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JP7621064B2 - スラブ付き梁のせん断強度評価方法及び構築物 - Google Patents
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本発明は、スラブ付き梁のせん断強度評価方法及びこれを用いて評価したスラブ付き梁を備えた構築物に関する。
プレキャストコンクリートで形成した梁下部を構築物の所定位置に設置した後に、梁上部及びこれに接続するスラブの配筋を行って現場コンクリートを一体に打設することにより、梁とスラブとが一体化したスラブ付き梁をハーフプレキャスト梁として形成することが知られている。
ハーフプレキャスト梁は梁の上部と下部とで異種強度のコンクリートを使用することができる。そこで、構造材である梁には高強度のコンクリートが必要であるが、二次部材であるスラブはスラブとして成り立つ強度だけあれば充分であるので、スラブ及び梁上部には普通強度のコンクリートを使用すれば、材料コストの低減に有効である。ただし、この場合、梁の構造的な耐力(主にせん断耐力)を適正に判断する必要があり、強度的に過不足のない設計方法が求められる。
例えば、特許文献1に記載の技術においては、梁の上部の高さtが梁全体の高さDの1/2以上(D/2≧t)の場合、梁の1/2より上側の部分のみを考慮して、梁の上部と下部との高さの比によるコンクリートの平均強度に基づいて梁のせん断強度を算出している。一方、D/2<tの場合 梁の上部のコンクリート強度をそのまま梁のせん断強度としている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、梁全体のせん断強度を求める際に梁の高さの1/2より上側の部分しか考慮していない。また、梁の上部と一体化されたスラブによる梁のせん断強度の向上を何ら考慮していない。
そこで、例えば、特許文献2に記載の技術においては、梁の上部のコンクリート強度をスラブの協力幅と梁の幅との比に応じた値で割り増した値を梁のせん断強度として求めている。ここで、スラブの協力幅Bは、スラブ部で負担される圧縮力がスラブと梁上部との境界面で伝達可能なせん断力を上回らない範囲内となるように、梁の内法長さLと梁上部のコンクリートの圧縮強度σc2とせん断強度σs2から、B<L/(2×σc2/σs2)の範囲内にあるように協力幅Bを求めている。
特開2006-225894号公報 特開2006-097320号公報
しかしながら、本願発明者は、上記特許文献2に記載の技術においても、スラブ付き梁のせん断強度を過少に求めており、スラブ付き梁のせん断耐力が不当に低く評価されていることを見出した。
本発明は、以上の点に鑑み、スラブ付き梁のせん断強度を適正に求めることが可能なスラブ付き梁のせん断強度評価方法、及びこれを用いて評価したスラブ付き梁を備えた構築物を提供することを目的とする。
本発明のスラブ付き梁のせん断強度評価方法は、第1のコンクリートを用いて形成された梁下部と、前記梁下部と一体化され、第1のコンクリートと異なる第2のコンクリートを用いて形成された梁上部及びスラブとからなるスラブ付き梁のせん断強度評価方法であって、前記第1のコンクリートの設計基準強度をFcd[N/mm2]、前記第2のコンクリートの設計基準強度をFcu[N/mm2]、前記梁下部の断面積をAd[mm2]、前記梁上部の断面積をAu [mm2]、前記スラブの協力幅をba[mm]、前記スラブの厚さをt[mm]、前記梁上部の高さをTu[mm]、前記梁下部及び前記梁上部の幅をb[mm]としたとき、前記スラブ付き梁のせん断強度を評価する際のコンクリートの平均強度Fce[N/mm2]は、式(1)で表され、
Fce=(Fcd・Ad+αs・Fcu・Au)/(Ad+Au) ・・・ (1)
式(1)における割増係数αsは、式(2)で表され、
αs=1+t’・b’ ・・・ (2)
ここで、t’=t/Tu、b’=ba/bであることを特徴とする。
本発明のスラブ付き梁のせん断強度評価方法によれば、後述するように、スラブ付き梁のコンクリート強度について理論的に検討し、実験で確認したうえでコンクリートの平均強度Fceが提案されている。この平均強度Fceをせん断強度の評価の際に用いることにより、安全側であって、かつ、過大なせん断耐力を有した設計となることの抑制を図ることが可能となる。
本発明のスラブ付き梁を備えた構築物は、本発明のスラブ付き梁のせん断強度評価方法を用いてせん断強度を評価したことを特徴とする。
本発明のスラブ付き梁を備えた構築物によれば、必要なせん断耐力を確保しながら構築物の構築コストの削減を図ることが可能となる。
本発明の実施形態に係る構造物の概略側面図。 図1のII-II線における模式断面図。 曲げヒンジの発生前にせん断破壊した試験体における余裕度の関係を示すグラフ。 曲げヒンジが発生した試験体における試験体における余裕度の関係を示すグラフ。 本発明の実施形態の変形例に係るスラブ付き梁の縦断面図。 本発明の実施形態の他の変形例に係るスラブ付き梁の縦断面図。 本発明の実施形態のさらに他の変形例に係るスラブ付き梁の縦断面図。 本発明の実施形態のさらに他の変形例に係るスラブ付き梁の縦断面図。
本発明の実施形態に係る評価方法にて評価される構築物100について図1及び図2を参照して説明する。
構築物100は、梁下部11が第1のコンクリートを用いて形成され、梁下部11と一体化された梁上部12及び梁上部12と一体化されたスラブ20とが共に第2のコンクリ-トを用いて形成された異種コンクリートを用いた形成されたスラブ付き梁30を備えた構造物である。
梁下部11と梁上部12とによって梁10全体が構成されている。梁10は柱40と柱40の間に存在し、柱40間の内法寸法はL0である。本構造物100は、例えば、特許第4021588号公報に記載された工法によって構築される。
梁下部11の高さ(厚さ)はTd[mm]、梁上部12の高さはTu[mm]であり、梁10全体の高さ(梁せい)はD[mm](=Td+Tu)である。なお、梁上部12の高さTuは、梁せいDの0.5倍以下であることが好ましく、より好ましくは0.25~0.5倍である。また、梁せいDは、内法寸法L0の1/2.5以下が好ましく、より好ましくは、1/6~1/2.5である。
梁10の幅はb[mm]である。そして、梁下部11は、その長手方向と直交する縦断面の断面積がAd[mm2](=Td・b)であり、梁上部12は、その長手方向と直交する縦断面の断面積がAu [mm2](=Tu ・b)である。
梁上部12の高さTuは、スラブ20の厚さt1,t2[mm]よりも低い。すなわち、梁下部11とスラブ20とは接触していない。なお、スラブ20の厚さt1,t2は、梁せいDの0.19倍以上であることが好ましく、より好ましくは0.19~0.5倍である。
梁下部11を形成する際に用いられる第1のコンクリートは、例えば高強度コンクリートであり、その設計基準強度はFcd[N/mm2]である。梁上部12及びスラブ20を形成する際に用いられる第2のコンクリートは、例えば普通強度コンクリートであり、その設計基準強度はFcu[N/mm2]であり、Fcdよりも小さい。第1及び第2のコンクリートの設計基準強度Fcu,Fcdは、好ましくは、24~60N/mm2であり、第2のコンクリートの設計基準強度Fcuは第1のコンクリートの設計基準強度Fcdの1/2以上であることが好ましい。
ここでは、梁上部12の両側方にスラブ20(21,22)が存在し、梁上部12とスラブ20との天端は同一面に位置し、梁10とスラブ20とは全体として縦断面がT字形状となっている。一方の側のスラブ21は協力幅がba1[mm]、厚さがt1[mm]であり、他方の側のスラブ22は協力幅がba2[mm]、厚さがt2[mm]である。協力幅ba1,ba2及び厚さt1,t2は同じであっても、相違していてもよい。両方のスラブ21,22の厚さは、同じであっても相違していてもよい。
スラブ21,22の協力幅ba1,ba2は、日本建築学会編「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(2010)」に従って算出される。なお、スラブ21,22の協力幅の合計ba1+ba2は、内法寸法L0の0.1倍以上であることが好ましく、より好ましくは0.1~0.83倍である。
梁10(梁下部11及び梁上部12)には、梁主筋13及びせん断補強筋14などの鉄筋が配設されている。なお、図2に記載の鉄筋の配設態様は一例であり、他の態様にて鉄筋が配設されていてもよく、例えば、ずれ防止筋、付着補強筋などが配設されていてもよい。これら鉄筋は、JIS G3112 鉄筋コンクリート用棒鋼に規定されるもの、又は国土交通大臣の認定を受けたものを用いることが好ましい。そして、梁主筋の降伏点は295~590N/mm2であることが好ましく、せん断補強筋、ずれ防止筋15、付着補強筋などの降伏点は295~1275N/mm2であることが好ましい。
なお、ずれ防止筋15、図2に2点鎖線で示すように、せん断補強筋を除き、水平接合面の応力伝達(ずれ破壊防止)に寄与する補強筋であり、梁下部11と梁上部12をつなぐように配置される。具体的には、ずれ防止筋15は、下向きU字型の鉄筋であり、上端の水平部分を梁上部12の上端筋にかけ、垂直部分の下端は梁下部11内に一般的な定着長さ以上埋設される。ずれ防止筋15は、梁の梁下部11と梁上部12の水平接合面のずれを考慮したせん断耐力を算定したうえで、必要に応じて配筋される。
ここでは、梁下部11はプレキャストで形成された鉄筋コンクリートからなり、梁上部12及びスラブ20は現場打ちコンクリートにより形成されており、スラブ付き梁30はハーフプレキャスト梁となっている。ただし、梁下部11は現場打ちコンクリートによって形成されていてもよい。また、スラブ20は、リブ付プレキャストコンクリート板(FR板)スラブ工法、ボイドスラブ工法などによって形成されるものであってもよい。
国土交通省国土技術政策総合研究所他編「壁式ラーメン鉄筋コンクリート造設計施工指針(2003)」の51,52頁には、スラブ付き梁30のような構造体のせん断変形などを算定する際に、スラブ20の協力幅baを付け加えて、梁せいDが等しい等価な長方形断面に置き換えて算出する方法が示されている。
本願発明者は、このように梁10の断面だけでなく梁10と一体化されたスラブ20の協力幅baの部分を含めた断面を考慮して、スラブ付き梁30のコンクリートの平均強度(等価平均強度)Fce[N/mm2]を、以下の式(1)によって求めることを提案する。ただし、梁下部11のコンクリート強度Fcdを上限とする。
Fce=(Fcd・Ad+αs・Fcu・Au)/(Ad+Au) ・・・ (1)
ここで、スラブ20による割増係数αsは、以下の式(2)による。
αs=1+t1’・b1’+t2’・b2’ ・・・ (2)
そして、t1’=t1/Tu、t2’=t2/Tu、b1’=ba1/b、b2’=ba2/bである。なお、スラブ20が片側のスラブ21だけである場合、式(2)は式(3)のようになる。
αs=1+t1’・b1’ ・・・ (3)
このように、本願発明の評価方法によれば、第1に、基本として、梁下部11と梁上部12の断面積比による設計基準強度の平均値を等価平均強度Fceとしている。第2に、梁上部12のコンクリートの設計基準強度は、スラブ20の協力幅baを考慮した等価平均強度Fceとしている。そして、第3に、梁上部12のコンクリートの設計基準強度は、梁上部12とスラブ20の協力幅ba分の断面積と比に基づいた割増係数αsを乗じて割り増している。
本願発明における等価平均強度Fceは、スラブ付き梁30のコンクリート強度について理論的に検討し、後述するように実験で確認したうえで提案されている。そして、この等価平均強度Fceは、後述するように安全側であって、かつ、過大なせん断耐力を有した設計となることの抑制を図ることが可能となる。そして、これにより、必要なせん断耐力を確保しながら構築物100の構築コストの削減を図ることが可能となる。
図3は、曲げ破壊前にせん断破壊した試験体における余裕度の関係を示すグラフである。X軸は、トラス・アーチ理論に基づくせん断終局強度Qsuを、式(4)に示す曲げ強度Muの略算式を用いて式(5)で算出した曲げ耐力時における梁10のせん断強度である曲げ強度Qfuで除して求めたせん断余裕度Qsu/Qfuを示している。Y軸は、試験体がせん断破壊又は付着割劣した際の最大耐力Qmaxをせん断強度Qfuで除して求めた余裕度Qmax/Qfuを示している。なお、せん断終局強度Qsuを求める際に、コンクリート強度として等価平均強度Fceを用いる。また、atは引張鉄筋の断面積、σyは主筋の降伏強度、dは梁10の有効せいである。
Mu=0.9・at・σy・d ・・・ (4)
Qfu=2・Mu/L0 ・・・ (5)
なお、図3において、×印及び四角印は試験体がせん断破壊したことを、白丸印及び斜線丸印は試験体が付着割劣したことを示している。そして、四角印及び斜線丸印は本願発明者が実際に行った試験結果を示し、×印及び白丸印は既往文献に記載の実験データを示している。
図4は、曲げ破壊した試験体における余裕度の関係を示すグラフである。図3と同じように、X軸はせん断余裕度Qsu/Qfuを、Y軸は余裕度Qmax/Qfuを示している。ただし、Qmaxは試験体がせん断破壊又は付着割劣した場合に加えて、曲げ破壊した場合の最大耐力を含んでいる。
なお、図4において、白四角印及び斜線四角印は試験体が降伏後にせん断破壊したことを、+印及び黒四角内+印は試験体が降伏後に付着割劣したことを、白菱形印及び斜線菱形印は試験体が曲がったことを示している。そして、斜線四角印、黒四角内+印及び斜線菱形印は本願発明者が実際に行った試験結果を示し、白四角印、+印及び白菱形印は既往文献に記載の実験データを示している。
図3及び図4を参照して、せん断余裕度Qsu/Qfuが1以上である領域においては、せん断終局強度Qsuが曲げ強度Qfuよりも大きく、理論上、せん断破壊ではなく曲げ破壊が生じる。
さらに、せん断余裕度Qsu/Qfuが1未満である領域において、余裕度Qmax/Qfuはせん断余裕度Qsu/Qfuよりも大きいので、せん断破壊又は付着割劣した際の最大耐力Qmaxは理論上のせん断終局強度Qsuよりも大きい。これにより、式(1)で算出した等価平均強度Fceは実際の梁10がせん断破壊するせん断強度よりも安全側に評価されていることがわかる。
また、せん断余裕度Qsu/Qfuが1以上である領域において、余裕度Qmax/Qfuは1以上であるので、曲げ破壊した際の最大耐力Qmaxは曲げ強度Qfuよりも大きい。これにより、式(1)で算出した等価平均強度Fceは実際の梁10が曲げ破壊する曲げ強度よりも安全側に評価されていることがわかる。
なお、等価平均強度Fceを算出する際には、以下のようにみなして算出することが好ましい。
第1に、図5に示すスラブ付き梁30Aのように、梁上部12の天端がスラブ20の天端よりも上方に位置する場合、梁上部12はスラブ20の天端よりも高い位置に存在する部分(図5の斜線部)を除いたものとしてみなして、等価平均強度Fceを算出する。
第2に、図6に示すスラブ付き梁30Bのように、梁下部11と梁上部12との水平接合面Aがスラブ20の底端よりも上方に位置する場合、水平接合面Aよりも低い位置に存在するスラブ20の部分(図6の斜線部)を除いたものとしてみなして、等価平均強度Fceを算出する。
第3に、図7に示すスラブ付き梁30Cのように、梁上部12において第1のコンクリートを用いて形成されている部分がある場合、その部分(図7の梁下部11と同じハッチングの部分)は梁下部11ではなく、梁上部12とみなして、等価平均強度Fceを算出する。すなわち、梁下部11とみなす部分は水平断面において全て第1のコンクリートから形成れている部分に限定される。
第4に、図7に示すスラブ付き梁30Cのように、スラブ20において第1のコンクリートなど第2のコンクリートより設計基準強度が高いコンクリートなどを用いて形成されている部分がある場合、その部分(図7の梁下部11と同じハッチングの部分)を含めて、スラブ20は第2のコンクリートからなるものとみなして、等価平均強度Fceを算出する。例えば、スラブ20の一部がプレキャストコンクリートから形成されている場合である。
第5に、図8に示すスラブ付き梁30Dのように、スラブ20にボイド(空隙)23が存在している場合、梁上部12から最も近いボイド23から外側のスラブ20の部分(図8の斜線部)は、スラブ20は協力幅baに含まないで、等価平均強度Fceを算出する。すなわち、梁上部12の側端面から最も近いボイド23の存在する位置までのスラブ20を協力幅baとする。
なお、本発明は、上述したスラブ付き梁30のせん断強度評価方法及びこれを用いて評価したスラブ付き梁を備えた構築物に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
10…梁、 11…梁下部、 12…梁上部、 13…梁主筋、 14…せん断補強筋、 15…ずれ防止筋、 20…スラブ、 21…一方のスラブ、 22…他方のスラブ、 24…ボイド、 30,30A,30B,30C…スラブ付き梁、 40…柱、 100…構築物、 A…水平接合面。

Claims (1)

  1. 第1のコンクリートを用いて形成された梁下部と、前記梁下部と一体化され、第1のコンクリートと異なる第2のコンクリートを用いて形成された梁上部及びスラブとからなるスラブ付き梁のせん断強度評価方法であって、
    前記第1のコンクリートの設計基準強度をFcd[N/mm2]、前記第2のコンクリートの設計基準強度をFcu[N/mm2]、前記梁下部の断面積をAd[mm2]、前記梁上部の断面積をAu [mm2]、前記スラブの協力幅をba[mm]、前記スラブの厚さをt[mm]、前記梁上部の高さをTu[mm]、前記梁下部及び前記梁上部の幅をb[mm]としたとき、前記スラブ付き梁のせん断強度を評価する際のコンクリートの平均強度Fce[N/mm2]は、式(1)で表され、
    Fce=(Fcd・Ad+αs・Fcu・Au)/(Ad+Au)・・・(1)
    式(1)における割増係数αsは、式(2)で表され、
    αs=1+t'・b'・・・(2)
    ここで、t'=t/Tu、b'=ba/bであることを特徴とするスラブ付き梁のせん断強度評価方法。
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