以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
<車両の構成>
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100が搭載される車両1の構成について説明する。
図1は、車両1の概略構成を示す模式図である。図1では、車両1の前進方向を前方向とし、前進方向に対して逆側の後退方向を後方向とし、前方向を向いた状態における左側および右側をそれぞれ左方向および右方向として、車両1が示されている。
車両1は、駆動源として、駆動用モータを備え、駆動用モータから出力されるトルクを用いて走行する電気車両である。
なお、以下で説明する車両1は、あくまでも本発明に係る制御装置が搭載される車両の一例であり、後述されるように、本発明に係る制御装置が搭載される車両の構成は車両1の構成に特に限定されない。
図1に示されるように、車両1は、前輪11a、11bと、後輪11c、11dと、フロントディファレンシャル装置13fと、リヤディファレンシャル装置13rと、前輪駆動用モータ15fと、後輪駆動用モータ15rと、インバータ17f、17rと、バッテリ19と、前輪モータ回転数センサ21fと、後輪モータ回転数センサ21rと、制御装置100とを備える。
以下、前輪11a、前輪11b、後輪11cおよび後輪11dを区別しない場合には、これらを単に車輪11とも呼ぶ。また、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rを区別しない場合には、これらを単に駆動用モータ15とも呼ぶ。また、インバータ17fおよびインバータ17rを区別しない場合には、これらを単にインバータ17とも呼ぶ。また、前輪モータ回転数センサ21fおよび後輪モータ回転数センサ21rを区別しない場合には、これらを単にモータ回転数センサ21とも呼ぶ。
前輪駆動用モータ15fは、前輪11a、11bを駆動するトルクを出力する。なお、前輪11aは左前輪に相当し、前輪11bは右前輪に相当する。
前輪駆動用モータ15fは、バッテリ19から供給される電力を用いて駆動される。前輪駆動用モータ15fは、フロントディファレンシャル装置13fと接続されている。フロントディファレンシャル装置13fは、前輪11a、11bと、駆動軸を介してそれぞれ連結されている。前輪駆動用モータ15fから出力されたトルクは、フロントディファレンシャル装置13fに伝達された後、フロントディファレンシャル装置13fによって、前輪11a、11bへ分配して伝達される。
前輪駆動用モータ15fは、例えば、多相交流式のモータであり、インバータ17fを介してバッテリ19と接続されている。バッテリ19から供給される直流電力は、インバータ17fによって交流電力に変換され、前輪駆動用モータ15fへ供給される。
前輪駆動用モータ15fは、前輪11a、11bの駆動トルクを出力する機能の他に、前輪11a、11bの運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能を有してもよい。前輪駆動用モータ15fが発電機として機能する場合、前輪駆動用モータ15fにより発電が行われるとともに、回生制動による制動力が車両1に付与される。前輪駆動用モータ15fにより発電された交流電力は、インバータ17fによって直流電力に変換され、バッテリ19へ供給される。それにより、バッテリ19が充電される。
後輪駆動用モータ15rは、後輪11c、11dを駆動するトルクを出力する。なお、後輪11cは左後輪に相当し、後輪11dは右後輪に相当する。
後輪駆動用モータ15rは、バッテリ19から供給される電力を用いて駆動される。後輪駆動用モータ15rは、リヤディファレンシャル装置13rと接続されている。リヤディファレンシャル装置13rは、後輪11c、11dと、駆動軸を介してそれぞれ連結されている。後輪駆動用モータ15rから出力されたトルクは、リヤディファレンシャル装置13rに伝達された後、リヤディファレンシャル装置13rによって、後輪11c、11dへ分配して伝達される。
後輪駆動用モータ15rは、例えば、多相交流式のモータであり、インバータ17rを介してバッテリ19と接続されている。バッテリ19から供給される直流電力は、インバータ17rによって交流電力に変換され、後輪駆動用モータ15rへ供給される。
後輪駆動用モータ15rは、後輪11c、11dの駆動トルクを出力する機能の他に、後輪11c、11dの運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能を有してもよい。後輪駆動用モータ15rが発電機として機能する場合、後輪駆動用モータ15rにより発電が行われるとともに、回生制動による制動力が車両1に付与される。後輪駆動用モータ15rにより発電された交流電力は、インバータ17rによって直流電力に変換され、バッテリ19へ供給される。それにより、バッテリ19が充電される。
前輪モータ回転数センサ21fは、前輪駆動用モータ15fの回転数を検出し、検出結果を出力する。前輪モータ回転数センサ21fにより検出される前輪駆動用モータ15fの回転数は、前輪11a、11bの車輪速を示す情報に相当し得る。
後輪モータ回転数センサ21rは、後輪駆動用モータ15rの回転数を検出し、検出結果を出力する。後輪モータ回転数センサ21rにより検出される後輪駆動用モータ15rの回転数は、後輪11c、11dの車輪速を示す情報に相当し得る。
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
制御装置100は、車両1に搭載される各装置と通信を行う。例えば、制御装置100は、インバータ17f、インバータ17r、前輪モータ回転数センサ21fおよび後輪モータ回転数センサ21r等と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。制御装置100が有する機能が複数の制御装置により分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
図2は、制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
例えば、図2に示されるように、制御装置100は、取得部110と、判定部120と、制御部130とを有する。
取得部110は、判定部120および制御部130が行う処理において用いられる各種情報を取得し、判定部120および制御部130へ出力する。例えば、取得部110は、前輪モータ回転数センサ21fおよび後輪モータ回転数センサ21rから情報を取得する。
判定部120は、各種判定を行う。判定部120による判定結果は、制御部130が行う処理に利用される。判定部120は、例えば、スリップ判定部121と、段差乗り越え判定部122とを含む。
スリップ判定部121は、車輪11のスリップの発生の有無を判定するスリップ判定を行う。スリップは、車輪11のスリップ率が過度に大きくなり、当該車輪11が空転する現象を意味する。スリップ率は、車輪速と車速との差を車速で除算して得られる値である。スリップは、例えば、凍結している走行路等の低μ路に車両1が進入した際に生じ得る。
段差乗り越え判定部122は、車両1が段差の乗り越え中であるか否かを判定する段差乗り越え判定を行う。段差としては、例えば、路面上に設けられたスピードバンプ等の帯状の突出部分、または、車道と歩道との継ぎ目等の高低差のある路面どうしの継ぎ目が挙げられる。
制御部130は、車両1内の各装置の動作を制御することによって、車両1の走行を制御する。特に、制御部130は、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの動作を制御する。
具体的には、制御部130は、インバータ17fのスイッチング素子の動作を制御することによって、バッテリ19と前輪駆動用モータ15fとの間の電力の供給を制御する。それにより、前輪駆動用モータ15fにより出力される前輪11a、11bのトルクが制御される。また、制御部130は、インバータ17rのスイッチング素子の動作を制御することによって、バッテリ19と後輪駆動用モータ15rとの間の電力の供給を制御する。それにより、後輪駆動用モータ15rにより出力される後輪11c、11dのトルクが制御される。上記のように、制御部130は、前輪11a、11bのトルクと後輪11c、11dのトルクとを個別に制御することができる。
制御部130は、車両1の駆動モードを、前輪駆動モードと、四輪駆動モードとの間で切り替え可能である。前輪駆動モードは、後輪11c、11dが駆動されずに前輪11a、11bが駆動される駆動モードである。四輪駆動モードは、前輪11a、11bおよび後輪11c、11dが駆動される駆動モードである。制御部130は、例えば、ドライバによる入力操作に応じて駆動モードを切り替えてもよい。また、制御部130は、例えば、車両1の走行状態に応じて駆動モードを切り替えてもよい。なお、制御部130は、前輪駆動モードに替えて、または、前輪駆動モードに加えて、前輪11a、11bが駆動されずに後輪11c、11dが駆動される後輪駆動モードを実行可能であってもよい。
ここで、制御部130は、車輪11のスリップを抑制するためのスリップ抑制制御を実行可能である。制御部130は、例えば、スリップ抑制制御として、車両1のトルクを要求トルクに対して低下させるトルクダウン制御を実行可能である。
本実施形態では、制御部130は、車両1が段差の乗り越え中でないと判定される場合に、スリップ判定部121による判定結果に応じてスリップ抑制制御を行い、車両1が段差の乗り越え中であると判定される場合には、スリップ抑制制御を行わない。それにより、車輪11のスリップの発生の有無に応じてスリップ抑制制御を適切に実行することが可能となる。なお、制御装置100によるスリップ抑制制御に関する処理の詳細については、後述する。
<制御装置の動作>
続いて、図3~図10を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置100の動作について説明する。
図3は、制御装置100が行う全体的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3に示される制御フローは、具体的には、スリップ抑制制御が実行されていない場合に、設定時間間隔で繰り返し開始される。
図3に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS101において、スリップ判定部121は、スリップ判定を実行する。
スリップ判定部121は、スリップ判定において、車輪11のスリップの発生の有無を駆動用モータ15の回転数の時間変化量に基づいて判定する。なお、本明細書では、駆動用モータ15の回転数を、モータ回転数とも呼ぶ。モータ回転数の時間変化量は、モータ回転数の単位時間あたりの変化量を意味する。
ここで、車輪11がスリップすると、車輪11の車輪速が急激に上昇するので、当該車輪11と接続される駆動用モータ15の回転数の大きな時間変化が発生する。そこで、スリップ判定部121は、例えば、駆動用モータ15の回転数の時間変化量が時間変化量閾値以上となる状態が継続時間閾値以上継続した場合、車輪11のスリップが発生したと判定する。
スリップ判定部121は、具体的には、前輪11a、11bに対するスリップ判定と、後輪11c、11dに対するスリップ判定とを個別に実行する。つまり、スリップ判定部121は、前輪駆動用モータ15fの回転数の時間変化量が時間変化量閾値以上となる状態が継続時間閾値以上継続した場合、前輪11a、11bのスリップが発生したと判定する。また、スリップ判定部121は、後輪駆動用モータ15rの回転数の時間変化量が時間変化量閾値以上となる状態が継続時間閾値以上継続した場合、後輪11c、11dのスリップが発生したと判定する。
図4は、車輪11のスリップが発生しない場合の発進時におけるモータ回転数およびモータ回転数の時間変化量の推移の一例を示す図である。駆動用モータ15の駆動を開始する際、駆動用モータ15のねじれ、または、バックラッシュ等に起因して、図4に示されるように、モータ回転数の時間変化量が短時間だけ急激に上昇する。つまり、モータ回転数の大きな時間変化が短時間だけ生じる。図4の例では、時刻t1から時刻t2の間、モータ回転数の時間変化量が時間変化量閾値以上となる状態が継続している。しかしながら、この状態の継続時間は継続時間閾値よりも短いので、スリップ判定部121は、車輪11のスリップが発生していないと判定する。
図5は、車輪11のスリップが発生する場合の発進時におけるモータ回転数およびモータ回転数の時間変化量の推移の一例を示す図である。上述したように、車輪11がスリップすると、車輪11の車輪速が急激に上昇する。ゆえに、図5に示されるように、モータ回転数の時間変化量も急激に上昇する。つまり、モータ回転数の大きな時間変化が発生する。図5の例では、時刻t3以降において、モータ回転数の時間変化量が時間変化量閾値以上となる状態が継続している。この状態の継続時間は継続時間閾値以上となるので、スリップ判定部121は、車輪11のスリップが発生していると判定する。
図6は、時間変化量閾値と継続時間閾値との関係の一例を示す模式図である。図6に示されるように、時間変化量閾値が大きいほど、継続時間閾値は短くなる。スリップ判定部121によるスリップ判定で用いられる時間変化量閾値および継続時間閾値は、例えば、図6に示される関係が満たされるような所定の値に予め設定されている。それにより、図4の例のように車輪11のスリップが発生していない場合には、スリップが発生していると誤って判定されることが抑制されつつ、図5の例のように車輪11のスリップが発生した場合には、スリップが発生していると適切に判定される。
なお、スリップ判定部121は、スリップ判定で用いられる時間変化量閾値および継続時間閾値を車速等に応じて変化させてもよい。その場合、スリップ判定部121は、時間変化量閾値および継続時間閾値を、図6に示される関係が満たされるように変化させる。また、その場合、スリップ判定部121は、モータ回転数の時間変化量が時間変化量閾値を超えた時点での継続時間閾値を用いて、スリップ判定を行う。
図7は、段差乗り越え時におけるモータ回転数およびモータ回転数の時間変化量の推移の一例を示す図である。図7の例では、時刻t4において、車両1が段差を乗り越え始め、モータ回転数の大きな時間変化が発生している。ゆえに、スリップ判定部121は、スリップ判定において、車輪11のスリップが発生していると誤って判定してしまうおそれがある。ここで、スリップ判定での誤判定を防ぐために、スリップが発生していると判定されにくくなるように、スリップ判定の判定条件を厳しくすることが考えられる。例えば、時間変化量閾値および継続時間閾値が図6に示される関係を満たす場合と比較して、継続時間閾値を大きくすることが考えられる。しかしながら、その結果、スリップが実際に発生している場合であっても、スリップが発生していないと判定され、スリップ抑制制御が実行されなくなってしまう状況が生じ得る。
そこで、上記の問題を解消し、車輪11のスリップの発生の有無に応じてスリップ抑制制御を適切に実行するために、図3中のステップS101の次に、ステップS102において、段差乗り越え判定部122は、段差乗り越え判定を実行する。
図8は、制御装置100が行う処理のうち、段差乗り越え判定の処理の流れの第1の例を示すフローチャートである。図8のフローチャートは、図3中のステップS102における処理の一例である。なお、図8のフローチャートは、具体的には、図3のフローチャートの前回の処理サイクルの段差乗り越え判定で車両1が段差乗り越え中でないと判定された場合に、今回の処理サイクルで行われる段差乗り越え判定の処理の一例である。
図8に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS201において、段差乗り越え判定部122は、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化が発生したか否かを判定する。なお、本明細書では、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化は、モータ回転数の時間変化量が所定変化量以上となるモータ回転数の時間変化を意味する。
上述したように、車両1が段差を乗り越える際には、モータ回転数の大きな時間変化が発生する。ステップS201の所定変化量は、車両1が段差を乗り越え中の可能性がある値に設定される。つまり、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化が発生している場合には、車両1が段差を乗り越え中である可能性があると判断できる。一方、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化が発生していない場合には、車両1が段差を乗り越え中である可能性がないと判断できる(ステップS204)。
ステップS201において、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化が発生したと判定された場合(ステップS201/YES)、段差乗り越え判定部122は、ステップS202に進む。一方、ステップS201において、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化が発生していないと判定された場合(ステップS201/NO)、段差乗り越え判定部122は、ステップS204に進み、車両1が段差の乗り越え中でないと判定し、図8に示される制御フローを終了する。
ステップS201でYESと判定された場合、ステップS202において、段差乗り越え判定部122は、モータ回転数の時間変化の方向が減速方向であるか否かを判定する。ステップS202の判定処理は、モータ回転数の大きな時間変化が、段差の乗り越えによるものであるのか、車輪11のスリップの発生によるものであるのかを判断するための処理である。
図7の例のように、モータ回転数の大きな時間変化が段差の乗り越えによるものである場合、モータ回転数の時間変化の方向が減速方向となる。つまり、モータ回転数の時間変化量が負の値となり、モータ回転数が減少する。ゆえに、モータ回転数の時間変化の方向が減速方向である場合、車両1が段差の乗り越え中であると判断できる。
一方、図5の例のように、モータ回転数の大きな時間変化が車輪11のスリップの発生によるものである場合、モータ回転数の時間変化の方向が加速方向となる。つまり、モータ回転数の時間変化量が正の値となり、モータ回転数が増加する。ゆえに、モータ回転数の時間変化の方向が減速方向でない場合、車両1が段差の乗り越え中ではなく、車輪11のスリップが発生していると判断できる。
ステップS202において、モータ回転数の時間変化の方向が減速方向であると判定された場合(ステップS202/YES)、段差乗り越え判定部122は、ステップS203に進み、車両1が段差の乗り越え中であると判定し、図8に示される制御フローを終了する。一方、ステップS202において、モータ回転数の時間変化の方向が減速方向でないと判定された場合(ステップS202/NO)、段差乗り越え判定部122は、ステップS204に進み、車両1が段差の乗り越え中でないと判定し、図8に示される制御フローを終了する。
図9は、制御装置100が行う処理のうち、段差乗り越え判定の処理の流れの第2の例を示すフローチャートである。図9のフローチャートは、図3中のステップS102における処理の一例である。なお、図9のフローチャートは、具体的には、図3のフローチャートの前回の処理サイクルの段差乗り越え判定で車両1が段差乗り越え中でないと判定された場合に、今回の処理サイクルで行われる段差乗り越え判定の処理の一例である。
図9に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS301において、段差乗り越え判定部122は、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化が発生したか否かを判定する。なお、ステップS301の所定変化量は、図8中のステップS201の所定変化量と同様である。
ステップS301において、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化が発生したと判定された場合(ステップS301/YES)、段差乗り越え判定部122は、ステップS302に進む。一方、ステップS301において、モータ回転数の所定変化量以上での時間変化が発生していないと判定された場合(ステップS301/NO)、段差乗り越え判定部122は、ステップS304に進み、車両1が段差の乗り越え中でないと判定し、図9に示される制御フローを終了する。
ステップS301でYESと判定された場合、ステップS302において、段差乗り越え判定部122は、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生したか否かを判定する。ステップS302の判定処理は、図8中のステップS202と同様に、モータ回転数の大きな時間変化が、段差の乗り越えによるものであるのか、車輪11のスリップの発生によるものであるのかを判断するための処理である。
モータ回転数の大きな時間変化が段差の乗り越えによるものである場合、車体に衝撃がかかることによって、モータ回転数の時間変化が生じる。ゆえに、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生する。よって、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生している場合、車両1が段差の乗り越え中であると判断できる。
一方、モータ回転数の大きな時間変化が車輪11のスリップの発生によるものである場合、基本的には、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの一方のみで回転数の所定変化量以上での時間変化が発生する。ゆえに、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生していない場合、車両1が段差の乗り越え中ではなく、車輪11のスリップが発生していると判断できる。
例えば、前輪駆動モードで車両1が低μ路に進入して車輪11のスリップが発生する場合、駆動輪である前輪11a、11bと接続されている前輪駆動用モータ15fのみで回転数の所定変化量以上での時間変化が発生する。また、例えば、後輪駆動モードで車両1が低μ路に進入して車輪11のスリップが発生する場合、駆動輪である後輪11c、11dと接続されている後輪駆動用モータ15rのみで回転数の所定変化量以上での時間変化が発生する。また、例えば、四輪駆動モードで車両1が低μ路に進入して車輪11のスリップが発生する場合、前輪11a、11bが後輪11c、11dよりも先にスリップするので、前輪駆動用モータ15fのみで回転数の所定変化量以上での時間変化が発生する状況が生じる。
なお、低μ路に駐車している車両1が四輪駆動モードで発進する場合、前輪11a、11bおよび後輪11c、11dが同時にスリップするので、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生する。ゆえに、このような状況において、段差乗り越え判定を精度良く行う観点では、図8に示される第1の例の処理を行うことが好ましい。
ステップS302において、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生したと判定された場合(ステップS302/YES)、段差乗り越え判定部122は、ステップS303に進み、車両1が段差の乗り越え中であると判定し、図9に示される制御フローを終了する。一方、ステップS302において、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生していないと判定された場合(ステップS302/NO)、段差乗り越え判定部122は、ステップS304に進み、車両1が段差の乗り越え中でないと判定し、図9に示される制御フローを終了する。
なお、駆動モードが四輪駆動モードとなっており、前回の処理サイクルのステップS302でNOと判定されている場合において、今回の処理サイクルのステップS302でYESと判定された場合には、前輪11a、11bおよび後輪11c、11dの双方がスリップしている可能性があるので、段差乗り越え判定部122は、車両1が段差の乗り越え中でないと判定してもよい。
図10は、制御装置100が行う処理のうち、図3のフローチャートの前回の処理サイクルの段差乗り越え判定で車両1が段差乗り越え中であると判定された場合に、今回の処理サイクルで行われる段差乗り越え判定の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図10のフローチャートは、図3中のステップS102における処理の一例である。
図10に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS401において、段差乗り越え判定部122は、モータ回転数の時間変化量が時間変化量閾値を下回ったか否かを判定する。具体的には、段差乗り越え判定部122は、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方のモータ回転数の時間変化量が時間変化量閾値を下回ったか否かを判定する。
モータ回転数の時間変化量が時間変化量閾値を下回ったと判定された場合(ステップS401/YES)、段差乗り越え判定部122は、ステップS402に進み、車両1が段差の乗り越えを終了したと判定し、図10に示される制御フローを終了する。一方、モータ回転数の時間変化量が時間変化量閾値を下回っていないと判定された場合(ステップS401/NO)、段差乗り越え判定部122は、ステップS403に進み、車両1が段差の乗り越え中であると判定し、図10に示される制御フローを終了する。
車両1が段差を乗り越え始めた後、段差の乗り越え中において、モータ回転数の時間変化量は、段差の乗り越え前の値に収束していく。例えば、図7の例では、車両1が段差を乗り越え始める時刻t4以降において、モータ回転数の時間変化量は、時刻t4以前の値に収束するように変化している。ここで、段差の乗り越え前におけるモータ回転数の時間変化量は、基本的には、時間変化量閾値より小さい。ゆえに、車両1が段差を乗り越え始めた後において、モータ回転数の時間変化量が時間変化量閾値を下回った場合、車両1が段差の乗り越えを終了したと判断できる。
図3中のステップS102の次に、ステップS103において、判定部120は、段差乗り越え判定において車両1が段差の乗り越え中であると判定されたか否かを判定する。段差乗り越え判定において車両1が段差の乗り越え中であると判定された場合(ステップS103/YES)、制御装置100は、図3に示される制御フローを終了する。段差乗り越え判定において車両1が段差の乗り越え中でないと判定された場合(ステップS103/NO)、制御装置100は、ステップS104に進む。
ステップS103でNOと判定された場合、ステップS104において、判定部120は、スリップ判定においてスリップが発生していると判定されたか否かを判定する。スリップ判定においてスリップが発生していないと判定された場合(ステップS104/NO)、制御装置100は、図3に示される制御フローを終了する。スリップ判定においてスリップが発生していると判定された場合(ステップS104/YES)、制御装置100は、ステップS105に進み、制御部130がスリップ抑制制御を実行する。なお、制御装置100は、所定の終了条件が満たされた場合にスリップ抑制制御を終了し、図3に示される制御フローを終了する。
なお、ステップS105では、制御部130は、スリップが発生していると判定された車輪11に対してスリップ抑制制御を実行する。例えば、スリップ判定において前輪11a、11bのスリップが発生していると判定された場合、制御部130は、前輪11a、11bに対してスリップ抑制制御を実行する。また、例えば、スリップ判定において後輪11c、11dのスリップが発生していると判定された場合、制御部130は、後輪11c、11dに対してスリップ抑制制御を実行する。
上記のように、制御部130は、車両1が段差の乗り越え中でないと判定される場合に、スリップ判定部121による判定結果に応じてスリップ抑制制御を行い、車両1が段差の乗り越え中であると判定される場合には、スリップ抑制制御を行わない。それにより、スリップ判定の判定条件を厳しくすることなく、車両1が段差の乗り越え中である場合に車輪11のスリップが発生していると誤って判定されることが抑制される。また、スリップが実際に発生している場合に、スリップが発生していないと誤って判定され、スリップ抑制制御が実行されなくなってしまう状況が生じることが抑制される。
なお、上記では、ステップS101のスリップ判定の処理の後にステップS102の段差乗り越え判定の処理が行われる例を説明したが、制御装置100が行う制御フローは、この例に限定されない。例えば、図3のフローチャート中のステップS101のスリップ判定の処理の前にステップS102の段差乗り越え判定の処理が実行されてもよい。なお、この場合、判定部120は、段差乗り越え判定において車両1が段差の乗り越え中であると判定された場合に、スリップ判定を行わなくてもよい。また、例えば、図3のフローチャート中のステップS101のスリップ判定の処理とステップS102の段差乗り越え判定の処理とが並列的に実行されてもよい。
<制御装置の効果>
続いて、本発明の実施形態に係る制御装置100の効果について説明する。
本実施形態に係る制御装置100では、制御部130は、車両1が段差の乗り越え中でないと判定される場合に、スリップ判定部121による判定結果に応じてスリップ抑制制御を行い、車両1が段差の乗り越え中であると判定される場合には、スリップ抑制制御を行わない。それにより、車両1が段差の乗り越え中である場合に車輪11のスリップが発生していると誤って判定されることが抑制され、かつ、スリップが実際に発生している場合にスリップが発生していないと誤って判定されることが抑制される。ゆえに、車輪11のスリップの発生の有無に応じてスリップ抑制制御を適切に実行することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、段差乗り越え判定部122は、駆動用モータ15の回転数の所定変化量以上での時間変化が発生し、かつ、駆動用モータ15の回転数の時間変化の方向が減速方向である場合、車両1が段差の乗り越え中であると判定することが好ましい。それにより、モータ回転数の大きな時間変化が、段差の乗り越えによるものであるのか、車輪11のスリップの発生によるものであるのかを、モータ回転数の時間変化の方向に着目して適切に判断することができる。ゆえに、段差乗り越え判定を精度良く行うことができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、段差乗り越え判定部122は、前輪駆動用モータ15fおよび後輪駆動用モータ15rの双方で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生した場合、車両1が段差の乗り越え中であると判定することが好ましい。それにより、モータ回転数の大きな時間変化が、段差の乗り越えによるものであるのか、車輪11のスリップの発生によるものであるのかを、いずれの駆動用モータ15で回転数の所定変化量以上での時間変化が発生したかに着目して適切に判断することができる。ゆえに、段差乗り越え判定を精度良く行うことができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、スリップ判定部121は、駆動用モータ15の回転数の時間変化量が時間変化量閾値以上となる状態が継続時間閾値以上継続した場合、車輪11のスリップが発生したと判定することが好ましい。それにより、スリップ判定を精度良く行うことができる。例えば、図4の例のように車輪11のスリップが発生していない場合にスリップが発生していると誤って判定されることを抑制しつつ、図5の例のように車輪11のスリップが発生した場合にスリップが発生していると適切に判定することができる。
また、本実施形態に係る制御装置100では、段差乗り越え判定部122は、車両1が段差の乗り越え中であると判定した後、駆動用モータ15の回転数の時間変化量が時間変化量閾値を下回った場合、車両1が段差の乗り越えを終了したと判定することが好ましい。それにより、車両1が段差の乗り越えを終了したか否かを精度良く判定することができる。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
例えば、上記では、図1を参照して、車両1の構成について説明したが、本発明に係る車両の構成は、このような例に限定されない。本発明に係る車両は、例えば、図1に示される車両1に対して一部の構成要素の削除、追加または変更を加えたものであってもよい。また、本発明に係る車両は、例えば、各車輪11に対してそれぞれ駆動用モータ15が設けられる車両であってもよい。
また、例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。