以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る薬剤放散器1を示すものである。薬剤放散器1は、薬剤放散器本体10と、薬剤放散器本体10を吊り下げるための吊り下げ部材40とを備えている。薬剤放散器本体10は、蒸発する薬剤を保持した薬剤保持体11と、該薬剤保持体11を収容する容器20とを備えており、容器20に形成された薬剤放散用の開口部21a及び開口部22a(図3に示す)から薬剤を容器20の外部に放散させるように構成されている。尚、吊り下げ部材40は薬剤放散器本体10に対して取り外し可能に設けられている。
この実施形態の説明では、使用状態における薬剤放散器1の正面側を前側とし、背面側を後側とし、使用状態の薬剤放散器1を正面から見たときの左側を薬剤放散器1の左側とし、右側を薬剤放散器1の右側とする。従って、薬剤放散器1の幅方向は左右方向となる。この方向の定義は説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用時にどちら側が右であってもよい。また、前後方向についても、使用時にどちらが前に向いていてもよい。また、この実施形態の容器20は鉛直線周りに旋回するので、前後や左右が使用時に入れ替わることもある。
薬剤放散器1は、風が吹くところで使用するのが好ましいが、ほぼ無風下で使用することもできる。風が吹くところで使用する場合、薬剤放散器1の前側から風が当たるように当該薬剤放散器1を配置するのが好ましく、この実施形態では、薬剤放散器1の前側を空気流れ方向上流側とし、薬剤放散器1の後側を空気流れ方向下流側とする。自然条件下では風向きが常に一定ではないので、薬剤放散器1の前側から風が当たることもあれば、後側や左右から当たることもある。自然の風が当たるので、その勢いは強いこともあれば、弱いこともある。
(薬剤保持体11の構成)
薬剤保持体11は、例えば不織布等の布材や網状の部材、スポンジ状の部材等で構成することができ、厚み方向(表裏方向)に通気性を有している。薬剤保持体11は、例えば平坦な形状であってもよいし、プリーツ状をなすように折曲げ成形された形状であってもよい。また、薬剤保持体11の外形状は、矩形状や三角形状等の多角形状であってもよいし、円形状や楕円形状であってもよい。1つの容器20に複数の薬剤保持体11を収容することもできる。この場合、複数の薬剤保持体11を厚み方向に重ねて収容してもよいし、上下方向や左右方向に並べて収容してもよい。
この実施形態では、薬剤保持体11は、網状をなしていて、通風方向に薄くなっている。プリーツ状をなすように折り曲げ成形された薬剤保持体1の場合、プリーツの山と谷の連続する方向は容器20の左右方向(幅方向)とすることができる。薬剤保持体11には、常温で徐々に揮発する性質(常温揮散性)を有する薬剤を含浸させている。
常温揮散性とは、常温(例えば25℃)において空気中に揮散する性質のことであり、例えば、25℃における蒸気圧が0.001Pa以上0.1Pa以下の薬剤を挙げることができる。この薬剤の種類は特に限定されないが、例えば虫忌避剤、殺虫剤、消臭剤、除菌剤、芳香剤、抗ウイルス剤(ウイルス不活性化剤)等を挙げることができ、これらのうち1種のみであってもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。具体的には、ピレスロイド系化合物からなる殺虫剤としては、例えばトランスフルトリン、メトフルトリン等を挙げることができ、これらピレスロイド系化合物については、各種の光学異性体または幾何異性体が存在するが、いずれの異性体類も使用することができ、また、単独で使用するだけなく、2種以上を併用することもできる。また、上記薬剤は、エステル化合物等であってもよい。また、上記薬剤は、例えば、ディート(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)、イカリジン(2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボン酸 1-メチルプロピル)等であってもよい。上記薬剤の複数種混合して使用することもできる。
薬剤には、殺虫成分や虫忌避成分を溶解する溶剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、共力剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネート等の抗菌剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール等の防カビ剤が含有されていてもよい。また、薬剤には、シトロネラ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ユズ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジャスミン油、ヒバ油、ヒノキ油、竹エキス、ヨモギエキス、キリ油、緑茶精油、リモネン等の芳香剤や消臭剤が含有されていてもよい。
薬剤は、薬剤保持体11に含浸させることができる。薬剤の揮散量は、気温が25℃、薬剤保持体11に吹き付けられる空気の流速が0.1~1.5m/秒の時に、1時間あたり0.01~0.6mg程度に設定することができるが、これは一例であり、この範囲外であってもよい。薬剤の揮散量は、溶剤の種類や、薬剤保持体11の構造や大きさ、表面積、薬剤保持体11を構成する素材、目付量等で変更することができる。
また、薬剤は、薬剤保持体11に塗布したり、噴霧することによって付着させることができ、これによっても薬剤を薬剤保持体11に保持させることができる。薬剤保持体11を構成する材料に薬剤を練り込むことによっても、薬剤を薬剤保持体11に保持させることができる。薬剤を薬剤保持体11に保持させる方法はどのような方法であってもよい。
(容器20の構成)
図2~4にも示すように、容器20は、全体として上下方向の寸法が幅方向の寸法よりも長い縦長形状とされている。容器20の厚みは、幅方向の寸法よりも短く設定されており、これにより、容器20は、厚肉な板状となっている。薬剤保持体11は、容器20内において上下方向に延びる姿勢で収容されている。
図5に示すように、容器20は平面視でS字に近い形状をなしている。すなわち、容器20の平面視において、左右方向中央部から左端に近づくほど前に位置するように緩やかに湾曲する一方、左右方向中央部から右端に近づくほど後に位置するように緩やかに湾曲している。容器20の左側部分の湾曲方向と右側部分の湾曲方向とが互いに反対方向であり、左側部分と右側部分とが左右方向中央部において一体化した形状となっている。
このように容器20が平面視で略S字形とされているので、どの方向から風が吹いてきても風を受けやすくなっている。そして、風が一定の風速以上であれば、容器20は、受けた風によって鉛直線まわりに旋回する。このように風によって旋回することで、薬剤保持体11に含まれている薬剤を効率よく周囲に拡散させることができる。
また、容器20の左端部には、前側へ突出して上下方向に延びる左側突出板部20aが設けられている。さらに、容器20の右端部には、前側へ突出して上下方向に延びる右側突出板部20bが設けられている。左側突出板部20a及び右側突出板部20bは風を受ける部分である。これにより、容器20がより効率良く風を受けることが可能となり、より低い風速であっても容器20を旋回させることができる。尚、左側突出板部20a及び右側突出板部20bは省略してもよい。
図6に示すように、容器20は、前側部材21と後側部材22とを備えており、前側部材21と後側部材22とを組み合わせて一体化することで、容器20を得ることができる。前側部材21と後側部材22とは、例えば係合爪を用いた方法や溶着法等の周知の結合方法によって一体化した状態を保持できる。尚、容器20は、1つの部材で構成されていてもよいし、3つ以上の部材で構成されていてもよい。
前側部材21と後側部材22とは、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン等の硬質樹脂材で構成されており、具体的には薬剤保持体11を構成する部材よりも硬く、変形し難い材料ならなるものである。前側部材21と後側部材22とは同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
図1や図2に示すように、前側部材21は、略矩形状の前側枠部21bを備えている。この前側枠部21bの内側の開放された部分は薬剤放散用の開口部21aとされており、例えば背面側の開口部22aから容器20内に空気が流入した場合には、薬剤を含んだ空気が開口部21aから流出する。前側枠部21bの内側には、前側上端フィン21c、前側下端フィン21d、前側中央フィン21e、前側上部中間フィン21f及び前側下部中間フィン21gが形成されている。前側上端フィン21c、前側下端フィン21d、前側中央フィン21e、前側上部中間フィン21f及び前側下部中間フィン21gは、それぞれ上下方向に延びている。
複数の前側上端フィン21cが前側枠部21bの上端部近傍において左右方向に互いに間隔をあけて配置され、前側へ行くほど右に位置するように傾斜している。容器20の正面から裏面へ向けて延びる仮想線C(図5、図7A、図7B、図8A及び図8Bに示す)を想定した時、前側上端フィン21cは、この仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。また、複数の前側下端フィン21dは前側枠部21bの下端部近傍において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、前側上端フィン21cと同様に、前側へ行くほど右に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。複数の前側中央フィン21eは前側枠部21bの上下方向中間部において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、前側上端フィン21cと同様に、前側へ行くほど右に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。つまり、前側上端フィン21c、前側下端フィン21d及び前側中央フィン21eは、仮想線Cに対して同方向に傾斜している。
複数の前側上部中間フィン21fは前側上端フィン21cと前側中央フィン21eとの間において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、前側へ行くほど左に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。また、複数の前側下部中間フィン21gは前側中央フィン21eと前側下端フィン21dとの間において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、前側上部中間フィン21fと同様に、前側へ行くほど左に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。つまり、前側上部中間フィン21f及び前側下部中間フィン21gは、仮想線Cに対して同方向に傾斜している。
前側上端フィン21c及び前側下端フィン21dの上下方向の寸法は、略同じであり、前側中央フィン21eの上下方向の寸法、前側上部中間フィン21fの上下方向の寸法及び前側下部中間フィン21gの上下方向の寸法よりも短く設定されている。前側中央フィン21eの上下方向の寸法、前側上部中間フィン21fの上下方向の寸法及び前側下部中間フィン21gの上下方向の寸法は略同じである。
後側部材22は、略矩形の後側枠部22bを備えている。この後側枠部22bの内側の開放された部分は薬剤放散用の開口部22aとされており、例えば正面側の開口部21aから容器20内に空気が流入した場合には、薬剤を含んだ空気が開口部22aから流出する。後側枠部22bの内側には、後側上端フィン22c、後側下端フィン22d、後側中央フィン22e、後側上部中間フィン22f及び後側下部中間フィン22gが形成されている。後側上端フィン22c、後側下端フィン22d、後側中央フィン22e、後側上部中間フィン22f及び後側下部中間フィン22gは、それぞれ上下方向に延びている。
複数の後側上端フィン21cは後側枠部22bの上端部近傍において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、前側へ行くほど右に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。また、複数の後側下端フィン22dは後側枠部22bの下端部近傍において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、後側上端フィン22cと同様に、前側へ行くほど右に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。複数の後側中央フィン22eは後側枠部22bの上下方向中間部において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、後側上端フィン22cと同様に、前側へ行くほど右に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。つまり、後側上端フィン22c、後側下端フィン22d及び後側中央フィン22eは、仮想線Cに対して同方向に傾斜している。
複数の後側上部中間フィン22fは後側上端フィン22cと後側中央フィン22eとの間において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、前側へ行くほど左に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。また、複数の後側下部中間フィン22gは後側中央フィン22eと後側下端フィン22dとの間において左右方向に互いに間隔をあけて配置されており、後側上部中間フィン22fと同様に、前側へ行くほど左に位置するように仮想線Cに対して傾斜した傾斜板で構成されている。つまり、後側上部中間フィン22f及び後側下部中間フィン22gは、仮想線Cに対して同方向に傾斜している。
後側上端フィン22c及び後側下端フィン22dの上下方向の寸法は、略同じであり、後側中央フィン22eの上下方向の寸法、後側上部中間フィン22fの上下方向の寸法及び後側下部中間フィン22gの上下方向の寸法よりも短く設定されている。後側中央フィン22eの上下方向の寸法、後側上部中間フィン22fの上下方向の寸法及び後側下部中間フィン22gの上下方向の寸法は略同じである。
正面側と背面側とで同じ高さに位置するように、前側のフィン21c~21gと後側のフィン22c~22gが配置されている。すなわち、前側上端フィン21cと、後側上端フィン21cとが互いに同じ高さに配置されていて、上下方向の寸法が共に同じに設定してあり、仮想線Cに沿って見たときに互いに重複する。また、前側下端フィン21dと、後側下端フィン22dとが互いに同じ高さに配置されていて、上下方向の寸法が共に同じに設定してあり、仮想線Cに沿って見たときに互いに重複する。また、前側中央フィン21eと、後側中央フィン22eとが互いに同じ高さに配置されていて、上下方向の寸法が共に同じに設定してあり、仮想線Cに沿って見たときに互いに重複する。また、前側上部中間フィン21fと、後側上部中間フィン22fとが互いに同じ高さに配置されていて、上下方向の寸法が共に同じに設定してあり、仮想線Cに沿って見たときに互いに重複する。さらに、前側下部中間フィン21gと、後側下部中間フィン22gとが互いに同じ高さに配置されていて、上下方向の寸法が共に同じに設定してあり、仮想線Cに沿って見たときに互いに重複する。
前側のフィン21c~21gと後側のフィン22c~22gの通風方向の寸法は全て同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、図7A、図7Bに一部の例を示すように、左右方向の端部に位置するフィン21c~21g、22c~22gの通風方向の寸法は、左右方向中間部に位置するフィン21c~21g、22c~22gの通風方向の寸法に比べて短く設定されていてもよい。
フィン21c~21g、22c~22gの仮想線Cに対する傾斜角度は、例えば10゜以上80゜以下の範囲で設定することができる。傾斜角度が大きくなればなるほどフィン21c~21g、22c~22gによる空気の案内効果が高くなるので好ましい。一方、傾斜角度が80゜を超えるまで大きくなると、フィン21c~21g、22c~22gによって開口部21a、22aが殆ど閉塞された状態になって通気抵抗が急に上昇して放散される薬剤量が低下するため、フィン21c~21g、22c~22gの仮想線Cに対する傾斜角度は、80゜以下としておくのが好ましい。また、フィン21c~21g、22c~22gの仮想線Cに対する傾斜角度が10゜未満になると、勢いの弱い風を左右方向に案内する効果が急に低下することになるので、フィン21c~21g、22c~22gの仮想線Cに対する傾斜角度は、10゜以上としておくのが好ましい。また、図示しないが、風を上下方向に案内するフィンを設けてもよい。
(フィンの効果)
前述のように、容器20は一定の風速以上の風を受けることで鉛直線まわりに旋回し、これにより薬剤を効率よく周囲に拡散することができる。一方で、一定の風速以下の場合、容器20はほとんど旋回しなくなるので、旋回による薬剤拡散効果が期待できなくなる。しかしその場合でも、本実施形態の容器20はフィン21c~21g、22c~22gを備えていることにより、薬剤を周囲に拡散できる。以下、この点について説明する。
図7A、図7Bに破線で示しているのは、容器20の正面から吹いてきた風の流れであり、当該容器20を旋回させない程度の弱い勢いの風である。正面から吹いてきた風は、図7Aに一部を示すように、前側上部中間フィン21f及び前側下部中間フィン21gによって案内されつつ、薬剤含浸体11を通過する。薬剤含侵体11を通過した風は、薬剤を揮発させる。そして、薬剤を含んだ風は、後側上部中間フィン22f及び後側下部中間フィン22gとによって右方向へ案内される。
また、図7Bに一部を示すように、正面から吹いてきた風は、前側上端フィン21c、前側下端フィン21d及び前側中央フィン21eとによって案内されつつ、薬剤含浸体11を通過する。薬剤含侵体を通過した風は、薬剤を揮発させる。そして、薬剤を含んだ風は、後側上端フィン22c、後側下端フィン22d及び後側中央フィン22eとによって左方向へ案内される。
上記のように、薬剤を含んだ風は、後ろ側のフィン22c~22gによって案内され、左と右に分散させられるようにして容器20の背面側から放出される。このように、薬剤を含んだ風を左右に分散させて放出することができるので、容器20が旋回しない場合であっても、薬剤の拡散性は良好である。
なお、上記とは逆に、容器20の背面から風が吹いてきた場合も同様である。すなわちこの場合、容器20の背面から吹いてきた風は、後側のフィン22c~22gによって案内されつつ薬剤含侵体11を通過したあと、前側のフィン21c~21gによって左右に分散させられて容器20の正面から放出される。このように、本実施形態の構成によれば、風が正面から吹いてきた場合であっても、背面から吹いてきた場合であっても、薬剤を周囲に拡散させることができる。
ところで、風は正面や背面から吹いてくるとは限らず、左右から吹いてくることも考えられる。容器20に対して左右から風が吹いてきた場合、薬剤含浸体11に対して略並行に風が流れることになるので、そのままでは風が薬剤含浸体11を通過せず、薬剤の揮散が期待できない。しかし本実施形態によれば、左右から風が吹いてきた場合であっても、薬剤を良好に拡散させることができる。以下、この点について説明する。
図8Aに破線で示しているのは、容器20の左から吹いてきた風の流れであり、当該容器20を旋回させない程度の弱い勢いの風である。図8Aに一部を示すように、左側から吹いてきた風は、容器20背面側の後側上端フィン22c、後側下端フィン22d及び後側中央フィン22eによって受け止められ、容器20の内部の薬剤含浸体11に向けて案内される。このようにして案内された風は、薬剤含浸体11を通過することで薬剤を揮発させる。そして薬剤を含んだ風は、前側上端フィン21c、前側下端フィン21d及び前側中央フィン21eによって案内されつつ容器20の正面側から流出する。
図8Bに破線で示しているのは、容器20の右から吹いてきた風の流れであり、当該容器20を旋回させない程度の弱い勢いの風である。図8Bに一部を示すように、右側から吹いてきた風は、容器20正面側の前側上端フィン21c、前側下端フィン21d及び前側中央フィン21eによって受け止められ、容器20の内部の薬剤含浸体11に向けて案内される。このようにして案内された風は、薬剤含浸体11を通過することで薬剤を揮発させる。そして薬剤を含んだ風は、後側上端フィン22c、後側下端フィン22d及び後側中央フィン22eによって案内されつつ容器20の背面側から流出する。
以上のように、容器20の左右から風が吹いてきた場合、フィン21c~21g、22c~22gは、風を受け止め、容器20内の薬剤含浸体11に向けて案内する。このように構成されているので、薬剤含浸体11と略平行に風が吹いてきた場合であっても、薬剤含浸体11に風を当て、薬剤を揮散させることができる。
このように、容器20が旋回しない場合であっても、どの方向から風が吹いても薬剤を周囲に拡散させることができる。
なお、上記の説明は、風によって旋回するように構成された本実施形態の容器20を前提としているので、風が弱い時(容器20が旋回しないとき)に限った説明とした。この場合、風が強いときは、容器20の旋回によって薬剤が拡散する。しかしながら、容器20が旋回しないように固定されている場合には、強風時においてもフィン21c~21g、22c~22gによる拡散効果が得られるのはもちろんである。すなわちフィン21c~21g、22c~22gによる効果は、容器20が旋回するように構成されている場合に限るものではなく、旋回しないように固定された容器20であっても効力を発揮する。
つまり、容器20には、正面側の開口部21aから導入された風を右方向(第1の方向)へ案内する前側上部中間フィン21f及び前側下部中間フィン21gと、後側上部中間フィン22f及び後側下部中間フィン22g(第1案内部)とが設けられるとともに、左方向(第1の方向と反対の第2の方向)へ案内する前側上端フィン21c、前側下端フィン21d及び前側中央フィン21eと、後側上端フィン22c、後側下端フィン22d及び後側中央フィン22e(第2案内部)とが設けられている。上記第1案内部は、容器20bの正面側に形成された前側上部中間フィン21f及び前側下部中間フィン21gと、容器20bの背面側に形成された後側上部中間フィン22f及び後側下部中間フィン22gとを含んでいる。また、上記第2案内部は、容器20bの正面側に形成された前側上端フィン21c、前側下端フィン21d及び前側中央フィン21eと、容器20bの背面側に形成された後側上端フィン22c、後側下端フィン22d及び後側中央フィン22eとを含んでいる。フィン21c~21g、22c~22gの数は図示した数に限られるものではない。
図1~図3に示すように、容器20の上部の正面側及び背面側には、吊り下げ部材40が取り付けられる正面側凹部21h(図2に示す)と背面側凹部22f(図3に示す)とがそれぞれ容器20内へ向けて窪むように形成されている。正面側凹部21h及び背面側凹部22fは、容器20の左右方向中央部に位置付けられている。容器20の左右方向中央部かつ前後方向中央部には、当該容器20の旋回中心線Dが位置しており、この旋回中心線Dは容器20の上下方向に延びている。容器20が吊り下げ部材40で吊り下げられた時、旋回中心線Dは鉛直方向に向くようになっている。吊り下げ部材40の容器20への連結構造は図示した構造に限られるものではない。
(吊り下げ部材40の構成)
図2や図3等に示すように、吊り下げ部材40は、物品としての容器20を鉛直線(旋回中心線D)周りに旋回可能に吊り下げるように構成されており、吊り下げフック40Aとサルカン40Bとクリップ40Cとを備えている。サルカン40B及びクリップ40Cは必要に応じて設ければよい。サルカン40Bを省略し、サルカン40Bの代わりに糸を用いても、容器20を旋回させることは可能である。また、クリップ40Cを設けることなく、サルカン40Bの下部を容器20に直接連結してもよい。
容器20は、例えば図14A、図14Bに示すように略水平方向に延びる棒状部材100に吊り下げることができ、この場合、吊り下げフック40Aは、棒状部材100に物品を吊り下げる吊り下げフック40Aと呼ぶことができる。また、詳細は後述するが、図15に示すように、大径の棒状部材101に、物品を吊り下げフック40Aによって吊り下げることもできる。棒状部材100、101としては、例えば物干し竿、各種ポール、アーム類等がある。棒状部材100、101は厳密に水平に設置されていなくてもよく、多少傾斜していることもある。さらに、容器20は、図16に示すように、紐102に吊り下げることができ、この場合、吊り下げフック40Aは、紐102に物品を吊り下げる吊り下げフック40Aと呼ぶことができる。紐102としては、例えば物干し用またそれ以外の用途で用いられる紐、ロープ、縄、綱、長尺状部材等があり、水平方向に掛け渡されている。吊り下げフック40A及びサルカン40Bによって吊り下げ構造が構成されている。サルカン40Bは、後述するベース部材52を容器20に連結するための連結部材である。
図1に示すように、吊り下げ構造の一構成要素であるサルカン40Bは、自在に回転する金属製の環であり、従来から周知の部材である。サルカン40Bは、よりもどしと呼ばれることもあり、本例では、サルカン4Bの上部を止めた時に下部が鉛直線周りに容易に回転可能となっている。すなわち、サルカン40Bの上部は吊り下げフック40Aの下部に連結される一方、サルカン40Bの下部には、容器20に取り付けられるクリップ40Cが連結されている。クリップ40Cは、容器20の正面側凹部21h及び背面側凹部22fに嵌合することによって当該容器20に固定される。
吊り下げフック40Aは締め付け部41を備えている。締め付け部41は、吊り下げ部材40の略上半部で構成されており、棒状部材100、101を周方向に囲むとともに周方向の一部が非連続とされて開放可能に形成された締め付け部41が設けられている。締め付け部41は、図11等に示すように、容器20を吊り下げていない状態で全体としてC字に近い形状をなしている。
この実施形態の説明では、図9~図11等に示すように、吊り下げフック40Aの表、裏、左及び右を定義するが、これは説明の便宜を図るためのものであり、使用時の方向を限定するものではない。使用時には、裏が容器20の前側にくるように吊り下げフック40Aが配置されてもよいし、右や左が容器20の前側にくるように吊り下げフック40Aが配置されてもよい。
図11に示すように、吊り下げフック40Aを表または裏から見たとき、締め付け部41は、水平方向に開放可能に構成されている。具体的には、吊り下げフック40Aを表から見たとき、締め付け部41の左側に非連続とされた部分が位置している。したがって、締め付け部41の左側が開放可能となっており、締め付け部41の左側上部(周方向一側)42と、左側下部(周方向他側)43とが上下方向に互いに間隔をあけて配置される。尚、締め付け部41の右側に非連続とされた部分が位置していてもよい。
締め付け部41は、柔軟性を有するとともに可撓性を有する樹脂材で構成されている。このような樹脂材としては、例えばポリプロピレン等を挙げることができるが、その他の樹脂材を使用することも可能である。締め付け部41は、弾性を有しているのが好ましい。締め付け部41が弾性を有していることで、例えば図14Aに示すように締め付け部41の開放部分を大きく開いたとしても、その後、力を除くことで図11に示すように形状を復元させることができる。
締め付け部41が上述した性質(柔軟性や可撓性)を有しているので、図14Aや図15に示すように、締め付け部41の左側上部42と、左側下部43との間隔が広がるように変形させること可能である。これにより、棒状部材100、101を締め付け部41の内側に入れることができる。また、左側上部42と、左側下部43との間隔が狭まるように変形させていき、図14Bに示すように、左側上部42と、左側下部43とが互いに径方向に重なるように配置することもできる。このとき、左側上部42は、左側下部43の外面に重なった状態になる。
図11に示すように、締め付け部41の左側上部42の内面には、当該内面から径方向内方へ突出する複数の歯42aが周方向に並ぶように形成されている。これら歯42aによって係合部が構成されている。全ての歯42aは同じ形状であり、表裏方向に長い形状とされて歯面を広く確保している。歯42aの間隔は任意に設定することができ、例えば歯42aと歯42aが隣接するように設けてもよいし、歯42aと歯42aの間に隙間が形成されていてもよい。
締め付け部41の左側下部43の外面には、表裏方向に延びる複数の溝43aが周方向に並ぶように形成されている。これら溝43aによって歯42aに係合する被係合部が構成されている。隣合う歯42a、42aの間隔と、隣合う溝43a、43aの間隔とは同じに設定されている。これにより、図14Bに示すように、複数の歯42aを複数の溝43aに一度に係合させることができる。複数の歯42aを複数の溝43aに一度に係合させることで、左側下部42と左側下部43との結合強度が高まるので好ましい。尚、1つの歯42aを1つの溝43aに係合させてもよい。また、図示しないが、左側下部43に歯を形成し、左側上部42に溝を形成してもよい。また、歯の代わりに凸部や突起を形成し、溝の代わりに凹部等を形成してもよい。
左側上部42と左側下部43との間隔が狭まるように締め付け部41を変形させ、当該締め付け部41の径を小さくすることで、左側下部42と左側下部43との重なる範囲が広くなるので、多くの歯42aを多くの溝43aに係合させることができる。この実施形態では、隣合う歯42a、42aの間隔及び隣合う溝43a、43aの間隔を例えば0.5mm以上2.0mm以下として狭く設定しているので、締め付け部41の径の調整が細かく行える。また、歯42aの周方向の形成範囲及び溝43aの周方向の形成範囲により、締め付け部41の径の調整範囲を設定することができる。締め付け部41の径の調整範囲としては、例えば5mm以上30mm以下の範囲とすることができる。
(締め付け部の作用)
以上の構成で、棒状部材100に容器20を吊るす際には、図14Bに示すように、締め付け部41の径を棒状部材100の外径に合わせて調整することで、当該棒状部材100を締め付けることができる。これにより、吊り下げフック40Aが棒状部材100に固定されるので、例えば強い風が吹いて容器20が風で煽られたとしても、薬剤放散器1が棒状部材100の長手方向に動いてしまうことを防止できる。
一方、図15に示すように、大径の棒状部材101に容器20を吊す場合を想定すると、左側上部42と左側下部43を径方向に重ねることができず、締め付け部41が開いたままになることがある。この場合、歯42aと溝43aとを係合させることができない。しかしこの場合であっても、締め付け部41によって棒状部材101を締め付けることができる。
すなわちこの場合、締め付け部41は、力がかかっていない状態(図11)よりも開いた状態となるため、締め付け部41の弾性力によって当該締め付け部41を閉じようとする力が生じる。この弾性力により、上側部分と下側部分とで棒状部材101を上下方向に挟持することができ、棒状部材101を締め付けることができる。これにより、容器20を大径の棒状部材101に吊す場合であっても、吊り下げフック40Aを棒状部材101に固定できるので、風が強いときであっても、薬剤放散器1が棒状部材101の長手方向に動いてしまうことを防止できる。
締め付け部41の左側上部42の外面には、当該締め付け部41を締め付ける際に指を当てる上側指当接部(第1指当接部)42bが設けられている。また、締め付け部41の左側下部43の外面には、当該締め付け部41を締め付ける際に指を当てる下側指当接部(第2指当接部)43bが設けられている。上側指当接部42bは、歯42aが形成された部分の真上に位置しており、左右方向かつ表裏方向に延びる板状をなしている。この上側指当接部42bの上面にユーザが指を置いたり、指を当てておくことが可能になっている。一方、下側指当接部43bは、一番下の溝43aよりも下に位置しており、左右方向かつ表裏方向に延びる板状をなしている。下側指当接部43bの下面にユーザが指を当てておくことが可能になっている。
上下方向から見た時、上側指当接部42bの少なくとも一部が下側指当接部43bの少なくとも一部と重複するように、上側指当接部42b及び下側指当接部43bの形状や位置が設定されている。また、上側指当接部42bの上面及び下側指当接部43bの下面には、滑り止め用の凹凸形状やシボ形状、細い溝等が設けられている。
例えば、上側指当接部42bの上面に親指を当て、下側指当接部43bの下面に人差し指を当てて親指を人差し指とを互いに接近するように力を加えると、左側下部42と左側下部43が互いに接近するとともに、左側下部42の外面に左側下部43の内面が重なるように配置される。これにより、歯42aと溝43aとを係合させることができる。加える力を強めると、図14Bに示すように、締め付け部41の径が小さくなることによって棒状部材100を締め付け部41で締め付けることができ、この状態で歯42aと溝43aが係合して締め付け部41による締め付け状態を維持できる。
締め付け部41の左側上部42の下部には、径方向外方へ向けて湾曲した突出部42cが形成されている。突出部42cの突出方向先端部は、左側下部43よりも径方向外方に位置している。例えば、図14Aに示すように、棒状部材100を締め付け部41の内側へ入れる際、突出部42cの下面に棒状部材100を接触させて締め付け部41の内側へ導くことができる。また、図11に示す開放状態の締め付け部41を図14Bに示す閉状態にする際には、左側下部43の上端部が突出部42cの下面に接触することで、左側下部43を左側上部42の内側に導くことができる。さらに、締め付け部41を開く際には締め付け部41の閉状態から、、突出部42cを上向きに持ち上げるようにすることで、歯42aと溝43aの係合を解除し、締め付け部41を容易に開く容易に開くことができる。これにより、棒状部材100から薬剤放散器1を取り外すことができる。
締め付け部41の上側部分には、左右方向中央部に上方へ向けて突出するように屈曲した屈曲部44が設けられている。屈曲部44は、当該屈曲部44の上端部に近づくほど左右方向の寸法が短くなっており、表裏方向から見て上へ尖った形状となっている。屈曲部44の形成により、締め付け部41の上側の内面には、上方へ窪む凹部44aが形成されることになる。凹部44aの幅(周方向の寸法)は、当該凹部44aの上へ行くほど狭くなっている。図16に示すように、紐102に吊り下げる場合には、紐102が凹部44a内に入って引っ掛かる。これにより、吊り下げ部材40が安定する。
屈曲部44が形成されていることで、締め付け部41を開くときに当該屈曲部44が開くように弾性変形し、これにより、締め付け部41の弾性変形量を大きく確保することができる。また、屈曲部44はバネのように機能するので、締め付け部41のバネ性を高めることができる。
また、締め付け部41の下部には、下方へ突出する下側突出部45が設けられている。この下側突出部45の下部には、後述するインジケータ50が設けられている。さらに、締め付け部41の外面には、径方向外方へ突出する上部リブ46及び側部リブ47とが設けられている。上部リブ46は、屈曲部44の外面から上側指当接部42bまで延びている。また、側部リブ47は、屈曲部44の外面から下側突出部45まで延びている。上部リブ46及び側部リブ47の形成により、締め付け部41の強度を高めて例えば図15に示すような大径の棒状部材101に吊り下げるときの落下を抑制することができる。上部リブ46及び側部リブ47は必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
(インジケータ50の構成)
インジケータ50は、薬剤含浸体11に保持された薬剤の効力が無くなるタイミングを表示するために設けられた、ダイヤル式表示具である。インジケータ50は、前述のように吊り下げフック40Aに設けられている。なお、従来の薬剤放散器においては、インジケータは容器に設けられていたが、これにより容器の形状等に様々な制約が生じていた。特に、ダイヤル式のインジケータ50の場合、視認性を高めるために大きめのダイヤル51を設定したい場合があり、このようなダイヤル51を容器20に設けると、容器20の開口面積が狭くなり、薬剤の揮散効率が低下するおそれがある。本実施形態では、容器20ではなく、吊り下げフック40Aにインジケータ50を配置したので、これにより、容器20の開口面積が減少することはない。また、インジケータによって容器20の形状が制限されることもないので、例えば本実施形態のように平面視S字形に湾曲した形状の容器20とすることができる。
インジケータ50は、締め付け部41から下方へ突出する下側突出部45の下部に設けられているので、締め付け部41よりも下に配置されることになる。すなわち、インジケータ50が締め付け部41の下方に配置されていて、締め付け部41に無いので、締め付け部41の可撓性をインジケータ50が阻害することはない。これにより、吊り下げフック40Aを棒状部材100、101に吊り下げる際に、締め付け部41を容易に変形させて吊り下げることができる。
インジケータ50は、複数の数字が表示されたダイヤル51と、ダイヤル51を回転可能に支持するベース部材52と、ダイヤル51の表面の少なくとも一部を覆うように形成されたカバー部53とを備えており、ダイヤル51を回転させることによって所望の情報を表示可能に構成されたダイヤル式表示具である。本実施形態のインジケータ50は前述のように、所望の情報の一例として、薬剤保持体11に保持されている薬剤の効力が無くなるタイミングを表示するためのものであり、終期表示器具と呼ぶこともできる。尚、インジケータ50は、所望の情報の一例として、薬剤放散器1の使用開始時期を表示することもでき、この場合、始期表示器具と呼ぶこともできる。薬剤放散器1の使用開始時期を表示しておくことで、終期を把握することができる。
図12A、図12Bに示すように、ダイヤル51は例えば円形の板状をなしており、樹脂材等で構成されている。ダイヤル51は多角形の板状であってもよい。ダイヤル51の中心部には表裏方向に貫通する貫通孔51aが形成されている。貫通孔51aはダイヤル51を回転可能にするための孔であることから円形である。貫通孔51aの中心線がダイヤル51の回転中心線となる。
ダイヤル51の表面51bには、複数の数字が周方向に並ぶように表示されている。ここに表示された数字は、「月」を示しており、1~12であるが、これは一例であり、西暦、文字や記号が表示されていてもよい。また、ダイヤル51の裏面51cにも表面51bに表示されている数字と同じ数字が表示されている。ダイヤル51の表面51bの数字と裏面51bの数字とは周方向について一致しており、従って、例えばダイヤル51の表面51bの「1」の真裏に裏面51bの「1」が位置している。ダイヤル51の表面51bと裏面51cとはそれぞれ薬剤の効力が無くなるタイミングを表示する表示面である。尚、ダイヤル51の表面51bと裏面51cの一方のみ数字を表示してもよい。
ダイヤル51には、貫通孔51aの周縁部から裏側へ突出して周方向に延びる円筒状の周壁部51dが形成されている。周壁部51dの内径は、貫通孔51aの径と同じに設定されている。また、ダイヤル51の裏側には、周壁部51dよりも径方向外方に、凸部51eが設けられている。凸部51eは、径方向外方へ突出している。周壁部51dbにおける周方向の一部は途切れており、この途切れた部分に対応するように、凸部51eが配置されている。
ベース部材52は、ダイヤル51の裏側に配置され、当該ダイヤル51を回転可能に支持する部分である。ベース部材52は、ダイヤル51の裏側に沿うように上下方向及び左右方向に延びる略円形の板状をなしており、従って支持板と呼ぶこともできる。ベース部材52の上部には、締め付け部41の下側突出部45の下部が一体成形されている。ベース部材52の下部には、下方へ突出する連結板部54が設けられている。この連結板部54の下部には、容器20と連結するためのサルカン40Bの上部が取り付けられるようになっている。
図10に示すように、ベース部材52の裏面には、ダイヤル51の数字を合わせる2つの裏側目印部52a、52aが設けられている。裏側目印部52aは、例えば矢印、記号、線分、文字等で構成することができ、この実施形態では半径方向に延びる所定長さの線分で構成している。一方の裏側目印部52aは始期を示すものであり、他方の裏側目印部52aは終期を示すものである。例えば1月から使用開始した場合には、ダイヤル51の裏面51cの「1」を一方の裏側目印部52aに合わせる。すると、他方の裏側目印部52aは「9」を示す。つまり、使用期間として9ヶ月が想定されている場合には、一方の裏側目印部52aで合わせた月から9ヶ月後の月を他方の裏側目印部52aが示すように、両裏側目印部52a、52aの相対的な位置が設定されている。裏側目印部52a、52aの相対的な位置は任意に設定することができる。また、例えば使用期間として1年が想定されている場合には、裏側目印部52aは1つであればよい。
カバー部53は、ダイヤル51の表側に配置される部分であり、ダイヤル51の表面51bのうち、径方向内方の領域を覆い、径方向外方の領域(数字が表示されている領域)は露出させるように構成されている。カバー部53は、ベース部材52と同様な円形の板状をなしている。カバー部53の表面には、ダイヤル51の数字を合わせる2つの表側目印部53a、53aが設けられている。表側目印部53aは、裏側目印部52aと同様に始期及び終期を示すためのものである。
図12A及び図12Bに示すように、カバー部53の周方向の一部と、ベース部材52の周方向の一部とは薄肉ヒンジ55を介して一体成形されている。この実施形態では、薄肉ヒンジ55の一端部がカバー部53の右縁部と一体化され、薄肉ヒンジ55の他端部がベース部材52の右端部と一体化されている。薄肉ヒンジ55は、カバー部53及びベース部材52の肉厚よりも薄く成形されていて、カバー部53及びベース部材52に比べて小さな力で折れ曲がる部分である。
図12A及び図12Bは、締め付け部41、下側突出部45、ベース部材52、カバー部材53、連結板部54及び薄肉ヒンジ55の成形直後の形状を示している。これら図に示すように、締め付け部41、下側突出部45、ベース部材52、カバー部材53、連結板部54及び薄肉ヒンジ55は同じ樹脂材で一体成形されている。成形直後には、薄肉ヒンジ55が開いた状態、即ち、ベース部材52及びカバー部材53は展開した状態となっている。展開した状態では、吊り下げ用フック40A、ベース部材52及びカバー部材53が略同一の平面を通り、当該平面を仮想的に形成するように配置される。すなわち、吊り下げ用フック40A、ベース部材52及びカバー部材53を一体成形する際に、吊り下げ用フック40A、ベース部材52及びカバー部材53が同一の平面から大きくずれていると、金型の深い部分と浅い部分と差が大きくなり、金型構造が複雑化するとともに、成形不良が発生しやすくなる懸念がある。このことに対し、上述したように、吊り下げ用フック40A、ベース部材52及びカバー部材53が略同一の平面を形成するように配置しておくことで、一体成形する際の金型構造が簡単になるとともに、成形性が良好になり、ひいてはコストをより一層低減できる。
ベース部材52の表側の面には、ダイヤル51の貫通孔51aに挿通され、当該ダイヤル15を回転可能に支持する3本のベース側柱状部52bが周方向に互いに間隔をあけて形成されている。ベース側柱状部52bは表裏方向に延びており、3本のベース側柱状部52bにより、ダイヤル51を支持する1本の支軸が構成される。つまり、3本のベース側柱状部52bは支軸の周方向に互いに間隔をあけて配置されることになる。ベース側柱状部52bの数は3本に限られるものではなく、2本以下であってもよいし、4本以上であってもよい。
また、3本のベース側柱状部52bの外面は、同一円周上に位置する円弧面で構成されており、ダイヤル51の貫通孔51aの内周面に摺接するように形成されている。ダイヤル51を回転させると、貫通孔51aの内周面が3本のベース側柱状部52bの外面を摺動することによってダイヤル51の滑らかな回転が可能になっている。
一方、カバー部53の裏側の面には、ベース側柱状部52bの間に差し込まれて当該ベース側柱状部52bに結合するカバー側柱状部53bが形成されている。カバー側柱状部53bは、三角筒状に形成されており、3本のベース側柱状部52bの内側に嵌合することにより、3本のベース側柱状部52bの内面に結合した状態になる。例えばカバー側柱状部53bの外面と、3本のベース側柱状部52bの内面とに係合爪等を設けて両者を係合させることもできる。カバー側柱状部53bの形状は三角筒状に限られるものではなく、ベース側柱状部52bと嵌合して周り止め効果が得られる形状であればよく、例えば四角形や五角形等の多角形であってもよい。
カバー側柱状部53bが三角筒状であり、その外面に3本のベース側柱状部52bが配置されて両者が結合しているので、ベース部材52とカバー部53とがダイヤル51の回転中心線周りに相対回動するのが阻止される。つまり、カバー側柱状部53bと、ベース側柱状部52bとにより、ベース部材52とカバー部53が相対回動するのを阻止する周り止め構造が構成されており、インジケータ50は当該周り止め構造を備えている。これにより、例えば薄肉ヒンジ55が切れたとしても、ベース部材52とカバー部53が相対回動することはなく、表と裏の始期及び終期が正しく保たれる。
周り止め構造の具体例について説明する。この実施形態では、カバー側柱状部53bの3つの頂部53cが、それぞれ周方向に隣合うベース側柱状部52bの間に配置されている。そして、ベース部材52とカバー部53の一方が他方に対して回動しようとすると、頂部53cがベース側柱状部52bに当たり、これにより、相対回動が阻止される。頂部53cはストッパ部である。
ベース部材52の周縁部には環状壁52eが形成されている。環状壁52eは、表側へ向けて突出し、ダイヤル51の回転中心線周りに円環状に延びている。環状壁52eの径方向中心部と、ダイヤル51の回転中心線とは一致している。環状壁52eの内周面には、多数の係合突起52fが周方向に並ぶように設けられている。カバー側柱状部53bを3本のベース側柱状部52bの間に差し込んでカバー部53をベース部材52に合わせると、凸部51eの先端部が環状壁52e内の係合突起52fと接触するように配置される。凸部51eと係合突起52fとが接触して係合状態になると、ダイヤル51が回転し難くなり、不意の回転が阻止される。一方、ダイヤル51を指で故意に回転させようとすると、凸部51eが弾性変形して係合突起52fとの係合状態が解かれてダイヤル51の回転が可能になる。
(薬剤放散器1の使用時)
上記のように構成された薬剤放散器1は、屋外において、図14Bや図15に示すように棒状部材100、101に吊り下げて使用することや、図16に示すように紐102に吊り下げて使用することができる。吊り下げた状態で自然の風が容器20に当たった時、その風の勢いが強ければ、吊り下げ部材40がサルカン40Bを備えているので、容器20が旋回する。風の勢いが強ければ強いほど、容器20の旋回速度は向上する。これにより薬剤を効率よく拡散させることができる。
一方、微風時においては容器20が旋回しない場合があるが、前述のように本実施形態の薬剤放散器1は旋回しない場合であっても薬剤を効果的に拡散させることができる。
(微風時の効力試験)
そこで、微風時の効力試験について説明する。微風時の試験は1時間あたり5回換気条件の8畳無風恒温室で実施した。この試験室の壁から0.1m離れたところに、0.5m、1.0m、2.0mの3つの高さにそれぞれにつき、壁に平行に水平方向90cm間隔で3か所に供試虫を入れた虫網を吊るした。つまり、縦横に3×3=計9個の虫網を設置した。供試虫は、アカイエカの雌である。薬剤含侵体11に含侵させる薬剤は、ピレスロイド系化合物からなる殺虫剤である。向かって左端の虫網の正面に1.1m離して(壁からは1.2m離して)、薬剤放散器1を1mの高さに吊り、扇風機にて容器20の正面近傍における風速が0.5m/秒となるように当該容器20に風を当てた。なお、この風速では、本実施形態の容器20はほとんど旋回しない。虫網を設置してから薬剤放散器1を設置し、薬剤放散器1の設置後、時間の経過に伴うノックダウン虫数を観察した。試験は3回繰り返して実施し、各観察時間におけるノックダウン率からBlissのProbit法によりKT50値を求めた。
この結果、薬剤放散器1から離れた所に置かれた供試虫に対しては、KT50値(分)が9.12~10.32となり、薬剤の効力が十分に得られていた。また、薬剤放散器1から近い所に置かれた供試虫に対しては、KT50値(分)が4.54~6.37となり、薬剤の効力がより一層高いことが分かった。
次に比較例として、フィン21c~21g、22c~22gを備えていない容器(特開2011-19507号公報に記載のもの)を用意し、同様の試験を行った。この結果、比較例の薬剤放散器から離れた所に置かれた供試虫に対しては、KT50値(分)が11.33~12.93となり、実施例のものよりもノックダウンに時間がかかることがわかった。また、比較例の薬剤放散器から近い所に置かれた供試虫に対しては、KT50値(分)が4.71~6.92となり、実施例のものと同等か、それよりもノックダウンに時間がかかることがわかった。
以上の通り、微風時(容器が旋回しないとき)において、本実施例の薬剤放散器1は、比較例の薬剤放散器よりも効力が同等以上であることが確認された。特に薬剤放散器から離れた位置において、本実施例の薬剤放散器1は、比較例に比べて効力の向上が著しいことが確認された。これは、本実施形態の薬剤放散器1が、微風時において薬剤をより広範囲に拡散させることができていることを示している。
微風時の効力が高い理由は、図7A、図7Bに示すように、フィン21c~21g、22c~22gを備えていることにより薬剤が左右両側へ案内されて広範囲に拡散することによる。また、図8Aに示すように風が左から吹いた場合、及び図8Bに示すように風が右から吹いた場合も薬剤を拡散させることができるので、薬剤放散器1の設置の向きにかかわらず、高い効力を得ることができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、吊り下げフック40Aの締め付け部41の周方向の一部が非連続とされているので、図14Aに示すように、その非連続とされている部分が開放するように当該締め付け部41を変形させることにより、締め付け部41の開放した部分から棒状部材100を当該締め付け部41の内側に入れることが可能になる。その後、図14Bに示すように、歯42aを溝43aに係合させると、締め付け部41が閉じて棒状部材100を締め付けた状態になる。このとき、複数の歯42aが周方向に並んでいるので、溝43aが係合する歯42aを変えることで、締め付け部41の周長を棒状部材100の周長に合わせて確実に締め付けることができる。したがって、樹脂材の一体成形品とした吊り下げフック40Aを棒状部材100に固定できるので、低コスト化を図ることができる。
また、吊り下げフック40Aによって薬剤放散器本体10を吊り下げると、容器20の開口部21a、22aから空気が出入りすることによって薬剤が外部に放散される。また、インジケータ50が吊り下げフック40Aに設けられているので、容器20の開口面積が減少することはなくなるとともに、容器20の形状にかかわらずにインジケータ50を設けることができる。
また、インジケータ50のベース部材52とカバー部53とが薄肉ヒンジ55を介して一体成形されているので、部品点数が少なくなる。また、組立時には、ダイヤル51をベース部材52に重ねておき、薄肉ヒンジ55を折り曲げてカバー部材53をダイヤル51の表側に配置することにより、ダイヤル51を回転可能に支持したインジケータ50が得られるので、組立作業が容易になる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。薬剤放散器1は、旋回させずに使用することもできる。例えば、吊り下げ部材40によって容器20を図示しないドアノブ等に吊り下げて使用することもできる。
また、吊り下げ部材40によって吊り下げる物品は薬剤放散器1に限られるものではなく、その他、各種物品を吊り下げることができ、吊り下げ部材40を例えば洋服ハンガーの一部として利用することもできる。