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JP7560334B2 - 衝撃吸収材 - Google Patents
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JP7560334B2 - 衝撃吸収材 - Google Patents

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Description

本発明は、衝撃吸収材に関する。
従来、水等の水性液体からなる水相を、ビニル系単量体、架橋剤、乳化剤、重合開始剤等を含む有機相中に高比率で内包させた油中水型の高内相エマルション(つまり、HIPE)を形成し、該エマルション中で有機相を重合することにより、HIPEフォーム(HIPE foam)等と呼ばれる多孔質重合体を得る方法が知られている。この多孔質重合体は、重合時における、高内相エマルションでの有機相と水相との分散形態や水相の分散形状が反映された重合体となり、重合体中に多数の気泡が均質に存在する気泡構造を有すると共に、気泡間を連通する多数の貫通孔が形成された連続気泡構造を有するものとなる。HIPEフォームは、吸収材、分離材等の用途への応用が期待されている。
例えば、特許文献1には、密度、ガラス転移温度、靱性指数が調整されたHIPEフォームが提案されている。特許文献1によれば、このようなHIPEフォームは、靱性に優れ、例えばふきとり用品等の物品に好適であるとされる。また、特許文献2には、所謂HIPE法により得られ、所定の気泡構造を有する有機多孔体(つまり、HIPEフォーム)が提案されている。特許文献2によれば、このようなHIPEフォームは、物理的強度が高く、吸着量や吸着速度に優れた吸着剤、膨潤や収縮に対する耐久性に優れたイオン交換体、分離能に優れたクロマトグラフィー用充填剤として用いられるとされる。
特表2003-514052号公報 特開2003-246809号公報
HIPEフォームは、自動車資材、建築資材、物流資材などの分野において、目的物を外力から保護するために用いられる衝撃吸収材用途への応用が期待される。しかしながら、衝撃吸収材としてHIPEフォームを使用する場合において、特許文献1の技術では、単位重量あたりのエネルギー吸収量が低下するおそれがあり、特許文献2の技術では、高ひずみ時におけるエネルギー吸収性能が低下するおそれがあった。そのため、従来の技術では、衝撃吸収材として好適なHIPEフォームを得ることはできなかった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、単位重量あたりのエネルギー吸収量に優れると共に、広いひずみ量範囲にわたってエネルギー吸収性能の変化が少ない衝撃吸収材を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、HIPEフォームから構成される衝撃吸収材であって、
上記HIPEフォームは、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体に由来する成分を含む架橋重合体を基材樹脂とし、
上記架橋重合体のガラス転移温度が60℃以上であり、
上記架橋重合体の架橋点間分子量が3×103以上であり、
上記HIPEフォームの見掛け密度が35kg/m3以上100kg/m3未満であり、
上記HIPEフォームの、23℃における、50%歪時圧縮応力に対する10%歪時圧縮応力の比が0.70を超え、1.0以下である、衝撃吸収材にある。
上記衝撃吸収材は、HIPEフォームから構成されており、HIPEフォームは、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体に由来する成分を含む架橋重合体を基材樹脂としている。さらに、見掛け密度、ガラス転移温度、架橋点間分子量、50%歪時圧縮応力に対する10%歪時圧縮応力の比が上記範囲にある。そのため、衝撃吸収材は、単位重量あたりのエネルギー吸収量に優れると共に、広いひずみ量範囲にわたってエネルギー吸収性能の変化が少ない。
図1(a)は、気泡の平均径18μmのHIPEフォームの低真空走査電子顕微鏡写真(倍率:500倍)であり、図1(b)は、気泡の平均径44μmのHIPEフォームの低真空走査電子顕微鏡写真(倍率:500倍)であり、図1(c)は、気泡の平均径90μmのHIPEフォームの低真空走査電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。 図2は、HIPEフォームの動的粘弾性測定(つまりDMA)により得られるDMAカーブの模式図である。
次に、衝撃吸収材の好ましい実施形態について説明する。本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。また、下限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以上であることを意味し、上限として数値又は物性値を表現する場合、その数値又は物性値以下であることを意味する。本明細書において、質量と重量、質量%と重量%、質量部と重量部とは実質的に同義である。
[衝撃吸収材]
衝撃吸収材は、上記のごとくHIPEフォームから構成されている。衝撃吸収材は、例えば、自動車資材、建築資材、物流資材、緩衝材、寝具等に用いられる。衝撃吸収材は、例えば、ティビアパッド、ドアパッド、バンパー等の自動車資材に好適である。
特に、自動車資材における衝撃吸収材は、衝突時等に生じる大きな衝撃に対して、適切に衝撃を吸収し、乗員に生じる衝撃加速度を低減する必要がある。上記HIPEフォームは、後述するように、軽量で、単位重量あたりのエネルギー吸収量に優れると共に、広いひずみ量範囲にわたって、適切にエネルギーを吸収することができるため、車両用のティビアパッド、ドアパッド、バンパーとして、優れた適性を有し、特にティビアパットとして好適となる。
[HIPEフォーム]
HIPEフォーム(HIPE foam)は、一般に、ポリHIPEフォーム(PolyHIPE foam)、ポリHIPE材料、高内相エマルション多孔体、高内相エマルション発泡体等とも呼ばれる多孔質重合体であり、例えば、水相を有機相中に高比率で内包させた、油中水型の高内相エマルション中で単量体を重合することにより得られるものである。高内相エマルション(High Internal Phase Emulsion)は通称ハイプ(HIPE)と呼ばれる。HIPEフォームは、より具体的には、多数の気泡を有し、架橋重合体を基材樹脂とする、連続気泡構造の多孔体である。
HIPEフォームは、連続気泡構造を有するため、HIPEフォームを圧縮変形させた際に、独立気泡構造を有する発泡体において生じるような、所謂空気バネの影響を受けにくい。また、適度に脆い気泡構造を有するため、比較的大きな圧縮応力が加わった際に、気泡壁の座屈が生じやすい。このような性質を有するHIPEフォームを、後述する物性の範囲に調整することにより、ひずみ量の増加に伴う圧縮応力の上昇を緩やかにすることができ、広いひずみ量範囲にわたって、適切にエネルギーを吸収することができる。
HIPEフォームは、例えば、水相を有機相中に高比率で内包させた、油中水型の高内相エマルション中で、架橋剤の存在下でビニル系単量体(具体的には、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体)を重合することにより得られる多孔質架橋重合体である。HIPEフォームは、例えば、油中水型高内相エマルション中でスチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体を重合することにより得られる、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体に由来する成分を含む架橋重合体を基材樹脂としている。HIPEフォームは、具体的には、架橋重合体の重合体骨格中にスチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体に由来する成分を含む。
また、HIPEフォームは、高内相エマルションを硬化してなる多孔質の硬化物であり、その気泡壁が架橋重合体(例えばビニル系架橋重合体)から構成されているともいえる。気泡は気孔ということもできる。HIPEフォームは、重合時における、高内相エマルションでの有機相と水相との分散形態や水相(つまり、分散相)の分散形状が反映された重合体(具体的には、多孔質の架橋重合体)となる。
HIPEフォームは、架橋重合体により構成された構造体となるため、荷重や、ずりせん断(具体的には、せん断応力、ずり応力)に対する耐性が低くなりやすく、比較的脆い重合体となる。また、HIPEフォームは、製造過程において重合体が延伸されにくいものであるため、一般的に、分子配向を生じにくいと共に、異方性の少ない重合体となる。HIPEフォームは、押出機を用いた押出発泡法により得られる発泡体や、発泡性樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子を型内成形することにより得られる発泡粒子成形体等のように、製造時に延伸されて製造される発泡体とは区別されるものである。
[気泡構造]
HIPEフォームは、上記のごとく連続気泡構造を有する多孔体である。図1(a)~(c)に例示されるように、HIPEフォーム1は、これを構成する多孔質の架橋重合体11中に多数の気泡13が均質に存在する気泡構造を有すると共に、気泡壁12を貫通し、隣接する気泡間を連通する多数の貫通孔14が形成された連続気泡構造を有する。なお、図1(a)~(c)において、気泡13は、気泡壁12により囲まれた部分である。貫通孔14は、気泡壁12を貫通し、隣接する気泡13間を連通する穴である。具体的には、貫通孔14は、気泡壁12に形成されると共に、気泡壁12を挟んで隣接する気泡13間を連通する穴である。貫通孔14のことを、細孔、ミクロポア、貫通窓、連結孔ということもできる。
HIPEフォームにおける、気泡の平均径Φ1は概ね5~100μmであり、貫通孔の平均径Φ2は概ね1~30μmである。なお、貫通孔は気泡壁に形成された、気泡間を連通する穴であることから、通常、貫通孔の平均径Φ2は、気泡の平均径Φ1より小さくなる。気泡の平均径Φ1は、気泡の円相当径の平均値であり、気泡の円相当径は、HIPEフォームの断面における気泡の面積と同じ面積の真円の直径である。貫通孔の平均径Φ2は、貫通孔の円相当径の平均値であり、貫通孔の円相当径は、HIPEフォームの断面における貫通孔の面積と同じ面積の真円の直径である。気泡の平均径Φ1、貫通孔の平均径Φ2の測定方法については、後述するが、例えば、HIPEフォームの連続気泡構造を画像解析することにより測定される。
気泡の平均径Φ1は20~100μmであり、貫通孔の平均径Φ2は5~20μmであり、貫通孔の平均径Φ2に対する気泡の平均径Φ1の比Φ1/Φ2は3~5であることが好ましい。この場合には、HIPEフォームの気泡構造が過度に脆化することを抑制しつつ、荷重により気泡構造が過度に変形することを抑制することができる。これにより、高ひずみ時における衝撃吸収材のエネルギー吸収性能の低下がより抑制され、さらに、衝撃吸収材の単位重量あたりのエネルギー吸収量がより向上する。この効果がより向上するという観点から、気泡の平均径Φ1は25~95μmであることが好ましい。また、貫通孔の平均径Φ2は6~18μmであることが好ましく、8~16μmであることがより好ましい。また、比Φ1/Φ2は3.0~5.0であることが好ましく、3.2~4.8であることがより好ましく、3.4~4.6であることがさらに好ましい。
気泡の平均径は、後述のHIPEフォームの製造方法において、高内相エマルションの水相(つまり分散相)の水滴径を調整することにより制御できる。例えば、水滴径を小さくすることにより、気泡径が微細になり、HIPEフォームでは、気泡の平均径を容易に例えば100μm以下に調整できる。
貫通孔は、後述のHIPEフォームの製造方法において、油中水型の高内相エマルション中で単量体が重合する際に、重合体の体積収縮等によって、油膜が破れることにより形成される。なお、油膜は、重合、架橋の進行により、上述の気泡壁となる。貫通孔の平均径は、後述のHIPEフォームの製造方法において、撹拌動力密度、重合速度、油相の粘度等を調整することにより制御できる。例えば、撹拌動力密度を高くすることにより、貫通孔径が微細になり、HIPEフォームでは、貫通孔の平均径を容易に例えば20μm以下に調整できる。
HIPEフォームにおける単位面積当たりの気泡数の平均値は、120個/mm2以上2400個/mm2以下であることが好ましい。この場合には、HIPEフォームの気泡構造が過度に脆化することを抑制しつつ、荷重により気泡構造が過度に変形することを抑制することができる。この効果がより向上するという観点から、気泡数の平均値は、150個/mm2以上2200個/mm2以下であることが好ましく、300個/mm2以上2100個/mm2以下であることがより好ましく、500個/mm2以上2000個/mm2以下であることがさらに好ましい。
また、HIPEフォームにおける単位面積当たりの貫通孔数の平均値は、700個/mm2以上8000個/mm2以下であることが好ましく、800個/mm2以上7000個/mm2以下であることがより好ましい。この場合には、気泡壁を適度に座屈させやすくなり、ひずみ量による圧縮応力の変化を小さくしやすくなる。
HIPEフォームにおける単位面積当たりの気泡数の平均値、貫通孔数の平均値の測定方法については、後述するが、画像解析により測定される。気泡数の平均値は、後述のHIPEフォームの製造方法において、高内相エマルションの水相(つまり分散相)の水滴径を調整することにより制御できる。例えば、水滴径を小さくすることにより、気泡径が微細になり、気泡数の平均値が大きくなる。貫通孔数の平均値は、後述のHIPEフォームの製造方法において、撹拌動力密度、重合速度、油相の粘度等を調整することにより制御できる。例えば、撹拌動力密度を高くすることにより、貫通孔径が微細になり、HIPEフォームでは、貫通孔数の平均値が大きくなる。
[見掛け密度ρ]
HIPEフォームの見掛け密度ρは、35kg/m3以上100kg/m3未満である。この範囲であることにより、一定の剛性を有すると共に、適度に脆い気泡構造を有するHIPEフォームとすることができる。これにより、圧縮によるひずみが小さい領域においては適度に高い圧縮応力を示す一方、圧縮によるひずみの増加に伴い、気泡壁が適度に座屈するため、高ひずみ時における圧縮応力が過度に高くならず、ひずみ量による圧縮応力の変化を小さくすることができる。HIPEフォームの見掛け密度ρが低すぎる場合には、剛性が低下し、単位重量あたりのエネルギー吸収量が低下する。衝撃吸収材の、単位重量あたりのエネルギー吸収量がより向上するという観点から、HIPEフォームの見掛け密度ρは、38kg/m3以上であることが好ましく、40kg/m3以上であることがより好ましい。一方、HIPEフォームの見掛け密度が高すぎる場合には、HIPEフォームが過度に硬くなり、高ひずみ時における圧縮荷重が高くなり、高ひずみ時における衝撃吸収材のエネルギー吸収性能が低下する。高ひずみ時におけるエネルギー吸収性能がより向上すると共に、衝撃吸収材をより軽量化できるという観点から、HIPEフォームの見掛け密度ρは、90kg/m3以下であることが好ましく、80kg/m3以下であることがより好ましく、60kg/m3以下であることがさらに好ましい。
HIPEフォームの見掛け密度ρは、重量を体積にて除することにより算出される。
HIPEフォームの見掛け密度ρは、後述のHIPEフォームの製造方法において、ビニル系単量体、架橋剤、乳化剤、及び重合開始剤の総量と、水相(具体的には、水性液体)の量との比率等を調整することにより、上記範囲に調整される。
HIPEフォームの見掛け密度ρに対する、HIPEフォームの気泡壁相当厚みtの比は、0.0060μm/[kg/m3]以上であることが好ましく、0.0065μm/[kg/m3]以上であることがより好ましく、0.0070μm/[kg/m3]以上であることがさらに好ましい。この場合、単位重量あたりのエネルギー吸収量をより向上させやすくなる。一方、上記比は、0.035μm/[kg/m3]以下であることが好ましく、0.032μm/[kg/m3]以下であることがより好ましく、0.030μm/[kg/m3]以下であることがさらに好ましい。この場合、ひずみ量による圧縮応力の変化を抑制しやすくすることができる。
HIPEフォームの気泡壁相当厚みtは下記式(α)により算出される。式(α)において、d:HIPEフォームの気泡の平均径、X=ρs/ρf、ρs:基材樹脂の密度、ρf:HIPEフォームの見掛け密度である。
t=d[(X/(X-1))1/3-1] ・・・(α)
なお、上記式(α)は、HIPEフォームに貫通孔が存在しない場合を仮定した、HIPEフォームにおける基材樹脂の容積分率の関係(つまり、(ρf-ρg)/(ρs-ρg)=[(d+t)3-d3]/(d+t)3)において、気泡内の気体密度:ρgを0に近似した式である。上記式により、上記HIPEフォームの平均気泡壁厚みに相当する気泡壁の厚みを求めることができる。
所望とするHIPEフォームの物性を安定して発現させやすくなる観点からHIPEフォームの気泡壁相当厚みtは、0.3μm以上、3μm以下であることが好ましく、0.5μm以上、2μm以下であることがより好ましい。
[ガラス転移温度]
HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度は、60℃以上である。これにより、HIPEフォームの剛性を高めることができる。これは、ガラス転移温度を高めることにより、樹脂骨格の強度が向上するためである。ガラス転移温度が低すぎると、剛性が低下し、単位重量あたりのエネルギー吸収量が低下する。また、周囲温度が高温となるような環境で使用した場合に、衝撃吸収材の機械的物性が低下するおそれがある。剛性がより高くなり、衝撃吸収材の、単位重量あたりのエネルギー吸収量がより向上するという観点から、HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度は、65℃以上であることがより好ましい。また、衝撃吸収材が過度に脆くなることを抑制できるという観点からは、HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度は、160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。
HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度は、JIS K7121:1987に基づいた示差走査熱量(DSC)分析にて測定される。ガラス転移温度はDSC曲線の中間点ガラス転移温度のことである。試験片の状態調節として「(3)一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合」を採用する。
HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度は、後述のHIPEフォームの製造方法において、ビニル系単量体の種類、その配合割合、架橋剤の種類、その配合割合等を調整することにより、上記範囲に調整される。
[架橋点間分子量Mc]
架橋点間分子量Mcは、HIPEフォームを構成する架橋重合体の架橋度の指標となる。HIPEフォームを構成する架橋重合体の架橋点間分子量Mcは、3×103以上である。これにより、HIPEフォームを過度に脆化させることを抑制しつつ、HIPEフォームの剛性を高めることができる。架橋点間分子量が小さすぎる場合には、架橋度が高すぎるため、脆化し易くなり、単位重量あたりのエネルギー吸収量が低下する。脆化が抑制され、単位重量あたりのエネルギー吸収量がより向上するという観点から、HIPEフォームを構成する架橋重合体の架橋点間分子量Mcは、4×103以上であることが好ましく、5×103以上であることがより好ましく、6×103以上であることがさらに好ましい。また、重合体の架橋度の低下による剛性の低下を抑制しつつ、単位重量あたりのエネルギー吸収量をより向上させるという観点からは、HIPEフォームを構成する架橋重合体の架橋点間分子量Mcは、2×10以下であることが好ましく、1×10以下であることがより好ましく、9×10以下であることがさらに好ましい。
HIPEフォームを構成する架橋重合体の架橋点間分子量Mcは、次のようにして測定される。HIPEフォームに対して、周波数:1Hz、荷重:98mN、変形モード:圧縮という条件の動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)を行う。この時、温度上昇とともに、HIPEフォームを構成する架橋重合体がガラス状態からゴム状態へと転移するため、横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率E’をプロットして得られるDMAカーブにおいて、貯蔵弾性率E’はガラス転移温度Tgを境にして急低下する(図2参照)。その後、DMAカーブはプラトー領域(ゴム状平坦部)を示す。このプラトー領域においてE’は温度に比例するため、以下の式(I)から架橋点間分子量Mcを計算することができる。なお、架橋点間分子量Mcの単位はg/molである。
Mc=2(1+μ)ρRT/E’ ・・・(I)
式(I)において、μはポアソン比であり、μ=0.5である。ρはHIPEフォームの見かけ密度kg/m3、Rは気体定数:8.314J/K/molである。TとE’は、それぞれ、ゴム状平坦部における任意の点における温度(単位:K)と貯蔵弾性率(単位:Pa)である。なお、TとE’はゴム状平坦部で測定される数値である。架橋点間分子量Mcを適切に算出できる観点から、上記E’は、Tg+50℃~Tg+80℃の温度域(但し、Tgは、HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度である)で測定することが好ましい。なお、ポアソン比とは材料固有の値であり、物体に応力を印加した際の、垂直方向に生じるひずみを平行方向に生じるひずみで除し、これに-1を乗じた値である。理論上、ポアソン比は-1から0.5の範囲の値をとり、これが負の値である場合、縦方向に潰すと、横方向にも潰れることを意味する。逆に、正の値である場合は、縦方向に潰すと横方向に伸びることを意味する。上記動的粘弾性分析の測定条件では、HIPEフォームを構成する架橋重合体に生じる歪は極微小であり、体積変化が起こらないと見なすことができるため、体積一定の条件、すなわちポアソン比を0.5として、貯蔵弾性率E’、架橋点間分子量Mcを算出する。
HIPEフォームを構成する架橋重合体の架橋点間分子量Mcは、後述のHIPEフォームの製造方法において、架橋剤を配合することにより小さくすることができ、後述の架橋剤の種類およびその配合割合、単量体の種類およびその配合割合等を調整することにより、上記範囲に調整される。
[50%歪時圧縮応力σ50に対する10%歪時圧縮応力σ10の比σ10/σ50]
50%歪時圧縮応力σ50は、高ひずみ時における圧縮応力を表し、10%歪時圧縮応力σ10は、低ひずみ時における圧縮応力を表す。なお、以降の説明では、50%歪時圧縮応力σ50に対する10%歪時圧縮応力σ10の比σ10/σ50のことを、適宜「圧縮応力比σ10/σ50」という。温度23℃におけるHIPEフォームの圧縮応力比σ10/σ50は、0.70を超え、1.0以下である。これにより、広いひずみ量範囲にわたって、エネルギー吸収性能の変化が少なくなる。圧縮応力比σ10/σ50が低すぎると、高ひずみ時における圧縮荷重が高くなり、高ひずみ時におけるエネルギー吸収性能が低下する。高ひずみ時におけるエネルギー吸収性能がより向上するという観点から、圧縮応力比σ10/σ50は、0.72以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましい。一方、ひずみ量によるエネルギー吸収性能の変化を抑制しつつ、低ひずみ時におけるエネルギー吸収性能を高めるという観点からは、圧縮応力比σ10/σ50は、0.95以下であることが好ましく、0.90以下であることがより好ましい。50%歪時圧縮応力σ50、10%歪時圧縮応力σ10の測定方法は、実施例において説明する。
ひずみ量が小さい領域における、エネルギー吸収性能の変化を抑制する観点から、30%歪時圧縮応力σ30に対する、10%歪時圧縮応力σ10の比σ10/σ30は、0.85以上1.0以下であることが好ましく、0.90以上1.0以下であることがより好ましい。
また、より広いひずみ量範囲にわたって、エネルギー吸収性能の変化を抑制する観点から、70%歪時圧縮応力σ70に対する、10%歪時圧縮応力σ10の比σ10/σ70は、0.35以上0.50以下であることが好ましい。
σ10/σ50等の圧縮応力比は、HIPEフォームの見掛け密度、基材樹脂を構成するモノマーに由来する成分、使用する架橋剤の種類や量、貫通孔の平均径、貫通孔の平均径に対する気泡の平均径との比等を調整することにより、上記範囲内に調整することができる。
[構成成分]
HIPEフォームを構成する架橋重合体は、具体的には、単官能のビニル系単量体と架橋剤との重合体であり、単官能のビニル系単量体に由来する成分を有する。本明細書において、ビニル系単量体は、スチレン系単量体、アクリル系単量体等である。ビニル系単量体としては、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体を用いることができる。
なお、HIPEフォームは、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体の重合体又は共重合体が架橋された架橋重合体を基材樹脂としているともいえる。
架橋重合体は、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体を含むビニル系単量体と、架橋剤との重合体から構成されていることが好ましい。具体的には、架橋重合体は、重合体骨格中にスチレン系単量体成分及び/又はアクリル系単量体成分を有するとともに、後述の架橋剤成分を有することが好ましい。この場合には、HIPEフォームの靱性及び剛性のバランスがより良好になる。スチレン系単量体成分は、架橋重合体におけるスチレン系単量体に由来する構成単位を意味し、アクリル系単量体成分は、架橋重合体におけるアクリル系単量体に由来する構成単位を意味する。
所望する物性を有する衝撃吸収材を得やすくなるという観点から、架橋重合体における、スチレン系単量体成分及び/又はアクリル系単量体成分の含有割合は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。同様の観点から、架橋重合体における、スチレン系単量体成分及び/又はアクリル系単量体成分の含有割合は、95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。
なお、架橋重合体における、スチレン系単量体成分、アクリル系単量体成分及び架橋剤成分以外の単量体に由来する成分の含有量は、架橋重合体を構成する、スチレン系単量体成分とアクリル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量%に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどのスチレン化合物等が挙げられる。アクリル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸アダマンチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸アダマンチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。また、アクリル系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル等も挙げられる。
架橋重合体は、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルとを含むビニル系単量体と、架橋剤との共重合体から構成されていても良いが、スチレン系単量体と、(メタ)アクリル酸エステルとを含むビニル系単量体と、架橋剤との共重合体から構成されていることが好ましい。換言すれば、架橋重合体は、重合体骨格中に、スチレン系単量体と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分(つまり構成単位)とを有することが好ましい。この場合には、所望の物性を有する架橋重合体から構成されたHIPEフォームが得られやすい。
なお、架橋重合体は、架橋された重合体であるため、重合体骨格中に架橋剤に由来する成分(つまり、構成単位)を有する。また、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルであり、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステルであることが好ましい。
架橋重合体が、スチレン系単量体に由来する成分と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分とを有し、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステルであることが好ましい。この場合には、所望の物性を有するHIPEフォームを得やすくなると共に、架橋重合体のガラス転移温度を所望の範囲に調整しやすくなるという効果が得られる。
ビニル系単量体が、スチレン系単量体を含む場合、ビニル系単量体における、スチレンの含有割合は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。また、スチレン系単量体と、(メタ)アクリル酸エステルとの重量比は、50:50~90:10であることが好ましく、60:40~80:20であることがより好ましい。この場合には、製造コストの削減や、所望の物性に調整しやすくなるという効果が得られる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
また、物性に優れると共に、所望のガラス転移温度を有する架橋重合体を安定して得ることができるという観点から、(メタ)アクリル酸エステルを構成する炭化水素基の炭素数は、1~20であることが好ましく、2~18であることがより好ましく、3~16であることがさらに好ましく、4~12であることがさらにより好ましい。なお、炭化水素基は、飽和炭化水素基であることがより好ましい。また、炭化水素基は、環状であっても、非環状であってもよい。これらの中でも、メタクリル酸イソボルニル及び/又はアクリル酸ブチルを用いることが好ましく、アクリル酸ブチルを用いることが特に好ましい。例えば、メタクリル酸イソボルニルを用いると、架橋重合体のガラス転移温度を容易に高くすることができ、アクリル酸ブチルを用いると、架橋重合体のガラス転移温度を容易に低くすることができる。
架橋重合体は、架橋構造を有しており、架橋剤成分を含有する。架橋剤成分は、架橋重合体における架橋剤に由来する構成単位のことである。架橋剤は、重合体を構成する高分子鎖間を架橋(結合)し、重合体中に架橋構造を形成する化合物である。
架橋剤としては、例えば、ビニル基及びイソプロペニル基から選択される官能基を分子内に少なくとも2つ有するビニル系化合物が用いられる。架橋重合体が架橋剤成分を所定量含有することにより、架橋重合体の剛性、靭性を高めることや、架橋重合体の架橋点間分子量の値を小さくすることができる。なお、上記ビニル系化合物には、アクリロイル基やメタクリロイル基のように、官能基の構造中にビニル基及び/又はイソプロペニル基を含む化合物も含まれる。架橋剤を安定して重合させる観点から、ビニル系化合物における、官能基の数は、6個以下であることが好ましく、5個以下であることが好ましく、4個以下であることがさらに好ましい。また、架橋重合体の靭性をより高めやすくなるという観点から、架橋剤は、分子の少なくとも両末端に官能基を有することが好ましく、分子の両末端のみに官能基を有することがより好ましい。
架橋重合体は、例えば1種類の架橋剤を用いて作製された、1種類の架橋剤成分を含有するものであってもよいが、架橋重合体の剛性を高めつつ、架橋重合体の靭性を高めやすいことから、比較的分子鎖が短いハード系架橋剤に由来するハード系架橋剤成分と、比較的分子鎖が長いソフト系架橋剤に由来するソフト系架橋剤成分とを含有することが好ましい。この場合には、HIPEフォームを構成する架橋重合体の架橋点間分子量Mc、温度23℃における圧縮応力比σ10/σ50等を上記範囲に調整し易くなる。また、衝撃吸収材の過度な脆化が抑制されやすくなると共に、厚みが薄い部位を有する等、複雑な形状を有するHIPEフォームを製造する場合であっても、HIPEフォームに欠け等が発生することを抑制することができる。なお、ハード系架橋剤のことを第1架橋剤といい、ソフト系架橋剤のことを第2架橋剤ということもできる。
ハード系架橋剤(つまり、第1架橋剤)は、官能基当量が130g/mol以下であるビニル系化合物であることが好ましい。このようなハード系架橋剤は、比較的分子鎖が短いものであるため、ビニル系単量体と共重合されることにより、ポリマー分子鎖の可動性を低下させるものと考えられる。ハード系架橋剤を用いることで、HIPEフォームの剛性を高めやすくなる。なお、HIPEフォームを製造しやすくする観点から、ハード系架橋剤の官能基当量の下限は、概ね30g/molであることが好ましく、40g/molであることがより好ましく、50g/molであることがさらに好ましく、60g/molであることがさらにより好ましい。また、ハード系架橋剤の官能基当量の上限は120g/molであることが好ましい。なお、ハード系架橋剤の官能基当量は、官能基1個当たりのハード系架橋剤のモル質量を意味する。
ソフト系架橋剤(つまり、第2架橋剤)は、官能基当量が130g/molを超え、5000g/mol以下であるビニル系化合物であることが好ましい。このようなソフト系架橋剤は、比較的分子鎖が長いものであるため、ビニル系単量体と共重合されることにより、ポリマー分子鎖の可動性を大きく低下させることなく、ポリマー分子鎖間を架橋できるものと考えられる。ソフト系架橋剤を用いることで、HIPEフォームの靭性を高めやすい。なお、取り扱いが容易であるという観点から、ソフト系架橋剤の官能基当量の上限は、3000g/molであることが好ましく、2000g/molであることがより好ましく、1000g/molであることがさらに好ましい。また、ソフト系架橋剤の官能基当量の下限は150g/molであることが好ましく、180g/molであることがより好ましく、200g/molであることがさらに好ましい。なお、ソフト系架橋剤の官能基当量は、官能基1個当たりのソフト系架橋剤のモル質量を意味する。
上記効果がより向上するという観点、具体的には、HIPEフォームの靱性及び剛性をより高め易くなるという観点、特に衝撃吸収材では、過度な脆化が抑制され、取り扱い性がより向上するという観点から、ソフト系架橋剤の官能基当量は、ハード系架橋剤の官能基当量よりも、60g/mol以上大きいことが好ましく、80g/mol以上大きいことがより好ましく、100g/mol以上大きいことがさらに好ましく、120g/mol以上大きいことがさらにより好ましい。換言すれば、ソフト系架橋剤の官能基当量とハード系架橋剤の官能基当量との差が60g/mol以上である、80g/mol以上であることがより好ましく、100g/mol以上であることがさらに好ましく、120g/mol以上であることがさらにより好ましい。なお、2種類以上のハード系架橋剤を用いる場合、すべてのハード系架橋剤の官能基当量の重量平均値を算出し、この値をハード系架橋剤の官能基当量とする。同様に、2種類以上のソフト系架橋剤を用いる場合、すべてのソフト系架橋剤の官能基当量の重量平均値を算出し、この値をソフト系架橋剤の官能基当量とする。
ハード系架橋剤として用いられるビニル系化合物としては、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ただし、ハード系架橋剤における官能基の数は2つ以上である。官能基は、ビニル基及び/又はイソプロペニル基であることが好ましい。ハード系架橋剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。つまり、架橋重合体を構成するハード系架橋剤成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。なお、HIPEフォームの剛性を調整し易くなるという観点から、ハード系架橋剤としては、ジビニルベンゼン及び/又はブタンジオールジ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
ソフト系架橋剤として用いられるビニル系化合物としては、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、両末端(メタ)アクリル変性シリコーン等が挙げられる。ただし、ソフト系架橋剤における官能基の数は2つ以上である。官能基は、ビニル基及び/又はイソプロペニル基であることが好ましい。ソフト系架橋剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。つまり、架橋重合体を構成するソフト系架橋剤成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。なお、HIPEフォームの靭性を調整し易くなるという観点から、ソフト系架橋剤としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。この場合、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートにおけるエチレングリコール由来の繰り返し構造単位の数は、3~23であることが好ましい。
代表的な架橋剤の分子量、官能基1つ当たりの分子量(つまり、官能基当量)を表1に示す。
Figure 0007560334000001
架橋重合体が、少なくとも、スチレン系単量体と、アクリル酸エステルと、架橋剤との共重合体から構成される場合、架橋点間分子量Mc、温度23℃における圧縮応力比σ10/σ50、を上記範囲に調整し易くなる観点、HIPEフォームの靱性と剛性とのバランスがより良好になるという観点から、架橋重合体におけるスチレン系単量体成分の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、30重量部以上、90重量部以下であることが好ましく、35重量部以上、80重量部以下であることがより好ましく、40重量部以上、70重量部以下であることがさらに好ましい。同様の観点から、架橋重合体における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、5重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、10重量部以上、40重量部以下であることがより好ましく、15重量部以上、35重量部以下であることがさらに好ましい。また、スチレン系単量体として、スチレンを用いることが好ましく、スチレン系単量体中のスチレンの含有割合が50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
架橋重合体の架橋点間分子量Mc、温度23℃における圧縮応力比σ10/σ50、を上記範囲に調整し易くなる観点から、架橋重合体中の架橋剤成分の含有量(具体的には、ソフト系架橋剤成分とハード系架橋剤成分との合計含有量)は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、5重量部以上、30重量部以下であることが好ましく、7重量部以上、27重量部以下であることがより好ましい。
HIPEフォームの剛性を高めやすく、架橋点間分子量Mc、温度23℃における圧縮応力比σ10/σ50を上記範囲に調整し易くなる観点から、架橋重合体におけるハード系架橋剤成分の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、1重量部以上、18重量部以下であることが好ましく、3重量部以上、17重量部以下であることがより好ましく、5重量部以上、15重量部以下であることがさらに好ましい。また、HIPEフォームが過度に脆化することを抑制しつつ、架橋点間分子量Mc、温度23℃における圧縮応力比σ10/σ50を上記範囲に調整し易くなる観点から、架橋重合体におけるソフト系架橋剤成分の含有量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、2重量部以上、18重量部以下であることが好ましく、3重量部以上、10重量部以下であることがより好ましい。架橋点間分子量Mc、温度23℃における圧縮応力比σ10/σ50を上記範囲に調整し易くなる観点から、ソフト系架橋剤成分に対するハード系架橋剤成分の重量比が0.2以上、6以下であることが好ましく、0.3以上、5以下であることがより好ましく、1以上、4以下であることがさらに好ましく、1.2以上、3.0以下であることが特に好ましい。
[製造方法]
HIPEフォームは、高内相エマルションを重合してなり、具体的には、油中水型高内相エマルションを重合させることにより製造される。油中水型高内相エマルションの有機相は、ビニル系単量体、架橋剤、乳化剤、重合開始剤等を含む連続相であり、水相は、脱イオン水等の水を含む分散相である。具体的には、以下のように、乳化工程、重合工程、乾燥工程を行うことにより、HIPEフォームを製造することができる。
まず、撹拌しながら、ビニル系単量体、架橋剤、乳化剤、重合開始剤等の有機物を含む油性液体(有機相)に、水を含む水性液体(水相)を滴下することにより、油中水型高内相エマルションを作製する(乳化工程)。乳化工程では、体積比で水相が有機相の例えば3倍以上となるように油性液体に水性液体を添加することにより、高内相エマルションを作製することができる。なお、有機相に内包させる水相の比率は、有機相と水相との重量比で調整することができる。高内相エマルションにおける前記水相の含有量は、前記有機相100重量部に対して、900~2700重量部であることが好ましく、1000~2500重量部であることがより好ましく、1100~2400重量部であることがさらに好ましい。次いで、高内相エマルションを加熱して有機相のビニル系単量体、架橋剤等を重合させることにより、重合生成物(具体的には、水分を含んだ架橋重合体)を得る(重合工程)。その後、重合生成物を乾燥させることにより、架橋重合体から構成されたHIPEフォームを得る(乾燥工程)。
乳化工程での撹拌速度は、特に限定されないが、例えば、撹拌動力密度が0.1kW/m3~5kW/m3の範囲にて調整することができる。また、乳化工程での油性液体への水性液体の添加方法は、特に限定されないが、予め撹拌容器内に油性液体と水性液体を投入した状態から撹拌を開始してもよく、予め撹拌容器内に油性液体のみを投入、撹拌し、これにポンプ等を用いて水性液体を投入してもよい。この場合の水性液体の添加速度は、特に限定されないが、例えば、油性液体に対して10wt%/min~1000wt%/minの範囲にて調整することができる。また、乳化の方法としては、撹拌装置を備えた撹拌容器や遠心振とう機を用いて乳化するバッチ式の乳化工程、スタティックミキサーやメッシュ等を備えたライン中に、油性液体と水性液体を連続的に供給して混合させる連続式の乳化工程など、乳化の方法は特に限定されない。
水相は、脱イオン水等の水、重合開始剤、電解質などを含むことができる。乳化工程では、例えば、油性液体、水性液体をそれぞれ作製し、撹拌下で油性液体に水性液体を添加して、高内相エマルションを作製する。また、乳化工程において、水相及び/又は有機相には、難燃剤、難燃助剤、耐光剤、着色剤等の添加剤を適宜配合することができる。
難燃剤は、HIPEフォームの難燃性を向上させるために用いられる。難燃剤としては、ハロゲン、リン、窒素、シリコーン等を含む有機化合物;金属水酸化物、リン、窒素等を含む無機化合物等が挙げられ、難燃剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用されうる。難燃剤を配合する場合、その配合量は、架橋重合体を構成するビニル系単量体成分と架橋剤成分との合計100重量部に対して、5~20重量部であることが好ましい。少量の添加でも優れた難燃性を付与しやすい観点から、難燃剤としては、臭素化ビスフェノール系難燃剤を用いることが好ましく、2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル基を有する臭素化ビスフェノール系難燃剤及び/又は2,3-ジブロモプロピル基を有する臭素化ビスフェノール系難燃剤を用いることがより好ましく、2,2-ビス(4-(2、3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル)プロパンを用いることがさらに好ましい。
また、HIPEフォームには、難燃効率を向上させる目的として、難燃助剤を適宜配合することができる。例えば、ハロゲン系難燃剤を用いる場合において、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド等のラジカル発生剤を用いると、ラジカル発生剤の分解によって難燃剤中のハロゲンの脱離が促進され、難燃効率の向上が期待できる。また、ハロゲン系難燃剤を用いる場合において、難燃助剤として三酸化アンチモン等のアンチモン化合物を用いると、ハロゲン系難燃剤によるラジカルトラップの効果と、酸化アンチモンによる空気遮断の効果とが相乗的に複合されることで難燃効率の向上が期待できる。なお、難燃剤は単独で用いても良く、異なる難燃機構の難燃剤を2種以上併用しても良い。
重合開始剤は、ビニル系単量体の重合を開始させるために用いられる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤を用いることができる。具体的には、ジラウロイルパーオキサイド(LPO)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレエート、t-ヘキシルパーオキシピバレエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’アゾビス(4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物等が用いられる。重合時の水の沸騰を抑制するという観点から、重合開始剤の1時間半減期温度は、95℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。また、安全性の観点から、室温における重合開始剤の分解を抑制するため、重合開始剤の1時間半減期温度は、50℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましい。
重合開始剤としては、1種類以上の物質を用いることができる。また、HIPEフォームの密度の均一性を低下させることなく、重合時間を短縮することができる観点からは、1時間半減期温度が50℃以上70℃未満である有機過酸化物と、1時間半減期温度が70℃以上90℃以下である有機過酸化物とを、組み合わせて用いることが好ましい。
重合開始剤は、有機相及び/又は水相に添加することができる。また、水相に重合開始剤を添加する場合は、2,2’アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)ジヒドロクロリド、2,2’アゾビス(2-メチルプロピオナミジンジヒドロクロリド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性の重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤の添加量は、例えば、ビニル系単量体と架橋剤との合計100重量部に対して、0.1~5重量部の範囲とすることができる。
乳化剤は、高内相エマルションの形成及び安定化のために用いられる。乳化剤としては、例えば、界面活性剤を用いることができる。具体的には、ポリグリセリン縮合リシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンオレエート、ポリグリセリンラウレート、ポリグリセリンミリステート等のグリセロールエステル類;ソルビタンオレエート、ソルビタンステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート等のソルビトールエステル類;エチレングリコールソルビタンエステル類;エチレングリコールエステル類;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体等が用いられる。乳化剤の添加量は、例えば、ビニル系単量体と架橋剤と乳化剤との合計100重量部に対して、1~30重量部の範囲とすることができる。
電解質は、水相にイオン強度を付与し、乳化物の安定性を高めるために用いられる。電解質としては、水溶性の電解質を用いることができる。具体的には、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等が用いられる。電解質の添加量は、例えば、水性液体100重量部に対して、0.01~10重量部の範囲とすることができる。
重合工程での重合温度は、例えば、ビニル系重合体の種類、重合開始剤の種類、架橋剤の種類等によって調整される。重合温度は、例えば50℃~90℃である。
乾燥工程では、オーブン、真空乾燥機、高周波・マイクロ波乾燥機等を用いて、水分を含んだ架橋重合体を乾燥する。乾燥が完了することで、重合前の乳化物において水滴があった箇所が、乾燥後の重合体においては気泡となり、多孔体を得ることができる。乾燥前に、例えばプレス機等を用いて圧搾することにより架橋重合体を脱水させることができる。圧搾は、室温(例えば23℃)で行ってもよいが、例えば、HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度以上の温度で行うこともできる。この場合には、圧搾による脱水が容易になり、乾燥時間を短くすることができる。また、遠心分離により、架橋重合体の脱水を行うこともできる。この場合にも乾燥時間が短くなる。
以下に、衝撃吸収材の実施例及び比較例について説明する。衝撃吸収材2は、HIPEフォーム1から構成されている(図1(a)~(c)参照)。本例では、以下の方法により、表2~4の実施例、表5及び表6の比較例に示すHIPEフォームを製造した。なお、本発明に係るHIPEフォームの具体的な態様は、以下に示す実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない範囲において適宜構成を変更することができる。なお、実施例における「%」は、重量%を意味する。
[実施例1]
まず、トルク変換器付撹拌装置の付いた、内容積が3Lのガラス容器に、ビニル系単量体としてのスチレン:44g及びアクリル酸ブチル:25g、ハード系架橋剤(以下、第1架橋剤という)としての純度57%のジビニルベンゼン:16g(ジビニルベンゼンとしては、9.12g)、ソフト系架橋剤(以下、第2架橋剤という)としてのポリエチレングリコールジアクリレート(具体的には、新中村化学工業株式会社製のNKエステルA-400/純度95%):5g(ポリエチレングリコールジアクリレートとしては、4.75g)、乳化剤としてのポリグリセリン縮合リシノレート(具体的には、阪本薬品工業株式会社製のCRS-75):10g、重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド:0.5g、臭素系難燃剤として臭素化ビスフェノールA誘導体(具体的には、第一工業製薬株式会社製のSR-130:2,2-ビス(4-(2、3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル)プロパン):5g、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド:1gを投入した。これらをガラス容器内で混合することにより、有機相を形成した。
撹拌動力密度1.6kW/m3で有機相を撹拌しながら、脱イオン水:2400gを約450g/minの速度で添加し、脱イオン水の添加が終了してからも10分間撹拌を継続し、油中水型(つまりW/O型)の高内相エマルションを調製した。乳化完了後の撹拌動力密度は1.4kW/m3であった。なお、撹拌動力密度(kW/m3)は、撹拌装置のトルク(N・m)、回転数(rpm)より動力(kW)を算出し、内容物の体積(m)で除することで求めることができる。
次いで、撹拌動力密度を0.1kW/m3に下げ、ガラス容器にアスピレーターを接続して容器内を減圧し、エマルション中に含まれる微小気泡を除去した。減圧開始から10分後、撹拌を停止して容器内を大気圧に戻した。
ガラス容器の内容物を、縦約250mm、横約180mm、深さ約90mmの容器に充填し、70℃のオーブンにて約18時間かけて重合し、水を含有するHIPEフォームを得た。HIPEフォームをオーブンから取出し、室温まで冷却した。
冷却後、容器からHIPEフォームを取出し、水で洗浄した後脱水し、85℃のオーブンで恒量になるまで乾燥した。このようにして、ビニル系架橋重合体から構成された、直方体形状のHIPEフォーム(具体的には、衝撃吸収材)を得た。このHIPEフォームの見掛け密度は41g/L(つまり、41kg/m3)であった。
本例の仕込み組成等を表2に示す。なお、架橋重合体における、各種成分(ビニル系単量体及び架橋剤)の含有量は、仕込み時における、各種成分の配合量(架橋剤に関しては、不純物を除く配合量)と、ビニル系単量体成分と架橋剤成分(不純物を除く)との合計配合量とから求めることができる。
表中においては、化合物名を以下のように省略した。
St:スチレン
BA:アクリル酸ブチル
IBOMA:メタクリル酸イソボルニル
DVB:ジビニルベンゼン
PEGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート
PGPR:ポリグリセリン縮合リシノレート
LPO:ジラウロイルパーオキサイド
LTCP:ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート
臭素化BPA:臭素化ビスフェノールA誘導体
DCP:ジクミルパーオキサイド
[実施例2~13、比較例1~8]
仕込み組成を表2~表6に示すように変更した点を除き、実施例1と同様にしてHIPEフォームを製造した。
なお、実施例4においては、有機相を撹拌する際の撹拌動力密度は3.0kW/m3であり、乳化完了後の撹拌動力密度は2.6kW/m3であった。また、実施例5においては、有機相を撹拌する際の撹拌動力密度は0.04kW/m3であり、乳化完了後の撹拌動力密度は0.03kW/m3であった。また、実施例6においては、有機相を撹拌する際の撹拌動力密度は5.0kW/m3であり、乳化完了後の撹拌動力密度は4.4kW/m3であった。また、実施例7においては、有機相を撹拌する際の撹拌動力密度は0.23kW/m3であり、乳化完了後の撹拌動力密度は0.20kW/m3であった。また、比較例3においては、有機相を撹拌する際の撹拌動力密度は7.8kW/m3であり、乳化完了後の撹拌動力密度は6.9kW/m3であった。また、比較例4においては、有機相を撹拌する際の撹拌動力密度は0.02kW/m3であり、乳化完了後の撹拌動力密度は0.01kW/m3であった。また、比較例5においては、有機相を撹拌する際の撹拌動力密度は0.04kW/m3であり、乳化完了後の撹拌動力密度は0.03kW/m3であった。
[評価]
実施例1~13、比較例1~8について、下記の測定、評価を行った。結果を表2~表6に示す。
(見掛け密度:ρ)
上記のようにして製造されたHIPEフォームの中心を含むように、HIPEフォームから、規定サイズ(具体的には、厚み:20mm、幅:25mm、長さ:120mm)の、スキン層を有しない試験片を3つ切り出した。次いで、試験片の重量と実寸法(具体的には、体積)を測定した。試験片の重量を体積で除することにより、試験片の見掛け密度を算出し、3つの試験片の見掛け密度の算術平均値をHIPEフォームの見掛け密度ρとした。
(ガラス転移温度:Tg)
JIS K7121:1987に基づき、示差走査熱量(つまり、DSC)分析によりTgを算出した。測定装置としては、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製のDSC250を用いた。具体的には、まず、HIPEフォームの中心付近から約2mgの試験片を採取した。試験片の状態調節としては、「(3)一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合」を採用した。具体的には、採取した試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室で24時間以上静置した。次いで、試験片に対して、10℃/分の昇温速度でガラス転移終了時の温度より約30℃高い温度まで加熱し、この温度のまま10分間保持した後、10℃/分の冷却速度でガラス転移温度より約50℃低い温度まで冷却した。例えば、実施例1のHIPEフォームのTgの測定においては、105℃まで加熱した後、20℃まで冷却した。冷却後、この温度のまま10分間保持して装置を安定させ、20℃/分の昇温速度でガラス転移終了時の温度より約30℃高い温度までDSC測定を行うことによりDSC曲線を得た。このDSC曲線から中間点ガラス転移温度を求め、この値をガラス転移温度Tgとした。なお、実施例1~13、比較例1~8における測定温度範囲は0℃~185℃の範囲であった。
(架橋点間分子量:Mc)
HIPEフォームの中心付近から、10mm×10mm×10mmの立方体形状の、スキン層を有しない試験片を3つ切り出した。この3つの試験片に対して、動的粘弾性分析(DMA)を行うことにより、0~200℃の温度領域における貯蔵弾性率E’を測定した。測定装置としては、株式会社日立ハイテクサイエンス製のDMA7100を用いた。なお、測定条件の詳細は以下の通りである。
・変形モード:圧縮
・温度:0~200℃
・昇温速度:5℃/min
・周波数:1Hz
・荷重:98mN
上記3つの試験片に対する動的粘弾性分析より測定された、ゴム状平坦部における貯蔵弾性率E’と温度Tを用い,下記の式(I)から架橋点間分子量Mcを算出した。なお、図2に、HIPEフォームのDMAカーブの模式図を示す。DMAカーブは、横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率E’をプロットして得られる。実施例においては、HIPEフォームを構成する架橋重合体のゴム状平坦部である、Tg+50℃~Tg+80℃の温度域内から無作為に選択された3つの温度における貯蔵弾性率E’からそれぞれの架橋点間分子量を算出し、算出された9つの架橋点間分子量の算術平均値を架橋点間分子量Mcとして採用した。なお、Tgは、HIPEフォームを構成する架橋重合体のガラス転移温度である。
Mc=2(1+μ)ρRT/E’ ・・・(I)
なお、上記動的粘弾性分析の測定条件では、HIPEフォームを構成する架橋重合体に生じる歪は極微小であり、体積変化が起こらないと見なすことができるため、体積一定の条件、すなわちポアソン比を0.5として、貯蔵弾性率E’、架橋点間分子量Mcを算出した。
(気泡の平均径)
気泡径の測定方法は以下の通りである。フェザー刃を用いて、直方体形状のHIPEフォームにおける短手方向と厚み方向との中央、及び、短手方向の両端における厚み方向の中央から観察用の試料をそれぞれ切り出した。次いで、試料を、低真空走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製のMiniscope(登録商標) TM3030Plus)で観察し、断面写真を撮影した。実施例、比較例の断面写真(倍率:500倍)の代表例を図1(a)~(c)に示す。なお、詳細な観察条件は以下の通りとした。
・試料の前処理:メタルコーティング装置(株式会社真空デバイスのMSP-1S)を用いて、試料の導電処理を行った。ターゲット電極にはAu-Pdを用いた。
・観察倍率:50倍
・加速電圧:5kV
・観察条件:表面(低倍率)
・観察モード:二次電子(標準)
次に、撮影した断面写真を画像処理ソフト(ナノシステム(株)のNanoHunter NS2K-Pro)で解析し、各試料の平均気泡径を求めた。得られた3つの平均気泡径を算術平均することで、HIPEフォームの気泡径の平均径を求めた。詳細な解析の手順および条件は以下の通りとした。
(1)モノクロ変換
(2)平滑化フィルタ(3×3、8近傍、処理回数=1)
(3)濃度ムラ補正(背景より明るい、大きさ=5)
(4)NS法2値化(背景より暗い、鮮明度=9、感度=1、ノイズ除去、濃度範囲=0~255)
(5)収縮(8近傍、処理回数=1)
(6)特徴量(面積)による画像の選択(50~∞μm2のみ選択、8近傍)
(7)隣と接続されない膨張(8近傍、処理回数=3)
(8)円相当径計測(面積から計算、8近傍)
(貫通孔の平均径)
観察倍率を500倍に、観察モードを反射電子法(標準)に変更した以外は、気泡径と同様にして断面写真を撮影した。
次に、撮影した断面写真を画像処理ソフト(三谷商事株式会社製のWinROOF2013)で解析し、各試料の平均貫通孔径を求めた。得られた3つの平均貫通孔径を算術平均することで、HIPEフォームの貫通孔の平均径を求めた。詳細な解析の手順および条件は以下の通りとした。
(1)モノクロ画像化
(2)平均化フィルタ(フィルタサイズ=3×3、回数=1)
(3)自動二値化(判別分析法、抽出領域=暗い領域、対象濃度範囲=0~255)
(4)モフォロジーの調整(膨張、回数=3)
(5)形状特徴からの計測(測定項目=円相当径、個数)
(単位面積当たりの気泡数の平均値)
前述の気泡の平均径の計測において求めた気泡の総数を、実際のSEM画像の観察面積(具体的には、50倍観察像において、縦2.4mm、横3.2mmの7.68mmの面積)で除することで、単位面積当たりの気泡数を算出し、得られた3つの単位面積当たりの気泡数を算術平均することで、単位面積当たりの気泡数の平均値を求めた。
(単位面積当たりの貫通孔数の平均値)
前述の貫通孔の平均径の計測において求めた貫通孔の総数を、実際のSEM画像の観察面積(具体的には、500倍観察像において、縦240μm、横320μmの76800μmの面積)で除することで、単位面積当たりの貫通孔数を算出し、得られた3つの単位面積当たりの貫通孔数を算術平均することで、単位面積当たりの貫通孔数の平均値を求めた。
(HIPEフォームの見掛け密度に対するHIPEフォームの気泡壁相当厚みtの比)
算出されたHIPEフォームの見掛け密度、HIPEフォームの気泡の平均径、HIPEフォームを構成する基材樹脂の密度を下記式(α)に代入し、HIPEフォームの気泡壁相当厚みt(μm)を算出した。なお、実施例、比較例における基材樹脂の密度は1.1×103kg/m3である。式(α)において、d:HIPEフォームの気泡の平均径、X=ρs/ρf、ρs:基材樹脂の密度、ρf:HIPEフォームの見掛け密度である。
t=d[(X/(X-1))1/3-1] ・・・(α)
算出されたHIPEフォームの気泡壁相当厚みt(μm)を、HIPEフォームの見掛け密度(kg/m)で除することにより、HIPEフォームの見掛け密度に対するHIPEフォームの気泡壁相当厚みtの比(μm/[kg/m3])を算出した。
(独立気泡率)
HIPEフォームの中心付近から、25mm×25mm×25mmのスキン層を有しない試験片を3つ切り出し、JIS K7138:2006に基づき、圧力変化法(ピクノメータ法)によりHIPEフォームの独立気泡率を測定した。測定には、東京サイエンス株式会社製の空気比較式比重計1000型を用いた。なお、下記の式(II)より、各試験片の独立気泡率を求め、3つの試験片の平均値を採用した。
独立気泡率[%]=(Vx-W/ρ)/(Va-W/ρ)×100 ・・・(II)
式(II)において、Vxは上記方法で測定されるHIPEフォームの真の体積[mL]、VaはHIPEフォームの見かけ体積[mL]、Wはサンプル重量[g]、ρはHIPEフォームを構成する樹脂の比重[-]である。
表中では、独立気泡率が1%未満の場合を「<1」と表記し、95%を超える場合を「>95」表記した。
ひずみ量の増加に伴う圧縮物性の変化を抑制しやすくなる観点から、HIPEフォームの独立気泡率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%未満であることが特に好ましい。
(圧縮弾性率:E、10%歪時圧縮応力:σ10、50%歪時圧縮応力σ50等)
HIPEフォームの中心付近から、25mm×50mm×50mmのスキン層を有しない試験片を切り出し、この試験片を用いて圧縮試験を実施した。具体的には、卓上形精密万能試験機(具体的には、株式会社島津製作所製のオートグラフAGS-10kNX)を用いて、JIS K 6767:1999に準拠して、弾性率、10%歪時圧縮応力σ10、50%歪時圧縮応力σ50等を測定した。本明細書ではx%歪時圧縮応力をσxと表記する。また、圧縮弾性率Eの大きさは、見掛け密度ρに対する依存度が高いため、圧縮弾性率を見掛け密度で除することにより、見掛け密度に対する圧縮弾性率の値E/ρを算出した。なお、圧縮試験の詳細は以下の通りである。
・室温:23℃
・湿度:50%
・試験片サイズ:縦:50mm、横:50mm、厚み:25mm
・圧縮速度:10mm/min
・圧縮率:0~80%
(エネルギー吸収量EA)
エネルギー吸収量は、荷重-変位曲線(つまり、圧縮波形)の面積で表される。
上記圧縮試験により測定された荷重-変位曲線における、ひずみ量0%からひずみ量50%までの領域のエネルギー吸収量(EA)を算出した。このエネルギー吸収量EAと、圧縮試験に用いたHIPEフォームの体積V、見掛け密度ρとから、単位重量当たりのエネルギー吸収量EA/[V・ρ]を算出した。
エネルギー吸収特性に優れ、衝撃吸収材の部品重量を軽くするという観点から、エネルギー吸収量EA/[V・ρ]は1.0J/g以上であることが好ましく、1.5J/g以上であることがより好ましく、2.0J/g以上であることがさらに好ましい。また、衝撃吸収材が硬くなりすぎず、適度に衝撃を吸収できると共に、自動車資材として用いた際に衝突時の乗員の安全性を確保しやすくなるという観点から、エネルギー吸収量EA/[V・ρ]は5.0J/g以下であることが好ましく、4.0J/g以下であることがより好ましく、3.0J/g以下であることがさらに好ましい。
(シャルピー衝撃強度:S)
HIPEフォームの中心付近から厚み:4mm、横:10mm、縦:80mmの、スキン層を有しない試験片を5つ切り出し、JIS K7111:2006に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験片のシャルピー衝撃強度を測定した。測定は、株式会社東洋精機製作所製のシャルピー衝撃試験機を用い、測定温度23℃、ノッチなしの条件で行った。5点の平均値を採用した。
HIPEフォームの過度な脆化が抑制され、衝撃吸収材としての取り扱い性を高めやすい観点から、シャルピー衝撃強度の値は、100J/m以上であることが好ましく、150J/m以上であることがより好ましく、200J/m以上であることがさらに好ましい。
Figure 0007560334000002
Figure 0007560334000003
Figure 0007560334000004
Figure 0007560334000005
Figure 0007560334000006
表2~表4より理解されるように、実施例のHIPEフォームは、単位重量あたりのエネルギー吸収量に優れ、広いひずみ量範囲にわたってエネルギー吸収性能の変化が少ない。したがって、実施例のHIPEフォームは、衝撃吸収性能に優れた衝撃吸収材であるといえる。
比較例1は、見掛け密度が小さい例であり、単位重量あたりのエネルギー吸収量が不十分であった。
比較例2は、見掛け密度が大きい例であり、高ひずみ時における圧縮荷重が高く、高ひずみ時におけるエネルギー吸収性能が低下していた。
比較例3~5、比較例7は、圧縮応力比σ10/σ50が小さい例である。これらの比較例は、ひずみ量の増加に伴う、圧縮荷重の変化が大きいものであった。また、比較例3、比較例7は、単位重量あたりのエネルギー吸収量が不十分であった。
比較例6は、ガラス転移温度が低い例であり、比較例8は、架橋点間分子量が小さい例である。比較例6、比較例8は、いずれも単位重量あたりのエネルギー吸収量が不十分であった。
1 HIPEフォーム
11 架橋重合体
12 気泡壁
13 気泡
14 貫通孔
2 衝撃吸収材

Claims (5)

  1. HIPEフォームから構成される衝撃吸収材であって、
    上記HIPEフォームは、スチレン系単量体及び/又はアクリル系単量体に由来する成分を含む架橋重合体を基材樹脂とし、
    上記架橋重合体のガラス転移温度が60℃以上であり、
    上記架橋重合体の架橋点間分子量が3×103以上であり、
    上記HIPEフォームの見掛け密度が35kg/m3以上100kg/m3未満であり、
    上記HIPEフォームの、23℃における、50%歪時圧縮応力に対する10%歪時圧縮応力の比が0.70を超え、1.0以下である、衝撃吸収材。
  2. 上記HIPEフォームにおける、気泡の平均径が20~100μmであり、
    上記HIPEフォームの気泡壁を貫通し、隣接する気泡間を連通する貫通孔の平均径が5~20μmであり、
    上記貫通孔の平均径に対する、上記気泡の平均径の比が3~5である、請求項1に記載の衝撃吸収材。
  3. 上記HIPEフォームにおける単位面積当たりの気泡数の平均値が120個/mm2以上2400個/mm2以下である、請求項1又は2に記載の衝撃吸収材。
  4. 上記架橋重合体が、スチレン系単量体に由来する成分と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する成分とを含み、上記(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の衝撃吸収材。
  5. 上記架橋重合体が、官能基当量が130g/mol以下である第1架橋剤に由来する成分と、官能基当量が130g/molを超え、5000g/mol以下である第2架橋剤に由来する成分とを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の衝撃吸収材。
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