒子は、上記のバクテリアセルロースの粒子の製造方法(I)および(II)により製造されたバクテリアセルロースの粒子を用いてもよい。
本発明の細胞培養方法は、細胞と粒子とを接触させ、粒子の表面に細胞を接着させる工程を含む。当該粒子は、その径が小さいほど体積比表面積が大きくなり、培養効率が高まることから、700μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。一方、細胞が粒子に接着するためには、ある程度の大きさが必要であり、当該粒子の大きさは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、播種する細胞数や、バクテリアセルロースの粒子の数を増加させても、当該粒子と細胞との接着性を向上させることができる。
本発明の細胞培養方法は、粒子の表面に細胞を接着させたまま、粒子の表面に接着した細胞を増殖させる工程を含む。当該工程は、例えば、37℃で、3~10日間、静置培養して、細胞を増殖させることができる。
本発明の細胞培養方法は、粒子の表面に接着した細胞の増殖後、セルラーゼを培養液に加えて粒子を加水分解する工程を更に含むことが好ましい。ここで、セルラーゼは、セルロースのβ1→4グルコシド結合を加水分解する酵素であれば特に限定されるものではないが、pHが中性付近においてセルラーゼ活性を示すものであることが好ましい。セルラーゼにより、全てのBC粒子が加水分解されても、一部のBC粒子が加水分解されてもよいが、全てのBC粒子が加水分解されることが好ましい。粒子の加水分解条件は、細胞へのダメージを抑えつつ粒子が加水分解できればどのような条件であってもよいが、例えば、温度が35~38℃、pHが6.5~7.5、反応時間が5~40分である。本発明の細胞培養方法において、セルラーゼを培養液に加えてBC粒子を加水分解することにより、増殖した細胞を単離することができる。単離された細胞は、それを原料として様々な疾病の予防や治療などに用いることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
試験例1:バクテリアセルロース(BC)の作製
[1]菌体懸濁液の調製
前培養:
バクテリアセルロース産生菌であるAcetobacter xylinum(NBRC13693)(正式学名:Komagataeibacter xylinus)をNBRC(製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門)から入手した。コロニー(菌塊)を形成させるため、下記の表1の組成の寒天培地上で当該産生菌を30℃で2~7日間培養した。菌体の大量培養のため、得られたコロニーを下記の表1の組成の110mLの液体培地に接種して以下の条件で液体培養(振とう培養)を行った。液体培養によって得られた菌液を下記の減圧法またはエタノール湿潤法により本培養を行った。
液体培養条件:
旋回:160rpm
培養温度:30℃
培養時間:72時間
初発OD660(660nmにおける濁度)=0.01→約0.4
Figure 0007526384000001
[2-1]本培養(1)(BCゲル粒子の作製)(減圧法):
上記の液体培養により得られた菌液を回収して、遠心分離機にて8500rpmで15分間遠心分離を行った。遠心分離により回収した菌体をBC作製培地に懸濁した。開口径700μmのマルチウエルプレートを真空デシケーターVS型(アズワン社製)により、3分間減圧(0.01MPa)し、さらに超音波洗浄機(アズワン社製)により、3分間超音波(出力180W、発信周波数40KHz)を適用して、菌体懸濁液をマルチウエル中へ注入した(コーナー部の余分な液を吸引した)。前記マルチウエルプレートのウエルにシリコンオイルを0.5mL/区画で積層した場合(シリコンオイル培養品)と、積層しない場合(ダイレクト培養品)とに分けて、30℃で所定日数(2日、4日、および6日間)、静置培養を行った(減圧操作及び超音波照射により、菌体が死滅しないことを確認した)。マルチウエルプレートのウエルに積層する液体として、シリコンオイル以外にも、流動性パラフィンおよび植物油でも行った。シリコンオイル、流動性パラフィン、および植物油の中では、シリコンオイルおよび流動性パラフィンがより堅牢(rigid)なBCゲル粒子を作製することができた(図1参照)。
なお、菌体懸濁液のマルチウエルへの注入を、(a)減圧のみの場合、(b)超音波のみの場合、(c)減圧も超音波もいずれも行わない場合でのウエル内の気泡の程度を測定した。その結果、減圧および超音波を行った場合に比べて、減圧のみの場合にはウエル中に気泡が少し残り、超音波のみの場合にはウエル中に気泡がさらに残り、減圧も超音波も行わない場合にはウエル中に気泡だらけとなった。ウエル中が気泡だらけとなる場合には、BCゲル粒子の製造効率が著しく低下する。
[2-2]本培養(2)(BCゲル粒子の作製)(エタノール湿潤法):
(1)2mLのエタノールを開口径700μmのマルチウエルプレート中の各区画に注入して吸引を行い、ウエルの菌体懸濁液との接触表面をエタノールで湿らせた。この操作を2回繰り返した。
(2)(1)の後、2mLの下記の表2の組成のBC作製培地を(1)と同様にして、開口径700μmのマルチウエルプレート中の各区画に注入して吸引を行った。この操作を2回繰り返した。
(3)上記の減圧法と同様に、液体培養により得られた菌液を回収して、遠心分離機にて8500rpmで15分間遠心分離を行い、遠心分離により回収した菌体を下記の表2の組成のBC作製培地に懸濁し、菌体懸濁液を得た。
(4)(1)および(2)の操作を経たマルチウエルプレートへ、(3)の操作により得られた2mLの菌体懸濁液を(1)および(2)と同様にして、開口径700μmのマルチウエルプレート中の各区画に注入して吸引を行った。この操作を2回繰り返し、その後菌体懸濁液を注入した。
(5)菌体懸濁液をマルチウエル中へ注入後、前記マルチウエルプレートのウエルにシリコンオイルを0.5mL/区画で積層した場合(シリコンオイル培養品)と、積層しない場合(ダイレクト培養品)とに分けて、30℃で所定日数(2日、4日、および6日間)、静置培養を行った(エタノール湿潤法により、菌体が死滅しないことを確認した)。マルチウエルプレートのウエルに積層する液体として、シリコンオイル以外にも、流動性パラフィンおよび植物油でも行った。シリコンオイル、流動性パラフィン、および植物油の中では、シリコンオイルおよび流動性パラフィンがより堅牢なBCゲル粒子を作製することができた。
減圧法の方が、エタノール湿潤法に比べて、BCゲル粒子の製造効率が高いことが分かった(データ示さず)。これは、エタノール湿潤法の場合には、直前に操作した液体が残り菌体懸濁液のウエルに注入した際の菌体初期濃度が低下することが原因と考えられる。
Figure 0007526384000002
[3]BCゲル粒子の回収および精製:
上記の本培養(1)および本培養(2)における、所定日数(2日、4日、および6日間)の静置培養後に、3mLのイソプロピルアルコールをマルチウエルプレートの各区画に注入して吸引した(シリコンオイルを積層した場合のみ)。その後、5mLの無菌水をマルチウエルプレートの各区画に注入して、3回のペペッティングを行い、またはアスピレータで吸引した。その後、メンブランフィルター(ADVANTEC社製)(ポリカーボネート製、孔径:8μm)で濾過した。メンブランフィルターによる濾過後、10倍量の水で1日間浸漬した。浸漬後、同様にメンブランフィルターで濾過し、リン酸緩衝液(PBS)(pH6.88)に懸濁して、その懸濁液についてオートクレーブ(121℃、15分間)を行った。
回収および精製されたBCゲル粒子は、減圧法またはエタノール湿潤法のいずれの培養方法でも、静置培養の日数が長いほどBCゲル粒子はより堅牢となった。培養初期から、ダイレクト培養品に比べて、シリコンオイル培養品の方がより堅牢となった。
静置培養2日後のダイレクト培養品は一部に円盤状の粒子が見られ、静置培養4日以降ほぼバケツ状のBCゲル粒子であった。シリコンオイル培養品では、静置培養2日以降でほぼすべてバケツ状のBCゲル粒子であった。このバケツ状(台形形状)の上部の直径は、約300μm程度であった。
試験例2:BCゲル粒子を用いたh-MSCの培養
[1]BCゲル粒子上でのh-MSCの培養
上記で得られたPBSで懸濁したダイレクト培養品およびシリコンオイル培養品(静置培養4日目のBCゲル粒子)を予めh-MSC growth培地(Lonza社製)に3日間浸漬した。その後、ヒト間葉系細胞(h-MSC)(Lonza社製)を2.0×10細胞/ウエルになるように播種した。ヒト間葉系細胞の播種後、37℃で、7日間静置培養した。
培養後、BCゲル粒子のダイレクト培養品およびシリコンオイル培養品のいずれにおいても細胞が接着し、その後増殖することを確認した。また、増殖の程度は、ダイレクト培養品とシリコンオイル培養品とではほとんど差がないことが確認された。
なお、細胞播種濃度を2.0×10細胞/ウエルから2.0×10細胞/ウエルに変更して、その他は同じ条件で行ったところ、BCゲル粒子とヒト間葉系細胞の接着性が劇的に向上することが分かった。
[2]BCゲル粒子のセルラーゼ分解およびh-MSCの生存率
7日間静置培養後のヒト間葉系細胞が増殖したBCゲル粒子(7日後)を含む培養液1mLに、セルラーゼの原液を1mL加え、さらにPBSを3mL加えて、37℃、pH6.5で往復振とう(160rpm)培養を行った。いずれのBCゲル粒子も20分間で分解した。
セルラーゼによる分解前後の細胞をカルセイン蛍光により染色して、それぞれの細胞の生存率を測定した。生存率の測定は、3視野の平均値を用いた。
セルラーゼによる分解前は、静置培養7日目の時点において、死細胞はほとんど見られなかった。
セルラーゼによる分解後は、ダイレクト培養品における生存率は95%であり、シリコンオイル培養品における生存率は92%であり(図2参照)、セルラーゼ添加によるBCゲル粒子の分解前後において、生存率の低下は5~10%であり、実用上の問題は見られなかった。また、ダイレクト培養品と、シリコンオイル培養品とで、静置培養、セルラーゼによる分解、細胞の生存率の観点でほとんど違いがないことが分かった。

Claims (6)

  1. バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液を、減圧下および/または超音波下でウエルに注入する工程、
    ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程、および
    培養後に得られたバクテリアセルロースをフィルターで濾過する工程
    を含む、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子の製造方法。
  2. ウエル表面を親水性溶媒で湿らせた後、バクテリアセルロース産生菌の菌体懸濁液をウエルに注入する工程、
    ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程、および
    培養後に得られたバクテリアセルロースをフィルターで濾過する工程
    を含む、1mm以下のバクテリアセルロースの粒子の製造方法。
  3. 親水性溶媒がエタノールおよび/またはイソプロピルアルコールである、請求項に記載の粒子の製造方法。
  4. ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌を培養する工程が、ウエルに注入したバクテリアセルロース産生菌に、更にシリコンオイルまたは流動パラフィンを積層して培養する工程である、請求項のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
  5. 1mm以下のバクテリアセルロースの粒子が細胞培養基材である、請求項のいずれか一項に記載の粒子の製造方法。
  6. 培養容器に、細胞、培養液、および1mm以下のバクテリアセルロースの粒子を導入する工程、
    前記細胞と前記粒子とを接触させ、前記粒子の表面に前記細胞を接着させる工程、
    前記粒子の表面に前記細胞を接着させたまま、前記粒子の表面に接着した前記細胞を増殖させる工程、および
    前記粒子の表面に接着した前記細胞の増殖後、セルラーゼを前記培養液に加えて前記粒子を加水分解する工程
    を含む、細胞培養方法。
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