JP7614477B2 - 間質性肺炎のタンパク質診断バイオマーカー - Google Patents
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Description
(1)ストラテフィン(SFN)、NPS-PLA2、シスタチンF(CYTF)、IL-1Ra、ネトリン-1(NET1)及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することを含む、びまん性肺胞傷害の検査方法。
(2)発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質であり、測定値がびまん性肺胞傷害の病勢診断を補助する(1)記載の方法。
(3)発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質であり、測定値がびまん性肺胞傷害の特異的診断を補助する(1)記載の方法。
(4)発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、シスタチンF、NPS-PLA2、IL-1Ra、ネトリン-1、トロポニンT、又はそれらの組み合わせである(3)記載の方法。
(5)びまん性肺胞傷害の診断方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の発症の有無を判定すること
を含む前記方法。
(6)びまん性肺胞傷害の診断方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の病勢を判定すること
を含む前記方法。
(7)びまん性肺胞傷害の診断及び治療方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の発症の有無を判定すること、及び
d1. びまん性肺胞傷害を発症している可能性が高いと判定された被験者にびまん性肺胞傷害の治療を施すこと
を含む前記方法。
(8)びまん性肺胞傷害の診断及び治療方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の病勢を判定すること、及び
d1. びまん性肺胞傷害の急性期にある可能性が高いと判定された被験者にびまん性肺胞傷害の治療を施すこと
を含む前記方法。
(9)ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6(CA6)からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することを含む、間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の検査方法。
(10)発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質であり、測定値が間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の病勢診断を補助する(9)記載の方法。
(11)間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の発症の有無を判定すること
を含む前記方法。
(12)間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の病勢を判定すること
を含む前記方法。
(13)間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断及び治療方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の発症の有無を判定すること、及び
d2. 間質性肺炎を発症している可能性が高いと判定された被験者に間質性肺炎の治療を施すこと
を含む前記方法。
(14)間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断及び治療方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の病勢を判定すること、及び
d2. 間質性肺炎の急性期にある可能性が高いと判定された被験者に間質性肺炎の治療を施すこと
を含む前記方法。
(15)ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することができる試薬を含む、びまん性肺胞傷害の検査のためのキット。
(16)ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することができる試薬を含む、間質性肺炎(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の検査のためのキット。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2019‐142706の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
1.びまん性肺胞傷害の検査方法、診断方法、治療方法及び検査キット
本発明は、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することを含む、びまん性肺胞傷害の検査方法を提供する。
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の発症の有無を判定すること
を含む前記方法を提供する。
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の病勢を判定すること
を含む前記方法を提供する。
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の発症の有無を判定すること、及び
d1. びまん性肺胞傷害を発症している可能性が高いと判定された被験者にびまん性肺胞傷害の治療を施すこと
を含む前記方法を提供する。
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の病勢を判定すること、及び
d1. びまん性肺胞傷害の急性期にある可能性が高いと判定された被験者にびまん性肺胞傷害の治療を施すこと
を含む前記方法を提供する。
また、本発明は、ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することを含む間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害やその他の病型の間質性肺炎)の検査方法を提供する。
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の発症の有無を判定すること
を含む前記方法を提供する。
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の病勢を判定すること
を含む前記方法を提供する。
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の発症の有無を判定すること、及び
d2. 間質性肺炎を発症している可能性が高いと判定された被験者に間質性肺炎の治療を施すこと
を含む前記方法を提供する。
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の病勢を判定すること、及び
d2. 間質性肺炎の急性期にある可能性が高いと判定された被験者に間質性肺炎の治療を施すこと
を含む前記方法を提供する。
〔実施例1〕
(1)検体
解析に用いたヒト間質性肺炎試料については、4箇所の拠点病院(信州大学、日本医科大学、千葉大学、広島大学)、国立医薬品食品衛生研究所、木原財団、アステラス製薬、及び第一三共において、各研究倫理委員会の承認を得て収集・解析した。
各検体のプロテオーム解析は、SomaLogic社のSOMAscanシステムを用いて行った。当該システムは、アプタマー(一本鎖核酸による人工リガンド)により、1,310種のタンパク質を検出する測定法である。血漿は米国SomaLogic社に凍結状態で送付し、測定に供した。
1,310種のタンパク質のSOMAscanデータセットを用いて、臨床で特に重要とされるDADとOPで変動するタンパク質を探索した。SOMAscan測定で得られた各プローブの蛍光シグナル強度に基づき、全症例の回復期群(総回復期群、計33例)と健常人群(24例)を統合した計57例のコントロール群と比較して、DAD急性期群(9例)あるいはOP急性期群(16例)で、効果量Hedge’s g値が0.8以上、Fold change値が2倍以上の変動を示すタンパク質から、上位10位以内に入るものを抽出した。抽出したタンパク質の各病型における変動パターンから、DADの急性期では増加するが他の病型では変化が認められない、DAD特異検出しうるタンパク質が6種類見いだされた(図1、表1)。また、DADだけでなくOPやNSIPにおいても増加あるいは減少するタンパク質も9種類見つかった(図2、表2)。
図1は、DADマーカー候補タンパク質6種類(ストラテフィン、シスタチンF、NPS-PLA2、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンT)の血漿中の変動パターンをボックスプロットにて示したものである。いずれのタンパク質も健常人に比べてDADの急性期で顕著な増加を示し、回復期で健常人と同程度まで減少するが、OPやNSIPにおける変動は小さかった。これらのタンパク質はDAD特異診断に有用なマーカーとなり得る。
DAD診断性能が高い上位のタンパク質の中で、相関が低いもの同士を組み合わせれば、さらにDAD診断性能の向上が期待される。図3AおよびBは、相関関係の低かったシスタチンFとストラテフィン、およびネトリン-1とIL-1Raを例に、DAD診断性能に対するコンビネーションアッセイの効果を検討した結果である。各タンパク質のSOMAscan測定値を標準化した値の和を用いることにより、DAD検体の検出効率が向上し、シスタチンFとストラテフィンの組み合わせを用いた際のAUC値は0.98に、ネトリン-1とIL-1RaのAUC値は0.97にまで上昇した。これらに加えて、シスタチンFとネトリン-1やストラテフィンとネトリン-1の組み合わせなどもまた、AUC 0.95程度にまでDAD診断性能が向上することが示された。
図2に示すように、PARC (CCL18)、LD78-betaのケモカインは、DAD、NSIP、OPのいずれの病型においても、急性期における増加傾向と回復期の減少傾向が見られた。また、胎盤特異的タンパク質PAPP-A (パパリシン)や補体C3bも、これらと同様の変動パターンを示し、これらとは逆に、Apo-AI、カーボニックアンヒドラーゼ6(CA6)、カリスタチンは、いずれの病型においても、急性期で減少する傾向が見られ、回復期では健常群と同程度にまで戻る傾向が示された(図2)。
SOMAscan解析においてDADに特徴的な変動がみられたタンパク質6種類について、DAD急性期 (DAD-Ac)と健常群(HC)、総回復期群(All-R)、DAD以外の間質性肺炎群 (non-DAD-Ac)との識別性能をROC曲線解析から算出されるAUCの値で示した。既存マーカーKL-6のAUC値は、検体採取時に測定された臨床検査値より算出した。
SOMAscan解析において薬物性間質性肺炎全般で変動が見られたタンパク質7種類およびストラテフィンとNPS-PLA2について、健常群(HC)や回復期群(All-Re)との識別能を比較するためのROC曲線解析を行い、算出されるAUC値を示した。既存マーカーKL-6およびSP-DのAUC値は、検体採取時に測定された臨床検査値より算出した。DADはびまん性肺胞傷害、OPは器質化肺炎、Allは間質性肺炎全般、Acは急性期を示す。
表1および表2に示したタンパク質のバイオマーカー性能を検証するために、サンドイッチELISAキットを用いて、多数検体の解析を行った。
検体は、SOMAscan解析で用いた症例とは別の新たに収集した症例を追加し、薬剤性間質性肺炎の急性期の検体としては、DADパターンが18例、OPや過敏性肺炎(HP)パターンが優勢な診断ではあるが、DADパターンの併存も認められるDAD混在型(OP>DAD、HP>DAD、HP=DADなど)が9例存在した。これ以降、DADパターンとDAD混在型(DAD mixed)を合わせて、「DAD確認症例」と記した。また、OPパターン30例、NSIPパターン22例、その他のパターン(好酸球性肺炎、過敏性肺炎など)6例、およびこれらの回復期(All-R)55例と健常ボランティア77例、さらに、薬剤性間質性肺炎を発症していない化学療法中の肺がん症例(非発症例)、肺がん症例、特発性間質性肺炎、膠原病肺、COPD、非結核性抗酸菌症、気管支喘息、感染性肺疾患(真菌・細菌性感染症)などを加えて合計401例、またはその一部の血清あるいは血漿検体をELISAキットによる検証に用いた。
表1および2に示したタンパク質の中で、ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARCに関してサンドイッチELISA法による測定を行った。ストラテフィンに関しては、抗ストラテフィンマウスモノクローナル抗体(シグマアルドリッチ社およびメルク社)を用いてELISA測定系を構築し、標準品には大腸菌リコンビナントヒトストラテフィン(NKMAX社)を使用した。NPS-PLA2 (Cayman社)、PARC(R&D社)、カリスタチン(R&D社)の検証には、市販の研究用のELISAキットを用いた。これら自製ELISAおよび市販ELISAキットに関しては、健常人血清・血漿を用いた部分的な分析バリデーションを行い、変動係数(CV値)15%内の精度で測定可能であること、添加回収率が80-120%内であること、希釈直線性および併行精度を事前に確認したうえで、患者検体の測定を行った。既存マーカーのSP-DおよびKL-6は、それぞれヤマサ醤油社製と東ソー社製の臨床検査試薬により測定した。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)およびC反応性タンパク質(CRP)の値は採血時の臨床検査の値を解析に用いた。
各ELISAキットで定量した、健常人、薬剤性間質性肺炎発症患者の急性期と回復期、および非発症群における各バイオマーカーの濃度を表3に示した。またそれらに加えて、様々な肺疾患における既存マーカーおよび4種のバイオマーカーの変動パターンをボックスプロットとして図4に示した。いずれのタンパク質も、SOMAscanの結果を再現する形で、健常人に比べて、薬剤性間質性肺炎の急性期で増加(カリスタチンにおいては減少)し、特にストラテフィンとカリスタチンは、DAD確認症例(DADおよびDAD混在型)にて大きな変動を示した(いずれも g = 2.6, p <0.0001)。
図5および表4は、ELISA測定結果に基づいて、各タンパク質のDADに対するバイオマーカー性能を比較した結果である。DAD急性期(確認)症例(DADおよびDAD混在型)に対する健常人との鑑別性能、総回復期との鑑別性能(病勢判別能)、その他の間質性肺炎病型との鑑別性能(DAD診断性能)および非発症群との鑑別性能について、ROC曲線解析(図5A~D)から算出されるAUC値を表4に示した。
各ROC曲線解析の結果から、各タンパク質のカットオフ値をYouden’s Index[感度-(100-特異度)]が最大となる濃度(感度と特異度が最も高くなる値)を指標にして求めると、健常人とDAD急性期(確認)症例の鑑別においては、ストラテフィン:0.7 ng/mL、カリスタチン:9.2 μg/mL、PARC:35 ng/mL、NPS-PLA2:7.0 ng/mLであった。DADの病勢判別のためのカットオフ値は、ストラテフィン:2.3 ng/mL、カリスタチン:8.6 μg/mL、PARC:32 ng/mL、NPS-PLA2:16 ng/mLであり、DAD診断(他の病型との鑑別)のためのカットオフ値は、ストラテフィン:2.4 ng/mL、カリスタチン:8.6 μg/mL、PARC:57 ng/mL、NPS-PLA2:63 ng/mLであった。非発症例との鑑別のためのカットオフ値は、ストラテフィン:2.4 ng/mL、カリスタチン:11 μg/mL、PARC:35 ng/mL、NPS-PLA2:32 ng/mLであった。
薬剤性間質性肺炎の診断においては感染性肺疾患との鑑別は、治療方針を決定するためにも重要である。DAD急性期(確認)症例と感染性肺疾患(真菌、細菌性)との鑑別性能を比較すると、今回解析したタンパク質の中では、ストラテフィンが最も高いAUCの値(0.99)を示し、SP-D(同 0.92)やKL-6(同 0.89)を上回る性能を示した(図5E)。この時のストラテフィンのカットオフ値(Youden’s Index最大値を示す濃度)は1.4 ng/mLであった。
表5は、間質性肺炎全般に対して、健常人、あるいは回復期との鑑別性能を比較した結果である。ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARCは、健常人との高い鑑別性能(AUC 0.86以上)を示した(図6A)。間質性肺炎全般における病勢判別能(総回復期群との比較)は、カリスタチン(AUC 0.76)とPARC(同0.74)が、SP-D(同0.77)と同様であり、KL-6 (同0.62)を上回った(図6B)。非発症との鑑別では、カリスタチンが(AUC 0.81)が優れていた(図6C)。
各タンパク質のカットオフ値をYouden’s Index最大値となる濃度で求めると、健常人との鑑別においては、ストラテフィン:0.5 ng/mL、カリスタチン:10 μg/mL、PARC:35 ng/mL、NPS-PLA2:6 ng/mLであり、間質性肺炎全般の病勢判別のカットオフ値は、ストラテフィン:1 ng/mL、カリスタチン:10 μg/mL、PARC:33 ng/mL、NPS-PLA2:8 ng/mLであった。非発症例との鑑別のためのカットオフ値は、ストラテフィン:0.56 ng/mL、カリスタチン:11 μg/mL、PARC:36 ng/mL、NPS-PLA2:9 ng/mLであった。
また、臨床上重要とされる間質性肺炎と感染性肺疾患との鑑別においては、ストラテフィン(AUC 0.84)がSP-D(同 0.84)やKL-6 (同 0.83)と同等の性能を示した(図6D)。この時のストラテフィンのカットオフ値(Youden’s Index最大値を示す濃度)は 0.8 ng/mLであった。
表6は、ストラテフィン、カリスタチン、PARC、NPS-PLA2のそれぞれのカットオフ値を設定し、各間質性肺炎病型や各疾患に対する陽性率について、SP-DやKL-6と比較した結果である。KL-6とSP-Dについては臨床で用いられている基準値(500 U/mLおよび110 ng/mL)を、その他のタンパク質については、DAD急性期(確認)症例と非発症群を比較した際のROC曲線から(図5D)、感度と特異度が最も高くなる濃度をカットオフ値として設定した。
ストラテフィンにおいて、健常群では陽性例(>2.4 ng/mL)は全く見られない一方で、DAD急性期(確認)症例(DADやDAD混在型)では92%と高い陽性率を示した。対して、OPやNSIPなど他の病型では20-33%と低かったことから、適切なカットオフ値を設定することで、ストラテフィンはDAD特異的な血清診断に有用である可能性があることが示唆された。また、ストラテフィンの総回復期群や非発症群における陽性率(11%、13%)は、KL-6(各々49%、30%)やSP-D(各々42%、27%)よりも低く、感染性肺疾患や非結核性抗酸菌症では陽性は見られなかった。
特発性の間質性肺炎の急性増悪例も、病理組織像はDADである。特発性間質性肺炎の症例を病型ごとに分類して解析すると、図7に示すように、KL-6やSP-Dは、特発性間質性肺炎の急性増悪例(AE-IIPs, 特発性肺線維症(IPF)急性増悪と急性特発性肺炎を含む)で高い値を示すものの、IPFやNSIPなど、他の間質性肺炎病型でも陽性(SP-D >110 ng/mL、KL-6 >500 U/mL)が多かった。カリスタチンもまた、特発性間質性肺炎全般的に陽性例(カットオフ: <11 μg/mL)が多かった。これらに対し、ストラテフィンは、AE-IIPsで高値傾向が見られ、他の病型では陰性(2.4 ng/mL以下)が多かった。したがって、ストラテフィンは、薬剤性だけでなく、特発性の間質性肺炎に対してもDADマーカーとして有用であり、カリスタチンは特発性の間質性肺炎全般に対しても有用であることを示している。
図8は、患者の肺機能(血液酸素化能力)や炎症パラメータとストラテフィンとの相関を調べた結果である。血中ストラテフィン濃度は、血中酸素化能力の指標であるPaO2/FiO2比やSpO2/FiO2比と相関を示し(図8A、B)、組織の損傷や炎症の度合いの指標となるLDHやCRPとも相関を示した(図8C、D)。血中ストラテフィン濃度は、組織の損傷や炎症に伴う肺機能の低下に伴って変動することが示唆された。
KL-6とSP-Dのカットオフ値は臨床で用いられている基準値(500 U/mLおよび110 ng/mL)を用いた。ストラテフィン、カリスタチン、PARC、NPS-PLA2のカットオフ値は、DAD急性期(確認)症例と非発症群を比較した際のYouden’s Index[感度-(100-特異度)]最大値から設定した値を用いた(段落番号[0092]記載)。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
Claims (5)
- ストラテフィンについて、被験者由来の血清及び/又は血漿における発現を測定することを含む、びまん性肺胞傷害の検査方法。
- びまん性肺胞傷害の病勢診断を補助する請求項1記載の方法。
- びまん性肺胞傷害の特異的診断を補助する請求項1記載の方法。
- シスタチンF、NPS-PLA2、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質とストラテフィンについて、被験者由来の血清及び/又は血漿における発現を測定する請求項3記載の方法。
- ストラテフィンについて、被験者由来の血清及び/又は血漿における発現を測定することができる試薬を含む、びまん性肺胞傷害の検査のためのキット。
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