先ず、以下の本発明の基本実施形態の欄において、本発明の基本的な技術的思想の概要を、図面を参照して説明する。引き続き、基本実施形態の技術的思想を基礎として、この基本的な技術的思想を拡張した本発明の第1~第8拡張実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、以下に示す基本及び第1~第8拡張実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示する代表的な実施の形態であって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。更に、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。
(基本実施形態)
先ず、本発明の技術的思想の基本的な概念や考え方を説明する。本発明の基本実施形態に係るウィルス検査システムは、図1に示すように、少なくとも一部に擬受容体膜13を皮膜した検出基体11aと、被検査空気31aを取り込んで濃縮し、被検査空気31aを擬受容体膜13の表面に噴射するウィルス搬送配管Aと、検出基体11aと擬受容体膜13との検査機能を利用して、スパイクタンパク受容体結合反応によって擬受容体膜13の表面に結合した標的ウィルスの存在を積分型差分検出する信号処理ユニット50とを備える。図10に模式的に示すように、擬受容体14は、例えば、B細胞が産生する免疫グロブリンというタンパク質を模写した構造をなしており、生物細胞表面の宿主細胞受容体(レセプター)と同様に、特定のウィルスを認識して特異的にウィルスのスパイク糖タンパク質の突起に結合する働きを有する。
ウィルスのスパイク糖タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)と生物細胞表面の宿主細胞受容体が結合して「スパイク糖タンパク質受容体」を結合する反応と同様に、基本実施形態に係るウィルス検査システムにおいては、図10に示す標的ウィルス60のスパイク糖タンパク質17のRBDと擬受容体14とが結合してスパイクタンパク受容体結合19を構成することに着目して標的ウィルスの存在を検出する。なお、図10(b)は、擬受容体膜13の表面が液膜61で覆われている状態において、スパイク糖タンパク質17のRBDと擬受容体14とが結合するモデルを説明する図である。図10(b)に対し、図10(a)は、擬受容体膜13が液膜61で覆われていない状態において、被検査エアロゾル33bに含まれた液体の作用によって、標的ウィルス60のスパイク糖タンパク質17のRBDと、擬受容体14とが結合するモデルを説明する図である。そして、生物細胞の場合と同様に、標的ウィルス60のスパイク糖タンパク質17のRBDと擬受容体14とが結合してスパイクタンパク受容体結合19を構成する反応を、本明細書では「特異結合反応」と呼ぶことにする。
基本実施形態に係るウィルス検査システムにおいて、検査対象として採用可能な擬受容体14の構造としては、IgG型抗体等の一般的な抗体の構造を模写した構造が考えられる。図10では、一対のH鎖とL鎖が結合したY字型の抗体の形状を模写したY字型の擬受容体14の構造を模式的に例示している。生物細胞表面の宿主細胞受容体が、主にウィルスと結合するのは、H鎖とL鎖とが向かい合った部分の先端部分(可変部と呼ばれる)であるので、その部分だけの構造を、基本実施形態に係るウィルス検査装置の擬受容体14の構造として用意することでも足りる。例えば、図10に例示した標的ウィルス60がSARS-CoV-2ウィルスの場合であれば、スパイク糖タンパク質17のRBDはヒト細胞表面上のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2受容体)に高い親和性で結合することが知られている。SARS-CoV-2ウィルスと仮定した場合、擬受容体14の構造としては、H鎖のみで構成される抗体のうち可変部のみを取り出したVHH抗体を模写した構造を採用することが可能である。VHH抗体は、アルパカなどが持つ重鎖抗体という特徴的な抗体の可変領域部分を切り出したもので、通常のIgG型抗体とは異なり単鎖のみでウィルス等の抗原に結合する。
図1に示すように、基本実施形態に係るウィルス検査システムを構成するウィルス検査装置は、ウィルス搬送配管Aの途中に結合され、清浄湿潤空気がウィルス搬送配管Aを介して検出基体11aの擬受容体膜13上に供給される湿潤空気搬送配管Bと、清浄乾燥空気がウィルス搬送配管Aを介して検出基体11aの擬受容体膜13上に供給される乾燥空気搬送配管Cと、除菌ガス又はパージガスがウィルス搬送配管A及び検出容器10を経由して吸引ポンプ40まで供給されるパージガス搬送配管D等を、必要に応じて更に備えてもよい。
一般に、ウィルスは、被検査空気31a中の飛沫、マイクロ飛沫(エアロゾル)、飛沫核等に含まれている。飛沫は大きさ5μm以上、マイクロ飛沫や飛沫核は大きさ5μm以下の粒子とされているが、エアロゾルの大きさには様々な定義があるため、本明細書では飛沫、マイクロ飛沫および飛沫核の総称を「エアロゾル」とする。基本実施形態に係るウィルス検査装置の被検査空気31aは、ウィルスの有無を検査する対象としての被検査対象となる空気のことであり、居住空間、公共建造物、若しくは交通機関車内から採取した空気、又は呼気分析、若しくは呼気診断において対象者から採取した息を含む。「清浄湿潤空気」とは、不純物粒子やウィルスを含まない空気であって、特異結合反応の反応場の元となる水、又は生体環境を模擬した緩衝溶液の蒸気を含む空気のことである。また、「乾燥空気」とは、不純物粒子やウィルスを含まない乾燥空気のことである。
基本実施形態に係るウィルス検査システムでは、信号変換器12として櫛形のセンサ電極を備えるセンサとして、例示的に、図2に示すようなボール弾性表面波センサ(以下、「ボールSAWセンサ」と称する。)1003を用いる場合を想定しているので、検出基体11aは水晶球等の均質な圧電結晶球が対応する。図2から分かるように、基本実施形態に係るウィルス検査装置に用いるボールSAWセンサ1003は、検出基体11aと、検出基体11aの上に設けられた信号変換器12及び擬受容体膜13等を備える。検出基体11aは、表面の少なくとも一部に擬受容体膜13を搭載可能で、且つ、擬受容体膜13の表面状態が変化し、擬受容体膜13の表面状態の変化を示す物理信号を電気信号に変換する信号変換器12を搭載可能な基体であれば、圧電結晶球に限られない。ボールSAWセンサ1003の場合は、図2に示すように、検出基体11aとしての圧電結晶球の表面の少なくとも一部に設けられた擬受容体膜13は、ウィルスに特異的に結合する擬受容体14を表面に配列した弾性表面波の感応膜であり、この擬受容体膜13中を弾性表面波(SAW)が伝搬する。即ち、基本実施形態に係るウィルス検査装置のボールSAWセンサ1003は、図2に示すように検出基体11aと、検出基体11aの上に設けられた信号変換器12及び擬受容体膜13と、擬受容体膜13の上に設けられた擬受容体14を有する構造を基本としている。図2に例示したボールSAWセンサ1003において、検出基体11aの表面上の所定の領域に設けられる信号変換器12は櫛形のセンサ電極である。
即ち、擬受容体膜13に設けられた擬受容体14が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜13の質量の変化を示す音響信号を、信号変換器12が電気信号に変換する。信号変換器12が出力した電気信号は、擬受容体14に結合したウィルスによる擬受容体膜13の重量面密度の増加をSAWの遅延時間応答として、信号処理ユニット50が積分型差分検出する。検出基体11aを収納する検出容器10は、図1に示すように信号変換器12が積分型差分検出に必要な電気信号を出力可能なように、ボールSAWセンサ1003を密閉空間に格納している。図2に示したボールSAWセンサ1003と、このボールSAWセンサ1003を格納する検出容器10とで、基本実施形態に係るウィルス検査装置の「検出セル1000」を、図3に示すように構成している。そして、図3に示す検出セル1000の構造において、被検査空気31aを検出容器10に導入し、検出容器10に格納されたボールSAWセンサ1003に対して、標的ウィルスを濃縮した高速気流を噴射している。即ち、検出容器10は、被検査空気31a中に存在する標的ウィルスによる物理的状態の変化に伴う音響信号を信号変換器12が電気信号に変換するための、外部から遮断された気密空間を提供している。
ボールSAWセンサ1003を収納する検出容器10は、図3に示すように、一方(図3において左側)に導入口35aを備え、導入口35aに対向する他方(図3において右側)に排気管134を備える。ウィルス搬送配管Aのガス噴射側の端部は、図3の左側から検出容器10の導入口35aに接続されている。図1に示した吸引ポンプ40は、検出容器10の排気管134に図3の右側で接続される。検出容器10は、中空となっており、その内部にボールSAWセンサ1003が配置されている。検出基体11aは、球状であり、図2に示すように、検出基体11aの表面の一部、又はほぼ全体は、擬受容体膜13により覆われている。
基本実施形態に係るウィルス検査装置のボールSAWセンサ1003を構成する三次元基体としての検出基体11aは、SAWが伝搬するための円形環状帯が画定される均質な材料球を提供する。櫛形のセンサ電極から構成される信号変換器12は、環状軌道上に成膜された擬受容体膜13としての感応膜を通過しながら圧電体球上に画定された円状の環状軌道を通して繰り返し伝搬するSAWのコリメートビームを生成する。図2では検出基体11aの赤道に沿った縦線の集合で、コリメートビームを構成する弾性表面波の波面99を模式的に示している。図2に例示した模式的な構造において、擬受容体膜13は、三次元基体上の環状軌道を画定する環状帯のほぼ全面に形成することができる。擬受容体膜13は、特定のウィルスと特異的に結合する擬受容体14を有するので、擬受容体14の構造を選択することにより、被検査空気31a中に特定のウィルスが含まれているか否かを検査することができる。
基本実施形態に係るウィルス検査装置の検出基体11aを構成する圧電体球としては、水晶、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、圧電セラミックス(PZT)、ビスマスゲルマニウム酸化物(Bi12GeO20)等の結晶球を用いることができる。擬受容体膜13の下地の膜としては、シリカ(SiOx)膜等を用いることができる。このような下地の膜の上に、クロム(Cr)膜を櫛型にパターニングした櫛型電極(IDT)を信号変換器12として搭載できる。均質な圧電体球のような単結晶球の場合においては、弾性表面波の周回経路は、結晶材料の種類に応じて、一定の幅を持つ特定の軌道帯に限定される。軌道帯の幅は、結晶の異方性に応じて増加又は減少させてもよい。
基本実施形態に係るウィルス検査装置のボールSAWセンサ1003の場合、検出基体11aをなす圧電体球の周りを周回する際の回折損失がなく、材料減衰による伝搬損失のみがある。コリメートビームは、図1に模式的に破線で囲んだ被検査空気31a内に含まれる標的ウィルスのみを吸着するように構成された擬受容体膜13を何度も繰り返して通過する。擬受容体膜13上の擬受容体14に吸着した標的ウィルスは、ボールSAWセンサ1003のSAWの伝搬特性を変化させるので、擬受容体膜13上に吸着した標的ウィルスによる伝搬特性の変化は、複数の周回を通して、SAWのコリメートビームの周回ごとに積算される。従って、基本実施形態に係るウィルス検査装置によれば、被検査空気31a中に含まれる標的ウィルスの数が微量であっても、標的ウィルスをリアルタイムで有効に検出することができるため、標的ウィルスのインサイチュ検査の精度を高めることができる。
図2の模式図に示した被検査エアロゾル33bは粗エアロゾル33aのうちフィルタ30aを透過するもので、そのサイズL2は、フィルタ30aの機能に依存する。図2には表示されないが、被検査エアロゾル33bに含まれる標的ウィルス60のサイズは、通常数10nmから数100nmである。一方、通常の場合、検出基体11aのサイズL1は、1mm~5mm、例えば、3mm程度であるのが好ましい。但し、基本実施形態に係るウィルス検査装置においては、検査装置のサイズや検出基体11aの交換頻度に応じて、検出基体11aの最適なサイズL1を決定することができる。
検出基体11aの表面に図10に示すように複数の擬受容体14を配列した擬受容体膜13を形成する方法は種々の方法があるが、例えば、不溶性のビーズ状、膜状等の担体に、複数の擬受容体14を化学的又は物理的に結合させる方法を採用することができる。化学的結合としては、通常の共有結合等が考えられ、物理的結合としては、ファンデルワールス力等が考えられる。担体としては、アガロースや石英等を問わず、例えば、担体表面にアルデヒド基やNHS基(N-ヒドロキシスクシンイミド基)等を固定し、複数の擬受容体14中のアミノ基とアミド結合させたものを用いてもよい。また、担体表面にプロテインA又はプロテインG等を固定しておき、プロテインA又はプロテインG等に複数の擬受容体14をアフィニティ結合させたものを用いてもよい。アフィニティ結合を実施する場合、架橋剤を加えてアフィニティ結合を補強することができる。
また、複数の擬受容体14の形成方法の他の一つとして、網状の高分子化合物に担体を閉じ込める方法を採用することができる。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)等に架橋した網に担体を閉じ込める方法を採用することができる。そのPVA等に架橋した網を擬受容体膜13として、検出基体11aの少なくとも一部に擬受容体膜13を設けることで図2に示したようなボールSAWセンサ1003を実現できる。このボールSAWセンサ1003を検出容器10の内部に収容することで、図3に示したような基本実施形態に係るウィルス検査装置の検出セル1000を構成することができる。
擬受容体膜13は、有機物である擬受容体14を複数個配列していることから、検出セル1000やボールSAWセンサ1003の保管には十分に注意を要する。擬受容体14がタンパク質であることを考えると、擬受容体14が変性しない温度条件、pH条件、その他の環境条件で保管することが必要となる。特に、温度条件については、擬受容体14の種類により、冷凍(-80℃程度)でなければ変性してしまうものもあれば、冷蔵(4℃程度)、又は常温でも安定的に存在し得るものもあるため、擬受容体14の種類に応じて、適切な保管を行うことが必要となる。また、検出セル1000やボールSAWセンサ1003の保管において、擬受容体14の表面に安定剤を塗布する方法、又は安定剤の液中に浸漬して保管する方法等を採用することもできる。この場合、安定剤としては、グリセロール、トレハロースやスクロース等、一般的に用いられているものを採用することが可能である。
ボールSAWセンサ1003に関しては、普段は、擬受容体14にマスキングをしておき、使用の時だけマスキングをとり擬受容体14を活性化し、使わない時は再マスキングする方法を採用することができる。例えば、擬似抗原のようなものでマスキングして擬受容体14を保護しておき、検出セル1000やボールSAWセンサ1003を使用する際は、酸・アルカリ、緩衝溶液等で擬似抗原を分離させてもよい。ボールSAWセンサ1003の使用後は、擬似抗原を多量に含む緩衝溶液等で再度マスキングすることが好ましい。尚、擬受容体14がマスキング無しでも安定しているような場合には、当然にマスキングは不要である。
使用済みの検出セル1000やボールSAWセンサ1003は、擬受容体14に結合した標的ウィルス、更に、擬受容体膜13やその他の部分に付着した標的ウィルス以外の不純物を除去することで、再利用することができる。この場合、使用済みの検出基体11aを滅菌処理した後に再利用することが好ましい。滅菌処理としては、加熱、酸・アルカリ、高濃度アルコール、紫外線、界面活性剤等を用いる殺菌/滅菌方法を採用することができる。但し、滅菌処理において、タンパク質である擬受容体14が変性しないことが条件である。また、標的ウィルスが通過する可能性があるウィルス搬送配管A、検出容器10の内部、及び吸引ポンプ40等についても、必要に応じて滅菌処理を行うことが好ましいが、この場合は、配管系や検出容器10が耐え得る程度の強力な滅菌方法や洗浄方法を採用することができる。
上記では、使用済みの検出基体11aを検出容器10から取り出して、これを再生する方法について説明したが、検出基体11aを検出容器10内に配置した状態で、擬受容体14の活性を回復させる機構を設けることも可能である。例えば、検出容器10内に滅菌機構を設けることで、後述するウィルスの検査方法、又は検査プログラムを実行する初期の段階で、擬受容体14にスパイクタンパク受容体結合19によって結合した標的ウィルスや、擬受容体膜13やその他の部分に付着した標的ウィルス以外の不純物等を除去することも可能である。
図1に示すように、基本実施形態に係るウィルス検査装置のウィルス搬送配管Aは、フィルタ30aと、開閉バルブ32と、共通濃縮機構34とを備える。フィルタ30aは、被検査空気31a中に含まれるエアロゾル(0.1~30μm)のうち、所定のサイズ(例えば、4μm)を超えるものを除去する機能を有し、ウィルス搬送配管Aの導入口側に設けられている。この所定サイズは、ウィルスの種類によって変化し、空気感染によるものか、エアロゾル感染によるものか、又は飛沫感染によるものかによっても、変化する。
基本実施形態に係るウィルス検査装置の湿潤空気搬送配管Bは、ウィルス搬送配管Aの途中、具体的には、開閉バルブ32と共通濃縮機構34との間に結合され、フィルタ21と、マスフローコントローラ(MFC)22と、加湿器20と、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bを備える。加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bは三方バルブで構成され、加湿器2は、水分発生用のネブライザー(液体霧化装置)及び浸透管等から構成されている。フィルタ21は、活性炭等を含み、環境空気に含まれる不純物や水分を除去することで、清浄乾燥空気を生成する機能を有する。ここで、環境空気とは、検査室とは異なる空間、又は外気から採取した空気であるのが好ましいが、特に限定されず、検査室と同じ空間から採取したものであってもよい。加湿器20は、清浄乾燥空気に、特異結合反応に使用する液体の蒸気を含ませ、清浄湿潤空気を生成する機能を有する。
基本実施形態に係るウィルス検査装置の乾燥空気搬送配管Cは、湿潤空気搬送配管Bから加湿器20を通る経路をパスした経路である。基本実施形態に係るウィルス検査装置のパージガス搬送配管Dは、ウィルス搬送配管Aの途中であって、フィルタ30aと開閉バルブ32の間に接続され、ガス供給ユニット70を備える。ガス供給ユニット70は、パージガス搬送配管Dを介して、ウィルス搬送配管Aに除菌ガス、又はパージガスを選択的に供給する。除菌ガスは、例えば、空気中ウィルスの有無を検査した後に、ウィルス搬送配管Aから吸引ポンプ40にかけて、配管内や機器内に付着したウィルス等を除去するためのものである。また、パージガスは、検出基体11aの表面に吸着した標的ウィルス以外の非特異吸着物質を除去するためのものである。また、除菌ガスを供給する前に配管内や機器内に残存したガスを除去し、又、加湿器20の駆動による配管内や機器内の湿度を確認する前に配管内や機器内のガスを予め除去するためのものである。
基本実施形態に係るウィルス検査装置では、フィルタ30aからのエアロゾルは、加湿器20からの清浄湿潤空気と混合された含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bに変化する。図1に三角形で模式的に示した共通濃縮機構34は、図11(a)又は図11(b)に例示したように、先細形状の噴射ノズルの形状をなすことが可能であるが、図11(a)又は図11(b)に示した構造に限定する必要はなく、先細りのテーパ形状を含む構造であれば種々の構造が採用可能である。共通濃縮機構34を経由することにより、含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bの一群はより高密度になり、被検査エアロゾル33bに含まれる標的ウィルスの個数体積密度がより濃縮される。共通濃縮機構34から噴射する被検査エアロゾル33bの一群は、図1に示すように検出容器10に接続された吸引ポンプ40により吸引されて高速気流として、共通濃縮機構34から検出容器10の内部に噴射される。被検査エアロゾル33bの一群は、この高速気流に載って検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13に噴射される。尚、図11(b)のノズル構造は、被検査エアロゾル33bの一群が流れるメインフローを取り囲むように、コリメーションフォーカス作用を有するシースフローFを持つ2重構造になっている。シースフローFは、清浄な空気であり、これが流れることで、その内側のエアロゾルのジェットを包み込み、エアロゾルのジェットが広がることなく、収率よく、ボールSAWセンサ1003が有する擬受容体膜13の表面に含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bの一群を集めることができる。
図9に示す基本実施形態に係るウィルス検査システムの信号処理ユニット50は、図1に示した検出容器10、加湿器20、マスフローコントローラ22、吸引ポンプ40、及びガス供給ユニット70の動作を制御する。また、信号処理ユニット50は、開閉バルブ32の開閉、並びに加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bの動作を制御する。フィルタ21を経由した清浄乾燥空気は、マスフローコントローラ22において流量調整された後、加湿器20に供給されるか、又は乾燥空気搬送配管Cを経由して、開閉バルブ32と先細りのテーパ形状をなす共通濃縮機構34の間のウィルス搬送配管Aに供給される。加湿器20からの清浄湿潤空気は、開閉バルブ32と共通濃縮機構34の間のウィルス搬送配管Aに供給される。湿潤空気搬送配管Bと乾燥空気搬送配管Cは、信号処理ユニット50により択一的に選択される。
図3に示すように、基本実施形態に係るウィルス検査装置の検出セル1000を構成する検出容器10は、含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bの一群の個数体積密度を濃縮する共通濃縮機構34に連結された導入口35aを一方に備える。検出セル1000を構成する検出容器10は、天井部が解放された金属製の箱部123と、箱部123の上部(天井部)を閉じる金属製の蓋部121で直方体状の密閉容器を構成している。密閉容器を構成するために箱部123の上端部にはOリング溝132aが、箱部123の上部を周回するようにU字型の溝として彫り込まれ、Oリング溝132aにはOリング131aが収納されている。Oリング溝132aに対応するトポロジで蓋部121の下面にはOリング溝133aがU字型の溝として彫り込まれている。箱部123の導入口35aに対向する他方(図3において右側)に排気管134が設けられ、排気管134の内部にはオリフィス9が設けられている。共通濃縮機構34と共通濃縮機構34に連結された導入口35aとで、図1に模式的(概念的)に示したウィルス搬送配管Aの一部が構成され、図1のフィルタ30aを経由した被検査エアロゾル33bの一群が、検出容器10に収納されたボールSAWセンサ1003の擬受容体膜13に向かう高速気流として噴射される。
共通濃縮機構34は、ウィルス搬送配管Aの終端部となる第1経路端部124aの内部に設けられたテーパ孔として噴射ノズルの形状により、擬受容体膜13に向かう高速気流を構成している。第1経路端部124aの共通濃縮機構34と箱部123の導入口35aとは、Oリング131bを用いて気密に連結されている。このため、箱部123の左側にはOリング溝132bが、導入口35aを周回するようにU字型の溝として彫り込まれ、このOリング溝132bにはOリング131bが収納されている。Oリング溝132bに対応して、第1経路端部124aの右側にはOリング溝133bがU字型の溝として彫り込まれている。
ボールSAWセンサ1003は、図4~図6に示す取手付サセプタ1001の内部に北極―南極の配向を調整されて収納されている。取手付サセプタ1001は、フレーム部111と、レーム部111の上面に設けられたフレームキャップ112と、フレーム部111を保持する取手113等を備えている。取手付サセプタ1001のフレーム部111は、ボールSAWセンサ1003を収納することができる立方体もしくは直方体形状の樹脂製のスケルトン・フレームである。図5の左上部に示すように、4本の縦柱を有するフレーム部111の上面(天井部)の一辺には交換時の保持部となる取手113が、フレーム部111と連続した一体構造で設けられている。図4及び図6から分かるように、取手113は板状の構造である。図4に示すように、フレーム部111の上面には、フレーム部111の上部を解放可能にするフレームキャップ112が取り外し可能なように設けられている。このフレームキャップ112の中央には、ボールSAWセンサ1003の北極にある北極電極118と電気的接触を取るための上部電気的接触穴117が設けられている。同様に、フレーム部111の下面の中央にはボールSAWセンサ1003の南極にある南極電極119と電気的接触を取るための下部電気的接触穴が設けられているが、図4では検出基体11aの南極側と下面に設けられた下部電気的接触穴が接しているので、下面に設けられた下部電気的接触穴は、積極的には図示されていない。検出基体11aは、球状であるため、取手付サセプタ1001の下面中央の下部電気的接触穴は、上部電気的接触穴117と同様に、検出基体11aが転がっていかないように検出基体11aを配置するための円形の開口部である。
図5及び図6から分かるように、ボールSAWセンサ1003は、予め検出基体11aの北極電極118、南極電極119及び赤道面を精密にアライメントして、取手付サセプタ1001に挿入され、上部電気的接触穴117のエッジと下部電気的接触穴のエッジで固定される。図4に示した検出容器10の蓋部121は、箱部123から容易に取り外すことができる構造になっているので、蓋部121を箱部123から取り外すことにより、箱部123の上部からフレーム部111の出し入れを容易に実施できる。即ち、検出セル1000の組み立てに際し、ボールSAWセンサ1003の北極電極118、南極電極119及び赤道面は、精密にアライメントすることが要求される。この要求は、図4~図6に示したように、ボールSAWセンサ1003をフレーム部111の内部に精密にアライメント調整された組み立て構造を、事前(工場出荷時)に取手付サセプタ1001として用意しておくことで解決できる。即ち、取手付サセプタ1001が事前に用意されていれば、検出容器10へのボールSAWセンサ1003の出し入れが、アライメント調整のスキルを有しない基本実施形態に係るウィルス検査装置のユーザであっても、容易に検出セル1000の組み立てが実行できる。
したがって、実用面においては、取手付サセプタ1001と、この取手付サセプタ1001に収納されたボールSAWセンサ1003のセットを、「センサユニット」の商品として工場出荷し、ユーザが検出セル1000を組み立てるようにすればよい。図3から分かるように、取手113の位置に合わせて、蓋部121の下面にU字型のアライメント溝が掘られている。図3に示すように、蓋部121の下面にU字型のアライメント溝を用意しておけば、このアライメント溝に取手113の上端部を嵌合させることにより、導入口35aから噴射されるエアロゾルジェットと擬受容体膜13との位置合わせも容易に行える。図4~図6に示す取手付サセプタ1001は、擬受容体膜13の形成や再生等のプロセス時にも用いることはでき、プロセス時の検出基体11aの取り扱いを容易にする役割も果たす。
図3に示すように、基本実施形態に係るウィルス検査装置の検出容器10の蓋部121の中央には、絶縁体からなる電極ホルダ122が配置され、この電極ホルダ122の中央を棒状の外部電極105が垂直方向に貫通している。外部電極105の下部の先端は、上部電気的接触穴117を介して北極電極118に電気的に接続されている。金属製の箱部123は接地電位に設定されている。図3に示すように、箱部123の底部の中央の突部が、フレーム部111の下面の中央に設けられた下部電気的接触穴を介して、南極電極119に電気的に接続される。なお、図示を省略しているが、箱部123にはペルチェ素子やサーミスタを組み込んでもよい。ペルチェ素子は、検出基体11aを加熱及び冷却するために用いられる、サーミスタは、熱電対などのような、他の温度センサに置き換えることも可能で検出基体11aの温度調整に用いることができる。上述したように、箱部123の上部と蓋部121の間には、シール部材としてのOリング131aが配置されているので、センサユニットを交換するために、取手付サセプタ1001の交換のために取り外し可能な構造を有する。従って、Oリング131aを用いる構造は、取手付サセプタ1001を出し入れする作業の後における気体の漏れ出しを防止する気密シールを担保している。
図1に示した基本実施形態の係るウィルス検査システムを構成するウィルス検査装置の概念的構成は、図7に示すような第1変形態様に係る具体的構成で、より簡易且つコンパクトに実現可能である。即ち、図1では、開閉バルブ32、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bの動作の制御により、ウィルス搬送配管A、湿潤空気搬送配管B及び乾燥空気搬送配管Cの経路を択一的に選択したが、図7に示す第1変形態様に係るウィルス検査装置の具体的構成を用いれば、開閉バルブ32、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bを用いなくても、実効的に、ウィルス搬送配管A、湿潤空気搬送配管B及び乾燥空気搬送配管Cの経路の切り替えが可能である。なお、図7の第1変形態様に係るウィルス検査装置では図3に示した箱部123と蓋部121からなる密閉容器の内部に、取手付サセプタ1001が収納された構造の全体を「筐体1a」として簡略化して図示している。なお、図7においては、図2に示したボールSAWセンサ1003の符号1003が、便宜上省略されている。又、図3に示した検出セル1000の符号1000も省略されている。対応する図面において符号1003や1000が省略されたことに伴い、図7の説明においては、「ボールSAWセンサ(11a,12,13)」、検出セル(11a,12,13,1a)のように表記する。又、図3の説明では第1経路端部124aの共通濃縮機構34と箱部123の導入口35aとがOリング131bを用いて気密に連結された構造として説明したが、図7では第1経路端部124aの第1濃縮機構(ウィルス濃縮機構)34aと筐体1aの導入口35aとがOリング131bを用いて気密に連結された構造に読み替えられる。第1濃縮機構34aは、標的ウィルスが含まれるエアロゾルの高速気流に圧縮し、標的ウィルスを濃縮した高速気流を擬受容体膜13に噴射する目的に特化した専用の濃縮機構である。
そして、図7に示す基本実施形態の第1変形態様に係るウィルス検査装置の具体的構成においては、第1経路端部124aの噴射方向に沿った中心軸と放射状(ラジアル)の関係になる中心軸を有する第2経路端部124b及び第3経路端部124cが配列されている。即ち、図7の筐体1aを囲む破線の円の中心において、第1経路端部124a、第2経路端部124b及び第3経路端部124cからの3種類の高速気流の噴射方向が交わる。第1経路端部124aは、先端(出射側)に設けられた第1濃縮機構34aを介して、被検査空気31aをボールSAWセンサ(11a,12,13)の擬受容体膜13に噴射すること等を目的とするものである。また、第1経路端部124aは、筐体1aと独立しており、Oリング131bを介して筐体1aと結合/切り離しが可能となっている。即ち、第1経路端部124aは、図7の筐体1aを囲む破線の円の外周に沿って相対的に回転することにより、第2経路端部124b又は第3経路端部124cに接続関係を交換することができる。
「相対的に回転」とは、中央の筐体1aが回転してもよく、逆に、中央の筐体1aは固定で、第1経路端部124a、第2経路端部124b及び第3経路端部124cを搭載した回転盤が回転してもよい。第2経路端部124bは、第1経路端部124aと同様に、先細りのテーパ形状をなす第2濃縮機構(乾燥空気濃縮機構)34bが専用で設けられており、更に、第2経路端部124bの入力側には乾燥機を有する乾燥室2cを設けるように、接続パイプ135bがリークのない気密構造で接続されている。第2経路端部124bに対し、筐体1aの導入口35aが相対的に回転移動した後、第2経路端部124bの第2濃縮機構34bと筐体1aの導入口35aとはOリング131cを用いて気密に連結される。第2経路端部124bは、清浄乾燥空気をボールSAWセンサ(11a,12,13)の擬受容体膜13の表面上に供給し、筐体1aの内壁や検出基体11aの表面上に付着した不純物としての非特異吸着物質を除去するパージ工程を行うこと等を目的とする。
第3経路端部124cには先細りのテーパ形状をなす第3濃縮機構(湿潤空気濃縮機構)34cが専用で設けられており、第3経路端部124cの入力側には、ネブライザー(液体霧化装置)等の加湿器を有する加湿室2cを設けるように接続パイプ135cがリークのない気密構造で接続されている。加湿室2cの入力側には、第3フィルタ30cがリークのない気密構造で接続されている。第3経路端部124cに対し、筐体1aの導入口35aが相対的に回転移動した後、第3経路端部124cの第3濃縮機構34cと筐体1aの導入口35aとはOリング131dを用いて気密に連結される。第3フィルタ30cは、例えば、図1のフィルタ21に対応し、外部から空気を取り込み、所定サイズ以上の不純物を除去すると共に余分な水分を除去して清浄乾燥空気とする。加湿室2cは、第3フィルタ30cからの清浄乾燥空気に所定量の水分を含ませる。従って、第3経路端部124cを、検出セル(11a,12,13,1a)を構成する筐体1aに気密に結合させることで、清浄湿潤空気を第3濃縮機構34cによりボールSAWセンサ(11a,12,13)の擬受容体膜13の表面上に噴射させて加湿工程を行うことができる。
第2経路端部124b側の乾燥室2cの入力側にも、第2フィルタ30bがリークのない気密構造で接続されていてもよい。第2フィルタ30bを備えることで、清浄乾燥空気をボールSAWセンサ(11a,12,13)の擬受容体膜13の表面上に供給し、筐体1aの内壁や検出基体11aの表面上に付着した不純物としての非特異吸着物質を除去するパージ工程を行うことができる。第2フィルタ30bは、例えば、図1のフィルタ21に対応し、外部から空気を取り込み、所定サイズ以上の不純物を除去すると共に余分な水分を除去して清浄乾燥空気とすることができる。乾燥室2cは、第3フィルタ30cからの清浄乾燥空気を更に乾燥させるが、第3フィルタ30cで十分な清浄乾燥空気が生成可能な場合には乾燥室2cを省略することもできる。図7では図示を省略しているが、第1経路端部124aの入力側には図1のフィルタ30aに対応するフィルタがあってもよいことは勿論である。
更に被検査エアロゾル33bを噴射させるために、第1経路端部124aとフィルタ30aに対応するフィルタの間に、ネブライザー(液体霧化装置)等の加湿器を有する加湿室をリークのない気密構造で接続してもよい、図7に示す基本実施形態に係るウィルス検査装置によれば、目的別に第1濃縮機構34a、第2濃縮機構34b及び第3濃縮機構34cの3種類の専用ノズルを用意している。3種類の専用ノズルと、この3種類の専用ノズルにそれぞれ独立して接続されるガス配管系を備えているので、高速気流を生成し、目的別の3種類の高速気流を自動的に入れ替えることができる。図7に示す基本実施形態の第1変形態様に係るウィルス検査装置によれば、図1に示したような、配管や、開閉バルブ32、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23b等を用いず、最短距離で吸引した被検査エアロゾル33b等をボールSAWセンサ(11a,12,13)や筐体1aの内壁等に届けることができる。
又、図7に示した基本実施形態の第1変形態様に係るウィルス検査装置によれば、目的に応じて、第1濃縮機構34a、第2濃縮機構34b及び第3濃縮機構34cの形状や構成を変えて、被検査エアロゾル33bのジェットや空気流の流速等を調整することもできる。また、第3経路端部124cで加湿工程を行い、第1経路端部124aで吸引/検査工程を行った後、第2経路端部124bに切り替えてパージ工程を行うことで、これらの工程を連続して行うことができる。また、図示しないが、例えば、アルコール蒸気を発生させる第4のユニットを追加し、この第4のユニットのノズル(第4濃縮機構)から噴射されるガスを用いて、検出セル(11a,12,13,1a)を構成するボールSAWセンサ(11a,12,13)や筐体1aの内壁の洗浄及び除菌を行うこと等も可能である。基本実施形態に係るウィルス検査装置によれば、新たな配管やバルブの追加なしに、洗浄及び除菌工程を行うことができるメリットがある。
図7の基本実施形態の第1変形態様に係るウィルス検査装置では回転移動の構成を例示したが、図8に示すような基本実施形態の第2変形態様に係るウィルス検査装置の並進移動(平行移動)の構成でも、図7と同様に簡易且つコンパクトなウィルス検査装置が実現可能である。図8でも図7と同様に、図3に示した箱部123と蓋部121からなる密閉容器の内部に、取手付サセプタ1001が収納された構造の全体を「筐体1b」として簡略化表示している。図7と同様に、図8の簡略化表示では第1経路端部124aの第1濃縮機構34aと筐体1bの導入口35aとがOリング131bを用いて気密に連結された構造に対応するが、図7の筐体1aの第1濃縮機構34a側の面は曲面であったが、図8の筐体1bのウィルス濃縮機構(第1濃縮機構)34u側の面は平面であることが相違する。図8に示す基本実施形態に係るウィルス検査装置の他の例では、第1経路端部124uは、ガス噴射方向に直交する方向に沿って、図8の筐体1bに対し相対的に並進移動することにより、第2経路端部124v又は第3経路端部124wに接続関係を交換することができる。「相対的に並進移動」とは、右側の筐体1bが並進移動してもよく、逆に、筐体1bは固定で、左側の第1経路端部124u、第2経路端部124v及び第3経路端部124wを搭載した並進移動盤が並進移動してもよい。
即ち、図8に示す基本実施形態の第2変形態様に係るウィルス検査装置の具体的構成においては、第1経路端部124uの噴射方向に沿った中心軸と平行関係になる中心軸を有する第2経路端部124v及び第3経路端部124wが配列されている。即ち、第1経路端部124u、第2経路端部124v及び第3経路端部124wからの3種類の高速気流の噴射方向は平行である。第2経路端部124vは、第1経路端部124uのウィルス濃縮機構(第1濃縮機構)34uと同様に、テーパ形状の乾燥空気濃縮機構(第2濃縮機構)34vが設けられており、更に、第2経路端部124vの入力側には、乾燥機を有する乾燥室2vを設けるように接続パイプ135vがリークのない気密構造で接続されている。並進移動後に、第2経路端部124vの乾燥空気濃縮機構34vと筐体1bの導入口とがOリング131vを用いて気密に連結される。第2経路端部124vは、パージガスとしての清浄乾燥空気をボールSAWセンサ(11a,12,13)の擬受容体膜13の表面上に供給し、筐体1bの内壁や検出基体11bの表面上に付着した不純物としての非特異吸着物質を、清浄乾燥空気で除去するパージ工程を行う。
第3経路端部124wにはテーパ形状の湿潤空気濃縮機構(第3濃縮機構)34wが設けられており、第3経路端部124wの入力側には、ネブライザー(液体霧化装置等)の加湿器を有する加湿室2wを設けるように接続パイプ135wがリークのない気密構造で接続されている。並進移動後に、第3経路端部124wの湿潤空気濃縮機構34wと筐体1bの導入口とがOリング131wを用いて気密に連結される。加湿室2wの入力側には、第3フィルタ30wがリークのない気密構造で接続されている。第3フィルタ30wは、例えば、図1のフィルタ21に対応し、外部から空気を取り込み、所定サイズ以上の不純物を除去すると共に余分な水分を除去して清浄乾燥空気とする。加湿室2wは、第3フィルタ30wからの清浄乾燥空気に所定量の水分を含ませる。従って、第3経路端部124wを筐体1bに気密に結合させることで、清浄湿潤空気を湿潤空気濃縮機構(第3濃縮機構)34wによりボールSAWセンサ(11a,12,13)の擬受容体膜13の表面上に噴射させて加湿工程を行うことができる。
第2経路端部124v側の乾燥室2vの入力側にも、第2フィルタ30vがリークのない気密構造で接続されていてもよい。第2フィルタ30vを備えることで、清浄乾燥空気をボールSAWセンサ(11a,12,13)の擬受容体膜13の表面上に供給し、筐体1bの内壁や検出基体11bの表面上に付着した不純物としての非特異吸着物質を除去するパージ工程を行うことができる。第2フィルタ30vは、例えば、図1のフィルタ21に対応し、外部から空気を取り込み、所定サイズ以上の不純物を除去すると共に余分な水分を除去して清浄乾燥空気とすることができる。乾燥室2vは、第2フィルタ30vからの清浄乾燥空気を更に乾燥させるが、第3フィルタ30wで十分な清浄乾燥空気が生成可能な場合には乾燥室2vを省略することもできる。
図8の第2変形態様に係るウィルス検査装置では図示を省略しているが、第1経路端部124uの入力側には図1のフィルタ30aに対応するフィルタがあってもよいことは勿論である。更に被検査エアロゾル33bを噴射させるために、第1経路端部124uとフィルタ30aに対応するフィルタの間に、ネブライザー(液体霧化装置)等の加湿器を有する加湿室をリークのない気密構造で接続してもよい。図8に示す基本実施形態の第2変形態様に係るウィルス検査装置によれば、目的別にウィルス濃縮機構(第1濃縮機構34u、乾燥空気濃縮機構(第2濃縮機構)34v及び湿潤空気濃縮機構(第3濃縮機構)34wの3種類のノズルを用意している。したがって、図8に示す第2変形態様に係るウィルス検査装置によれば、高速気流を生成し、目的別の3種類の高速気流を自動的に入れ替えることができる。このため、図1に示したような、配管や、開閉バルブ32、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23b等を用いず、最短距離で吸引した被検査エアロゾル33b等をボールSAWセンサ(11a,12,13)や筐体1bの内壁等に届けることができる。
図8に示した基本実施形態の第2変形態様に係るウィルス検査装置に係るウィルス検査装置によれば、目的に応じて、第1濃縮機構34u、第2濃縮機構34v及び第3濃縮機構34wの形状や構成を変えて、被検査エアロゾル33bのジェットや空気流の流速等を調整することもできる。また、第3経路端部124wで加湿工程を行い、第1経路端部124uで吸引/検査工程を行った後、第2経路端部124vに切り替えてパージ工程を行う手順を連続して行うことができる。また、図示しないが、例えば、アルコール蒸気を発生させる第4のユニットを追加し、この第4のユニットのノズルから噴射されるガスを用いて、ボールSAWセンサ(11a,12,13)や筐体1bの内壁の洗浄及び除菌を行うこと等も可能である。図8に示す基本実施形態の第2変形態様に係るウィルス検査装置は並進移動型の構成であるが、3種類の専用ノズルと独立したガス配管系を備えているので、図7の回転移動型のウィルス検査装置と同様に、新たな配管やバルブの追加なしに、洗浄及び除菌工程を行うことができる。
基本実施形態に係るウィルス検査システムの信号処理ユニット50は、図9に示すように、データプロセッサ500と、信号発生器/受信器駆動手段(論理回路)510と、データ記憶装置511と、プログラム記憶装置512と、出力装置513と、これらを接続するバス514とを備える。信号発生器/受信器駆動手段510は、検出基体11aの信号変換器12の動作を制御・駆動する電子回路等のハードウェア資源である。信号発生器/受信器駆動手段510は、励起用バースト信号を検出基体11aの信号変換器12に送信し、信号変換器12にSAWのコリメートビームを発生させる。信号変換器12は信号発生器/受信器駆動手段510からの電気信号を受信し、電気-音響変換により、音響信号であるSAWのコリメートビームを発生させ、SAWのコリメートビームを検出基体11aの周囲を伝搬させる。更に、信号発生器/受信器駆動手段510は信号変換器12に駆動・制御信号を送信し、SAWのコリメートビームである音響信号を信号変換器12に受信させる。
即ち、SAWのコリメートビームが検出基体11aの周囲を所定の回数だけ回転しながら伝搬した音響信号は、信号変換器12が音響-電気変換して電気信号に変換される。更に、信号発生器/受信器駆動手段510は、信号変換器12が出力した電気信号を、コリメートビームの帰還バースト信号として、信号変換器12から受信し、データ記憶装置511に格納する。その後、信号発生器/受信器駆動手段510は、データ記憶装置511から帰還バースト信号の波形データを読み出し、データプロセッサ500に送る。なお、データ記憶装置511に格納せずに、信号発生器/受信器駆動手段510が帰還バースト信号を受信したら、そのままデータプロセッサ500に送信するモードも可能である。擬受容体膜13に設けられた擬受容体14が標的ウィルスに特異的に結合すると、物理的状態として擬受容体膜13の重量が変化してSAWの伝搬特性が変化する。図2に例示したボールSAWセンサ1003の構成では、信号変換器12を構成しているセンサ電極が、擬受容体膜13の物理的状態の変化を示す音響信号を電気信号に音響-電気変換する。そして信号処理ユニット50が、音響-電気変換された電気信号を用いて算術論理演算を実行し、SAWの減衰係数、及びSAWの遅延時間を測定する。
基本実施形態に係るウィルス検査システムの信号処理ユニット50を構成するデータプロセッサ500は、加湿手段(論理回路)501と、噴射手段(論理回路)502と、検査手段(論理回路)503と、バルブ制御手段(論理回路)504と、除菌ガス制御手段(論理回路)505と、パージガス制御手段(論理回路)506と、ガスライン検査手段(論理回路)507と、センサ交換手段(論理回路)508と、演算シークエンス制御手段(論理回路)520とを論理的なハードウェア資源として備える。データプロセッサ500の加湿手段501は、開閉バルブ32を閉状態にし、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bにより湿潤空気搬送配管Bを選択した状態において、加湿器20、マスフローコントローラ22、及び吸引ポンプ40を起動させることで、検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13に清浄湿潤空気を噴射する。その結果、特異結合反応に使用する液体の蒸気が擬受容体膜13に供給され、かつ擬受容体膜13で結露することにより、擬受容体膜13の表面には、液膜が形成されることになる。
データプロセッサ500の噴射手段502は、図1に例示した構成においては、開閉バルブ32、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bの制御するために、バルブ制御手段504に必要な命令を送信する論理的なハードウェア資源である。バルブ制御手段504を介して開閉バルブ32を開状態にし、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bにより湿潤空気搬送配管Bを選択した状態において、噴射手段502は、更に加湿器20、マスフローコントローラ22、及び吸引ポンプ40を起動させる命令を送信する。噴射手段502はこれらの命令を送信することにより、所望の被検査エアロゾル33bの高速気流を形成し、この被検査エアロゾル33bの流体流を、第1濃縮機構34aを介して検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13に高速気流として噴射する動作を制御する。図7に例示した第1変形態様では、筐体1aの相対的回転移動、図8に例示した第2変形態様では、筐体1bの相対的並進移動を制御する命令をセンサ交換手段508に送信する。センサ交換手段508を介して、筐体1aの相対的回転移動、或いは筐体1bの相対的並進移動が制御される。その結果、被検査エアロゾル33bの高速気流が擬受容体膜13に噴射され、擬受容体膜13の表面において、図10に示したような標的ウィルス60のスパイク糖タンパク質17のRBDと、擬受容体14とが結合してスパイクタンパク受容体結合19を構成する特異結合反応が加速される。
データプロセッサ500の検査手段503は、信号変換器12から信号発生器/受信器(論理回路)510が受信した電気信号である帰還バースト信号の波形データを用いて、積分型差分検出するための算術論理演算を実行するハードウェア資源である。即ち、検査手段503は、帰還バースト信号を用いて、擬受容体14にスパイクタンパク受容体結合19によって結合した標的ウィルス60による重量面密度の増加をSAWの遅延時間応答として積分型差分検出する。重量面密度の増加をSAWの遅延時間応答として積分型差分検出することにより、検査手段503は被検査空気31a中の標的ウィルス60の有無を検査できる。
例えば、検査手段503は、信号発生器/受信器駆動手段(論理回路)510に、信号変換器12から、SAWの遅延時間応答の情報を示す電気信号を受信させる命令を、信号発生器/受信器駆動手段510に送信する。命令を受けた信号発生器/受信器駆動手段510は、遅延時間応答の情報を示す電気信号を、信号変換器12から受信し、データ記憶装置511に格納する。その後、検査手段503は、遅延時間応答の情報を示す電気信号を、データ記憶装置511から読み出す、或いは信号発生器/受信器駆動手段510から直接受信し、得られた遅延時間応答の情報を積分型差分検出するために必要な算術論理演算を実行する。基本実施形態に係るウィルス検査システムによれば、検査手段503が、積分型差分検出の算術論理演算を実行することにより、被検査空気31a中の標的ウィルスの有無を、簡単、高速、高感度でインサイチュ検査することができる。
また、基本実施形態に係るウィルス検査システムのデータプロセッサ500の検査手段503は、バルブ制御手段504に命令を送信して、開閉バルブ32を閉状態にし、更に加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bの流路を制御することにより乾燥空気搬送配管Cを選択させる。バルブ制御手段504が、乾燥空気搬送配管Cを選択した状態において、検査手段503はマスフローコントローラ22及び吸引ポンプ40に命令を送り、マスフローコントローラ22及び吸引ポンプ40のそれぞれを起動させ、清浄乾燥空気を擬受容体膜13上に噴射する動作を実現する。即ち、検査手段503は被検査エアロゾル33bの流体流を擬受容体膜13上に噴射した後、且つ、標的ウィルスの有無を検査する前のタイミングで、清浄乾燥空気を擬受容体膜13上に噴射する命令を送信する。検査手段503、検出基体11aの表面を乾燥させる命令を発信することで、擬受容体膜13上から擬受容体14に結合した標的ウィルス以外の不純物(ウィルス又は粒子)を吹き飛ばして除去することが可能となり、更に、高感度のインサイチュ検査が可能となる。
既に述べたとおり、データプロセッサ500のバルブ制御手段504は、開閉バルブ32の開閉、及び加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bの詳細な動作を制御する。除菌ガス制御手段505は、ガス供給ユニット70の動作を制御するに必要な命令をガス供給ユニット70に送信し、ガス供給ユニット70から除菌ガスをウィルス搬送配管Aに供給する。パージガス制御手段506は、ガス供給ユニット70の動作を制御するに必要な命令をガス供給ユニット70に送信し、ガス供給ユニット70からパージガスをウィルス搬送配管Aに供給する。ガスライン検査手段507は、定期的に、ウィルス搬送配管A、湿潤空気搬送配管B、乾燥空気搬送配管C及びパージガス搬送配管Dの検査を行う。センサ交換手段508は、図7で説明した第1変形態様の回転動作や図8で説明した第2変形態様の並進動作を制御する。そして、演算シークエンス制御手段520は、加湿手段501、噴射手段502、検査手段503、バルブ制御手段504、除菌ガス制御手段505、パージガス制御手段506、ガスライン検査手段507、センサ交換手段508のそれぞれの動作のシークエンスを制御する。
このようなデータプロセッサ500は、例えば、中央処理ユニット(CPU)のようなチップ化されたものであって、基本実施形態のウィルス検査装置の内部に組み込み可能なものが望ましいが、パーソナルコンピュータ(PC)等のような、汎用コンピュータシステム内のCPUの一部であってもよい。データプロセッサ500は、マイクロチップとして実装されたマイクロプロセッサ(MPU)等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能である。基本実施形態に係るウィルス検査システムのデータプロセッサ500として、算術演算機能を強化し信号処理に特化したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよい。
基本実施形態に係るウィルス検査システムのデータプロセッサ500を構成する加湿手段501と、噴射手段502と、検査手段503と、バルブ制御手段504と、除菌ガス制御手段505と、パージガス制御手段506と、ガスライン検査手段507と、センサ交換手段508と、センサ交換手段508と、演算シークエンス制御手段520の少なくとも一部の構成をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなPLDで構成してもよい。PLDによって、データプロセッサ500の一部又はすべてを構成した場合は、データ記憶装置511は、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、データプロセッサ500は、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、あらかじめPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
また、データプロセッサ500は、算術論理演算を実行する算術論理演算ユニット(ALU)と、ALUにオペランドを供給し、かつALU演算の結果を記憶する複数のレジスタと、ALUの調整された演算を指示することによる命令の(メモリからの)フェッチ及び実行を統合する制御装置とを含んでいてもよい。さらに、基本実施形態に係るウィルス検査システムのデータプロセッサ500は、論理回路ブロック又は単一の集積回路(IC)チップ上に含まれる電子回路などのような個別のハードウェア資源であってもよく、汎用コンピュータシステムのCPUを使用してソフトウェアによって実現される仮想等価論理機能によって提供されるものであってもよい。
基本実施形態に係るウィルス検査システムのデータ記憶装置511は、スパイクタンパク受容体結合19の有無を検査するための計算に使用するデータを記憶する。データ記憶装置511は、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることが可能である。キャッシュメモリは、1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に、3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。プログラマブルロジックデバイス(PLD)によって、データプロセッサ500の一部又は全てを構成した場合には、データ記憶装置511は、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することもできる。
プログラム記憶装置512は、スパイクタンパク受容体結合19の有無を検査するためのプログラムを記憶する。このプログラムは、後述するように、コンピュータ読取り可能な記録媒体等に保存しておき、この記録媒体に記憶されたプログラムをプログラム記憶装置512内に読み込んでもよいし、また、サーバ内に記憶されたプログラムを、インターネットを介してダウンロードすることによってプログラム記憶装置512内に読み込んでもよい。出力装置513は、必要に応じて、スパイクタンパク受容体結合19の有無の検査結果を出力することができる。例えば、出力装置513には、警告灯等の警報装置を含ませることができる。基本実施形態のウィルス検査システムは、非常にコンパクトにできるのが特徴であるが、その検査装置に一体化、又は接続可能な警告灯を設けることができる。
検査の結果、被検査空気31a中に目的とする標的ウィルス60が存在することが確認された場合には、その警告灯を点滅等させる、それに合わせて音声を再生する等して、周囲の人にその空間からの即時退去を警告することができる。或いは出力装置513にカード書き込み装置や、スマートフォン等の携帯端末への情報書き込み装置を設け、呼気測定の結果を個人情報としてカードや携帯端末に入力し、呼気測定の結果陰性が確認した人のみの移動を許可するようなウィルス感染防止のためのスクリーニングをすることができる。カードや携帯端末に入力された個人情報の履歴を、公共交通機関の自動改札機や、イベント会場のゲートの自動開閉装置の入力情報として採用すれば、公共交通機関やイベント会場に入場する人のスクリーニングが可能になる。基本実施形態のウィルス検査システムのコンパクトにできる特徴は、ウィルス検査システムのユビキタスな持ち運びを可能にする。特に、5G,6G,7G等の通信技術を用いれば、図9に示したデータプロセッサ500の一部の機能やデータ記憶装置511等の機能をクラウドサーバに持たせ、信号処理ユニット50の機能をよりコンパクト且つ軽量にできる。5G等の通信技術でクラウド・コンピューティングする場合は、信号処理ユニット50には送信・受信の通信機能が必要になる。しかし、コンパクト化が可能な特徴を生かせば、基本実施形態に係るウィルス検査システムの全体をスマートフォンやタブレット端末の一部に組み込むことも可能である。スマートフォンやタブレット端末に組み込む場合は、図9に示した構成に新たな、送信・受信の通信機能を付加する必要もない。
以上のように、基本実施形態に係るウィルス検査システムによれば、第一の手順で、清浄湿潤空気により擬受容体膜13上に液体を結露させる。更に、第二の手順で、清浄湿潤空気により被検査空気31a中に含まれる粗エアロゾル33aに液体を含ませて含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bを構成し、被検査エアロゾル33bを擬受容体膜13に噴射する。即ち、基本実施形態に係るウィルス検査システムによれば、簡単かつ高速に、擬受容体膜13上に液膜を形成し、更に粗エアロゾル33aに液体を含ませて含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bを構成ことができる。また、液体は、必要最小限の量が擬受容体膜13と粗エアロゾル33aに供給されるので、液体中での拡散をほとんど考慮する必要がなく、その結果、秒オーダの高速なウィルスのインサイチュ検査が可能となる。
また、簡単、高速、高感度で、ウィルスのインサイチュ検査が可能になることから、環境計測に基づく危険な空気環境からの迅速な退避や、強力な換気措置による空気清浄化等の対処が直ちに行えて、感染のリスクが低減するという効果を発揮できる。更には、基本実施形態に係るウィルス検査システムによれば、液体を用いたバイオセンサの小型軽量化への障害を排除できるので、交通機関、劇場等のオンサイト・インサイチュ検査へ適用できる可搬型機器への適用が可能となり、例えば、現場で、簡便にスクリーニングできる呼気分析器の実現も可能となる。
尚、エアロゾルの噴射を続けた場合、加湿器20から検出容器10までの経路、及び検出容器10の内部において、特異結合反応に使用する液体の結露が発生するおそれが懸念される場合には、配管系の一部等に結露により生じた液滴の受け機構や、乾燥機構等を設けてもよい。
――基本実施形態のウィルスの検査方法――
次に、図12のフローチャートを参照しつつ、基本実施形態に係るウィルスの検査方法の例を説明する。以下では、説明を分かり易くするため、図1に概念的に示した基本実施形態に係るウィルス検査システムを用いて、被検査空気31a中にウィルスが存在するか否かを検査する場合を説明する。
(1)(加湿工程)
まず、図15のステップS11において、擬受容体14を含む擬受容体膜13上に、図10(b)に示したように液膜61を形成する。液膜61は、擬受容体14が活性を維持可能な量だけ形成される。液膜61は、例えば、水、又は生体環境を模擬した緩衝溶液である。具体的には、開閉バルブ32が閉状態に設定され、三方バルブである加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bにより湿潤空気搬送配管Bが選択される。吸引ポンプ40の起動により環境空気が取り込まれると、活性炭等が充填されたフィルタ21により不純物や水分が除去されて、清浄乾燥空気が生成される。清浄乾燥空気は、マスフローコントローラ22により流量1L/min程度に設定された後に、加湿器20により加湿されて、清浄湿潤空気となる。清浄湿潤空気が加湿出力弁23b及び第1濃縮機構34aを経由して、検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13に供給されると、検出基体11aの上流部の配管内壁、及び擬受容体14を含む擬受容体膜13上に液膜61が形成される。
(2)(噴射工程)
次に、図15のステップS12において、被検査空気31aを取り込み、被検査空気31aに含まれる粗エアロゾル33aに液体を含ませて含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bの流体流を形成した後に、それを擬受容体膜13上に噴射する。具体的には、開閉バルブ32が開状態に設定され、三方バルブである加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bにより湿潤空気搬送配管Bが選択される。吸引ポンプ40の起動により、環境空気が取り込まれると同時に、被検査空気31aが取り込まれる。被検査空気31aの流体流は、加湿器20からの清浄湿潤空気と混合されて、含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bの流体流となる。そして、被検査エアロゾル33bの流体流は、図11(a)又は図11(b)に示すように、共通濃縮機構34により濃縮された高速気流になり、検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13に供給される。その結果、被検査エアロゾル33bの流体流に標的ウィルス60が含まれている場合には、擬受容体膜13において、標的ウィルス60のスパイク糖タンパク質17のRBDと擬受容体14と特異結合反応が発生する。
ここで、空気取り込み口から取り込んだ被検査空気31aには、検査の妨害になる大きなサイズのパーティクルや粗エアロゾル33aが含まれている可能性がある。そこで、検査精度を向上させるため、フィルタ30aにより、所定のサイズ、例えば4μmよりも大きいサイズのパーティクルや粗エアロゾル33aを除去する。
被検査エアロゾル33bの流体流が擬受容体膜13に供給されると、例えば、図10(b)に示すように擬受容体表面上の液膜61が存在する場合は、標的ウィルス60を覆う被検査エアロゾル33bの粒子が擬受容体膜13の表面上の液膜61と合体する。一方、図10(a)に示すように擬受容体表面上に液膜61が存在しない状況であっても、標的ウィルス60を覆う被検査エアロゾル33bの粒子が擬受容体膜13の表面に到達する。そして、図10(a)に示す被検査エアロゾルが保持する液体または図10(b)に示す擬受容体表面上の液膜61が保持する液体中でスパイク糖タンパク質17のRBDと擬受容体14とがスパイクタンパク受容体結合19を構成する特異結合反応によって、擬受容体膜13の表面に標的ウィルス60を捕捉する。例えば、標的ウィルス60がSARS-CoV-2ウィルスの場合であれば、スパイク糖タンパク質17のRBDはヒト細胞上のACE2受容体に高い親和性で結合することが知られている。このため、SARS-CoV-2ウィルスを検出する目的の場合は、擬受容体14はACE2受容体を模写した形態で構成しておく。この際、捕捉効率を最大化するため、清浄湿潤空気の流量を、被検査空気31aの湿度に応じて最適に制御するのが好ましい。例えば、清浄湿潤空気の流量は、マスフローコントローラ22により、0.1L/min程度に制限される。
(3)(検査工程)
次に図15のステップS13において、加湿器20、マスフローコントローラ22、及び吸引ポンプ40の動作を一旦停止させた後に、開閉バルブ32を閉状態に設定する。そして、再び、マスフローコントローラ22、及び吸引ポンプ40を動作させ、更に、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bにより乾燥空気搬送配管Cを選択することで、清浄乾燥空気を検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13上に噴射する。この時、加湿器20を動作させ、乾燥空気搬送配管Cに代えて湿潤空気搬送配管Bを選択して、清浄湿潤空気を検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13上に噴射してもよい。
このように、ステップS12において被検査エアロゾル33bの流体流を擬受容体膜13上に噴射した後、ステップS13における標的ウィルス60の有無を検査する積分型差分検出を行う前に、ステップS13では、清浄乾燥/湿潤空気を擬受容体膜13上に噴射する手順を実施する。即ち、ステップS12において擬受容体膜13に非特異的に吸着したウィルスやダスト粒子等の不純物を、ステップS13の積分型差分検出の前に、除去することができる。ステップS13で清浄乾燥/湿潤空気を擬受容体膜13上に噴射する手順を含ませた2段階の手順を実施することにより、検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13における特異結合反応によって特異的に結合したスパイクタンパク受容体結合19による重量面密度の増加が、例えば、SAWの遅延時間応答として高精度に積分型差分検出することが可能となる。
(4)(除菌工程)
次に図15のステップS14において、ステップS13の検査によって汚染された配管内、及び機器内の除菌を行う。具体的には、ステップS14において、ガス供給ユニット70から除菌ガスを導入し、基本実施形態のウィルス検査装置の配管内部、及び検出容器10の内部等の除菌を行う。ステップS14により、引き続き他の場所で基本実施形態に係るウィルス検査システムを用いて検査を行う場合に、安全、かつ安心して使用できると共に、配管内部等が清掃されていることから別の場所でも高精度に検査を行うことができる。尚、除菌工程は、除菌ガスを供給する場合を例に挙げたが、これに限定されることはなく、例えば、UV光触媒による標的ウィルス60不活性化等の技術を利用することができる。以下、除菌工程についていくつか説明があるが、同じである。
――基本実施形態の検査感度の推定――
基本実施形態のウィルス検査装置、ウィルス検査システム及びウィルス検査方法による検査感度について、図1及び図2等に示したボールSAWセンサ1003を用いる場合について説明とする。まず、ボールSAWセンサ1003の感度を、STカット水晶基板を用いたSAW共振器の感度に換算すると、水晶基板の物性定数を理論式に代入して得られる質量負荷感度Sの推定式は、
S=Δf/Δms=1.32f2 ……(1)
となる。但し、Δf(Hz)は、共振周波数変化であり、Δms(μg/cm2)は、質量負荷による重量面密度の増加であり、f(MHz)は、周波数である。また、f=100MHzでは、感度Sは、
S=Δf/Δms=1.32×104(Hz/(μg/cm2)) …(2)
となる。
ボールSAWセンサ1003では、遅延時間の積分型差分検出を行うが、相対感度は、0.01ppmである。これを共振周波数変化に換算すると、Δf=1Hzとなるので、重量面密度変化Δmsの検出限界は、
Δms=75.8pg/cm2=758fg/mm2 ……(3)
となる。
ここで、標的ウィルス60をインフルエンザウィルスとすると、ウィルス1個の質量Mは、
M=0.8fg ……(4)
であり、検出限界Sは(2)式を用いて、758fg/0.8fg/mm2=948個/mm2となる。
インフルエンザ感染者の呼気中のウィルス濃度は、67~8500個/L(非特許文献2参照)であるが、上記の検出限界を有するボールSAWセンサ1003を用いたこのような低濃度ウィルス検査の可能性を以下のように検討する。
基本実施形態に係るウィルス検査システムによる空気中ウィルスの検査では、例えば、図11に示したノズル形状の第1濃縮機構34aを用いることで、被検査空気31aを高速気流に載せて、ボールSAWセンサ1003の擬受容体膜13上に噴射する。この場合、噴射ノズルのガス流入口における流量を1(L/min)とし、第1濃縮機構34aの導入口における開口断面積を1mm2とすると、第1濃縮機構34aの導入口における流速νは、
ν=16.7m/s ……(5)
となる。但し、空気の圧縮については無視するものとする。
また、第1濃縮機構34a内の被検査空気31a中のウィルスの平均濃度npを、
np=104個/L=10個/mL=10×10-3個/μL ……(6)
とすると、第1濃縮機構34aの開口断面積1mm2の導入口を経由して、ボールSAWセンサ1003の擬受容体膜13上に流入するウィルスの流入量VDは、毎秒、
VD=167個/s ……(7)
となる。
従って、例えば、100秒間、第1濃縮機構34aから被検査空気31aを噴射することで、ボールSAWセンサ1003の擬受容体膜13上には16700個の標的ウィルス60が流入することになる。また、擬受容体膜13上におけるウィルスの捕捉効率を50%と仮定すると、ガス流入後100秒間のウィルス捕捉個数は、8350個となる。この数は、上記の検出限界の個数948個よりも大きく、更に信号対雑音比は、S/N=8350/948=8.8となるため、十分にウィルスの有無を検査できることが分かる。
即ち、この噴射時間を濃縮工程(濃縮時間)と称すると、基本実施形態に係るウィルス検査システムによれば、1~2分の短い濃縮工程により、簡単、かつ高感度で、標的ウィルス60のインサイチュ検査を行うことができることを意味する。これにより、簡単、高速、高感度での標的ウィルスのインサイチュ検査が可能となるため、呼気中のウィルスのインサイチュ検査や空気感染危険度の予知等が可能となる。
――基本実施形態のウィルス検査プログラム――
本発明の基本実施形態に係るウィルス検査システムは、上記のような擬受容体膜13を少なくとも一部に皮膜した検出基体11aと、被検査エアロゾル33bを取り込んでそれを擬受容体膜13上に噴射可能なウィルス搬送配管Aと、ウィルス搬送配管Aの途中に結合され、清浄湿潤空気を、ウィルス搬送配管Aを介して擬受容体膜13上に供給可能な湿潤空気搬送配管Bとを用いて、標的ウィルス60のインサイチュ検査を実行するウィルス検査プログラムに適用することが可能である。この場合、ウィルス検査プログラムは、湿潤空気搬送配管Bから擬受容体膜13に清浄湿潤空気を噴射する加湿命令と、被検査エアロゾル33bに清浄湿潤空気を混合し、それを擬受容体膜13上に噴射する噴射命令と、擬受容体膜13上の擬受容体14に結合した標的ウィルス60に基づき、被検査エアロゾル33b中の標的ウィルス60の有無を検査する積分型差分検出を行う検査命令とを含む一連の命令をコンピュータに実行させる。
基本実施形態に係るウィルス検査プログラムは、図9に示した信号処理ユニット50のプログラム記憶装置512からウィルス検査プログラムを読み出し、実行するといったような処理で実現可能である。あるいは、基本実施形態に係るウィルス検査システムの信号処理ユニット50内のプログラム記憶装置512以外の主記憶装置等の記憶部に、ウィルス検査プログラムを常時記憶させておいてもよい。更に、ネットワーク、又は記憶媒体を介してウィルス検査プログラムを受信し、信号処理ユニット50内の主記憶装置等の記憶部やプログラム記憶装置512にウィルス検査プログラムを格納させてから、ウィルス検査プログラムを読み出してもよい。また、本発明の基本実施形態に係るウィルス検査プログラムは、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
基本実施形態に係るウィルス検査プログラムは、例えば、外部メモリや、コンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されていてもよい。この場合、外部メモリ、又はコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されたウィルス検査プログラムを、プログラム記憶装置512に読み込ませることによって、データプロセッサ500は、このウィルス検査プログラムに記載された一連の命令に従って、スパイクタンパク受容体結合19の有無の検査を実行できる。ここで、「コンピュータ読取可能な記録媒体」とは、コンピュータの外部メモリユニット、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ等のような、ウィルス検査プログラムを記録することができる記録媒体又は記憶媒体を意味する。
(第1拡張実施形態)
次に、上記の基本実施形態の技術的思想を拡張した本発明の第1拡張実施形態について説明する。本発明の第1拡張実施形態に係るウィルスの検査装置は、図13に示すように、ボールSAWセンサ1003を収納する検出容器10の一方(図13において左側)に導入口35aを備え、導入口35aに対向する他方(図13において右側)に排気管134を備える点では図3に示した構造と同様である。図2に示したボールSAWセンサ1003と、このボールSAWセンサ1003を格納する検出容器10とで、第1拡張実施形態に係るウィルス検査装置の検出セル1000が図13に示すように構成されている。なお、以下の説明においては図2に示したボールSAWセンサ1003を便宜上、「ボールSAWセンサ(11a,12,13,14)」と表記し、対応する図面においては符号1003を省略することとする。ウィルス搬送配管Aのガス噴射側の端部は、図13の左側から検出容器10の導入口35aに接続されている。図1に示した吸引ポンプ40は、検出容器10の排気管134に図13の右側で接続される。検出容器10は、中空となっており、その内部にボールSAWセンサ(11a,12,13,14)が配置されている。検出基体11aは、球状であり、図2に示すように、検出基体11aの表面の一部、又はほぼ全体は、擬受容体膜13により覆われている。
図13に示すように、検出容器10は、天井部が解放された金属製の箱部123と、箱部123の上部(天井部)を閉じる金属製の蓋部121で直方体状の密閉容器を構成している。密閉容器を構成するために箱部123の上端部にはOリング溝132aが、箱部123の上部を周回するようにU字型の溝として彫り込まれ、Oリング溝132aにはOリング131aが収納されている。Oリング溝132aに対応するトポロジで蓋部121の下面にはOリング溝133aがU字型の溝として彫り込まれている。箱部123の導入口35aに対向する他方に設けられた排気管134の内部にはオリフィス9が配置されている。第1濃縮機構34aと第1濃縮機構34aに連結された導入口35aとで、図1に模式的(概念的)に示したウィルス搬送配管Aの一部が構成され、図1のフィルタ30aを経由した被検査エアロゾル33bの一群が、検出容器10に収納されたボールSAWセンサ(11a,12,13,14)の擬受容体膜13に向かう高速気流として噴射される。
但し、第1拡張実施形態に係るウィルスの検査装置の検出容器10は、金属ブロックで組み立てることが可能である。被検査エアロゾル33bの吸込口2aと、ボールSAWセンサ(11a,12,13,14)を配置する空洞部3と、被検査エアロゾル33bの排気口を構成する排気管134と、コリメーションフォーカス作用を有するシースフローFを生成するための空間5a,5bとの4つの空間を有している特徴が図3に示した構造とは異なる。検出基体11aは、空洞部3内において、北極電極が、RF電極となる外部電極105に接続され、南極電極が、接地(GND)電極に接続されている。赤道面が吸込口2aと排気口を構成する排気管134とを結ぶ直線に対して平行になるように固定されている。検出基体11aの赤道面には、櫛形のセンサ電極からなる信号変換器12が設けられ、また、赤道面の少なくとも一部を含む表面には、標的ウィルス60を検出する擬受容体膜13が塗布されている。信号変換器12は、擬受容体14が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜13の物理的状態の変化を示す物理信号を電気信号に変換する。そして、信号処理ユニット50が、信号変換器12が出力した電気信号を用いて、SAWの減衰係数及びSAWの遅延時間の変化を測定するための算術論理演算を実行する。
第1濃縮機構(ウィルス濃縮機構)34aの先端部を取り囲むように、薄い円錐面に囲まれた流路である空間5bが配置されている。図7に示した基本実施形態の第1変形態様に係るウィルス検査装置と同様に、第1濃縮機構34aと筐体の導入口35aとがOリング131bを用いて気密に連結された構造となっており、第1濃縮機構34aに対して筐体の導入口35aは相対的に回転移動可能である。図13では図示を省略しているが、第1濃縮機構34aの他に、第2濃縮機構及び第3濃縮機構のノズルを用意され、筐体の導入口35aを第2濃縮機構及び第3濃縮機構のノズルに対し相対的に回転移動できる。即ち、第1拡張実施形態に係るウィルスの検査装置においても、図7に示した構造と同様に、3種類のノズルが用意され、3種類のノズルのそれぞれで、高速気流を生成し、目的別の3種類の高速気流を自動的に入れ替えることができる。
しかし、図3に示した基本実施形態に係るウィルス検査装置の構成と同様に、図13に示す構造を、多用途の共通濃縮機構34と箱部123の導入口35aとがOリング131bを用いて気密に連結された構造に置き換えることも可能である。さて、ウィルス搬送配管に着目して説明すると、吸込口2aから吸引された被検査エアロゾル33bは、空間5bから噴き出す空気(シースフロー)でシースされて第1濃縮機構34aから噴射されるので、より細い被検査エアロゾル33bのジェットとなってボールSAWセンサ(11a,12,13,14)の赤道面に収束される。第1拡張実施形態に係るウィルスの検査装置の構造は、既に説明した図11(b)のノズル構造(メインフローとそれを取り囲むシースフローを持つ2重構造)の具体例となっている。図13に示す第1拡張実施形態に係るウィルスの検査装置の構造により、更に効率よく被検査エアロゾル33bを分析可能となる。また、第1拡張実施形態に係るウィルスの検査装置では、空間5aと空間5aに接続された加圧ポンプを用いて、空間5bから噴射されるシースフローを加速し、シースフローに接する被検査エアロゾル33bのジェットを加速することもできる。
図示を省略しているが、図1に例示して構成と同様に、第1拡張実施形態に係るウィルスの検査装置を構成する排気管134には、真空ポンプ等の吸引ポンプが接続されており、吸引ポンプの起動によって吸込口2aから被検査空気31aが吸引される。排気口には、小さなオリフィス9が設けられている。オリフィス9は、吸引する被検査空気31aの量を制御する機能を有する。また、排気口と吸引ポンプとの間において、紫外線LEDや紫外線半導体レーザ等により紫外線照射を行うことで、標的ウィルス60を無害化したり、バブラを設けて被検査エアロゾル33bを回収したりすることができる。吸込口2aは、末端に向かって徐々に直径が小さくなるテーパ構造であるため、ウィルス搬送配管の出射端となる第1濃縮機構34aの先端からは、検出基体11aの赤道に向かって細い被検査エアロゾル33bのジェットが噴射される。湿潤空気搬送配管、乾燥空気搬送配管及びパージガス搬送配管等については、図7に示した基本実施形態の第1変形態様に係るウィルス検査装置と同様である。
(第2拡張実施形態)
更に、上記の基本実施形態の技術的思想を拡張した本発明の第2拡張実施形態について説明する。本発明の第2拡張実施形態に係るウィルス検査システムは、図14に模式的な概念図を示すように、マスフローコントローラ22が検出容器10と吸引ポンプ40の間に接続されている。第2拡張実施形態に係るウィルス検査システムを構成するウィルス検査装置では、ウィルス搬送配管Aからの被検査空気31bの流量、湿潤空気搬送配管Bからの清浄湿潤空気の流量、乾燥空気搬送配管Cからの清浄乾燥空気の流量、更には、パージガス搬送配管Dからのパージガス又は除菌ガスの流量を、1つのマスフローコントローラ22で制御できるため、検査装置の小型化、高性能化を実現できる。
基本実施形態に係るウィルス検査システムと同様に、第2拡張実施形態に係るウィルス検査システムでは、信号処理ユニット50が積分型差分検出をする。このため、擬受容体14の抗原・抗体反応の活性化の能力、即ちウィルスと擬受容体14の特異結合反応の能力が低下した場合等においては、検出セル1000(図3及び図13参照。)を交換しなければならない。例えば、検査室から遮断された別室に予備の検出セルを待機させ、使用者が非接触で交換できる仕組みであることが好ましい。例えば、回転式かつ自動で検出セルの交換ができる等の機構を採用してもよい。また、ウィルス検査システムの系外に使用済みの検出セルを排出する際、自動でラッピングして排出する等、擬受容体膜13をはじめとした汚染可能性のある部分を非接触でラッピングする機構を設けてもよい。
図17に示すように、第2拡張実施形態に係るウィルス検査装置は、第1検出基体11a、第2検出基体11b、第3検出基体11c、……、第8検出基体11hの8個の球状の検出基体を収納する円盤形の回転筐体1rを有している。第1検出基体11a、第2検出基体11b、第3検出基体11c、……、第8検出基体11hは、それぞれ、図2に示した構造と同様なボールSAWセンサを構成するものであるが、その詳細の図示を省略している。図16及び図17の説明では、第1検出基体11a、第2検出基体11b、第3検出基体11c、……、第8検出基体11hは、それぞれ第1ボールSAWセンサa、第2ボールSAWセンサb、第3ボールSAWセンサc、……、第8ボールSAWセンサhを意味するものとする。即ち、第1検出基体11a~第8検出基体11hの赤道面には、櫛形電極がそれぞれ信号変換器12として設けられ、赤道面の少なくとも一部を含む表面には、標的ウィルス60を検出する擬受容体膜13が塗布されている。しかし、図16及び図17においては、信号変換器12や擬受容体膜13等の図示を省略されている。又、第2拡張実施形態に係るウィルス検査装置は、基本実施形態に係るウィルス検査装置の説明において参照した図4~図6に示した取手付サセプタ1001を用いる構造であるが、図16及び図17においては、手付サセプタの構造の図示を省略している。
図16に示す第2拡張実施形態に係るウィルス検査装置の断面図において、X方向から回転筐体1rを見ると、図17に示すようになる。図17に示すように、第1検出基体11a、第2検出基体11b、第3検出基体11c、……、第8検出基体11hの8個の球状の検出基体は、互いに45°ずれた8本の放射線の上に位置するように、回転筐体1rの円周に沿って、等間隔で配列されている。図16に示すように、検出容器10は中空の空洞部3を有し、この空洞部3の内部に回転筐体1rが気密に収納され、回転軸AXを中心にR方向に回転することが可能となっている。図16の左上部には、ウィルス搬送配管Aの経路端部が共通濃縮機構を構成するように、テーパ構造なす吸込口2の空間をなして配置されている。図16では図示を省略しているが、図14に示すように、経路端部の入力側にはフィルタ30が存在する。又、更に含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bを噴射させるために、経路端部とフィルタ30の間に、開閉バルブ32、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23b等を含む配管系が存在する。
図16の右上部に示した排気口4には、真空ポンプ等の吸引ポンプ40が接続されており、吸引ポンプ40の起動によって吸込口2から被検査エアロゾル33bが吸引される。排気口4には、小さなオリフィス9が設けられている。オリフィス9は、吸引する被検査エアロゾル33bの量を制御する機能を有する。また、排気口4と吸引ポンプ40との間において、紫外線LEDや紫外線半導体レーザ等により紫外線照射を行うことで、被検査エアロゾル33bに含まれる標的ウィルス60を無害化したり、バブラを設けて標的ウィルス60を回収したりすることができる。図16に示すように、回転筐体1rの左面上部と、この回転筐体1rの左面上部に対向する経路端部の右側端面とは、Oリング133pで気密性を保つように構成されている。
更に、回転筐体1rの右面上部と、この回転筐体1rの右面上部に対向し、吸引ポンプ40側の排気口4が開孔された空洞部3の内壁面も、Oリング133qで気密性を保つように構成され、第1検出基体11a~第8検出基体11hが回転した場合であっても、気体のリーク発生しないように構成されている。第1検出基体11a~第8検出基体11hがR方向に回転しているとき、第1検出基体11a~第8検出基体11hの北極電極に接続される棒状の外部電極105は、回転筐体1rの回転を邪魔しないように、図16に示す上下方向UDにスライドし、第1検出基体11a~第8検出基体11hから離れる。このため、外部電極105のスライド移動が気密性を保って実施することを可能にするために、外部電極105移動部分にはOリングSHが設けられている。なお、検出容器10の空洞部3の内部に回転筐体1rを挿入するためには、検出容器10を分割できる構造にする必要があるが、その分割できる構造にもOリング等のシール部材が用いられることは勿論である。
第1検出基体11a~第8検出基体11hのうちの1つが、ウィルス搬送配管Aの経路端部に位置する導入口に対向する位置に来たとき、導入口に対向する位置にある第1検出基体11a~第8検出基体11hのいずれかは、空洞部3内において、北極電極が外部電極105に接続され、南極電極が接地電位に接続され、かつ赤道面が吸込口2と排気口4とを結ぶ直線に対して平行になるように固定される。検査に用いられた検出基体11a~第8検出基体11hのいずれかの寿命が近いと計測されたときは、回転筐体1rが回転軸AXを中心に回転して、他の第1検出基体11a~第8検出基体11hと入れ替えられる。
円盤形の回転筐体1rは、樹脂、又は金属で形成されたブロックである。検出容器10は、被検査エアロゾル33bの吸込口2と、回転筐体1rを配置する空洞部3と、被検査エアロゾル33bの排気口4との3つの空間を有している。吸込口2は、末端に向かって徐々に直径が小さくなるノズル構造の共通濃縮機構を構成し、共通濃縮機構の先端からは、回転筐体1rの回転により設定される、第1検出基体11a~第8検出基体11hのいずれかの球の赤道に向かって細い被検査エアロゾル33bのジェットが噴射される。被検査エアロゾル33bの噴射により、効率よく被検査エアロゾル33bを分析可能となる。その他の構成については、基本実施形態に係るウィルス検査装置と同じであるため、ここでの説明を省略する。
第2拡張実施形態に係るウィルス検査装置は、基本実施形態に係るウィルス検査装置と同様に、取手付サセプタを用いることによって、ユーザ側での第1検出基体11a~第8検出基体11hの北極電極、南極電極及び赤道面の精密なアライメント調整の手順を不要とするもので、第1検出基体11a~第8検出基体11hを含むセンサユニットの取り扱いを更に容易化することを目的としている。しかしながら、第1検出基体11aから第8検出基体11hに対応するアライメント調整済みの8個のボールSAWセンサを格納した回転筐体1rを、「センサユニット」として製品化し、商品とすることも可能である。
――第2拡張実施形態のウィルスの検査方法――
次に、図15のフローチャートを参照しつつ、第2拡張実施形態に係るウィルスの検査方法を説明する。まず、図15のステップS101において、第2拡張実施形態に係るウィルス検査システムが起動された後、積分型差分検出開始ボタンが押されると、信号処理ユニット50の検査手段(論理回路)503が積分型差分検出開始時のボールSAWセンサ(11a,12,13,14)の減衰係数、及び遅延時間の初期値が計測される。検査手段503は、ステップS101で求めた初期値をデータ記憶装置511(図9参照)に格納する。次に図15のステップS102において、三方バルブの加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bが切り替えられて、湿潤空気搬送配管Bが選択され、更に、マスフローコントローラ22が第1の値に設定される。この後図15のステップS103において、加湿器20をオンにすると、フィルタ21から取り込まれた清浄乾燥空気が加湿器20によって清浄湿潤空気に変化し、更に、清純湿潤空気は、ウィルス搬送配管Aを経由して、検出基体11aの表面に供給される。
そして図15のステップS104において所定の時間待機すると、加湿器20からの清浄湿潤空気(水蒸気)によって、擬受容体膜13の表面には、例えば、極薄い水の被膜等の液膜61が形成される。擬受容体膜13の表面に形成される液膜61の量又は厚さについては、別個に用意したボールSAWセンサを水分検査器とすることによって清純湿潤空気の湿度を調整し、更にステップS104の所定の時間を予め設定しておくことで、容易に推測が可能となる。図15のステップS105において、加湿器20をオンにしてから所定の時間が経過した後、加湿器20がオフに設定される。
次に、図15のステップS106において、三方バルブである加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bを閉じ、湿潤空気搬送配管Bと乾燥空気搬送配管Cのいずれも選択されない状態として、開閉バルブ32を開けると、ウィルス搬送配管Aが選択され、更に、マスフローコントローラ22が第2の値に設定される。すると、被検査空気31aが吸い込み口からフィルタ30aを経由して取り込まれる。ここで、フィルタ30aは、所定のサイズ、例えば4μmよりも大きなサイズのパーティクルや粗エアロゾル33a等を取り除くので、所定のサイズ、又はそれよりも小さいサイズ、例えば、0.1μm~3.0μm程度のサイズの被検査エアロゾル33bを含む空気が擬受容体膜13の表面に導かれる。
そして、所定の時間待機すると、図15のステップS107において、共通濃縮機構34が、生成する高速気流に載せてエアロゾルを擬受容体膜13の表面に吹き付ける。表面に吹き付けたエアロゾル中に標的ウィルス60が存在している場合には、その標的ウィルス60が擬受容体膜13の表面上の擬受容体に捕捉される。第2拡張実施形態に係るウィルスの検査方法では、ステップS106及びステップS107の前に、加湿器20をオフにしているが、これに代えて、ステップS107の後に、加湿器20をオフにしてもよい。この場合、ステップS106及びステップS107において、擬受容体膜13の表面に吹き付けられる粗エアロゾル33aは、水分を含んだ含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bとなるため、擬受容体膜13の表面上での特異結合反応をより促進させることができる。
次に、図15のステップS108において、開閉バルブ32を閉じた後、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bが切り替えられることで、乾燥空気搬送配管Cが選択され、更に、マスフローコントローラ22が第3の値に設定される。すると、フィルタ21を経由して取り込まれた清浄乾燥空気が、共通濃縮機構34が生成する高速気流に載せて擬受容体膜13の表面に吹き付けられる。そして、この状態を所定の時間継続すると、図15のステップS109において、擬受容体膜13の表面の液膜61が除去されると共に、擬受容体膜13の表面上に存在していた非特異吸着物質(標的ウィルス60以外のウィルスやその他の物質)も除去される。ステップS109における所定の時間は、非特異吸着物質が除去されてセンサ応答が一定値になるまでの時間とする。
次に、図15のステップS110において、ボールSAWセンサ(11a,12,13,14)を伝搬するSAWの減衰係数及び遅延時間の最終値を、信号処理ユニット50の検査手段(論理回路)503が計測する。続けて、図15のステップS111~ステップS112において、検査手段503はステップS101で求めた初期値をデータ記憶装置511から読み出す。検査手段503は、ステップS101で求めた初期値とステップS110で求めた最終値との差分を計算する。検査手段503は計算した差分を基本実施形態に係るウィルス検査システムのデータ記憶装置511(図9参照)に記憶する。そして、図15のステップS113→図15のステップS114において、検査手段503が初期値と最終値との差分が閾値を超えたと判断した場合、即ち、検査手段503が標的ウィルス60の特異吸着による応答についてその応答量が所定の閾値を超えたと判断した場合は、検査手段503は被検査空気31a中に目的とする標的ウィルス60が存在すると判断し、検査手段503は出力装置513に「標的ウィルス検知警報」を出力させる。
一方、図15のステップS113→ステップS115において、検査手段503が初期値と最終値との差分が閾値以下と判断した場合、検査手段503は被検査空気31a中に目的とする標的ウィルス60が存在しないと判断し、検査手段503は検査終了ボタンが押されるまで、引き続き、被検査空気31a中の目的とする標的ウィルス60のインサイチュ検査を継続して行う。
第2拡張実施形態に係るウィルスの検査方法では、特異結合反応は、基本的には非可逆の積分反応になるので、特異吸着できる標的ウィルス60の数には限りがある。従って、図15のステップS115→ステップS116において、ステップS110における最終値が上限値に達した場合には、センサ交換警報を出す。そして、図15のステップS117において、図16及び図17に示した回転筐体1rを自動的、又は手動により回転させることにより、センサの交換が実行される。図15のステップS115→ステップS118の手順では、センサの交換が完了するか、又は警報停止ボタンが押されると、センサ警報が止み、引き続き、被検査空気31a中の目的とする標的ウィルス60のインサイチュ検査が継続して行われる。ステップS118において、検査終了ボタンが押されると、目的とする標的ウィルス60のインサイチュ検査が終了する。
(第3拡張実施形態)
更に、上記の基本実施形態から派生し、その技術的思想を拡張した本発明の第3拡張実施形態について説明する。本発明の第3拡張実施形態に係るウィルス検査システムは、図18に示すように、マスフローコントローラ22が第1検出容器10a及び第2検出容器10bの出力側と吸引ポンプ40の間に接続されている。第3拡張実施形態に係るウィルス検査装置は、第1検出容器10a及び第2検出容器10bにそれぞれ収納された第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)を備える。第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)の第1信号変換器12a及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の第2信号変換器12bから、それぞれ出力される電気信号は、信号処理ユニット50に送られる。第3拡張実施形態に係るウィルス検査システムは、第1信号変換器12a及び第2信号変換器12bから得られる2種類の電気信号を、信号処理ユニット50が入力し、信号処理ユニット50が2種類の電気信号の差動測定をして高速な応答を可能にしている点に特徴を有する。
第1検出容器10aは、第1信号変換器12a及び第1擬受容体膜13aを有する第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)を収納している。図18に例示した第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)の構成では、櫛状のセンサ電極を構成している第1信号変換器12aが擬受容体14が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜13aの物理的状態の変化を示す物理信号を電気信号に変換する。第1検出基体11pの擬受容体膜13a上には、標的ウィルス60に結合する擬受容体14が付加されている。一方、第2検出容器10bは、第2信号変換器12b及び第2擬受容体膜13bを有する第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)を収納している。図18では第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)に第2信号変換器12bが櫛状のセンサ電極として設けられてはいるが、擬受容体が存在しない。第2検出基体11qの第2擬受容体膜13bは、その上に標的ウィルス60に結合する擬受容体14が付加されていない点を除き、第1検出基体11pの第1擬受容体膜13aと同じとなっている。即ち、第2検出基体11qは、非特異吸着を抑制する非特異吸着抑制面のみを有する参照センサの基体を構成する球である。
ウィルス搬送配管Aからの被検査空気31bは、第1濃縮機構(第1共通濃縮機構)34amを介して第1検出容器10a内の第1検出基体11pに吹き付けられると共に、第2濃縮機構(第2共通濃縮機構)34bmを介して第2検出容器10b内の第2検出基体11qに吹き付けられる。又は、湿潤空気搬送配管Bからの清浄湿潤空気若しくは乾燥空気搬送配管Cからの清浄乾燥空気は、それぞれ第1濃縮機構34amを介して第1検出容器10a内の第1検出基体11pに吹き付けられると共に、第2濃縮機構34bmを介して第2検出容器10b内の第2検出基体11qに吹き付けられる。第3拡張実施形態に係るウィルス検査装置では、差動測定を行うに当たり、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)は、図18(b)に示すように、1つの検出容器10内に設けられていてもよい。図18(b)に示すように、1つの検出容器10内に2つのセンサが設けられている場合も、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)の第1信号変換器12aは櫛状のセンサ電極で構成され、第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の第2信号変換器12bは櫛状のセンサ電極で構成される。図18(b)に示す構成の場合、1つの共通濃縮機構34によって、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)のそれぞれの擬受容体膜13a及び13bに、被検査空気31b、清浄湿潤空気、又は清浄乾燥空気を吹き付けられるようになっていてもよい。その他の構成については、基本実施形態に係るウィルス検査装置と同じであるため、ここでの説明を省略する。
――第3拡張実施形態のウィルス検査方法――
次に、図19に示したフローチャートを参照しつつ、第3拡張実施形態に係るウィルス検査方法を説明する。以下では、図18(a)に示す検査システムを用いて、被検査空気31a中に目的とする標的ウィルス60が存在するか否かを検査する場合を説明する。尚、図18(a)に示した第3拡張実施形態に係るウィルス検査システムは、既に図12を用いて説明した基本実施形態に係るウィルス検査方法のフローチャートの手順、或いは、後述する図25に示される第6拡張実施形態に係るウィルス検査方法のフローチャートの手順を実行することも可能である。
まず、基本実施形態に係るウィルス検査システムが起動された後、図19のステップS201において、測定開始ボタンが押されると、図18(a)に示した三方バルブとしての加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bが切り替えられて、湿潤空気搬送配管Bが選択され、更に、マスフローコントローラ22が第1の値に設定される。この後、図19のステップS202において、加湿器20をオンにすると、フィルタ21から取り込まれた清浄乾燥空気が加湿器20によって清浄湿潤空気に変化し、更に、清浄湿潤空気は、ウィルス搬送配管Aを経由して、擬受容体膜13の表面に供給される。
そして、所定の時間待機すると、図19のステップS203において、加湿器20からの清浄湿潤空気(水蒸気、若しくはエアロゾル)によって擬受容体膜13の表面には、例えば、極薄い水の被膜等の液膜61が形成される。擬受容体膜13の表面に形成される液膜61の量又は厚さについては、別個に用意したボールSAWセンサを水分検査器とすることによって清純湿潤空気の湿度を調整し、更にステップS203の所定の時間を予め設定しておくことで、容易に推測が可能となる。図19のステップS204において、加湿器20をオンにしてから所定の時間が経過した後、加湿器20がオフに設定される。
次に、図19のステップS205において、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bを閉じ、湿潤空気搬送配管B及び乾燥空気搬送配管Cのいずれも選択されない状態とし、開閉バルブ32を開けると、ウィルス搬送配管Aが選択される。更にステップS205において、マスフローコントローラ22が第2の値に設定される。すると、被検査空気31aが吸い込み口からフィルタ30aを経由して取り込まれる。ここで、フィルタ30aは、所定のサイズ、例えば4μmよりも大きなサイズのパーティクルや粗エアロゾル33a等を取り除き、被検査エアロゾル33bを生成するので、所定のサイズ、又はそれよりも小さい、例えば、0.1μm~3.0μm程度のサイズの被検査エアロゾル33bを含む空気が、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)に導かれる。
そして、所定の時間待機すると、第1濃縮機構34amから高速気流に載せて被検査エアロゾル33bが第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)の表面に吹き付けられることで、その被検査エアロゾル33b中に標的ウィルス60が存在している場合には、その標的ウィルス60が第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)の第1擬受容体膜13a上の擬受容体に捕捉される。この時、その被検査エアロゾル33b中に含まれる不純物としての非特異吸着物質(標的ウィルス60以外のウィルスやその他の物質)も第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)の第1擬受容体膜13a上に付着する。ステップS205では同時に、第2濃縮機構34bmから高速気流に載せて被検査エアロゾル33bが第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の表面に吹き付けられる。これにより、ステップS205において、被検査エアロゾル33b中に含まれる不純物としての非特異吸着物質が第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の第2擬受容体膜13b上にも付着する。
即ち、被検査空気31a中の不純物は、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の2つの第1擬受容体膜13a及び第2擬受容体膜13bの双方に均等に付着させ、第1信号変換器12a及び第2信号変換器12bで、付着に伴う音響信号の変化を、それぞれ電気信号に変換する。信号処理ユニット50が、第1信号変換器12a及び第2信号変換器12bがそれぞれ出力する電気信号を用いて、それぞれSAWの減衰係数、及びSAWの遅延時間の初期値を計算する。これは図15を参照して説明した第2拡張実施形態に係るウィルス検査方法におけるボールSAWセンサ(11a,12,13,14)で測定されたSAWの減衰係数、及びSAWの遅延時間の初期値を、信号処理ユニット50が予め求めておくこと(図15のステップS101)、並びに不純物の除去工程(図15のステップS108~S109)を不要とすることを意味する。従って、第3拡張実施形態に係るウィルス検査方法は、第2拡張実施形態に係るウィルス検査方法に比べて、更なる高速検査が可能となるという効果を有する。
具体的には、図19のステップS206において、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)が出力したSAWの減衰係数及び遅延時間が計測されると同時に、第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)が出力したSAWの減衰係数及び遅延時間が計測される。続けて、図19のステップS207~ステップS208において、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)で計測された値の差分が計算されると共に、この差分が基本実施形態に係るウィルス検査システムのデータ記憶装置511(図9参照)に記憶される。図20に示すように、この差分Δxは、被検査エアロゾル33b中の不純物に依存しない正確な標的ウィルス60量に対応する応答となる。
従って、図19のステップS209→図19のステップS210の手順の流れに沿って、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)で計測された値の差分が閾値を超えた場合、即ち、標的ウィルス60の特異吸着による応答についてその応答量が所定の閾値を超えた場合、被検査空気31a中に目的とする標的ウィルス60が存在すると判断し、標的ウィルス検知警報を出す。一方、図19のステップS209→図19のステップS210の手順の流れに沿って、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)で計測された値の差分が閾値以下の場合、被検査空気31a中に目的とする標的ウィルス60が存在しないと判断し、検査終了ボタンが押されるまで、引き続き、被検査空気31a中の標的ウィルス60のインサイチュ検査が継続して行われる。
尚、第2拡張実施形態に係るウィルスの検査方法では、ステップS205の前に、加湿器20をオフにしている。第3拡張実施形態に係るウィルス検査方法では、ステップS205の前に代えて、ステップS205の後に、加湿器20をオフにしてもよい。この場合、ステップS205において、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の表面に吹き付けられる被検査エアロゾル33bは、水分を含んだ被検査エアロゾル33bとなる。
第2拡張実施形態と同様に、第3拡張実施形態に係るウィルスの検査方法での特異結合反応は、基本的には非可逆の積分反応になるので、擬受容体の数、即ち、特異吸着できる標的ウィルス60の数には限りがある。従って、図19のステップS211→ステップS212の手順の中で、ステップS206における第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)が測定したSAWの減衰係数及び遅延時間の値が上限値に達している場合には、センサ交換警報を出す。そして図19のステップS213において、第2拡張実施形態に係るウィルスの検査装置として説明した図16及び図17に示した回転筐体1rと同様な回転機構を、自動的、又は手動により駆動した、ボールSAWセンサの交換が実行される。ボールSAWセンサの交換が完了すると、図19のステップS213→ステップS201の流れに従い、センサ警報が止み、引き続き、被検査空気31a中の標的ウィルス60のインサイチュ検査が継続して行われる。
また、図19のステップS214において、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の非特異吸着物質の量が大きくなってきた場合には、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)のリフレッシュを行うことも可能である。リフレッシュとは、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の表面に付着した非特異吸着物質を除去し、非特異吸着物質が存在しない当初のきれいな状態に戻す工程のことである。このリフレッシュ工程を行うことで、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の寿命(使用可能期間)を延長できると共に、特に、参照センサとしての第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)については、交換等が不要となるため、それに要する手間、又は時間を省くことができるという効果を有する。
即ち、図19のステップS214→ステップS215の流れに沿って、リフレッシュが必要と判断した場合には、開閉バルブ32を閉じた後、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bが切り替えられることで、乾燥空気搬送配管Cが選択され、更に、マスフローコントローラ22が第3の値に設定される。すると、フィルタ21を経由して取り込まれた清浄乾燥空気が第1濃縮機構34am及び第2濃縮機構34bmから高速気流に載せて第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の表面に吹き付けられる。
そして、この状態を所定の時間継続すると、図19のステップS216において、第1検出基体11p及び第2検出基体11qの表面の液膜61が除去されると共に、第1検出基体11p及び第2検出基体11qの表面上に存在していた非特異吸着物質も除去される。ステップS216における所定の時間は、非特異吸着物質が除去されてセンサ応答が一定値になるまでの時間とする。この後、引き続き図19のステップS216→ステップS201の流れの中で、被検査空気31a中の標的ウィルス60のインサイチュ検査が継続して行われる。
尚、リフレッシュが不要な場合、ステップS217に進み、積分型差分検出を継続するか否かが確認される。そして、例えば、検査終了ボタンが押されると、目的とする標的ウィルス60のインサイチュ検査が終了し、検査継続ボタンが押されると、引き続き、被検査空気31a中の標的ウィルス60のインサイチュ検査が継続して行われる(図19のステップS217→ステップS201)。
(第4拡張実施形態)
基本実施形態を基礎とする本発明の第4拡張実施形態に係るウィルス検査装置は、図21に示すように、検出基体11aの赤道面のほぼ全体に沿って、被検査エアロゾル33bを噴射できる筐体1の構造に関する。筐体1は、樹脂、又は金属で形成されたブロックである。筐体1は、被検査エアロゾル33bの吸込口2と、ボールSAWセンサを構成する検出基体11aを配置する空洞部3と、被検査エアロゾル33bの排気口4との3つの空間を有している。検出基体11aは、空洞部3内に配置され、赤道面が吸込口2と排気口4とを結ぶ直線に対して平行になるように固定されている。
排気口4には、図示を省略しているが、真空ポンプ等の吸引ポンプが接続されており、吸引ポンプの起動によって、吸込口2から被検査エアロゾル33bが吸引される。被検査エアロゾル33bは、共通濃縮機構34を経由して、検出基体11aの赤道面に沿って設けられた第1噴射口34p、第2噴射口34q、第3噴射口34r、第4噴射口34s、第5噴射口34tの5つの噴射口から、検出基体11aの赤道面に向かって噴射される場合が例示されている。第4拡張実施形態に係るウィルス検査システムによれば、赤道面に沿って配置された擬受容体膜に均一に被検査エアロゾル33bが噴射されるので、擬受容体膜の表面に結合する標的ウィルス60の成分量を相対的に増加し、ボールSAWセンサの寿命を相対的に長くすることができる。なお、第1噴射口34p~第5噴射口34tの5つの噴射口のそれぞれにゲート構造を設け、赤道面に沿って配置された擬受容体膜の噴射位置を時系列に沿って変えることで、ボールSAWセンサの寿命を相対的に長くすることができる。
(第5拡張実施形態)
図22に示す第5拡張実施形態に係るウィルス検査装置は、図21に示した構造と同様に検出基体11gの赤道面の全体に沿って擬受容体膜13gに対して線状に被検査エアロゾル33bを噴射できる帯状のスリットを備える。図22(a)及び(b)に示すように、検出基体11gを囲む円筒状の内壁37を備え、内壁37の中段に検出基体11gの赤道に沿って噴射口34lが構成されている。筐体1の吸込口側には共通濃縮機構のノズル端部が結合され、ノズル端部と内壁37の間にガス迂回室36が設けられている。
図22(a)及び(b)に示す構造は、ガス迂回室36の高さがあるので、ガス迂回室36が汚染されやすい。このため、図22(c)に示す構造のように、ガス迂回室34eの内壁34fの高さを低くして、ガス迂回室34eの容積を減らすことにより、ガス迂回室34eの内壁34fの殺菌や清浄化を容易にしてもよい。図22(c)の右下に排気管134を図示しているが、排気管134の右側端部には、図示を省略した真空ポンプ等の吸引ポンプが接続され、吸引ポンプの起動によって、スリット状の噴射口を介して、被検査エアロゾル33bが噴射される。第5拡張実施形態に係るウィルス検査システムによれば、赤道面に沿って配置された擬受容体膜13gに均一に被検査エアロゾル33bが噴射されるので、擬受容体膜13gの表面に結合する標的ウィルス60の成分量を相対的に増加し、ボールSAWセンサの寿命を相対的に長くすることができる。
(第6拡張実施形態)
冒頭の基本実施形態から派生した本発明の第6拡張実施形態に係るウィルス検査装置は、図23に示すように、被検査エアロゾル33bの流路vに、ボールSAWセンサを構成する球状の検出基体11mを格納する検出容器10を有する。検出基体11mの下部には、検出基体11mを搭載するためのサセプタ101が配置されている。検出基体11mは、球状であるため、サセプタ101は、検出基体11mが転がっていかないように検出基体11mを配置するための凹部を有する。検出容器10の中央の孔部には、電極ホルダベース102の下部に設けられた突部が挿入されている。そのため、検出基体11mの上方に設けられた電極ホルダベース102は、電極ホルダベース102の底部が、検出基体11mの上壁において検出容器10を垂直にカットする窓部の内壁に挿入され、検出容器10の上部に固定されている。電極ホルダベース102の底部を垂直方向に貫通する流路vの開口部は、検出基体11mの上部を部分的に覆う。さらに、電極ホルダベース102の最上部は、センサセルキャップ103によって塞がれる。
検出基体11mの上方には、サセプタ101の主面に垂直方向(流路vの方向に垂直方向)に沿って、筒状の電極ホルダ104が設けられている。電極ホルダ104の中空の空間内には、棒状の外部電極105が、外部電極105の底部がセンサセルキャップ103の内部に挿入されるように保持されている。検出基体11mの北極は、電極ホルダベース102の底部において、流路vの方向に垂直方向に立てられたコンタクトピン105aを介して、外部電極105の下端に接続されている。被検査エアロゾル33bは、被検査エアロゾル33bが検出基体11mの表面に設けられた擬受容体膜に噴射できるように、ガス流速vで、水平に配列された配管106を通して導入される。図23では配管106は一様な太さで示されているが、実際には図23において検出基体11mの左側の配管106は、標的ウィルス60の濃度(個数体積密度)を濃縮する共通濃縮機構34を構成するようにテーパ形状をなしている。
図23において、検出容器10の中央部の下側で、サセプタ101に対向する部位には、図26に示すように、サセプタ101を下方から挿入し、出し入れするための配管部151が、配管106の肉厚よりも厚い板状の構造として設けられている。図26(a)に示すように、配管部151の中央部に設けられた貫通孔の内壁には、シール部材としてのOリング131nを挿入するOリング溝133nが織り込まれている。対応して、図26(b)に示すように、円柱状のサセプタ101の側壁にはOリング溝に嵌め込まれたOリング131nが取り付けられている。図26(a)に示した配管部151の中央部に設けられた貫通孔に、図26(b)に示した円柱状のサセプタ101を挿入することにより、円柱状のサセプタ101の側壁と配管部151の貫通孔の内壁の間のOリング131nが気体のリークを防ぐ気密性を実現している。
配管部151とサセプタ101との組み立て構造を有するため、図26に示したように、検出基体11mの交換の際には、配管部151を介して、サセプタ101を取り外し可能、且つ、サセプタ101と配管部151の間からガスが漏れ出さないようなOリング131nによる気密シールの構造をなしている。図23及び図26(a)から分かるように、検出容器10の上面と電極ホルダベース102との間にはOリング131mが挿入され、電極ホルダベース102とセンサセルキャップ103の間には、Oリング131lが挿入され、検出容器10、電極ホルダベース102及びセンサセルキャップ103等を分解可能とするとともに、ガスのリークを防ぐ気密性を担保している。検出基体11mの直下に位置するホルダ107の下部には、ペルチェ素子108が保持されている。サーミスタ109は、ホルダ107の側方位置に挿入される。ペルチェ素子108は、アダプタ110を介して、検出基体11aを加熱及び冷却するために用いられる。サーミスタ109は、熱電対などのような、他の温度センサに置き換えることも可能である。
図26(b)に示したサセプタ101は、図27に示すような第1検出基体11j、第2検出基体11k、第3検出基体11l、第4検出基体11m、第5検出基体11n、第6検出基体11oの6個の検出基体を搭載した6球回転移動機構に置き換えることができる。図27に示す第1検出基体11jを着目したボールSAWセンサとすれば、第2検出基体11k、第3検出基体11l、第4検出基体11m、第5検出基体11n、第6検出基体11oの5個の検出基体は、「交換用ボールSAWセンサ」となる。図23に示した第6拡張実施形態に係るウィルス検査は、図26に示したような分解可能な構造を有しているので、6個の検出基体11j~11oが回転軸Xを中心に回転し、着目したボールSAWセンサが、交換用ボールSAWセンサに順次交換される。使用済の検出基体11j~11oは、例えば、除菌用ガスで除菌された後、回転して球排出位置に移動して、排出されて新しい球に交換される。6球回転移動機構は、回転機構の他に、上下機構を有していてもよい。この場合、配管106とその流路vに配置された検出容器10は固定で、図27に示す6球回転移動機構が上下動作と回転動作を行う。これにより、球の交換が更に容易化される。尚、図27に示す回転移動機構は、6球を搭載可能であるが、その数は、6球に限定されることはなく、それ以下でも、それ以上でもよい。また、後述するように、ウィルス検査用の検出基体と水分検査用の検出基体を搭載する場合には、回転移動機構が搭載可能な検出基体の数は、偶数であることが望ましい。
図24に示す第6拡張実施形態に係るウィルス検査システムの信号処理ユニット50は、図1に示した基本実施形態に係るウィルス検査システムの信号処理ユニット50とほぼ同様な論理的な回路構成であるが、データプロセッサ500が水分検査手段515を有する点が相違する。水分検査手段515は、空気中の標的ウィルス60ではなく、空気中の水分量を検出する。即ち、水分検査球には、空気中の水分子に結合する物質を設けておくことで、ボールSAWセンサからの帰還バースト信号の波形データを用いて、水分子の結合による重量面密度の増加をSAWの遅延時間応答として積分型差分検出することにより、空気中の水分量を見積もることができる。その他の構成については、基本実施形態に係るウィルス検査システムと同じであるため、ここでの説明を省略する。
――第6拡張実施形態のウィルス検査方法――
次に、図25及び図27を参照しつつ、第6拡張実施形態に係るウィルス検査方法を説明する。第6拡張実施形態に係るウィルス検査方法では、水分検査球としての第1検出基体11j、第3検出基体11l及び第5検出基体11nと、ウィルス検査球としての第2検出基体11k、第4検出基体11m及び第6検出基体11oを3個ずつ交互に入れておくことで、加湿器20を駆動させた後、検査前に、配管内部の湿度(水分量)を確認し、最適な湿度を保った状態で検査を行うことができる。
(0)(湿度検査工程)
まず、図25のステップS20において、図27に示す回転移動機構(以下において「レボルバ」と称する。)を上下/回転駆動させて、水分検査球としての第1検出基体11jを検査位置に配置した後に、配管内部、及び検出容器10内の湿度を検査する。具体的には、まず、レボルバを上下駆動し、図26(b)に示すレボルバの一部を構成するサセプタ部を、図26(a)に示す検出容器本体から離脱させる。そして、レボルバを回転駆動しながら、水分検査球としての第1検出基体11j、第3検出基体11l及び第5検出基体11nと、ウィルス検査球としての第2検出基体11k、第4検出基体11m及び第6検出基体11oを交互にレボルバに搭載する。この後、レボルバを上下/回転駆動し、水分検査球としての第1検出基体11jを検査位置に配置する。続けて、開閉バルブ32を開状態に設定し、三方バルブである加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bをそれぞれ閉状態に設定する。ガス供給ユニット70からパージガスを導入し、吸引ポンプにより検査装置の配管内部、及び検出容器10内部等に残存しているガスの除去を行う。
次に、開閉バルブ32を閉状態に設定し、加湿入力弁23a及び加湿出力弁23bにより湿潤空気搬送配管Bを選択する。吸引ポンプの起動により環境空気が取り込まれると、活性炭等が充填されたフィルタ21により不純物や水分が除去されて、清浄乾燥空気が生成される。清浄乾燥空気は、マスフローコントローラ22により流量1L/min程度に設定された後に、加湿器20により加湿されて、清浄湿潤空気となる。清浄湿潤空気が加湿出力弁23b及び第1濃縮機構34aを経由して、第1検出基体11jの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜に供給されると、図24に示したウィルス検査システムのデータプロセッサ500の水分検査手段515によって、配管内部、及び検出容器10内の湿度の検査が行われる。そして、検査装置の配管内部、及び検出容器10内の湿度が所定の湿度である場合には、後述するステップに進む。
(1)(加湿工程)
まず、図25のステップS21において、図27に示すレボルバを上下/回転駆動させて、水分検査球に代えて、ウィルス検査球である第2検出基体11kを検査位置に配置した後に、第2検出基体11kの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜上に液膜61を形成する。液膜61は、擬受容体膜上の擬受容体14が活性を維持可能な量だけ形成される。液膜61は、例えば、水、又は生体環境を模擬した緩衝溶液である。具体的な動作については、図12のフローチャートで説明した基本実施形態に係るウィルス検査方法と同じなので、ここでの説明を省略する。
(2)(噴射工程)
次に、図25のステップS22において、粗エアロゾル33aを取り込み、粗エアロゾル33aに液体を含ませて、含水エアロゾルからなる被検査エアロゾル33bの流体流を形成した後に、被検査エアロゾル33bを擬受容体膜上に噴射する。具体的な動作については、図12のフローチャートを参照して基本実施形態に係るウィルス検査方法の欄で既に説明したので、ここでの説明を省略する。
(3)(検査工程)
次に、図25のステップS23において、擬受容体膜上の擬受容体14に結合した標的ウィルス60に基づき、被検査エアロゾル33b中の標的ウィルス60の有無を検査する積分型差分検出を行う。具体的な動作については、図12のフローを参照して説明した基本実施形態に係るウィルス検査方法で既に説明したので、ここでの説明を省略する。
(4)(除菌工程)
次に、図25のステップS24において、ステップS23での検査によって汚染された配管内、及び機器内の除菌を行う。具体的な動作については、図12のフローを参照して説明した基本実施形態に係るウィルス検査方法で既に説明したので、ここでの説明を省略する。
このように、第6拡張実施形態では、予め最適な水分量を検査しておくことで、後に行われる特異結合反応を促進することが可能となる。しかも、6球回転移動を用いることで、空気中の水分量を検査する水分検査球と、空気中の標的ウィルス60を検査するウィルス検査球とを自動的に入れ替えることができるので、簡易、かつ高速に、標的ウィルス60のインサイチュ検査を行うことができる。
(第7拡張実施形態)
図1に示した基本実施形態に係るウィルス検査装置の構造と同様に、本発明の第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムを構成しているウィルス検査装置の検出容器10は、図28に示すように、検出容器10の左側の外壁に導入口(第1導入口)を備えるが、更に、検出容器10の天井側に第2導入口を備える。ウィルス搬送配管Aのガス噴射側の端部に位置するウィルス濃縮機構34が、図28の左側から三方バルブ(第1の三方バルブ)である検査入力弁23eを介して検出容器10の導入口に接続されている。ウィルス搬送配管Aは、被検査空気31aを擬受容体膜13の表面に噴射するガス配管系である。第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置では、更に、一定の設定濃度のウィルスを含む校正用エアロゾルを、検出基体11aの擬受容体膜13上に噴射するための校正用ガス搬送配管Eを備えている。図28及び図29に示すように、マスフローコントローラ22から第3の三方バルブである加湿入力弁23aに至り、加湿器20が接続されるように右方に伸びる配管の途中においてT型の分岐をして、この分岐配管に校正用エアロゾル発生器20caliが接続されている。
既に図1を用いた基本実施形態に係るウィルス検査システムの説明において、加湿器20が、水分発生用のネブライザー(液体霧化装置)及び浸透管で構成されていることを示した。しかしながら、ネブライザー(液体霧化装置)は、水のエアロゾルを発生する用途以外に、水とウィルス等の微粒子の懸濁液を霧化して、水、空気および微粒子を含むエアロゾルを発生する用途にも一般に使用されている。基本実施形態から派生した本発明の第7拡張実施形態に係るウィルス検査システム及びウィルス検査装置は、図28及び図29に示すように、フィルタ21からマスフローコントローラ22を経て第3の三方バルブである加湿入力弁23aに至り、更に加湿入力弁23aを介して右方に伸びる配管と加湿出力弁23cとの間において、加湿器20が接続されている。
図28及び図29に示すように、第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置の検査入力弁23eは第1の三方バルブで構成され、加湿出力弁23cは第2の三方バルブで構成されている。これら第1及び第2の三方バルブに導入される3本の配管に対応して、それぞれ第1~第3ポートの3つの接続ポートを備えている。なお、「第1~第3ポート」は、配管を構成する回路中の位置を特定するための便宜上の名称に過ぎず、物理的に独立した個別の部材が存在することを、必ずしも前提とするものではない。
図1に示した基本実施形態に係るウィルス検査装置の構造と同様に、第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムを構成しているウィルス検査装置の検出容器10は、図28に示すように、検出容器10の左側の外壁に導入口(第1導入口)を備えるが、更に、検出容器10の天井側に第2導入口を備える。ウィルス搬送配管Aのガス噴射側の端部に位置するウィルス濃縮機構34が、図28の左側から第1の三方バルブである検査入力弁23eの第3ポートを介して検出容器10の導入口に接続されている。ウィルス搬送配管Aは、被検査空気31aを擬受容体膜13の表面に噴射するガス配管系である。第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置では、更に、一定の設定濃度のウィルスを含む校正用エアロゾルを、検出基体11aの擬受容体膜13上に噴射するための校正用ガス搬送配管Eを備えている。図28及び図29に示すように、マスフローコントローラ22から第3の三方バルブである加湿入力弁23aの第1ポートに至り、加湿器20が接続されるように右方に伸びる配管の途中においてT型の分岐をして、この分岐配管に校正用エアロゾル発生器20caliが接続されている。
エアロゾル発生器20caliは、図29の中央に示すように、一定の設定濃度のウィルス懸濁液を貯留可能な液槽と、液槽の上部を覆うスプレーチャンバを有したコンプレッサ式のネブライザー(液体霧化装置)の構造をなしている。エアロゾル発生器20caliは、更にスプレーチャンバの内部に液槽からウィルス懸濁液を吸い上げて、一定の設定濃度のウィルスを含むエアロゾルを噴射する懸濁液ノズル34mを備えている。懸濁液ノズル34mは、例えば図29に示したような同心円状の二重管ノズルで構成できる。基本実施形態に係るウィルス検査装置とは異なり、第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置では、図28及び図29に示すように、校正用エアロゾルを発生することが可能な校正用エアロゾル発生器20caliを、加湿器20とは別に備えている点が技術的な特徴である。エアロゾル発生器20caliは、コンプレッサ式のネブライザー(液体霧化装置)の構造を基礎として、更に超音波式の機能を付加したものでもよい。第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムによれば、校正用エアロゾル発生器20caliを備えていることにより、濃度が一定の値に設定されたウィルスを含む校正用エアロゾルを検出容器10内の検出基体11aに噴射して、噴射後複数の時刻における応答を測定して、検出基体11aの校正を行うことができる。基本実施形態に係るウィルス検査装置で説明したとおり、検出基体11aは球状をなし、検出基体11aの少なくとも一部に擬受容体膜13が皮膜されている。
第1の三方バルブである検査入力弁23eを切り替えて、検査入力弁23eが校正用ガス搬送配管Eからの校正用エアロゾルを通過させる場合は、校正用エアロゾルは共通濃縮機構(第1共通濃縮機構)34で濃縮されて検出容器10の内部にある検出基体11aに噴射され、検出基体11aの校正に使用される。検査入力弁23eを切り替えて、検査入力弁23eがウィルス搬送配管Aからの被検査空気を通過させる場合は、校正された検出基体11aを用いて標的ウィルスの濃度が測定される。第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムは、更にガス供給ユニット70と検出容器10の天井側の第2導入口を接続するパージガス搬送配管Dを備える。図28において、第2の三方バルブである加湿出力弁23cは、パージガス搬送配管Dに接続された第3ポートを有すると共に、湿潤空気搬送配管Bに接続された第1ポート及び乾燥空気搬送配管Cに接続された第2ポートを有している。ガス供給ユニット70は、パージガス搬送配管Dを介して、検出容器10の内部に除菌ガス、又はパージガスを選択的に供給する。パージガス搬送配管Dの出射端には、第2共通濃縮機構34nが設けられている。第2共通濃縮機構34nは、検出容器10の天井側の第2導入口に接続されている。
図28に示すように、パージガス搬送配管Dは加湿出力弁23cの第3ポートに接続されたT分岐を有するが、第2共通濃縮機構34nが設けられる側のパージガス搬送配管Dの端部は、検出容器10の天井側に接続されている。 即ち、パージガス搬送配管Dが検出容器10の天井側に接続され、パージガス流は検出容器10の上部から下部に流れる。検出容器10には吸引ポンプ40が接続されているので、吸引ポンプ40で吸引することにより、パージガス搬送配管Dからの除菌ガス又はパージガスは、検出容器10を介して吸引ポンプ40に供給される。パージガス搬送配管Dのガス供給ユニット70と第2共通濃縮機構34nの間に設けられたT分岐には、加湿出力弁23cで切り替えられる湿潤空気搬送配管B及び乾燥空気搬送配管Cが接続され、バルブ操作で清浄湿潤空気及び清浄乾燥空気のパージガス搬送配管Dへの導入が選択可能である。経路を切り替えることにより、第2共通濃縮機構34nから検出容器10の第2導入口を介して検出基体11aの表面に、清浄湿潤空気、清浄乾燥空気、及びパージガスが、逐次噴射される。
又、ウィルス搬送配管Aの途中に校正用ガス搬送配管Eが、第1の三方バルブである検査入力弁23eの第1ポートを介して接続されているので、検査入力弁23eを切り替えることにより、被検査空気31aと校正用エアロゾルのウィルス搬送配管Aへの導入が選択可能である。したがって、第1の三方バルブである検査入力弁23eを切り替えることにより、第1共通濃縮機構34から、濃度が複数の値に設定された校正用ウィルスを含む校正用エアロゾルを、検出基体11aに噴射して、検出基体11aの校正を行うことができる。第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムによれば、校正用エアロゾルを用いて検出基体11aの校正を行うことにより、基本実施形態に係るウィルス検査装置に比し、信頼性の高い積分型差分検出を行うことが可能となる。
図28に示すように、第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムは、擬受容体膜13に設けられた擬受容体14が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜13の物理的状態の変化を示す物理信号を電気信号に変換する信号変換器12と、信号変換器12の出力する電気信号を用いて積分型差分検出する信号処理ユニット50を備えている。なお、信号処理ユニット50はガス供給ユニット70を駆動制御する機能も備えている。スパイクタンパク受容体結合反応によって擬受容体膜13の表面に結合したウィルスの存在が、信号処理ユニット50が積分型差分検出の演算処理をすることにより検出できる。同時に、信号処理ユニット50が、信号変換器12の出力する電気信号を用いて積分型差分検出することにより、校正用エアロゾルに含まれる校正用ウィルスの擬受容体膜13の表面に対する結合を検出して、ウィルス検査システムの感度を校正できる。
以上の通り、第1の三方バルブである検査入力弁23e及び第2の三方バルブである加湿出力弁23cを切り替えることにより、ウィルス搬送配管A、湿潤空気搬送配管B、乾燥空気搬送配管C、パージガス搬送配管D及び校正用ガス搬送配管Eは、導入経路が選択可能である。また、図29に示すように、ラインポンプ(コンプレッサ)40aを校正用エアロゾル発生器20caliの導入側に直列接続するように校正用ガス搬送配管Eを構成してもよい。即ち、図29に示す第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置のより具体的な配管経路においては、直列接続されたラインポンプ40aと、第1可変リークバルブNV1と、第1流量計FM1と、校正用エアロゾル発生器20caliとが校正用ガス搬送配管Eの一部を構成している。図29に示す例においては、校正用ガス搬送配管Eは、校正用エアロゾル発生器20caliの上側の配管と、校正用エアロゾル発生器20caliの下側の配管に分けて考えることが可能である。即ち、校正用ガス搬送配管Eの上側の配管と、下側の配管が、校正用エアロゾル発生器20caliを挟むように校正用エアロゾル発生器20caliの両側に設けられ、エアロゾル発生器20caliのスプレーチャンバの先端が、校正用ガス搬送配管Eの上側の配管を介して検査入力弁23eの第1ポートに接続されている。フィルタ21を経由してラインポンプ40aで加圧された清浄乾燥空気が、二重管構造の懸濁液ノズル34mの中央の管から噴出する。
そして、清浄乾燥空気が、懸濁液ノズル34mの中央の管から噴出する際に、二重管構造の外側の管が中央の管の外壁との間に構成する鞘部の底部に設けられた開口部が、エアロゾル発生器20caliの液槽から一定の設定濃度のウィルス懸濁液を吸い込む。そして、鞘部の底部から鞘部の隙間に導入された一定の設定濃度のウィルス懸濁液は鞘部の頂部まで吸い上げられ、鞘部の頂部から、ウィルス懸濁液が霧状にスプレーチャンバの内部に噴出する。図29に示すように、スプレーチャンバの内部にウィルス懸濁液が霧状に噴出すると、一定の設定濃度のウィルスを含む校正用エアロゾルがスプレーチャンバの先端から噴出し、校正用ガス搬送配管Eの一部をなす検査入力弁23eの第1ポートに向かう配管の内部に導入される。
校正用エアロゾル発生器20caliは、濃度が制御されたウィルス懸濁液(抗原溶液)を有し、濃度が制御されたウィルスを含むエアロゾルを校正用エアロゾルとして発生する。なお、図29は模式的な配管図であり、便宜上の表現において、検査入力弁23eより上方の部分が90度左回転している点で実体配管とは異なる。更に、図29は模式的に立体構造を表現していることにも留意が必要である。即ち、図29の紙面の手前側において、湿潤空気搬送配管Bが加湿出力弁23cの第1ポートに接続され、乾燥空気搬送配管Cが加湿出力弁23cの第2ポートに接続される3次元構造をなしている。そして、校正用エアロゾル発生器20caliのスプレーチャンバの先端から伸びる校正用ガス搬送配管Eの上側の配管は、3次元空間において湿潤空気搬送配管B及び乾燥空気搬送配管Cと交わることなく、検査入力弁23eの第1ポートに接続されている。
また、湿潤空気搬送配管Bは、加湿器20と加湿出力弁23cの第1ポートとの間に直列接続された第3可変リークバルブNV3と、第3流量計FM3とを有する配管経路を構成する。乾燥空気搬送配管Cは、第3の三方バルブである加湿入力弁23aと第2の三方バルブである加湿出力弁23cの第2ポートとの間に直列接続された第2可変リークバルブNV2と、第2流量計FM2とを有する配管経路を構成する。更に、図29に示すように検査入力弁23eの第3ポートと検出容器10の間には、直列接続された第4可変リークバルブNV4と、第4流量計FM4とを接続したバイパス経路が設けられている。検出基体11aを通過する排気側の配管経路には、図29の紙面の上方に示したように、検出容器10から上方に伸びて右に曲がるL字配管に圧力計Pが付され、この圧力計Pを付加した配管に第5可変リークバルブNV5が接続されている。既に説明したとおり、図29では検査入力弁23eより上方の部分が90度左回転して示されているので、圧力計Pは実際には検出容器10の右方に位置している。又、図29に図示された、検出容器10から上方に伸びて右に曲がるL字配管は、実際には90度右回転で戻されるので、検出容器10から右方に伸びて下に曲がるL字配管である。そして、第5可変リークバルブNV5の排気側でバイパス経路の配管と集合した後、更に吸引ポンプ40に接続されている。吸引ポンプ40の出力側に接続されたフィルタ21aは、ウィルスが外部に漏れないようにするための配管要素である。
また、第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムを構成しているウィルス検査装置では、湿潤空気搬送配管B、乾燥空気搬送配管C、パージガス搬送配管Dのそれぞれが、ウィルス搬送配管A及び校正用ガス搬送配管Eとは独立に設けられている。図29ではウィルス搬送配管A及び校正用ガス搬送配管Eを紙面のレベルに表現しているが、この場合、湿潤空気搬送配管B、乾燥空気搬送配管C、パージガス搬送配管Dは、それぞれ紙面の手前側に位置する立体構造である。図29に示すように、加湿出力弁23cの第3ポートと検出容器10の第1導入口とを接続する配管の途中において、ガス制御ユニット76から延長されるパージガス搬送配管DがT分岐で接続されている。ガス制御ユニット76は図28に示すガス供給ユニット70と同様に、パージガス搬送配管Dを介して、加湿出力弁23cの第3ポートから伸びる配管に除菌ガス、又はパージガスを選択的に供給する機能を有する。この加湿出力弁23cの第3ポートと検出容器10の第1導入口とを接続する配管の途中に、パージガス搬送配管Dが接続される位置は、紙面の手前側であり、図29は立体的な配管図を示している。
ウィルス搬送配管A及び校正用ガス搬送配管Eの配管系とは独立に湿潤空気搬送配管B、乾燥空気搬送配管C、パージガス搬送配管Dを備えることにより、清浄湿潤空気や清浄乾燥空気にウィルスが含まれる可能性を排除することができる。また、校正用エアロゾル中のウィルス濃度のばらつきを抑える効果がある。更に、パージガスの圧力が低いと非特異吸着物質を検出基体11aから飛ばして除去することができないことから、図29の紙面の上方に示した圧力計Pでモニタしている。そして、パージガス搬送配管Dをウィルス搬送配管A及び校正用ガス搬送配管Eの配管系と別個に設け、かつパージガス流を検出容器10の上部から下部に流している。パージガスの圧力を高くし、パージガス流を検出容器10の上部から下部に流すことにより、SAW周回経路から非特異吸着物質を効率よくパージガスが除去することができる。なお、図3及び図13に示すように、ボールSAWセンサ(11a,12,13)の北極側には外部電極105が設けられている。図29の左上にはボールSAWセンサ(11a,12,13)の外部電極105に接続される高周波線路75が水平に示されている。しかしながら、図29は検査入力弁23eより上方の部分が90度左回転した図であるので、実際には高周波線路75は、上方から垂直方向にボールSAWセンサ(11a,12,13)の北極側に導かれる電気配線を意味する。また、加湿出力弁23cの第3ポートから検出容器10の第2導入口に伸びるパージガス搬送配管Dの延長部が斜めに描かれているのは、ボールSAWセンサの北極側電極に接続される高周波線路75を避けて北西位置に設けた第2導入口にパージガス搬送配管を接続し、パージガスを北西方向から南東方向に向けて流す構造を示すためである。
尚、第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置では、図29の中央に一点鎖線で囲んだ領域ARに立体的に含まれる配管要素を、3Dプリンタ等の成型装置により一体成型してよりコンパクトな構造にすることが可能である。図29の3次元領域ARに含まれる要素としては、具体的には、検出基体11aを配置可能な検出容器10と、校正用エアロゾル発生器20caliと、検出容器11と校正用エアロゾル発生器20caliの間に挿入された加湿出力弁23c等が含まれる。図29に示す加湿出力弁23cは、紙面の手前側に位置する。第2の三方バルブである加湿出力弁23cは、パージガス搬送配管Dに紙面の手前で接続された第3ポートを有すると共に、湿潤空気搬送配管Bに紙面の手前で接続された第1ポート及び乾燥空気搬送配管Cに紙面の手前で接続された第2ポートを有している。又、図28では記載されていないが、検出容器10と検査入力弁23eの第3ポートを接続する配管の途中には、第4可変リークバルブNV4と第4流量計FM4の直列接続からなるバイパス経路が、分岐配管として接続されている。
図29の一点鎖線で囲んだ3次元領域ARには、紙面の手前に位置する加湿出力弁23cに接続される湿潤空気搬送配管B、乾燥空気搬送配管C及びバイパス経路等の5系統の配管の一部や配管継ぎ手等も含まれることは勿論である。3Dプリンタ等で一体成型する場合は、検出容器10の左側の第1導入口や天井側の第2導入口は、物理的に独立して存在する開口部である必要は必ずしもない。例えば、単に第1共通濃縮機構34や第2共通濃縮機構34nを接続する位置を示す名称となり得る。一方、3Dプリンタ等で一体成型する場合であっても、図3等に示したように、第1導入口及び第2導入口を、第1共通濃縮機構34及び第2共通濃縮機構34nに対して相対的に摺動移動するモードを採用可能なような分割構造も実現できる。したがって、3Dプリンタ等で一体成型する場合であっても、摺動移動可能な構造に成形する場合であれば、第1導入口及び第2導入口は、実体的な物理構造として検出容器10に設けられる開口部となる。3Dプリンタ等で一体成型することにより、第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムをより小型化することが可能になる。
――第7拡張実施形態に係るウィルス検査方法――
次に、図28及び図29に示した第7拡張実施形態に係るウィルス検査システム及びウィルス検査装置を用いて、ボールSAWセンサを構成している検出基体11aの感度校正を行い、かつその感度校正が行われたボールSAWセンサにより高感度のウィルス検査を行う方法について、図30及び図33のフローチャート等を用いて説明する。第7拡張実施形態に係るウィルス検査方法は、以下に示すように、校正曲線の作成手順と、感度校正によるウィルス検査手順との2つの処理手順に大きく分けることができる。
(a)校正曲線の作成手順
まず、図30のフローチャートのステップS301に示すように、図29の第3可変リークバルブNV3と第3流量計FM3により流量を制御した湿潤空気を、湿潤空気搬送配管Bから検出容器10に供給して、湿潤空気による検出基体11aの表面の加湿を行う。ステップS301においては、図31に示すように、検出基体11aの応答としての相対遅延時間変化Δt/tが一定の初期値(Δt/t)0に達するようにする。但し、既に検出基体11aの表面が加湿されている場合にはステップS301を省略しても差し支えない。図31で、相対遅延時間変化Δt/tが一定の初期値(Δt/t)0に達したタイミングを時間の原点t=0とする。
次に、ステップS302に示すように、校正用エアロゾル発生器20caliの懸濁液ノズル34mに、図29の第1可変リークバルブNV1と第1流量計FM1により流量を制御した清浄空気を一定時間t1の間だけ供給する。ステップS302では、予め設定した濃度n0のウィルス懸濁液を貯留する液槽から懸濁液ノズル34mに懸濁液が吸い上げられる。そして、ステップS302において、校正用エアロゾル発生器20caliの懸濁液ノズル34mから予め設定した濃度n0のウィルスを含むエアロゾルが噴出する。濃度n0のウィルスを含むエアロゾルは、校正用エアロゾル発生器20caliから検査入力弁23eの第1ポートを経由して、検出容器10と検査入力弁23eの第3ポートを接続する配管に導入される。検出容器10と検査入力弁23eの第3ポートを接続する配管に導入された濃度n0のウィルスを含む校正用エアロゾルは、検出容器10に設けられたノズル34通過して、検出容器10内の擬受容体膜13に噴射される。ステップS302のタイミングで擬受容体膜13に濃度n0のウィルスを含む校正用エアロゾルが噴射されると、図31の応答曲線に示すように、相対遅延時間変化Δt/tが時間に依存して増加する。
次に、図31の時間t1の経過後、図30のフローチャートのステップS303に示すように、検出容器10内の擬受容体膜13に特異的に捕捉されたウィルス以外の非特異吸着物質をパージする。非特異吸着物質のパージは、図29の第2可変リークバルブNV2と第2流量計FM2により流量を制御した清浄乾燥空気を、乾燥空気搬送配管Cから検出容器10内の擬受容体膜13に噴射することにより実施する。ステップS303の非特異吸着物質のパージの段階においては、図31に示すように、相対遅延時間変化Δt/tが飽和に達した後は減少に転じ、時間t_Eqに達する前に一定の収束値(Δt/t)1に収束する。相対遅延時間変化Δt/tが収束値(Δt/t)1に収束した後、例えば、図31に示すポイントMの時点において、初期値と収束値の差分(Δt/t)Diffを計測する。差分(Δt/t)Diffは、式(8)に示す初期値(Δt/t)0と収束値(Δt/t)1の差であり、非特異吸着を除外した検出基体10aのウィルスによる応答として、濃度n0における積分型差分検出の応答量が計測できる:
(Δt/t)Diff = (Δt/t)1-(Δt/t)0 ‥‥(8)
次に、ステップS304に示すように、校正用エアロゾル発生器20caliにおける単位時間あたりの懸濁液消費量と清浄乾燥空気の流量、並びに検出容器の体積から、検出容器10におけるウィルス濃度n(個/L)を求める。その後、ステップS305及びS306に示すように、計測回数が所定回数に達するまで、懸濁液におけるウィルス濃度n0を、ウィルス濃度n1,n2,n3,n4,………に順次変えて、図30のフローチャートのステップS302からステップS304までを繰り返す。そして、ステップS305及びS307に示すように、計測回数が所定回数に達したら、ウィルス濃度n=n,n1,n2,n3,n4,………と積分型差分検出の応答量(Δt/t)Diffの関係として、図32に示すような校正曲線を作成し、図30のフローチャートに示した手順を終了する。
(b)感度校正されたウィルス検査手順
次に、図33のフローチャートを参照しつつ、感度校正されたウィルス検査の手順について説明する。図33のフローチャートの手順は、図12で説明した基本実施形態に係るウィルス検査方法を基礎とするものであるので、基本実施形態に係るウィルス検査方法の説明と重複する部分についての詳細な説明は省略する。
まず、図33のステップS41に示すように、図29の第3可変リークバルブNV3と第3流量計FM3により流量を制御した湿潤空気を、湿潤空気搬送配管Bから検出容器10に供給して、湿潤空気による検出基体11aの表面の加湿を行う。その結果、図10(b)に示した状態と同様に、擬受容体14が液膜61により覆われる。液膜61は、擬受容体14が活性を維持可能な量だけ形成される。液膜61は、例えば、水、又は生体環境を模擬した緩衝溶液である。
次に、ステップS42に示すように、被検査空気31aを取り込み、被検査空気31aに含まれる粗エアロゾル33aからフィルタ30により所定のサイズ以上のダスト粒子やエアロゾルを除去して被検査エアロゾル33bの流体流を形成した後に、それを擬受容体膜13上に噴射する。被検査エアロゾル33bは、図11(a)又は図11(b)に示した態様と同様に、先細りテーパ形状の第1共通濃縮機構34により濃縮された高速気流になり、検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13に供給される。その結果、被検査エアロゾル33bに標的ウィルス60が含まれている場合には、擬受容体膜13において、標的ウィルス60のスパイク糖タンパク質17のRBDと擬受容体14と特異結合反応が発生する。
次に、ステップS43に示すように、清浄乾燥空気を乾燥空気搬送配管Cから検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13上に噴射する。この時、乾燥空気搬送配管Cに代えて、湿潤空気搬送配管Bを選択して、清浄湿潤空気を検出基体11aの少なくとも一部を被覆する擬受容体膜13上に供給してもよい。ステップS43の処理により、擬受容体膜13に非特異的に吸着した標的ウィルス以外のウィルスやダスト粒子等の不純物である非特異吸着物質を除去することができる。この後、例えば、ボールSAWセンサ(11a,12,13,14)の遅延時間変化の応答量(Δt/t)Diffを測定する。
次に、ステップS44に示すように、図30のフローチャートに示した校正曲線の作成手順で作成された校正曲線を用いて、図33のステップS43で測定された遅延時間変化の応答量(Δt/t)Diffの校正値を求める。具体的には、図32の校正曲線の縦軸値を横軸値に変換することで校正値を求めることができる。そして、ステップS45に示すように、ステップS44で求めた校正値に基づき、環境空気中のウィルスの有無およびその濃度の検査を行う。
最後に、ステップS46に示すように、ステップS43~S45の測定によって汚染された配管内、及び機器内の除菌を行う。図33のフローチャートに示したウィルス検査の手順により、引き続き他の場所でウィルス検査を行う場合に、安全、かつ安心して使用できると共に、次の検査でも高精度に検査を行うことができる。
(第8拡張実施形態)
第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置と同様に、第8拡張実施形態に係るウィルス検査装置の検出容器10は、図28に示した構造と基本的に同様に、検出容器10の左側の外壁に導入口を備えるが、更に、図34に示すように、検出容器10の天井側に複数(5本)の分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5をパージ用ノズルとして備える。図34に示す第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムの検出容器10の構成は、第7拡張実施形態に係るウィルス検査方法における非特異吸着による測定誤差を低減するための改良された構成である。即ち、検出容器10の上方に分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5をパージ用ノズルとして設けて、検出容器10の内部におけるパージガスの流れに方向性を持たせた点に第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムの特徴がある。
ウィルス搬送配管Aのガス噴射側の端部に位置する第1共通濃縮機構34は、図28に示した構造と基本的に同様に、左側から検出容器10の導入口に接続されている。図34に示した5本の分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5の集合が、図28に示した第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムの第2共通濃縮機構34nに対応する。以下の第8拡張実施形態に係るウィルス検査装置の説明においては、第1共通濃縮機構34を単に「共通濃縮機構34」と称することとする。図28に示す第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムでは、検出容器10の左側の外壁に第1導入口を備え、検出容器10の天井側に第2導入口を備えた構成を示した。一方、図34に示すような5本のノズルである分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5を有する構造においては、ノズル群を検出容器10の内部に配置するのが望ましく、検出容器10の天井側の第2導入口は省略可能である。よって、図34に示す第8拡張実施形態に係るウィルス検査装置の説明では、システムでは、検出容器10の左側の外壁に設けられる開口部が1個であり、この開口部を単に「導入口」と呼ぶこととする。
図28に示した第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムの模式的図では、1本の第2共通濃縮機構(パージ用ノズル)34nを1個の下向き二等辺三角形で包括的に簡略表現している。図28の拡大図に対応する図34では、5本の分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5を、検出容器10の内壁の上方に設けられた5個の下向き二等辺三角形として表現している。図34においても、図28に示した配管系と同様に、湿潤空気搬送配管B、乾燥空気搬送配管C、パージガス搬送配管Dは、ウィルス搬送配管Aとは独立に設けられる(図34では「配管系B~D」と簡略化して示している。)。即ち、図34において、検出容器10の上方に設けられた5本の分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5にそれぞれ接続される5分岐のマニホールド(5連分岐カップリング)の集合部に接続される配管には、B~Dの表示を付し簡略表示をしているが、配管B~Dは、ウィルス搬送配管Aと区別された配管系である。図28から分かるように、パージガス搬送配管Dの途中に、湿潤空気搬送配管Bと乾燥空気搬送配管Cが接続され、検出容器10の上方に導入される導入用配管の経路B~Dが構成されている。
分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5にそれぞれ接続される5分岐のマニホールドは図34に示すように、検出容器10の外部に設けてもよいが、検出容器10の天井側等の検出容器10を構成する筐体の一部として一体として構成してもよい。更に、5分岐のマニホールドは検出容器10の内部、例えば、検出容器10を構成する筐体の天井側に設けてもよい。既に、第8拡張実施形態に係るウィルス検査装置では「検出容器10の天井側には、第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置で説明したような第2導入口は省略可能である」と説明した。しかし、図7,8,13等に示したようなガス配管系に対して、検出容器を相対的に移動(摺動移動)させ、検出セルを交換する構成とする場合には、例えば、5連等の多連分岐のマニホールドを検出容器10の内部等に設け、この多連分岐のマニホールドの集中配管部の端部を第2導入口にしてもよい。
多連分岐のマニホールドを1本の配管にする集中配管部の端部を第2導入口にして、外部のガス配管系の端部と位置合わせ可能な構造にすることにより、真空を維持しながら、ガス配管系に対して検出容器を相対的に摺動移動させ、検出セルを交換するモードを実現できる。その他、5本の分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5にそれぞれ開口部を設けるような態様も考え得るが、構造が複雑になり、リークの問題や位置合わせの問題等も発生するので望ましくない。ただし、第8拡張実施形態に係るウィルス検査装置において、分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5にそれぞれに対応した複数の導入口を有する構造を排除するものではない。
既に、三方バルブの「第1~第3ポート」は、配管を構成する回路中の位置を特定するための便宜上の名称に過ぎず、物理的に独立した個別の部材が存在することを、必ずしも前提とするものではない旨を説明した。同様な趣旨から、図7,8,13等に示したようにガス配管系に対して、検出容器を相対的に摺動移動させるモードを採用する場合においては、検出容器10の左側に設けられる導入口は、物理的に独立した開口部としての意味がある。しかし、ガス配管系と検出容器10との位置関係が固定であれば、検出容器10の左側に設けられる導入口は実体的な意味はなく、単に、第1共通濃縮機構34を検出容器10に接続する位置を示す名称に過ぎない。例えば、第1共通濃縮機構34と検出容器10が一体構造であり、第1共通濃縮機構34から被検査空気31aを高速気流として噴射する構造でもよい。第1共通濃縮機構34と検出容器10が一体構造の場合は、検出容器10に設けられる「導入口」は、配管を構成する回路中の位置を特定するための便宜上の名称に過ぎず、物理的に独立した個別の部材が検出容器10に存在することを、必ずしも前提とするものではない。
図34に示す第8拡張実施形態に係るウィルス検査システム及びウィルス検査装置では、検出容器10には、ウィルス搬送配管Aからの被検査空気31aに含まれる標的ウィルスを濃縮して、高速気流として噴射するための共通濃縮機構34を構成する先細りテーパ形状の噴射用ノズルが左側の側壁に設けられている。そして、共通濃縮機構34の他に、パージガスをシャワー・ビームとして噴射するための分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5が検出容器10の上部に設けられている。パージ工程においては、分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5にパージガス搬送配管Dからのパージガスが、導入用配管の経路B~Dを介して導入される。図34に示すように、検出容器10の左方に、共通濃縮機構34が設けられた構造例の場合は、分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5は、検出容器10の内壁の上方に設けるのが好適であるが、図34に例示した配置関係に限定されるものではない。又、分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………の本数は5本に限定されるものではない。よって、例えば6本以上の多数のパージガスが同心円状に配置され、同心円状の分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………のそれぞれの先端から、パージガスがシャワー状に検出基体11aに降り注ぐようにすればよい。
そして、図28に示した構造と基本的に同様に、導入側の三方バルブである検査入力弁23eを経由する配管が検出容器10の入力側に接続され、排出側の三方バルブである検査出力弁23fを経由する配管が検出容器10の出力側に接続されている。詳細な配管の図示を省略しているが、検査入力弁23eは、第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムの検査入力弁23eと同様な三方バルブである。よって、図34の下側から校正用ガス搬送配管Eが導入側の三方バルブである検査入力弁23eの第1ポートに到達し、図34の左側からウィルス搬送配管Aが検査入力弁23eの第2ポートに到達する構成になっている。したがって、検査入力弁23eを切り替えることにより、被検査空気または校正用エアロゾル選択して、検査入力弁23eの第3ポートを介して、検出容器10に導入することが可能である。
第7拡張実施形態に係るウィルス検査装置と同様に、パージガス搬送配管Dに関しては、既に述べたように、ウィルス搬送配管A及び校正用ガス搬送配管Eと別個に設けられているので、パージガス流を検出容器10の上部から下部に流すことで、パージガスによりSAW周回経路から非特異吸着物質を効率よく除去することができる。なお、図1に示した基本実施形態に係るウィルス検査システムの配管経路のように、パージガス搬送配管Dがウィルス搬送配管Aと同じである場合は、パージガス圧力が低くなり、非特異吸着物質を検出基体11aから飛ばして十分に除去することができない。その結果、第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムの説明で用いた図31のセンサの積分型差分応答(Δt/t)Diffが、標的ウィルスのみが付着した場合の値に比べて大きくなる。積分型差分応答(Δt/t)Diffの増大は、被検査空気31a中の標的ウィルス濃度が低く、かつ積分型差分応答(Δt/t)Diffの絶対値が小さい領域において無視できない測定誤差となる。
検査入力弁23e、検査出力弁23f、吸引ポンプ40等を制御して、図35(a)に示すように、被検査空気31aの噴射時には、噴射ガス流GF1を検出容器10の左方から共通濃縮機構34を介して右方に流す。また、図35(b)に示すように、パージ時には、パージガス流GF2を検出容器10の上方に同心円状に配置された分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………のそれぞれの先端から、下方に流す。パージガスのシャワー・ビームを下方に向かった流れとするために、図34に示すように、検出容器10の下部の排気口に、排気用配管経路B~Dを接続するのが好ましい。なお、図34では、具体的な排気用配管経路B~Dの図示を省略している。排気用配管経路B~Dからは、パージガスの他、清浄乾燥空気や湿潤空気も排気される。
パージ工程において、吸引ポンプ40を用いて排気用配管経路B~Dを介して検出容器10の内部を排気することにより、分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………のそれぞれの先端から噴射するパージガスが、下方に向かったシャワー・ビームの流れとなる。分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………のそれぞれの先端からパージガスを噴射させる際に、マスフローコントローラ22の下流にある加湿入力弁23aの制御によりパージガスを同時に加湿することも可能である。又、パージ工程を湿潤空気によるパージと清浄乾燥空気によるパージの2段階で構成することもできる。
第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムによれば、図35(a)に示すように、共通濃縮機構34から噴射される噴射ガス流GF1は、SAW周回経路PSAWに沿って左方から右方に流れるので、標的ウィルス及び非特異吸着物質は、SAW周回経路PSAWに吸着し、かつSAW周回経路PSAWに沿って分布を持つことになる。この時、第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムの説明で用いた図31から明らかなように、センサ応答Δt/tは最大値を示すことになる。また、図35(b)に示すように、パージガスは、SAW周回経路PSAWと直交、又はほぼ直交する方向に、検出容器10の上方に同心円状に配置された分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………のそれぞれの先端から、上方から下方に向かって流れる。その結果、検出基体11a表面の抗体に捕捉された標的ウィルスは、吸着されたまま動かないが、非特異吸着物質については、SAW周回経路PSAWから離脱し、下方に押し流されることになるため、SAW周回経路PSAWから排除することが可能となる。従って、図31の応答曲線の中央に位置するステップS303の期間の過渡応答曲線の変化に示すように、センサ応答の強度が減少し、環境中のウィルス濃度に対応する一定値に漸近する。
尚、非特異吸着物質を迅速に排除してウィルス濃度の測定を短時間に完了させるためには、図35(b)に示すように、パージガス流の方向を制御することが望ましい。即ち、図35(b)の垂直線VLにほぼ平行な方向となるように、検出容器10の上方に配置された分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………のそれぞれの先端から噴射するパージガス流の方向を制御することが望ましい。具体的には、図35(b)に示すように、パージガス流の流れの方向は、SAW周回経路PSAW(水平線HL)に対して、角度θが、20度以上、90度以下の方向となるように、制御することが望ましい。この場合、分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………のそれぞれに噴射角度を調整する機構を設けてもよい。
以上、説明したように、第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムによれば、更に、導入側の三方バルブである検査入力弁23eを切り替えることにより、共通濃縮機構34から、濃度が複数の値に設定された校正用ウィルスを含む校正用エアロゾルを、検出基体11aに噴射できる。即ち、校正用ウィルスを含む空気を検出容器10内の擬受容体膜への噴射後の、複数の時刻における応答を測定することにより、センサの校正を行うことができる。従って、第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムによれば、例えば、ボールSAWセンサの遅延時間応答として、より高精度な積分型差分検出を行うことが可能となる。よって、第7拡張実施形態に係るウィルス検査システムと同様に、第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムによれば、基本実施形態に係るウィルス検査装置に比し、信頼性の高い積分型差分検出を行うことが可能となる。
なお、図34に示した構造において、導入側の三方バルブである検査入力弁23eを省略し、検出容器10の左側の第1導入口には、ウィルス搬送配管Aが単独で接続される配管系を接続するようにガス配管系を簡略化してもよい。この簡略化された構成では校正用ガス搬送配管Eが省略されているので、センサの校正を行うことはできない。しかし、パージガス搬送配管Dがウィルス搬送配管Aとは別個に設けられている特徴から、清浄湿潤空気や清浄乾燥空気にウィルスが含まれる可能性を排除することができる。更に、パージガス搬送配管Dをウィルス搬送配管Aと別個にすることにより、パージガス圧力が低くなる問題を回避できる。その結果、複数のノズルからなる分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5からのパージガスによりSAW周回経路から非特異吸着物質を効率よく除去することができる。よって、簡略化された構成であっても、非特異吸着物質による測定誤差を低減でき、より高精度な積分型差分検出を行うことができるという効果を奏することが可能となる。
(その他の実施形態)
本発明は上記の基本及び第1~第8拡張実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、基本及び第1~第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムにおいては擬受容体膜の表面状態の変化を物理的に検出する信号変換器がボールSAWセンサのセンサ電極である場合について例示的に説明したが、信号変換器は、ボールSAWセンサのセンサ電極に限定されるものではなく、図36に示すような平面型SAWセンサの入力電極12iと出力電極12oのセットでもよい。
図36に示す平面型SAWセンサは、均質な圧電体基板からなる検出基体16の表面上の所定の領域内に配置された、入力電極12i、擬受容体膜13h、及び出力電極12oを有する。図36に示すように、検出基体16の表面の少なくとも一部に設けられた擬受容体膜13hは、ウィルスに特異的に結合する擬受容体を表面に配列した弾性表面波の感応膜であり、この擬受容体膜13h中を弾性表面波が伝搬する。図36に示す構成では、入力電極12iと出力電極12oのセットで本発明の信号変換器(12i,12o)を構成している。信号変換器(12i,12o)は、図2に例示したボールSAWセンサの構成において、単一のセンサ電極が信号変換器12を構成していることに対応している。図36に示すような平面型SAWセンサでは、擬受容体14が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜13hの物理的状態の変化を示す物理信号を信号変換器(12i,12o)が音響電気変換を用いて測定する。擬受容体に結合したウィルスによる擬受容体膜13hの重量面密度の増加を平面型SAWセンサ(16,12i,12o、13h)の遅延時間応答として積分型差分検出することができる。このためには、外部から遮断された気密容器を検出容器として用意し、被検査空気を図36に示す平面型SAWセンサ(16,12i,12o、13h)と共に検出容器に格納して密閉空間を構成し、被検査空気中に存在するウィルス検出すればよい。
更に本発明の信号変換器は、ボールSAWセンサや平面型SAWセンサ等の超音波センサのセンサ電極に限定されるものではなく、図37に示すような光学的センサを構成する出射機構71と受光機構72のセットでもよい。図37に示す光学的センサは、均質な平板である検出基体15の表面上の所定の領域内に配置された擬受容体膜13iに対し検査光を出射する半導体レーザ等の出射機構71、検査光が擬受容体膜13iで反射された検査光を受光するフォトダイオード等の受光機構72を有する。即ち図37に示す構成では、出射機構71と受光機構72のセットで本発明の信号変換器(71,72)を構成している。信号変換器(71,72)は、図2に例示したボールSAWセンサの構成において、単一のセンサ電極が信号変換器12を構成していることに対応している。図37に示す構成では、検出容器(図示省略。)と、この検出容器に収納された平面型SAWセンサ(16,12i,12o、13h)や信号変換器(71,72)等で検出セルが構成される。
上記の基本及び第1~第8拡張実施形態においては、擬受容体14が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜13の重量面密度の変化を、物理信号としたが例示に過ぎない。本発明の「擬受容体膜の物理的状態の変化」は、基本及び第1~第8拡張実施形態において例示した重量面密度の変化に限定されるものではない。図37に示すような光学的センサでは、擬受容体14が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜13iの物理的状態の変化を示す光信号を、信号変換器(71,72)が電気信号に変換する。図37に示すように、検出基体15の表面の少なくとも一部に設けられた擬受容体膜13iは、ウィルスに特異的に結合する擬受容体を表面に配列している。図37に示した、更に他の実施形態に係るウィルス検査システムにでは、擬受容体に結合したウィルスが擬受容体膜13iの表面モホロジの変化、偏光特性の変化、反射率の変化、散乱特性の変化等が、擬受容体膜13iの物理的状態の変化を示す信号に寄与する。即ち、図37に示すような光学的センサの構成では、ウィルスが擬受容体膜13iの表面モホロジの変化、偏光特性の変化、反射率の変化、散乱特性の変化等を示す光信号を、信号変換器(71,72)が電気信号に変換する。そして、図示を省略した信号処理ユニットが、信号変換器(71,72)が出力する電気信号を用いて演算処理することにより、擬受容体に結合したウィルスを検出することができる。
このためには、外部から遮断された気密容器を検出容器として用意し、被検査空気を図37に示す検出基体15と共に検出容器に格納して密閉空間を構成し、被検査空気中に存在するウィルスを検出すればよい。図37に示す構成では、検出容器(図示省略。)と、この検出容器に収納された検出基体15、擬受容体膜13i、信号変換器(71,72)等による検出セルが構成される。擬受容体膜13iを格納する検出容器の少なくとも一部に信号変換器(71,72)に用いられる光信号の波長を透過する窓部を設ければ、信号変換器(71,72)は検出容器の外部に配置してもよい。更に図37に示す構造の上段に反射鏡を設けて多重反射を利用した光学的センサにしてもよい。又、図37で例示を省略しているが、透過型の光学的センサにしてもよいが、透過型の光学的センサの場合は、図37に示す検出基体15は検査光の波長に透明な材料を用いることは勿論である。酵素免疫測定法(ELISA)では擬受容体膜の表面での反応に由来した色素の吸光度を測定するので透過型の光学的センサの範疇に分類可能である。
図37に示す出射機構71と受光機構72のセットで信号変換器(71,72)を構成する場合において、出射機構71から出射する光は、例えば遠紫外の領域から遠赤外の領域まで使用可能である。更には、光は電磁波であるので、テラヘルツ帯の電磁波を出射機構71が出射し、受光機構72が受信し、電気信号に変換する場合でもよい。電磁波の信号を電気信号と考えると、信号変換器(71,72)を構成する受光機構72は電気-電気変換をしていることになる。テラヘルツ帯の電磁波を用いる場合には、テラヘルツ帯の電磁波を透過する窓部を少なくとも一部に有する検出容器を用いれば、信号変換器(71,72)は、擬受容体膜を格納する検出容器の外部に配置できる。
テラヘルツ帯の電磁波を出射機構71が出射する場合において、擬受容体14のパターンを電磁波の波長より短いパターンを、フォトリスグラフィ技術等を利用して描画し、サブ波長構造の擬受容体14のパターンを実現すれば、メタマテリアルの測定になる。特に標的ウィルスが変異した場合、標的ウィルスの分子構造が変わるので、標的ウィルスの分子に固有な振動数が変わる。図37に示す出射機構71と受光機構72のセットで信号変換器(71,72)を構成する場合において、可変周波数の出射機構71を用い、標的ウィルスの分子に固有な振動数に共振する周波数の電磁波を、擬受容体14に特異的に結合した結合した標的ウィルスに照射すれば、共振周波数を特定することにより、変異ウィルスが特定できる。
即ち、擬受容体が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜の物理変化には、擬受容体膜の吸収特性の変化や固有振動数の変化も含まれる。図37に示すような、電磁波を出射機構71が出射し、受光機構72が受信する電気-電気変換において、受光機構72が受信する電気信号はインピーダンスの変化でもよい。例えば、出射機構71と受光機構72のセットで、Sパラメータ測定系を構成しても構わない。したがって、擬受容体が標的ウィルスに特異的に結合したことによる擬受容体膜の物理変化には、インピーダンス特性の変化の変化やSパラメータの変化も含まれる。
超音波センサ、光学的センサ、電磁波センサに用いられる信号変換器は、上述したような音響-電気変換素子、光―電気変換素子、電気―電気変換素子に限定されるものではない。例えば、信号変換器は、表面プラズモンセンサ、水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサ等に用いられている物理信号―電気信号変換素子でもよい。更にイオン感応性電界効果トランジスタ(FET)を用いたFET型バイオセンサやMEMS型表面応力バイオセンサ等に用いられている物理信号―電気信号変換素子でもよい。即ち、擬受容体膜の表面状態の変化は、FET型バイオセンサやMEMS型表面応力バイオセンサ等によって物理的に検出した物理信号を、信号変換器によって電気信号に変換して、図示を省略した信号処理ユニットに演算処理させても検出できる。これらの超音波センサ、光学的センサ、電磁波センサ以外を対象とする種々多様な場合であっても、外部から遮断された気密容器を検出容器として用意し、検出容器の内部に検出基体及びこの検出基体の上に設けられた擬受容体膜が収納されることは勿論である。
更に、基本及び第1~第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムにおいては、含水エアロゾルを被検査エアロゾルとする場合についいて説明したが、被検査エアロゾルは必ずしも含水エアロゾルである必要はない。標的ウィルス60の種類が、空気感染を主とするか、飛沫感染を主とするか、マイクロ飛沫感染を主とするかによって、被検査エアロゾルに含ませる含水率を変更しても良い。すなわち、例えば空気感染を主とする場合は、含水率をゼロとして、擬受容体膜に直接標的ウィルス60を噴射してもよい。
又、基本及び第1~第8拡張実施形態に係るウィルス検査システムにおいては、被検査エアロゾル33b中の標的ウィルス60の有無を検査する積分型差分検出を行うことを主として説明したが、液体中に含まれる標的ウィルス60を検査する場合に応用することもできる。即ち、基本及び第1~第8拡張実施形態に係る検査装置に液体をガス化(含水エアロゾル化)する機構を設け、それによりガス化された空気を被検査エアロゾル33bとすれば、容易に液体中の標的ウィルス60の有無を検査する積分型差分検出を行うことができる。
又、本発明の第3拡張実施形態に係るウィルス検査装置の説明では、図18に示すような、第1ボールSAWセンサ(11p,12a,13a,14)及び第2ボールSAWセンサ(11q,12b,13b)の2つのセンサを有する構造を提示したが、3つのセンサを有する構造でも構わない。3つのセンサを有する構造では、第3ボールSAWセンサに、第1擬受容体膜13aとは異なるウィルスに結合する擬受容体を配列した第3擬受容体膜を設ける。そして、第3ボールSAWセンサに第3信号変換器として第3センサ電極を設け、第3センサ電極で音響信号を電気信号に変換すれば、第3擬受容体膜を伝搬するSAWの減衰係数及びSAWの遅延時間が計測できる。例えば、第1擬受容体膜13aがSARS-CoV-2ウィルスを標的ウィルス(第1標的ウィルス)60とし、第3擬受容体膜がインフルエンザウィルスを第2標的ウィルスとする構成にすれば、SARS-CoV-2ウィルスとインフルエンザウィルスの識別が可能になる。
同様に、本発明の第6拡張実施形態に係るウィルス検査装置の説明では、図27を用いて水分検査球として第1検出基体11j、第3検出基体11l及び第5検出基体11nを、ウィルス検査球として第2検出基体11k、第4検出基体11m及び第6検出基体11oを3個ずつ交互に入れた構造を例示したが、インフルエンザウィルス検査球として第1検出基体11j、第3検出基体11l及び第5検出基体11nと、SARS-CoV-2ウィルス検査球として第2検出基体11k、第4検出基体11m及び第6検出基体11oを3個ずつ交互に入れた構造にすれば、SARS-CoV-2ウィルスとインフルエンザウィルスの識別が可能になる。
更に、図37に例示した構成において、第1ウィルスに特異的に結合する第1擬受容体を配列した第1擬受容体膜、第2ウィルスに特異的に結合する第2擬受容体を配列した第2擬受容体膜、第3ウィルスに特異的に結合する第3擬受容体を配列した第3擬受容体膜、……のように、複数の擬受容体膜を検出基体15の上に一方向に沿って周期的に繰り返し配列し、検出基体15をベルトコンベアのように並進移動させれば、複数のウィルスの識別が可能になる。複数の擬受容体膜を回転円盤の円周面に周期的に繰り返し配列し、複数の擬受容体膜を回転移動してもよい。
更に、基本及び第1~第8拡張実施形態で説明した技術的思想を適宜組み合わせて新たな代替実施形態を構成できる。例えば、第7拡張実施形態で説明した感度校正されたウィルス検査球を、基本及び第1~第6拡張実施形態で説明したウィルス検査球として用いてもよい。又、第7拡張実施形態では、図29の一点鎖線で囲んだ3次元領域ARを3Dプリンタ等の成型装置により一体成型一体成型する技術を説明したが、一体成型による小型化及び集積化技術は、基本及び第1~第6拡張実施形態で説明した技術に適用できる。この結果、基本及び第1~第6拡張実施形態で説明した係るウィルス検査システム等を含めて、ウィルス検査システムをより小型化し、ポータブルなウィルス検査システムを実現可能にする。
更に、微小電気機械システム(MEMS)の技術による吸引ポンプや配管系等を採用することにより、携帯端末等に搭載可能なユビキタスなウィルス検査システムが実現できる。或いは、第8拡張実施形態で説明した複数の分割濃縮機構34n1,34n2,34n3,34n4,34n5,………からパージガスをシャワー状に検出基体に降り注ぐ技術的思想を、基本及び第1~第6拡張実施形態で説明したウィルス検査球のパージに用いる等、それぞれの技術的思想にそった種々の組み合わせが可能である。このように、本発明は基本及び第1~第8拡張実施形態の説明では記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。