JP7572308B2 - 電気化学測定装置及び電気化学測定方法 - Google Patents
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そこで、食品を洗浄した洗浄液中の塩素濃度を精度よく測定することが求められている。
本発明は、このような課題を解決するために鋭意検討した本発明者が、測定対象物質と同質の電荷を有する妨害物質が存在する場合であっても、測定対象物質と妨害物質との試料溶液中での移動速度の違いを利用することによって測定対象物質のみを精度よく検出することができることに気が付いて初めて完成されたものである。
<本実施形態に係る電気化学測定装置の構成>
本実施形態に係る電気化学測定装置100は、例えば、電解質溶液である試料溶液に電圧を印加することにより試料を分析する3極式ボルタンメトリー測定を行うフローインジェクション方式の電気化学測定装置100である。その基本構成は、図1及び図2に示すように、内部に試料溶液が流れる流路1が形成された流通管2と、流路1内を流通する試料溶液の流量を制御する流量制御部と、流路1上に設けられたセンサ部3と、センサ部3からの信号を取り出すための測定回路4と、測定回路4により得られた電圧、電流等に基づいて試料中の成分の濃度等を算出する情報処理装置5とを備えるものである。
有効塩素とは、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)、溶存塩素(Cl2)などの遊離塩素や、モノクロルアミン(NH2Cl)、ジクロルアミン(NHCl2)、トリクロルアミン(NCl3)などの結合塩素からなるものである。
流量制御部は、例えば、流路1上に設けられたバルブ14又はポンプなどを備えるものである。本実施形態では、前記流路1上には、メイン流路11から分岐流路12への試料等の流入を制御するバルブ14を設け、このバルブ14を開けるとメイン流路11から分岐流路12に試料などの液体が流れ、このバルブ14を閉じるとメイン流路11から分岐流路12への液体の送液が止まるようにしてある。
以上に説明したような電気化学測定装置100を用いて、試料溶液中の残留塩素濃度を測定する方法及び手順を以下に説明する。
試料溶液に含まれる測定対象物質の状態は、試料溶液のpHによって変化するので、測定シークエンスを開始する前に、例えば、電圧制御部51が測定試料のpHを判断し、電極に印加する電圧の測定シークエンスを選択するようにしてある。
制御部が試料溶液のpH8以上であると判断した場合には、後述する酸化側測定シークエンスを選択し実行する。
制御部が試料溶液のpHを7より大きく8より小さいと判断した場合には、還元側測定シークエンスと酸化側測定シークエンスの両方を実行する。
電圧制御部51によって還元側シークエンスが選択された場合には、まず、前処理工程として、作用電極32に、例えば、±2.5Vの電圧が掃引される。この前処理工程の手順は、例えば、以下のようなものである。
試料溶液が測定セル31内に収容されて、作用電極32のセンサ面321が試料に接触した状態で、電圧制御部51からの指令を受けた測定回路4により作用電極32に+2.5Vの電圧が5秒間印加される。
次に、分岐流路12上に設けられたバルブ14がバルブ制御部53からの信号によって1秒間開状態にされることで、分岐流路12を通って測定セル31に試料溶液が流れ込み、測定セル31内の液置換が行われる。
バルブ14が閉じられた後、電圧制御部51からの指令を受けた測定回路4により作用電極32に-2.5Vの電圧が5秒間印加される。
分岐流路12上に設けられたバルブ14がバルブ制御部53からの信号によって1秒間開状態にされることで、分岐流路12を通って測定セル31に試料溶液が流れ込み、液置換が行われる。この液置換までが前処理工程となる。
前処理工程が終わり再度バルブ14が閉じられて測定セル31に流れ込む試料溶液の流量がゼロになった後、電圧制御部51からの指令を受けた測定回路4により作用電極32、参照電極33及び対向電極34に-0.8Vの測定電圧が2秒間印加される。このとき作用電極32の表面で、印加電圧に応じた電気化学反応が起こり、この時に生じた電気信号が測定回路4によって検出されて算出部52に送られて解析され、試料中の残留塩素濃度が算出される。測定工程は、作用電極32、参照電極33及び対向電極34に印加される電圧が0Vに戻されることによって終了する。
電圧制御部51によって酸化側測定シークエンスが選択された場合には、まず、前処理工程として、作用電極に±5Vの電圧が掃引される。この前処理工程の具体的な手順は、例えば、以下のようなものである。
試料溶液が測定セル31内に収容されて、作用電極32のセンサ面321が試料に接触した状態で、電圧制御部51からの指令を受けた測定回路4により作用電極32に+5Vの電圧が30秒間印加される。
次に、分岐流路12上に設けられたバルブ14がバルブ制御部53からの信号によって5秒間開状態にされることで、分岐流路12を通って測定セル31に試料溶液が流れ込み、測定セル31内の液置換が行われる。
バルブ14が閉じられた後、電圧制御部51からの指令を受けた測定回路4により作用電極32に-5Vの電圧が30秒間印加される。
分岐流路12上に設けられたバルブ14がバルブ制御部53からの信号によって5秒間開状態にされることで、分岐流路12を通って測定セル31に試料溶液が流れ込み、液置換が行われる。この液置換までが前処理工程となる。
前処理工程が終了し、再度バルブ14が閉じられて測定セル31に流れ込む試料溶液の流量がゼロになった後、電圧制御部51からの指令を受けた測定回路4により作用電極32、参照電極33及び対向電極34に1.5Vの測定電圧が3秒間印加される。このとき作用電極32の表面で、印加電圧に応じた電気化学反応が起こり、この時に生じた電気信号が測定回路4によって検出されて算出部52に送られて解析され、試料中の残留塩素濃度が算出される。測定工程は、作用電極32、参照電極33及び対向電極34に印加される電圧が0Vに戻されることによって終了する。
測定シークエンスが終了すると、電解研磨制御部512は、例えば、作用電極32に印加する電圧を、+5Vから-5Vの間で反復的に掃印して作用電極32を電解研磨する。
本実施形態に係る電気化学測定装置100及び電気化学測定方法においては、試料溶液中に存在するClO-の濃度を、例えば、野菜などの食品から溶出するカルボン酸であるペプチドやタンパク質などのアミノ酸を含有する妨害物質による影響を抑えて測定するために、前述した酸化側測定シークエンスについて、以下のように工夫している。
以下に、本実施形態に係る酸化側測定シークエンスについて、図4を用いて説明する。
本実施形態に係る電気化学測定装置100又は電気化学測定方法によれば、前述したように、試料溶液中に含まれる妨害物質の影響をできるだけ避けて測定対象物質の濃度を精度よく測定することができる。
また、前述したように測定セル31の形状及び作用電極32の配置が作用電極32のセンサ面321の付近に気泡が滞留しにくい形状及び配置となっているので、電圧制御部51が作用電極32に対して除去電圧を印加することによって発生する気泡の影響についても低減することができる。
本発明は前記実施形態に限られたものではない。
例えば、算出部が次亜塩素酸濃度と次亜塩素酸イオン濃度とを個別に測定するのではなく、還元側電流値と酸化側電流値とから、次亜塩素酸濃度と次亜塩素酸イオン濃度とを合算した合計濃度である総残留塩素濃度を直接算出するものとしても良い。この算出方法は、センサ部が、前述したようなボルタンメトリー測定を行う装置構成の場合に、センサ部の還元側電流と酸化側電流との間の比が一定となることに基づいて本発明者が新たに考え出した残留塩素濃度算出方法であり、具体的には以下のようなものである。この場合に使用される装置構成としては、前記実施形態で説明したように作用極と対極と参照電極とを備えた3極式以上の電気化学測定装置であることが好ましい。また、この算出方法おいても、前記実施形態で説明した酸化側測定シークエンスを採用することが好ましいが、必ずしも必須ではない。
( 式(1)中のIsは合算電流値を、aは感度係数を、Ioは酸化側電流値を、Irは還元側電流値をそれぞれ表す。)
(式(2)中のClは総残留塩素濃度を、Aは以下の式(3)を、Bは以下の式(4)を表す。)
B=-A×Is0・・・(4)
(式(3)及び(4)中のIs0はゼロ校正時の合算電流値を、IsSはスパン校正時の合算電流値を、それぞれ表す。)
また、式中の次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンの存在比については、例えば、以下のような式(6)、(7)で求めることができる。
前記実施形態では、前記妨害物質として、アルカリ性の試料溶液中で残留塩素と同じく、負の電荷を有するカルボン酸、より具体的にはアミノ酸、又はアミノ酸を含有するタンパク質やペプチドなどを想定していたが、これに限られず、妨害物質は試料溶液中において測定対象物質と同質の電荷(測定対象物と正負が同じ電荷)を有し、電極に測定電圧を印加した際の試料溶液中での移動速度が測定対象物質よりも遅い物質であれば良い。
本発明に係る電気化学測定装置又は電気化学測定方法は、食品分野だけではなく、水道水、飲料水、河川や沼湖の水、工業廃水、産業廃液、実験試薬など様々な試料溶液に対して使用可能である。
さらに、対向電極についても、ダイヤモンド電極に限らず、例えば炭素、ステンレス、金、銀、塩化銀、白金、SnO2等の電極を用いることができる。
また、流体制御部が、バルブではなく、メイン流路や分岐流路に設けられたポンプを制御するものとしても良い。このようにバルブではなく、ポンプを備える場合には、流体制御部がポンプを作動させることによって試料溶液などの流体が測定セルに供給され、ポンプを停止することによって測定セルへの流体の供給が止まるようにしてもよい。
液置換時にメイン流路、分岐流路及び測定セルに流れる液体は、前述した試料溶液だけでなく、測定対象物質を含まない校正液や測定セル用洗浄液などであってもよい。
なお、前述した実施形態では、電気化学測定装置がフローインジェクション方式のものである場合について説明したが、ビーカーなどにセンサ部を浸して測定するバッチ式の電気化学測定装置であってもよい。
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、種々の変形や実施形態の組合せを行ってもかまわない。
この実施例では、NaClO濃度200ppmの洗浄液1Lに対して、キャベツの千切り60gを投入した場合の洗浄液中のNaClO濃度を測定した。この実施例で測定する試料溶液のpHは8よりも大きいことが良くされたため、前記実施形態において説明した酸化側測定シークエンスを用いてClO-を検出することによってNaClO濃度を測定した。
この図6の結果から、本発明に係る電気化学測定方法を用いたNaClO濃度の測定結果は、比色法を用いて測定した結果との差が20ppm以下であり、pH値で補正した測定結果によれば前記差が10ppm以下となった。
一方で、従来の測定方法(測定電圧を印加する直前に除去電圧を印加しないそくてい方法)によって、同じく野菜の洗浄液中のNaClO濃度を測定した場合には、吸光光度法との差が50ppm以上乖離する結果となった。
この結果から、本実施形態に係る測定方法によれば、野菜から溶出するタンパク質などのアルカリ性溶液中でClO-と同じく負電荷を有する妨害物質が存在する試料溶液であっても、測定対象物質であるClO-を精度よく検出することが出来たことを示す。
図7には、前記実施形態において説明した還元側測定シークエンスを用いて、微酸性側の試料溶液中のHClO濃度を測定した場合の結果を示す。この実験における試料溶液としては、塩素濃度80ppm、pH6の電解水1.5Lに対して、キャベツ、ニンジン、ネギ、ゴボウ、白菜などの各野菜を刻んだものを10分間攪拌しながら浸漬した洗浄液を使用した。
31 ・・・測定セル
311・・・導入口
312・・・導出口
313・・・内部流路
32 ・・・作用電極
321・・・センサ面
51 ・・・電圧制御部
Claims (11)
- 電荷を有する測定対象物質と、前記測定対象物質と同質の電荷を有し且つ前記測定対象物質よりも試料溶液中での移動速度が遅い妨害物質とを含有する試料溶液に含まれる前記測定対象物質の濃度を電気化学的に測定する電気化学測定装置であって、
前記試料溶液と接するように配置されて前記測定対象物質を検出するセンサ面を有する電極と、
前記電極に印加する電圧を制御する電圧制御部とを備え、
前記電圧制御部が、前記電極に対して前記センサ面に付着した前記妨害物質を前記センサ面から引き離すための負の除去電圧を前記電極に印加した直後に、正の測定電圧を印加するものであり、
前記電圧制御部が、前記電極に負の電荷を印加し、それに続いて前記除去電圧を印加するものであることを特徴とする電気化学測定装置。 - 前記電極が、ダイヤモンド電極、又はダイヤモンドライクカーボン電極である、請求項1に記載の電気化学測定装置。
- 前記試料溶液を導入する導入口と前記試料溶液を導出する導出口とを有し、これら導入口と導出口との間に形成された内部流路に前記試料溶液を収容する測定セルをさらに備え、
前記センサ面が、前記試料溶液に接するように前記内部流路内に配置されている、請求項1又は2に記載の電気化学測定装置。 - 前記センサ面が、前記内部流路を流れる前記試料溶液の流れに対して垂直又は斜めに配置されている、請求項3に記載の電気化学測定装置。
- 前記導入口が、前記センサ面よりも下側に配置されており、前記導出口が前記センサ面よりも上側に配置されている、請求項3又は4に記載の電気化学測定装置。
- 電荷を有する測定対象物質と、前記測定対象物質と同質の電荷を有し且つ前記測定対象物質よりも試料溶液中での移動速度が遅い妨害物質とを含有する試料溶液に含まれる前記測定対象物質の濃度を電気化学的に測定する電気化学測定装置であって、
前記試料溶液と接するように配置されて前記測定対象物質を検出するセンサ面を有する電極と、
前記電極に印加する電圧を制御する電圧制御部とを備え、
前記電圧制御部が、前記電極に対して前記センサ面に付着した前記妨害物質を前記センサ面から引き離すための除去電圧を前記電極に印加した直後に、測定電圧を印加するものであり、
前記試料溶液を導入する導入口と前記試料溶液を導出する導出口とを有し、これら導入口と導出口との間に形成された内部流路に前記試料溶液を収容する測定セルと、
前記測定セルに前記試料溶液を供給する流路と、
前記流路上に設けられて、前記測定セルに供給される前記試料溶液の流量を制御する流量制御部とをさらに備え、
前記センサ面が、前記試料溶液に接するように前記内部流路内に配置されており、
前記流量制御部が前記流量を減らした又はゼロにした後に、前記電圧制御部が前記電極に前記除去電圧及び前記測定電圧を印加する、電気化学測定装置。 - 前記電極の還元側での検出感度と酸化側での検出感度との比を用いて、前記電極によって測定された還元側での電流値と酸化側での電流値との合算電流値から、試料溶液中の次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンとの合計濃度を算出する、請求項1~6の何れか一項に記載の電気化学測定装置。
- 前記電極として、作用極と対極と参照電極とを備えていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の電気化学測定装置。
- 電荷を有する測定対象物質と、前記測定対象物質と同質の電荷を有し且つ前記測定対象物質よりも試料溶液中での移動速度が遅い妨害物質とを含有する試料溶液に含まれる前記測定対象物質の濃度を電気化学的に測定する電気化学測定方法であって、
前記試料溶液と接するように配置されて前記測定対象物質を検出するセンサ面を有する電極に対して、負の電圧を印加し、それに続いて前記センサ面に付着した前記妨害物質を前記センサ面から引き離すための負の除去電圧を印加した直後に、測定電圧を印加することを特徴とする電気化学測定方法。 - 前記測定対象物質が無機物であり、前記妨害物質が有機物である、請求項9記載の電気化学測定方法。
- 前記試料溶液がアルカリ性の水溶液であり、前記有機物がアミノ酸である又はアミノ酸を含有する物質である、請求項10に記載の電気化学測定方法。
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