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JP7623185B2 - パーソナル空調システム - Google Patents
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Description

本発明は、タスク空間内における空調の調整を直感的で簡便に行うことが可能で、最適な風向を素早く見いだすことが容易なパーソナル空調システムに関する。
近年、オフィスにおいては、生産性を向上させるために、執務者にとって作業に集中できる空間を提供することが重要となっており、そのための一つの方法として、パーティションなどの間仕切りを用いて、個別の作業空間を形成することが提案されている。
このようなオフィスにおいては、室内全体のアンビエント空間に対して、執務者周囲の個別作業空間(タスク空間)を快適な温度環境に保持することも検討事項となっており、タスク空間に対して効率的に温度調節された空気を吹き出す床吹き出し方式の空調システムなども提案されている。
例えば、特許文献1(実開平5-59150号公報)には、パネル部材に送風機とダクトと吹出し口を設けたユニットとからなり、該パネル部材の吹出し口を円形穴に形成し、該円形穴に円盤状の吹出し口部材を回転自在に嵌合し、該吹出スリット部材に傾斜した風向板を設けた床吹出し空調ユニットの吹出し装置を備える空調システムが開示されている。
このような特許文献1に記載される従来技術においては、吹出方向を調整することができるが、その角度は限られており、気流が到達する身体部位も限定される、という問題があった。また、当該従来技術では、風向調整部は床面に設けられているため、吹出方向の角度調整のために執務者は屈んで調整する必要がある、という問題があった。このような屈んだ姿勢での調整は、一般の執務空間よりも狭いタスク空間においては、とりわけ難点となる。
また、当該従来技術によれば、風向調整部での調整後、風向がどのようなものか直感的に判断しづらく、調整後いったん着席してみないと風の当たり具合を確認できない、という問題もあった。
実開平5-59150号公報 特願2019-034612号公報 特願2019-125820号公報
上記のような問題を解消すべく、発明者らは特許文献2(特願2019-034612号)において、個室ブース壁面近傍の床面に設けられた吹出スリットと、壁面に設置した風向調整板である風向調整板を活用することで、執務者の身体に局所的に気流を供給できるパーソナル空調システムを提案した。この提案では、執務者は涼を取りたい身体部位に気流が届くよう、壁面上の適切な位置に風向調整板を移動させることで、より自由度の高いパーソナル空調システムを実現した。
特許文献2に係る発明で提案したパーソナル空調システムにおいては、風向を変更するために執務者はタスク空間内で、後ろを振り向いた上で、風向調整板の高さを調整する必要がある。
このような風向調整が必要であるために、パーソナルコンピューターなどで自動化することで、その使いやすさに関してさらなる改善が期待できた。特許文献2に係る発明における、邪魔板の高さを変える方法での自動化は技術的には可能であるが、コストダウンをねらうためには、特許文献2に係るシステムに対し、さらに、別の方法で気流の軌道を変えるシステムを考案する必要があった。
そこで、特許文献3に係る発明で、発明者らは、邪魔板の角度を変更することで執務者へ気流を供給する際の風向を調整するシステムを提案した。このシステムについて、吹出口位置で気流の軌道を変える場合には、通常の家庭用エアコンの風向調整の機構と同様に、単純に邪魔板の角度を変えればよいのだが、これまで開発した一連のブース用パーソナル空調では、吹出口位置での風向制御を試みても、吹出口がブース壁面や床面に近いために床面や壁面とのコアンダ効果の影響により気流が付着し、意図した制御ができない、という問題があった。
吹出口位置ではなくその先の鉛直上方で風向を調整する特許文献3に係る発明においては、単純に壁面に設けた邪魔板の角度を変更するだけでは、風向の制御は困難である、という問題があった。その理由は以下のとおりである。
これまで提案した一連のパーソナル空調システムでは吹出口から吹き出されてブース壁面に形成された壁面噴流の一部を邪魔板で受けて気流の方向を変更することにより軌道を調整するものであった。このようなシステムについて、図18のように、邪魔板の角度φを変えていくと、邪魔板が受ける壁面噴流の領域が少なくなる。図18のように、例えば長さl1の端部が壁面に密着して回転する邪魔板に角度をつけていくと、30°で√3l1/2、60°でl1/2となる。したがって、壁面噴流の流れを変えようと角度を変えていくと、(邪魔板の角度が大きくなる影響+邪魔板に衝突する噴流の領域が少なくなる影響)に伴い、ある角度からはわずかな角度の変化で気流の軌道が大幅に変わることになり、微調整が難しくなる、という問題があった。
この発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係るパーソナル空調システムは、垂直に設置されるブース壁によって囲まれたタスク空間の空調を行うパーソナル空調システムにおいて、前記ブース壁の設置部に沿った長手方向を有し、温度調整された空気を鉛直上方に向けて吹き出す吹出スリットと、前記ブース壁に対して、姿勢を調整可能に取り付けられた、前記吹出スリットから吹き出された空気があたる第1風向調整板と、前記ブース壁に対して取り付けられた、前記第1風向調整板と前記ブース壁の間を介して前記吹出スリットから吹き出された空気があたる第2風向調整板と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記吹出スリットの長手方向と平行な軸中心を有する回動軸を、有しており、前記第1風向調整板は前記回動軸に取り付けられ、前記回動軸が回動することで、前記第1風向調整板が、前記吹出スリットで吹き出される空気の気流方向を調整することを特徴とする。
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記第1風向調整板は、前記第1風向調整板の端部において前記回動軸に取り付けられることを特徴とする。
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記第1風向調整板は、前記回動軸を基準としたとき、前記回動軸の軸線方向と直交する所定の方向において一方のみならず、他方へも延びる構成とされていることを特徴とする。
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記第2風向調整板は、前記吹出スリットの長手方向に対して垂直である両端部から鉛直下方に延出した2つの垂直側板と、前記垂直側板のそれぞれに設けられた2つの軸受けと、を有しており、前記軸受けの間に、前記回動軸が渡されていることを特徴とする。
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記第1風向調整板は、前記回動軸の軸線方向に延びる第1板部と、境界部を介して前記第1板部につながる第2板部と、を有し、前記回動軸の軸線方向と直交する断面図において、前記第1板部の長手方向と、前記第2板部の長手方向と、は交差するように構成されていることを特徴とする。
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記回動軸の軸線方向と直交する断面図において、前記第1板部の長手方向における長さは、前記第2板部の長手方向における長さより長いことを特徴とする。
また、本発明に係るパーソナル空調システムは、前記第1板部と前記第2板部との前記境界部から最も遠い、前記第1板部の端部が床面に当接するとき、前記第1板部と前記第2板部との前記境界部から最も遠い、前記第2板部の端部がブース壁に当接することを特徴とする。
本発明に係るパーソナル空調システムは、ブース壁に対して、姿勢を調整可能に取り付けられた、吹出スリットから吹き出された空気があたる第1風向調整板と、ブース壁に対して取り付けられた、第1風向調整板とブース壁の間を介して前記吹出スリットから吹き出された空気があたる第2風向調整板と、の2つの風向調整板とから構成されており、第1風向調整板に衝突した噴流と、第1風向調整板の下流に配される第2風向調整板に衝突した噴流と、の合成噴流をタスク空間に導くことが可能となる。このような本発明に係るパーソナル空調システムによれば、第1風向調整板の調整角度(φ)が大きくなるに連れて、第2風向調整板によって形成される噴流の影響が大きくなるため、第1風向調整板の調整角度(φ)の変更による気流の風向制御が容易となり、気流の軌道の微調整も可能となる。
また、本発明の他の実施形態に係るパーソナル空調システムよれば、執務者が、温度調節された空気の気流に直接当たりたくないような場合には、第1風向調整板によって、吹出スリットから鉛直上方向に流れようとする気流の進路をふさぐことで、執務者に気流を直接当てることなく、さらに、ブース壁に囲まれたタスク空間内の換気が可能となる。
本発明の実施形態に係るパーソナル空調システム1におけるタスク空間5を示す図である。 タスク空間5の側面図である。 本発明の実施形態に係るパーソナル空調システム1の風向調整機構の詳細を説明する図である。 本発明の実施形態に係るパーソナル空調システム1の風向調整機構による気流のイメージを説明する図である。 第1風向調整板30の取り付け形態を説明する図である。 第1風向調整板30の取り付け形態を説明する図である。 CFDの対象とした風向調整機構モデルを示す図である。 CFDに基づく風向調整機構による気流の軌道の比較(風向調整板角度φ=0°)を示す図である。 CFDに基づく風向調整機構による気流の軌道の比較(風向調整板角度φ=14°)を示す図である。 CFDに基づく風向調整機構による気流の軌道の比較(風向調整板角度φ=28°)を示す図である。 CFDに基づく風向調整機構による気流の軌道の比較(風向調整板角度φ=42°)を示す図である。 CFDに基づく風向調整機構による気流の軌道の比較(風向調整板角度φ=56°)を示す図である。 二次元壁面噴流の無次元プロファイルを示す図である。 二次元壁面噴流の無次元運動量の累積分布を示す図である。 各種パラメータを説明する図である。 第2風向調整板に関するパラメータ設定を説明する図である。 第2風向調整板に衝突した気流のイメージを示す図である。 従来例に係るパーソナル空調システムを示す図である。 本発明の他の実施形態に係るパーソナル空調システム1に用いる第1風向調整板30を示す図である。 他の実施形態に係るパーソナル空調システム1のパラメータ設定を説明する図である。 回動軸31近傍の構成を示す図である。 吹出スリット10の幅bの違いによる、距離dとa1およびa2の関係を示すグラフである。 第1風向調整板30の角度調整例を示す図である。 第1風向調整板30の角度調整による気流の流れを示すイメージ図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する
図1は本発明の実施形態に係るパーソナル空調システム1におけるタスク空間5を示す図であり、図2はタスク空間5の側面図である。本発明に係るパーソナル空調システム1では、部屋全体に相当するアンビエント空間(不図示)の中に、執務者Mの作業スペースであるタスク空間5を設定してなるものである。
本発明に係るパーソナル空調システム1においては、執務者Mの周囲は、垂直に設置される4枚のブース壁20a、20b、20c、20dによって4方を囲まれ、タスク空間5が形成される。また、吹出スリット10は、4枚のブース壁20のうち1枚のブース壁20aの床板60上の設置部に沿った長手方向を有し、温度調整された空気を吹き出すように構成されている。吹出スリット10から吹き出される温度・湿度調整された空気は、周知の空調機器(不図示)によって生成される。また、アンビエント空間(不図示)においても、部屋全体としての温度・湿度調整が不図示の空調機器によってなされている。
ここで、アンビエント空間及びタスク空間5においては図示するように、吹出スリット10の長手方向に沿った方向をx方向と定義し、水平面内でx方向に垂直な方向をy方向と定義し、鉛直上方をz方向と定義する。また、x方向を幅方向、y方向を奥行方向、z方向を高さ方向とも称する。
本発明に係るパーソナル空調システム1においては、上記のようなブース壁20aの設置部に沿って(x方向に沿って)配されている吹出スリット10から、温湿度調整された空気が鉛直上方(z方向)に向けて吹き出されるようになっているが、この吹出スリット10から吹き出された空気の気流方向を、後述する風向調整機構によって調整し、タスク空間5内の執務者Mにとって快適となるように、温湿度調整された空気の気流の軌道を変更する。
図3は本発明の実施形態に係るパーソナル空調システム1の風向調整機構の詳細を説明する図であり、図4は本発明の実施形態に係るパーソナル空調システム1の風向調整機構による気流のイメージを説明する図である。
ブース壁20aの設置部に沿って設けられている吹出スリット10から吹き出された空気は、コアンダ効果のために、ブース壁20aのブース壁面に気流が付着する(沿って流れる)ようにして上昇する。このような上昇気流を本明細書では壁面噴流と称し、図面において、この壁面噴流は気流の強さを示す矢印の分布によって示している。
本発明に係るパーソナル空調システム1においては、上記のような吹出スリット10から鉛直上方に向けて吹き出された、温度調整された空気は、第1風向調整板30と第2風向調整板40の2つの風向調整板からなる風向調整機構によって影響を受け、風向が変更されるようになっている。
第1風向調整板30は、吹出スリット10の鉛直上方の第1高さ(YH1)に配され、ブース壁20aに対して、所定の隙間28を空けて取り付けられ、吹出スリット10で吹き出される空気の気流方向を調整可能とされている。
ここで、風向調整機構には、吹出スリット10の長手方向(x方向)と平行な軸中心を有する回動軸31が含まれている。回動軸31の軸中心となる線が延びる方向を「軸線方向」とする。軸線方向はx方向と平行である。回動軸31は適当な支持手段によって支持されており、ブース壁20aの壁面から、例えば、距離χ(隙間28に相当する距離)離間されている。
第1風向調整板30の端部は、この回動軸31に取り付けられ、回動軸31が回動することで、水平面に対する第1風向調整板30の角度(φ)が変更可能とされている。すなわち、第1風向調整板30はその姿勢が調整できるようになっている。これにより、第1風向調整板30は、吹出スリット10から吹き出された空気があたり、吹出スリット10から吹き出された空気の気流方向を調整することが可能となる。
第2風向調整板40は、吹出スリット10の鉛直上方の、前記の第1高さ(YH1)より高い第2高さ(YH1+YH2)に配されている。第1風向調整板30は距離χの隙間28の分、ブース壁20aの壁面から離間されて配されていたのに対して、第2風向調整板40は、ブース壁20aに対して直接取り付けられている。また、第2風向調整板40は固定されており、その姿勢の調整は不能とされている。また、第2風向調整板40は下方側の主面が、xy平面と平行(水平)となるように配されている。
本発明に係るパーソナル空調システム1においては、第1風向調整板30の回動軸31を壁面からわずかに離し、その先に床面に対し水平に設けられた第2風向調整板40(またはフレーム部材等)を備えた風向調整機構となっている。
このような風向調整機構においては、吹出スリット10から吹き出され、下部より流れてきた壁面噴流がはじめに衝突する、x方向に延びる回動軸31を中心に角度を可変とする第1風向調整板30(y方向の長さl1)と、その先にブース壁面に対して垂直に設けられた(水平方向において、ブース内方へ突出する)第2風向調整板40(y方向の長さl2)から構成される。第1風向調整板30はブース壁面との間に隙間28(距離χ)を有している。第1風向調整板30が回動すると、図3の囲み中のようにふるまうが、仮に第1風向調整板30の端部に回動軸31を設けたとすれば、この隙間28の隙間距離χは第1風向調整板30の角度に依存しない。
図4に示すイメージの通り、隙間28(距離χ)が、気流が抜けるほど十分長ければ、具体的には5~10mmほど開いていれば、壁面噴流のうちブース壁面近傍の気流は隙間28(距離χ)を通り抜け、第2風向調整板40まで流れていく。その後、第2風向調整板40に衝突した噴流(吹出スリット10から吹き出され、第2風向調整板40にあたった空気)は進行方向を床面に対しほぼ水平に変えて流れる。第1風向調整板30に衝突した噴流J1は、角度θで流れようとするが、その先でほぼ水平に流れる第2風向調整板40に衝突した噴流J2と合成され、結果として角度θより小さな角度θ’に流れる噴流J3となる。
なお、本実施形態においては、隙間28(距離χ)を凡そ5~10mmの範囲としたが、吹出スリット10の寸法・形状によっては、距離χの設定は変更され得る。
第1風向調整板30の角度φが小さい間は図18の従来の方式とそれほど変わらないが、φが大きくなっていくと、第2風向調整板40によって形成されるJ2の有無の違いがより大きくなり、φの変更による気流の風向制御が容易となる。
以上のように、本発明に係るパーソナル空調システム1では、ブース壁20aに対して、所定の隙間を空けて取り付けられ、姿勢が調整可能とされている第1風向調整板30と、ブース壁20aに対して直接取り付けられ、姿勢が調整不能とされている第2風向調整板40と、の2つの風向調整板とから構成されており、第1風向調整板30に衝突した噴流と、第1風向調整板30の下流に配される第2風向調整板40に衝突した噴流と、の合成噴流をタスク空間5に導くことが可能となる。このような本発明に係るパーソナル空調システム1によれば、第1風向調整板30の調整角度(φ)が大きくなるに連れて、第2風向調整板40によって形成される噴流の影響が大きくなるため、第1風向調整板30の調整角度(φ)の変更による気流の風向制御が容易となり、気流の軌道の微調整も可能となる。
図5及び図6は、第1風向調整板30の取り付け形態を説明する図である。本発明に係るパーソナル空調システム1では、回動軸31がブース壁20aから所定の距離離されて設けられていればよい。したがって、図5(a)に示すように、第1風向調整板30が、第1風向調整板30の端部において回動軸31に取り付けられる形態ばかりではなく、図5(b)に示すように、第1風向調整板30が、第1風向調整板30の端部以外において回動軸31に取り付けられる形態としてもよい。すなわち、第1風向調整板30は、x方向に延びる回動軸31を基準としたとき、x方向と直交する所定の方向において一方のみならず、他方へも延びる構成とされている。ここで、「板がある方向に延びる(延在する)」、とは、その板の主面がそのある方向に広がっている状態を言う。
図5(b)の場合、回動軸31はブース壁20aの壁面と離れていて、第1風向調整板30は回動動作が可能な範囲でブース壁20aの壁面に近接していてもよい。この場合、第1風向調整板30の角度φが大きくなると、隙間28が徐々に広くなっていき、特に本風向調整機構が効果を発揮する角度φが大きい状況において、隙間28が十分に開くこととなる。
図6に示す第1風向調整板30の取り付け形態においては、第2風向調整板40から延出させた垂直な側板を利用するようにしたものである。第2風向調整板40は板状である必要はなく、コ字状のフレームとして、回動軸31を受ける役割を兼ねてもよい。
図6に加えて、図7(b)も参照すると、第2風向調整板40は、前記吹出スリットの長手方向(x方向)に対して垂直(y方向)である両端部から鉛直下方(-z方向)に延出した2つの垂直側板42と、垂直側板42のそれぞれに設けられた2つの軸受け45と、を有する構造とする。
2つの垂直側板42に設けられた、それぞれの軸受け45に回動軸31を渡すように取り付けることによって、第1風向調整板30の角度を調整可能としている。このような構成によれば、第1風向調整板30と第2風向調整板40とをユニット化でき、施工性などを向上させることができる。なお、後述するCFDはこのような構造の風向調整機構を用いて検証している。
ここで、上記のような第1風向調整板30の角度(φ)を変更する方法の一例について、図1及び図2を参照して説明する。タスク空間5内には椅坐位の執務者Mのために、デスク50、パーソナルコンピューター53、照明55などを設けることができる。
本実施形態に係るパーソナル空調システム1においては、タスク空間5のブース壁20a壁面近傍の床面に設けられた吹出スリット10と、ブース壁20a壁面に設置した第1風向調整板30と第2風向調整板40を活用することで、執務者Mの身体に局所的に気流を供給できるパーソナル空調に関して、第1風向調整板30の角度(φ)を変更することで執務者に供給する風向を微調整するものである。
本実施形態においては、隙間28が設けられた上で、第1風向調整板30は吹出スリット10の鉛直上方に配され、吹出スリット10の長手方向(x方向)と平行な軸方向を有する回動軸31を中心として回動することができるように構成されている。このような第1風向調整板30は、手動によって調整するように構成することもできるが、第1風向調整板30を人力以外の駆動部によって回動させるようにすることができる。第1風向調整板30を、回動軸31を中心として回動させる駆動部(不図示)としては、例えばモーターやギアなどからなる構成を用いるようにすることができる。
第1風向調整板30が設けられる執務者Mにとって背面側のブース壁20aに対向するブース壁20cは、ちょうど執務者Mが作業を行っているときには顔を向けている方向に存在する。執務者Mの顔の向きにあるこのようなブース壁20cには、前記駆動部(不図示)に対する制御指示を発する操作指示部54が設けられることが好ましい。このようなる操作指示部54を、執務者Mが操作することで、駆動部(不図示)が第1風向調整板30の角度φを調整して、風向を変更することが可能となる。
なお、本実施形態においては、前記駆動部(不図示)に対する制御指示を発する操作指示部54を、執務者Mの顔の向きにあるブース壁20cに設けるようにしたが、このような操作指示部54の機能を、パーソナルコンピューター53にインストールされるソフトウエアに付与するように構成することもできる。
次に、本発明に係るパーソナル空調システム1の効果を、数値流体解析(CFD;Computational Fluid Dynamics)のシミュレーションによって検証したので説明する。
図7に示すように、風向調整板と回動軸のみで単純に当該板の角度を変えるモデル(従来例)と、本発明に係る風向調整機構のモデル(本発明)とを、CFDで再現し、その挙動の比較を行った。
結果を(第1)風向調整板の床面(水平面)に対する角度φごとに図8~図12に示す。φは14°刻みで0~56°の5パターンとした。ブース壁20によるタスク空間5の寸法については、内寸1700×1700mm、高さ2000mmである。また、吹出スリット10(吹出口)の寸法は、600×30mmである。また、(第1)風向調整板の寸法は、800×50mmである。また、第2風向調整板の寸法は、800×25mmである。また、隙間28(距離χ)の寸法は、10mmである。なお、図8~図12に示す解析結果のコンタ図に記載の椅坐位の使用者は気流供給位置の参考に示したもので、モデルでは再現していない。
φが小さいパターンでは、両者にそれほど違いはないが、φ=42°で(a)従来例の方が(b)本発明に比べ気流がより使用者の上部に当たるようになり、φ=56°では(a)従来例の場合、風向調整板に当たった気流がそれほど曲がらず、使用者に当たることなくブース上部へ抜けていることがわかる。したがって、(a)従来例のものにおいて、背~頭部への気流供給を実現するためには、φ>42°の領域においてより細やかな角度の制御が必要となることになる。その他施工時のばらつきなどの要因も鑑みれば、風向調整板自体に数度の角度の違いが生じる可能性もあるため、数度単位の細やかな制御が必要となると、意図した軌道の気流を形成できないことが懸念される。その点、(b)に示す対策を施すことで、その角度制御を良い意味で大まかなものにできる。したがって、本発明により、φの大きい領域についても気流の軌道の微調整が可能となるばかりでなく、施工時や長期間の使用によって生じる風向調整板の角度の違いがその後の気流の軌道に及ぼす影響を小さくすることが可能となる。
次に、本発明に係るパーソナル空調システム1において、各パラメータを設定する上での考え方について説明する。ただし、簡単のために回動軸31は第1風向調整板30の端部にあるものとする。以下に列記した各パラメータを図示すると図15の通りである。以下の説明では、これまでの記述で説明したxyz座標系とは、異なるx、yを用いることに留意されたい。
1:第1風向調整板の幅
2:第2風向調整板の幅
b:吹出スリットの幅
χ:第1風向調整板とブース壁面との隙間(回動軸の位置によっては第1風向調整板の角度に伴って変化)
H1:第1風向調整板の設置高さ(φ=0における第1風向調整板と床面との距離、または床面と回動軸との距離)
H2:回動軸と第2風向調整板との間の距離
φ:第1風向調整板と床面がなす角度
x:ブース壁からの距離
y:床面からの距離
特許文献2に記載のように、本システムにおいては、(第1)風向調整板に衝突した後の気流と床面との間におけるコアンダ効果を発生させないために、第1風向調整板の床面からの高さyH1を150mm以上離すことが望ましい。
一方で、第1風向調整板の位置が高すぎると、第1風向調整板を床面に対し水平にした際にも、使用者の足元に気流を送れなくなる。これは本システムの、使用者の足元から頭部まで気流を供給できるという効果に反する。したがって、yH1はおのずと150~200mm程度に制限される。吹出スリットの幅bは、広すぎると壁面噴流の幅が広がり、第1風向調整板で壁面噴流を受けきれなくなる(後述)。一方で、bが狭すぎると吹出スリットの抵抗が大きくなり、ファン(不図示)による搬送動力の増加や騒音の発生が懸念される。したがって、bについては20~30mm程度が望ましい。
また足元に気流を送るためには、φ=0の状況において、第1風向調整板で壁面噴流の持つ運動量のうちの多くを受ける必要がある。具体的には、壁面から噴流端部までのうち、運動量の累積分布で9割程度は第1風向調整板で受ける必要がある。既往の知見であるVerhoff(以下の式(1)、参考文献1)による二次元壁面噴流の無次元風速プロファイルは図13(a)の通りであり、この分布より求まる無次元運動量のプロファイルは図13(b)となる。さらに、図13(b)を累積分布で表せば図14となる。
Figure 0007623185000001
ここで、いずれのグラフも横軸は壁面噴流の半値幅b0.5で壁面からの距離xを除した無次元距離である。したがって図14から、90%となるのはx/b0.5が約1.02となる位置(図中●)であり、したがってほぼ半値幅程度まで第1風向調整板がブース壁から出ていればよいことになる。
つまり、χ+l1が1.02b0.5以上であればよい。ここで、隙間χを通り抜ける壁面噴流の運動量は第1風向調整板で受けることはできないため、隙間を抜ける運動量が大きすぎても第1風向調整板が風向制御の効果を発揮できなくなる。この課題については隙間χの制限について触れる際に述べる。
半値幅の式については、一般に以下の式(2)の形で表せることが知られている(参考文献1)。これは噴流の形状(自由噴流、壁面噴流など)によらないが、係数α、βが異なり、二次元壁面噴流の場合はα=0.068、β=10bとなることが知られている(参考文献1)。
ただし、実際の空調吹出口から吹き出される噴流はこのような理想的なふるまいはしないため、これら係数は吹出口ごとの特性に依存することになる。今回、特許文献2で試作したモックアップの吹出口については、α=0.176、β=129であった。これに基づけば、1.02b0.5=50.09となり、χ+l1が約50mm以上となればよいこととなる。
Figure 0007623185000002
一方で、χ+l1が大きすぎるとブース内の空間が狭くなる。使用者との接触による破損などを防ぐ意味でも、χ+l1は60mm程度が上限と考えられる。χについては、狭すぎると抵抗が大きくなり、気流が抜けず第2風向調整板まで到達しないため、5~10mm程度は隙間が必要となる。一方、上記の課題の通り、χは広すぎても壁面噴流の運動量の多くがその隙間を抜け第1風向調整板には当たらず、第2風向調整板にばかり衝突することとなり、第1風向調整板の風向調整の効果が発揮されない。
したがって、この隙間を抜ける運動量は壁面噴流の運動量全体の多くとも半分以下には抑えたい。図14より、壁面噴流の運動量が累積で50%となるのは、x/b0.5が約0.412となる位置(図中▲)であり、したがって隙間χ<0.412×α(yH1+β)となる。特許文献2の実施形態で試作したモックアップの吹出口(吹出スリット)においては、第1の調整板をy=yH1=150mmに設置した場合、χ<20.2mmとなる。
以上より、条件を整理すると以下である。
b=20~30
H1=150~200
χ+l1<50~60
50<l1
5<χ<20.2
これより、χは5~10mm程度、l1は50mm程度が妥当と考えられる。
第2風向調整板は、床面に対してできるだけ水平方向に隙間を抜けて衝突した壁面噴流の軌道を変えることが求められる。したがって、第1風向調整板の場合と同じく、隙間を抜けてきた壁面噴流の運動量の多くを受ける必要がある。いま、第1風向調整板とブース壁面との隙間をもう一つの吹出スリットとみなせば、同じくこの隙間から吹き出す壁面噴流(B2)の運動量の90%以上を第2風向調整板で受けることが必要となる(図16(a)参照)。
したがって、以下の式(3)で求まるB2以上の値となることがl2の要件である。ここでα2、 β2は隙間を抜けて形成される壁面噴流の半値幅の一次式に関する定数である。α2、β2については、隙間χが長辺(第1風向調整板の紙面奥行き長さ、特許文献2で試作したモックアップでは800mm)が十分に長いため二次元壁面噴流とみなして、二次元壁面噴流の半値幅に関する既往式を用いるとすると、α2=0.068、β2=10χである。これより、l2は以下の式(4)を条件とする。例えば、χ=10、yH2=60とした場合、l2は11.1mm以上必要ということになる。また第2風向調整板がφ=0における第1風向調整板よりも突出していることは望ましくないであろうから、l2<χ+l1が条件になる。
Figure 0007623185000003
Figure 0007623185000004
また、図16(b)のような状況で隙間χ’から気流が抜ける必要があるため、yH2はl1よりも少々大きい方が望ましい。また、第1風向調整板の角度φが大きい状況においては、第2風向調整板よりも上端が下に来ることが望ましい。したがって、図16(c)に示すように、この空間の余裕をδとすれば、l1+δ<yH2となる。δは10mm程度必要である。また、第2風向調整板に衝突した気流は図17の通り流れることから、足元に気流を送ることができる、という観点で見れば、第2風向調整板の高さはできるだけ低い方がよい。また第2風向調整板に当たった気流が第1風向調整板に衝突して流れてきた気流の軌道を矯正する、という意味においても、両者は近い方がよい。これより、yH2は「l1+δ<yH2かつできるだけ小さい」ことが求められる。以上から、隙間χから吹き出された壁面噴流を距離yH2離れた位置ですべて受けるために必要な第2風向調整板の幅l2は式(4)に基づいて20mm以上となる。
以上、すべてをまとめると以下の条件が本システムにおいて「足元から頭部まで気流を供給する」、「風向の微調整が容易なシステムとする」、「空間を狭めることなく活用する」、「吹出口での圧損を大きくしない」などの観点から見て最適と考えられる。
条件(1) yH1=150~200mm:特許文献2の検討参照。
条件(2) b=20~30mm:狭すぎると抵抗が大きくなる、広すぎると噴流が広がって受けきれなくなる。
条件(3) 1.02×α(yH1+β)mm <χ+l1<60mm 左辺:壁面噴流の90%以上の運動量を受ける(ただしφ=0のとき)、右辺:ブース内の空間を狭くしない。
条件(4) l1>40~50mm(条件(3)と(5)に依存):壁面噴流の40%以上の運動量を受ける(ただしφ=0のとき)。
条件(5) 5mm<χ<0.412×α(yH1+β)mm 左辺:気流が隙間を抜ける、右辺:壁面噴流のうち隙間を抜ける運動量を半分以下とする。
条件(6) l1+δ<yH2 かつできるだけ小さく :第1風向調整板の角度φが90°に近い時に、第2風向調整板の下に収納できる、かつ第2風向調整板で軌道を変えた気流が抜けることができる隙間が形成される。δ=10mm程度。
条件(7) 1.02×0.068(yH2+10χ)mm<l2<χ+l1 左辺:壁面噴流の90%以上の運動量を第2風向調整板で受ける、右辺:第1風向調整板の突出量(χ+l1)以下とする。
特許文献2で試作したモックアップの吹出口から吹き出される壁面噴流の特性を用い、隙間χを抜けた後の噴流を理想的な二次元壁面噴流とみなせば、以下の通りである。ここで、条件(1)はyH1=150とする。
条件(1) yH1=150mm
条件(2) b=20~30mm
条件(3) 50.09 <χ+l1<60mm
条件(4) l1>40~55mm(条件(3)と(5)に依存)
条件(5) 5mm<χ<20.2mm
条件(6) yH2=60~70mm
条件(7) 11.1mm<l2<60mm
ただし、上記の制約を緩和することで、適用の範囲は広がり得る。たとえば、使用者の足元には気流を供給しなくてよい場合にはyH1を高く上げ、それに伴うほかのパラメータの緩和も考えられる。また空間が多少狭くなってもよい場合には、第1風向調整板の幅l1の値を大きくでき、これにより壁面噴流を受けることのできる領域が増えることから、吹出口幅bや隙間χなども広げることができる、・・・・などと、条件が緩和され得る。
参考文献;Shakochi, T.: Jet flow engineering, Morikita Publishing Co., Ltd., 2004 (in Japanese)
社河内 敏彦: 噴流工学, 森北出版, 2004
以上、本発明に係るパーソナル空調システムは、ブース壁に対して、姿勢を調整可能に取り付けられた、吹出スリットから吹き出された空気があたる第1風向調整板と、ブース壁に対して取り付けられた、第1風向調整板とブース壁の間を介して前記吹出スリットから吹き出された空気があたる第2風向調整板と、の2つの風向調整板とから構成されており、第1風向調整板に衝突した噴流と、第1風向調整板の下流に配される第2風向調整板に衝突した噴流と、の合成噴流をタスク空間に導くことが可能となる。このような本発明に係るパーソナル空調システムによれば、第1風向調整板の調整角度(φ)が大きくなるに連れて、第2風向調整板によって形成される噴流の影響が大きくなるため、第1風向調整板の調整角度(φ)の変更による気流の風向制御が容易となり、気流の軌道の微調整も可能となる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これまで説明した実施形態に係るパーソナル空調システム1によれば、第1風向調整板30の角度を変えることで様々な部位に気流を供給することが可能となるが、一方、空間の温度を下げたいが気流に当たりたくない、と考えている執務者Mの要求には対応することは不可能であった。
また、昨今、感染症拡大抑止の観点から換気が重要視されているが、パーソナル空調システム1を用いて、温冷感に影響を与えずにブース壁に囲まれたタスク空間5内を換気する方法を検討する必要がある。
そこで、本実施形態では、第1風向調整板30の形状を変更することで、執務者Mに空調空気を直接当てることなくタスク空間5内を換気することを実現すると共に、これまでの実施形態と同様に気流の方向の調整も可能とする。
図19は本発明の他の実施形態に係るパーソナル空調システム1に用いる第1風向調整板30を示す図である。他の実施形態においては、第1風向調整板30は、吹出スリット10の長手方向(x方向)に対して垂直な方向で切った断面がL字状のものとすることができる。第1風向調整板30としては、一般に流通している直角アングル状の部材を用いることができるが、直角アングルのように、必ずしも2つの板体が直角に連結された部材である必要はなく、2つの板の延在方向(延びる)が所定の角度で交差するように連結された部材であればよい。以下、実施形態では、2つの板体が直角で連結された直角アングル状の部材を例に説明する。
第1風向調整板30は、第1板部110と、この第1板部110の主面と所定の角度(本実施形態では90°)をなす主面を有し、第1板部110から境界部119を介して連続する第2板部120と、から構成されるものを用いることができる。
第1風向調整板30は、回動軸の軸線方向と直交する断面図でみると、第1板部110の長手方向と、第2板部120の長手方向と、は交差するように構成されている。
第1板部110は、主面として、第1板部第1主面111と、第1板部第1主面111と対向する第1板部第2主面112とを有する。第1板部第1主面111と第1板部第2主面112とは、表裏の関係にあり、互いに平行である。同様に、第2板部120は、主面として、第2板部第1主面121と、第2板部第1主面121と対向する第2板部第2主面122とを有する。第2板部第1主面121と第2板部第2主面122とは、表裏の関係にあり、互いに平行である。第1板部110の厚み(第1板部第1主面111と第1板部第2主面112と間の距離)及び第2板部120の厚み(第2板部第1主面121と第2板部第2主面122との間の距離)は、1mm程度が想定される。
ここで、境界部119から最も遠い、第1板部110を第1の端部(第1板部端部115)とし、境界部119から最も遠い、第2板部120を第2の端部(第2板部端部125)とする。第1風向調整板30は、角度φを所定の大きさとしたとき、第1板部110の第1板部端部115が床面に当接し、それと同時に、第2板部120の第2板部端部125がブース壁20aに当接する形状・寸法を有している。また、第1風向調整板30を、吹出スリット10の長手方向に対して垂直な方向で切った断面で見ると、第1板部110の長さは、第2板部120の長い。つまり、第1板部110の延在方向における回動軸31の回転中心から第1板部端部115までの長さa1、第2板部120の延在方向における回動軸31の回転中心から第2板部端部125までの長さa2としたとき、a1>a2の関係を有している。(第1風向調整板30は、回動軸の軸線方向と直交する断面図でみると、第1板部110の長手方向における長さは、第2板部120の長手方向における長さより長い。)
上記のような第1風向調整板30によれば、第1風向調整板30を角度φとすることで、吹出スリット10から鉛直上方に流れようとする気流の進路をふさぎ、吹出方向を制御することができる。このように鉛直方向の気流の進路をふさぐことで、吹出スリット10からの空調空気は調整板に沿って紙面手前・奥行き方向に流れ、執務者Mに当たることなくブース壁20a側方向へ流れ、その後はブース壁20aに沿って流れ、といったように、執務者M周囲の床面近傍に供給されていく。これにより、置換換気の要領で執務者Mに気流を当てることなく効果的に換気を行うことができる。
先の実施形態では、第1風向調整板30のブース壁面側の端部とブース壁面との間に隙間28を設けることで風向を調整しやすくしていたが、そのような構成の場合、第1風向調整板30を振り下げ、角度φを大きくしたとしても、生じた隙間28により気流が上部へ漏れることになる。
そこで、本実施形態における第1風向調整板30では、これを防ぎ、かつこれまで通り気流を執務者M側に供給する際には、ブース壁面と第1風向調整板30との間の隙間28が十分に開いて、先の実施形態の効果が得られるよう、図20に示すように角度φに第1風向調整板30を振り下げた際に隙間28がふさがれるようなアングル状の部材を第1風向調整板30に用いるものである。
以下では模式図(図20、図21)を用いて、設計時における各長さの関係を示す。第1風向調整板30として用いるアングルは一般に流通している直角L字アングルとすることができる。第1風向調整板30としてのアングルにおける第1板部110(長辺)の長さをa1、第2板部120(短辺)の長さをa2、吹出スリット10の幅(短辺)の長さをb、第1風向調整板30の回動軸31の中心とブース壁面20aとの間の距離をc、同じく回動軸31の中心と床面(吹出スリット10)との間の距離をd、回動軸31として使用する部材を円筒とみなしその半径をrとする。
ここで、a1、a2は「回動軸中心から第1風向調整板30の第1板部110・第2板部120に降ろした垂線と第1板部110・第2板部120との交点」と「第1風向調整板30の第1板部110・第2板部120」との間の距離とする。また、第1風向調整板30としてアングルを形成する部材の厚みは無視する。
この条件において、第1風向調整板30としてアングルの長辺の長さa1、短辺の長さa2はそれぞれ下式(5)、(6)で求まる。参考に、吹出スリット10の幅bの違いによる距離dとa1およびa2の関係を図22に示す。
Figure 0007623185000005
Figure 0007623185000006
さらに、φはa1,a2以外のパラメータの間に以下の関係がある。
Figure 0007623185000007
式(7)を解けば以下の式(8)でφを求めることができる。
Figure 0007623185000008
なお、第1風向調整板30が機能するために以下の条件を満たす必要がある。
条件(1)b>(c+r)
ブース壁面から回動軸の外側までの距離(c+r)よりも吹出スリットの幅bの方が大きい。
条件(2)d>r
回動軸の半径rよりも床から回動軸までの距離dの方が大きい。
条件(3)d>a2
L字アングルの短辺長さa2よりも床から軸までの距離dの方が大きい。
条件(4)c>r
回動軸の半径rよりも壁から軸までの距離cの方が大きい。
以上のようにパラメータが設定された第1風向調整板30を用いた他の実施形態に係るパーソナル空調システム1による効果について説明する。
図23は第1風向調整板30の角度調整例を示す図であり、図24は第1風向調整板30の角度調整による気流の流れを示すイメージ図である。図23において(a)で示す第1風向調整板30の姿勢は、第1風向調整板30の角度φを0°より大きく設定した場合を示している。このとき、図24(a)に示すように、執務者Mの体幹に温度調節された空気の気流が当たるようになる。
また、図23において(b)で示す第1風向調整板30の姿勢は、第1風向調整板30の角度φをほぼ0°に設定した場合を示している。このとき、図24(b)に示すように、執務者Mの足元に温度調節された空気の気流が当たるようになる。
また、図23において(c)で示す第1風向調整板30の姿勢は、第1風向調整板30の角度φを0°未満として、第1風向調整板30をブース壁面と床面の双方に当接させて、吹出スリット10から鉛直方向に流れようとする気流の進路をふさぐように設定した場合を示している。このとき、図24(c)に示すように、換気を目的として、温度調節された空気の気流を執務者Mに当てず、床を這わせるようにすることができる。
以上のような、本発明の他の実施形態によれば、先の実施形態と同様の効果を享受することができると共に、執務者Mが、温度調節された空気の気流に直接当たりたくないような場合には、第1風向調整板30によって、吹出スリット10から鉛直上方向に流れようとする気流の進路をふさぐことで、執務者Mに気流を直接当てることなく、さらに、ブース壁20に囲まれたタスク空間5内の換気が可能となる。
1・・・パーソナル空調システム
5・・・タスク空間
10・・・吹出スリット
20、20a、20b、20c、20d・・・ブース壁
23・・・吹き抜け空間
28・・・隙間(ブース壁面からの隙間の距離:χ)(風向調整機構)
30・・・第1風向調整板(風向調整機構)
31・・・回動軸(風向調整機構)
40・・・第2風向調整板(風向調整機構)
42・・・垂直側板
45・・・軸受け
50・・・デスク
52・・・テーブル
53・・・パーソナルコンピューター
54・・・操作指示部
55・・・照明
60・・・床板
110・・・第1板部
111・・・第1板部第1主面
112・・・第1板部第2主面
115・・・第1板部端部
119・・・境界部
120・・・第2板部
121・・・第2板部第1主面
122・・・第2板部第2主面
125・・・第2板部端部
M・・・執務者

Claims (8)

  1. 垂直に設置されるブース壁によって囲まれたタスク空間の空調を行うパーソナル空調システムにおいて、
    前記ブース壁の設置部に沿った長手方向を有し、温度調整された空気を鉛直上方に向けて吹き出す吹出スリットと、
    前記ブース壁に対して、姿勢を調整可能に取り付けられた、前記吹出スリットから吹き出された空気があたる第1風向調整板と、前記ブース壁に対して取り付けられた、前記第1風向調整板と前記ブース壁の間を介して前記吹出スリットから吹き出された空気があたる第2風向調整板と、を有することを特徴とするパーソナル空調システム。
  2. 前記吹出スリットの長手方向と平行な軸中心を有する回動軸を、有しており、
    前記第1風向調整板は前記回動軸に取り付けられ、前記回動軸が回動することで、
    前記第1風向調整板が、前記吹出スリットで吹き出される空気の気流方向を調整することを特徴とする請求項1に記載のパーソナル空調システム。
  3. 前記第1風向調整板は、前記第1風向調整板の端部において前記回動軸に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のパーソナル空調システム。
  4. 前記第1風向調整板は、前記回動軸を基準としたとき、前記回動軸の軸線方向と直交する所定の方向において一方のみならず、他方へも延びる構成とされていることを特徴とする請求項2に記載のパーソナル空調システム。
  5. 前記第2風向調整板は、
    前記吹出スリットの長手方向に対して垂直である両端部から鉛直下方に延出した2つの垂直側板と、
    前記垂直側板のそれぞれに設けられた2つの軸受けと、を有しており、
    前記軸受けの間に、前記回動軸が渡されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のパーソナル空調システム。
  6. 前記第1風向調整板は、前記回動軸の軸線方向に延びる第1板部と、境界部を介して前記第1板部につながる第2板部と、を有し、
    前記回動軸の軸線方向と直交する断面図において、前記第1板部の長手方向と、前記第2板部の長手方向と、は交差するように構成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のパーソナル空調システム。
  7. 前記回動軸の軸線方向と直交する断面図において、前記第1板部の長手方向における長さは、前記第2板部の長手方向における長さより長いことを特徴とする請求項6に記載のパーソナル空調システム。
  8. 前記第1板部と前記第2板部との前記境界部から最も遠い、前記第1板部の端部が床面に当接するとき、
    前記第1板部と前記第2板部との前記境界部から最も遠い、前記第2板部の端部がブース壁に当接することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のパーソナル空調システム。
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