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JP7549997B2 - 摺動部材 - Google Patents
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JP7549997B2 - 摺動部材 - Google Patents

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本開示は、摺動部材に関する。
従来から、耐摩耗性などの性能に優れたオイルレスタイプの摺動部材が知られている。例えば、特許文献1には、高温条件下で高荷重が作用する場合でも良好な摺動性能を発揮する高温用の摺動部材が開示されている。この摺動部材は、膨張黒鉛層と、膨張黒鉛層を挟み込んだ第1金属板および第2金属板とを備える。第1金属板には、複数の孔が形成されている。これら各孔には、膨張黒鉛層の表面部分が充填されている。それによって、第1金属板と膨張黒鉛層との接合にアンカー効果を得ている。
特開2018-173169号公報
特許文献1のような摺動部材では、第1金属板の表面を作動軸などの回転体が回転動作に伴って摺動し、回転体の回転力が第1金属板に作用する。このため、摺動部材の使用初期においては、膨張黒鉛層のうち第1金属板の各孔に充填された部分からなる突起に第1金属板から剪断力がかかり、当該突起の基部に応力集中が生じやすい。そうした突起の基部への応力集中により、当該突起が折損すると、第1金属板が膨張黒鉛層から剥離しやすくなり、摺動部材に耐久性を低下させる。
本開示の技術の目的は、摺動部材の耐久性を向上させることである。
本開示の技術は、複数の孔が形成された第1金属板と、第1金属板が圧着された膨張黒鉛層とを備え、膨張黒鉛層の表面部分が第1金属板の孔に入り込んで第1突起を形成している摺動部材を対象とする。本開示の技術に係る摺動部材において、膨張黒鉛層の第1金属板側の表面には、フッ素樹脂からなる第1樹脂膜が第1突起を覆うように設けられている。
この構成によると、第1突起がフッ素樹脂からなる第1樹脂膜により覆われていることにより、第1突起の剛性が補強される。そのことで、第1金属板から第1突起にかかる剪断力が低減され、第1突起の基部に生じる応力が緩和される。これにより、摺動部材の使用初期において、膨張黒鉛層に設けられた第1突起が折損するのを抑制できる。
本開示の技術によれば、摺動部材の耐久性を向上させることができる。
図1は、摺動部材を例示する斜視図である。 図2は、摺動部材を例示する断面図である。 図3は、摺動部材の内周面を例示する図である。 図4は、図3のIV-IV線における摺動部材の断面図である。 図5は、摺動部材の製造に用いられる塗工焼成システムを例示する図である。 図6は、摺動部材の使用初期における要部の状態を例示する断面図である。 図7は、摺動部材の摺動面を構成する内側樹脂膜が破れた状態を例示する断面図である。 図8は、摺動部材の内周面に膨張黒鉛の薄膜が形成された状態を例示する断面図である。 図9は、比較例の摺動部材における要部を示す断面図である。 図10は、耐久性評価試験で使用した試験装置の概略構成を示す図である。 図11は、図10のXIで囲んだ箇所を拡大して示す図である。 図12は、耐久性評価試験の結果を示すグラフである。 図13は、変形例の摺動部材の要部を示す断面図である。 図14は、変形例の摺動部材の内周面を示す図である。
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
-摺動部材の構成-
図1に示す摺動部材1は、例えば、ボールバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブにおいて、ステムなどの作動軸81を外周側(径方向の外側)で支持するラジアルベアリングとして使用される。摺動部材1は、金属製の保持部材83により所定位置に保持され、保持部材83と作動軸81との間に配置される(図2参照)。摺動部材1は、350℃以上の高温条件下でも良好な摺動性能を発揮するように構成されている。
図2および図4に示すように、摺動部材1は、膨張黒鉛層3と、内側金属板5と、外側金属板7とを備える。摺動部材1は、これら膨張黒鉛層3、内側金属板5および外側金属板7を互いに積層した状態で両端縁が対峙するように曲げ加工して略円筒状に加圧成形された成形品であり、膨張黒鉛層3、内側金属板5および外側金属板7の積層体の両端縁が切れ目9を形成している。摺動部材1は、可撓性を有し、切れ目9を開くように変形させることで作動軸81に取り付けられる。
膨張黒鉛層3は、摺動部材1の摺動面15を構成する摺動材である。膨張黒鉛層3は、例えば一枚の膨張黒鉛シート3sによって構成される。膨張黒鉛シート3sは、膨張黒鉛からなり、柔軟性と共に耐熱性および耐薬品性を有する。膨張黒鉛層3の厚さt1は、膨張黒鉛シートの表面部分が加圧成形により内側金属板5の孔5hと外側金属板7の孔7hとのそれぞれに入り込むように、両孔5h,7hの深さ、つまり内側金属板5の厚さt2と外側金属板7の厚さt3との合計寸法に応じて適宜設定される。本例での加圧成形前の膨張黒鉛層3の厚さt1は、例えば0.7mm以上且つ0.8mm以下であり、加圧成形後の膨張黒鉛層3の厚さt1は、例えば0.3mm以上且つ0.5mm以下である。
内側金属板5は、図3に示すようなステンレス鋼などからなるエキスパンドメタルによって構成されている。エキスパンドメタルは、千鳥状に配置された菱形などの網目を有するメッシュ状の金属板である。外側金属板7も、内側金属板5と同様なエキスパンドメタルによって構成されている。内側金属板5は、第1金属板の一例である。外側金属板7は、第2金属板の一例である。
内側金属板5および外側金属板7にはそれぞれ、エキスパンドメタルの網目からなる複数の孔5h,7hが形成されている(図1および図2参照)。本例において、内側金属板5と外側金属板7とは、摺動部材1の厚さ方向(径方向)において、線状部分の交差箇所と孔5h,7hとが互いに対応する位置関係となるように配置されている。内側金属板5と外側金属板7とは、摺動部材1の厚さ方向において、互いの孔5h,7hが対応する位置関係となるように配置されてもよい。
内側金属板5は、接着剤を用いることなく、膨張黒鉛層3の内周側に圧着されている。外側金属板7は、接着剤を用いることなく、膨張黒鉛層3の外周側に圧着されている。これら内側金属板5および外側金属板7はそれぞれ、膨張黒鉛層3の表面部分にめり込んでいる。内側金属板5および外側金属板7の厚さt2,t3はそれぞれ、摺動部材1の強度を確保できることを条件として可及的に薄いことが好ましく、例えば0.2mm以上且つ0.4mm以下である。
図4に示すように、膨張黒鉛層3の内周側の表面部分は、内側金属板5の各孔5hに入り込んでいる。そのことで、膨張黒鉛層3と内側金属板5との接合にはアンカー効果が得られる。膨張黒鉛層3のうち内側金属板5の各孔5hに入り込んだ部分は、内側突起11を形成している。すなわち、膨張黒鉛層3の内周面には、複数の内側突起11が設けられている。複数の内側突起11は、膨張黒鉛層3の内周全体に亘って千鳥状に配置されている。内側突起11は、第1突起の一例である。
膨張黒鉛層3の内側金属板5側の表面(内周面)には、各内側突起11を覆うように内側樹脂膜13が設けられている。内側樹脂膜13は、複数の内側突起11に対して共通の膜であって、膨張黒鉛層3の内周面を全体に亘り覆っている。内側樹脂膜13は、第1樹脂膜の一例である。内側樹脂膜13は、内側突起11の剛性を補強する補強材として機能する。
内側樹脂膜13は、膨張黒鉛層3と内側金属板5との間に介在している。内側樹脂膜13は、内側金属板5の各孔5hの内周面と内側突起11の外周面との間にも介在している。内側樹脂膜13のうち各内側突起11の端面を覆う部分は、内側金属板5の孔5hから摺動部材1の内周側に露出している。内側金属板5の孔5hから露出した内側樹脂膜13の表面は、作動軸81が摺動する摺動面15を構成する。
内側樹脂膜13の摺動面15は、摺動部材1の厚さ方向において、内側金属板5の孔5h内に収まり、内側金属板5の内周側の表面と略面一となっている。内側樹脂膜13の摺動面15は、内側金属板5の孔5hから樹脂部品1の内周側に突出していてもよい。内側樹脂膜13はフッ素樹脂からなる。具体的には、内側樹脂膜13は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)からなる焼成膜である。当該焼成膜は、耐熱性および耐薬品性と共に滑り性(低摩擦性、自己潤滑性)を有する。
内側樹脂膜13は、グラスファイバやグラファイト、二硫化モリブデンなどの充填材を含んでもよい。内側樹脂膜13の厚さt4は、摺動部材1の使用初期に内側金属板5からかかる剪断力に内側突起11と共に耐え得ることを条件として可及的に薄いことが好ましい。内側樹脂膜13の厚さt4は、例えば8μm以上且つ13μm以下である。
膨張黒鉛層3の内周面には、微細な凹凸17が形成されている。本例において、当該凹凸17は、膨張黒鉛層3の内周面の全体に亘って形成されている。膨張黒鉛層3の内周面の表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、例えば6.0以上かつ7.5以下である。内側樹脂膜13は、そうした微細な凹凸17に密着している。内側樹脂膜13は、当該凹凸17によりアンカー効果を得て、膨張黒鉛層3の内周面に接合されている。
膨張黒鉛層3の外周側の表面部分は、外側金属板7の各孔7hに入り込んでいる。膨張黒鉛層3のうち外側金属板7の各孔7hに入り込んだ部分は、外側突起19を形成している。すなわち、膨張黒鉛層3の外周面には、複数の外側突起19が設けられている。複数の外側突起19は、膨張黒鉛層3の外周全体に亘って千鳥状に配置されている。外側突起19は、第2突起の一例である。
膨張黒鉛層3の外側金属板7側の表面(外周面)には、各外側突起19を覆うように外側樹脂膜21が設けられている。外側樹脂膜21は、複数の外側突起19に対して共通の膜であって、膨張黒鉛層3の外周面を全体に亘り覆っている。外側樹脂膜21は、第2樹脂膜の一例である。外側樹脂膜21は、外側突起19の剛性を補強する補強材として機能する。
外側樹脂膜21は、膨張黒鉛層3と外側金属板7との間に介在している。外側樹脂膜21は、外側金属板7の各孔5hの内周面と外側突起19の外周面との間にも介在している。外側樹脂膜21のうち各外側突起19の端面を覆う部分は、外側金属板7の孔7hから摺動部材1の外周側に露出している。外側金属板7の孔7hから露出した外側樹脂膜21の表面は、保持部材83と接触する接触面23を構成する。
外側樹脂膜21の接触面23は、摺動部材1の厚さ方向において、外側金属板7の孔7h内に収まり、外側金属板7の外周側の表面と略面一となっている。外側樹脂膜21の接触面23は、外側金属板7の孔7hから樹脂部品1の外周側に突出していてもよい。外側樹脂膜21はフッ素樹脂からなる。具体的には、外側樹脂膜21は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)からなる焼成膜である。外側樹脂膜21は、グラスファイバやグラファイト、二硫化モリブデンなどの充填材を含んでもよい。
外側樹脂膜21の厚さt5は、高温条件下での使用により摺動部材1に対する保持部材83の保持力が緩むことなどに起因して摺動部材1が作動軸81と共に回る共回り現象が生じ、摺動部材1が外周面で保持部材83と摺動する場合に、外側金属板7からかかる剪断力に外側突起19と共に耐え得ることを条件として可及的に薄いことが好ましい。外側樹脂膜21の厚さt5は、例えば8μm以上且つ13μm以下である。
膨張黒鉛層3の外周面には、微細な凹凸25が形成されている。本例において、当該凹凸25は、膨張黒鉛層3の外周面の全体に亘って形成されている。膨張黒鉛層3の外周面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、例えば6.0以上かつ7.5以下である。外側樹脂膜21は、そうした微細な凹凸25に密着している。外側樹脂膜21は、当該凹凸25によりアンカー効果を得て、膨張黒鉛層3の外周面に接合されている。
-摺動部材の製造方法-
上記構成の摺動部材1は、膨張黒鉛層3を構成する膨張黒鉛シート3sに内側樹脂膜13および外側樹脂膜21となる樹脂膜31を形成した後、その膨張黒鉛シート3sからなる膨張黒鉛層3を内側金属板5と外側金属板7との間に挟み込んだ状態で加圧し、膨張黒鉛シート3sの両側の表面部分を樹脂膜31ともども内側金属板5の各孔5hと外側金属板7の各孔7hとに入り込ませることにより製造される。
膨張黒鉛シート3sの両面に樹脂膜31を形成する工程では、例えば、図5に示すような塗工焼成システム51が使用される。塗工焼成システム51は、長尺の膨張黒鉛シート3sをロールトゥロール方式で搬送しながら、搬送中の膨張黒鉛シート3sの両面にディスパージョンDをディップコーティング方式で塗工した後に乾燥および焼成する一連の処理を連続実行するシステムである。
塗工焼成システム51は、巻出し装置53と、巻取り装置55と、複数のガイドローラ57と、表面処理装置59と、液槽61と、乾燥焼成機63と、コントローラ65とを備える。巻出し装置53、巻取り装置55、複数のガイドローラ57、表面処理装置59および乾燥焼成機63の動作は、コントローラ65によって制御される。
塗工焼成システム51において、膨張黒鉛シート3sは、芯材にロール状に巻かれた状態でセットされる。巻出し装置53は、ロール状の膨張黒鉛シート3sを支持し、膨張黒鉛シート3sを一定の速度で送り出す。巻出し装置53から送り出された膨張黒鉛シート3sは、複数のガイドローラ57に支持されながら搬送され、表面処理ゾーンZ1、塗工ゾーンZ2および乾燥焼成ゾーンZ3を順に経て、巻取り装置55に巻き取られる。
表面処理ゾーンZ1には、表面処理装置59が配置される。表面処理装置59は、表面処理ゾーンZ1に搬送された膨張黒鉛シート3sを挟み込む一対のプレスローラ69を有する。各プレスローラ69の外周面には、粗目または中目の研磨紙に相当する粒度の凸部71が全周に亘って多数設けられている。一対のプレスローラ69は、互いに逆方向に回転することにより、膨張黒鉛シート3sを挟み込んで送り出す。このとき、膨張黒鉛シート3sが一対のプレスローラ69に加圧されることにより、膨張黒鉛シート3sの両面にプレスローラ69の表面形状が転写されて微細な凹凸17,25が形成される。
塗工ゾーンZ2には、液槽61が配置される。液槽61には、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)の微粒子を水に分散させたディスパージョンDが貯留されている。ガイドローラ57は、液槽61内にもディスパージョンDに浸かるように配置されている。塗工ゾーンZ2において、膨張黒鉛シート3sは、液槽61内に入り、液槽61内のガイドローラ57の下側を潜った後に、液槽61外に出るように搬送される。このとき、膨張黒鉛シート3sがディスパージョンDに浸漬されて、膨張黒鉛シート3sの両面にディスパージョンDが塗工される。図示しないが、塗工後の膨張黒鉛シート3sが搬送される箇所には、ブレードやエアナイフといった掻き取り装置が配置される。膨張黒鉛シート3sに塗工された余分なディスパージョンDは、掻き取り装置により掻き取られる。
乾燥焼成ゾーンZ3には、乾燥焼成機63が配置される。乾燥焼成ゾーンZ3に搬送された膨張黒鉛シート3sは、乾燥焼成機63に搬入され、乾燥焼成機63の内部を上下方向に搬送される。乾燥焼成機63の内部には、膨張黒鉛シート3sを両側から加熱するヒータ73が設けられている。乾燥焼成機63は、ディスパージョンDが塗工された膨張黒鉛シート3sをヒータ73による加熱で乾燥させた後に焼成する。このときの焼成温度は、例えば、350℃以上且つ400℃以下の温度である。そうして、膨張黒鉛シート3sの両面に樹脂膜31が形成される。
乾燥焼成機63から搬出された膨張黒鉛シート3sは、ガイドローラ57により巻取り装置55へと案内される。このようにして得られた長尺の膨張黒鉛シート3sは、所定の長さにカットして膨張黒鉛層3として摺動部材1に用いられる。
-摺動部材の使用時の挙動-
上記構成の摺動部材1を使用すると、使用初期においては、図6に示すように、作動軸81が内側金属板5を摺動し、作動軸81の回転力が内側金属板5に作用する。そのため、膨張黒鉛層3の内周面に設けられた内側突起11に内側金属板3から剪断力がかかる。このとき、内側突起11は、四フッ化エチレン樹脂の焼成膜からなる内側樹脂膜13によって覆われることにより補強されている。よって、内側樹脂膜13に覆われた内側突起11は、内側金属板5からかかる剪断力に耐えることができる。
摺動部材1には、その使用時にラジアル荷重がかかるため、膨張黒鉛層3が内側金属板5と外側金属板7とに押圧される。このため、内側突起11は、内側金属板5の孔5hから摺動部材1の内周側に膨出するように変形する。それにより、内側突起11を覆う内側樹脂膜13が作動軸81に押し付けられ、作動軸81が内側樹脂膜13を摺動する。摺動部材1の使用を続けると、図7に示すように、内側樹脂膜13が作動軸81の摺動によって摩耗したり引き延ばされたりして破れ、内側金属板5の孔5hから内側突起11の端面が露出する。
内側金属板5の孔5hから露出した内側突起11の端面は、内側樹脂膜13に代わり作動軸81に押し付けられる。そして、作動軸81が内側突起11の端面と摺動すると、内側突起11をなす膨張黒鉛が摺動部材1の内周側に進出し、作動軸81の回転動作に伴って内側金属板5と作動軸81との間で引き延ばされて広がる。これにより、図8に示すように、膨張黒鉛の薄膜4が内側金属板5を覆うように形成される。膨張黒鉛の薄膜4が形成されると、作動軸81の回転力が内側金属板5に作用し難くなり、内側金属板3から内側突起11にかかる剪断力が低減される。そして、摺動部材1が安定した摺動特性を発揮できるようになる。
-実施形態の特徴-
この実施形態の摺動部材1によると、内側突起11がフッ素樹脂からなる内側樹脂膜13によって覆われていることにより、内側突起11の剛性が補強される。そのことで、内側金属板5から内側突起11にかかる剪断力が低減され、内側突起11の基部に生じる応力が緩和される。これにより、摺動部材1の使用初期において、膨張黒鉛層3に設けられた内側突起11が折損するのを抑制できる。その結果、内側金属板5が膨張黒鉛層3から剥離し難くなり、摺動部材1の耐久性が向上する。
この実施形態の摺動部材1によると、内側樹脂膜13が膨張黒鉛層3の内周面に形成された微細な凹凸17に密着した状態で設けられている。そのことで、膨張黒鉛層3に対する内側樹脂膜13の接合力が当該凹凸17によるアンカー効果で高められる。これにより、内側樹脂膜13が膨張黒鉛層3から剥離するのを抑制できる。このことは、摺動部材1の耐久性を向上させるのに有利である。
この実施形態の摺動部材1によると、外側突起19がフッ素樹脂からなる外側樹脂膜21によって覆われている。そのことで、外側突起19の剛性が補強される。摺動部材1が共回り現象の発生により外周面で保持部材83と摺動する事態となった場合には、外側金属板7から外側突起19に剪断力がかかる。この場合、外側金属板7から外側突起19にかかる剪断力が低減され、外側突起19の基部に生じる応力が緩和される。これにより、膨張黒鉛層3に設けられた外側突起19が折損するのを抑制できる。その結果、外側金属板7が膨張黒鉛層3から剥離し難くなり、摺動部材1の耐久性が向上する。
この実施形態の摺動部材1によると、外側樹脂膜21が膨張黒鉛層3の外周面に形成された微細な凹凸25に密着した状態で設けられている。そのことで、膨張黒鉛層3に対する外側樹脂膜21の接合力が当該凹凸25によるアンカー効果で高められる。これによれば、共回り現象が生じて摺動部材1が外周面で保持部材83と摺動する場合に、外側樹脂膜21が膨張黒鉛層3から剥離するのを抑制できる。このことは、摺動部材1の耐久性を向上させるのに有利である。
この実施形態の摺動部材1によると、内側樹脂膜13および外側樹脂膜21がそれぞれ四フッ化エチレン樹脂からなる焼成膜である。そのことで、内側樹脂膜13および外側樹脂膜21において、良好な耐熱性および滑り性を得られる。このことは、摺動部材1を高温条件下で使用する場合に信頼性を確保するのに有利である。四フッ化エチレン樹脂は、水に分散させたディスパージョンDの態様で使用できるので、ウェットコーティング技術を利用して膨張黒鉛層3の表面に内側樹脂膜13を形成し易く、量産に向いている。
-耐久性評価試験-
以下に示す実施例の摺動部材1と比較例の摺動部材とを製造し、それら実施例の摺動部材1および比較例の摺動部材について耐久性を評価する試験を実施した。なお、ここでは、便宜上、比較例の摺動部材についても、上記実施形態と同じ構成には同じ参照符号を付して説明する。
実施例の摺動部材1と比較例の摺動部材とはいずれも、各々エキスパンドメタルからなる内側金属板5と外側金属板7との間に膨張黒鉛層3を挟み込んで、膨張黒鉛層3、内側金属板5および外側金属板7を圧着成形して製造した。実施例の摺動部材1の寸法は、内径35mm、外径37mm、長さ16mmである。比較例の摺動部材の寸法は、実施例の摺動部材1の寸法と同じである。
図4に示すように、実施例の摺動部材1において、膨張黒鉛層3の内周面には、微細な凹凸17が形成され、且つ内側樹脂膜13が凹凸17に密着した状態で各内側突起11を覆うように設けられている。また、膨張黒鉛層3の外周面には、微細な凹凸25が形成され、且つ外側樹脂膜21が凹凸25に密着した状態で各外側突起19を覆うように設けられている。内側樹脂膜13および外側樹脂膜21はそれぞれ、四フッ化エチレン樹脂からなる焼成膜である。
これに対し、図9に示すように、比較例の摺動部材においては、膨張黒鉛層3の内周面および外周面のいずれにも、微細な凹凸が形成されておらず、樹脂膜も設けられていない。その他の構成について、比較例の摺動部材は、実施例の摺動部材1と同じである。
実施例の摺動部材1と比較例の摺動部材との耐久性の評価試験には、図10および図11に示す試験装置101を使用した。試験装置101は、ベアリングボックス103と、ステム105と、トルク変換器107と、電気モーター109と、上側ステージ111と、下側ステージ113と、シリンダ115と、面圧測定器117とを含んで構成されている。
ベアリングボックス103は、ベアリングの摺動部を模擬した保持部材である。ベアリングボックス103は、ステム105が挿通される挿通孔119と、摺動部材が組み付けられる収容部121とを有する。収容部121は、挿通孔119の外周に設けられている。ステム105は、SUS403からなる。ステム105の外周面における表面粗さ(最大高さ)Rzは1.6μmである。ステム105は、ギヤカップリング123を介してトルク変換器107に連結される。
トルク変換器107は、電気モーター109とギヤカップリング125を介して連結される。トルク変換器107は、電気モーター109からステム105に伝達されるトルクを測定する変換器である。電気モーター109は、トルク変換器107を介してステム105にトルクを伝達し、ステム105を回転させる。ステム105の回転方向は、電気モーター109により90°回転させるごとに反対方向へと切り換えられる。
上側ステージ111は、ベアリングボックス103を支持するステージである。上側ステージ111には、ベアリングボックス103の下面を下方に露出させる貫通孔127が形成されている。貫通孔127には、プレスロッド129が下方から挿入される。プレスロッド129は、下側ステージ113に支持される。下側ステージ113は、シリンダ115の上端部に固定されている。
シリンダ115は、上下方向に伸縮可能に設けられている。下側ステージ113は、シリンダ115が上方に伸張することにより、プレスロッド129を押し上げて、ベアリングボックス103の収容部121に組み付けられた摺動部材をステム105に押し付ける方向に加圧する(図11の白抜き矢印参照)。面圧測定器117は、プレスロッド129の押し上げにより摺動部材に負荷される面圧を測定する。
耐久性の評価試験では、まず、ベアリングボックス103の収容部121に摺動部材を組み付け、そのベアリングボックス103を上側ステージ111に設置する。次いで、ステム105をベアリングボックス103の挿通孔119に挿通させ、ギヤカップリング123を介してトルク変換器107に接続する。続いて、シリンダ115を動作させ、下側ステージ113を上昇させることにより、摺動部材とステム105との接触部分に所定の面圧を負荷する。本試験での当該面圧は、10N/mmに設定した。そして、電気モーター109を駆動してステム105を回転させた。本試験でのステム105の回転数は、30回/秒に設定した。当該ステム105の回転速度は、0.05m/秒である。ここで、ステム105の回転数のカウントは、ステム105が所定位置から一方向へ90°回転した後に、他方向へ90°回転を行い所定位置に戻った時点(90°の往復運動)を1カウントとした。本試験は、室温(約25℃)の条件で実施した。
図12に示すように、本試験において、比較例の摺動部材(図9参照)は、ステム105を275回回転(往復)させた時点で、内側金属板5および外側金属板7が膨張黒鉛層3から剥離した状態となり、破損に至った。これに対して、実施例の摺動部材1は、ステム105を15000回回転させても、内側金属板5および外側金属板7が膨張黒鉛層3に接合された状態を維持し、破損しなかった。このことから、膨張黒鉛層3の内周面に内側樹脂膜13が各内側突起11を覆うように設けられ、膨張黒鉛層3の外周面に外側樹脂膜21が各外側突起19を覆うように設けられていることで、摺動部材1の耐久性が向上することを確認できた。
-変形例-
図13に示すように、摺動部材1では、膨張黒鉛層3の内周面に内側樹脂膜13が設けられているが、膨張黒鉛層3の外周面に外側樹脂膜21が設けられていなくてもよい。本例の摺動部材1において、膨張黒鉛層3の外周面には、微細な凹凸25が形成されていない。すなわち、膨張黒鉛層3の外周面の表面粗さは、膨張黒鉛層3の内周面の表面粗さよりも滑らかである。このような膨張黒鉛層3をなす膨張黒鉛シート3sは、上述した塗工焼成システム51において、表面処理装置59の一方のプレスローラ69を凸部71のないローラとすることで作製できる。
図14に示すように、摺動部材1では、内側金属板5がステンレス鋼などからなるパンチングメタルによって構成されていてもよい。パンチングメタルは、千鳥状に配置された円形などの多数の孔5hを有する多孔板である。さらに、外側金属板7も、内側金属板5と同様なパンチングメタルによって構成されていてもよい。また、内側金属板5はエキスパンドメタルによって構成され、外側金属板7はパンチングメタルによって構成されてもよい。
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
膨張黒鉛層3は、複数の膨張黒鉛シート3sが互いに積層されたシート積層物によって構成されてもよい。シート積層物を構成する膨張黒鉛シート3sの枚数は、2枚であってもよく、3枚以上であってもよい。
内側金属板5は、複数の孔5hを有するものであれば、エキスパンドメタルやパンチングメタル以外の金属板であってもよい。このことは、外側金属板7においても同じである。外側金属板7は、摺動部材1の強度を確保できるのであればなくてもよい。この場合、摺動部材1は、外側金属板7に代えて別の補強材を備えてもよい。
膨張黒鉛層3の内周面および外周面の微細な凹凸17,25は、粒子状の研磨材を投射して膨張黒鉛シート3sの表面に祖面化を施すブラスト加工など、プレスローラ69による表面形状の転写以外の物理的な表面加工技術によって形成されてもよい。
膨張黒鉛シート3sに樹脂膜31を形成するときには、液槽61内のディスパージョンDをロールが回転動作で掻き揚げて膨張黒鉛シート3sに転移させるリバース方式や、ダイヘッドがディスパージョンDを押し出しながら膨張黒鉛シート3sに塗布するスロットダイ方式など、ディップコーティング方式以外のコーティング方式を利用して、ディスパージョンDが膨張黒鉛シート3sの表面に塗工されてもよい。
内側樹脂膜13を構成する焼成膜は、四フッ化エチレンパーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)や四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など、四フッ化エチレン樹脂以外のフッ素樹脂を含んでいてもよい。内側樹脂膜13は、内側突起11の剛性を補強可能であれば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)以外のフッ素樹脂(PFA、FEP、ETFE、PVDFなど)によって形成されてよい。内側樹脂膜13は、内側突起13の補強機能および耐熱性などの観点から焼成膜であることが好ましい。これらのことは、外側樹脂膜21においても同じである。
摺動部材1は、例えば、ボールバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブにおいて、ステムなどの作動軸を軸方向で支持するスラストベアリングとして使用されてもよい。当該摺動部材1は、内側金属板5と外側金属板7との間に樹脂膜31が設けられた膨張黒鉛層3を挟み込んで積層体を加圧成形し、その積層体を円環形板状に打抜き加工して製造される。
摺動部材1は、ラジアルベアリングやスラストベアリング以外のベアリングや各種の摺動部品の構成材として使用することが可能であり、その使用形態に応じて膨張黒鉛層3、内側金属板5、外側金属板7、内側樹脂膜13および外側樹脂膜21の厚さt1,t2,t3,t4,t5や形状を任意に変更できる。
以上説明したように、本発明は、摺動部材について有用である。
1 摺動部材
3 膨張黒鉛層
5 内側金属板(第1金属板)
5h 孔
7 外側金属板(第2金属板)
7h 孔
11 内側突起(第1突起)
13 内側樹脂膜(第1樹脂膜)
17 凹凸
19 外側突起(第2突起)
21 外側樹脂膜(第2樹脂膜)
25 凹凸

Claims (7)

  1. 複数の孔が形成された第1金属板と、
    前記第1金属板が圧着された膨張黒鉛層とを備え、
    前記膨張黒鉛層の表面部分が前記第1金属板の前記孔に入り込んで第1突起を形成している摺動部材であって、
    前記膨張黒鉛層は、厚さ方向に貫通する孔が形成されない層であり、
    前記膨張黒鉛層の前記第1金属板側の表面には、微細な凹凸が形成され、且つ、フッ素樹脂からなる第1樹脂膜が、前記凹凸に密着した状態で前記第1突起を覆うように設けられ
    前記第1金属板の一方側の面全体が前記第1樹脂膜と共に摺動面を構成する摺動部材。
  2. 請求項1に記載された摺動部材において、
    前記第1金属板は、エキスパンドメタルからなる摺動部材。
  3. 請求項1または2に記載された摺動部材において、
    前記第1樹脂膜は、四フッ化エチレン樹脂を含む焼成膜である摺動部材。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載された摺動部材において、
    前記膨張黒鉛層を介して前記第1金属板と対向する第2金属板をさらに備え、
    前記第2金属板には、複数の孔が形成され、
    前記膨張黒鉛層の表面部分は、前記第2金属板の前記孔に入り込んで第2突起を形成している摺動部材。
  5. 請求項4に記載された摺動部材において、
    前記第2金属板は、前記第1金属板とは別体の部材である摺動部材。
  6. 請求項4または5に記載された摺動部材において、
    前記第2金属板は、エキスパンドメタルからなる摺動部材。
  7. 請求項4~6のいずれか1項に記載された摺動部材において、
    前記膨張黒鉛層の前記第2金属板側の表面には、微細な凹凸が形成され、且つフッ素樹脂からなる第2樹脂膜が前記凹凸に密着した状態で前記第2突起を覆うように設けられている摺動部材。
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