JP7563997B2 - 酸化スケールの除去方法及びステンレス鋼材の製造方法 - Google Patents
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ステンレス鋼材は、その製造工程において表面に酸化スケールが形成されることがあるため、酸洗によって酸化スケールを除去することが行われている。例えば、一般的なステンレス鋼板は、次のような工程によって製造される。ステンレス鋼の原料を溶解した溶鋼を連続鋳造してスラブとし、スラブを熱間圧延することによって熱延板(厚板材)が得られる。また、熱延板を冷間圧延することによって冷延板(薄板材)が得られる。なお、熱延板及び冷延板は、必要に応じてコイル状に巻き取られる。また、熱延板及び冷延板は、必要に応じて焼鈍が行われる。このようなステンレス鋼板の製造において、熱間圧延後の熱延板及び冷間圧延後の冷延板には酸化スケールが形成されるため、酸洗によって酸化スケールを除去することが行われる。
ここで、本明細書において「ステンレス鋼板」とは熱延板及び冷延板の両方を含む概念である。また、以下、ステンレス鋼材の表面に形成された酸化スケールを除去することを「デスケール」と称することがある。
また、本発明は、生産効率が高く、外観が良好なステンレス鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
X方向に前記パルスレーザ光を往復走査しながら照射するとともに、前記X方向に垂直なY方向に前記ステンレス鋼材を移動させる照射工程と、
前記照射工程後に、酸洗処理を行う酸洗処理工程と
を含み、
前記パルスレーザ光のパルス幅が10~1000nsであり、
前記往復走査の折り返し部及びその近傍における前記パルスレーザ光のフルエンスを、前記往復走査の主走査部における前記パルスレーザ光のフルエンスよりも小さくし、
前記照射工程は、前記ステンレス鋼材の表面のうちの部分Aにおいて前記パルスレーザ光の照射を行う第1照射工程と、前記第1照射工程後に前記ステンレス鋼材の表面のうちの部分Bにおいて前記パルスレーザ光の照射を行う第2照射工程とを含み、
前記部分Aと前記部分Bとの間のX方向における前記パルスレーザ光の照射領域の重なりが、前記部分A及び前記部分BのそれぞれにおけるX方向の走査幅の1~50%である、酸化スケールの除去方法である。
また、本発明によれば、生産効率が高く、外観が良好なステンレス鋼材の製造方法を提供することができる。
なお、本明細書において成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
ステンレス鋼材としては、特に限定されないが、好ましくはステンレス鋼板である。なお、本明細書において「鋼板」とは、鋼帯を含む概念である。また、ステンレス鋼板は、熱間圧延後の熱延板や冷間圧延後の冷延板であってよいし、それらを焼鈍した後の焼鈍板であってもよい。
ここで、ステンレス鋼材の製造方法としてステンレス鋼板の製造方法を例に挙げ、図1のフロー図を用いて説明する。
図1は、ステンレス鋼板が熱延焼鈍板である場合の製造方法を示す例である。この製造方法は、図1に示すように、製鋼工程(S1)、連続鋳造工程(S2)、熱間圧延工程(S3)、連続焼鈍工程(S4)及び酸化スケール除去工程(S5)を含む。
ステンレス鋼板の材料となるステンレス鋼の鋼種については特に限定されない。例えば、Siを2.5~5.0%、Crを18~20%、Niを12~20%含む難酸洗鋼、及びSUS304、SUS430、SUS316などの汎用鋼種をはじめ、種々のステンレス鋼を材料として用いることができる。
次に、連続鋳造工程(S2)では、精錬炉で生成された溶鋼を取鍋に取り出した後、取鍋から鋳型に連続的に流し込んで冷却する。そして、冷えて固まったステンレス鋼を所定の長さに切り分けて複数のスラブを生成する。
次に、酸化スケール除去工程(S5)では、熱延焼鈍板の表面に形成された酸化スケールに対してパルスレーザ光を照射してデスケールを行う(以下、「レーザデスケール」という)。このレーザデスケールは、レーザアブレーションを利用した技術である。レーザアブレーションは、レーザ光の照射によって照射対象の物質を蒸散させることができる。また、酸化スケール除去工程(S5)では、レーザデスケールの後に、必要に応じて酸洗処理によるデスケールを行ってもよい。
レーザデスケールは、X方向にパルスレーザ光を往復走査しながら照射するとともに、X方向に垂直なY方向にステンレス鋼板を移動させる照射工程を含む。この照射工程は、図2に示すようなレーザ光照射装置10を用いて行うことができる。レーザ光照射装置10は、レーザ発振器11、レーザヘッド12、駆動部(不図示)及び制御部(不図示)を備えている。このレーザ光照射装置10では、レーザ発振器11からパルス発振されたパルスレーザ光13をレーザヘッド12からX方向(図2では、ステンレス鋼板1の幅方向)に往復走査しながら照射するとともに、X方向に垂直なY方向(図2ではステンレス鋼板1の搬送方向)にステンレス鋼板1を移動させる。このような照射工程により、酸化スケールにパルスレーザ光13を連続的に照射することができるため、酸化スケールを効率的に蒸散させることができる。
レーザヘッド12は、レーザ発振器11からパルス発振されたパルスレーザ光13を集光し、ステンレス鋼板1の表面に形成された酸化スケールに照射する。
パルスレーザ光13のエネルギーは、主走査部20に比べて折り返し部21及びその近傍22で集中するため、当該部分の入熱量が増大する。そのため、主走査部20においてデスケールに必要とされるパルスレーザ光13のフルエンスを維持した状態で、折り返し部21及びその近傍22でも同様にパルスレーザ光13を照射すると、ステンレス鋼板1の表面が溶融して過大な凹凸部が形成されてしまう。この過大な凹凸部は、表面疵の原因となる。例えば、熱間圧延後にレーザ光を用いた酸化スケールの除去を行い、その後工程で冷間圧延などを行う場合には、過大な凹凸部が冷間圧延時に潰れて表面疵が形成される。表面疵が形成されたステンレス鋼板1の表面の光学顕微鏡写真を図4に示す。図4において、(a)は光学顕微鏡写真であり、(b)は(a)の四角形の枠内の拡大写真である。このように表面疵が形成されると、ステンレス鋼板1の外観が著しく低下するとともに、圧延油などが過大な凹凸部に入り込んで残存し、耐食性が低下する恐れもある。
表面疵の原因となる過大な凹凸部は、算術平均高さRaが5.0μm超過、最大高さRzが20.0μm超過である。なお、本明細書において算術平均高さRa及び最大高さRzは、JIS B0601:2013に準拠して測定されたものを意味する。
また、往復走査の折り返し部21及びその近傍22におけるパルスレーザ光13のフルエンスは、所定の値まで徐々に小さくするように制御してもよいし、所定の値に急激に小さくするように制御してもよい。
1×(τ/100)1/2≦F≦15×(τ/100)1/2 ・・・(1)
主走査部20におけるパルスレーザ光13のフルエンスを式(1)の範囲とすることにより、デスケールの効果を確保することができる。式(1)の下限値は、好ましくは2×(τ/100)1/2、より好ましくは3×(τ/100)1/2である。また、式(1)の上限値は、好ましくは13×(τ/100)1/2、より好ましくは10×(τ/100)1/2である。
例えば、パルス幅が100nsの場合、主走査部20におけるパルスレーザ光13のフルエンスは、好ましくは1~15J/cm2、より好ましくは2~13J/cm2、更に好ましくは3~10J/cm2である。なお、パルス幅は10~1000nsの範囲で設定可能である。パルス幅は、好ましくは30~500ns、より好ましくは50~300nsの範囲で設定するのがよい。
0.5×(τ/100)1/2≦Fm≦10×(τ/100)1/2 ・・・(2)
式中、τはパルス幅[ns]である。
フルエンスFmを10×(τ/100)1/2以下とすることにより、表面疵が発生したとしても、酸洗などによって除去することが可能になる。また、フルエンスFmを0.5×(τ/100)1/2以上とすることにより、デスケールの効果を十分に得ることができる。
式(2)の下限値は、好ましくは1×(τ/100)1/2、より好ましくは2×(τ/100)1/2である。また、式(2)の上限値は、好ましくは8×(τ/100)1/2、より好ましくは7×(τ/100)1/2である。
例えば、パルス幅が100nsの場合、折り返し部21及びその近傍22におけるパルスレーザ光13のフルエンスは、好ましくは0.5~10J/cm2、より好ましくは1~8J/cm2、更に好ましくは2~7J/cm2である。
ここで、一例として、X方向の領域を2つに分け、2つの領域のそれぞれでパルスレーザ光13の往復走査を繰り返し行う場合のパルスレーザ光13の中心部の軌跡を示す概略図を図5に示す。
図5に示すように、パルスレーザ光13の照射工程は、ステンレス鋼板1の表面のうちの部分Aにおいてパルスレーザ光13の照射を行う第1照射工程と、第1照射工程後にステンレス鋼板1の表面のうちの部分Bにおいてパルスレーザ光13の照射を行う第2照射工程とを含む。第1照射工程ではパルスレーザ光13の中心部が軌跡16を辿り、第2照射工程ではパルスレーザ光13の中心部が軌跡17を辿る。このとき、部分Aと部分Bとの間のX方向におけるパルスレーザ光13の照射領域の重なりDが、部分A及び部分BのそれぞれにおけるX方向の走査幅の1~50%であることが好ましく、2~30%であることがより好ましい。照射領域の重なりDを1%以上とすることにより、デスケールの効果を高めることができる。また、照射領域の重なりDを50%以下とすることにより、パルスレーザ光13の往復走査幅がステンレス鋼板1のX方向(例えば、幅方向)の長さよりも小さい場合であっても、効率良くデスケールすることができる。
酸洗処理の方法としては、特に限定されないが、ステンレス鋼板1を酸洗浴に浸漬すればよい。酸洗浴は、例えば、HNO3(硝酸)、H2SO4(硫酸)、FeCl3(塩化第二鉄液)、又はHNO3とHF(フッ化水素酸)との混合液を用いることができる。
また、上記ではステンレス鋼板1を例に挙げて具体的に説明したが、本発明の実施形態に係る酸化スケールの除去方法は、ステンレス鋼板1以外のステンレス鋼材にも適用可能であることに留意すべきである。
上記で説明した製鋼工程(S1)、連続鋳造工程(S2)、熱間圧延工程(S3)及び連続焼鈍工程(S4)を行うことにより、SUS316の鋼種の熱延焼鈍板(ステンレス鋼板)を作製した。
次に、熱延焼鈍板に対し、酸化スケール除去工程(S5)としてレーザデスケールを行った。レーザデスケールは、市販の装置(株式会社IHI検査計測社製LaserClear50A)を用いて行った。この装置の可動ステージに熱延焼鈍板を設置し、熱延焼鈍板の上方から板幅方向(X方向)に一定速度で往復走査しながらパルスレーザ光を照射するとともに、圧延方向(Y方向)に沿って0.5m/分で移動させた。往復走査幅は25mmとし、パルスレーザ光の照射条件は以下の通りとした。
波長:1085nm
パルス幅:100ns
発振周期:120kHz
照射速度:100Hz
レーザのビーム径:90μm
フルエンス:6.55J/cm2
波長:1085nm
パルス幅:100ns
発振周期:120kHz
照射速度:100Hz
レーザのビーム径:90μm
フルエンス:3.93J/cm2
観察した光学顕微鏡写真について、酸化スケールが残存している部分と酸化スケールが除去された部分とを、輝度の差を利用して二値化し、酸化スケールが除去された部分の面積を観察範囲の面積で除することにより、スケール除去率を算出した。その結果、照射条件Aでレーザデスケールを行った場合、折り返し部及びその近傍のスケール除去率が75%、主走査部のスケール除去率が72%であった。また、照射条件Bでレーザデスケールを行った場合、折り返し部及びその近傍のスケール除去率が55%、主走査部のスケール除去率が52%であった。なお、スケール除去率が50%以上であれば、酸洗などによって残りのスケールを容易に除去できることから、スケール除去の効果は良好であると判断することができる。
また、照射条件B(図6の下段)でレーザデスケールを行った場合、折り返し部及びその近傍に小さな凹凸部が確認された。この小さな凹凸部は、算術平均高さRaが2.1μm、最大高さRzが14.9μmであった。したがって、この小さな凹凸部は、表面疵の原因とはなり難い。また、主走査部では、小さな凹凸部も確認されず、算術平均高さRaが0.9μm、最大高さRzが6.5μmであった。
したがって、パルスレーザ光を往復走査しながら照射する際に、主走査部におけるパルスレーザ光の照射を照射条件Aで行い、折り返し部及びその近傍におけるパルスレーザ光の照射を照射条件Bで行うことにより、折り返し部及びその近傍に過大な凹凸部を形成させることなく、デスケールを行うことができると推察される。
10 レーザ光照射装置
11 レーザ発振器
12 レーザヘッド
13 パルスレーザ光
15,16,17 パルスレーザ光の中心部の軌跡
20 主走査部
21 折り返し部
22 折り返し部の近傍
Claims (6)
- 熱間圧延後又は冷間圧延後のステンレス鋼材の表面に形成された酸化スケールをパルスレーザ光の照射によって除去する酸化スケールの除去方法であって、
X方向に前記パルスレーザ光を往復走査しながら照射するとともに、前記X方向に垂直なY方向に前記ステンレス鋼材を移動させる照射工程と、
前記照射工程後に、酸洗処理を行う酸洗処理工程と
を含み、
前記パルスレーザ光のパルス幅が10~1000nsであり、
前記往復走査の折り返し部及びその近傍における前記パルスレーザ光のフルエンスを、前記往復走査の主走査部における前記パルスレーザ光のフルエンスよりも小さくし、
前記照射工程は、前記ステンレス鋼材の表面のうちの部分Aにおいて前記パルスレーザ光の照射を行う第1照射工程と、前記第1照射工程後に前記ステンレス鋼材の表面のうちの部分Bにおいて前記パルスレーザ光の照射を行う第2照射工程とを含み、
前記部分Aと前記部分Bとの間のX方向における前記パルスレーザ光の照射領域の重なりが、前記部分A及び前記部分BのそれぞれにおけるX方向の走査幅の1~50%である、酸化スケールの除去方法。 - 前記折り返し部及びその近傍は、X方向の走査幅の1%以下の領域である、請求項1に記載の酸化スケールの除去方法。
- 前記主走査部における前記パルスレーザ光は、フルエンスをF[J/cm2]、パルス幅をτ[ns]とした場合に、以下の式(1)を満たす、請求項1又は2に記載の酸化スケールの除去方法。
1×(τ/100)1/2≦F≦15×(τ/100)1/2 ・・・(1) - 前記折り返し部及びその近傍における前記パルスレーザ光のフルエンスは、前記主走査部における前記パルスレーザ光のフルエンスの20~90%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化スケールの除去方法。
- 前記ステンレス鋼材は、ステンレス鋼板である、請求項1~4のいずれか一項に記載の酸化スケールの除去方法。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の酸化スケールの除去方法を含む、ステンレス鋼材の製造方法。
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