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JP7575876B2 - 無機化合物からなる物品、および無機化合物からなる物品の製造方法 - Google Patents
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無機化合物からなる物品、および無機化合物からなる物品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、無機化合物からなる物品、および直接造形方式の付加製造技術を用いて無機化合物からなる物品を製造する方法に関する。
多孔質構造と非多孔質構造を併せ持つセラミックス(無機化合物)構造体は、物を搬送したり固定したりする際に用いる吸着プレートや、流体中の特定物質を除去するためのフィルタなどに使用される。特許文献1では、半導体製造装置などで用いる半導体ウエハを固定する治具として、非多孔質構造のセラミックスからなる支持部の凹部に半導体ウエハを載置する載置部が設けられた真空チャック部材が開示されている。載置部は多孔質構造のセラミックスで構成され、支持部に設けられている吸気口および載置部を介してエアーを吸引することにより、載置部上に半導体ウエハを吸着させて固定することができる。
従来、このような真空チャック部材は、非多孔質構造のセラミックス体からなる支持部と、予め作製した多孔質構造のセラミックスからなる載置部とを、ガラスペーストを用いて互いに接着することで形成されていた。
しかしながら、接着層の強度が相対的に弱いため、使用状況によってはガラスペーストからなる接着層で多孔質構造のセラミックスが剥離する問題があった。また、接着層は、固体のガラスを溶融することで形成されているため、接着層の厚さの制御が困難であった。
近年、短時間で試作品を作製したり、少数部品を製造したりする用途において、材料粉末をエネルギービームで結合させて所望形状の造形物を得る付加製造技術が樹脂材料および金属材料で普及しており、セラミックス部品の製造への適用が検討されている。
特許文献2には、いわゆる粉末床溶融結合(powder bed fusion)法を用いて物品を製造する方法が記載されている。この方法では、基板上に材料粉末からなる粉末層を形成し、粉末層の物品に対応する部分に選択的にエネルギービームを照射して、粉末を焼結させる一連の工程を繰り返し行う。これら一連の工程の繰り返しにおいて、先に焼結させた部分と後から焼結させた部分を互いに接合させ、所望形状の物品を得ている。
粉末床溶融結合法などの直接造形方式は、型を用いたりインゴットからの削り出しをしたりする必要がなく、物品を粉末から直接造形することができるため、短時間で精度良く造形物を得ることができる。また、3DCAD(三次元コンピュータ支援設計)ソフトウェアなどの設計ツールを用いて作成した三次元データに基づいて造形ができるため、設計変更が容易であり、複雑で細かい形状の三次元造形物を製造することが可能であるという利点を有している。
特開2010-205789号公報 特表平1-502890号公報
特許文献1に記載の多孔質構造部(多孔質部)と非多孔質構造部(非多孔質部)が一体となったセラミックス造形物を、特許文献2に記載の直接造形方式で作製する場合を考える。直接造形方式を金属材料よりも展延性の低いセラミックス材料に適用すると、材料粉末が溶融して凝固する際に発生する応力で、造形物の内部に無数のクラックが形成される。そのため、高強度な造形物を得るために、エネルギービームで造形した後に、造形物内のクラックを低減するための後処理工程が行われる。
前記後処理工程として、加熱処理が挙げられる。ところが、多孔質構造と非多孔質構造が一体となったセラミックス造形物の場合、多孔質部と非多孔質部それぞれの熱挙動が大きく異なる。この熱挙動の差により、加熱処理時に多孔質構造部と非多孔質構造部の境界に大きな応力が発生し、機械的強度の弱い多孔質構造部や、境界部が破断するという問題が生じる。
本発明は、かかる課題に対処するためになされたものであり、直接造形方式の付加製造技術を用いて、多孔質構造と非多孔質構造が一体となった高強度な無機化合物からなる物品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る無機化合物からなる物品は、多孔質部と、前記多孔質部を囲む非多孔質の枠体と、を面方向に備え、前記多孔質部と前記枠体との間に応力緩和部を有する、ことを特徴とする。
本発明の他の態様に係る無機化合物からなる物品の製造方法は、多孔質構造を有する多孔質部と、前記多孔質部を囲み非多孔質構造を有する枠体と、を有し、前記多孔質部と前記枠体との間に応力緩和部を有する無機化合物からなる物品の製造方法であって、無機化合物の粉末を含む粉末を用いて粉末層を形成する工程と、前記粉末層に前記物品の三次元形状に基づいてエネルギービームを照射し、前記粉末を溶融および凝固、または焼結させる工程と、を含む、ことを特徴とする。
本発明によれば、直接造形方式の付加製造技術を用いて、多孔質構造と非多孔質構造が一体となった、無機化合物からなる物品を得ることができる。
本発明の物品の製造方法の一例における工程の流れを示すフローチャートである。 本発明の物品の製造方法の一実施形態を模式的に示す概略工程図である。 本発明の物品の複数の実施形態例を模式的に示す上面図および断面図である。 本発明の他の実施形態の一例に係る物品の上面図および断面図である。 造形部のオーバーハングを模式的に示す概略図である。 付加製造装置の構成を説明するための概略構成図である。 実施例で作成した吸着台の断面を示す概略構成図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(付加製造装置)
まず、図6を用いて、本実施形態で使用する付加製造装置100について説明する。図6は、付加製造装置100の構成を説明するための概略構成図である。図6に示すように、付加製造装置100は、造形テーブル101、プレート102、造形容器103、垂直移動機構104,105、粉末供給容器106、ローラー107、移動ガイド108、レーザー光源109、スキャナ110、集光レンズ111、および制御部112を備えている。
造形テーブル101は、プレート102を装着するためのテーブルであり、造形容器103の底面を兼ねている。造形テーブル101は不図示のピンを有しており、プレート102の不図示のピン穴と嵌合させることで、プレート102の位置決めがなされる。また、プレート102は、ネジにより造形テーブル101に固定される構成が好ましい。尚、プレート102は、無機化合物からなる造形物を形成する際の支持台として機能するものであれば、必ずしも板状である必要はなく、造形テーブルへの位置決めや固定方法も、この例には限られない。造形テーブル101は、垂直移動機構104により、垂直方向に移動可能に支持されている。ここで、本発明において、「造形物」とは、付加製造技術によって作製されたままの状態の物を指し、必要に応じて造形物に熱処理など何らかの処理を施した後の物を物品と呼ぶ。ただし、造形物に対して何ら処理が必要ない場合は、造形物と物品は同じものを指す。
付加製造装置100は、さらに、造形テーブル101と隣り合う粉末供給容器106、ローラー107、ローラー107を移動させるための移動ガイド108、レーザー光源109、スキャナ110および集光レンズ111を備えている。粉末供給容器106は、造形用の粉末113を収容すると共に、造形容器103に堆積させる粉末層の厚さに応じて、粉末113の供給量を調整するための装置である。粉末113の供給量は、垂直移動機構105の上昇量によって調整することができる。ローラー107は、水平方向に移動することができるように移動ガイド108に支持されており、粉末供給容器106から造形容器103に造形粉末を移動させ、表面を均しながら所定の厚さの粉末層を形成する。
レーザー光源109、スキャナ110および集光レンズ111は、粉末層の所望領域114にレーザー光115を局所選択的に照射するための照射光学系を構成している。
制御部112は、付加製造装置100の動作を制御するためのコンピュータであり、内部には、CPU1121、メモリ1122、記憶装置1123およびI/Oポート(入出力部)1124等を備えている。
メモリ1122は、ランダムアクセスメモリ(RAM)やリードオンリーメモリ(ROM)である。記憶装置1123は、ハードディスクドライブ、ディスクドライブおよび磁気テープドライブなどであり、後述するフローチャートの処理が実現されるプログラムが格納される。
I/Oポート1124は、外部機器やネットワークと接続され、例えば付加製造に必要なデータの入出力を、外部コンピュータとの間で行うことができる。付加製造に必要なデータとは、作製するセラミックス造形物の形状データ、造形に用いる材料の情報、および一層ごとの焼結層の形状データ、すなわちスライスデータを含む。スライスデータは、外部のコンピュータから受け取ってもよく、造形モデルの形状データに基づいて制御部112内のCPU1121が作成してメモリに記憶してもよい。
CPU1121は、記憶装置に格納されたプログラムをメモリ1122に展開して実行することで、付加製造装置100に後述する各工程の処理を行わせる。
制御部112は、垂直移動機構104、垂直移動機構105、ローラー107、レーザー光源109、スキャナ110および集光レンズ111などの各部と接続され、これらの動作を制御して造形に係る処理を実行させる。
図1は、本発明の無機化合物からなる物品の製造方法における工程の流れを示すフローチャートである。以下、図1の流れに従って本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明の無機化合物からなる物品の製造方法は、多孔質部と多孔質部を囲む非多孔質の枠体との間に生じる応力を緩和するための応力緩和部を形成することが特徴であって、その他の要件は以下の具体例に何ら限定されるものではない。
(工程の概略)
本発明は、多孔質構造と非多孔質構造が一体となった、無機化合物からなる物品の製造方法である。
図1を参照しながら、無機化合物からなる物品の製造方法の全体を説明したのち、本発明の特徴的な部分を説明する。以下で説明する無機化合物からなる物品の製造方法の各工程は、CPU1121が記憶装置1123に格納されたプログラム(データ生成プログラム)をメモリ1122に展開して実行することにより実現される。
まず、CPU1121は、造形対象である物品(造形モデル)の三次元形状データを取得する(工程S1)。取得した物品の三次元形状データは、3DCADや三次元スキャナから制御部112のI/Oポート1124を介して入力され、メモリ1122に記憶される。
次に、CPU1121は、物品の三次元形状データを複数のオブジェクトに分割し(工程S2)、各オブジェクトに多孔質構造/非多孔質構造の情報を付与する(工程S3)。または、3DCADなどによって多孔質構造/非多孔質構造の情報が付与された複数のオブジェクトを予め用意し、それらのオブジェクトを組み合わせることで三次元形状データを形成してもよい。
次に、付加製造装置100が造形物を積層形成するために必要な一層ごとの形状データ、すなわち三次元造形物のスライスデータを作成する(工程S4)。
工程S1から工程S4は、造形モデルおよび三次元形状データに基づいて制御部112のCPU1121がデータを作成してRAMに記憶してもよく、これらの工程を外部のコンピュータで実行し、作成されたデータをI/Oポート1124を経由して受け取ってもよい。また、応力緩和部を有する三次元形状データやスライスデータが入手できる場合は、それぞれの工程を省略することができる。
次に、付加製造装置100に、プレート102を位置決め固定する。プレート上に材料粉末を供給して所定の厚さの粉末層を形成した後、エネルギービームをスライスデータに従って照射することで材料粉末を溶融/凝固または焼結させることにより粉末層に固化部を形成する。粉末層の形成とエネルギービーム照射を繰り返して積層造形する(工程S5)ことで、造形モデルに対応した造形物を得る。
図2(a)~(g)は、本発明の無機化合物からなる物品の製造方法の好適な実施形態である粉末床溶融結合方式において、工程S5を模式的に示す概略断面図である。製造には、無機化合物の粉末を含む材料粉末301を用いる。まず、ローラー352を用いて、基板320上に、材料粉末301からなり、所定の厚さを有する粉末層302を形成する(図2(a)および(b)参照)。スライスデータに基づいて、粉末層302の表面に、エネルギービーム源500から発したエネルギービーム501を走査させながら照射して、材料粉末を選択的に溶融および凝固、または焼結させる(図2(c)参照)。このとき、スライスデータ内でエネルギービームの照射条件が同じ領域は、連続した描画ラインで溶融および凝固または焼結させることが好ましい。例えば、枠体304と応力緩和部306のエネルギービーム照射条件が同じ場合、多孔質部305に対応する領域を先に造形した後で、枠体304および応力緩和部306を連続した描画ラインで造形することが好ましい。これにより、より高強度な造形部300を形成できる。さらには、設計上、空孔が多い部分から形成していくことが好ましい。即ち、本発明においては、多孔質部305から形成することが好ましい。例えば、枠体304と応力緩和部306が同じ照射条件である場合、最初にスライスデータ内の多孔質部305に対応する領域の粉末を結合させ、次に枠体304および応力緩和部306に対応する領域を形成する。これにより、多孔質部305の端部と隣接する部分との結合が強くなり、より高強度な造形部300を形成できる。図中、枠体304と別に応力緩和部306に符号を付しているが、応力緩和部306は、枠体304の一部であってもよい。
ここで図5を用いてオーバーハング部について説明する。造形方向(積層方向)に対して角度θのオーバーハング部を有する造形部300を形成する場合、θが45°以下のオーバーハング部は安定して造形できる。θが45°より大きいオーバーハング部がある場合は、オーバーハング部を支持するような例えば柱状の支持体(不図示)を形成すると安定な造形が可能となる。支持体は造形物を形成後に簡単に取り除けるように、多孔質や非晶質となるようなエネルギービーム照射条件によって形成されることが好ましい。
上記工程により、材料粉末301が溶融および凝固、または焼結した領域(造形部)300と、粉末状態のままの領域(非造形部)303が形成される。続いて、造形コンテナ353の上端部より粉末層一層分だけ下方となる位置にステージ351を降下させ、造形部300および非造形部303を覆うように、新たに粉末層302を形成する(図2(d)参照)。粉末層302を形成する工程と、エネルギービーム501を走査させながら照射して、材料粉末を選択的に溶融および凝固または焼結させる工程、これら一連の工程を一回または複数回繰り返して行う(図2(e)参照)。そして、積層された粉末層中に、各粉末層から形成される造形部が一体となった造形部を形成する(図2(f)参照)。
次に、粉末状態のままの領域(非造形部)303と、多孔質部に内包された未結合の材料粉末を除去し、必要に応じて造形部に基板320からの分離や支持体の除去などの後処理を施して、造形物307を得る(図2(g)参照)。詳しくは後述するが、図中、符号304の塗りつぶしパターンは枠体(非多孔質部)、符号305の塗りつぶしパターンは多孔質部、符号306の塗りつぶしパターンは応力緩和部を示している。
(材料粉末)
本発明で用いる材料粉末は、無機化合物の粉末である。ここで、無機化合物とは金属を除く固体状の無機化合物のことであり、固体の結合状態(結晶質または非晶質)は問わない。本明細書において無機化合物とは、水素を除く周期表1族から14族までの元素に、アンチモンおよびビスマスを加えた元素群のうちの1種類以上の元素を含有する酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、またはホウ化物を指す。材料粉末として使用可能な無機化合物の粉末としては、金属酸化物、非金属の酸化物、窒化物、フッ化物、ホウ化物、塩化物、硫化物などが挙げられる。材料粉末は1種類の無機化合物により構成されてもよく、2種類以上の無機化合物を混合したものでもよい。また、無機化合物の粉末とは、無機化合物を主成分とする粉末を意味し、無機化合物以外の成分を含むことを排除するものではない。
無機化合物を主成分として構成された造形物(以下、単に造形物と記述する)は、樹脂や金属よりも高い機械的強度を有する。
無機化合物の粉末の主成分は酸化物であることが好ましい。酸化物は、他の無機化合物に比べて揮発成分が少ないため、エネルギービームによる安定した溶融が実現でき、直接造形方式の付加製造に適している。代表的な酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコンおよびこれらの混合物や化合物などが挙げられる。
さらに、付加製造技術の材料粉末としては、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムを含む粉末、または酸化アルミニウムおよび希土類酸化物を含む粉末がより好ましい。これらの粉末は、一種類の無機化合物からなる粉末よりも融点が低くなるため、小さい出力のエネルギービームでも溶融させることが可能となる。材料粉末が溶融不足であると、造形物を形成することができないため、エネルギービームの出力には下限値が存在するが、上記粉末を用いることで上記下限値が小さくなり、出力値の選択範囲が広がる。後述するが、出力値の選択範囲が広がることで、多孔質と非多孔質の作り分けが容易となる。また、小さい出力で造形できるため、エネルギービーム照射部からの伝熱による不要な材料粉末の付着結合が抑制され、造形精度が向上する。
造形物の強度向上の観点において、溶融および凝固により相分離構造が形成される粉末が好ましい。例えば、無機化合物の粉末として酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムの共晶組成の混合物、酸化アルミニウムと希土類酸化物の混合物などを用いることが好ましい。これらの粉末を用いることで、2相以上からなる相分離構造を有する造形物が得られる。相分離構造はクラックの伸展を抑える効果があり、造形物の機械的強度が向上するなどの機能が付加的に発揮される。本発明において、共晶組成とは、共晶点における組成±10%の範囲をいう。
また、エネルギービームがレーザービームである場合、材料粉末に十分なエネルギー吸収があることで、粉末層内における熱の広がりが抑制されて局所的になり、非造形部への熱の影響が低減するため、造形精度が向上する。例えば、Nd:YAGレーザーを使用する場合は、YAGレーザーに対して良好なエネルギー吸収を示すTb、Pr11などを材料粉末に添加してもよい。以上の観点から、より好適な材料粉末としては、Al-ZrO、Al-Gd、Al-Y、Al-Tb、ZrO-Tb、Y-Tb、Gd-Tb、さらに好適な材料粉末としては、Al-Gd-Tb、Al-ZrO-Tb、Al-Y-Tb等が挙げられる。
なお、本発明において、無機化合物の粉末は粉末の流動性や最終的な造形物の性能を調整するために、無機化合物の他に少量(無機化合物粉末100重量部に対して10重量部以下)の樹脂などの有機物や金属等の無機物を含んでいてもよい。
(粉末層の形成)
本発明における粉末層の形成工程の好適な実施形態の一例を説明する。
粉末層形成工程では、無機化合物の粉末を含む材料粉末を用いて粉末層を形成する。基板320の上に一層目の粉末層を形成する工程では、図2(b)に示すように、所定の厚さを有する粉末層302を形成する。二層目以降の粉末層の形成工程では、前の工程で形成された粉末層(非造形部303)および凝固部(造形部)300の上に、新たな粉末層302を形成する(図2(d)参照)。粉末層302の形成方法は特に限定されない。図2(a)に示すようなローラー352やブレード等で層厚を規定しながら、粉末層302を形成するとよい。
以上、粉末床溶融結合法について説明したが、本発明にかかる造形方法はこれに限定されるものではなく、指向性エネルギー積層法(いわゆるクラッディング方式)を用いることもできる。指向性エネルギー積層法とは、粉末層は形成せず、スライスデータに基づいて照射されるエネルギービームの照射位置にノズルから材料粉末301を噴霧供給し、基板320もしくは造形部300の造形面の上に造形材料を肉盛りする方法である。
(材料粉末の溶融および凝固または焼結)
本発明における、粉末層に造形物のスライスデータに基づいてエネルギービームを照射して粉末を溶融および凝固または焼結させる工程(以下、造形工程と略称する)について、好適な実施形態に基づいて説明する。
造形工程では、スライスデータに従ってエネルギービームを照射して材料粉末を溶融および凝固または焼結させる。
粉末層に十分な熱量のエネルギービームを照射すると、材料粉末がエネルギーを吸収し、該エネルギーが熱に変換されて材料粉末が溶融する。エネルギービームの照射が終了すると、溶融した材料粉末は、溶融部に隣接する周辺部によって冷却され、凝固する。溶融および凝固によって形成された領域は空孔が少ない非多孔質となる。ただし、非多孔質には応力によって形成されたマイクロクラックが存在する。
一方で、照射する熱量を小さくしていくと、材料粉末が溶融するための十分な熱量が得られず、粉末内の粒子の表面が溶けて粒子同士が互いに結合する現象(焼結と呼ぶ)が大半を占めるようになる。焼結の場合、粒子同士の結合部(ネック)周辺に空孔ができやすくなる。また、投入熱量を制御して焼結の程度を小さくすると、レーザー照射部に周囲の粒子と結合できなかった未焼結粒子が混在するようになり、後の洗浄によって未焼結の粒子を取り除くことでランダムな空孔が存在する多孔質を形成することができる。
エネルギービームのスキャンピッチを調整することで、粉末をハニカム状に溶融および凝固または焼結させることができる。後の洗浄により未凝固/未焼結の粒子を取り除くと、規則的な空孔が存在する多孔質を形成することができる。
ここで、造形物内(外形より内側)に含まれる、空間をまとめて空隙と呼び、空隙のうち粉末の未凝固/未焼結によって形成される空間を空孔と呼ぶ。即ち、空隙には、多孔質部の孔である空孔、および、造形時の応力で生成されるマイクロクラックが含まれる。造形物の多孔質部には、物を搬送したり固定したりする吸着機能や、流体中の特定物質を除去するフィルタ機能など、製造する物品が所望の機能を有するために設計され、意図的に形成された空孔が存在する。空隙率は、次のような手法で評価できる。走査電子顕微鏡(SEM)により、造形物を研磨した表面のSEM画像を取得し、多孔質部、枠体、応力緩和部における空隙の割合をSEM画像から算出した単位面積当たりの空隙の面積(%)を空隙率とする。
本発明の多孔質構造とは、その断面の単位面積当たりの空隙率(以降、単に空隙率と言う)が15%以上の構造を指す。吸着機能向上の観点から、多孔質部の空隙率は18%以上であることがより好ましい。一方で、多孔質部が構造体として形状を保つという観点においては、空隙率は60%以下であることが好ましい。より好ましくは50%以下である。
本発明において、非多孔質構造とは、その断面の単位面積当たりの空隙率が10%以下の構造を指す。高い機械的強度が求められる場合、非多孔質構造の空隙率は小さい方が好ましく、空隙率は5%以下が好ましい。
後に詳述するが、応力緩和部は枠体と同じエネルギービームの照射条件で形成することが好ましい。即ち、応力緩和部は非多孔質構造であり、その空隙率は10%以下であることが好ましい。
図2(c)に示すように、基板320上に形成した粉末層302の表面に、エネルギービーム501を走査しながら照射すると、エネルギービーム501が照射された領域の粉末同士が溶融および凝固もしくは焼結して造形部300が形成される。このとき、造形材料に与えられる熱が、基板320と粉末層302との界面にまで達するようにエネルギービーム501の出力を調整しておくと、基板320と造形部300とが接合した状態になる。また、図2(d)および図2(e)に示すように、造形部300の上に形成された粉末層302にエネルギービーム501を照射すると、新たに造形部300が形成される。このとき、造形材料に与えられる熱が、先に形成した造形部と後から形成した粉末層302との界面にまで達するため、先に形成した造形部と新たに形成された造形部とが接合し、造形部300が形成される。これら一連の溶融および凝固もしくは焼結の工程を繰り返すことにより、粉末層ごとに形成された造形部が互いに接合して一体となった造形物307が形成される(図2(g)参照)。
使用するエネルギービームとしては、材料粉末の吸収特性に鑑みて適切な波長を有する光源を選定する。高精度な造形を行うためには、ビーム径が絞れて指向性が高いレーザービームもしくは電子ビームを採用することが好ましい。材料粉末が酸化物の粉末を含む場合は、レーザービームとしては、1μm波長帯のYAGレーザーやファイバーレーザー、10μm波長帯のCOレーザーなどを適用することができる。
本発明では、溶融および凝固もしくは焼結の工程において、エネルギービームを照射する際に、エネルギービームの出力、スキャンピッチ、およびスキャン速度のうち少なくとも一つを照射領域に応じて切り替えることで多孔質構造と非多孔質構造の作り分けができる。つまり、スライスデータは、どの領域を多孔質構造とし、どの領域を非多孔質構造とするかの情報を含んでいる。
エネルギービームを照射する際に、エネルギービームの出力、焦点位置、スキャンピッチ、およびスキャン速度のうち少なくとも一つを照射領域に応じて切り替えることにより、材料の溶融度合や焼結度合を変え、造形部の空隙率を変えることができる。非多孔質構造を形成する条件に対して、エネルギービームのスキャン速度を大きくする、スキャンピッチを大きくする、または、出力を小さくすると多孔質構造が形成される。具体的には、溶融度合が大きいと造形部は空隙率が小さい領域、即ち、非多孔質構造となる。溶融度合が小さく焼結が主体であると、造形部は空隙率が大きい領域、即ち、多孔質構造となる。また、溶融度合が大きくても、スキャンピッチが十分に大きいとハニカム状の空孔が形成され、造形部は空隙率が大きい領域、即ち、多孔質構造となる。
エネルギービームの出力を小さくし過ぎると熱量が足りずに溶け残りが生じる場合がある。逆にエネルギービームの出力を大きくし過ぎると溶け過ぎて造形精度が出ない場合がある。造形精度を得ながら多孔質と非多孔質を作り分けるには、エネルギービームのスキャン速度とスキャンピッチのいずれか一つ、もしくは両方を変更することが好ましい。
また、スキャン速度は造形物形成に要する時間に関わる。スキャン速度を切り替えて非多孔質構造を形成する場合、スキャン速度を小さくする必要があるため、造形速度が遅くなる場合がある。従って、スキャン速度は切り替えず、スキャンピッチを切り替えて多孔質構造と非多孔質構造を作り分けると、造形速度に大きな影響を与えないため、特に好ましい。
指向性エネルギー積層法の場合も、投入熱量を変えることで、非多孔質構造と多孔質構造を作り分けることが可能である。具体的には、粉末床溶融結合法と同様に、エネルギービームの出力、造形面とエネルギービームの焦点との相対位置、スキャンピッチ、およびスキャン速度のうち少なくとも一つを領域に応じて変更すれば、所望の条件を導き出すことができる。
本発明の造形方法において、エネルギービームの照射によって形成される多孔質部と枠体と応力緩和部は、同一の粉末から形成されるため、ほぼ同一の組成で構成される。
本発明において用いられる基板の材料としては、物品の製造において通常用いられる金属、無機化合物等の材料から物品の用途や製造条件等を考慮して適宜選択、使用することができる。
本発明の無機化合物からなる物品の製造方法は、以下に説明する加熱処理を施しても、多孔質部と枠体と境界部に破断が生じない物品を得るための方法である。具体的には、材料粉末にエネルギービームを照射して材料粉末を溶融および凝固または焼結させる工程(造形工程)を行い、多孔質部と枠体との境界部に生じる応力を緩和するための応力緩和部を有する物品を製造する。
(加熱処理)
造形工程で得られた造形物は、造形工程後に加熱されることが好ましい。加熱処理は、造形工程で造形物中の各部に形成された応力やマイクロクラックを低減させる効果がある。マイクロクラックを減少または消滅させるためにより効果的な工程として、造形物の主成分と共晶を形成しうる成分を含む液体を造形物に吸収させたうえで加熱する固定が好ましい。造形物の主成分が酸化アルミニウムである場合は、ジルコニウム成分を含む液体(以降、ジルコニウム成分含有液と言う)を造形物に吸収させたうえで加熱する工程が挙げられる。マイクロクラックの減少または消滅によって、造形物の強度は飛躍的に向上する。
ここでジルコニウム成分含有液について説明する。
ジルコニウム成分の原料、有機溶媒、安定化剤で構成されるジルコニウム成分含有液が、好ましい例である。
ジルコニウム成分の原料には、種々のジルコニウム化合物を用いることができる。アルミナを主体とした造形物にジルコニウム成分含有液を吸収させる場合は、ジルコニウム以外の金属元素が含まれない原料が好ましい。ジルコニウム成分の原料としては、ジルコニウムの金属アルコキシドや塩化物や硝酸塩などの塩化合物を用いることができる。中でも金属アルコキシドを用いると、ジルコニウム成分含有液を造形物のマイクロクラックに均質に吸収させることができるため好ましい。ジルコニウムアルコキシドの具体例としては、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn-プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn-ブトキシド、ジルコニウムテトラt-ブトキシド等が挙げられる。
まず、ジルコニウムアルコキシドを有機溶媒に溶解させて、ジルコニウムアルコキシドの溶液を調製する。ジルコニウムアルコキシドに加える有機溶媒の添加量は、化合物に対してモル比で5以上30以下であることが好ましい。より好ましくは、10以上25以下である。なお、本発明において、Aの添加量はBに対してモル比で5であるとは、添加するAのモル量がBのモル量に対して5倍であることを表している。溶液中のジルコニウムアルコキシドの濃度が低過ぎると十分な量のジルコニウム成分を造形物に吸収させることができない。一方で、溶液中のジルコニウムアルコキシドの濃度が高過ぎると溶液中のジルコニウム成分が凝集してしまい、造形物のマイクロクラック部分にジルコニウム成分を均一質に配置することができない。
上記有機溶媒としては、アルコール、カルボン酸、脂肪族系または脂環族系の炭化水素類、芳香族系炭化水素類、エステル、ケトン類、エーテル類、またはこれら2種以上の混合溶媒を用いる。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチルブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが好ましい。脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類としては、n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンなどが好ましい。芳香族炭化水素類としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが好ましい。エステル類としては、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが好ましい。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。エーテル類としては、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどが挙げられる。本発明で使用されるジルコニウム成分含有液を調製するに当たり、溶液の安定性の点から上述した各種の溶剤類のうちアルコール類を使用することが好ましい。
次に、安定化剤について説明する。ジルコニウムアルコキシドは水に対する反応性が高いため、空気中の水分や水の添加により急激に加水分解され溶液の白濁、沈殿を生じる。これらを防止するために安定化剤を添加し、溶液の安定化を図ることが好ましい。安定化剤としては、例えば、アセチルアセトン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、3-エチル-2,4-ペンタンジオン、トリフルオロアセチルアセトンなどのβ-ジケトン化合物類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert-ブチル、アセト酢酸イソブチル、3-オキソヘキサン酸エチル、2-メチルアセト酢酸エチル、2-フルオロアセト酢酸エチル、アセト酢酸2-メトキシエチルなどの、β-ケトエステル化合物類;さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの、アルカノールアミン類等を挙げることができる。安定化剤の添加量は、ジルコニウムアルコキシドに対してモル比で0.1以上3以下が好ましい。より好ましくは、0.5以上2以下である。
他の好ましい例としては、ジルコニウム成分の粒子と分散剤と溶媒とで構成されるジルコニウム成分含有液が挙げられる。
ジルコニウム成分の粒子としては、ジルコニウム粒子やジルコニウムの酸化物であるジルコニア粒子を用いることができる。ジルコニウム粒子またはジルコニア粒子は、トップダウン法でそれぞれの材料を破砕して作製してもよいし、ボトムアップ法で金属塩、水和物、水酸化物、炭酸塩などから水熱反応などの手法を用いて合成してもよいし、または市販品を用いてもよい。
粒子のサイズは、マイクロクラックに侵入させるため300nm以下、より好ましくは50nm以下である。
粒子の形状はとくに限定されず、球状、粒状、柱状、楕円球状、立方体状、直方体状、針状、柱状、板状、鱗片状、ピラミッド状あってもよい。
分散剤としては、有機酸、シランカップリング剤、界面活性剤、のうち少なくとも一種を含むことが好ましい。有機酸としては、例えばアクリル酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-アクリロキシエチルコハク酸、2-アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロキシエチルフタル酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸などが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどが好ましい。界面活性剤としては、例えばオレイン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルリン酸エステルナトリウム、塩化アルキルメチルアンモニウム、アルキルアミノカルボン酸塩などのイオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの非イオン系界面活性剤が好ましい。
溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、エステル変性エーテル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アミド類、水、油類、あるいはこれら2種以上の混合溶媒を用いる。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、エチレングリコールなどが好ましい。ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、4-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチルなどが好ましい。エーテル類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノールなどが好ましい。変性エーテル類としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。炭化水素類としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが好ましい。ハロゲン化炭化水素類としては、例えばジクロロメタン、ジクロルエタン、クロロホルムが好ましい。アミド類としては、例えばジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンが好ましい。油類としては、例えば鉱物油、植物油、ワックス油、シリコーン油が好ましい。
ジルコニウム成分含有液は、ジルコニウム粒子またはジルコニア粒子と分散剤と溶媒とを同時に混合して作製してもよいし、ジルコニウム粒子またはジルコニア粒子と分散剤とを混合してから溶媒を混合してもよい。あるいは、前記ジルコニウムまたはジルコニアの微粒子と前記溶媒を混合してから前記分散剤を混合してもよいし、前記分散剤と前記溶媒とを混合してから前記ジルコニウムまたはジルコニアの微粒子を混合して作製してもよい。
上述した溶液の調製は、室温で反応させても、還流させて調製してもよい。
粉末層にエネルギービームを照射し、粉末を溶融および凝固、または焼結させる造形工程では、照射部とその周囲との温度差が大きいので、冷えて固まる際に造形物中にマイクロクラックが多く発生する。
ジルコニウム成分含有液は、造形物の表層のみならず、マイクロクラックを伝って造形物の内部にも侵入し、分布する。造形物のマイクロクラックの十分な範囲に、十分な量のジルコニア成分を介在させることができるのであれば、造形物にジルコニウム成分含有液を吸収させる手法は特に限定されない。ジルコニウム成分含有液中に造形物を浸けて含浸させてもよく、ジルコニウム成分含有液を霧状にして造形物に吹き付けてもよく、液滴を造形物に滴下してもよく、刷毛などで塗布してもよい。また、これらの手法を複数組み合わせてもよく、同じ手法を複数回繰り返してもよい。
次に、ジルコニウム成分含有液を吸収させた造形物を加熱する工程について説明する。上記のジルコニウム成分含有液を吸収させる工程(以降、吸収工程と言う)で、造形物に含有液を吸収させると、マイクロクラックに面する造形物の表面にはある量のジルコニウム成分が存在することになる。この状態で加熱処理を行うと、表面にジルコニウム成分が存在する領域の近傍において、ジルコニウム成分の量と共晶組成もしくは共晶組成に近い組成比となる量のアルミナ成分が、造形物の融点よりも低い温度で溶融する。その後、再結晶化してマイクロクラックの補修に寄与すると考えられる。その結果、造形物の形状を維持したまま、マイクロクラックの近傍領域だけが軟化し、マイクロクラックを低減ないし消失せしめる効果が得られるものと考える。
このとき、ジルコニウム成分はマイクロクラック表面だけに留まらず、造形物内へも固相拡散すると考えられる。加熱を終えて温度が低下するのに伴い、マイクロクラック近傍は溶融後にジルコニウム成分と造形物に含まれる成分とが入り混じり再結晶化する。このため、クラックが補修された部分は、ガラス浸潤などでクラックを充填する方法に比べて組織間の結合が強くなり、高い機械的強度を有する造形物が得られていると考えられる。
造形物に酸化アルミニウムが含まれる場合、造形物を最高温度が1600℃以上1710℃以下の温度で加熱することによって、造形物のジルコニウム成分が存在している部分、即ち、マイクロクラック近傍が一部溶融する。より好ましい最高温度は、1650℃から1710℃である。マイクロクラック部分が、最高温度である1600℃から1710℃の温度に達すれば、ジルコニウム成分が存在しているマイクロクラック部分は溶融する。したがって、加熱時間は特に限定されない。また、加熱温度をコントロールすることで、ジルコニウム成分が存在する部分の近傍のみを溶融させることができるため、造形物の形状が崩れることはなく、直接造形方式の利点は担保される。よって、長時間加熱しても造形物形状は維持される。溶融後、凝固して再結晶化した造形物は、マイクロクラックの減少・消滅によって機械強度が大きく向上する。加熱の方法は特に限定されないが、造形物を炉に入れて加熱する方法が簡便である。造形工程で得られた造形物に吸収させる液体に含まれる金属元素の成分と加熱温度は上述の例に限定されない。造形に用いる粉末の組成に応じて、上記液体中に吸収させる金属元素の成分と加熱温度を変更することが好ましい。
(無機化合物からなる物品)
本発明の無機化合物からなる物品は、多孔質構造を有する多孔質部と、前記多孔質部を囲み非多孔質構造を有する枠体と、を面方向に備え、前記多孔質部と前記枠体との間に応力緩和部を有している。
本発明において応力緩和部は、多孔質部と枠体との境界部に生じる応力を緩和する機能を有する。応力緩和部を有することで、上記応力に起因する割れや変形を抑制することができ、多孔質部と枠体が一体となった無機化合物からなる物品を形成することができる。このような構造は、特に、粉末床溶融結合法などの直接造形方式の付加製造法によって、多孔質構造と非多孔質構造とが一体となった無機化合物からなる構造体を形成する場合に好適である。
直接造形方式の付加製造によって形成された無機化合物からなる造形物は、内部に多くのマイクロクラックを有する。このため、より高い強度を得るために、付加製造後に造形物を加熱処理することが好ましい。加熱処理によって無機化合物からなる造形物の一部が溶融または焼結してマイクロクラックが減少して機械的強度が向上する。特に、上述の吸収処理工程と加熱処理工程を造形物に実施することで、造形物中のマイクロクラックが大きく減少し、機械的強度がさらに向上する。
多孔質構造と非多孔質構造が一体となった造形物の場合、多孔質構造からなる部分と非多孔質構造からなる部分の熱物性が異なるため、加熱処理時に多孔質構造からなる部分と非多孔質構造からなる部分の境界に大きな応力が発生する。本発明の無機化合物からなる物品では、非多孔質部の周囲に設けられた応力緩和部が造形物の加熱処理時に各部の収縮または膨張に合わせて変形することで、多孔質部と枠体との境界部に生じる応力を緩和する。これにより、機械的強度が比較的弱い多孔質部や多孔質部と枠体との境界部の破断を防ぎ、多孔質部と枠体とが一体となった高強度な無機化合物からなる物品を得ることができる。
応力緩和部は、加熱処理時に多孔質部と枠体の変形に合わせて、柔軟に変形可能な構成であることが好ましい。図3に本発明の物品の実施形態の例を、上面図と断面図で示す。図3は、面内方向に、多孔質部305と多孔質部305を囲む枠体304とを有し、面内方向において、多孔質部305の周りに応力緩和部306を有する無機化合物からなる板状の物品を示す。図3において、物品は、多孔質部と応力緩和部との間に、非多孔質部の周囲(側面)を覆う、非多孔質構造からなる支持部308を有している。これにより、多孔質部305の側面の強度を強くすることができる。支持部308の面内方向の厚さは、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。応力緩和部306は、支持部308と隣接した箇所に設けられる。
本発明にかかる物品としては、応力緩和部306が、多孔質部305の周囲を囲むように、前記面方向と垂直な方向における多孔質部の厚さよりも薄い非多孔質構造の部位であることが、最も好ましい形態である。応力緩和部306は、多孔質部305の端部から10mm以内の領域に設けられる。図3(a)、図3(c)、および図3(d)では、D-D’断面に示すように、応力緩和部306の平均厚さが、多孔質部305の平均厚さより薄くなっている。応力緩和部306は、非多孔質部に比べて薄肉化されているだけでなく、図3(c)および図3(d)に示すような斜め形状や蛇腹形状を有しているとより好ましい。応力緩和部306が斜め形状や蛇腹形状を有していると、多孔質部305と枠体304の熱変形に追随しやすくなる。これにより、薄肉化された応力緩和部306は、多孔質部305の熱収縮または熱膨張に応じて変形し、応力を緩和することができる。ここでは、応力緩和部306、多孔質部305それぞれの平均厚さは、板状物品の板厚方向の平均厚さをいう。
図3(a)、(c)、(d)のように、面内方向に多孔質とそれを囲む非多孔質とを有する構造の板状の物品である場合、応力緩和部の平均厚さは、非多孔質部の平均厚さより小さいことが好ましい。各部の空隙率にもよるが、応力を緩和する能力が高いという観点で、肉薄部の平均厚さは非多孔質部の平均厚さの70%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。一方、造形物の十分な強度を得るため、応力緩和部の平均厚さは、枠体の平均厚さの20%以上であることが好ましい。
また、応力緩和部306は、図3(b)および図3(f)のように互いに離間した非連続な複数のパーツに分かれていてもよい。図3(b)および図3(f)におけるE-E’断面は、パーツが設けられていない部分を通る断面を示している。図3(b)および図3(f)は、応力緩和部306を構成する各パーツの厚さ(面方向の厚さ、上面図において各パーツの幅に相当)は、多孔質部305の平均厚さ(板厚方向の厚さ)よりも薄くなっている。このような構造の場合も、応力緩和部の各パーツが、多孔質部305の熱収縮または熱膨張に応じて変形し、応力を緩和することができる。複数のパーツは、板厚方向には薄肉化されていなくても応力を緩和することができるが、板厚方向にも薄肉化されていると応力緩和の効果がより高くなるため好ましい。図3(b)、(f)のように、応力緩和部が非連続な複数のパーツに分かれている場合、応力緩和部の各パーツの幅を足し合わせた値が、多孔質部の周長さの70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。また、造形物の十分な強度を得るため、応力緩和部の各パーツの幅を足した合わせた値は多孔質部の周長さの20%以上であることが好ましい。ここで、応力緩和部の各パーツの幅とは、図3の平面図面内において、多孔質部の周方向における、各パーツの平均長さをいう。
粉末床溶融結合方式などの付加製造装置で造形する場合は、オーバーハング部が造形方向(粉末層の積層方向)に対して45°以下であると安定した造形が可能となる。従って、応力緩和部306は造形時に造形面に対して45°以下の傾斜となるように設計することが好ましい。
また、図3(e)のように、応力緩和部306が多孔質部305の空隙率Aより大きく、枠体304の空隙率Bよりも小さい空隙率Cを有する構造で形成されている場合も好ましい。このような構成の応力緩和部306も、加熱処理時に多孔質部と枠体との間の熱物性を示して、応力を分散させることができ、多孔質構造と非多孔質構造が一体となった無機化合物からなる物品を得ることができる。
応力緩和部の密度は、多孔質部の密度より大きく、枠体の密度より小さいことが好ましい。ただし、応力緩和部は、枠体と同等程度の低い空隙率であることが最も好ましい。即ち、応力緩和部の平均空隙率をA、枠体の平均空隙率をBとすると、比A/Bは0.9以上1.1以下であることが好ましく、0.95以上1.05以下であることがより好ましい。応力緩和部が枠体と同等程度の低い空隙率を有することで、多孔質部を通って物品から流出または流入する流体の流量のばらつきを抑えることができる。加えて、実用に耐えうる十分に高い強度を得ることができる。
多孔質部、枠体、および応力緩和部は、ほぼ同じ材質で構成されていることが好ましい。多孔質部の周囲に支持部を設ける場合は、支持部も他の部分とほぼ同じ材質で構成されていることが好ましい。具体的には、モル比において最も多く含まれる第一の金属元素と次に多く含まれる第二の金属元素が、多孔質部、枠体、応力緩和部、および支持部の間で共通であることが好ましい。これにより、造形物をより高強度にする加熱工程の温度制御が容易になるほか、研磨処理などによって造形物を加工した際に、凹凸の少ない滑らかな表面加工ができる。また、上記第一の金属元素がアルミニウムであり、上記第二の金属元素が希土類元素であることがより好ましい。アルミニウムと希土類を含む酸化物は、2相以上からなる相分離構造を形成する。相分離構造はクラックの伸展を抑える効果があり、造形物の機械的強度が向上するなどの機能が付加的に発揮されるため、より好ましい。
図4に本発明の他の実施形態の一例に係るチューブ状の物品を示す。図4(a)は、一方向に長い物品407の斜視図を示し、図4(b)は、長手方向に垂直な方向に物品407を切断したときの断面図を示す。図4(b)に示す面内方向において、多孔質構造からなる多孔質部405と多孔質部405を囲む非多孔質構造からなる枠体404とを有し、枠体404の周囲を囲んで応力緩和部406が設けられている。図3と同様に、多孔質部405の側面は、強度を保つため、枠体404と同じ緻密度(空隙率)の支持部408で薄く覆われている。支持部408の厚さは、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
図4の応力緩和部406は、互いに非連続な複数のパーツで構成されており、図3(f)に示した板状の無機化合物からなる物品を板厚方向に長尺にした構造を有している。応力緩和部406は、図4に示す例に限定されるものではない。断面方向にはひと続きで、長さ方向に非連続の複数のパーツで構成してもよいし、応力緩和部406が多孔質部405の空隙率Aより大きく、枠体404の空隙率Bよりも小さい空隙率Cを有する構造で形成されている場合も好ましい。
図4に示す構造の場合、応力緩和部406の各パーツの円周方向の幅を足し合わせた値が、多孔質部405の周長さの70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。応力緩和部をいう。
また、応力緩和部406が円周方向にはひと続きで、長尺方向に非連続な複数のパーツで構成される場合、各パーツの板厚(長尺方向の幅)を足し合わせた値が、物品の長尺方向の長さの70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。物品の十分な強度を得るため、多孔質部405の板厚を足し合わせた値が、物品の長尺方向の長さの20%以上であることが好ましい。ここで、応力緩和部406の各パーツの板厚とは、長尺方向における各パーツの平均長さをいう。
本発明の無機化合物からなる物品は、物を搬送または固定する際に用いる吸着プレートに好適である。無機化合物は金属よりも熱抵抗が大きい。加えて、薄肉化された応力緩和部はプレートの厚さ方向における断面積が小さいため、熱抵抗が大きい。したがって、本発明の無機化合物からなる物品を吸着プレートとして用いることで、多孔質部(吸着部)への伝熱を抑制できる効果がある。例えば、半導体を実装するためのダイボンダ装置でチップを載せるプレートとして使用すれば、チップに貼り付けられた実装接着用テープの熱による変質を抑えることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明に係る無機化合物からなる物品、および無機化合物からなる物品の製造方法について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例は、溶融/凝固条件にて、非多孔質構造からなる枠体と薄肉化された応力緩和部と、格子状のパターンを有する多孔質部とを備える板状の物品を作製し、吸着プレートとして用いる例である。
まず、多孔質部、非多孔質構造からなる枠体と薄肉化された応力緩和部を備える造形物の設計図を3DCADソフトウェアで作成した。目的の造形物の概略形状を図3(d)に示す。造形物は、4cm角、厚さ8mmの正方形の板状で、板の外周部は非多孔質構造で形成され、中央に1cm角の正方形状で板の厚さ方向に連通した多孔質構造からなる多孔質部がある。正方形状の角は、半径2mmのアールとなっている。そして、図に示すように、板厚方向に薄肉化され、非多孔質構造からなる蛇腹形状の応力緩和部を有している。応力緩和部の平均板厚は3mmであり、多孔質部の平均板厚の38%である。
3DCADの設計図から、板の厚さ方向に厚さ20μmのスライスデータを作成し、付加製造装置に上記スライスデータを取り込んだ。
次に、α-Al粉末、Gd粉末、Tb3.5粉末(Tb粉末)を用意し、モル比がAl:Gd:Tb3.5=77.4:20.8:1.8となるように各粉末を秤量した。各秤量粉末を乾式ボールミルで30分間混合して混合粉末(材料粉末)を得た。
上述した図2に示す工程と基本的に同様な工程を経て、上記スライスデータに基づき、実施例1の造形物を形成した。
造形物の形成には、50WのYbファイバーレーザー(ビーム径65μm)が搭載されている3D SYSTEMS社のProX DMP 100(商品名)を用いた。
最初に、ローラーを用いて純アルミナ製の基台上に上記材料粉末の20μm厚の一層目の粉末層を形成した。30Wのレーザービームを140mm/sのスキャン速度、100μmのスキャンピッチで塗りつぶすように上記粉末層に照射し、一層目のスライスデータに基づいて、非多孔質構造を形成する領域の材料粉末を溶融および凝固して固化させた。次に、上記30Wのレーザービームを180mm/sのスキャン速度、175μmのスキャンピッチで上記粉末層に照射し、一層目のスライスデータに基づいて、多孔質構造を形成する領域の材料粉末を固化させた。描画ラインは正方形に対して斜め45°となるようにした。
次に、上記粉末層を覆うように20μm厚の粉末層をローラーで新たに形成した。一層目の描画ラインと直交するような方向で、二層目のスライスデータに基づいて、非多孔質構造を形成する領域内の粉末を溶融および凝固させたのち、多孔質構造を形成する領域の粉末を固化させた。このような工程を各層のスライスデータに基づいて繰り返し、実施例1の造形物を形成した。基台から切り離すための切りしろとして、設計値+2mmの厚さ(10mm)になるようにした。得られた造形物を基台から切り離し、未結合の粉末を除去することで、多孔質構造からなる部分と非多孔質構造からなる部分とが一体となった造形物(厚さ8mm)を得た。
次に、造形物をジルコニウム成分含有液に含浸させた。ジルコニウム成分含有液は、次のように調製した。85重量%のジルコニウム(IV)ブトキシド(以下、Zr(O-n-Bu)と表記する)を1-ブタノール中に溶解させた溶液を用意した。上記Zr(O-n-Bu)の溶液を2-プロパノール(IPA)中に溶解させ、安定化剤としてアセト酢酸エチル(EAcAc)を添加した。各成分モル比は、Zr(O-n-Bu):IPA:EAcAc=1:15:2とした。その後、室温で約3時間攪拌することにより、ジルコニウム成分含有液を調製した。この液のジルコニア固形分の重量濃度は8%である。
上記造形物を該ジルコニウム成分含有液に浸漬し、1分間減圧脱気して、造形物内部まで液を浸透させたのち、1時間自然乾燥させた。
上述のようにしてジルコニウム成分含有液を含浸させた造形物を電気炉に入れて加熱した。具体的には、大気雰囲気においてサンプル温度が1670℃となるよう2.5時間で昇温させ、1670℃で50分間保持した後、5時間で200℃以下に冷却した。
実施例1では、造形物をジルコニウム成分含有液に含浸させる工程と加熱の工程を交互に3回ずつ繰り返して、図7に示す、無機化合物からなる物品707を得た。物品707は、側面が支持部708で覆われた多孔質部705と非多孔質部704とが、面内方向に応力緩和部706を介して繋がり、一体となった板状の物品である。
作製した物品707の多孔質部705は、一方の表面から反対側の表面まで連通した開気孔を有していた。作製した物品707を、通気口710が接続され、凹部711を有する本体部709に、凹部711を塞ぐようにねじ止めし、吸着台700を作製した。物品(吸着プレート)707の上にSiウエハを載置し、通気口710からポンプなどを利用して本体709内部の空気を排出すると、凹部711が減圧状態となり、Siウエハを吸着することができた。一旦吸着したSiウェハを取り外す際に通気口710から空気を導入すると、凹部711の圧力が高まり、Siウェハを吸着プレートから容易に外すことができた。
また、得られた物品の表面を研磨してSEM観察した画像から空隙率を算出したところ、多孔質部の空隙率は31%であり、枠体および応力緩和部の空隙率は2%であった。
物品の強度を確認するため、同様の物品を作製し、落下試験を行った。板状の物品の側面角から着地するように、30cm、60cmおよび100cmの高さからラワン材に物品を自由落下させたが、物品に破損は見られなかった。
(実施例2)
本実施例は、造形後にジルコニウム含浸を実施せずに加熱を1回のみ行った例である。ジルコニウム含浸工程が無く、加熱が1回という以外は実施例1と同じ条件で無機化合物からなる物品を作製した。
(実施例3)
本実施例は、多孔質部における開気孔の配置がランダムである場合の例である。
ランダムな配置の開気孔を有する多孔質部を得るために、描画速度を220mm/s、描画ピッチを125μmとした以外は実施例1と同じ条件で、無機化合物からなる物品を作製した。
(実施例4)
本実施例は、形状が実施例1と異なる物品を作製した例である。
目的の物品の概略形状を図3(f)に示す。物品は、直径4cm、厚さ15mmの円板で、円板の外周部は非多孔質部で形成され、中央に直径1cmの円形で円板の厚さ方向に連通した多孔質部がある。そして、非多孔質部と多孔質部との間に図3(f)に示すような板の面内方向に薄肉化された形状の応力緩和部が、放射状に等間隔で8つのパーツに分かれて存在する。応力緩和部の各パーツの平均幅(2mm)を足した応力緩和部の平均幅(16mm)は、円形の多孔質部の円周長さπの約51%である。形状以外は実施例1と同じ条件で、無機化合物からなる物品を作製した。
(実施例5)
本実施例は、応力緩和部が実施例1と異なる形状の物品を作製した例である。目的の物品の概略形状を図3(a)に示す。図に示すように、本実施例の造形物には板の厚さ方向に平行に薄肉化された形状の応力緩和部がある。応力緩和部の厚み5.6mmは均一で、多孔質部の厚み8mmの70%である。本実施例では造形方向(粉末層の積層方向)に対して90°のオーバーハング部となる応力緩和部の下部に多孔質部と同じ条件で形成した支持体を設けた。実施例1と同様にしてエネルギービームの照射によって材料粉末を溶融/凝固または焼結させる工程を繰り返して支持体が付いた造形物を形成した。造形物から支持体を除去した後、基台から切り離して未結合の粉末を洗浄除去し、実施例1と同様の製造方法を経て実施例5の無機化合物からなる物品を作製した。
(実施例6)
本実施例は、応力緩和部の平均幅が実施例4と異なる物品を作製した例である。
物品は、直径4cm、厚さ15mmの円板で、枠体(円板の外周部)は非多孔質構造で形成され、中央に直径1cmの円形で円板の厚さ方向に連通した多孔質構造からなる多孔質部がある。そして、板の面内方向に薄肉化された形状の応力緩和部が、放射状に等間隔で10個のパーツに分かれて存在する。応力緩和部の各パーツの平均幅(0.9mm)を足した応力緩和部の平均幅(9mm)は、円形の多孔質部の円周長さπの約29%である。応力緩和部の平均幅とパーツの数以外は実施例4と同じ条件で、無機化合物からなる物品を作製した。
(比較例1および比較例2)
多孔質部と枠体との間に応力緩和部を有さない比較用の物品を作製した。目的の比較用の物品は、4cm角、厚さ8mmの正方形の板状で、枠体(板の外周部)は非多孔質構造で形成され、中央に1cm角の正方形状で板の厚さ方向に連通した多孔質構造からなる多孔質部がある。そして、多孔質部と枠体の間に応力緩和部は設けられていない。
比較例1の比較用の物品は、造形物にジルコニウム成分含有液を含浸させる工程を実施せず、加熱工程を1回のみ行った。比較例2の物品は、実施例1と同じ条件で作製した造形物にジルコニウム成分含有液を含浸させた後に加熱工程を1回行った。両条件とも加熱工程で物品の多孔質部と枠体との境界に亀裂が入った。
実施例、および比較例の評価結果を表1にまとめて示す。なお、表中の落下試験の結果は、物品に破損がみられなかった場合をOK、一部にでも破損がみられたものをNGと表記した。円板形状の物品も側面から着地するように落下させた。
実施例2から実施例6の無機化合物からなる物品についても、吸着プレートとしての機能を確認した。本体部の凹部711を塞ぐように、実施例2から実施例6の無機化合物からなる吸着プレートを順に固定して図7に示す吸着台を作製し、実施例1と同様にして吸着台としての機能を確認した。実施例1から実施例6の無機化合物からなる物品は、一方の表面から反対側の表面まで連通した開気孔を有しおり、すべての造形物において、吸気によってSiウエハを吸着することができた。
比較例1および比較例2の比較用の造形物は、加熱工程で出来た亀裂の影響でSiウエハを吸着することができなかった。
Figure 0007575876000001
(考察)
実施例1から実施例6の造形物は、加熱工程を経ても多孔質部と枠体とが一体となった無機化合物からなる物品を形成することができた。一方で、応力緩和部を有さない比較例では、加熱工程で多孔質部と枠体との境界に亀裂が入り、多孔質と枠体が一体となった物品を得ることができなかった。
含浸・加熱工程を実施した実施例1および実施例3から実施例6は強度が高く、60cmの落下試験に耐えることができた。
さらに、同じ形状で比較すると、実施例1および実施例3のように蛇腹形状の応力緩和部を有する造形物ほど応力緩和の効果が大きく、実施例5の平板形状に比べて落下試験の結果も良好であった。実施例5は多少の残留応力があったものと考えられる。
また、実施例1、実施例3および実施例4は実施例6と比較して、多孔質部の平均板厚に対して適度な応力緩和部の平均板厚を有するため、強度が高く、落下試験の結果が良好であった。
300…造形部
301…材料粉末
302…粉末層
303…非造形部
304,404,704…枠体
305,405,705…多孔質部
306,406,706…応力緩和部
307,407,707…物品
308,408,708…支持部

Claims (20)

  1. 多孔質構造を有する第一の部分と、前記第一の部分より大きな密度を有する枠体とが、面内方向に前記枠体が前記第一の部分を囲むように配置され、
    前記第一の部分と前記枠体との間に応力緩和部である第二の部分を有し、
    前記第一の部分と、前記枠体と、前記第二の部分とが、一体となった無機化合物からなる物品であって、
    前記第二の部分は、第一の構造、第二の構造及び第三の構造の少なくとも一つを有し、
    前記第一の構造においては、前記第二の部分の前記面内方向に垂直な方向の平均厚さが、前記第一の部分の前記面内方向に垂直な方向の平均厚さより小さく、
    前記第二の構造においては、前記第二の部分が、互いに離間した非連続な複数のパーツで構成されており
    前記第三の構造においては、前記第二の部分の空隙率が、前記第一の部分の空隙率より大きく前記枠体の空隙率より小さい、ことを特徴とする物品。
  2. 前記第一の部分と前記第二の部分との間に、前記第一の部分を囲むように第三の部分を有し、前記第三部分は、前記第三の部分の断面の単位面積当たりの空隙率が10%以下である構造からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
  3. 前記第三の部分の前記面内方向における厚みは5mm以下である、ことを特徴とする請求項2に記載の物品。
  4. 前記第二の部分は、前記第一の部分の端部から10mm以内の範囲に設けられている、ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の物品。
  5. 前記第一の部分の断面における単位面積当たりの空隙率が15%以上であり、前記枠体の断面の単位面積当たりの空隙率が10%以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の物品。
  6. 前記枠体及び前記第二の部分のそれぞれは、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の物品。
  7. 前記第二の部分の空隙率Aと前記枠体の空隙率Bとの比A/Bが、0.9以上1.1以下である、ことを特徴とする請求項6に記載の物品。
  8. 前記第一の部分、前記枠体及び前記第二の部分のそれぞれが第一の金属元素を含み、前記第一の部分、前記枠体及び前記第二の部分のそれぞれが第一の金属元素と異なる第二の金属元素を含む、ことを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の物品。
  9. 前記第一の金属元素がアルミニウムであり、第二の金属元素が希土類元素である、ことを特徴とする請求項8に記載の物品。
  10. 前記物品が板状であることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の物品。
  11. 通気口が接続され、凹部を有する本体部と、
    前記凹部を塞ぐ吸着プレートと、を有する吸着台であって、
    前記吸着プレートが、請求項1から10の何れか一項に記載の物品である、ことを特徴とする吸着台。
  12. 前記第一の部分に含まれる金属又は樹脂の重量濃度が、前記第一の部分における前記共通する無機化合物の重量濃度の1/10以下である、ことを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の物品。
  13. 前記無機化合物が、酸化物、窒化物、フッ化物、ホウ化物、塩化物及び硫化物からなる群より選択される少なくとも1つである、ことを特徴とする請求項1から10及び12の何れか一項に記載の物品。
  14. 前記枠体が、2相以上からなる相分離構造を含む、ことを特徴とする請求項1から10、12及び13の何れか一項に記載の物品。
  15. 前記第一の部分及び前記枠体が前記第二の部分を介して繋がり一体となっている、ことを特徴とする請求項1から10及び12から14の何れか一項に記載の物品。
  16. 前記第二の部分が前記第一の構造を有する、ことを特徴とする請求項1から10及び12から14の何れか一項に記載の物品。
  17. 前記第二の部分が前記第二の構造を有する、ことを特徴とする請求項1から10及び12から14の何れか一項に記載の物品。
  18. 前記第二の部分が前記第三の構造を有する、ことを特徴とする請求項1から10及び12から14の何れか一項に記載の物品。
  19. 前記第一の部分、前記枠体及び前記第二の部分を含む物体を直接造形方式で形成する、ことを特徴とする請求項1から10及び12から18の何れか一項に記載の物品の製造方法。
  20. 前記第一の部分、前記枠体及び前記第二の部分を含む物体を粉末溶融結合方式で形成する、ことを特徴とする請求項1から10及び12から18の何れか一項に記載の物品の製造方法。
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