JP7602382B2 - 耐火構造材及び赤熱抑制方法 - Google Patents
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Description
特許文献1及び2においては、角形鋼管を用いた場合に1時間耐火性能を実現することについて何ら検討されておらず、耐火性能に改善の余地があった。
本発明の耐火構造材の好ましい一実施形態である耐火構造材1Aを図1に示す。図1には、耐火構造材1Aの軸方向に直交する断面が模式的に示されている。本実施形態の耐火構造材1Aは、建築物の梁や柱として使用される構造用の角材である。耐火構造材1Aは、図1に示すように、木製又は鋼製の荷重支持部11aと、耐火被覆層12aと、焼失性被覆層13aとを備える。
耐火構造材1Aが火炎にさらされると、まず、焼失性被覆層13aでは主に熱分解反応が起こり、焼失性被覆層13aの炭化が起こる(第1段階)。第1段階において、耐火被覆層12aでは、その温度が上昇する。そして、焼失性被覆層13aの熱分解反応が終了し、該焼失性被覆層13aの酸化反応が主として起こり、該焼失性被覆層13aが灰となり焼失し始める(第2段階)。第2段階において、耐火被覆層12aでは、主に熱分解反応が起こり、耐火被覆層12aの炭化が起こる。そして、焼失性被覆層13aが完全に焼失する(第3段階)。第4段階において、耐火被覆層12aでは、熱分解反応とともに酸化反応が起こる。そして、耐火被覆層12aの熱分解反応が終了し、該耐火被覆層12aの酸化反応が主として起こるようになる(第4段階)。その後、耐火被覆層12aの酸化反応が終了し、耐火構造材1Aが燃え止まる(第5段階)。
このように、本実施形態の耐火構造材1Aにおいては、燃焼開始後しばらくしてから、耐火被覆層12aの熱分解反応が起きる。したがって、燃焼開始後しばらくの間、耐火被覆層12aの表面を平滑な状態に保つことができる。また、耐火構造材1Aが燃焼している時間のうち、耐火被覆層12aの熱分解反応や酸化反応が起こっている時間を短くすることもできる。これらのことに起因して、本実施形態の耐火構造材1Aは、耐火被覆層12aに亀裂等が生じにくく、赤熱し続けることを防ぐことができる。
基準(1):加熱終了直後において、耐火構造材1Aの方が、比較用構造材よりも質量減少速度が大きい。
基準(2):加熱終了後180分以内に、耐火構造材1Aの方が、比較用構造材よりも質量減少速度が小さくなる。
耐火構造材1Aが基準(1)を満たすことは、火炎に晒らされたときに焼失性被覆層13aが一層焼失しやすいことを意味すると考えられる。また耐火構造材1Aが基準(2)を満たすことは、焼失性被覆層13aが焼失した後に、耐火被覆層12aの熱分解反応や酸化反応が、より早い段階で落ち着くことを意味すると考えられる。したがって、基準(1)及び(2)を満たす耐火構造材1Aは耐火被覆層12aの赤熱を一層抑制することができる。
<質量減少速度の測定方法>
まず、耐火構造材1A及び比較用構造材を対象として、ISO834-1に準拠した標準加熱による60分間の燃焼試験を行う。その際、耐火構造材の質量変化を計測する。
そして、加熱開始時から、T分後の時間における構造材の質量をWとし、時間Tから1分後の時間TΔにおける構造材の質量をWΔとする。そして、下記式により質量減少速度を算出する。
質量減少速度(kg/min)=(W-WΔ)/(TΔ-T)
加熱終了直後の質量減少速度を算出する場合、Tを60(分)とすればよい。
荷重支持部11aは上述のように、木製又は鋼製である。荷重支持部11aが木製である場合、荷重支持部11aとしては、集成材、製材、直交集成板(CLT)、単板積層材(LVL)及び平行ストランド材(PSL)等を用いることができる。荷重支持部11aが木製である場合、荷重支持部11aは、一方向と直交する方向に複数本のラミナを積層接着した積層体を、該一方向に並べて配して横断面形状を四角形状としたものであってもよい。
荷重支持部11aが鋼製である場合、荷重支持部11aとしては、角形鋼管、H型鋼、角鋼、平鋼及び溝形鋼等を用いることができる。また、これら以外の形状のものであっても、耐火被覆層12aを周囲に構成できるものは、荷重支持部11aとして用いることができる。
図1に示す耐火構造材1Aと同様の構成を有する耐火構造材を製造した。具体的には、木製の荷重支持部を有する耐火構造材を製造した。耐火構造材は、横断面の寸法が360mm×360mmであり、軸方向の長さが3500mmである。荷重支持部の横断面の寸法は180mm×180mmであり、耐火被覆層の厚みは75mmであり、燃焼性被覆層の厚みは15mmである。
荷重支持部及び耐火被覆層としては、カラマツ(密度:0.50g/cm3、含水率:12.3%)の集成材を用いた。燃焼性被覆層としては、スギ(密度:0.40g/cm3、含水率:11.22%)の集成材を用いた。耐火構造材の製造に用いる接着剤としては、レゾルシノール・フェノール系樹脂接着剤を用いた。
図1に示す耐火構造材1Aと同様の構成を有する耐火構造材を製造した。具体的には、荷重支持部として角形鋼管を有する耐火構造材を製造した。耐火構造材は、横断面の寸法が385mm×385mmであり、軸方向の長さが3300mmである。荷重支持部である角形鋼管は、横断面の寸法が200mm×200mmであり、厚みが9mmである。耐火被覆層の厚みは75mmであり、燃焼性被覆層の厚みは15mmである。実施例2においては、荷重支持部と耐火被覆層との間に厚み2.5mmのスペーサーを配置した。スペーサーは、荷重支持部の軸方向に沿う4側面それぞれに配置した。
角形鋼管としては、JIS G 3466に規定されるSTKR400を用いた。スペーサーとしては、スギからなる合板を用いた。耐火被覆層としては、カラマツ(密度:0.49g/cm3、含水率:12.2%)の集成材を用いた。燃焼性被覆層としては、スギ(密度:0.36g/cm3、含水率:10.0%)の集成材を用いた。
以下の点以外は、実施例1と同様にして耐火構造材を製造した。耐火被覆層の厚みを90mmとし、焼失性被覆層を設けなかった。カラマツは、密度が0.53g/cm3±10%、含水率が8~10%であった。また、接着剤として、フェール・レゾルシノール共縮合樹脂(PRF)系樹脂接着剤を用いた。
(燃焼試験)
実施例1、2及び比較例1の耐火構造材を、直立状態として試験炉内に配置し、4側面のそれぞれに対して、通常の火災を想定したISO834-1標準加熱により1時間加熱を行い、加熱終了後、実施例1及び比較例1は8時間、実施例2は11時間の炉内放冷を行った。その際、図2~図4に黒点で示す各位置における温度変化を計測し、各位置における温度の経時的変化を記録した。以下、図2~図4に黒点で示す各位置をそれぞれ、図2~図4に示す番号を用いて、位置1、位置2のように記載する。各位置における温度変化を計測した結果をそれぞれ、図5~図7に示す。また、実施例1、2及び比較例1の加熱面の状態を目視により確認した。実施例1、2及び比較例1の耐火構造材の燃焼試験後の状態をそれぞれ、図8~図10に示す。
また、実施例1の耐火構造材は、加熱終了直後からしばらくの間、表面のスギ板の燃焼が続いたが、有炎燃焼が炉内温度に大きく影響を与えることはなかった。また、火炎がおさまるにつれて、炉内温度も下降する様子が観察された。また、加熱中に燃え切らないスギ板は、カラマツの表層にくっついた状態で赤熱燃焼が続いたものの、体積の減少と炭化に伴い、焼失し灰になる様子や、小さな炭及び灰の状態でぽろぽろと落ちていく様子が確認された。また、スギとカラマツとはレゾルシノール系樹脂接着剤で二次接着したため、スギが簡単に落ちることはなかった。赤熱したスギが炉床に落下することもあったが、落下したスギが長時間燃焼することはなかった。スギが燃え尽きたあとに、徐々にカラマツの炭化層が露出していった。実施例1においては、カラマツの炭化層の表層は、比較例1に比して深く炭化しきった堅固な炭の状態でなく、比較的浅く炭化している状態で、表層の赤熱部分が細かくほろほろと落ちていく様子が観察された。
また、実施例2の耐火構造材は、燃焼試験開始後12時間経過した時点で、炉内温度及び構造材の内部温度ともに、十分に下降傾向に転じていた。また、実施例2の耐火構造材の表層には、大きな亀裂等が生じていなかった。また表層には、構造材の脱炉時点で、わずかに赤熱が残っていたが、再燃するほどのものでもなく、数時間後に焼失する程度のものであった。
実施例1、2及び比較例1の結果から、本発明によれば、耐火構造材の赤熱を抑制することができることが分かる。
図1に示す耐火構造材1Aと同様の構成を有する耐火構造材を製造した。具体的には、木製の荷重支持部を有する耐火構造材を製造した。耐火構造材は、横断面の寸法が330mm×330mmであり、軸方向の長さが1600mmである。荷重支持部の横断面の寸法は180mm×180mmであり、耐火被覆層の厚みは60mmであり、燃焼性被覆層の厚みは15mmである。
荷重支持部及び耐火被覆層としては、カラマツ(密度:0.49g/cm3、含水率:9.5%)の集成材を用いた。燃焼性被覆層としては、スギ(密度:0.33g/cm3、含水率:10.9%)の集成材を用いた。
以下の点以外は、実施例3と同様にして耐火構造材を製造した。耐火被覆層の厚みを75mmとし、焼失性被覆層を設けなかった。カラマツは、密度が0.50g/cm3、含水率が9.7%であった。
実施例3及び比較例2の耐火構造材を、該耐火構造材の軸方向が鉛直方向と一致するように試験炉内の天井から吊るし、4側面のそれぞれに対して、通常の火災を想定したISO834-1標準加熱により1時間加熱を行い、加熱終了後、6時間の炉内放冷を行った。その際、各耐火構造材の質量変化を計測し、各構造材の質量の経時的変化を記録した。その結果を、図11に示す。なお、加熱開始から30分までは、炉内温度を上昇させるために加熱バーナーの出力を強くしているので、炉内圧力がぶれやすく、質量の正確な測定が困難である。そのため、図11においては、炉内圧力が安定した30分以降の測定結果を示している。
11a 荷重支持部
12a 耐火被覆層
13a 焼失性被覆層
Claims (4)
- 1時間耐火性能を有する耐火構造材であって、
木製又は鋼製の荷重支持部と、
前記荷重支持部を被覆する、純木からなる耐火被覆層と、
前記耐火被覆層を被覆し、火炎に晒されたときに燃焼し焼失する、純木からなる厚みが10mm以上20mm未満である焼失性被覆層とを備え、
前記耐火被覆層と前記焼失性被覆層との境界においては、該耐火被覆層を構成する純木と該焼失性被覆層を構成する純木とが接合されている、耐火構造材。 - 前記耐火被覆層を構成する木材の樹種がカラマツであり、
前記焼失性被覆層を構成する木材の樹種がスギである、請求項1に記載の耐火構造材。 - 前記荷重支持部が角形鋼管である、請求項1又は2に記載の耐火構造材。
- 木製又は鋼製の荷重支持部と、該荷重支持部を被覆し且つ純木からなる耐火被覆層とを有する構造材を、火炎に晒されたときに燃焼し焼失する、純木からなる焼失性被覆層により被覆することにより、
前記耐火被覆層の表面に割れが生じることを防ぎ、該耐火被覆層が赤熱することを抑制する赤熱抑制方法であり、
前記焼失性被覆層により被覆された前記構造材は、1時間耐火性能を有し、前記耐火被覆層と該焼失性被覆層との境界においては、該耐火被覆層を構成する純木と該焼失性被覆層を構成する純木とが接合されており、
前記焼失性被覆層の厚みが10mm以上20mm未満である、赤熱抑制方法。
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