以下、本発明の一実施形態に係る浴室・浴槽用椅子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
図1には、本発明の一実施形態に係る浴室・浴槽用椅子1を上から見た斜視図が示されており、図2には、図1に示される浴室・浴槽用椅子1を下から見た斜視図が示されている。
図1、2に示されるように、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1は、座部2と、背もたれ部3と、肘掛け4および脚部5とから構成されている。脚部5は、下から上方へ延びて背もたれ部3の背面を支持する一対の前脚フレーム50と、前脚フレーム5と回動自在に連結されており、下から上方へ延びて座部2の裏面を回動可能に支持する一対の後脚フレーム51とを備えている。また、一対の前脚フレーム50のそれぞれには、肘掛け4が回動自在に取り付けられている。
前脚フレーム50および後脚フレーム51は、いずれも金属製の中空パイプから形成されているが、材料はこれに限定されるものではない。前脚フレーム50の前脚部分の外周および後脚フレーム51の後脚部分の外周には、それぞれスリーブ状の前脚可動部500および後脚可動部510がスライド可能に外装されており、前脚フレーム50および後脚フレーム51の脚の長さ、別言すれば座部2の高さを調節できるように構成されている。また、後脚可動部510の先端には、床への傷付け防止や滑り防止のために樹脂製のキャップ511が装着されており、前脚可動部500には、床への傷付け防止や滑り防止の他、浴室・浴槽用椅子1の開脚および閉脚が容易になるように接地面とローラとを備えたローラ付樹脂製キャップ501が装着されている。
本実施形態の浴室・浴槽用椅子1は上記の構成を採用することにより、前脚フレーム50および後脚フレーム51を、互いに離間した開脚状態と互いに近接した閉脚状態との間で開閉することができると共に、前脚フレーム50および後脚フレーム51の動きに連動させて、座部2を略水平な展開状態と略垂直な折り畳み状態との間で回動させることができる。なお、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1は一例示に過ぎず、座部本体と、座部本体に着脱自在に取り付けられるクッションとから構成される座部を備えていれば、例えば背もたれ部を有していなくても、複数の脚部で支持される座部本体と、座部本体に着脱自在に取り付けられるクッションとを備えた浴室・浴槽用椅子等であってもよい。
図3には、図1に示される浴室・浴槽用椅子1の座部2を下から見た斜視図が示されており、図4には、図3に示される座部2のクッション6のみを下から見た斜視図が示されており、そして図5には、図3に示される座部2の座部本体20のみを上から見た斜視図が示されている。
図3~5に示されるように、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、座部2は座部本体20と、座部本体20の上面に着脱自在に取り付けられる平板状のクッション6とから構成されている。
座部本体20は、耐水性や耐薬品性などを考慮してポリエチレン樹脂から形成されている中空の部品であるが、材料はこれに限定されるものではない。座部本体20の上面は平坦な形状を有しており、その四隅には、後述するクッション6のボス部60を受け入れるための円形の開口を有する貫通穴21、別言すれば円筒形状の貫通孔21が形成されている。また、座部本体20の上面には、クッション6を取り付けた際、クッション6に設けた水抜き孔61と連通する「へ」の字形に配置された排水溝22と、その両端部には排水溝22と連通し、座部本体20を貫通する排水孔23が形成されている。また、座部本体2の後部(背もたれ部3に近い側)には、浴室・浴槽用椅子1を持ち運びする際などに、手を掛けるための略矩形状にくり抜かれた把手部24が形成されている。
本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、排水溝22は、座部本体20の中央部付近を避けるように「へ」の字に配置されているため、座部本体20の裏側の中央付近には、例えば座部2と脚部5とを固定及び解除するための固定・解除具等を取り付けることができる。
クッション6は、柔軟性や耐水性などを考慮してEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)から形成されているが、材料はこれに限定されるものではない。クッション6は平坦な板形状を有しており、その裏面の四隅には、上述した座部本体20の貫通穴21に対応して、裏面から遠方へ向けて突出したボス部60と、座部本体20の把手部24に対応する略矩形状の凹部62が形成されている(図4)。また、クッション6の後部(背もたれ部3に近い側)には、クッション6の上面に溜まった水を逃がすための水抜き孔61が形成されている。
図6(a)には、図3に示されるクッション6のボス部60を短軸Y方向から見た側面図が示されており、図6(b)には、図6(a)のボス部60を長軸X方向から見た側面図が示されている。図7(a)には、図6(a)に示されるクッション6のボス部60をC-C断面で切り取った断面図が示されており、図7(b)には、図6(a)のボス部60をD-D断面で切り取った断面図が示されている。また、図8には、図3に示される座部2をA-Aの横断面で切り取った断面図が示されており、図9には、図3の座部2をB-Bの縦断面で切り取った断面図が示されている。
図6(a)、(b)、図7(a)、(b)に示されるように、ボス部60は、横断面(図6(a)のD-D断面)が楕円形状(図7(b))であるネック部600と、ネック部600の先端に連続して形成されており、横断面(図6(a)のC-C断面)が楕円形状(図7(a))である傘部601とを備えている。
図8に示される座部2のA-A断面(図3)は、ボス部60を構成するネック部600を通る横断面が表されている。図8を参照して理解されるように、ボス部60の横断面は楕円形状であるのに対して、ボス部60と嵌合する座部本体20の貫通穴21の開口は円形である。より詳細には、ネック部600は、横断面の楕円形状において長軸Xの長さ(長径)が貫通穴21の直径と略同じ長さであり、且つ短軸Yの長さ(短径)が貫通穴21の直径よりも短い長さを有している。このため、ネック部600は、その長軸X方向において貫通穴21の内縁と接しており、その短軸Y方向において貫通穴21の内縁との間に隙間が形成される。
ネック部600に連続して形成される傘部601は、その全周においてネック部600の外周よりも外方へ向けて拡径されており、傘部601の横断面の楕円形状(図7(a))は、ネック部600の横断面の楕円形状(図7(b))と略相似形である。また、本実施形態では、傘部601の横断面の楕円形状の長軸Xaの向きおよび短軸Ybの向きは、それぞれにネック部600の横断面の楕円形状の長軸Xの向きおよび短軸Yの向きと一致している。
ただし、傘部601は、座部本体20の貫通穴21へ挿入されたボス部60が、貫通穴21から容易に抜けるのを防止するものであるので、傘部601の外径の一部が貫通穴21の直径よりも長ければ足り、傘部601の外径の全部が貫通穴21の直径よりも長くなくてはならない必要もなければ、傘部601の外周の全部がネック部600の外周よりも外方へ向けて拡径されている必要もない。また、傘部601の横断面の楕円形状の長軸Xaの向きおよび短軸Ybの向きは、必ずしもネック部600の横断面の楕円形状の長軸Xの向きおよび短軸Yの向きと一致させる必要もない。
図9に示されるように、ボス部60が挿入される座部本体20の貫通穴21は、ボス部60のネック部600の横断面の楕円形状の長軸Xの長さ(長径)と略同じ長さの直径を有し、且つネック部600を受け入れる円筒形状のネック部嵌合穴210と、ボス部60の傘部601の横断面の楕円形状の長軸Xaの長さ(長径)と略同じ長さの直径を有しており、且つ傘部601を受け入れる円筒形状の傘部嵌合穴211とを備えている。
従って、傘部601の横断面の楕円形状の長軸Xaの長さ(長径)は、ネック部600の横断面の楕円形状の長軸Xの長さ(長径)よりも長いため、傘部嵌合穴211の直径もネック部嵌合穴210の直径よりも大きくなっている。
このため、座部本体20の貫通穴21には、円筒形状のネック部嵌合穴210と円筒形状の傘部嵌合穴211との境界に段部212が形成されており、ネック部600の外周よりも外方へ向けて拡径された傘部601は前記段部212に係合するので、ボス部60は貫通穴21から容易に抜け落ちることがない。また、傘部601は、貫通穴21の傘部嵌合穴211の中へ、傘部601の端面602が座部本体20の背面25と略面一となるように収容されるので、傘部601が貫通穴21から突出することがなく安全である。
このように、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1において、座部本体20の貫通穴21は円形の開口を有する円筒形状に形成されるのに対して、貫通穴21に挿入されるボス部60は横断面が楕円形状を有するように形成される。
このため、ボス部60のネック部600の周りには、ネック部600の短軸Y方向に、貫通穴21の内縁との間に隙間が形成されるので、座部本体20に対して、クッション6が熱による膨張または経時的変化等による収縮を受けてもそれらの変形を吸収することができる。同時に、ネック部600と貫通穴21の内縁との間には接触点または接触領域が形成されるので、貫通穴21の中でのボス部60の自由な移動が規制される。
図4、8に示されるように、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、ボス部60のネック部600の横断面における楕円形状の短軸Yは、クッション6の収縮又は膨張の変位中心点Oから外方向へ放射状に延びた変位線Pと平行する方向に配置される。このため、貫通穴21の中には、ネック部600の短軸Y方向に、ボス部60の移動を許容する変位代(移動代)213が形成されるので、クッション6の変形に伴う座部本体20に対するボス部60の変位が可能になる。
一方、ボス部60のネック部600の横断面における楕円形状の長軸Xは、クッション6の収縮又は膨張の変位中心点Oから外方向へ放射状に延びた変位線Pと直交する方向に配置される。このため、貫通穴21の中には、ボス部60の自由な移動を規制する拘束代(接触代)214が形成されるので、クッション6の変形に伴う座部本体20に対するボス部60の変位が規制される。このため、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、クッション6の変位中心点Oに、中心位置固定用のボス部および該ボス部と変位不能に嵌合する中心位置固定用の貫通穴を設けなくても、座部本体20に対するクッション6のズレ等を効果的に防止することができる。
図10(a)~(e)には、本実施形態におけるクッション6のボス部60のネック部600が、座部本体20の貫通穴21の中で変位した状態を示す模式図が示されており、図11(a)~(e)には、特許文献2に記載されているような従来技術のボス部(ネック部)が長穴の嵌合穴の中で変位した状態を示す模式図が示されている。図10および図11の(a)~(e)において、「右側」は座部本体に対するクッションの変位中心点側(収縮側)であり、「左側」は座部本体およびクッションの外方向側であって、座部本体に対するクッションの膨張側である。
図10(a)には、ボス部60のネック部600が、座部本体20の貫通穴21の最も外方向側に配置されている態様が示されている。この場合、ネック部600の変位中心点O側(収縮側)には、ネック部600と貫通穴21の内縁との間に最大の変位代(収縮代)213が形成されており、ネック部600の外方向側には、ネック部600と貫通穴21の内縁との間に、曲率の相違によるネック部600の変形を伴った拘束代(接触領域)214が形成される。このため、ネック部600が変位代213へ移動することでクッション6の収縮を吸収可能にすると共に、ネック部600は外方向側で貫通穴21の内縁を押圧することで摩擦抵抗を生じて自由な移動を制限するので、クッション6が座部本体20に対して容易にズレることが防止される。
図10(b)には、ネック部600が図10(a)の位置よりも変位中心点O側であって、座部本体20の貫通穴21の中央よりも外方向側に配置されている態様が示されている。この場合、ネック部600の変位中心点O側には、ネック部600と貫通穴21の内縁との間に変位代(収縮代)213が形成され、ネック部600の外方向側には、前記変位代(収縮代)213よりも小さな変位代(膨張代)213aが形成される。また、ネック部600は、円形の貫通穴21に対して楕円形状の横断面を有しているため、ネック部600の長軸X方向には、ネック部600が僅かに変形することにより貫通穴21の内縁との間に拘束代(接触領域)214が形成される。このため、ネック部600が変位代213、213aへ移動することでクッション6の収縮および膨張を吸収可能にすると共に、ネック部600は長軸X方向で貫通穴21の内縁を押圧することで摩擦抵抗を生じて自由な移動を制限するので、クッション6が座部本体20に対して容易にズレることが防止される。
図10(c)には、ネック部600が座部本体20の貫通穴21の中央に配置されている態様が示されている。この場合、ネック部600の変位中心点O側および外方向側には、ネック部600と貫通穴21の内縁との間に変位代(収縮代)213および変位代(膨張代)213aが形成される。また、ネック部600の長軸X方向には、貫通穴21の内縁との間に拘束代(接触点)214が形成され、さらにネック部600が僅かでも変位中心点O側または外方向側へ変位すると、ネック部600は円形の貫通穴21に対して楕円形状の横断面を有しているため、図10(b)、(d)に示されるように貫通穴21の内縁との間により強力な拘束代(接触領域)214が形成される。このため、ネック部600が変位代213、213aへ移動することでクッション6の収縮および膨張を吸収可能にすると共に、ネック部600は長軸X方向で貫通穴21の内縁を押圧することで摩擦抵抗を生じて自由な移動を制限するので、クッション6が座部本体20に対して容易にズレることが防止される。
図10(d)には、ネック部600が座部本体20の貫通穴21の中央よりも変位中心点O側であって、後述する図10(e)の位置よりも外方向側に配置されている態様が示されている。この場合、ネック部600の変位中心点O側には、ネック部600と貫通穴21の内縁との間に変位代(収縮代)213が形成され、ネック部600の外方向側には、前記変位代(収縮代)213よりも大きな変位代(膨張代)213aが形成される。また、ネック部600は、円形の貫通穴21に対して楕円形状の横断面を有しているため、ネック部600の長軸X方向には、ネック部600が僅かに変形することにより貫通穴21の内縁との間に拘束代(接触領域)214が形成される。このため、ネック部600が変位代213、213aへ移動することでクッション6の収縮および膨張を吸収可能にすると共に、ネック部600は長軸X方向で貫通穴21の内縁を押圧することで摩擦抵抗を生じて自由な移動を制限するので、クッション6が座部本体20に対して容易にズレることが防止される。
図10(e)には、ネック部600が図10(d)の位置よりも変位中心点O側であって、座部本体20の貫通穴21の最も変位中心点O側に配置されている態様が示されている。この場合、ネック部600の外方向側(膨張側)には、ネック部600と貫通穴21の内縁との間に最大の変位代(膨張代)213aが形成され、ネック部600の変位中心点O側には、ネック部600と貫通穴21の内縁との間に、曲率の相違によるネック部600の変形を伴った拘束代(接触領域)214が形成される。このため、ネック部600が変位代213aへ移動することでクッション6の膨張を吸収可能にすると共に、ネック部600は変位中心点O側で貫通穴21の内縁を押圧することで摩擦抵抗を生じて自由な移動を制限するので、クッション6が座部本体20に対して容易にズレることが防止される。
なお、図8に示される本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、ボス部60のネック部600は、図10(a)に示されるように座部本体20の貫通穴21の最も外方向側に配置されている。ただし、クッション6が変形する前のネック部600と貫通穴21との相対的な位置(初期状態の位置)は、図10(a)に示される位置に限定されるものではなく、浴室・浴槽用椅子1の使用環境に応じて、図10(a)~(e)に示されるネック部600と貫通穴21との相対的な位置の中から、初期状態の位置として適宜選択することができる。
以上のように、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、クッション6のボス部60(ネック部600)が座部本体20の貫通穴21内の図10(a)~(e)のどの位置に配置されても、ネック部600の周辺には、クッション6の変位方向であって、ネック部600の横断面の楕円形状の短軸Y方向に変位代213、213aが形成されるので、クッション6が座部本体20に対して収縮又は膨張してもその変位を吸収することができる。
一方、ボス部60(ネック部600)が貫通穴21内の図10(a)~(e)のどの位置に配置されても、ネック部600の横断面形状(楕円形)と貫通穴21の平面形状(円形)とが異なることに起因して、ネック部600は常に貫通穴21の内縁を押圧することで適度な摩擦抵抗力を発生させ、クッション6が座部本体20に対して容易にズレることを防止する。このため、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、座部本体20に対するクッション6のズレを防止する目的で、クッション6の変位中心点Oに、中心位置固定用のボス部および該ボス部と変位不能に嵌合する中心位置固定用の貫通穴を設ける必要がない。
また、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、ボス部60のネック部600の長軸Xの長さ(長径)は貫通穴21の直径と略同じであるが、ネック部600の外周は貫通穴21の内縁と離間せず、少なくとも接するように配置される。このため、ネック部600は、貫通穴21の中で変位した時、その変位量に関係して、貫通穴21の内縁との接触長および接触位置、それに伴う摩擦抵抗を連続的に変化させるという特徴を有している。
すなわち、ネック部600の短軸Y側(変位中心点O側または外方向側)の曲率半径は貫通穴21の曲率半径よりも大きいので、ネック部600が貫通穴21の中央から偏位した時、ネック部600の外周は、その変位量に関係して貫通穴21と同じ曲率半径となるように貫通穴21の内縁によって変形される。その結果、ネック部600の外周は、貫通穴21の内縁をその弾性復元力により押圧し、内縁との間で適度な摩擦抵抗力を発生させる。
図11には、従来技術の例示として、座部本体に対するクッションの収縮又は膨張を吸収可能にしたボス部60b(ネック部600b)と該ボス部60bと嵌合する嵌合穴26が示されている。この例ではボス部60bは円柱形状を有しており、ボス部60bのネック部600bの横断面は円形である。また、ボス部60bと嵌合する嵌合穴26は、クッションの収縮または膨張の変位方向に長く延びた長穴であり、嵌合穴26の幅はネック部600bの直径と略同じ長さであって一定である。さらに、図11(a)~(e)は、ボス部60b(ネック部600b)と嵌合穴26との相対的な位置関係を模式的に示しており、それぞれの位置関係は、上述した図10(a)~(e)に示される位置関係に対応している。
図11(a)に示されるように、従来技術のクッションのボス部60b(ネック部600b)が座部本体の嵌合穴26の最も外方向側に配置される場合、ネック部600bと嵌合穴26の端部の曲率が略同じであることから、ネック部600bは嵌合穴26の内縁に当接するのみであり、特に変形等を伴った摩擦力を発生させることがなく、拘束を受けることがない。また、図11(e)に示されるように、ボス部60b(ネック部600b)が嵌合穴26の最も変位中心点側に配置される場合も図11(a)の場合と同様に、ネック部600bと嵌合穴26の端部の曲率が略同じであることから、ネック部600bは嵌合穴26の内縁に当接するのみであり、特に変形等を伴った変形等を伴った摩擦力を発生させることがなく、拘束を受けることがない。
さらに、図11(b)~(d)に示されるように、従来技術のクッションのボス部60b(ネック部600b)が嵌合穴の最も外方向側の位置(図11(a))と嵌合穴26の最も変位中心点側の位置(図11(e))との間に配置される場合も、円形の横断面を有するネック部600bは嵌合穴26の直線状の内縁と点260で接するのみであり、特に変形等を伴った拘束を受けることがない。
このため、ボス部60bを円柱形状とし、ボス部60bと嵌合する嵌合穴26を変位方向に長く延びた長穴とした従来技術の椅子の場合、ネック部600bと嵌合穴26の縁部との間に形成された変位代(移動代)261、261aにより座部本体に対するクッションの変位を吸収することができるが、個々のボス部60b(ネック部600b)は、クッションの変位に伴って嵌合穴26の内縁を押圧することで摩擦抵抗力を発生させることができず、長穴形状の嵌合穴26の中に配置されるのみで適度に拘束する(自由な移動を規制する)ことができないという問題があった。
このため、従来技術の椅子では、例えば使用者が椅子に着座する際、クッションへ横方向に力が加わると、クッションが座部本体上で横滑りを起こしてしまうという問題があり、さらに、クッションが座部本体から容易にズレないようにするためには、座部本体上のクッションが収縮する中心部に、ボス部60bと変位不能に嵌合する略同径・同形状の円形の嵌込穴を設けなければならないという問題があった。
図12には、図1に示される浴室・浴槽用椅子1の背もたれ部3を背面から見た分解斜視図が示されている。
本実施形態の浴室・浴槽用椅子1において、上述した座部本体20およびクッション6の取付構造60、21は、比較的硬質な本体部と、該本体部に対して変形、変位し易い柔軟なクッションを有する部品に広く適用することができ、例えば浴室・浴槽用椅子1が背もたれ部3を有する場合、該背もたれ部3の背もたれ本体30およびクッション6aの取付構造60a、31に適用することもできる。
図12に示されるように、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1では、背もたれ部3は背もたれ本体30と、背もたれ本体30の表面に着脱自在に取り付けられる平板状のクッション6aとから構成されている。
背もたれ本体30は、座部本体20と同様に、耐水性や耐薬品性などを考慮してポリエチレン樹脂から形成されている中空の部品であるが、材料はこれに限定されるものではない。背もたれ本体30は小さく湾曲した滑らかな表面を有しており、その両端部には、クッション6aのボス部60aを受け入れるための円形の背もたれ貫通穴31が形成されている。
クッション6aは、座部2のクッション6と同様に、柔軟性や耐水性などを考慮してEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)から形成されているが、材料はこれに限定されるものではない。クッション6aは平坦な板形状を有しており、その裏面の両端部には、上述した背もたれ本体30の貫通穴31に対応して、裏面から遠方へ向けて突出したボス部60aが形成されている。
その他、本実施形態の浴室・浴槽用椅子1において、クッション6aに設けられたネック部600aと傘部601aとからなるボス部60a、および背もたれ本体30に設けられたボス部60aと嵌合する貫通穴31は、上述した座部2のクッション6に設けられたネック部600と傘部601とからなるボス部60、および座部本体20に設けられたボス部60と嵌合する貫通穴21と同じ構成を有している。
従って、ボス部60aは、横断面において長軸の長さ(長径)が貫通穴31の直径と略同じであり、且つ短軸の長さ(短径)が貫通穴31の直径よりも短い楕円形状のネック部600aを有しており、さらに、ネック部600aの短軸は、クッション6aの変位中心点Oaから外方向へ放射状に延びた変位線Pa上に配置されている。
このため、背もたれ本体30およびクッション6aの取付構造60a、31も、座部本体20およびクッション6の取付構造60、21と同様の効果を発揮することができ、クッション6aのボス部60a(ネック部600a)が背もたれ本体30の貫通穴31内のどの位置に配置されていても、クッション6aの背もたれ本体30に対する変位を吸収可能にすると共に、ネック部600aが貫通穴31の内縁を押圧することで適度な摩擦抵抗力を発生させ、クッション6aが背もたれ本体30に対して容易にズレることを防止することができる。
また、背もたれ3の場合も、背もたれ本体30に対するクッション6aのズレを防止する目的で、クッション6aの変位中心点Oaに、中心位置固定用のボス部および該ボス部と変位不能に嵌合する中心位置固定用の貫通穴を設ける必要がない。