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JP7576769B2 - Liイオン含有正極材の製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池等に使用可能な正極材料及びその製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、一般的に携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラに代表される小型電子機器の電源として広く用いられている。近年では、エネルギー密度を高めたリチウムイオン二次電池は、電気自動車用電源として注目されている。
(LMNO)
スピネル型構造を有したLiMnのMnの一部をNiで置換固溶することで合成されたLiNi0.5Mn1.5(以下、「LNMO」とも呼ぶ。)正極は、約5V(4.7V)もの高電圧で作動することが知られている。このLNMOのエネルギー密度は686Wh/kgであり、他の正極材料よりも大きいことから、電気自動車用リチウムイオン二次電池の正極として期待されている(例えば、特許文献1や非特許文献1を参照)。
(LMNOを含む従来の正極材の課題)
しかしながら、このLNMOは、上述のように高電圧で動作するため、電解液が正極上で酸化分解されることから、高温下や高レートでの放電容量が乏しいという課題がある。
この現象を防止するため、酸化マグネシウムなどの絶縁性の酸化物を粒子表面にコーティングする対策がこれまでに提案されている(例えば、非特許文献2~3を参照)。この対策では、電解液の分解を抑制することでサイクル特性を改善できるものの、リチウムイオンの伝導を阻害するため充放電性能の面で劣ることが問題となっていた。
国際公開第2015/083481号パンフレット
Yo Kobayashi et al., "5V Class All-Solid-State Composite Lithium Battery with Li3PO4 Coated LiNi0.5Mn1.5O4", Journal of The Electrochemical Society, 150(12) A1577-A1582(2003) D. Arumugam et al., "Synthesis and electrochemical characterizations of Nano-SiO2-coated LiMn2O4 cathode materials for rechargeable lithium batteries", Journal of Electroanalytical Chemistry 624(1-2), 197-204 (2008) Y. Iriyama et al., "Effects of surface modification by MgO on interfacial reactions of lithium cobalt oxide thin film electrode", Journal of Power Sources, 137, 1, 111-116 (2004) J. Huang et al., "Enhancing the Ion Transport in LiMn1.5Ni0.5O4 by Altering the Particle Wulff Shape via Anisotropic Surface Segregation", ACS Applied Materials & Interfaces, 9, 36745-36754 (2017)
そこで、本発明では、LNMO等の原料(前駆体)にポリシラザンを添加することで、前駆体の結晶周囲にSiOをコーティングすることにより、充放電性能を改善した正極材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、LNMO等の原料(前駆体)にSiOをコーティングすることで、比較的に高い充電速度において良好な放電容量を示し、サイクル特性に優れるLNMO等の正極材料を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
Liイオン含有酸化物を前駆体として用意する第1工程と、
前記前駆体にポリシラザンを添加する第2工程と、
前記前駆体と前記ポリシラザンとを0℃~50℃の温度範囲下で混合・反応させ、前記ポリシラザン中のSi成分を有したSiO層を前記Liイオン含有酸化物の結晶粒子の外周面にコーティングする第3工程と、
を含み、かつ、
前記Liイオン含有酸化物が、LiNi 0.5 Mn 1.5 、LiCoO 、又は、LiFePO の少なくとも1つであり
第2工程では、前記前駆体に対して前記ポリシラザン由来のSiO が0.1wt%~5wt%となるように、前記ポリシラザンを添加すること
を特徴とするLiイオン含有正極材の製造方法。
以上の製法で作製された本発明のLiイオン含有正極材は、中程度又は高程度の充放電速度下で良好な放電容量を示し、優れたサイクル特性を発揮する。
実施例1(SiO層被覆LNMO)の製造工程を示したフローチャートである。 実施例1及び比較例1の試料の粉末XRDパターンを示した図である。 実施例1及び比較例1の試料の結晶構造を示したSEM画像である。 実施例1及び比較例1の試料を利用して作られた電気化学セルの充放電特性(容量維持率)を示す。 実施例2(SiO層被覆LCO)の製造工程を示したフローチャートである。 実施例2及び比較例2の試料の粉末XRDパターンを示した図である。 実施例2及び比較例2の試料の結晶構造を示したSEM画像である。 実施例2及び比較例2の試料を利用して作られた電気化学セルの容量維持率を示す。 実施例3(SiO層被覆LFP)の製造工程を示したフローチャートである。 実施例3及び比較例3の試料の粉末XRDパターンを示した図である。 実施例3及び比較例3の試料の結晶構造を示したSEM画像である。 実施例3及び比較例3の試料を利用して作られた電気化学セルの容量維持率を示す。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
(Liイオン含有正極材の原料(前駆体))
本発明のLiイオン含有正極材は、Liイオン含有酸化物の結晶粒子によって構成される。ここで、本発明で定義する「Liイオン含有酸化物」とは、LiNi0.5Mn1.5(以下、LNMOとも呼ぶ。)、LiCoO(以下、LCOとも呼ぶ。)、又は、LiFePO(以下、LFPとも呼ぶ。)の少なくとも1つであることが特に好ましいが、必ずしもこれらに限定されない。Liイオン含有酸化物には、例えば、Co元素の一部をNi又は/及びMnで置換したLi(Co,Ni,Mn)Oも含まれる。
(SiO層)
また、本発明では、Liイオン含有酸化物からなる結晶粒子の外周面には、SiO層が被覆(コーティング)されていることを特徴とする。このSiO層は、ポリシラザン由来のSi成分で形成されていることが好ましい。そして、SiO層は、Liイオン含有酸化物に対して0.1wt%~10wt%で含有されていることが好ましい。
(本発明の正極材の製造方法)
本発明の正極材の製造方法は、Liイオン含有酸化物を前駆体として用意する第1工程を有する。Liイオン含有酸化物は、前述のとおり、LNMO、LCO、又は、LFPであることが好ましい。これらの前駆体は市販の製品を入手してもよいが、前駆体を本製法の前に生成しても良い。
(LNMO前駆体)
LNMO製の前駆体は、例えば、LiCO、NiO、及びMnOを固相反応により合成することが出来る。この反応の際に各原料の混合物を500℃~1,000℃の範囲で焼成することが好ましい。また、焼成時間としては、1~12時間程度であることが好ましい。ここで、LNMO前駆体は、通常、LiNi0.5Mn1.5の組成を目標に作製されるが、製造上の調合により、LiNiΧMn2-Χ(但し、0.3≦Χ≦0.7)となることがあり、NiやMnに係る組成が、0.3≦Χ≦0.7程度は変動し得る。
(LCO前駆体)
LCO製の前駆体は、例えば、LiCO、及びCoを固相反応により合成することが出来る。この反応の際に各原料の混合物を500℃~1,000℃の範囲で焼成することが好ましい。また、焼成時間としては、1~12時間程度であることが好ましい。
(LFP前駆体)
例えば、LFP製の前駆体は、LiCO、Fe(II)C・HO、及び(NHHPOを固相反応により合成することが出来る。この反応の際に各原料の混合物を300℃~1,000℃の範囲で焼成することが好ましい。また、焼成時間としては、1~36時間(より好ましくは6~12時間程度)であることが好ましい。
なお、LNMO前駆体、LCO前駆体、又はLFP前駆体は、例えば、別の安価な複数の原料を混合等して合成可能であるが、市販で入手可能なLNMO、LCO、又はLFPそのものを用意してもよい。
(ポリシラザン)
LNMO前駆体に添加するポリシラザンは、以下の化学式(1)で表される化合物である。
Figure 0007576769000001
化学式(1)中、Rは水素原子、または炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、及び1分子中に1個の炭素-炭素不飽和結合を有する炭素数2~12の1価の有機基から選ばれる基であり、同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、及び1分子中に1個の炭素-炭素不飽和結合を有する炭素数2~12の1価の有機基から選ばれる基である。aは5以上の正数であり、b、c、dはそれぞれ0または正数であり、b/(a+b+c+d)=0~0.9であり、かつ、a+b+c+d=5~22,200の正数である。
ここで、R及びRで挙げられる炭素数1~12の脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、トリフルオルプロピル基などが挙げられる。また、炭素数6~12の芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基等が挙げられる。また、炭素数1~6のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
また、1分子中に1個の炭素-炭素不飽和結合を有する炭素数2~12の1価の有機基の例としては、ビニル基、アリル基、4-ビニルブチル基、8-ビニルオクチル基などのアルケニル基、3-シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基などの脂環式不飽和炭化水素基、エチニル基、2-プロピニル基などのアルキニル基、スチリル基などの芳香族不飽和炭化水素基、アクリル基、メタクリル基などの不飽和エステル基、N-プロピルマレイミド基などの不飽和環状イミドなどが挙げられる。
以上の例の中でも合成の容易さからメチル基、フェニル基が好ましく、Rが水素原子でRを含有しない構造の無機ポリシラザンがより好ましい。
ここで、Rが水素原子でb構造を含有しないポリシラザンは、無機ポリシラザンである。これに対し、Rが水素原子以外の有機基及び/又はb構造を含んだポリシラザンは、有機ポリシラザンとして用途、目的により使い分けられる。本発明では、無機ポリシラザン、有機ポリシラザンともに使用可能であるが、無機ポリシラザンを使用した方が、SiOの形成に有利であるだけでなく、前駆体の結晶にSiOがコーティングし易いため好ましい。
上記化学式(1)において、aは5以上の正数であり、好ましくは30~220であり、b、c、dはそれぞれ0または正数であり、好ましくは、bは0~30であり、cは1~30であり、dは1~4である。また、b/(a+b+c+d)=0~0.9であり、かつ、a+b+c+d=5~22,200の正数であり、好ましくは30~300である。
本発明におけるポリシラザンは、溶液の安定性や塗布、含侵時の作業性の観点からTHF(テトラヒドロフラン)を溶離液とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量が200~1,000,000であることを特徴とし、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~20,000の範囲内である。重量平均分子量が200未満だと揮発性が高く、前駆体へのSiOのコーティング量にばらつきが出て、正極材特性の向上が不安定化するため好ましくない。また、1,000,000を超えると、有機溶剤に対して十分に溶解しないため溶液の安定性が劣るだけでなく、また前駆体へのSiOコーティング効果が充分に発揮されないため好ましくない。なお、本発明中で言及する重量平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指すこととする。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:UV検出器
カラム:(下記2種類 いずれも東ソー社製)
TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperMultiporeHZ-M(4.6mmI.D.×15cm×4)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(SiO換算量で濃度0.5質量%のTHF溶液)
(有機溶媒)
本発明のポリシラザンは、有機溶媒に溶解して使用する。有機溶媒としては、ポリシラザンを溶解する有機溶媒であれば特に限定されない。例えば、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、2,2,4-トリメチルペンタン(イソオクタン)、n-ノナン、i-ノナン、n-デカン、i-デカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン(イソドデカン)などの飽和鎖状脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p-メンタン、デカヒドロナフタレンなどの飽和環状脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼンやテトラヒドロナフタレンなどの芳香族炭化水素、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、ブトキシエチルエーテルなどのアルキルエーテル類やアニソール、ジフェニルエーテルなどのアリールエーテル類、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、カプロン酸エチルなどのエステル化合物などが例示される。
以上の例の中でも、ポリシラザンに対する溶解性の面から、芳香族炭化水素やアルキルエーテル類、飽和脂肪族炭化水素を有機溶媒とすることが好ましく、特に炭素数4~20の範囲にある飽和脂肪族炭化水素が好ましく用いられる。
ポリシラザンと有機溶媒との混合比は、質量比で0.1/99.9~50/50の範囲であり、好ましくは0.5/99.5~30/70であり、より好ましくは1/99~20/80の範囲である。この範囲内であれば、溶解性、保存安定性のみならず、上述の前駆体へのSiO層のコーティング作業が良好となるため好ましい。
(ポリシラザンの添加量)
本発明におけるポリシラザンの添加量は、前駆体の種類によって変動するものの、前駆体に対してポリシラザン由来のSiOが0.1wt%~10wt%になるように設定する。LNMO前駆体を使用した場合、好ましくは、ポリシラザン由来のSiOが1wt%~5wt%になるように設定する。また、LCO前駆体を使用した場合、好ましくは、ポリシラザン由来のSiOが1wt%~5wt%(更に好ましくは、2wt%~4wt%)になるように設定する。また、LFP前駆体を使用した場合、好ましくは、ポリシラザン由来のSiOが1wt%~5wt%になるように設定する。
(室温下でのポリシラザンと前駆体との合成)
なお、本発明では、ポリシラザンと、上述の前駆体のいずれかと、を混合・合成する際の環境温度が、室温(具体的には0℃~50℃、より好ましくは10℃~40℃、更に好ましくは10℃~30℃)の範囲であることを特徴とする。当該技術分野の従来の知見によれば、ポリシラザンと前駆体との合成には焼成工程が必要であることが一般的である。しかしながら、本発明者らは、焼成による高温環境下に置かずとも(つまり、室温環境下でも)、上記合成が充分に進むことを見出したのである。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
(LNMO前駆体の合成、ポリシラザン添加、及びSiO層コーティング)
図1に、本発明のLiイオン含有正極材(具体的には、SiO層被覆LNMO)の製造工程を示したフローチャートを示す。図1に示すように、固相反応によりLNMO前駆体を合成した。具体的には、LiCO(純度99.0%、関東化学株式会社製)、NiO(純度99.0%,富士フイルム和光純薬株式会社製)、MnO(純度99.0%,株式会社高純度化学研究所製)を化学量論比に基づいて秤量した。これらの原料に分散媒としてトルエン(純度99.5%,関東化学株式会社製)を加えて、ボールミルを用いて200rpmの速度で2時間、上記原料を混合した。得られた混合物をアルミナボートに入れ、流量50ml/minの空気中で、900℃/6時間の条件で、この混合物を焼成した後、室温まで冷却し、LNMO(前駆体)を得た。なお、得られたLNMO(前駆体)はメノウ乳鉢で粉砕した。
(ポリシラザンの合成)
純度99%以上のジクロロシラン0.19molを、窒素を同伴させて-10℃の脱水ピリジン300mlに撹拌しながら吹き込んだ。その後、純度99%以上のアンモニアを0.57mol吹き込み、生成した塩を加圧濾過により取り除くことでポリシラザンを合成した。このポリシラザンのピリジン溶液を150℃に加熱し、ピリジンを150ml溜去した。次にジブチルエーテルを300m加え、共沸蒸留によりピリジンを取り除き、溶液全体を100質量部としたときにポリシラザンが5質量部となるようにジブチルエーテルを添加してポリシラザン溶液を調製した。このポリシラザン溶液に含まれるポリシラザンの重量平均分子量は3,800であった。
(LNMO/SiO(実施例1 SiO層被覆LNMO)の作製)
上記工程で合成したLNMO(前駆体)1gに、ポリシラザンを添加して混合し、該混合物を室温(10~30℃)下で反応させることで、SiO層被覆LNMO(図1,2中では、LNMO/SiO)を作製した。詳しくは、ポリシラザン由来のSiOがLNMO(前駆体)に対しておのおの1wt%、2wt%、5wt%、10wt%となるように上記で調製したポリシラザン溶液をLNMO(前駆体)に添加し、これらをジブチルエーテル溶液中で分散させた。その後、これらの合成物を濾過、洗浄、及び乾燥し、実施例1の正極材である「LNMO/SiO」を得た。得られた試料を使用して、後述の特性を評価した。なお、参考のため、上記ポリシラザン溶液を添加しない状態(つまり、0wt%)のLMNO前駆体についても評価対象(比較例1)とした。
(粉末X線回折測定(XRD)による評価)
実施例1及び比較例1で得られた粉末試料を、粉末X線回折測定(マックサイエンス製,MX-Labo)を用いて結晶相を同定した。同定には、Inorganic Crystal Structure Database(ICSD)に収蔵されているLNMOのパターンを比較対象として用いた。
(XRDによる実施例1の評価結果)
図2に、実施例1(図中、2wt%を参照)及び比較例1(図中、0wt%を参照)の粉末試料の粉末XRDパターンを示す。ここで、図中最上段に示すICSDより引用したLNMO(♯239165)との比較により、いずれのサンプルでもLNMOが主相で得られていると判断した。
また、ポリシラザンの添加量に伴うXRDパターンの変化およびシフトは観察されなかった。この理由について、LNMOに対するSiO量はLNMOの重量に対して1~10wt%以下と少量であるため、Si由来のピークは観測されなかったと考えられる。なお、37°付近で観測される不純物ピークは、原料として用いたNiOが残存したものであると考えられる。
(走査型電子顕微鏡(SEM)による評価)
また、実施例1及び比較例1の粒子形状や粒子径の観察をするために、走査型電子顕微鏡(JSM-5310MVB,日本電子データム株式会社製)を使用した。試料台の上にカーボンシートを貼り、そこに少量の粉末試料をのせ、15kVの電圧で観察した。
(SEMによる評価結果)
図3に、実施例1及び比較例1の粉末試料の結晶構造を示したSEM画像を示す。具体的には、図3(a)に比較例1(0wt%)のSEM画像を示し、図3(b)~(d)に、実施例1(2wt%、5wt%、又は、10wt%)のSEM画像を示す。比較例1も実施例1も球状粒子構造を呈しており、粒子状態に大きな差異は確認できなかった。
(電気化学セルの作製)
次に、比較例1及び実施例1の粉末試料を利用して正極材料を作製するとともに、負極材料及び電解液も作製した。これらを組み合わせて電気化学セルを作製した。
(電気化学セル用の正極材料)
実施例1又は比較例1で得られた粉末試料、導電助剤のアセチレンブラック(デンカ株式会社製)、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF#9130,株式会社クレハ)を85:8:7の質量比になるように秤量し、軟膏壺(UG型3-52,12ml,馬野化学容器株式会社製)に加えた。そこに溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(99.0%,関東化学株式会社製)を攪拌装置(AR-100,株式会社シンキ―製)で20分間攪拌し、次いで、5分間脱泡した。その後再び1分間攪拌し、スラリー状になった試料をアルミ箔の上に塗布した。次に、真空乾燥機(AVO-200NS,アズワン株式会社製)を用いて75℃で40分間真空加熱し、真空状態のまま室温まで4時間かけて冷却した。その後、プレス器で20MPaの圧力を上記試料にかけ、130℃で5.5時間、真空加熱した後、真空状態のまま室温まで4時間かけて冷却した。
(電気化学セル用の負極材料)
負極には円形にくり抜いた金属リチウム箔を使用した。金属リチウム箔の切り抜きはアルゴンガスを充填したグローブボックス(UN650F,株式会社UNICO製)内で行った。
(電気化学セル用の電解液)
電解液には、「1mol/L ヘキサフルオロリン酸リチウムEC:DMC(1:1v/v%)溶液」(キシダ化学株式会社製,EC:炭酸エチレン、DMC:炭酸ジメチル)を用いた。この電解液はアルゴンガスを充填したグローブボックス内で取り扱った。
(電気化学セルの組み立て)
セル(HSフラットセル,宝泉株式会社製)の組み立ては、アルゴンガスを充填したグローブボックス内で行った。セルの下蓋の中に、下側から、負極材料(金属リチウム箔)、これを保護する不織布、正極材料と負極材料との間の直接的な接触を防ぐセパレーター、正極材料を保護するための不織布、正極材料の順で載置したうえで、電解液を加えた。そして、このセルの上蓋を閉じ、密閉することで、電気化学セルを組み立てた。
(電気化学セルの放電特性の評価)
上述のように組み立てたセルについて、充放電装置(HJ-101SM6,北斗電工株式会社製、PFX2011,菊水電子工業株式会社製)で充放電測定を行った。電流密度はCレートを基準とした。なお、Cレートとは、1時間で正極の理論容量を全て引き抜く電流密度を1Cとして規定し、放電時間及び充電時間の速度を表すものである。0.1C、0.5C、1C、5C、10C、最後にもう一度0.1Cで充電・放電容量を測定した。それぞれのCレートで5サイクルずつ、計30サイクル行った。測定開始前には2時間の予備放電時間を設け、0.1Cでは充電と放電の間に30min、0.5Cでは15min、1Cでは15minの休止時間を設けた。5C、10Cでは休止時間は設けなかった。
(電気化学セルの放電容量測定結果)
図4(a)に、上記方法により測定された実施例1(2wt%)及び比較例1(0wt%)を用いた電気化学セルの容量維持率の比較結果を示す。この図4(a)から、各レートにおいて、実施例1の結果が、比較例1よりも容量維持率が増加していること(特に、5Cや10Cの高レートにおいて大幅に増加していること)が判った。
図4(b)及び(c)に、SiO被覆濃度の異なる実施例1を用いた場合の5Cや10Cの高レートにおける容量維持率の変化を示したものである。これらの結果より、SiO被覆された実施例1は、比較例1よりも高い容量維持率を示すことが判った。また、ポリシラザン添加率が増加する程、容量維持率も増加する傾向が観察されたが、2~5wt%以上添加してもその増加傾向は鈍化或いはほぼ一定であるが観察された。
(LCO前駆体の合成、ポリシラザン添加、及びSiO層コーティング)
図5に、本発明のLiイオン含有正極材(具体的には、SiO層被覆LCO)の製造工程を示したフローチャートを示す。図5に示すように、固相反応によりLCO前駆体を合成した。具体的には、LiCO(純度99.0%、関東化学株式会社製)、Co(純度99.95%,関東化学株式会社製)を化学量論比に基づいて秤量し、この混合物を焼成した後、室温まで冷却し、LCO(前駆体)を得た。
その後、実施例1と同様の手順で、上記工程で合成したLCO(前駆体)1gに、ポリシラザンを添加して混合し、該混合物を室温(10~30℃)下で反応させることで、SiO層被覆LCO(図5,6中では、LCO/SiO)を作製した。詳しくは、ポリシラザン由来のSiOがLCO(前駆体)に対しておのおの1wt%、3wt%、5wt%となるように上記で調製したポリシラザン溶液をLCO(前駆体)に添加し、これらをジブチルエーテル溶液中で分散させた。その後、これらの合成物を濾過、洗浄、及び乾燥し、実施例2の正極材である「LCO/SiO」を得た。得られた実施例2の各試料を、実施例1と同様の方法で評価した。
(XRDによる実施例2の評価結果)
図6に、実施例2(図中、1wt%、3wt%、5wt%を参照)及び比較例2(図中、0wt%を参照)の粉末試料の粉末XRDパターンを示す。ここで、図中最上段に示すICSDより引用したLCO(♯172909)との比較により、いずれのサンプルでもLCOが主相で得られていると判断した。
(SEMによる実施例2の評価結果)
図7に、実施例2及び比較例2の粉末試料の結晶構造を示したSEM画像を示す。具体的には、図7(a)に比較例2(0wt%)のSEM画像を示し、図7(b)~(d)に、実施例2(1wt%、3wt%、又は、5wt%)のSEM画像を示す。比較例2も実施例2も球状粒子構造を呈しており、粒子状態に大きな差異は確認できなかった。
(電気化学セルの放電容量測定結果)
図8(a)に、上記方法により測定された実施例2(2wt%)及び比較例1(0wt%)を用いた電気化学セルの容量維持率の比較結果を示す。この図8(a)から、各レートにおいて、実施例2の結果が、比較例2よりも容量維持率が増加していること(特に、5Cや10Cの高レートにおいて大幅に増加していること)が判った。
図8(b)に、SiO被覆濃度の異なる実施例2を用いた場合の10Cの高レートにおける容量維持率の変化を示したものである。この結果より、SiO被覆された実施例2は、比較例2よりも高い容量維持率を示すことが判った。また、ポリシラザン添加率が約2~3%のときに、容量維持率が最も高くなる傾向が観察された。
(LFP前駆体の入手、ポリシラザン添加、及びSiO層コーティング)
図9に、本発明のLiイオン含有正極材(具体的には、SiO層被覆LFP)の製造工程を示したフローチャートを示す。図9に示すように、本実施例の場合、LFP(前駆体)は自前で合成せず、市販品(宝泉株式会社製)を入手した。
その後、実施例1と同様の手順で、上記のLFP(前駆体)1gに、ポリシラザンを添加して混合し、該混合物を室温(10~30℃)下で反応させることで、SiO層被覆LFP(図9,10中では、LFP/SiO)を作製した。詳しくは、ポリシラザン由来のSiOがLFP(前駆体)に対しておのおの1wt%、3wt%、5wt%となるように上記で調製したポリシラザン溶液をLFP(前駆体)に添加し、これらをジブチルエーテル溶液中で分散させた。その後、これらの合成物を濾過、洗浄、及び乾燥し、実施例3の正極材である「LFP/SiO」を得た。得られた実施例3の各試料を、実施例1と同様の方法で評価した。
(XRDによる実施例3の評価結果)
図10に、実施例3(図中、1wt%、3wt%、5wt%を参照)及び比較例3(図中、0wt%を参照)の粉末試料の粉末XRDパターンを示す。ここで、図中最上段に示すICSDより引用したLFP(♯92198)との比較により、いずれのサンプルでもLFPが主相で得られていると判断した。なお、市販の前駆体を利用したせいか、比較例3にも、実施例3にも不純物のピークが観察された。
(SEMによる実施例3の評価結果)
図11に、実施例3及び比較例3の粉末試料の結晶構造を示したSEM画像を示す。具体的には、図11(a)に比較例3(0wt%)のSEM画像を示し、図11(b)~(d)に、実施例3(1wt%、3wt%、又は、5wt%)のSEM画像を示す。比較例3も実施例3も球状粒子構造を呈しており、粒子状態に大きな差異は確認できなかった。
(電気化学セルの放電容量測定結果)
図12に、SiO被覆濃度の異なる実施例3を用いた場合の10Cの高レートにおける容量維持率の変化を示したものである。この結果より、SiO被覆された実施例3は、比較例3よりも高い容量維持率を示すことが判った。また、ポリシラザン添加率が1w%を超えた試料のいずれにおいても、高い容量維持率を示したが、3wt%の試料が最も高くなる傾向が観察された。
以上の製法で作製されたSiO層が被覆されたLiイオン含有酸化物は、高い放充電速度でも良好な放電容量を示し、優れたサイクル特性を発揮する
従って、本発明は、産業上の利用価値及び利用可能性が非常に高い。

Claims (1)

  1. Liイオン含有酸化物を前駆体として用意する第1工程と、
    前記前駆体にポリシラザンを添加する第2工程と、
    前記前駆体と前記ポリシラザンとを0℃~50℃の温度範囲下で混合・反応させ、前記ポリシラザン中のSi成分を有したSiO層を前記Liイオン含有酸化物の結晶粒子の外周面にコーティングする第3工程と、
    を含み、かつ、
    前記Liイオン含有酸化物が、LiNi 0.5 Mn 1.5 、LiCoO 、又は、LiFePO の少なくとも1つであり
    第2工程では、前記前駆体に対して前記ポリシラザン由来のSiO が0.1wt%~5wt%となるように、前記ポリシラザンを添加すること
    を特徴とするLiイオン含有正極材の製造方法。
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