JP7610364B2 - ノロウイルス不活化剤 - Google Patents
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Description
現状では、ノロウイルスに対するワクチンや治療薬は存在しないことから、ウイルスが付着し得る調理器具、衣服、手指等を洗浄・消毒することによる除ウイルスやウイルス不活性化により感染を予防することが重要である。
したがって、実際にHNVに対してその効果を十分に発揮し得る素材を見出すことが求められている。
しかしながら、ホウ酸やホウ砂にノロウイルス不活化作用があることは全く知られていない。
1)エタノール、並びにホウ酸及びその塩から選ばれる1種以上を有効成分とするノロウイルス不活化剤。
2)エタノール、並びにホウ酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有し、組成物のpHが8以上であるノロウイルス不活化剤。
3)1)のノロウイルス不活化剤をノロウイルス汚染が懸念される対象に接触させる、ノロウイルスの不活化方法。
本発明のノロウイルス不活化剤は、一態様として、エタノール並びにホウ酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有する組成物が挙げられる。
ここで、当該組成物のpHは、HNV不活化効果の点から、25℃におけるpHが、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、より好ましくは10以上で、好ましくは13以下、より好ましくは12以下である。また、好ましくは8~13、より好ましくは9~12、より好ましくは10~12である。
pHの調整は、下記アルカリ剤、酸剤及び無機塩等の配合比率を変えることにより行うことができる。
ホウ酸塩としては、好ましくは、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン等が挙げられ、より好ましくはホウ酸ナトリウムであり、より好ましくはホウ砂である。なお、ホウ砂(硼砂、Borax)とは、四ホウ酸ナトリウム十水和物(Na2B4O7.10H2O)を意味する。
ホウ酸及びその塩の中でも、好ましくはホウ酸及びホウ砂の少なくとも1種、より好ましくはオルトホウ酸及びホウ砂の少なくとも1種であり、更に好ましくはホウ砂である。
また、エタノールの含有量が40質量%以上50質量%未満である場合は、ホウ酸及びその塩から選ばれる1種以上の含有量は、0.02~0.4質量%が好ましく、エタノールの含有量が50質量%以上80質量%以下である場合は、ホウ酸及びその塩から選ばれる1種以上の含有量は、0.02~0.4質量%が好ましく、0.05~0.4質量%がより好ましく、0.05~0.2質量%がより好ましい。
アルカリ剤としては、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素二塩、リン酸三塩、アルカリ金属の水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)及びアルカリ土類金属の水酸化物(例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、アルカリ金属カルボン酸塩(例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等)等から選ばれる1種以上が挙げられる。このうち、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素二塩、リン酸三塩から選ばれる1種以上であるのが好ましい。
また、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。
酸剤としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、フィチン酸、アジピン酸、グルコン酸及びコハク酸等の有機酸やリン酸、塩酸等の無機酸から選ばれる1種以上が挙げられる。酸剤を含むことで、ウイルス不活性化効果の向上、ウイルス不活性化剤のpH調整が容易となる。
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム、ヨウ化ナトリウム等が挙げられる。
ノロウイルスは、ゲノム塩基配列の相同性に基づき7つの遺伝子群(genogroup、GI~GVII)に分けられ、ヒトに感染するHNVはGI9種(GI.1、GI.2、GI.3、GI.4、GI.5、GI.6、GI.7、GI.8、GI.9)、GII19種(GII.1、GII.2、GII.3、GII.4、GII.5、GII.6、GII.7、GII.8、GII.9、GII.10、GII.12、GII.13、GII.14、GII.15、GII.16、GII.17、GII.20、GII.21、GII.22)、GIV1種(GIV.1)であるが、本発明におけるHNVは、これらのいずれの遺伝子型のものであっても良い。
なお、本発明において、HNV不活化効果は、ヒト小腸オルガノイド(hSIO)を細胞外マトリクス上で3D培養後、分化誘導して得られる腸管上皮細胞にHNVを感染させた系により評価できる(実施例参照)。
接触時間は限定されないが、例えば好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上で、好ましくは60分以下放置することが挙げられる。
液状の場合には、特にスプレー、ローション等として用いることができる。例えば、トリガースプレー容器(直圧又は蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器に充填し、噴霧量を調整して、ウイルスが存在する、又は存在すると考えられる場所に噴霧できるようにしたもの等が挙げられる。
上記の混練物は、そのまま用いることもできるし、多孔質担体に担持させたり、シート状にしたり、該シート状物を積層体にして用いることもできる。多孔質担体としては、例えば、セルロース、キトサン等の天然高分子、上記の合成樹脂、ケイ酸カルシウム等の無機多孔性物質等を、粒状、シート状等の任意の形状にしたものが挙げられる。上記の混練物や積層体は、例えば、空調設備、トイレ、浴室、居間、病室、病院の待合室、ダストボックス等に設置して、抗ウイルス剤組成物を徐々に揮散させながら利用することもできる。
1.HNV不活化効果の評価
(1)human Small Intestine Organoid(hSIO)の培養
hSIOは24ウェルプレート上でマトリゲル(Corning, 356231)に包埋し3D培養した。培地はIntestiCult Organoid Growth Medium(Human)(STEMCELL Technologies,ST-06010)を用いた。培地交換・継代・96ウェルプレートを用いた単層化の手技はユーザーマニュアルに従った。トリプシン処理後2日間はアノイキスを阻害するために培地に終濃度10μMとなるようにROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase/Rho結合キナーゼ)阻害剤であるCultureSure Y-27632(富士フィルム和光純薬,036-24023)を添加した。500mLのAdvanced DMEM/F12(Gibco,12634010)に5mLのGlutaMAX I(100×)(Gibco, 35050-061)、5mLの1M HEPES(Gibco,15630080)、5mLのPenicillin-Streptomycin(Gibco,15140122)を添加することで基本培地を作成した。基本培地とIntestiCult Organoid Growth MediumのコンポーネントAとを等量混合することで分化培地を作成した。96ウェルプレートで単層化させた腸管上皮細胞に分化培地を1wellあたり200μLずつ2日間隔で交換しながら計7日間分化を誘導した。
糞便の10%乳剤はGII.4型のHNV罹患者糞便から作成した。プロテアーゼ阻害剤であるcOmplete protease inhibitor cocktail tablets(Sigma-Aldrich,11697498001)1錠を50mLのD-PBS(-)に懸濁した。糞便1gに対して10mLのcOmplete含有D-PBS(-)で懸濁し、試験管ミキサーでよく混合した。4℃で20分間静置した後に、2,000×g 4℃で10分間遠心した。上清を新たなチューブに回収し、感染実験に供するまで-80℃に保存した。
HNV含有10%糞便乳剤を分化培地で10倍に希釈し、1mLのシリンジとMillex HV Filter unit (Millipore,SLHVR04NL)を用いて濾過した。PA微量遠心チューブ(Beckman coulter,357448)中で濾過した糞便溶液5μL(2.8×106 HNV genome copy相当)と表1に示す所定の組成物の懸濁液(処理液)45μLとを混合し室温で、30秒間反応させた。次いでこの薬剤処理された糞便溶液に、1mg/mLのbovine serum albumin(Sigma-Aldrich,A9647)を含む基本培地 1.45mLを添加した。遠心チューブを固定角ロータTLA-55(Beckman coulter)にセットしOptima MAX-TL(Beckman coulter)を用いてRmaxにおいて186047×gの遠心力(55,000rpm相当)で1.5時間超遠心した後に上清を除去した。ペレットを100μLの分化培地で懸濁し、hSIOへの感染溶液とした。ウェル中の既存の培地を除去した7日間分化誘導後のhSIOに上述の方法で調製した感染溶液をアプライした。インキュベートは37℃で3時間実施した。300μLの基本培地で3回洗浄した後に、終濃度が125ppmとなるようにブタ胆汁抽出物(Sigma-Aldrich,B8631-100G)を加えた分化培地を250μL添加し37℃ 5%CO2の条件下でサンプリングのタイミングまで培養した。培養開始直後(day 0)と培養3日後(day 3)に10μLの上清を回収した。回収した上清はRT-qPCRに供するまで-80℃で保存した。尚、薬剤溶液に代わり基本培地を用いて同様の操作を行い調製したhSIOへの感染溶液を薬剤非処理のコントロールとした。
回収した上清中のHNV genome copy数の定量にはノロウイルス検出キット G1/G2(東洋紡,FIK-273)を用いた。操作はプロトコールに従った。PCR増幅とデータ測定はLightCycler480II(Roche)を用いた。
測定されたウイルス量に基づき、A:HNVが検出下限にまで不活化されている、B:HNVを検出するがコントロール(薬剤処理無し)よりも減少、C:コントロール(薬剤処理無し)と同等にHNVが増殖している、の3段階で評価した。
ウイルスの不活性化評価の標準法として一般的に知られている「平成27年度ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書」(国立医薬品食品衛生研究所)とJIS L 1922を参考に行った。
500μL容サンプルチューブにて、表1に示す所定の組成物の懸濁液(処理液)27μLと1.0×107PFU/mLに調整したネコカリシウイルス液(F-9株、ATCC VR-782)3μLを入れ、よく混合した。30秒経過後に、クエンチ液(D/E Neutralizing Broth)で1/10希釈して反応を停止した。尚、ブランクとして、処理液の代わりにPBS(リン酸緩衝生理食塩水)27μLを用い同様の操作を行った。反応停止後、混合物をDMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地)でさらに1/10希釈し、その0.5mLを、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗ったCRFK細胞(ネコ腎由来株化細胞)(ATCC CCL-94)に感染させ、1時間後にメチルセルロース含有培地に置換した。2日後に、それぞれの所定時間のサンプルをクリスタルバイオレットで細胞を染色し、プラーク数をカウントして、対数減少量を求めた。
対数減少量=log(ブランクのプラーク数)-log(試験サンプルのプラーク数) 本明細書において対数減少量は、例えば、対数減少量=4の場合、Δ4logと表記する。判定基準は、以下の通りとし、結果を表に示した。
<判定基準>
4:プラークが1点も存在しない(検出下限以下:Δ4logよりも大きい)
3:Δ2~3log
2:Δ1~2log
1:Δ1log未満
Claims (5)
- エタノール、並びにホウ酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有し、組成物のpHが8-10であるノロウイルス不活化剤。
- エタノールの含有量が40~80質量%で、ホウ酸及びその塩から選ばれる1種以上の含有量が0.02~0.8質量%である、請求項1記載のノロウイルス不活化剤。
- ノロウイルスがヒトノロウイルスである、請求項1又は2記載のノロウイルス不活化剤。
- ホウ酸の塩がホウ砂である、請求項1~3のいずれか1項記載のノロウイルス不活化剤。
- 請求項1~4のいずれか1項記載のノロウイルス不活化剤をノロウイルス汚染が懸念される対象に接触させる、ノロウイルスの不活化方法。
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Non-Patent Citations (1)
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| 山本茂貴, 野田衛,平成19年度ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書(国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部),2011年,p. 1-30,[令和6年7月30日検索], インターネット, <URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html#25> |
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