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JP7590705B2 - トンネル磁気抵抗センサ - Google Patents
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本発明は、トンネル磁気抵抗(TMR)センサに関する。
近年、医療や非破壊検査、電気自動車といった、高感度、低消費電力、可搬性が不可欠な分野において、トンネル磁気抵抗(TMR)素子を含む磁気センサを有する装置が利用されている(例えば、特許文献1参照)。この磁気測定装置では、1/fノイズなどのノイズを低減するために、磁気センサが、複数のトンネル磁気抵抗素子を格子配列したトンネル磁気抵抗素子アレイで構成されている。
なお、最近、スピンホールナノ発振器における相互デバイス同期やその利点についての研究が行われている(例えば、非特許文献1参照)。また、トンネル磁気抵抗素子では、1/fノイズが低周波数帯で最も支配的なノイズであり、その磁気揺らぎは、固定層と自由層との界面における磁化配向の切替状態に関連していることがわかってきた(例えば、非特許文献2参照)。
国際公開WO2012/032962号
Awad, A. A. et al.,"Long-range mutual synchronization of spin Hall nano-oscillators". Nat. Phys., 2016, 13, p.292-299 Z. Q. Lei, et al., "Review of Noise Sources in Magnetic Tunnel Junction Sensors", IEEE Transactions on Magnetics, March 2011, Volume 47, Issue 3, p.602-612
特許文献1に記載のような磁気測定装置では、磁場が正から負および負から正に変化する際にトンネル磁気抵抗素子のTMR応答が異なる、いわゆるヒステリシスを有しているため、測定誤差が発生し、感度が低下してしまうという課題があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、ヒステリシスによる測定誤差を低減可能であり、感度を高めることができるトンネル磁気抵抗センサを提供することを目的とする。
本発明者等は、非特許文献2に記載されたトンネル磁気抵抗素子の磁気揺らぎが、内部磁化の方向に引き起こされるものであることや、トンネル磁気抵抗素子の自由層が磁化の方向を変えているときに、常に出力密度の最大値が現れることから、トンネル磁気抵抗素子アレイ中の各トンネル磁気抵抗素子の相互同期がノイズを低減するのではないかと考え、本発明に至った。
すなわち、上記目的を達成するために、本発明に係るトンネル磁気抵抗センサは、磁化方向が固定されている固定層と、磁化方向が変化可能な自由層と、前記固定層と前記自由層との間に配置されたトンネルバリア層と、前記固定層の前記トンネルバリア層とは反対側に配置された第1の電極層と、前記自由層の前記トンネルバリア層とは反対側に配置された第2の電極層とを有するトンネル磁気抵抗素子を複数有し、各トンネル磁気抵抗素子は、一列または格子配列に並んで配置され、隣り合う2つのトンネル磁気抵抗素子間で、前記自由層と前記第2の電極層とを共有し、それぞれ独立した島を形成し、隣り合う前記島の間で、隣り合ったトンネル磁気抵抗素子が前記第1の電極層を共有して、トンネル磁気抵抗素子アレイを構成しており、各トンネル磁気抵抗素子のうち、前記第1の電極層を共有して隣り合うトンネル磁気抵抗素子の前記自由層同士の間隔が、0.5μm以下であることを特徴とする。
本発明に係るトンネル磁気抵抗センサは、トンネル磁気抵抗素子アレイの各トンネル磁気抵抗素子のうち、第1の電極層を共有して隣り合うトンネル磁気抵抗素子、すなわち自由層を共有せずに隣り合うトンネル磁気抵抗素子の、自由層同士の間隔が0.5μm以下と近接しているため、それらのトンネル磁気抵抗素子が相互同期して、ヒステリシスを小さくすることができる。これにより、ヒステリシスによる測定誤差を低減することができ、感度を高めることができる。
本発明に係るトンネル磁気抵抗センサは、各トンネル磁気抵抗素子のうち、前記第1の電極層を共有して隣り合うトンネル磁気抵抗素子の前記自由層同士の間隔が、0.35μm以下であることが好ましい。この場合、隣り合うトンネル磁気抵抗素子の自由層を、より近接させることにより、さらに測定誤差を低減して、感度を高めることができる。隣り合うトンネル磁気抵抗素子の自由層同士の間隔は、製造方法により大きく変化するが、例えば、リソグラフィとイオンミリングとを用いた場合には、0.2μm~0.35μm程度まで狭くすることができる。
本発明に係るトンネル磁気抵抗センサで、前記第1の電極層は上部電極であり、前記第2の電極層は下部電極であることが好ましい。この場合、製造時に、下部電極の第2の電極層から積層していくことにより、隣り合うトンネル磁気抵抗素子の自由層同士の間隔を、所望の間隔で形成しやすい。
本発明によれば、ヒステリシスによる測定誤差を低減可能であり、感度を高めることができるトンネル磁気抵抗センサを提供することができる。
本発明の実施の形態のトンネル磁気抵抗センサを示す側面図である。 図1に示すトンネル磁気抵抗センサのトンネル磁気抵抗素子の層構成を示す正面図である。 図1に示すトンネル磁気抵抗センサの、トンネル磁気抵抗素子の自由層と下部電極層とを有する独立した島の分布を示す(a)平面図、(b) (a)中のA-A’線断面図である。 本発明の実施の形態のトンネル磁気抵抗センサの、独立した島を製造した状態を示す平面視での光学顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態のトンネル磁気抵抗センサ(島の間隔が0.3μm)、および、島の間隔が5μmの比較例のトンネル磁気抵抗センサの、(a)磁気抵抗曲線を示すグラフ、(b) (a)中の磁場がゼロ付近を拡大したグラフである。 本発明の実施の形態のトンネル磁気抵抗センサの、島の間隔(Distance Between Free Islands)に対する、ゼロ磁場でのTMR比のズレの量(Normalized TMR Difference at zero field;Hc)およびTMR感度(Normalized TMR Sensitivity;TMRS)の関係を示すグラフである。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図6は、本発明の実施の形態のトンネル磁気抵抗センサを示している。
図1に示すように、トンネル磁気抵抗センサ10は、トンネル磁気抵抗素子11を複数有しており、各トンネル磁気抵抗素子11が一列に並んで配置されている。
図2に示すように、各トンネル磁気抵抗素子11は、基板12と、基板12の上に順番に積層された下引き層13と下部電極層14と自由層15とトンネルバリア層16と固定層17と固定化促進層18と上部電極層19とを有している。
基板12は、非磁性であり、各層の成膜や熱処理等に耐えることができるものであれば、いかなるものから成っていてもよく、例えば、SiまたはSiOから成っている。下引き層13は、基板12の表面に、その表面の粗さを整えるために設けられている。下引き層13は、基板12の表面の粗さを整えることができるものであれば、いかなるものから成っていてもよい。下引き層13は、2nm~10nm程度の層厚を有することが好ましい。
下部電極層14は、下引き層13の基板12とは反対側の表面に接するよう設けられている。下部電極層14は、導電性の材料であれば、いかなるものから成っていてもよく、複数の金属材料を積層した構造であってもよい。下部電極層14は、2nm~20nm程度の層厚を有することが好ましい。なお、下部電極層14が、第2の電極層を成している。
自由層15は、下部電極層14の下引き層13とは反対側の表面に設けられている。自由層15は、下部電極層14の上に、第1の強磁性層21と第1の非磁性層22と第2の強磁性層23とを、この順番で積層した構造を有している。第1の強磁性層21は、外部からの磁束の影響を受けて磁化方向が変化可能になっている。第1の強磁性層21は、軟磁性材料であり、例えば、NiFe、CoFeSiB等から成り、30nm~200nm程度の層厚を有することが好ましい。
第1の非磁性層22は、第1の強磁性層21と第2の強磁性層23とを磁気的に結合すると共に、第1の強磁性層21を第2の強磁性層23の結晶構造から切り離すために設けられている。第1の非磁性層22は、例えば、RuまたはTaから成り、0.2~1nm程度の層厚を有することが好ましい。第2の強磁性層23は、外部からの磁束の影響を受けて磁化方向が変化可能になっている。第2の強磁性層23は、例えば、CoFeBから成り、1.4nm~5.0nm程度の層厚を有することが好ましい。
トンネルバリア層16は、自由層15の下部電極層14とは反対側の表面に設けられている。トンネルバリア層16は、絶縁材料から成っており、例えば、MgO、Mg-Al-O、AlOx等から成っている。トンネルバリア層16は、例えば、1nm~10nm程度の層厚を有することが好ましい。
固定層17は、トンネルバリア層16の自由層15とは反対側の表面に設けられており、自由層15との間にトンネルバリア層16を挟んでいる。固定層17は、トンネルバリア層16の上に、第3の強磁性層24と第2の非磁性層25と第4の強磁性層26とを、この順番で積層した構造を有している。第3の強磁性層24は、磁化方向が固定されている。第3の強磁性層24は、例えば、CoFeBから成り、1.4nm~10nm程度の層厚を有することが好ましい。
第2の非磁性層25は、第3の強磁性層24と第4の強磁性層26とを磁気的に結合すると共に、第3の強磁性層24を第4の強磁性層26の結晶構造から切り離すために設けられている。第2の非磁性層25は、例えば、RuまたはTaから成り、0.2~1nm程度の層厚を有することが好ましい。第4の強磁性層26は、磁化方向が固定されている。第4の強磁性層26は、例えば、CoFeから成り、1nm~10nm程度の層厚を有することが好ましい。
固定化促進層18は、第4の強磁性層26の固定化を促進するために、固定層17のトンネルバリア層16とは反対側の表面に設けられている。固定化促進層18は、例えば、IrMn、PtMnなどの反強磁性体から成り、5nm~20nm程度の層厚を有している。
上部電極層19は、固定化促進層18の固定層17とは反対側の表面に設けられている。上部電極層19は、導電性の材料であれば、いかなるものから成っていてもよく、複数の金属材料を積層した構造であってもよい。上部電極層19は、2nm~20nm程度の層厚を有することが好ましい。なお、上部電極層19が、第1の電極層を成している。
図2に示す具体的な一例では、下引き層13は、Taから成り、層厚が5nmである。下部電極層14は、Ta/Ruから成り、Ruの層厚が10nm、Taの層厚が5nmである。自由層15の第1の強磁性層21は、CoFeSiBから成り、層厚が100nmである。自由層15の第1の非磁性層22は、Ruから成り、層厚が0.8nmである。自由層15の第2の強磁性層23は、CoFeBから成り、層厚が3nmである。トンネルバリア層16は、MgOから成り、層厚が1.6nmである。固定層17の第3の強磁性層24は、CoFeBから成り、層厚が3nmである。固定層17の第2の非磁性層25は、Ruから成り、層厚が0.85nmである。固定層17の第4の強磁性層26は、CoFeから成り、層厚が5nmである。固定化促進層18は、IrMnから成り、層厚が6nmである。上部電極層19は、Ru/Taから成り、Taの層厚が5nm、Ruの層厚が8nmである。
トンネル磁気抵抗素子11は、物理蒸着法であるスパッタリングや分子線エピタキシャル成長法(MBE法)などを用いて、基板12の上に各層を成膜することにより、製造することができる。また、トンネル磁気抵抗素子11は、所望の結晶構造を得るために、各層の成膜後に熱処理を行ってもよい。その熱処理の温度は、325℃~450℃であることが好ましい。
図1に示すように、トンネル磁気抵抗素子11は、隣り合う2つのトンネル磁気抵抗素子11を組として、その2つのトンネル磁気抵抗素子11の間で自由層15と下部電極層14とを共有し、それぞれ独立した島31を形成している。また、トンネル磁気抵抗素子11は、隣り合う島31の間で、隣り合ったトンネル磁気抵抗素子11が上部電極層19を共有している。これにより、各トンネル磁気抵抗素子11は、トンネル磁気抵抗素子アレイを構成している。
図1および図3(a)に示すように、トンネル磁気抵抗センサ10は、隣り合う島31の間隔、すなわち隣り合う島31の自由層15同士の間隔が、0.5μm以下になっている。なお、隣り合う島31の間隔は、0.1μm~0.35μmであることが特に好ましい。図3(a)に示す具体的な一例では、トンネル磁気抵抗センサ10は、複数のトンネル磁気抵抗素子アレイが、所定の間隔をあけて、平行に並んで配置されている。図中のaが隣り合う島31の間隔を表し、図中のbが複数のトンネル磁気抵抗素子アレイの間隔を表している。また、外部磁場がないとき、固定層17の磁化方向(図中のPinの矢印方向)が磁化困難軸に対して平行を成し、自由層15の磁化方向(図中のFreeの矢印方向)が磁化容易軸に対して平行を成している。また、図3(b)に示すように、島31の膜圧方向の高さをhとすると、隣り合う島31の間隔(溝の太さ)aと膜厚hとの比を、Q(=h/a)で表すことができる。
トンネル磁気抵抗センサ10は、トンネル磁気抵抗素子アレイの各トンネル磁気抵抗素子11のうち、隣り合うトンネル磁気抵抗素子11が自由層15と下部電極層14とを共有する島31の間隔が、0.5μm以下と近接しているため、それらのトンネル磁気抵抗素子11が相互同期して、ヒステリシスを小さくすることができる。これにより、ヒステリシスによる測定誤差を低減することができ、感度を高めることができる。
マグネトロンスパッタリングを用いて、超高真空チャンバー内で、基板12の上にトンネル磁気抵抗素子11の各層を成膜し、図1に示すトンネル磁気抵抗センサ10を製造した。製造時には、自由層15を成膜後、リソグラフィとイオンミリングとを用いて、自由層15から基板12の表面まで溝を形成し、独立した島31を形成した。隣り合う島31の間隔(図3(a)中のa)、すなわち形成した溝の幅は、0.3μmとした。島31を形成してレジストを除去した後の、平面視での光学顕微鏡写真を、図4に示す。図4中の縦方向の細い溝が、図3(a)中のaの溝である。また、図3(b)に示すQ(=h/a)は、1に近い値であった。
トンネル磁気抵抗素子11の各層を成膜後、磁場を印加した状態で、350℃で熱処理を行った。こうして、図1に示すトンネル磁気抵抗センサ10を製造した。また、比較例として、島31の間隔を5μmとしたトンネル磁気抵抗センサ10を、同じ方法で製造した。
島31の間隔が0.3μmのトンネル磁気抵抗センサ10、および、島31の間隔が5μmの比較例のトンネル磁気抵抗センサについて、4端子法により磁気抵抗曲線の測定を行った。その測定結果を、図5(a)に示す。また、図5(a)中の磁場がゼロ付近を拡大したものを、図5(b)に示す。図5(a)および(b)に示すように、島31の間隔が0.3μmのトンネル磁気抵抗センサ10は、島31の間隔が5μmの比較例のものと比べて、磁場が正から負になるときの曲線と、負から正になるときの曲線とのズレが小さく、ヒステリシスが小さくなっていることが確認された。これは、独立した島31をより近接させることにより、隣り合う島31のトンネル磁気抵抗素子11が、より強く相互同期するためであると考えられる。
図5に基づいて、島31の間隔(Distance Between Free Islands)に対する、ゼロ磁場でのTMR比のズレの量(Normalized TMR Difference at zero field;Hc)およびTMR感度(Normalized TMR Sensitivity;TMRS)の関係を求め、図6に示す。図6に示すように、島31の間隔が小さくなるほど、TMR比のズレが小さくなり、ヒステリシスが小さくなることが確認された。また、これにより、測定誤差が小さくなるため、TMR感度が高くなることが確認された。
10 トンネル磁気抵抗センサ
11 トンネル磁気抵抗素子
12 基板
13 下引き層
14 下部電極層
15 自由層
21 第1の強磁性層
22 第1の非磁性層
23 第2の強磁性層
16 トンネルバリア層
17 固定層
24 第3の強磁性層
25 第2の非磁性層
26 第4の強磁性層
18 固定化促進層
19 上部電極層
31 島

Claims (3)

  1. 磁化方向が固定されている固定層と、磁化方向が変化可能な自由層と、前記固定層と前記自由層との間に配置されたトンネルバリア層と、前記固定層の前記トンネルバリア層とは反対側に配置された第1の電極層と、前記自由層の前記トンネルバリア層とは反対側に配置された第2の電極層とを有するトンネル磁気抵抗素子を複数有し、
    各トンネル磁気抵抗素子は、一列または格子配列に並んで配置され、隣り合う2つのトンネル磁気抵抗素子間で、前記自由層と前記第2の電極層とを共有し、それぞれ独立した島を形成し、隣り合う前記島の間で、隣り合ったトンネル磁気抵抗素子が前記第1の電極層を共有して、トンネル磁気抵抗素子アレイを構成しており、
    各トンネル磁気抵抗素子のうち、前記第1の電極層を共有して隣り合うトンネル磁気抵抗素子の前記自由層同士の間隔が、0.5μm以下であることを
    特徴とするトンネル磁気抵抗センサ。
  2. 各トンネル磁気抵抗素子のうち、前記第1の電極層を共有して隣り合うトンネル磁気抵抗素子の前記自由層同士の間隔が、0.35μm以下であることを特徴とする請求項1記載のトンネル磁気抵抗センサ。
  3. 前記第1の電極層は上部電極であり、前記第2の電極層は下部電極であることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル磁気抵抗センサ。
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