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JP7612185B2 - 異材摩擦攪拌接合方法及び異材摩擦攪拌接合部材 - Google Patents
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JP7612185B2 - 異材摩擦攪拌接合方法及び異材摩擦攪拌接合部材 - Google Patents

異材摩擦攪拌接合方法及び異材摩擦攪拌接合部材 Download PDF

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Description

本発明はチタン又はチタン合金材と熱可塑性樹脂材との異材摩擦攪拌接合方法及びそれにより得られる異材摩擦攪拌接合部材に関する。
燃費の向上及び環境負荷低減等の観点から各種輸送用機器の軽量化が切望されており、航空機や自動車への炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の樹脂材の使用が盛んに検討されている。
このような背景から、各種金属材と樹脂材との接合技術を確立することが必要不可欠であり、鋼、アルミニウム合金及びマグネシウム合金と樹脂材とを接合する技術の開発が進められている。
ここで、ボルト等を用いて機械的に締結する場合、被接合材への加工が必要になることに加えて、締結部材による重量増加を避けることができない。また、接着剤を用いて接合する場合、接合部に十分な接合強度や信頼性を付与することができない。
これに対し、例えば特許文献1(再表2017-065256号公報)においては、主としてアンカー効果を使用することなく、高い接合強度等を発揮し得る金属樹脂接合部材とその製造方法を提供することを目的として、鉄または鉄合金からなる鉄系基材の表面に形成された酸化鉄層を有する金属体と、当該酸化鉄層を介して当該金属体と接合された樹脂体と、を備える金属樹脂接合部材であって、前記酸化鉄層は、厚さが50nm~10μmであり、少なくとも最表面側でFe:60~40at%、O:40~60at%であると共に、少なくともマグネタイト(Fe)を含む金属樹脂接合部材、が提案されている。
上記特許文献1に記載の金属樹脂接合部材においては、鉄系基材の表面に形成された酸化鉄層は電子不足気味な状態で、エネルギー的に高い活性状態にあると考えられることから、樹脂体の被接合面近傍にあるC、O、H、N、PまたはS等と化学的に結合するようになり、結果的に、金属体と樹脂体が強固に接合されるようになる、としている。
また、特許文献2(特開2012-170975号公報)においては、金属部材と樹脂部材とを両者の間に樹脂層を介在させずに即ち直接的に接合可能な金属部材と樹脂部材との接合方法、及び金属部材と樹脂部材との接合継手を提供することを目的として、金属部材と樹脂部材とを両者の間に樹脂層を介在させないで接触させ、回転している回転ツールを金属部材の表面の法線に対する回転ツールの軸線の傾斜角θが0°<θ≦5°の条件を満足するように傾斜させて金属部材の表面に押し付けた状態にすることにより金属部材に付与された摩擦エネルギーによって、金属部材と樹脂部材とを接合することを特徴とする金属部材と樹脂部材との接合方法、が提案されている。
上記特許文献2に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法においては、金属部材と樹脂部材とを両者の間に樹脂層を介在させないで接触させるので、樹脂層を用いない分、安価に且つ容易に接合を行うことができ、金属部材と接合可能な樹脂部材の種類が増加する。更に、金属部材と樹脂部材とを任意の箇所で接合することができる、とされている。
再表2017-065256号公報 特開2012-170975号公報
上記特許文献1に記載の金属樹脂接合部材及びその製造方法は、マグネタイト(Fe)の形成が必須であり、鉄系金属以外には適用することができない。また、上記特許文献2に記載の金属部材と樹脂部材との接合方法は、金属部材の表面に形成された金属酸化皮膜を介して金属部材と樹脂部材との接合を達成するものであり、実施例においてはアルミニウム合金又はマグネシウム合金と樹脂部材との接合結果が示されているのみである。即ち、熱可塑性樹脂とチタン又はチタン合金材とを接合する方法については何れの特許文献にも示されておらず、当該組合せについては適当な直接接合方法が存在しないのが実情である。
ここで、上記特許文献1及び2に開示されている鋼材、アルミニウム合金及びマグネシウム合金等が直接接合によって熱可塑性CFRP材等の樹脂材と当接する場合、樹脂材に対して卑な金属材側で容易に腐食が進行してしまう(ガルバニック腐食)。これに対し、チタン又はチタン合金は電気化学的に安定であり、樹脂材と直接接合しても腐食の問題が生じない。このような理由から、チタン又はチタン合金は樹脂材とのマルチマテリアル化に極めて適した材料である。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、チタン又はチタン合金材と熱可塑性樹脂材とを簡便かつ効率的に直接接合する異材摩擦攪拌接合方法及び、それにより得られる高い継手強度を有する異材摩擦攪拌接合部材を提供することにある。
本発明者は上記目的を達成すべく、被接合材の表面状態及び摩擦攪拌接合条件等と継手強度の関係について鋭意研究を重ねた結果、チタン又はチタン合金材の表面を適当なシランカップリング剤で処理することに加え、摩擦攪拌接合中の被接合界面の温度を正確に制御すること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
チタン又はチタン合金材と熱可塑性樹脂材との摩擦攪拌接合方法であって、
前記チタン又はチタン合金材の被接合領域にシランカップリング処理を施す第一工程と、
前記シランカップリング処理を施した前記被接合領域に前記熱可塑性樹脂材を当接させ、被接合界面を形成する第二工程と、
前記チタン又はチタン合金材に摩擦攪拌接合ツールを圧入し、前記被接合界面を昇温すると共に、前記被接合界面に接合圧力を印加する第三工程と、を有すること、
を特徴とする異材摩擦攪拌接合方法、を提供する。
本発明の異材摩擦攪拌接合方法においては、前記第三工程において、前記被接合界面の温度を前記熱可塑性樹脂材の溶融温度以上かつ分解温度以下とすること、が好ましい。被接合界面の温度を熱可塑性樹脂材の溶融温度以上とすることで、シランカップリング処理によってチタン又はチタン合金材の被接合領域に導入された官能基と熱可塑性樹脂材とが反応し、強固な接合界面を形成することができる。一方で、被接合界面の温度を熱可塑性樹脂材の分解温度以下とすることで、熱可塑性樹脂材の熱分解に起因する接合部の強度低下を抑制することができる。ここで、熱可塑性樹脂材の分解温度とは、熱可塑性樹脂材のガス化が開始する温度である。
また、本発明の異材摩擦攪拌接合方法においては、前記熱可塑性樹脂材を炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材とすること、が好ましい。本発明の異材摩擦攪拌接合方法では極めて強固な接合部が形成されるため、高強度な炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材とチタン又はチタン合金材とを接合した場合であっても、当該炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材の機械的性質を活かした接合構造体とすることができる。
また、本発明の異材摩擦攪拌接合方法においては、前記熱可塑性樹脂材がアミド基を有し、 前記第一工程において、前記チタン又はチタン合金材の前記被接合領域の表面にエポキシ基を形成させること、が好ましい。熱可塑性樹脂材の種類及びシランカップリング処理によってチタン又はチタン合金材の被接合領域に導入する官能基は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の熱可塑性樹脂材及び官能基とすることができるが、熱可塑性樹脂材がアミド基を有し、チタン又はチタン合金材の被接合領域の表面にエポキシ基を形成させることで、確実に高強度の接合界面を得ることができる。
また、本発明の異材摩擦攪拌接合方法においては、前記第三工程において、前記被接合界面の温度を220~350℃とすること、が好ましい。溶融温度及び分解温度は熱可塑性樹脂材の種類や状態によって異なるが、被接合界面の温度を220~350℃とすることで、一般的に金属部材との接合によって構造用部材として用いられる熱可塑性樹脂材の多くを網羅することができる。
また、本発明の異材摩擦接合方法においては、前記第三工程において、前記接合圧力を5~20MPaとすること、が好ましい。接合圧力を5MPa以上とすることで熱可塑性樹脂材とチタン又はチタン合金材とを十分に密着させることができ、接合圧力を20MPa以下とすることで摩擦攪拌接合ツールの劣化を抑制することができる。
また、本発明の異材摩擦接合方法においては、前記第一工程において、前記シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤の濃度を2%以上とすること、が好ましい。シランカップリング剤の濃度は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、得られる異材摩擦攪拌接合部材の接合部強度との関係において適宜調整すればよいが、2%以上とすることで、接合強度に寄与する十分な量の官能基をタン又はチタン合金材の被接合領域の表面に導入することができる。
また、本発明は、
チタン又はチタン合金材と熱可塑性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材との重ね摩擦攪拌接合部材であり、
前記炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材の樹脂部はアミド基を有し、
接合界面近傍の前記炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材に結晶化領域が存在すること、
を特徴とする異材摩擦攪拌接合部材、も提供する。
本発明の異材摩擦攪拌接合部材は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材の樹脂部に存在するアミド基がチタン又はチタン合金材との接合に寄与している。各種分析等によって検出することは困難であるが、チタン又はチタン合金材の被接合領域表面の官能基とアミド基が反応することで、強固な接合界面が形成されている。
本発明の異材摩擦攪拌接合部材においては、15mmの長さの摩擦攪拌接合線を有する引張試験片において、前記摩擦攪拌接合線に対して垂直方向の引張せん断強度が3.0kN以上であること、が好ましい。当該引張せん断強度が3.0kN以上となることで、チタン又はチタン合金材と熱可塑性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材とからなる異材摩擦攪拌接合部材を種々の構造体に適用することができる。なお、実際の接合部の面積を正確に測定することが困難であることから、応力ではなく荷重で規定している。また、引張せん断強度は機械締結や接着剤による接着領域等が無い状態での値である。
更に、本発明の異材摩擦攪拌接合部材においては、前記引張試験片を用いた引張せん断試験において破断する領域の硬度と、前記炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材の母材硬度と、の差が5Hv以内であること、が好ましい。破断領域の硬度と部材の硬度が近い値となることで、接合部が特異点とならない良好な異材摩擦攪拌接合部材を得ることができる。
なお、本発明の異材摩擦攪拌接合部材は、本発明の異材摩擦攪拌接合方法によって簡便に得ることができる。
本発明によれば、チタン又はチタン合金材と熱可塑性樹脂材とを簡便かつ効率的に直接接合する異材摩擦攪拌接合方法及び、それにより得られる高い継手強度を有する異材摩擦攪拌接合部材を提供することができる。
本発明の異材摩擦攪拌接合の工程図である。 本発明の異材摩擦攪拌接合の模式図である。 本発明の一態様に係る異材摩擦攪拌接合部材の概略断面図である。 シランカップリング処理によるエポキシ基導入の模式図である。 試験片の採取位置、形状及び大きさを示す模式図である。 シランカップリング剤の検討によって得られた継手の引張せん断強度を示すグラフである。 シランカップリング剤の検討によって得られた継手に関する引張試験後の試験片の外観写真である。 シランカップリング剤の検討によって得られた継手に関する引張試験後の破断部の純チタン板表面のSEM-EDS結果である。 摩擦攪拌接合条件の検討によって得られた継手の引張せん断強度を示すグラフである。 摩擦攪拌接合中の被接合界面近傍の最高到達温度を示すグラフである。 摩擦攪拌接合条件の検討によって得られた継手に関する引張試験後の試験片の外観写真である。 摩擦攪拌接合中の被接合界面近傍の温度変化を示すグラフである。 エポキシ基とアミド基の反応による接合機構を示す模式図である。 摩擦攪拌接合中の接合荷重及び接合圧力を示すグラフである。 100、125、150及び175rpmで得られた継手の接合部断面のSEM写真である。 200及び300rpmで得られた継手の接合部断面の光学顕微鏡写真である。 図16における破線領域の拡大写真である。
以下、図面を参照しながら本発明の異材摩擦攪拌接合方法及びそれにより得られる異材摩擦攪拌接合部材の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
(1)異材摩擦攪拌接合方法
図1に、本発明の異材摩擦攪拌接合の工程図を示す。本発明の異材摩擦攪拌接合は、チタン又はチタン合金材の被接合領域にシランカップリング処理を施す第一工程(S01)と、被接合界面を形成させる第二工程(S02)と、摩擦攪拌接合を施す第三工程(S03)と、を有している。また、本発明の異材摩擦攪拌接合の模式図を図2に示す。以下、各工程について詳細に説明する。
(1-1)第一工程(S01:シランカップリング処理)
第一工程(S01)は、チタン又はチタン合金材2の被接合領域にシランカップリング処理を施すための工程である。チタン又はチタン合金材2の被接合領域にシランカップリング処理を施すことで、被接合領域の表面に樹脂材との接合に寄与する官能基を付与することができる。
シランカップリング剤と蒸留水を混合すると、加水分解によってシラノール(Si-OH)が形成する。また、シラノール基は互いに高い親和性を示し、縮合反応により-Si-O-Si-結合といくつかの水酸基を形成する。シランカップリング処理は、チタン又はチタン合金材2の被接合領域をシランカップリング剤と蒸留水との水溶液に浸漬した後に取り出し、適当な温度で加熱処理(乾燥処理)を施すことで行うことができる。
加水分解と縮合反応が進行したシランカップリング剤は、水素結合によりチタン又はチタン合金2の表面の水酸基を物理的に吸収する。また、加熱によって、シラノールとチタン又はチタン合金材2の水酸基の間の水素結合が-Si-O-Ti-結合に変換される。これらの過程により、有機基を有する被接合領域を得ることができる。
ここで、チタン又はチタン合金材2と熱可塑性樹脂材4とからなる良好な異材摩擦攪拌接合部を形成させるためには、熱可塑性樹脂材4が有する官能基とシランカップリング剤によって導入される官能基とが良好な反応性を有している必要がある。即ち、被接合材となる熱可塑性樹脂材4に応じて、適当なシランカップリング剤を適宜選定する必要がある。
例えば、熱可塑性樹脂材4が「ポリアミド6」である場合、ポリアミド6はアミド基を有していることから、エポキシ基と反応・結合することができる。即ち、ポリアミド6を有する熱可塑性樹脂材4とチタン又はチタン合金材2とを接合する場合、エポキシ基を有するシランカップリング剤を用いることで強固な接合界面を形成することができる。
シランカップリング剤水溶液の濃度は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されないが、2%以上とすることが好ましい。シランカップリング剤水溶液の濃度を2%以上とすることで、チタン又はチタン合金材2を当該シランカップリング剤水溶液に一回浸漬させるのみで、十分な接合強度が得られる官能基を被接合領域に導入することができる。なお、シランカップリング剤水溶液の濃度が低い場合は、浸漬と乾燥を複数回行ってもよい。
チタン又はチタン合金材2の被接合領域の表面に付着したシランカップリング剤水溶液を乾燥させる方法は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば、シランカップリング剤水溶液が付着したチタン又はチタン合金材2を、100~140℃の真空炉中で1時間程度保持すればよい。
(1-2)第二工程(S02:被接合界面の形成)
第二工程は、第一工程(S01)にてシランカップリング処理を施したチタン又はチタン合金材2の被接合領域と熱可塑性樹脂材4とを当接させて、被接合界面を形成させるための工程である。
熱可塑性樹脂材4と当接するチタン又はチタン合金材2の全域にシランカップリング処理が施されている必要はなく、シランカップリング処理が施されている領域が含まれていればよい。
チタン又はチタン合金材2と熱可塑性樹脂材4とは第三工程(S03)における摩擦攪拌接合時に位置が変化しない程度に固定することが好ましい。一方で、摩擦攪拌接合においては摩擦攪拌接合用ツールによって被接合領域に対して接合圧力が印加されるため、被接合面同士を密着させるために別途押圧力を印加する必要はない。
(1-3)第三工程(S03:摩擦攪拌接合)
第三工程(S03)は、被接合領域に対して摩擦攪拌接合を施す工程である。
摩擦攪拌接合とは、FSW(Friction Stir Welding)と称され、接合しようとする二つの金属材からなる被接合材それぞれの端部を突き合わせ、回転ツールの先端に設けられた突起部(プローブ)を両者の端部の間に挿入し、これら端部の長手方向に沿って回転ツールを回転させつつ移動させることによって、二つの金属部材を接合する方法である。
本発明における「摩擦攪拌接合」とは、回転ツールを回転させつつ接合方向に向けて移動させる摩擦攪拌線接合と回転ツールを回転させつつ接合部位で移動させない摩擦攪拌スポット接合を含み、被接合材同士を重ね合わせて一方の被接合材の側から回転ツールを挿入する重ね摩擦攪拌接合を意味する。以下、代表的な態様として、回転ツールを回転させつつ接合方向に向けて移動させる摩擦攪拌線接合について詳細に説明する。
回転させた摩擦攪拌接合用ツール6をチタン又はチタン合金材2の側から被接合領域の上方に圧入し、摩擦熱を発生させると共に、被接合界面に対して略垂直方向に接合圧力を印加する。当該状態において、摩擦攪拌接合用ツール6を被接合領域に沿って移動させることで、線状の接合界面を形成することができる。
摩擦攪拌接合用ツール6の底面には適当な大きさ及び形状の突起部を設けてもよいが、摩擦攪拌接合用ツール6の寿命、及び摩擦攪拌接合中の被接合界面の温度分布や印加圧力の均一性を担保する観点から、突起部のない平滑な底面形状とすることが好ましい。チタン又はチタン合金材2の表面からの摩擦攪拌接合用ツール6の挿入量は必要以上に大きくする必要はなく、被接合界面における接合温度及び接合圧力が適当な値となる限りにおいて、小さくすることが好ましい。挿入量を小さくすることで、摩擦攪拌接合用ツール6の長寿命化を図ることができる。
また、摩擦攪拌接合用ツール6の材質は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、摩擦攪拌接合用ツールに用いられている従来公知の種々の材質とすることができる。例えば、タングステンカーバイト(WC)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)からなる超硬合金、コバルト(Co)基合金、タングステン(W)合金、イリジウム(Ir)等の高融点金属及びその合金、またはSi等のセラミックスからなるものとすることができる。
摩擦攪拌接合における主な接合パラメータは、摩擦攪拌接合用ツール6の回転速度、移動速度、接合圧力及び前進角であるが、これらは摩擦攪拌接合中の被接合界面の温度が熱可塑性樹脂材4の溶融温度以上かつ分解温度以下となるように適宜調整すればよい。また、被接合領域には、アルゴン等の不活性ガスをフローさせて被接合材やツールの酸化反応を抑制することが好ましい。
摩擦攪拌接合中の被接合界面の温度は、220~350℃とすることが好ましい。溶融温度及び分解温度は熱可塑性樹脂材4の種類や状態によって異なるが、被接合界面の温度を220~350℃とすることで、一般的に金属部材との接合によって構造用部材として用いられる熱可塑性樹脂材4の多くを網羅することができる。被接合界面のより好ましい温度は250~320℃であり、最も好ましい温度は290~310℃である。
摩擦攪拌接合中に接合界面を適当な温度(熱可塑性樹脂材4の溶融温度以上かつ分解温度以下)に保持する時間は、1秒以上とすることが好ましく、3秒以上とすることがより好ましく、5秒以上とすることが最も好ましい。接合界面を適当な温度範囲で保持することで、チタン又はチタン合金材2と熱可塑性樹脂材4とを確実に接合することができる。一方で、当該保持時間が長すぎる場合は熱可塑性樹脂材4を劣化させる虞があるため、20秒以下とすることが好ましい。
また、摩擦攪拌接合によって被接合界面に印加される接合圧力は、5~20MPaとすることが好ましい。接合圧力を5MPa以上とすることで熱可塑性樹脂材4とチタン又はチタン合金材2とを十分に密着させることができ、接合圧力を20MPa以下とすることで摩擦攪拌接合ツール6の劣化を抑制することができる。より好ましい接合圧力は8~17MPaであり、最も好ましい接合圧力は10~15MPaである。
摩擦攪拌接合用ツール6の回転方向は、時計回り又は反時計回りとすることができるが、被接合領域からチタン又はチタン合金材2の端部までの距離が近い側において、摩擦攪拌接合用ツール6の回転方向と移動方向が逆向き(後退側)となるように設定することが好ましい。摩擦攪拌接合においては、摩擦攪拌接合用ツール6の回転方向と移動方向が同じ向きとなる側(前進側)において、接合温度が高くなる傾向がある。また、摩擦攪拌接合用ツール6の挿入位置からチタン又はチタン合金材2の端部までの距離が短い場合は、当該距離が長い場合と比較して、蓄熱により接合温度が高くなる傾向がある。これらの関係から、摩擦攪拌接合用ツール6の挿入位置からチタン又はチタン合金材2の端部までの距離が短い側を後退側とすることで、接合領域の温度分布を均一化することができる。
チタン又はチタン合金材2の組成は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々のチタン又はチタン合金を用いることができる。チタン合金としては、例えば、汎用されているTi-6Al-4V合金や種々の高加工性チタン合金等を用いることができる。また、チタン又はチタン合金材2の板厚についても、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、例えば、1~5mm程度の板材を好適に用いることができる。
また、熱可塑性樹脂材4の種類は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の熱可塑性樹脂材を用いることができるが、アミド基を有していることが好ましい。アミド基を有している熱可塑性樹脂材としては、例えば、ポリアミド6を例示することができ、ポリアミド6をマトリックスとする炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を好適に用いることができる。また、その他の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂(融点:170℃,熱分解温度:328~410℃)、ナイロン66樹脂(融点:268℃,熱分解温度:310~380℃)、ポリカーボネート樹脂(融点:150℃,熱分解温度:420~620℃)、ナイロン6樹脂(融点:225℃,熱分解温度:310~380℃)等を挙げることができる。
(2)異材摩擦攪拌接合部材
図3に、本発明の一態様に係る異材摩擦攪拌接合部材の概略断面図を示す。異材摩擦攪拌接合部材10は、チタン又はチタン合金材2と熱可塑性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材12が摩擦攪拌接合部14によって重ね接合されたものである。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材12の樹脂部は、アミド基を有している。
摩擦攪拌接合部14における接合界面近傍には、結晶化領域16が存在する。結晶化領域16は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材12が摩擦攪拌接合中に十分に軟化して、チタン又はチタン合金材2の表面と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材12の表面とが密着したことを意味している。また、摩擦攪拌接合部14には溝状やボイド状の欠陥は存在していない。これは、摩擦攪拌接合中に接合界面の温度が炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材12のマトリックスである熱可塑性樹脂材の熱分解以下に抑制されたことを意味している。
異材摩擦攪拌接合部材10においては、15mmの長さの摩擦攪拌接合部14(摩擦攪拌接合線)を有する引張試験片において、摩擦攪拌接合部14に対して垂直方向の引張せん断強度が3.0kN以上であることが好ましい。当該引張せん断強度が3.0kN以上となることで、チタン又はチタン合金材2と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材12とからなる異材摩擦攪拌接合部材10を種々の構造体に適用することができる。当該引張せん断強度は3.5kN以上となることがより好ましく、3.7kN以上となることが最も好ましい。
異材摩擦攪拌接合部材10においては、引張せん断試験において破断する領域の硬度と、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材12の母材硬度と、の差が5Hv以内であること、が好ましい。破断領域の硬度と部材の硬度が近い値となることで、接合部が特異点とならない良好な異材摩擦攪拌接合部材10を得ることができる。ここで、当該破断領域は、摩擦攪拌接合部14の外縁近傍となる。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例において本発明の異材摩擦攪拌接合方法及び異材摩擦攪拌接合部材について更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
図2に示す配置で、厚さ2mm、幅50mm及び長さ150mmの工業用純チタン(TP-340)板と、厚さ3mm、幅50mm及び長さ150mmの炭素繊維強化プラスチック(20質量%の炭素繊維が添加されたポリアミド6)板を摩擦攪拌接合した。
(1)シランカップリング剤の検討
摩擦攪拌接合の予備処理として、純チタン板の表面に対してシランカップリング処理を施した。ここで、シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤水溶液の適当な濃度を検討するために、シランカップリング剤と純水を混合し、濃度が0%、0.5%、1.5%、2.5%及び3.5%のシランカップリング剤水溶液を調整した。用いたシランカップリング剤はOFS-6040(3-Glycidoxypropyl trimethoxysilane,Epoxy functional)であり、純チタン板の表面にエポキシ基を導入することができる。エポキシ基導入の模式図を図4に示す。
純チタン板の表面(被接合領域)を♯3000の研磨紙で研磨した後、各濃度のシランカップリング剤水溶液に浸漬し、その後、120℃の真空炉中に1時間保持して乾燥させた。
その後、純チタン板の表面(接合領域)と炭素繊維強化プラスチック板を図2に示す態様で重ね合わせ、純チタン板側から摩擦攪拌接合用ツールを圧入して摩擦攪拌接合を施した。
摩擦攪拌接合の条件は、ツールの回転速度を300rpm、ツールの移動速度(接合速度)を100mm/min、ツールの前進角を3°とし、突起部のない平滑な底面を有する直径15mmの円柱状の超硬合金製摩擦攪拌接合用ツールを用いて摩擦攪拌接合を施した。接合部にはアルゴンガスをフローさせ、ツール底面を純チタン板の表面から0.9mm挿入した。
接合部の強度を評価するために、得られた異材接合継手の引張せん断試験を行った。図5に試験片の採取位置、形状及び大きさを示す。引張せん断試験用の試験片は図5のAから採取し、幅は15mmである。また、引張せん断試験の引張速度は0.5mm/minとし、3回の測定を行った。
得られた引張せん断強度を図6、引張試験後の試験片の外観写真を図7、及び破断部の純チタン板の表面のSEM-EDS結果を図8にそれぞれ示す。組織観察用の断面試料は、研磨紙♯4000までの機械研磨を施した後、1μmのダイヤモンドサスペンションを用いて鏡面研磨し、SEMはJEOL JSM-7001FAを用いた。組織観察用試料の採取位置、形状及び大きさは図5にBとして示している。
シランカップリング剤を添加していな場合は、接合体を得ることができなかった。また、シランカップリング剤を添加した場合は接合部が形成されたが、設定した摩擦攪拌接合条件では何れの場合も1kNに満たない引張せん断強度となっており(図6)、全て接合界面での破断となった(図7)。一方で、シランカップリング剤の濃度が2.5%以上の場合は接合部の純チタン板の表面に炭素繊維強化プラスチック板に起因する炭素が明瞭に観察され、シランカップリング剤によって強固な接合界面が形成されたことが確認できる(図8)。
即ち、適当なシランカップリング処理と摩擦攪拌接合によって純チタン板と炭素繊維強化プラスチック板との間に強固な接合界面を形成することができるが、摩擦攪拌接合による炭素繊維強化プラスチック板の強度低下を抑制する必要がある。
(2)摩擦攪拌接合条件の検討
シランカップリング剤水溶液の濃度を3.5%で一定とし、ツールの回転速度を50、100、125、150、175、200、250、300rpmとしたこと以外は(1)の場合と同様にして、摩擦攪拌接合を行った。
(1)の場合と同様にして得られた各継手の引張せん断強度を図9に示す。また、接合中の被接合界面近傍の温度を熱電対で測定し、得られた結果も図9に合せて示す。接合温度測定状況の模式図を図10に示す。
図9に示すように、3.0kN以上の高い引張せん断強度が得られるツール回転速度の範囲が明瞭に存在し(125~175rpm)、当該摩擦攪拌接合における被接合界面近傍の温度は炭素繊維強化プラスチックの母材(ポリアミド6)の融点(225℃)以上かつ分解温度(350℃)以下となっている。また、図11に引張試験後の試験片の外観写真を示すが、125~175rpmで得られた継手は全て炭素繊維強化プラスチック板側の母材破断となっている。また、これらの継手において、破断位置のビッカース硬度を測定したところ、18~20Hvであった。炭素繊維強化プラスチック板のビッカース硬度も18~20Hvであり、破断位置は接合によって殆ど硬度変化していないことが分かる。
図12に、ツール回転速度が100、125、150及び175rpmの場合において、熱電対を用いて得られた被接合部近傍の温度変化を示す。当該領域の温度がポリアミド6の融点以上に保持される時間が、125rpmの場合は5.0秒、150rpmの場合は8.8秒、175rpmの場合は10.3秒となっており、シランカップリング剤によって導入されたエポキシ基とポリアミド6のアミド基が十分に反応する時間が得られたものと考えられる。一方で、100rpmの場合は接合温度が僅かにポリアミド6の融点以上となっているが、当該温度域に保持される時間が1.3秒と極めて短いため、強固な接合界面が形成されなかったものと思われる。
純チタン板の表面に形成されたエポキシ基とポリアミド6のアミド基との反応による接合機構を模式的に図13に示す。エポキシ基とアミド基は挿入反応及び追加反応によって接合され、被接合界面近傍のポリアミド6が溶融することで、これらの反応が促進されて強固な接合界面が形成されたと考えられる。
摩擦攪拌接合中に摩擦攪拌接合用ツールによって被接合界面に印加される接合荷重及び接合圧力を図14に示す。ツールの回転速度の増加に伴ってポリアミド6が軟化及び/又は分解するため、接合荷重及び接合圧力が低下しているが、接合温度がポリアミド6の融点以上かつ分解温度以下となる125~175rpmでは、5~20MPaの適当な接合圧力が印されていることが分かる。
100、125、150及び175rpmで得られた継手の接合部断面のSEM写真を図15に示す。接合温度が低い100rpmの場合、純チタン板と炭素繊維強化プラスチック板の間に隙間が存在し、良好な接合界面が形成されていない。これに対し、接合温度がポリアミド6の融点以上かつ分解温度以下となる125~175rpmでは、純チタン板と炭素繊維強化プラスチック板が密着した接合界面が形成されており、欠陥等は認められない。
200及び300rpmで得られた継手の接合部断面の光学顕微鏡写真を図16に示す。また、図16において破線で囲った領域の拡大写真を図17に示す。接合温度がポリアミド6の分解温度以上となる摩擦攪拌接合条件では、純チタン板と炭素繊維強化プラスチック板の間にポリアミド6の分解に起因する大きな溝が形成されていることが分かる。
以上の結果より、適当なシランカップリング処理と接合温度が熱可塑性樹脂材の融点以上かつ分解温度以下となる摩擦攪拌接合とを組み合わせた本発明の異材摩擦攪拌接合方法によって、チタン材と熱可塑性樹脂材との間に極めて強固な接合界面を形成させることができ、当該異材摩擦攪拌接合方法によって得られる本発明の異材摩擦攪拌接合部材は、15mmの長さの摩擦攪拌接合線を有する引張試験片において、当該摩擦攪拌接合線に対して垂直方向の引張せん断強度が3.0kN以上となる接合部が形成されていることが確認された。
2・・・チタン又はチタン合金材、
4・・・熱可塑性樹脂材、
6・・・摩擦攪拌接合用ツール、
10・・・異材摩擦攪拌接合部材、
12・・・炭素繊維強化プラスチック材、
14・・・摩擦攪拌接合部、
16・・・結晶化領域。

Claims (8)

  1. チタン又はチタン合金材と熱可塑性樹脂材との摩擦攪拌接合方法であって、
    前記チタン又はチタン合金材の被接合領域にシランカップリング処理を施す第一工程と、
    前記シランカップリング処理を施した前記被接合領域に前記熱可塑性樹脂材を当接させ、被接合界面を形成する第二工程と、
    前記チタン又はチタン合金材に摩擦攪拌接合ツールを圧入し、前記被接合界面を昇温すると共に、前記被接合界面に接合圧力を印加する第三工程と、を有し、
    前記摩擦攪拌接合ツールに突起部のない平滑な底面形状を有するツールを用い、
    前記第三工程において、前記被接合界面の温度を前記熱可塑性樹脂材の溶融温度以上かつ分解温度以下とすること、
    を特徴とする異材摩擦攪拌接合方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂材を炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材とすること、
    を特徴とする請求項に記載の異材摩擦攪拌接合方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂材がアミド基を有し、
    前記第一工程において、前記チタン又はチタン合金材の前記被接合領域の表面にエポキシ基を形成させること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の異材摩擦攪拌接合方法。
  4. 前記第三工程において、前記被接合界面の温度を220~350℃とすること、
    を特徴とする請求項1~のうちのいずれかに記載の異材摩擦攪拌接合方法。
  5. 前記第三工程において、前記接合圧力を5~20MPaとすること、
    を特徴とする請求項1~のうちのいずれかに記載の異材摩擦攪拌接合方法。
  6. 前記第一工程において、前記シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤の濃度を2%以上とすること、
    を特徴とする請求項1~のうちのいずれかに記載の異材摩擦攪拌接合方法。
  7. チタン又はチタン合金材と熱可塑性の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材との重ね摩擦攪拌接合部材であり、
    前記炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材の樹脂部はアミド基を有し、
    接合界面近傍の前記炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材に結晶化領域が存在し、
    15mmの長さの摩擦攪拌接合線を有する引張試験片において、前記摩擦攪拌接合線に対して垂直方向の引張せん断強度が3.0kN以上であること、
    を特徴とする異材摩擦攪拌接合部材。
  8. 前記引張試験片を用いた引張せん断試験において破断する領域の硬度と、前記炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材の母材硬度と、の差が5Hv以内であること、
    を特徴とする請求項に記載の異材摩擦攪拌接合部材。
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