Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
JP7614477B2 - 間質性肺炎のタンパク質診断バイオマーカー - Google Patents
[go: Go Back, main page]

JP7614477B2 - 間質性肺炎のタンパク質診断バイオマーカー - Google Patents

間質性肺炎のタンパク質診断バイオマーカー Download PDF

Info

Publication number
JP7614477B2
JP7614477B2 JP2021537245A JP2021537245A JP7614477B2 JP 7614477 B2 JP7614477 B2 JP 7614477B2 JP 2021537245 A JP2021537245 A JP 2021537245A JP 2021537245 A JP2021537245 A JP 2021537245A JP 7614477 B2 JP7614477 B2 JP 7614477B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
interstitial pneumonia
dad
subject
diffuse alveolar
pla2
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2021537245A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2021024856A1 (ja
Inventor
嘉朗 齋藤
亮介 中村
憲昭 荒川
泰雄 大野
高司 泉
元信 佐藤
剛淑 西矢
正幸 花岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Health Sciences
Original Assignee
National Institute of Health Sciences
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Health Sciences filed Critical National Institute of Health Sciences
Publication of JPWO2021024856A1 publication Critical patent/JPWO2021024856A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7614477B2 publication Critical patent/JP7614477B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、間質性肺炎の発症や病勢の診断を補助するための方法に関する。
間質性肺炎は肺の間質の炎症性疾患の総称であり、細菌感染を代表とする肺胞性肺炎と大別される。間質性肺炎は、薬剤性やじん肺、膠原病などの明確な原因に伴うものと、原因が不明な特発性とに分けられ、さらに様々な病型に分類される。それぞれ治療法や予後が異なるため、これらを鑑別することは臨床上重要である。
特発性間質性肺炎の病型は、臨床所見と画像所見、病理組織パターンによって診断されるが、薬剤性間質性肺炎についても、特発性や既知の肺疾患との類似性に基づいて、病型の診断が行われる(非特許文献1)。間質性肺炎の病型の中で、特に重篤な病型は、びまん性肺胞傷害(diffuse alveolar damage、DAD)である。DADは、急性呼吸窮迫症候群や特発性間質性肺炎の急性増悪症例に見られる典型的な病型であり(非特許文献2)、特発性においても薬剤性においても、DADは治療反応性に乏しく予後が悪い(非特許文献1、2)。そのため、DADに対しては、早期の検出と診断が特に重要とされる。また、DAD以外の病型としては、器質化肺炎(organizing pneumonia、OP)、非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia、NSIP)などが挙げられるが、どのパターンにも当てはまらない例や複数のパターンが混在する例など、画像検査や病理検査では分類が困難な例も存在し、画像パターン分類には限界がある(非特許文献3)
間質性肺炎の診断は、確定に時間を要することも多く、画像診断や病理診断だけでは経済的にも体力的にも患者に大きな負担を強いるため、バイオマーカーの利用が有用とされる。
間質性肺炎のバイオマーカーとしては、現在、シアル化糖鎖抗原KL-6(KL-6)、肺サーファクタントプロテインA(SP-A)、肺サーファクタントプロテインD(SP-D)が、診断の補助に利用されており、KL-6はDADに対する陽性率が高いことが知られている(非特許文献4, 5)。これらは、薬剤性肺障害を反映する指標であるが、喫煙や間質性肺炎以外の疾患でも増加することもあり、肺障害の重症度とは相関しない。KL-6は、薬剤投与前値を基準に経過を追うことが推奨されているものの、既存の間質性肺炎の増悪や日和見感染症でも上昇する。すなわち、これらのマーカーは、DADに特異的ではなく、病型を鑑別するマーカーとしての有用性は低い。また、KL-6、SP-D、およびSP-Aは病状の改善後も長期間高値を示す(非特許文献4, 5)という問題があることから、新たなバイオマーカーが必要とされている。これまでに、UBE2T、HK1、PMSE1、USO1、IFI16、GLTPなどのタンパク質や(特許文献1)、自己抗体(特許文献2)などがマーカー候補として提案、特許申請されている。
薬剤性肺障害の診断・治療の手引き 日本呼吸器学会 急性間質性肺炎Acute interstitial pneumonia (AIP) 日呼吸会誌 42(1), -23-27, 2004 楠本昌彦 薬剤性肺障害のCT診断 肺癌 55,807-809.2015 Ishikawa N, et al., Utility of KL-6/MUC1 in the clinical management of interstitial lung diseases, Respiratory Investig. 50, 3-13, 2012 Kawase S, et al., Change in serum KL-6 level from baseline is useful for predicting life-threatening EGFR-TKIs induced interstitial lung disease, Respiratory Research, 12:97, 2011
特開2015-90323公報 国際公開WO2014/148429パンフレット
本発明は、薬剤性をはじめとする間質性肺炎の診断、病勢、およびその病型を診断、予測するためのバイオマーカーの開発を行うことを目的とする。
1,310種のタンパク質に対するアプタマー(一本鎖核酸による人工リガンド)を用いたSOMAscan法にて、薬剤性間質性肺炎患者の血液試料を対象にプロテオーム解析を行った。びまん性肺胞傷害(DAD)と器質化肺炎(OP)に焦点を当て、SOMAscanの相対蛍光強度から、健常人や回復期群に対して当該疾患の急性期で大きく変動するタンパク質を、Fold change値と効果量(Hedge’s g値)を指標に探索した。KL-6やSP-D値が変動を示していない検体が多数存在する中、測定した1,310種のタンパク質の中から、DADの急性期では増加するが他の病型では変化が認められないタンパク質を6種類(ストラテフィン、シスタチンF、NPS-PLA2、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンT)、またDADだけでなく、OPや非特異性間質性肺炎(NSIP)など他の間質性肺炎においても増加もしくは減少するタンパク質を9種類(ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6)見いだした。
ROC曲線(Receiver Operatorating Characteristic curve)解析の結果、DADで特異的な変動を示したタンパク質は、DAD患者と健常人を高い精度(area under the curve: AUC 0 .95以上)で鑑別した。さらに、薬剤性間質性肺炎患者の中からDAD患者を判別する能力は、シスタチンF (AUC 0.91)やストラテフィン(0.90)、ネトリン-1(0.85)で比較的高かったが、相関性の低いタンパク質同士を組み合わせることで、AUC値が 0.95以上にまで向上した。また、PARC (CCL18)やLD78-betaなどのケモカインや、Apo-AIやカリスタチン、PAPP-A(パパリシン)等は、DADに限らずOPやNSIPの急性期においても変動が認められ、DADやOP患者の群をAUC 0.9以上で健常人と識別できた。これらは、薬剤性をはじめとする間質性肺炎に対する有用なバイオマーカーとなりうることが示された。
本発明は、これらの知見に基づいて、完成されたものである。
(1)ストラテフィン(SFN)、NPS-PLA2、シスタチンF(CYTF)、IL-1Ra、ネトリン-1(NET1)及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することを含む、びまん性肺胞傷害の検査方法。
(2)発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質であり、測定値がびまん性肺胞傷害の病勢診断を補助する(1)記載の方法。
(3)発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質であり、測定値がびまん性肺胞傷害の特異的診断を補助する(1)記載の方法。
(4)発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、シスタチンF、NPS-PLA2、IL-1Ra、ネトリン-1、トロポニンT、又はそれらの組み合わせである(3)記載の方法。
(5)びまん性肺胞傷害の診断方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の発症の有無を判定すること
を含む前記方法。
(6)びまん性肺胞傷害の診断方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の病勢を判定すること
を含む前記方法。
(7)びまん性肺胞傷害の診断及び治療方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の発症の有無を判定すること、及び
d1. びまん性肺胞傷害を発症している可能性が高いと判定された被験者にびまん性肺胞傷害の治療を施すこと
を含む前記方法。
(8)びまん性肺胞傷害の診断及び治療方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の病勢を判定すること、及び
d1. びまん性肺胞傷害の急性期にある可能性が高いと判定された被験者にびまん性肺胞傷害の治療を施すこと
を含む前記方法。
(9)ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6(CA6)からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することを含む、間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の検査方法。
(10)発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質であり、測定値が間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の病勢診断を補助する(9)記載の方法。
(11)間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の発症の有無を判定すること
を含む前記方法。
(12)間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の病勢を判定すること
を含む前記方法。
(13)間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断及び治療方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の発症の有無を判定すること、及び
d2. 間質性肺炎を発症している可能性が高いと判定された被験者に間質性肺炎の治療を施すこと
を含む前記方法。
(14)間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断及び治療方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の病勢を判定すること、及び
d2. 間質性肺炎の急性期にある可能性が高いと判定された被験者に間質性肺炎の治療を施すこと
を含む前記方法。
(15)ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することができる試薬を含む、びまん性肺胞傷害の検査のためのキット。
(16)ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することができる試薬を含む、間質性肺炎(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の検査のためのキット。
本発明により見いだされたタンパク質の血液中濃度を、単独、あるいは複数項目を測定することにより、間質性肺炎疑いの患者がびまん性肺胞傷害なのか否か、また患者の病勢や間質性肺炎の活動性について、高い確度で診断することができる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2019‐142706の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
びまん性肺胞傷害で特異的な変動を示すタンパク質。DAD特異的な増加が見られる6種類のタンパク質について、健常、および各間質性肺炎病型の急性期、回復期におけるSOMAscan測定値をボックスプロットにより比較した。ボックスは、SOMAscan測定値の四分位偏差(75%および25%)と中央値を示す。HC: 健常、DAD: びまん性肺胞傷害、OP: 器質化肺炎、NSIP: 非特異性間質性肺炎、A: 急性期、R: 回復期、SFN:ストラテフィン、CYTF:シスタチンF、NET1:ネトリン-1を示す。 間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)で変動するタンパク質。SOMAscan解析で間質性肺炎のどの病型においても増加もしくは減少が見られた7種類のタンパク質について、健常人および各急性期および回復期の量差をボックスプロットにより比較した。ボックスは、SOMAscan測定値の四分位偏差(75%および25%)と中央値を示す。HC: 健常、DAD: びまん性肺胞傷害、OP: 器質化肺炎、NSIP: 非特異性間質性肺炎、A: 急性期、R: 回復期、PAPP-A:パパリシン、CA6:カーボニックアンヒドラーゼ6を示す。 DAD診断性能に対するコンビネーションアッセイの影響。DADに特異的なタンパク質同士を組み合わせた時の診断性能の効果を評価するために、まず個々のSOMAscan測定値を全検体の平均値に対して標準化し、2種のタンパク質の標準化測定値の和を診断インデックスとして用いた。 (A) DAD急性期とその他の群におけるシスタチンF(CYTF)+ ストラテフィン(SFN)、およびネトリン-1(NET1)+ IL-1Ra値の比較。(B) CYTFとSFN(左)、 NET1とIL-1Ra(右)を組み合わせた時のROC曲線。DAD急性期 (DAD-Ac, n=8) と それ以外の病型の急性期 (non-DAD-Ac, n=36)を比較した。 (C) 代表的なDADマーカー候補タンパク質のコンビネーションアッセイによるDAD診断性能。なお、Ac: 急性期、ALL-Rは総回復期群、HCは健常人群、SFN:ストラテフィン、CYTF:シスタチンF、NET1:ネトリン-1を示す。 健常人、薬剤性間質性肺炎の発症例の急性期、回復期、非発症例その他の肺疾患における各バイオマーカー濃度の分布。ボックスは、ELISA測定値の四分位偏差(75%および25%)と中央値を示す。HC: 健常、DILID: 薬剤性間質性肺炎、DAD: びまん性肺胞傷害、OP: 器質化肺炎、NSIP: 非特異性間質性肺炎、Ac: 急性期、All-R: 総回復期、No-onset:非発症、LuCa: 肺がん、Infectious: 感染性肺疾患、NTM: 非結核性抗酸菌症、IIPs: 特発性間質性肺炎、CTD: 膠原病肺、COPD: 慢性閉塞性肺疾患、BA: 気管支喘息を示す。 DAD急性期(確認)症例と各種被験者群との比較に関する、ストラテフィン、カリスタチン、PARC、NPS-PLA2と既存マーカー(KL-6, SP-D, CRP, LDH)のROC曲線の比較。ELISA(ストラテフィン、カリスタチン、PARC、NPS-PLA2)、臨床検査試薬(KL-6, SP-D)および臨床検査(CRP, LDH)における測定値を用いて解析した。 薬剤師間質性肺炎全般の急性期と各種被験者群との比較に関する、ストラテフィン、カリスタチン、PARC、NPS-PLA2と既存マーカー(KL-6, SP-D, CRP, LDH)のROC曲線の比較。ELISA(ストラテフィン、カリスタチン、PARC、NPS-PLA2)、臨床検査試薬(KL-6, SP-D)および臨床検査(CRP, LDH)における測定値を用いて解析した。 特発性間質性肺炎におけるストラテフィン、カリスタチンおよび既存マーカー(KL-6, SP-D)値の比較。ボックスはELISA測定値の四分位偏差(75%および25%)と中央値を示す。HC: 健常、AE-IIPs: 特発性間質性肺炎急性増悪、IPF: 特発性肺線維症、NSIP: 非特異性間質性肺炎、Other: その他の病型。 ストラテフィンと肺機能および炎症のパラメータとの相関。(A) 動脈血酸素分圧/吸入酸素飽和度比(PaO2/FiO2)と(B) 経皮的動脈血酸素飽和度/吸入酸素飽和度比(SpO2/FiO2)、(C) LDH、(D) CRPの各値は、薬剤性間質性肺炎患者の急性期に施行された臨床検査の値を用いた。rsとpの値は、スピアマンの相関係数分析から算出された。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
1.びまん性肺胞傷害の検査方法、診断方法、治療方法及び検査キット
本発明は、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することを含む、びまん性肺胞傷害の検査方法を提供する。
びまん性肺胞傷害は、急性で高度の肺胞傷害により出現する肺病変で、CTでは広範な浸潤影やスリガラス様陰影に、牽引性気管支拡張や蜂巣肺などの構造改変所見が認められるのが特徴で、びまん性肺胞傷害を呈する病態としては、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や急性間質性肺炎(AIP)、特発性肺線維症(IPF)をはじめとする慢性間質性肺炎の急性増悪などが挙げられる。本発明の方法において、びまん性肺胞傷害は、薬剤性であっても、特発性であってもよい。
ストラテフィンは、別名14-3-3シグマと呼ばれ、SFN遺伝子にコードされる248アミノ酸のタンパク質である。食道や皮膚の上皮に発現し、頭頸部がん、肺がん、子宮頸がんなどで発現することが知られている。UniProt番号P31947。
シスタチンFは、遺伝子CST7にコードされている145アミノ酸の細胞外分泌タンパク質である。骨髄や免疫系の細胞のほか、様々ながん細胞からも発現が検出される。UniProt番号O76096。
NPS-PLA2は、正式名はホスホリパーゼA2グループIIAであり、PLA2G2A遺伝子にコードされる144アミノ酸の細胞外分泌型の酵素である。活性発現にはカルシウムを必要とし、ホスホグリセリドのsn-2脂肪酸アシルエステル結合の加水分解を触媒し、遊離脂肪酸とリゾリン脂質の生成に関与する。消化管で強く発現する。UniProt番号P14555。
IL-1Raは、正式名はインターロイキン-1レセプターアンタゴニストであり、IL1RN遺伝子にコードされる159アミノ酸の細胞外分泌型として知られるタンパク質である。受容体IL-1R1に結合し、インターロイキン1アルファや1ベータの活性化を阻害する。骨髄や免疫系の細胞、消化管の細胞で高い発現が認められる。UniProt番号P18510。
ネトリン-1は、NTN1遺伝子にコードされる604アミノ酸のタンパク質であり、ラミニン関連分泌タンパク質ファミリーに含まれる。UniProt番号O95631。乳がん、腎がん、前立腺がんなどで発現上昇することが知られている。
トロポニンTは、TNNT2遺伝子にコードされるタンパク質である。発現は心筋特異的であり、心筋の収縮に関与する。UniProt番号P45379。
本発明において、被験者は、びまん性肺胞傷害の発症が疑われる哺乳動物であるが、発症の危険性が考えられるすべての哺乳動物を対象としてもよい。典型的にはヒトである。被験者由来の試料としては、被験者から得た細胞、組織、体液など、具体的には、被験者の血液(例えば、全血、血清、血漿、血漿交換外液など)や気管支肺胞洗浄液などを例示することができる。通常の血液検査(臨床検査)で得られる全血、血清あるいは血漿を血液サンプルとして使用するとよい。
本発明の方法において、被験者由来の試料における発現の測定は、試料中の上記タンパク質またはその断片の存在量を測定すればよい。測定する手段としては、特に限定されることなく公知の方法を用いても良い。タンパク質レベルで測定するのが好ましいが、核酸レベルで測定してもよい。
上記タンパク質の発現をタンパク質レベルで測定するためには、上記タンパク質を特異的に認識する抗体を用いるとよい。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれであってもよい。これらの抗体は公知の方法で製造することができるし、また市販のものを使用してもよい。典型的な方法としては、ELISA法やイムノクロマトグラフィー法などの免疫測定法が挙げられる。免疫測定法は、特殊な装置や技術を必要とせず、簡便迅速に標的タンパク質を検出、定量することが可能であるため、本発明においても上記タンパク質の測定に好ましく用いることができる。上記タンパク質の抗体は公知であり、市販品も存在する。また、上述したように、上記タンパク質のアミノ酸配列およびこれらをコードする塩基配列も公知であるので、一般的なハイブリドーマを作成することにより、各タンパク質に対する特異抗体を作製してもよい。
免疫測定法自体はこの分野で周知されている。反応形式により、サンドイッチ法、競合法、凝集法、ウェスタンブロット法等があり、また、標識に基づいて、酵素免疫分析、放射免疫分析、蛍光免疫分析、発光免疫分析等がある。本発明においては、定量的検出が可能な免疫測定法のいずれを用いてもよい。特に限定されないが、例えば、サンドイッチELISA等のサンドイッチ法を好ましく用いることができる。サンドイッチ法では、標的タンパク質に結合する抗体を固相化し、試料と反応させる。固相化抗体に結合した標的タンパク質は、酵素などで標識した検出抗体を用いて測定する。検出抗体は、固相化抗体とは異なる部位で標的タンパク質に結合する抗体を用いるのが好ましい。固相化抗体と検出抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、該抗体の抗原結合性の断片を用いることもできる。固相化抗体と結合した標的タンパク質を検出抗体と反応させ、洗浄を行った後、結合した検出抗体の量を、抗体に標識した物質からのシグナルで測定する。例えば、アルカリホスファターゼで標識した抗体を検出抗体として用いた場合、該酵素の基質を反応系内に添加し、酵素反応により生じる発色や蛍光、発光の量を対応する装置で測定すればよい。標的タンパク質を含む濃度既知の標準試料について免疫測定を行ない、標識物質のシグナルと濃度との関係をプロットした検量線を作成しておき、標的タンパク質が濃度未知の試料についても、同じ操作を行ない、得られるシグナル測定値を当該検量線に当てはめることにより、試料中の標的タンパク質を定量することができる。
上記タンパク質の発現を核酸レベルで測定するためには、上記タンパク質のmRNAと特異的にハイブリダイズできる核酸プローブを用いるとよい(ノーザンブロット法で測定する場合)。あるいはまた、上記タンパク質のmRNAを鋳型として合成されるcDNAを特異的に増幅できる少なくとも1対の核酸プライマーを用いてもよい(RT-PCR法で測定する場合)。核酸プローブ及び核酸プライマーは、上記タンパク質の遺伝子情報(上述)に基づいて設計することができる。核酸プローブは、通常、約15~1500塩基のものが適当である。核酸プローブは、放射性元素、蛍光色素、酵素などで標識するとよい。核酸プライマーは、通常、約15~30塩基のものが適当である。核酸プライマーを放射性元素、蛍光色素、酵素などで標識してもよい。
発現を測定するタンパク質又は遺伝子は1種類でもよいし、複数種類であってもよい。複数の遺伝子発現や複数のタンパク発現データを参照することにより、より正確な評価が可能となりうる。複数の遺伝子発現や複数のタンパク発現を同時に検出するためには、DNAアレイ(プローブを基板に固定)(NATURE REVIEWS, DRUG DISCOVERY, VOLUME 1, DECEMBER 2002, 951-960)、プロテインチップ(抗体を基板に固定)(NATURE REVIEWS, DRUG DISCOVERY, VOLUME 1, SEPTEMBER 2002, 683-695)、ルミネックス(NATURE REVIEWS, DRUG DISCOVERY, VOLUME 1, JUNE 2002, 447-456)、等の検出法を用いてもよい。
ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定し、その発現レベルが高い場合に、びまん性肺胞傷害を発症している可能性が高いと判定し、前記レベルが低い場合に、びまん性肺胞傷害を発症している可能性が低いと判定することができる。
よって、本発明の方法は、びまん性肺胞傷害の診断(びまん性肺胞傷害の発症の有無の判定)を補助することができる。本発明は、びまん性肺胞傷害の診断方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の発症の有無を判定すること
を含む前記方法を提供する。
本発明の一つの例として、びまん性肺胞傷害の診断は、以下のような基準で行うことができる。被験者から採取した血漿または血清(血液試料)における上記タンパク質の少なくとも1個の発現を測定し、健常人から採取した血液試料におけるそれと比較した結果、予め設定されたカットオフ値や基準値よりも高い値が得られた場合、被験者はびまん性肺胞傷害を発症していると評価する。あるいは、医薬品投与中の患者において、上記タンパク質の少なくとも1個の血液試料中濃度がカットオフ値よりも高くなった場合、当該医薬品によるびまん性肺胞傷害の発症を疑うことができる。この予め設定するカットオフ値は、当業者が適宜設定することができる。例えば、びまん性肺胞傷害を発症していない健常者の定量値の95%信頼区間を基準値としたり、ROC曲線からカットオフ値を設定したりすることができる。一実施態様として、後述の実施例のROC曲線解析から、以下のカットオフ値を設定することができる。例えば健常人との鑑別のためのカットオフ値としては、ストラテフィン:0.2~5.0 ng/mL(好ましくは、0.7 ng/mL)、NPS-PLA2:4~14 ng/mL(好ましくは、7 ng/mL)が挙げられ、医薬品投与患者におけるびまん性肺胞傷害の発生を検出するためのカットオフ値は、間質性肺炎を発症しなかった非発症例との比較解析の結果より、ストラテフィン:0.7~7.2 ng/mL(好ましくは、2.4 ng/mL)、NPS-PLA2:5~60 ng/mL(好ましくは、32 ng/mL)などと設定できる。あるいは、過去の測定値と比較して、上記タンパク質の少なくとも一つが上昇の傾向を辿った場合、びまん性肺胞傷害の発症の可能性を疑う。
本発明の方法は、びまん性肺胞傷害の特異的診断にも利用できる。本明細書において、「特異的診断」とは、被験者が、びまん性肺胞傷害パターンの間質性肺炎なのか否かを判定することを指す。びまん性肺胞傷害は、間質性肺炎の病型の中でも特に重篤な病型であるので、びまん性肺胞傷害の特異的診断に利用できることは、臨床上の意義が大きい。ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現レベルが高い場合に、病型がびまん性肺胞傷害である可能性が高いと判定することができる。例えば、びまん性肺胞傷害以外の間質性肺炎患者の定量値の95%信頼区間を基準値としたり、ROC曲線からカットオフ値を設定したりすることができる。一実施態様として、後述の実施例のROC曲線解析から、以下のカットオフ値を設定することができる。例えばびまん性肺胞傷害とそれ以外の間質性肺炎の患者の測定値を比較することで、びまん性肺胞傷害の特異的診断のカットオフ値として、ストラテフィン: 1.0~5.3 ng/mL(好ましくは、2.4 ng/mL)、NPS-PLA2:10~87 ng/mL(好ましくは、32 ng/mL)。
本発明の方法をびまん性肺胞傷害の特異的診断に利用する場合には、発現を測定するタンパク質が、ストラテフィン、シスタチンF、NPS-PLA2、IL-1Ra、ネトリン-1、トロポニンT、又はそれらの組み合わせであるとよい。組み合わせとしては、シスタチンFとストラテフィンの組み合わせ、シスタチンFとネトリン-1の組み合わせ、ストラテフィンとネトリン-1の組み合わせ又はネトリン-1とIL-1Raの組み合わせを例示することができる。
また、本発明の方法は、びまん性肺胞傷害の病勢診断にも利用できる。本明細書において、「病勢診断」とは、びまん性肺胞傷害と診断された被験者の、病態の程度や変化(重症度、治療効果等)の判断を意味する。ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現レベルが高い場合に、びまん性肺胞傷害の急性期にある可能性が高いと判定することができる。例えば、びまん性肺胞傷害の回復期にある患者の定量値の95%信頼区間を基準値としたり、ROC曲線からカットオフ値を設定したりすることができる。一実施態様として、後述の実施例のROC曲線解析から、例えば以下のカットオフ値を設定することができる。ストラテフィン:0.8~5.0 ng/mL(好ましくは、2.3 ng/mL)、NPS-PLA2:8~32 ng/mL(好ましくは、16 ng/mL)。
本発明は、びまん性肺胞傷害の診断方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の病勢を判定すること
を含む前記方法を提供する。
さらに、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、びまん性肺胞傷害の急性期にある可能性が高いと判定された被験者由来の試料における発現を1回又は異なる時期に複数回測定し、発現レベルがカットオフ値もしくは基準値に近いレベルにまで低下した場合に、治療によりびまん性肺胞傷害から回復したと判定し、前記レベルが高いあるいは低下しない場合に、治療によりびまん性肺胞傷害から回復していない、あるいは回復が不十分であると判定することができる。本発明の方法は、びまん性肺胞傷害の病勢診断の他、予後の検査、治療効果の確認にも利用できる。
被験者がびまん性肺胞傷害を発症している可能性が高いと判断された場合には、薬剤性が疑われる場合は、被疑薬はすみやかに中止する。次いで、喀痰や血清の感染症検査、画像検査、気管支肺胞洗浄検査や病理検査などの各種検査を組み合わせて行い、びまん性肺胞傷害の診断を確定させる。びまん性肺胞傷害の診断が下された時は、すみやかに副腎皮質ステロイドの投与を開始する。日本呼吸器学会の治療指針では、メチルプレドニゾロン500~1000 mg/日を3日間投与するパルス療法を行い、プレドニゾロン換算で0.5~1.0 mg/kg/日で継続し、漸減することが推奨されている。漸減の速度に一定の基準はなく、治療反応性をみながら減らしていく。ステロイド治療に抵抗性、あるいは難治性の肺障害では、免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムスなど)や好中球エラスターゼ阻害薬(シベレスタット)の投与、ポリミキシンB固定化線維カラム(PMX)療法などを組み合わせた集学的治療を行う。これらの治療は薬剤性肺障害に対するエビデンスに乏しく保険適用もないため、実際にはIPFの急性増悪や急性呼吸窮迫症候群に準じて用いられる。呼吸不全には対しては、高流量酸素投与、非侵襲的陽圧換気療法、あるいは気管内挿管下での人工呼吸管理など、重症度に応じた対処を行う。
米国においても、IPFの急性増悪例(IPF患者の5-10%)と診断した場合は、コルチコステロイド(プレドニゾロン等)の投与が推奨されているが、投与量、投与経路および期間は、各医療施設の方針に委ねられる(AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY AND CRINICAL CARE MEDICINE, MARCH 2011. 15;183(6):788-824)。
本発明は、びまん性肺胞傷害の診断及び治療方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の発症の有無を判定すること、及び
d1. びまん性肺胞傷害を発症している可能性が高いと判定された被験者にびまん性肺胞傷害の治療を施すこと
を含む前記方法を提供する。
また、本発明は、びまん性肺胞傷害の診断及び治療方法であって、
a1. 被験者から試料を得ること、
b1. ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c1. b1の測定値に基づき、びまん性肺胞傷害の病勢を判定すること、及び
d1. びまん性肺胞傷害の急性期にある可能性が高いと判定された被験者にびまん性肺胞傷害の治療を施すこと
を含む前記方法を提供する。
本発明は、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することができる試薬を含む、びまん性肺胞傷害の検査のためのキットも提供する。
一つの例として、本発明のキットは、上記タンパク質を特異的に認識できる抗体を試薬として含む。抗体はマイクロタイタープレートや磁気ビーズ、セルロース膜や基板に固定されていてもよい。キットには、さらに、被験者由来の試料を採取するための器具、抗凝固剤、上記タンパク質を検出するための試薬一式、取扱説明書などが含まれてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、びまん性肺胞傷害、あるいは急性呼吸窮迫症候群や特発性間質性肺炎の急性増悪症例の評価及び/又は鑑別基準なども記載しておくとよい。
別の一例として、本発明のキットは、上記タンパク質のmRNAと特異的にハイブリダイズできる核酸プローブを試薬として含む。核酸プローブは基板に固定されていてもよい。キットには、さらに、生体試料を採取するための器具、抗凝固剤、被験者由来の試料からRNAを抽出するための試薬類、RNAを検出するための試薬類、取扱説明書などが含まれてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、びまん性肺胞傷害、あるいは急性呼吸窮迫症候群や特発性間質性肺炎の急性増悪症例の評価及び/又は鑑別基準なども記載しておくとよい。
さらに別の一例として、本発明のキットは上記タンパク質のmRNAを鋳型として合成されるcDNAを特異的に増幅できる少なくとも1対の核酸プライマーを試薬として含む。キットには、さらに、被験者由来の試料を採取するための器具、抗凝固剤、被験者由来の試料からRNAを抽出するための試薬類、RNAを検出するための試薬類、取扱説明書などが含まれるとよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、びまん性肺胞傷害、急性呼吸窮迫症候群や特発性間質性肺炎の急性増悪症例の評価及び/又は鑑別基準なども記載しておくとよい。
本発明のキットには、この他、標準タンパク質、バッファー、基質(抗体が酵素標識されている場合)、反応停止液、洗浄液、反応容器などを含めてもよい。
本発明のキットは、疾病を診断するための医薬品として用いることができる。
2.間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の検査方法、診断方法、治療方法及び検査キット
また、本発明は、ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することを含む間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害やその他の病型の間質性肺炎)の検査方法を提供する。
間質性肺炎は、肺の間質を病変の主座とした炎症が広がる病態をいい、しばしば肺線維症を起こす。間質性肺炎は、薬剤性やじん肺、膠原病などの明確な原因に伴うものと、原因が不明な特発性とに分けられ、さらに様々な病型に分類される。代表的な病型として、びまん性肺胞傷害の他、器質化肺炎や非特異性間質性肺炎、好酸球性肺炎などがある。本発明の間質性肺炎の検査方法において、間質性肺炎の病因、病型は問わず、薬剤性間質性肺炎又は非薬剤性(特発性)間質性肺炎のいずれであってもよく、びまん性肺胞傷害や他の間質性肺炎であってもよい。
PARC (CCL18)は、CCL18遺伝子にコードされる89アミノ酸の CCモチーフを有するケモカインの1種であり、恒常性あるいは血漿ケモカインとして分類される。脂肪細胞、肺、リンパ球などに発現している。UniProt番号P55774。
LD78-betaは、CCL3L1遺伝子およびそのコピーCCL3L3遺伝子にコードされる93アミノ酸の CCモチーフの炎症性ケモカインである。骨髄やリンパ球に発現する。HIV共受容体CCR5やサイレント受容体CCBP2に結合し、HIVの感染制御に関わることが知られている。UniProt番号P16619。
PAPP-A (パパリシン)は、PAPPA遺伝子にコードされる1627アミノ酸の分泌型メタロプロテアーゼである。妊婦胎盤に特異的に発現することが知られており、動脈瘤における発現も報告されている。UniProt番号Q13219。
アポリポプロテインAI(Apo-AI)は、APOAI遺伝子によりコードされる267アミノ酸の分泌タンパク質である。肝蔵および消化管で強い発現が認められ、血中HDLの主用な構成成分として知られている。UniProt番号P02647。
カリスタチンは、カリクレインインヒビターやセルピンA4とも呼ばれ、SERPINA4遺伝子にコードされる427アミノ酸の分泌型セリンプロテアーゼインヒビターである。肝臓で産生され、血液中に豊富に存在し、組織カリクレインやカリジノゲナーゼに結合しその活性を阻害する。UniProt番号P29622。
補体C3b(C3b)は、C3遺伝子にコードされる補体C3の分解産物である。補体C3は肝臓にて産生され、血液中でC3aとC3bに分解され、C3bは補体C5の分解を制御することで、生体の免疫に関与している。UniProt番号P01024。
カーボニックアンヒドラーゼ6は、CA6遺伝子にコードされる308アミノ酸の金属酵素で、二酸化炭素と水を炭酸水素イオンと水素イオンに変換する反応を触媒する。唾液腺に強く発現する。UniProt番号P23280。
本発明の間質性肺炎の検査方法において、被験者は、間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の発症が疑われる哺乳動物であるが、発症の危険性が考えられるすべての哺乳動物を対象としてもよい。典型的にはヒトである。被験者由来の試料、発現の測定については、上述した通りである。発現を測定するタンパク質又は遺伝子は1種類でもよいし、複数種類であってもよいことについても、上述した通りである。
ストラテフィン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta及びPAPP-A (パパリシン)及び補体C3bからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定し、その発現レベルが高い場合に、間質性肺炎(びまん性肺胞傷害やその他の間質性肺炎)を発症している可能性が高いと判定し、前記レベルが低い場合に、間質性肺炎を発症している可能性が低いと判定することができる。また、これらとは逆に、Apo-AI、カリスタチン及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定し、その発現レベルが低い場合に、間質性肺炎(びまん性肺胞傷害やその他の間質性肺炎)を発症している可能性が高いと判定し、前記レベルが高い場合に、間質性肺炎を発症している可能性が低いと判定することができる。
よって、本発明の間質性肺炎の検査方法は、間質性肺炎の診断(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎の発症の有無の判定)を補助することができる。本発明は、間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の発症の有無を判定すること
を含む前記方法を提供する。
本発明の一つの例として、間質性肺炎(びまん性肺胞傷害やその他の間質性肺炎)の診断は、以下のような基準で行うことができる。被験者から採取した血清もしくは血漿(血液試料)における上記タンパク質の少なくとも1個の発現を測定し、健常人から採取した血液試料におけるそれと比較した結果、予め設定されたカットオフ値や基準値よりも高い(ストラテフィン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta及びPAPP-A (パパリシン)及び補体C3b)値、あるいは低い(Apo-AI、カリスタチン及びカーボニックアンヒドラーゼ6)値が確認された場合、被験者は間質性肺炎を発症していると評価する。あるいは、医薬品投与中の患者において、上記タンパク質の少なくとも1個の血液試料中濃度がカットオフ値よりも高くなった場合(ストラテフィン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta及びPAPP-A (パパリシン)及び補体C3b)、もしくは低くなった場合(Apo-AI、カリスタチン及びカーボニックアンヒドラーゼ6)、当該医薬品による間質性肺炎(薬剤性間質性肺炎)の発生を疑うことができる。上記の予め設定するカットオフ値は、当業者が適宜設定することができる。例えば、間質性肺炎を発症していない健常者の定量値の95%信頼区間を基準値としたり、ROC曲線からカットオフ値を設定したりすることができる。一実施態様として、後述の実施例のROC曲線解析から、以下のカットオフ値を設定することができる。例えば健常人との鑑別のためのカットオフ値は、ストラテフィン:0.2~1.0 ng/mL(好ましくは、0.5 ng/mL)、カリスタチン:7.5~14.5 μg/mL(好ましくは、10 μg/mL)、NPS-PLA2:3~12 ng/mL(好ましくは、6 ng/mL)、PARC (CCL18):17~60 ng/mL(好ましくは、35 ng/mL)。また、医薬品投与患者における間質性肺炎の発生を検出するためのカットオフ値は、間質性肺炎非発症例と比較することで、ストラテフィン:0.2~1.7 ng/mL(好ましくは、0.6 ng/mL)、カリスタチン:7.5~14 μg/mL(好ましくは、11 μg/mL)、NPS-PLA2:7.5~14 ng/mL(好ましくは、9 ng/mL)、PARC (CCL18):20~60 ng/mL(好ましくは、36 ng/mL)と設定できる。あるいは、過去の測定値と比較して、ストラテフィン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、PAPP-A (パパリシン)及び補体C3bの一つが上昇の傾向を辿った場合、あるいはApo-AI、カリスタチンやカーボニックアンヒドラーゼ6が減少の傾向を辿った場合、間質性肺炎の発症の可能性を疑う。
また、カリスタチン、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6の少なくとも一つの測定により間質性肺炎の発症が疑われた患者において、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質が、基準値あるいはカットオフ値よりも高い場合は、びまん性肺胞傷害を強く疑うことができ、ストラテフィン、NPS-PLA2、シスタチンF、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTが、いずれも基準値内あるいはカットオフ値以下の場合は、その他の間質性肺炎である可能性を疑うことができる。
本発明の間質性肺炎の検査方法は、間質性肺炎(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の病勢診断にも利用できる。ストラテフィン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、PAPP-A (パパリシン)及び補体C3bからなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現レベルが高い場合、あるいは、Apo-AI、カリスタチン及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現レベルが低い場合に、間質性肺炎の急性期にある可能性が高いと判定することができる。例えば、間質性肺炎の回復期にある患者の定量値の95%信頼区間を基準値としたり、ROC曲線からカットオフ値を設定したりすることができる。一実施態様として、後述の実施例のROC曲線解析から、例えば以下のカットオフ値を設定することができる。ストラテフィン:0.2~1.7 ng/mL(好ましくは、1 ng/mL)、カリスタチン:7.5~14.5 ng/mL(好ましくは、10 ng/mL)、NPS-PLA2:4~28(好ましくは、8 ng/mL)、PARC (CCL18):16~60 ng/mL(好ましくは、33 ng/mL)。
本発明は、間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、及び
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の病勢を判定すること
を含む前記方法を提供する。
さらに、間質性肺炎(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の急性期にある可能性が高いと判定された被験者由来の試料において、ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、1回又は異なる時期に複数回測定し、基準値内に入った場合に、治療により間質性肺炎から回復したと判定し、前記レベルが基準値から外れたままの場合は、治療により間質性肺炎から回復していない、あるいは、回復が不十分であると判定することができる。本発明の方法は、間質性肺炎の病勢診断の他、予後の検査、治療効果の確認にも利用できる。
被験者が間質性肺炎を発症している可能性が高いと評価された場合には、薬剤性が疑われる場合は、被疑薬をすみやかに中止する。次いで、喀痰や血清の感染症検査、画像検査、気管支肺胞洗浄検査や病理検査などの各種検査を行い、間質性肺炎の病型の診断を確定させる。非特異性間質性肺炎や器質化肺炎、好酸球性肺炎の場合には、症状や重症度に応じて、ステロイド治療の施行を検討する。ステロイドの投与量はプレドニゾロン換算で0.5~1.0 mg/kg/日から開始し、2か月程度で漸減・終了する。びまん性肺胞傷害の場合は、上述しているように、パルス療法を含むステロイド治療に加え、重症例では免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムスなど)や好中球エラスターゼ阻害薬(シベレスタット)の投与、ポリミキシンB固定化線維カラム(PMX)療法などを組み合わせた集学的治療を考慮する。
米国では、薬剤性の間質性肺炎の発生頻度が日本ほど高くなく(RESPIRATORY INVESTIGATION, Dec 2013, 51(4):260-77)、間質性肺炎としては、薬剤性でなく特発性間質性肺炎がまず挙げられる。米国呼吸器学会(American Thoracic Society)では診断(病型等)に関するStatementは発表しているものの(AM J RESPIR CRIT CARE MED. Sep 2013;188(6):733-48)、一般的な病型に関する治療ガイドラインを有しておらず、基本的に各医療施設の方針に委ねられている。例えば、Mayo clinicでは、一般的な間質性肺炎の治療として、薬物治療、酸素療法、肺のリハビリテーション、肺移植が行われている(https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/interstitial-lung-disease/diagnosis-treatment/drc-20353113)。薬物治療としては、1) コルチコステロイド薬(プレドニゾロン等)及びその免疫抑制薬との薬剤と併用:間質性肺炎の進行を遅くする、または安定させると期待される、2) 特発性肺線維症治療薬(ピルフェニドンとニンテダニブ:間質性肺炎の進行を遅くすると期待される)。3)胃酸分泌抑制薬(ランソプラゾールやオメプラゾール等:逆流性食道炎の防止により胃液の誤嚥を低下させ、肺損傷悪化を抑制する)、がある。酸素療法は、肺の損傷を防ぐことはできないが、呼吸を楽にする、血中酸素濃度の低下による合併症を予防・軽減する、心臓の右側の血圧低下、が期待される。肺のリハビリテーションは、日常動作の容易性などQOLを改善する。肺移植は、他の治療選択肢がない重症間質性肺炎患者にとり、最後の手段である。
一方、間質性肺炎の一種であるIPFに関しては、患者数も多く予後不良のため、臨床研究結果に基づき、米国呼吸器学会より治療ガイドラインが発表されている(AMERICAN JOURNAL OF RESPIRATORY AND CRINICAL CARE MEDICINE, JULY 2015. 192(2):e3-19)。IPFの治療薬として条件付きで推奨されている医薬品としては、ニンテダニブ(血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)等のチロシンキナーゼに対する阻害薬)、ピルフェニドン(抗繊維化作用)、胃酸分泌抑制薬(逆流性食道炎の防止による肺損傷悪化抑制)、がある。しかし、ワルファリン(抗凝固薬)、イマチニブ(血小板由来成長因子(PDGF)の選択的チロシンキナーゼ阻害剤)、プレドニゾン・アザチオプリン・N-アセチルシステインの組み合わせやアンブリセンタン(選択的エンドセリン受容体拮抗薬)はその有効性に疑問が持たれており、使用することは推奨されていないが、その使用を排除するものではない。
本発明は、間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断及び治療方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の発症の有無を判定すること、及び
d2. 間質性肺炎を発症している可能性が高いと判定された被験者に間質性肺炎の治療を施すこと
を含む前記方法を提供する。
また、本発明は、間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)の診断及び治療方法であって、
a2. 被験者から試料を得ること、
b2. ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定すること、
c2. b2の測定値に基づき、間質性肺炎の病勢を判定すること、及び
d2. 間質性肺炎の急性期にある可能性が高いと判定された被験者に間質性肺炎の治療を施すこと
を含む前記方法を提供する。
また、本発明は、ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARC (CCL18)、LD78-beta、Apo-AI、PAPP-A (パパリシン)、補体C3b及びカーボニックアンヒドラーゼ6からなる群より選択される少なくとも1個のタンパク質について、被験者由来の試料における発現を測定することができる試薬を含む、間質性肺炎(びまん性肺胞傷害やその他の間質性肺炎)の検査のためのキットを提供する。
一つの例として、本発明のキットは、上記タンパク質を特異的に認識できる抗体を試薬として含む。抗体はマイクロタイタープレートや磁気ビーズ、セルロース膜や基板に固定されていてもよい。キットには、さらに、被験者由来の試料を採取するための器具、抗凝固剤、上記タンパク質を検出するための試薬一式、取扱説明書などが含まれてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、間質性肺炎の評価及び/又は鑑別基準なども記載しておくとよい。
別の一例として、本発明のキットは、上記タンパク質のmRNAと特異的にハイブリダイズできる核酸プローブを試薬として含む。核酸プローブは基板に固定されていてもよい。キットには、さらに、生体試料を採取するための器具、抗凝固剤、被験者由来の試料からRNAを抽出するための試薬類、RNAを検出するための試薬類、取扱説明書などが含まれてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、間質性肺炎の評価及び/又は鑑別基準なども記載しておくとよい。
さらに別の一例として、本発明のキットは上記タンパク質のmRNAを鋳型として合成されるcDNAを特異的に増幅できる少なくとも1対の核酸プライマーを試薬として含む。キットには、さらに、被験者由来の試料を採取するための器具、抗凝固剤、被験者由来の試料からRNAを抽出するための試薬類、RNAを検出するための試薬類、取扱説明書などが含まれるとよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、間質性肺炎の評価及び/又は鑑別基準なども記載しておくとよい。
本発明のキットには、この他、標準タンパク質、バッファー、基質(抗体が酵素標識されている場合)、反応停止液、洗浄液、反応容器などを含めてもよい。
本発明のキットは、疾病を診断するための医薬品として用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
(1)検体
解析に用いたヒト間質性肺炎試料については、4箇所の拠点病院(信州大学、日本医科大学、千葉大学、広島大学)、国立医薬品食品衛生研究所、木原財団、アステラス製薬、及び第一三共において、各研究倫理委員会の承認を得て収集・解析した。
医薬品による間質性肺炎の発症が疑われた患者に対して薬剤性間質性肺炎の急性期(最悪期付近)および回復期に採血を上記の拠点病院にて行った。入院時は早朝空腹時に、外来時は随時、採血した。各拠点病院において、患者の同意の下、血漿採取用の7 mLのEDTA-2K採血管を用いて採血を行い、速やかに混和後、3,000 rpm×10分(15℃~20℃)遠心分離を行った。採取した血漿は-80℃にて凍結保存した。
薬剤性間質性肺炎の患者検体において、画像診断において、びまん性肺胞傷害(DAD)パターンを呈する症例の急性期に採取された検体8例、回復期で採取された検体3例が存在し、解析に供した。器質化肺炎(OP)パターンの症例については、急性期16例、回復期13例、非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンの症例は、急性期18例、回復期16例、それら以外の間質性肺炎病型は急性期2例、回復期1例を用いた。健常人検体としては、ノイエス株式会社にて収集されたボランティア健常成人(間質性肺炎発症患者群との年齢構成比率を揃えた24例)の血漿検体を用いた。
(2)測定手法
各検体のプロテオーム解析は、SomaLogic社のSOMAscanシステムを用いて行った。当該システムは、アプタマー(一本鎖核酸による人工リガンド)により、1,310種のタンパク質を検出する測定法である。血漿は米国SomaLogic社に凍結状態で送付し、測定に供した。
(3)間質性肺炎バイオマーカー候補タンパク質の選定
1,310種のタンパク質のSOMAscanデータセットを用いて、臨床で特に重要とされるDADとOPで変動するタンパク質を探索した。SOMAscan測定で得られた各プローブの蛍光シグナル強度に基づき、全症例の回復期群(総回復期群、計33例)と健常人群(24例)を統合した計57例のコントロール群と比較して、DAD急性期群(9例)あるいはOP急性期群(16例)で、効果量Hedge’s g値が0.8以上、Fold change値が2倍以上の変動を示すタンパク質から、上位10位以内に入るものを抽出した。抽出したタンパク質の各病型における変動パターンから、DADの急性期では増加するが他の病型では変化が認められない、DAD特異検出しうるタンパク質が6種類見いだされた(図1、表1)。また、DADだけでなくOPやNSIPにおいても増加あるいは減少するタンパク質も9種類見つかった(図2、表2)。
(4)びまん性肺胞傷害に特異的なタンパク質のバイオマーカー性能
図1は、DADマーカー候補タンパク質6種類(ストラテフィン、シスタチンF、NPS-PLA2、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンT)の血漿中の変動パターンをボックスプロットにて示したものである。いずれのタンパク質も健常人に比べてDADの急性期で顕著な増加を示し、回復期で健常人と同程度まで減少するが、OPやNSIPにおける変動は小さかった。これらのタンパク質はDAD特異診断に有用なマーカーとなり得る。
これらDAD特異的タンパク質のバイオマーカー性能を比較するために、DAD患者と健常人および回復期群との識別(患者の病勢診断性能)、DAD以外の間質性肺炎患者との識別(DAD診断性能)に関するROC解析を実施した。表1に、各タンパク質のROC解析から得られるAUCの値をまとめた。DAD急性期群と健常群を比較すると、ほとんどのタンパク質がAUC 0.95以上と良好な識別精度を示した。回復期群に対する識別性能は、ほとんどがAUC 0.8以上の値を示し、中でもストラテフィン(同 0.91)とシスタチンF(同 0.90)が最も高かった。既存の間質性肺炎マーカーKL-6の臨床検査値に基づくAUC値は 0.78であり、上記タンパク質よりも低い値を示した。DAD診断性能(DAD急性期とそれ以外の間質性肺炎急性期との識別)については、ストラテフィン (同 0.90)とシスタチンF (同 0.91) のAUC値が最も高く、それ以外のタンパク質もAUC 0.8以上と、既存マーカーKL-6(同 0.67)よりも優れたDAD診断性能を示した。
(5)コンビネーションアッセイによるびまん性肺胞傷害の診断性能の向上
DAD診断性能が高い上位のタンパク質の中で、相関が低いもの同士を組み合わせれば、さらにDAD診断性能の向上が期待される。図3AおよびBは、相関関係の低かったシスタチンFとストラテフィン、およびネトリン-1とIL-1Raを例に、DAD診断性能に対するコンビネーションアッセイの効果を検討した結果である。各タンパク質のSOMAscan測定値を標準化した値の和を用いることにより、DAD検体の検出効率が向上し、シスタチンFとストラテフィンの組み合わせを用いた際のAUC値は0.98に、ネトリン-1とIL-1RaのAUC値は0.97にまで上昇した。これらに加えて、シスタチンFとネトリン-1やストラテフィンとネトリン-1の組み合わせなどもまた、AUC 0.95程度にまでDAD診断性能が向上することが示された。
(6)間質性肺炎全病型の急性期で変動するタンパク質のバイオマーカー性能
図2に示すように、PARC (CCL18)、LD78-betaのケモカインは、DAD、NSIP、OPのいずれの病型においても、急性期における増加傾向と回復期の減少傾向が見られた。また、胎盤特異的タンパク質PAPP-A (パパリシン)や補体C3bも、これらと同様の変動パターンを示し、これらとは逆に、Apo-AI、カーボニックアンヒドラーゼ6(CA6)、カリスタチンは、いずれの病型においても、急性期で減少する傾向が見られ、回復期では健常群と同程度にまで戻る傾向が示された(図2)。
これらのタンパク質について、間質性肺炎全般を検出する性能を、ROC解析により比較すると、DADとOPの患者急性期を健常群と識別する性能は、全てのタンパク質で、AUC値0.9以上の性能を示した(表2)。さらに、DADで顕著な上昇が見られたストラテフィンとNPS-PLA2においても、AUC値はそれぞれ0.87、0.95であり、DADとOPの患者急性期を健常群と良好に識別できる性能を示した。また、NSIPを含む全間質性肺炎の急性期の患者に対しては、AUC値は若干低下するものの、補体C3bを除くタンパク質がAUC 値0.89以上で健常人と鑑別した。一方、回復期群に対する識別性能は、DADとOPの患者急性期および全間質性肺炎の患者急性期、いずれの場合においても、健常人と比較した時よりも劣る傾向にあったものの、既存マーカーKL-6やSP-Dと同等、又はより高いAUC値を示した(表2)。以上の結果により、表2に示した9種のタンパク質は、病型を問わず、間質性肺炎を検出するバイオマーカーとなり得ることが示された。
表1.びまん性肺胞傷害特異的なタンパク質とバイオマーカー性能.
SOMAscan解析においてDADに特徴的な変動がみられたタンパク質6種類について、DAD急性期 (DAD-Ac)と健常群(HC)、総回復期群(All-R)、DAD以外の間質性肺炎群 (non-DAD-Ac)との識別性能をROC曲線解析から算出されるAUCの値で示した。既存マーカーKL-6のAUC値は、検体採取時に測定された臨床検査値より算出した。
表2.間質性肺炎全般(びまん性肺胞傷害及びその他の間質性肺炎)を検出するタンパク質のバイオマーカー性能.
SOMAscan解析において薬物性間質性肺炎全般で変動が見られたタンパク質7種類およびストラテフィンとNPS-PLA2について、健常群(HC)や回復期群(All-Re)との識別能を比較するためのROC曲線解析を行い、算出されるAUC値を示した。既存マーカーKL-6およびSP-DのAUC値は、検体採取時に測定された臨床検査値より算出した。DADはびまん性肺胞傷害、OPは器質化肺炎、Allは間質性肺炎全般、Acは急性期を示す。
(7)ELISA測定系を用いた検証
表1および表2に示したタンパク質のバイオマーカー性能を検証するために、サンドイッチELISAキットを用いて、多数検体の解析を行った。
7-1)検体
検体は、SOMAscan解析で用いた症例とは別の新たに収集した症例を追加し、薬剤性間質性肺炎の急性期の検体としては、DADパターンが18例、OPや過敏性肺炎(HP)パターンが優勢な診断ではあるが、DADパターンの併存も認められるDAD混在型(OP>DAD、HP>DAD、HP=DADなど)が9例存在した。これ以降、DADパターンとDAD混在型(DAD mixed)を合わせて、「DAD確認症例」と記した。また、OPパターン30例、NSIPパターン22例、その他のパターン(好酸球性肺炎、過敏性肺炎など)6例、およびこれらの回復期(All-R)55例と健常ボランティア77例、さらに、薬剤性間質性肺炎を発症していない化学療法中の肺がん症例(非発症例)、肺がん症例、特発性間質性肺炎、膠原病肺、COPD、非結核性抗酸菌症、気管支喘息、感染性肺疾患(真菌・細菌性感染症)などを加えて合計401例、またはその一部の血清あるいは血漿検体をELISAキットによる検証に用いた。
7-2)ELISAキット
表1および2に示したタンパク質の中で、ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARCに関してサンドイッチELISA法による測定を行った。ストラテフィンに関しては、抗ストラテフィンマウスモノクローナル抗体(シグマアルドリッチ社およびメルク社)を用いてELISA測定系を構築し、標準品には大腸菌リコンビナントヒトストラテフィン(NKMAX社)を使用した。NPS-PLA2 (Cayman社)、PARC(R&D社)、カリスタチン(R&D社)の検証には、市販の研究用のELISAキットを用いた。これら自製ELISAおよび市販ELISAキットに関しては、健常人血清・血漿を用いた部分的な分析バリデーションを行い、変動係数(CV値)15%内の精度で測定可能であること、添加回収率が80-120%内であること、希釈直線性および併行精度を事前に確認したうえで、患者検体の測定を行った。既存マーカーのSP-DおよびKL-6は、それぞれヤマサ醤油社製と東ソー社製の臨床検査試薬により測定した。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)およびC反応性タンパク質(CRP)の値は採血時の臨床検査の値を解析に用いた。
7-3)ELISAによる測定結果
各ELISAキットで定量した、健常人、薬剤性間質性肺炎発症患者の急性期と回復期、および非発症群における各バイオマーカーの濃度を表3に示した。またそれらに加えて、様々な肺疾患における既存マーカーおよび4種のバイオマーカーの変動パターンをボックスプロットとして図4に示した。いずれのタンパク質も、SOMAscanの結果を再現する形で、健常人に比べて、薬剤性間質性肺炎の急性期で増加(カリスタチンにおいては減少)し、特にストラテフィンとカリスタチンは、DAD確認症例(DADおよびDAD混在型)にて大きな変動を示した(いずれも g = 2.6, p <0.0001)。
各バイオマーカーの疾患特異性を比較すると、SP-DとKL-6は、間質性肺炎マーカーとして知られるように、DADやDAD混在型だけでなくOPやNSIPの各急性期症例でも高い値を示し、さらに多くの特発性間質性肺炎や膠原病肺症例においても高値傾向を示した(図4)。CRPは、DADとDAD混在型の急性期症例で高値傾向が見られるほか、感染性の肺疾患においても特徴的な高い値を示した。LDHは他に比べて特異性が低い傾向にあった。これらの既存バイオマーカーに対し、ストラテフィンはDADおよびDAD混在型で特徴的な増加が見られるが、他の病型においては軽度の上昇にとどまるという、SOMAscan解析結果と同様の傾向を示した。また、ストラテフィンはCRPとは異なり、感染性肺疾患では高値検体は見られなかった。一方、カリスタチン、NPS-PLA2、PARCについては、薬剤性間質性肺炎全般で変動を示す他、感染性疾患や特発性の間質性肺炎や膠原病肺等でも変動するという特徴がみられた。
7-4)DADに対するバイオマーカーとしての検証
図5および表4は、ELISA測定結果に基づいて、各タンパク質のDADに対するバイオマーカー性能を比較した結果である。DAD急性期(確認)症例(DADおよびDAD混在型)に対する健常人との鑑別性能、総回復期との鑑別性能(病勢判別能)、その他の間質性肺炎病型との鑑別性能(DAD診断性能)および非発症群との鑑別性能について、ROC曲線解析(図5A~D)から算出されるAUC値を表4に示した。
いずれのタンパク質も、健常人とDAD急性期(確認)症例との識別性能は良好であった (AUC 0.96以上、図5A)。DAD急性期(確認)症例の病勢判別(総回復期群との鑑別、図5B)においては、ストラテフィン(AUC 0.92)とカリスタチン(同0.91)が最も高い性能を示し、PARC (同0.86)とNPS-PLA2 (同0.83)は、SP-D (0.86)やCRP(0.88)と同等程度の性能であった。DAD診断能(DAD急性期(確認)症例とその他の間質性肺炎病型との鑑別性)については、ストラテフィンが最も優れており (AUC 0.88)、次いでカリスタチン(同0.82)であり、KL-6やSP-D、LDH、CRP(同0.77以下)よりも高かった(表4、図5C)。また、間質性肺炎の非発症例との鑑別においては、ストラテフィンとカリスタチンが高い性能を示した(図5D)。
各ROC曲線解析の結果から、各タンパク質のカットオフ値をYouden’s Index[感度-(100-特異度)]が最大となる濃度(感度と特異度が最も高くなる値)を指標にして求めると、健常人とDAD急性期(確認)症例の鑑別においては、ストラテフィン:0.7 ng/mL、カリスタチン:9.2 μg/mL、PARC:35 ng/mL、NPS-PLA2:7.0 ng/mLであった。DADの病勢判別のためのカットオフ値は、ストラテフィン:2.3 ng/mL、カリスタチン:8.6 μg/mL、PARC:32 ng/mL、NPS-PLA2:16 ng/mLであり、DAD診断(他の病型との鑑別)のためのカットオフ値は、ストラテフィン:2.4 ng/mL、カリスタチン:8.6 μg/mL、PARC:57 ng/mL、NPS-PLA2:63 ng/mLであった。非発症例との鑑別のためのカットオフ値は、ストラテフィン:2.4 ng/mL、カリスタチン:11 μg/mL、PARC:35 ng/mL、NPS-PLA2:32 ng/mLであった。
薬剤性間質性肺炎の診断においては感染性肺疾患との鑑別は、治療方針を決定するためにも重要である。DAD急性期(確認)症例と感染性肺疾患(真菌、細菌性)との鑑別性能を比較すると、今回解析したタンパク質の中では、ストラテフィンが最も高いAUCの値(0.99)を示し、SP-D(同 0.92)やKL-6(同 0.89)を上回る性能を示した(図5E)。この時のストラテフィンのカットオフ値(Youden’s Index最大値を示す濃度)は1.4 ng/mLであった。
7-5)間質性肺炎全般に対するバイオマーカーとしての検証
表5は、間質性肺炎全般に対して、健常人、あるいは回復期との鑑別性能を比較した結果である。ストラテフィン、カリスタチン、NPS-PLA2、PARCは、健常人との高い鑑別性能(AUC 0.86以上)を示した(図6A)。間質性肺炎全般における病勢判別能(総回復期群との比較)は、カリスタチン(AUC 0.76)とPARC(同0.74)が、SP-D(同0.77)と同様であり、KL-6 (同0.62)を上回った(図6B)。非発症との鑑別では、カリスタチンが(AUC 0.81)が優れていた(図6C)。
各タンパク質のカットオフ値をYouden’s Index最大値となる濃度で求めると、健常人との鑑別においては、ストラテフィン:0.5 ng/mL、カリスタチン:10 μg/mL、PARC:35 ng/mL、NPS-PLA2:6 ng/mLであり、間質性肺炎全般の病勢判別のカットオフ値は、ストラテフィン:1 ng/mL、カリスタチン:10 μg/mL、PARC:33 ng/mL、NPS-PLA2:8 ng/mLであった。非発症例との鑑別のためのカットオフ値は、ストラテフィン:0.56 ng/mL、カリスタチン:11 μg/mL、PARC:36 ng/mL、NPS-PLA2:9 ng/mLであった。
また、臨床上重要とされる間質性肺炎と感染性肺疾患との鑑別においては、ストラテフィン(AUC 0.84)がSP-D(同 0.84)やKL-6 (同 0.83)と同等の性能を示した(図6D)。この時のストラテフィンのカットオフ値(Youden’s Index最大値を示す濃度)は 0.8 ng/mLであった。
7-6)陽性率の比較
表6は、ストラテフィン、カリスタチン、PARC、NPS-PLA2のそれぞれのカットオフ値を設定し、各間質性肺炎病型や各疾患に対する陽性率について、SP-DやKL-6と比較した結果である。KL-6とSP-Dについては臨床で用いられている基準値(500 U/mLおよび110 ng/mL)を、その他のタンパク質については、DAD急性期(確認)症例と非発症群を比較した際のROC曲線から(図5D)、感度と特異度が最も高くなる濃度をカットオフ値として設定した。
ストラテフィンにおいて、健常群では陽性例(>2.4 ng/mL)は全く見られない一方で、DAD急性期(確認)症例(DADやDAD混在型)では92%と高い陽性率を示した。対して、OPやNSIPなど他の病型では20-33%と低かったことから、適切なカットオフ値を設定することで、ストラテフィンはDAD特異的な血清診断に有用である可能性があることが示唆された。また、ストラテフィンの総回復期群や非発症群における陽性率(11%、13%)は、KL-6(各々49%、30%)やSP-D(各々42%、27%)よりも低く、感染性肺疾患や非結核性抗酸菌症では陽性は見られなかった。
NPS-PLA2もまたDAD優位な陽性率(79%)を示したが、感染性肺疾患でも陽性例が多く存在した(62%)。カリスタチンとPARCは、DAD急性期(確認)症例だけでなく、OPやNSIPでも陽性率が高く、総回復期群の陽性率がKL-6やSP-Dよりも低かった。これは、薬剤性間質性肺炎全般の病勢判別に、カリスタチンとPARCが有用である可能性を示唆する結果である。
表7は、KL-6あるいはSP-Dが陰性を示した薬剤性間質性肺炎症例に対して、他のタンパク質が陽性として判別検出できるかどうかを調べた結果である。薬剤性間質性肺炎全体において、急性期であるもののKL-6陰性(500 U/mL以下)だった検体は22例存在し、その中でSP-D陽性だったのが12例(55%)、ストラテフィン陽性だったのが8例(36%)存在した。これらに対し、カリスタチンは陽性(<11 μg/mL)が19例(86%)と高く、PARCもまた、解析した19例中16例(84%)と高い陽性率を示した。カリスタチンとPARCは、ストラテフィンとは異なり、OPやNSIPに対しても陽性率が高かった。同様にして、SP-D陰性例(110 ng/mL以下)においても、カリスタチンとPARCは高い陽性率(79-81%)を示した。したがって、これらのタンパク質を組み合わせて使用することで、薬剤性間質性肺炎の検出効率がより高まる可能性が示唆された。
7-7)特発性間質性肺炎の急性増悪例の検出性能
特発性の間質性肺炎の急性増悪例も、病理組織像はDADである。特発性間質性肺炎の症例を病型ごとに分類して解析すると、図7に示すように、KL-6やSP-Dは、特発性間質性肺炎の急性増悪例(AE-IIPs, 特発性肺線維症(IPF)急性増悪と急性特発性肺炎を含む)で高い値を示すものの、IPFやNSIPなど、他の間質性肺炎病型でも陽性(SP-D >110 ng/mL、KL-6 >500 U/mL)が多かった。カリスタチンもまた、特発性間質性肺炎全般的に陽性例(カットオフ: <11 μg/mL)が多かった。これらに対し、ストラテフィンは、AE-IIPsで高値傾向が見られ、他の病型では陰性(2.4 ng/mL以下)が多かった。したがって、ストラテフィンは、薬剤性だけでなく、特発性の間質性肺炎に対してもDADマーカーとして有用であり、カリスタチンは特発性の間質性肺炎全般に対しても有用であることを示している。
7-8)肺機能、炎症パラメータとの相関
図8は、患者の肺機能(血液酸素化能力)や炎症パラメータとストラテフィンとの相関を調べた結果である。血中ストラテフィン濃度は、血中酸素化能力の指標であるPaO2/FiO2比やSpO2/FiO2比と相関を示し(図8A、B)、組織の損傷や炎症の度合いの指標となるLDHやCRPとも相関を示した(図8C、D)。血中ストラテフィン濃度は、組織の損傷や炎症に伴う肺機能の低下に伴って変動することが示唆された。
表3.ELISAにより定量した各被験者群における各バイオマーカーの血中濃度。血中濃度は中央値(範囲)で示す。nは測定した患者検体数、g値とp値は健常群(HC)とDAD確認症例[DAD + DAD混合型]を比較した際の効果量 ヘッジのg値およびマンホイットニー検定のp値を示す。DADはびまん性肺胞傷害、OPは器質化肺炎、NSIPは非特異性間質肺炎、Allは間質性肺炎全般、no onsetは非発症、Acは急性期、Rは回復期を示す。
表4.ELISAにより検証したDADに対するバイオマーカー性能。DAD確認症例[DAD + DAD混合型]と健常群(HC)、総回復期群(All-R)、DAD以外の間質性肺炎群 (OP + NSIP + other)との識別性能、および非発症例群との鑑別性能を、ROC曲線解析から算出されるAUCの値で比較した。
表5. ELISAにより検証した間質性肺炎全般に対するバイオマーカー性能。薬剤性間質性肺炎全病型(All-Ac)と健常群(HC)、および総回復期群(All-R)の識別性能をROC曲線解析から算出されるAUCの値で比較した。
表6. 各間質性肺炎病型と各疾患群における各バイオマーカーの陽性率の比較
KL-6とSP-Dのカットオフ値は臨床で用いられている基準値(500 U/mLおよび110 ng/mL)を用いた。ストラテフィン、カリスタチン、PARC、NPS-PLA2のカットオフ値は、DAD急性期(確認)症例と非発症群を比較した際のYouden’s Index[感度-(100-特異度)]最大値から設定した値を用いた(段落番号[0092]記載)。
























表7. KL-6およびSP-D陰性症例における各バイオマーカーの陽性率

本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本発明は、体外診断薬、臨床検査などに利用できる。

Claims (5)

  1. ストラテフィンについて、被験者由来の血清及び/又は血漿における発現を測定することを含む、びまん性肺胞傷害の検査方法。
  2. びまん性肺胞傷害の病勢診断を補助する請求項1記載の方法。
  3. びまん性肺胞傷害の特異的診断を補助する請求項1記載の方法。
  4. シスタチンF、NPS-PLA2、IL-1Ra、ネトリン-1及びトロポニンTからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質とストラテフィンについて、被験者由来の血清及び/又は血漿における発現を測定する請求項3記載の方法。
  5. ストラテフィンについて、被験者由来の血清及び/又は血漿における発現を測定することができる試薬を含む、びまん性肺胞傷害の検査のためのキット。
JP2021537245A 2019-08-02 2020-07-28 間質性肺炎のタンパク質診断バイオマーカー Active JP7614477B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019142706 2019-08-02
JP2019142706 2019-08-02
PCT/JP2020/028866 WO2021024856A1 (ja) 2019-08-02 2020-07-28 間質性肺炎のタンパク質診断バイオマーカー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2021024856A1 JPWO2021024856A1 (ja) 2021-02-11
JP7614477B2 true JP7614477B2 (ja) 2025-01-16

Family

ID=74503620

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021537245A Active JP7614477B2 (ja) 2019-08-02 2020-07-28 間質性肺炎のタンパク質診断バイオマーカー

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7614477B2 (ja)
WO (1) WO2021024856A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114113581B (zh) * 2021-11-09 2023-03-10 广州呼吸健康研究院 一种外泌体上kl-6蛋白含量的检测方法及其应用

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015500988A (ja) 2011-12-09 2015-01-08 ミカーティス エヌ.ブイ. 肺障害のバイオマーカーとしてのltbp2
JP2016079170A (ja) 2014-10-10 2016-05-16 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 細胞遊走調節に関する疾患の予防・治療剤および肺間質の疾患の疾患活動性判定・予後評価
JP2016519763A (ja) 2013-03-15 2016-07-07 インターミューン, インコーポレイテッド プロテオームipfマーカー

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015500988A (ja) 2011-12-09 2015-01-08 ミカーティス エヌ.ブイ. 肺障害のバイオマーカーとしてのltbp2
JP2016519763A (ja) 2013-03-15 2016-07-07 インターミューン, インコーポレイテッド プロテオームipfマーカー
JP2016079170A (ja) 2014-10-10 2016-05-16 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 細胞遊走調節に関する疾患の予防・治療剤および肺間質の疾患の疾患活動性判定・予後評価

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
NORIKO SAKUMA 外、8名,Serum stratifin measurement is useful for evaluating disease severity and outcomes in patients with acute exacerbation of interstitial lung disease: a retrospective study,BMC Pulm Med,2024年,Vol.24,No.1,364, doi: 10.1186/s12890-024-03184-6.,PMID:39075455

Also Published As

Publication number Publication date
WO2021024856A1 (ja) 2021-02-11
JPWO2021024856A1 (ja) 2021-02-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8697370B2 (en) Biomarker for diagnosis, prediction and/or prognosis of sepsis and uses thereof
EP2834638B1 (en) Methods for diagnosis and prognosis of sepsis
US11041864B2 (en) Method for prediction of prognosis of sepsis
CN102782501B (zh) 在无症状患者中基于il-6检测的全身炎性应答综合征和败血症的早期诊断和预测
CN108700596A (zh) 用于心血管疾病和事件的诊断和预后方法
US20120010095A1 (en) Methods for diagnosis and prognosis of pulmonary hypertension
EP2167962A2 (en) Methods and compositions for diagnosis and/or prognosis in systemic inflammatory response syndromes
CN105556308A (zh) 用于阑尾炎的诊断和预后及腹痛病因的区分的方法和组合物
CN113409945A (zh) 一种可预测脓毒症急性肾损伤的模型
WO2014068018A1 (en) Methods of prognosis and diagnosis of sepsis
Ding et al. Diagnostic utility of combined coagulation and inflammatory biomarkers in sepsis stratification: A retrospective study
CN102395888B (zh) 通过测定降钙素原水平对在原发性非感染性疾病患者中的抗生素治疗进行风险评估
JP2013536408A (ja) ガレクチン−3測定によりモニタリングされるスタチン療法
JP7614477B2 (ja) 間質性肺炎のタンパク質診断バイオマーカー
JP2023537224A (ja) Covid-19患者の疾患重症度を予測するためのgdf-15
CN103733068A (zh) 术后感染症的诊断方法
CN118638739A (zh) Gsdmd在胸痛相关疾病诊断及疗效评估上的用途
JP7705847B2 (ja) 重症薬疹のタンパク質診断バイオマーカー
CN108283013B (zh) 骨髓纤维症的诊断和预后辅助及治疗效果监测方法及装置
Lv et al. Complement receptor CD35 on single urinary extracellular vesicle as novel biomarker of sepsis-associated acute kidney injury
WO2025176110A1 (zh) Ifp35家族蛋白在诊断脓毒症或其相关疾病中的应用
CN121476613A (zh) Ccl5作为免疫检查点抑制剂治疗肿瘤患者不良反应的预测性生物标志物及其应用
WO2021024009A1 (en) Methods and compositions for providing colon cancer assessment using protein biomarkers

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7426

Effective date: 20211129

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20211129

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230621

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240807

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20241002

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20241002

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20241127

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7614477

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150