以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
[各実施形態に共通する構成]
図1は、各実施形態によるモータ制御方法(モータ制御方法)を実行するためのモータ制御システム100の構成を説明するブロック図である。モータ制御システム100は、例えば電気自動車に適用される。なお、モータ制御システム100は、電気自動車以外に、ハイブリッド車両や、自動車以外の例えば鉄道等のシステムに適用することも可能である。
図1に示すように、モータ制御システム100は、制御対象のモータ101と、PWM変換器102と、インバータ103と、直流電源104と、界磁電流出力部105と、電流センサ106と、A/D変換器107と、3相/dq交流座標変換器108と、磁極位置検出器109と、パルスカウンタ110と、角速度演算器111と、先読み補償部112と、電流指令値演算部113と、電流制御部114と、非干渉制御部115と、電圧指令値演算部116と、dq/3相交流座標変換器117と、を備える。なお、これらの各構成の機能は、適宜、当該機能を実行するようにプログラムされたコンピュータにより実現される。
モータ101は、回転子巻線(界磁巻線、ロータコイル)を有する回転子と、固定子巻線(電機子巻線、ステータコイル)を有する固定子とを備える巻線界磁型同期モータである。特に、モータ制御システム100が車両に搭載される場合、モータ101は車両の駆動源となる。詳細は後述するが、モータ101の出力は、回転子巻線を流れる回転子電流(界磁電流if)、及び固定子巻線を流れる固定子電流(三相交流電流(iu,iv,iw))を調節することで制御される。
PWM変換器102は、dq/3相交流座標変換器117から出力される三相電圧指令値(v*
u,v*
v,v*
w)に基づいて、インバータ103が備えるスイッチング素子(例えばIGBT)へのPWM_Duty駆動信号(強電素子駆動信号)(D*uu,D*ul,D*vu,D*vl,D*wu,D*wl)を生成し、インバータ103に出力する。
インバータ103は、3相6アームで構成され、相ごとに2つずつ計6つのスイッチン
グ素子を備えた三相電圧型インバータである。インバータ103は、PWM変換器102
が生成する強電素子駆動信号に基づいて、直流電源104の直流電圧を三相交流電圧(vu,vv,vw)に変換し、モータ101に供給する。
直流電源104は、積層型リチウムイオンバッテリなどの蓄電デバイスにより構成される。
界磁電流出力部105は、直流電源104から供給される電力を用いて、モータ101の回転子巻線に印加されるように界磁電圧vfを所望の界磁電圧指令値v*
fに調節して、界磁電流ifを制御する。
電流センサ106は、モータ101の巻線に流れる三相交流電流(iu,iv,iw)を検出する。なお、以下では、この検出値を「三相交流電流検出値(ius,ivs,iws)」とも表記する。具体的に、電流センサ106は、三相交流電流(iu,iv,iw)のうち、少なくとも2相の電流(例えば、u相電流iu、v相電流iv)を検出する。例えば、電流センサ106をu相とv相の2相のみに取り付ける場合、残りの1相であるw相の電流検出値iwsは、次式(1)により求めることができる。
また、電流センサ106は、界磁電流出力部105からモータ101に供給される界磁電流を検出する。そして、上記三相交流電流検出値(ius,ivs,iws)及び界磁電流の検出値(以下、「界磁電流検出値ifs」とも称する)はA/D変換器107においてデジタル信号に変換されて出力される。
磁極位置検出器109は、モータ101の回転子位置に応じたA相B相Z相のパルスをパルスカウンタ110に出力する。また、パルスカウンタ110は、磁極位置検出器109からのA相B相Z相のパルスに基づいて、モータ101の電気角θreを演算する。
角速度演算器111は、パルスカウンタ110から入力される電気角θreの時間変化率を求め、当該時間変化率から電気角速度ωreを演算する。また、角速度演算器111は、電気角速度ωreをモータ101の極対数pで除算することで機械角速度ωrmを演算する。
先読み補償部112は、電気角θre及び電気角速度ωreを入力して、先読み補償後電気角θre’を演算する。より詳細には、先読み補償部112は、電気角速度ωreに制御系が持つ無駄時間を乗算し、電気角θreに得られた乗算値を加算して先読み補償後電気角θre’を求める。
3相/dq交流座標変換器108は、パルスカウンタ110からの電気角θre、及びA/D変換器107からの三相交流電流検出値(ius,ivs,iws)を入力として、当該三相交流電流検出値(ius,ivs,iws)を3相交流座標系(uvw軸座標系)から直交2軸直流座標系(dq軸座標系)に変換する演算を行う。
具体的に、3相/dq交流座標変換器108は、以下の式(2)に基づき、3相交流座標系の三相交流電流検出値(ius,ivs,iws)をdq軸座標系のdq軸電流検出値(ids,iqs)に変換する。
電流指令値演算部113は、トルク指令値Te
*、角速度演算器111からの機械角速度ωrm(モータ回転数に相当)、及び、直流電源104の電圧(以下、「直流電圧Vdc」とも称する)を入力とし、dq軸電流指令値(i*
d,i*
q)及び界磁電流指令値i*
fを演算する。なお、電流指令値演算部113の演算の詳細については、後述の各実施形態において詳細に説明する。
電流制御部114は、A/D変換器107からの界磁電流検出値ifs、3相/dq交流座標変換器108からのdq軸電流検出値(ids,iqs)、並びに電流指令値演算部113からのdq軸電流指令値(i*
d,i*
q)及び界磁電流指令値i*
fを入力として、第1dq軸電圧指令値(vd_dsh,vq_dsh)及び第1f軸電圧指令値vf_dshを演算する。具体的に、電流制御部114は、各検出値を対応する各指令値に定常偏差無く所望の応答性で追従させるように、第1dq軸電圧指令値(vd_dsh,vq_dsh)及び第1f軸電圧指令値vf_dshを求める。
非干渉制御部115は、角速度演算器111からの電気角速度ωre、A/D変換器107からの界磁電流検出値ifs、及び3相/dq交流座標変換器108からのdq軸電流検出値(ids,iqs)を入力として、d軸、q軸、及びf軸の間の干渉電圧を相殺するためのdq軸非干渉電圧(vd_dcpl,vq_dcpl)及びf軸非干渉電圧vf_dcplを演算する。なお、各電流検出値に代えて電流指令値演算部113からの第1dq軸電流指令値(i*
d_dsh,i*
q_dsh)及び第1界磁電流指令値i*
f_dshを入力とし、dq軸電流規範応答(i*
d_ref,i*
q_ref)及び界磁電流規範応答i*
f_refを求め、これを上記非干渉電圧に代えて出力する構成を採用しても良い。
電圧指令値演算部116は、電流制御部114からの第1dq軸電圧指令値(vd_dsh,vq_dsh)及び第1f軸電圧指令値vf_dshに対して、非干渉制御部115からのdq軸非干渉電圧(vd_dcpl,vq_dcpl)及びf軸非干渉電圧vf_dcplを加算することで、第2dq軸電圧指令値(v*
d,v*
q)及び第2f軸電圧指令値v*
fを求める。
dq/3相交流座標変換器117は、電圧指令値演算部116からの第2dq軸電圧指令値(v*
d,v*
q)に対し、直交2軸直流座標系(dq軸座標系)から3相交流座標系(uvw軸)への変換を行う。
具体的に、dq/3相交流座標変換器117は、以下の式(3)に基づき、dq軸座標系のdq軸電圧指令値(v*
d,v*
q)を3相交流座標系の三相電圧指令値(v*
u,v*
v,v*
w)を求める。
そして、dq/3相交流座標変換器117は、算出した三相電圧指令値(v*
u,v*
v,v*
w)をインバータ103に出力する。
図2は、各実施形態によるモータ制御方法の概要を説明するフローチャートである。なお、図2に示すステップS10~ステップS90の各処理は、図1で説明した各構成により、モータ制御システム100が起動している間、所定の制御周期で実行される。
以下では、各実施形態における電流指令値演算部113の処理の詳細について説明する。特に、以下の各実施形態の電流指令値演算部113の処理については、巻線界磁型同期モータとして構成されるモータ101のトルク方程式が下記の式(4)により与えられることを前提として説明を行う。
なお、式(4)に含まれる各パラメータは既に説明したものも含めて、以下のように定義される。
id: d軸電流
iq: q軸電流
if: 界磁電流
Ld: d軸インダクタンス
Lq: q軸インダクタンス
Lf: f軸インダクタンス(界磁インダクタンス)
M: 固定子と回転子の間の相互インダクタンス
p: 極対数
Te: モータトルク
また、以下では、式(4)の右辺第1項を「トルク界磁成分Tem」とも称し、右辺第2項を「リラクタンストルクTel」とも称する。
[第1実施形態]
図3は、本実施形態の電流指令値演算部113の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、電流指令値演算部113は、界磁電流指令値算出部201と、d軸電流指令値算出部202と、トルク規範応答算出部203と、界磁電流規範応答算出部204と、d軸電流規範応答算出部205と、磁束規範応答推定部206と、q軸電流規範応答算出部207と、q軸電流指令値算出部208と、を備える。
界磁電流指令値算出部201は、トルク指令値Te
*、機械角速度ωrm(モータ回転数相当)、及び直流電圧Vdcを入力として、界磁電流指令値i*
fを算出する。具体的に、界磁電流指令値算出部201は、所定の記憶領域に予め記憶されたマップデータを参照して上記各入力値から界磁電流指令値i*
fを求める。そして、界磁電流指令値算出部201は、界磁電流指令値i*
fを界磁電流規範応答算出部204及び電流制御部114に出力する。
d軸電流指令値算出部202は、トルク指令値Te
*、機械角速度ωrm(モータ回転数相当)、及び直流電圧Vdcを入力として、d軸電流指令値i*
dを算出する。具体的に、d軸電流指令値算出部202は、所定の記憶領域に予め記憶されたマップデータを参照して上記各入力値からd軸電流指令値i*
dを算出する。そして、d軸電流指令値算出部202は、d軸電流指令値i*
dをd軸電流規範応答算出部205及び電流制御部114に出力する。
トルク規範応答算出部203は、入力されるトルク指令値Te
*に対して、予め定められた時定数τTeのローパスフィルタ処理(離散時間系)を実行することで、トルク規範応答Terefを求める。なお、時定数τTeは、モータ制御システム100が搭載される車両の特性に応じた所望のトルク応答速度を実現する観点から好適な値に設定される。特に、トルク規範応答算出部203は、トルク指令値Te
*を入力として、現在の制御周期におけるトルク規範応答Teref[k]に対する次の制御周期における値である規範トルク次回値Teref[k+1]を算出する。
図4は、トルク規範応答算出部203の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、トルク規範応答算出部203は、入力されるトルク指令値Te
*からフィードバックされたトルク規範応答Teref[k]を減算し(ブロック301)、当該減算により得られた値にゲインTsmp/τTeを施し(ブロック302)、得られた値にフィードバックされたトルク規範応答Teref[k]を加算して規範トルク次回値Teref[k+1]を算出する(ブロック304)。なお、「Tsmp」は演算周期を意味する。
すなわち、トルク規範応答算出部203は、トルク規範応答Terefの前進差分を規定する以下の式(5)に基づいて規範トルク次回値Teref[k+1]を演算する。
さらに、トルク規範応答算出部203は、規範トルク次回値Teref[k+1]をq軸電流規範応答算出部207に出力するとともに、前回値(すなわち、トルク規範応答Teref[k])を求める演算処理を施して(ブロック303)、得られたトルク規範応答Teref[k]をブロック301及びブロック304にフィードバックする。
図3に戻り、界磁電流規範応答算出部204は、入力される界磁電流指令値i*
fに対して、予め定められた時定数τfのローパスフィルタ処理(離散時間系)を実行することで、界磁電流規範応答ifrefを求める。なお、時定数τfは、モータ制御システム100が搭載される車両の特性に応じた界磁電流の所望の制御応答速度を実現する観点から好適な値に設定される。特に、界磁電流規範応答算出部204は、界磁電流指令値i*
fを入力として、界磁電流規範応答ifref[k]に対する次の制御周期における値である規範界磁電流次回値ifref[k+1]を算出する。
図5は、界磁電流規範応答算出部204の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、界磁電流規範応答算出部204は、入力される界磁電流指令値i*
fからフィードバックされた界磁電流規範応答ifref[k]を減算し(ブロック401)、当該減算により得られた値にゲインTsmp/τfを施し(ブロック402)、得られた値にフィードバックされた界磁電流規範応答ifref[k]を加算して規範界磁電流次回値ifref[k+1]を算出する(ブロック404)。
すなわち、界磁電流規範応答算出部204は、界磁電流規範応答ifrefの前進差分を規定する以下の式(6)に基づいて界磁電流規範応答ifref[k]の規範界磁電流次回値ifref[k+1]を演算する。
さらに、界磁電流規範応答算出部204は、規範界磁電流次回値ifref[k+1]を磁束規範応答推定部206に出力するとともに、前回値(すなわち、界磁電流規範応答ifref[k])を求める演算処理を施して(ブロック503)、得られた界磁電流規範応答ifref[k]をブロック401及びブロック404にフィードバックする。
図3に戻り、d軸電流規範応答算出部205は、入力されるd軸電流指令値i*
dに対して、予め定められた時定数τdのローパスフィルタ処理(離散時間系)を実行することで、d軸電流規範応答idrefを求める。なお、時定数τdは、モータ制御システム100が搭載される車両の特性に応じたd軸電流idの所望の応答性を実現する観点から好適な値に設定される。特に、d軸電流規範応答算出部205は、d軸電流指令値i*
dを入力として、d軸電流規範応答idref[k]に対する次の制御周期における値である規範d軸電流次回値idref[k+1]を算出する。
図6は、d軸電流規範応答算出部205の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、d軸電流規範応答算出部205は、d軸電流指令値i*
dからフィードバックされたd軸電流規範応答idref[k]を減算し(ブロック501)、当該減算により得られた値にゲインTsmp/τdを施し(ブロック502)、得られた値にフィードバックされたd軸電流規範応答idref[k]を加算して規範d軸電流次回値idref[k+1]を算出する(ブロック504)。
すなわち、d軸電流規範応答算出部205は、d軸電流規範応答idrefの前進差分を規定する以下の式(7)に基づいて、d軸電流規範応答idref[k]の規範d軸電流次回値idref[k+1]を演算する。
さらに、d軸電流規範応答算出部205は、規範d軸電流次回値idref[k+1]を磁束規範応答推定部206に出力するとともに、前回値(すなわち、d軸電流規範応答idref[k])を求める演算処理を施して(ブロック503)、得られたd軸電流規範応答idref[k]をブロック501及びブロック504にフィードバックする。
図3に戻り、磁束規範応答推定部206は、界磁電流規範応答算出部204からの規範界磁電流次回値ifref[k+1]、及びd軸電流規範応答算出部205からの規範d軸電流次回値idref[k+1]を入力として、磁束規範応答推定値φref[k+1]を算出する。
図7は、磁束規範応答推定部206の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、磁束規範応答推定部206は、規範界磁電流次回値ifref[k+1]にモータ101の固定子と回転子の間の相互インダクタンスMを乗じる(ブロック601)。一方、磁束規範応答推定部206は、規範d軸電流次回値idref[k+1]にd軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqの差分(以下、単に「インダクタンス差分Ld-Lq」とも称する)を乗じる(ブロック602)。さらに、磁束規範応答推定部206は、ブロック601で得られた演算値とブロック602で得られた演算値の和をとり(ブロック603)、得られた値に極対数pを乗じることで磁束規範応答推定値φref[k+1]を求める。さらに、磁束規範応答推定部206は、この磁束規範応答推定値φref[k+1]をq軸電流規範応答算出部207に出力する。
図3に戻り、q軸電流規範応答算出部207は、規範トルク次回値Teref[k+1]及び磁束規範応答推定値φref[k+1]を入力として、q軸電流規範応答iqref[k]に対する次の制御周期における値である規範q軸電流次回値iqref[k+1]を算出する。具体的に、q軸電流規範応答算出部207は、規範トルク次回値Teref[k+1]を磁束規範応答推定値φref[k+1]で除算することにより、規範q軸電流次回値iqref[k+1]を求める。
q軸電流指令値算出部208は、規範q軸電流次回値iqref[k+1]を入力として、q軸電流指令値i*
qを算出する。特に、q軸電流指令値算出部208は、q軸電流規範応答iqrefの規範q軸電流次回値iqref[k+1]に対して、当該q軸電流規範応答iqrefに設定される時定数τqのローパスフィルタの逆モデルを施す演算を規定する。なお、時定数τqは、モータ制御システム100が搭載される車両の特性に応じたq軸電流の所望の制御応答速度を実現する観点から好適な値に設定される。
図8は、q軸電流指令値算出部208の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、q軸電流指令値算出部208は、q軸電流指令値i*
q[k]からq軸電流規範応答iqrefの今回値であるq軸電流規範応答iqref[k]を減算する(ブロック701)。そして、q軸電流指令値算出部208は、ブロック701の出力値にゲインTsmp/τqを施す(ブロック702)。次に、q軸電流指令値算出部208は、ブロック702の出力値にq軸電流規範応答iqref[k]を加算する(ブロック703)。さらに、q軸電流指令値算出部208は、ブロック703の出力値に対して前回値を求める演算処理を施す(ブロック704)。次に、q軸電流指令値算出部208は、ブロック704の出力値をq軸電流規範応答iqref[k]として、これにゲイン(1-Tsmp)/τqを施す(ブロック705)。そして、q軸電流指令値算出部208は、上記q軸電流規範応答算出部207により入力される規範q軸電流次回値iqref[k+1]からブロック705の出力値を減算する(ブロック706)。さらに、q軸電流指令値算出部208は、ブロック706の出力値にゲインτq/Tsmpを施し、得られた値をq軸電流指令値i*
qとして、電流制御部114に出力する。
すなわち、q軸電流指令値算出部208は、図8のブロック図と等価の以下の式(8)に基づいて、q軸電流指令値i*
q[k]を演算する。
式(8)からわかるように、本実施形態のq軸電流指令値i*
q[k]は、q軸電流規範応答iqrefの微分値(≒iqref[k+1]-iqref[k])に基づいて求めることができる。
以上説明した本実施形態のモータ制御方法の構成及びそれによる作用効果について説明する。
本実施形態では、回転子巻線を有する回転子及び固定子巻線を有する固定子を備える巻線界磁型同期モータ(モータ101)において、入力されるトルク指令値Te
*に基づいて固定子巻線に流れる固定子電流(dq軸電流(id,iq))と回転子巻線に流れる回転子電流(界磁電流if)とを制御するモータ制御方法が提供される。
このモータ制御方法では、トルク指令値Te
*に基づいて回転子巻線に供給する電流の指令値である界磁電流指令値(界磁電流指令値i*
f)を算出し(電流指令値演算部113)、トルク指令値Te
*に基づいて固定子巻線に供給するd軸電流id及びq軸電流iqの何れか一方の指令値である第1軸電流指令値(本実施形態では、d軸電流指令値i*
d)を算出する(d軸電流指令値算出部202)。また、トルク指令値Te
*から、該トルク指令値Te
*に対して予め定められた応答性(時定数τTe)を示すトルク規範応答Terefを算出する(トルク規範応答算出部203)。そして、出力トルクTeの応答性がトルク規範応答Terefの応答性と略一致するように、界磁電流指令値i*
f及び第1軸電流指令値(特にd軸電流指令値i*
d)に基づいて、d軸電流id及びq軸電流iqの内の他方の指令値である第2軸電流指令値(本実施形態では、q軸電流指令値i*
q)を算出する(q軸電流指令値算出部208)。
これにより、出力トルクTeの応答性を予め定められたトルク規範応答Terefに一致させることを前提とした上で、界磁電流指令値i*
f及びd軸電流指令値i*
dからq軸電流指令値i*
qが演算される。すなわち、出力トルクTeの応答性を界磁電流ifに依らずに一定としつつdq軸電流(id,iq)が定められるので、界磁電流ifの動作条件の違いに応じたトルク応答性のばらつきの発生を抑制することができる。
特に、本実施形態のモータ制御方法では、界磁電流指令値i*
fから、該界磁電流指令値i*
fに対して予め定められた応答性(時定数τf)を示す界磁電流規範応答ifrefを算出し(界磁電流規範応答算出部204)、d軸電流指令値i*
dから、該d軸電流指令値i*
dに対して予め定められた応答性(時定数τd)を示す第1電流規範応答としてのd軸電流規範応答idrefを算出する(d軸電流規範応答算出部205)。そして、モータ101のトルク特性(式(4))を参照して、トルク規範応答Teref、界磁電流規範応答ifref、及びd軸電流規範応答idrefに基づいて第2電流規範応答としてのq軸電流規範応答iqrefを算出する(q軸電流規範応答算出部207)。そして、q軸電流規範応答iqrefに基づいてq軸電流指令値i*
qを算出する(q軸電流指令値算出部208)。
これにより、界磁電流if及びd軸電流idの応答性も、それぞれ、定められた界磁電流規範応答ifref及びd軸電流規範応答idrefに一致させることを前提としつ、q軸電流iqを定めることができる。このため、トルク応答性のばらつきをより確実に抑制するようにdq軸電流(id,iq)を定めることができる。
さらに、本実施形態のモータ制御方法では、トルク規範応答Terefを、該トルク規範応答Terefに定められた時定数τTeの一次遅れ系における前進差分をとることで得られる規範トルク次回値Teref[k+1]として算出する(図4)。また、界磁電流規範応答ifrefを、該界磁電流規範応答ifrefに定められた時定数τfの一次遅れ系における前進差分をとることで得られる規範界磁電流次回値ifref[k+1]として算出する(図5)。さらに、d軸電流規範応答idrefを、該d軸電流規範応答idrefに定められた時定数τdの一次遅れ系における前進差分をとることで得られる規範第1電流次回値(規範d軸電流次回値idref[k+1])として算出する(図6)。
また、規範トルク次回値Teref[k+1]、規範界磁電流次回値ifref[k+1]、及び規範d軸電流次回値idref[k+1]に基づいて第2電流規範応答(q軸電流規範応答iqref)の次回値である規範第2電流次回値(規範q軸電流次回値iqref[k+1])を算出する(q軸電流規範応答算出部207)。そして、規範q軸電流次回値iqref[k+1]に対する離散時間の微分値に基づいてq軸電流指令値i*
qを算出する(式(8))。
これにより、トルク規範応答Teref、界磁電流規範応答ifref、及びd軸電流規範応答idrefを前提とした望ましい応答性を示す規範q軸電流次回値iqref[k+1]に基づき、q軸電流指令値i*
qを定めることができる。すなわち、トルク応答性のばらつきを好適に抑制するようにq軸電流iqを定まるための好適な制御ロジックが実現される。特に、本実施形態では、規範q軸電流次回値iqref[k+1]に対して離散時間の微分値を用いてq軸電流指令値i*
qを演算している。これにより、非プロパな連続変数の微分演算(ラプラス演算子sを施す演算)を用いることなく、q軸電流規範応答iqrefからq軸電流指令値i*
qを求める演算ロジックを構築することができる。
また、本実施形態のモータ制御方法では、規範d軸電流次回値idref[k+1]及び規範界磁電流次回値ifref[k+1]に基づいて磁束規範応答推定値φref[k+1]を算出する(磁束規範応答推定部206)。また、規範トルク次回値Teref[k+1]を磁束規範応答推定値φref[k+1]で除算することにより規範q軸電流次回値iqref[k+1]を算出する(q軸電流規範応答算出部207)。
これにより、出力トルクTeの特性(式(4))により好適に合致した規範q軸電流次回値iqref[k+1]の演算ロジックが実現される。
特に、本実施形態のモータ制御方法では、磁束規範応答推定値φref[k+1]を、規範界磁電流次回値ifref[k+1]から定めた界磁磁束規範応答(ブロック601の出力値)、及び規範d軸電流次回値idref[k+1]に基づいてリラクタンストルクTelに関する等価磁束推定値(Ld-Lq)・idrefを算出し(ブロック602)、上記界磁磁束規範応答と等価磁束推定値(Ld-Lq)・idrefの和をとることで磁束規範応答推定値φrefを算出する(ブロック603)。
これにより、現実の出力トルクTeの特性(式(4))に合わせてリラクタンストルクTelの影響を考慮した上で磁束規範応答推定値φref[k+1]を定め、これに基づいてより高精度に規範q軸電流次回値iqref[k+1]を求めるための具体的な制御ロジックが実現される。
さらに、本実施形態では、上記モータ制御方法が実行されるモータ制御システムとしてのモータ制御システム100が提供される。
モータ制御システム100は、回転子巻線を有する回転子及び固定子巻線を有する固定子を備える巻線界磁型同期モータとしてのモータ101と、入力されるトルク指令値Te
*に基づいて固定子巻線に流れる固定子電流(dq軸電流(id,iq))と回転子巻線に流れる回転子電流(界磁電流if)とを制御する制御装置と、を備える。
そして、この制御装置は、トルク指令値Te
*に基づいて回転子巻線に供給する電流の指令値である界磁電流指令値(界磁電流指令値i*
f)を算出する界磁電流指令値算出部としての電流指令値演算部113と、トルク指令値Te
*に基づいて固定子巻線に供給するd軸電流id及びq軸電流iqの何れか一方の指令値である第1軸電流指令値(本実施形態では、d軸電流指令値i*
d)を算出する第1軸電流指令値算出部(d軸電流指令値算出部202)と、トルク指令値Te
*から、該トルク指令値Te
*に対して予め定められた応答性(時定数τTe)を示すトルク規範応答Terefを算出するトルク規範応答算出部203と、界磁電流指令値i*
f、第1軸電流指令値(特にd軸電流指令値i*
d)、及び出力トルクTeの応答性がトルク規範応答Terefの応答性と略一致するように、界磁電流指令値i*
f及び第1軸電流指令値(特にd軸電流指令値i*
d)に基づいて、d軸電流id及びq軸電流iqの内の他方の指令値である第2軸電流指令値(本実施形態では、q軸電流指令値i*
q)を算出する第2軸電流指令値算出部(q軸電流指令値算出部208)と、を含む。
これにより、本実施形態のモータ制御方法を実行するための好適なシステム構成が実現される。
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。特に、本実施形態では、第1軸電流指令値をd軸電流指令値i*
dとし、第2軸電流指令値をq軸電流指令値i*
qとする場合の制御の一例が提供される。
図9は、本実施形態の電流指令値演算部113の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、本実施形態の電流指令値演算部113は、界磁電流指令値算出部201と、q軸電流指令値算出部202’と、トルク規範応答算出部203と、界磁電流規範応答算出部204と、q軸電流規範応答算出部205’と、トルク界磁成分算出部206’-1と、リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2と、界磁成分除去部206’-3と、d軸電流規範応答算出部207’と、d軸電流指令値算出部208’と、を備える。なお、以下では、記載の簡略化のため、各ブロックの内、第1実施形態と同様の処理を実行する界磁電流指令値算出部201、トルク規範応答算出部203、及び界磁電流規範応答算出部204の詳細な説明は省略する。
q軸電流指令値算出部202’は、トルク指令値Te
*、機械角速度ωrm(モータ回転数相当)、及び直流電圧Vdcを入力として、q軸電流指令値i*
qを算出する。具体的に、q軸電流指令値算出部202’は、所定の記憶領域に予め記憶されたマップデータを参照して上記各入力値からq軸電流指令値i*
qを算出する。そして、q軸電流指令値算出部202’は、q軸電流指令値i*
qをq軸電流規範応答算出部205’及び電流制御部114に出力する。
q軸電流規範応答算出部205’は、入力されるq軸電流指令値i*
qに対して、時定数τqのローパスフィルタ処理(離散時間系)を実行することで、q軸電流規範応答iqrefを求める。特に、q軸電流規範応答算出部205’は、q軸電流指令値i*
qを入力として、q軸電流規範応答iqref[k]の規範q軸電流次回値iqref[k+1]を算出する。
図10は、q軸電流規範応答算出部205’の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、q軸電流規範応答算出部205’は、q軸電流指令値i*
qからフィードバックされたq軸電流規範応答iqref[k]を減算し(ブロック901)、当該減算により得られた値にゲインTsmp/τqを施し(ブロック92)、得られた値にフィードバックされたq軸電流規範応答iqref[k]を加算して規範q軸電流次回値iqref[k+1]を算出する(ブロック904)。
すなわち、q軸電流規範応答算出部205’は、上記式(7)のd軸電流idに関するパラメータをq軸電流iqに関するパラメータで置き換えた式に基づいて、q軸電流規範応答iqref[k]の規範q軸電流次回値iqref[k+1]を演算する。
さらに、q軸電流規範応答算出部205’は、規範q軸電流次回値iqref[k+1]をトルク界磁成分算出部206’-1及びリラクタンストルクq軸成分算出部206’-2に出力する。一方で、q軸電流規範応答算出部205’は、規範q軸電流次回値iqref[k+1]に対して前回値(すなわち、q軸電流規範応答iqref[k])を求める演算処理を施し(ブロック903)、得られたq軸電流規範応答iqref[k]をブロック901及びブロック904にフィードバックする。
図9に戻り、トルク界磁成分算出部206’-1は、界磁電流規範応答算出部204からの規範界磁電流次回値ifref[k+1]、及び規範q軸電流次回値iqref[k+1]を入力として、トルク界磁成分Tem[k+1]を算出する。
図11は、トルク界磁成分算出部206’-1の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、トルク界磁成分算出部206’-1は、規範界磁電流次回値ifref[k+1]と規範q軸電流次回値iqref[k+1]を乗算し(ブロック1001)、当該乗算値に極対数pを乗じる(ブロック1002)。さらに、トルク界磁成分算出部206’-1は、ブロック1001の出力値に相互インダクタンスMを乗じることで、トルク界磁成分Tem[k+1]を求める(ブロック1003)。
すなわち、トルク界磁成分算出部206’-1は、図11のブロック図と等価の以下の式(9)に基づいて、トルク界磁成分Tem[k]のトルク界磁成分Tem[k+1]を演算する。
そして、トルク界磁成分算出部206’-1は、求めたトルク界磁成分Tem[k+1]を界磁成分除去部206’-3に出力する。
図9に戻り、リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2は、規範q軸電流次回値iqref[k+1]を入力として、リラクタンストルクのq軸成分Terq[k+1]を算出する。
図12は、リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2は、規範q軸電流次回値iqref[k+1]に極対数pを乗じる(ブロック1102)。そして、リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2は、ブロック1102の出力値にインダクタンス差分(Ld-Lq)を乗じてリラクタンストルクのq軸成分Terq[k+1]を求める。
すなわち、リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2は、図12のブロック図と等価の以下の式(10)に基づいて、リラクタンストルクのq軸成分Terq[k+1]を演算する。
そして、リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2のは、求めたリラクタンストルクのq軸成分Terq[k+1]をd軸電流規範応答算出部207’に出力する。
図9に戻り、界磁成分除去部206’-3は、規範トルク次回値Teref[k+1]からリラクタンストルクのq軸成分Terq[k+1]を減算する。
d軸電流規範応答算出部207’は、界磁成分除去部206’-3からの上記減算値をリラクタンストルクのq軸成分Terq[k+1]で除算することにより、d軸電流規範応答idref[k]の規範d軸電流次回値idref[k+1]を算出する。
d軸電流指令値算出部208’は、規範d軸電流次回値idref[k+1]を入力として、d軸電流指令値i*
dを算出する。特に、d軸電流指令値算出部208’は、d軸電流規範応答idref[k]の規範d軸電流次回値idref[k+1]に対して、当該d軸電流規範応答idrefに設定される時定数τdのローパスフィルタの逆モデルを施す演算を規定する。
図13は、d軸電流指令値算出部208’の詳細な演算機能を説明するブロック図である。図示のように、d軸電流指令値算出部208’は、d軸電流指令値i*
dのフィードバック値からd軸電流規範応答idref[k]を減算する(ブロック1201)。そして、d軸電流指令値算出部208’は、ブロック1201の出力値にゲインTsmp/τdを施す(ブロック1202)。次に、d軸電流指令値算出部208’は、ブロック1202の出力値にd軸電流規範応答idref[k]を加算する(ブロック1203)。さらに、d軸電流指令値算出部208’は、ブロック1203の出力値に対して前回値を求める演算処理を施す(ブロック1204)。次に、d軸電流指令値算出部208’は、ブロック1204の出力値をd軸電流規範応答idref[k]として、これにゲイン(1-Tsmp)/τdを施す(ブロック1205)。そして、d軸電流指令値算出部208’は、規範q軸電流次回値iqref[k+1]からブロック1205の出力値を減算する(ブロック1206)。そして、d軸電流指令値算出部208’は、ブロック1206の出力値にゲインτd/Tsmpを施し、得られた値をd軸電流指令値i*
dとして、電流制御部114に出力する。
すなわち、d軸電流指令値算出部208’は、上記式(8)のq軸電流iqに関するパラメータをd軸電流idに関するパラメータで置き換えた式に基づいて、d軸電流指令値i*
dを演算する。したがって、本実施形態のd軸電流指令値i*
d[k]は、d軸電流規範応答idrefの微分値(≒idref[k+1]-idref[k])に基づいて求めることができる。
以上説明した本実施形態のモータ制御方法の構成及びそれによる作用効果について説明する。
本実施形態では、第1軸電流指令値、第1電流規範応答、及び規範第1電流次回値はそれぞれ、q軸電流指令値i*
q、q軸電流規範応答iqref、及び規範q軸電流次回値iqref[k+1]である。第2軸電流指令値、第2電流規範応答、及び規範第2電流次回値はそれぞれ、d軸電流指令値i*
d、d軸電流規範応答idref、及び規範d軸電流次回値idref[k+1]である。
そして、規範界磁電流次回値ifref[k+1]及び規範q軸電流次回値iqref[k+1]に基づいてトルク界磁成分Tem[k+1]を算出する(トルク界磁成分算出部206’-1)。また、規範q軸電流次回値iqref[k+1]に基づいてリラクタンストルクのq軸成分Terq[k+1]を算出する(リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2)。さらに、規範トルク次回値Teref[k+1]からトルク界磁成分Tem[k]のトルク界磁成分Tem[k+1]を減算して得られた値を、リラクタンストルクのq軸成分Terq[k+1]で除算することにより規範d軸電流次回値idref[k+1]を算出する(界磁成分除去部206’-3及びd軸電流規範応答算出部207’)。
これにより、出力トルクTeの応答性を予め定められたトルク規範応答Terefに一致させることを前提とした上で、界磁電流指令値i*
f及びq軸電流指令値i*
qからd軸電流指令値i*
dを演算するための具体的な制御ロジックが実現される。したがって、この制御ロジックによっても、界磁電流ifの動作条件の違いに応じたトルク応答性のばらつきの発生を抑制することができる。
[実施例]
次に、上記各実施形態のモータ制御方法を実行した場合の作用効果を、各比較例と対比しつつ説明する。特に、以下の各実施例及び各比較例では所定の条件下でシミュレーションを行った結果について説明する。
(実施例1)
第1実施形態のモータ制御システム100に対して、以下の(I)及び(II)のように界磁電流ifの動作条件を変えてシミュレーション及び観測を実行した。
(I)初期時(時刻t=0)に界磁電流ifが与えられ(すなわち、予め界磁電流ifが流れており)、トルク指令値Te
*が負の値に設定されている前提で、時刻t=t1~t2においてトルク指令値Te
*が増加して負から正に転ずる場合のトルク応答を観測した。
(II)初期時(時刻t=0)に界磁電流ifが0であり(すなわち、予め界磁電流ifが流れておらず)、トルク指令値Te
*が0に設定されている前提で、時刻t=t1~t2においてトルク指令値Te
*が増加して0から正になる場合のトルク応答を観測した。
上記(I)及び(II)に係るシミュレーションによる観測結果をそれぞれ、図14A及び図14Bに示す。
(実施例2)
第2実施形態のモータ制御システム100において、実施例1と同様に(I)及び(II)に係るシミュレーション及び観測を実行した。(I)及び(II)に係るシミュレーションによる観測結果をそれぞれ、図15A及び図15Bに示す。
(比較例)
第1実施形態(又は第2実施形態)のモータ制御システム100の電流指令値演算部113における演算処理に代え、トルク指令値Te
*、機械角速度ωrm(モータ回転数相当)、及び直流電圧Vdcから所定のマップに基づいてd軸電流指令値i*
d、q軸電流指令値i*
q、及び界磁電流指令値i*
fを定める比較例システムrefsにおいて、上記(I)及び(II)に係るシミュレーション及び観測を実行した。
(実施例1の制御結果及び考察)
図14Aに示す予め界磁電流ifが流れている場合の制御では、時刻t1~時刻t2においてトルク指令値Te
*が負から正に増加することによる界磁電流if、d軸電流id、及びq軸電流iqの応答に応じて、出力トルクTeが変化した。特に、図14Aに示す例では、実施例1及び比較例の何れも、出力トルクTeがほぼトルク規範応答Terefに一致するように追従した。これは、予め略一定の界磁電流ifが流れているところ、出力トルクTeの応答への影響を与える界磁電流ifの変化が生じていないためと考えられる。
一方、図14Bに示す予め界磁電流ifが流れていない場合の制御では、時刻t1~時刻t2においてトルク指令値Te
*が0から正に増加することによる界磁電流if、d軸電流id、及びq軸電流iqの応答に応じて、出力トルクTeが変化した。特に、図14Bに示す例では、時刻t1~時刻t2におけるトルク指令値Te
*の変化に合わせて界磁電流ifが増加する。したがって、出力トルクTeの応答はこの界磁電流ifの増加による影響を受けるので、比較例では、出力トルクTeがトルク指令値Te
*に対して遅れて追従している。これに対して、実施例1では、図14Aに示す例と同様に、出力トルクTeがほぼトルク規範応答Terefに一致するように追従した。
以上のように、比較例では、予め界磁電流ifが流れている場合とそうでない場合との間において、出力トルクTeの応答性が異なることがわかる。これに対して、実施例1では、予め界磁電流ifが流れている否かに関わらず、出力トルクTeの応答がトルク規範応答Terefと略一致することで一定に保たれることがわかった。
これは、第1実施形態のモータ制御システム100においては、トルク規範応答算出部203によりトルク指令値Te
*から一様な応答性をとるトルク規範応答Terefが定められる一方、磁束規範応答推定部206、q軸電流規範応答算出部207、及びq軸電流指令値算出部208によって、上記トルク規範応答Terefを前提として界磁電流if(特に界磁電流規範応答ifref)及びd軸電流id(特にd軸電流規範応答idref)に基づいてq軸電流指令値i*
qを算出しているためと考えられる。
(実施例2の制御結果及び考察)
図15Aに示す予め界磁電流が流れている場合の制御では、図14Aで説明した制御に対し、d軸電流id及びq軸電流iqの挙動に相違はあるものの、トルク応答に関してはほぼ同様の挙動を示した。また、図15Bに示す予め界磁電流ifが流れていない場合の制御でも、図14Bに示す制御に対し、d軸電流id及びq軸電流iqの挙動に相違はあるものの、トルク応答に関してはほぼ同様の挙動を示した。
したがって、実施例2においても、予め界磁電流ifが流れている否かに関わらず、トルクTeの応答がトルク規範応答Terefと略一致することで一定に保たれることがわかった。
これは、第2実施形態のモータ制御システム100においては、トルク規範応答算出部203によりトルク指令値Te
*から一様な応答性をとるトルク規範応答Terefが定められる一方、トルク界磁成分算出部206’-1、リラクタンストルクq軸成分算出部206’-2、d軸電流規範応答算出部207’、及びd軸電流指令値算出部208’によって、上記トルク規範応答Terefを前提として界磁電流if(特に界磁電流規範応答ifref)及びq軸電流iq(特にq軸電流規範応答iqref)に基づいてd軸電流指令値i*
dを算出しているためと考えられる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。