以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
<医療器具セット1>
図1は、本発明の一実施形態に係る医療器具セット1の説明に供する図である。
医療器具セット1は、図21~図26に示すように、所定の生体器官同士を接合する手技(例えば、消化管の吻合術)に適用することができる。後述するように、本明細書の説明では、医療器具セット1を使用した手技例として、膵実質B1と空腸B2を接合する膵実質-空腸吻合術を説明する。
医療器具セット1は、癒合促進シート100と、医療器具200と、を有する。
<癒合促進シート100>
図2は、医療器具セット1を構成する癒合促進シート100の貫通孔112について示す拡大断面図である。
図1に示すように、癒合促進シート100は、複数の貫通孔112を有する生分解性シートから形成されるとともに生体組織の癒合を促進する本体部110を有している。
図1および図2に示すように、本体部110は、シート状の部材で構成している。
本体部110に形成された各貫通孔112は、図1および図2に示すように、本体部110の面方向において規則的かつ周期的に設けられている。ただし、各貫通孔112は、本体部110の面方向の各部においてランダムに設けられていてもよい。
各貫通孔112は、図2に示すように、本体部110の厚み方向(図2の上下方向)に沿って表面111と裏面113との間で略垂直に延びてている。なお、各貫通孔112は、本体部110の厚み方向に沿う断面において表面111と裏面113との間でジグザグ状に屈曲していたり、湾曲していたりしてもよい。
各貫通孔112は、略円形の平面形状(本体部110の表面111または本体部110の裏面113を平面視した際の形状)を有する。ただし、各貫通孔112の平面形状は、特に限定されず、例えば楕円形や多角形(矩形や三角形等)であってもよい。また、貫通孔112ごとに平面形状や断面形状が異なっていてもよい。
本体部110は、略円形の平面形状を有する。ただし、本体部110の平面形状は特に限定されず、例えば楕円形や多角形(矩形や三角形等)であってもよい。また、貫通孔112ごとに平面形状や断面形状が異なっていてもよい。
本体部110の厚み(図2に示す寸法T)は特に制限されないが、好ましくは0.05mm~0.3mmであり、より好ましくは0.1~0.2mmである。本体部110の厚みが0.05mm以上である場合(特に0.1mm以上である場合)、癒合促進シート100の取り扱い時に本体部110が破損しない程度の強度を備えさせることができる。一方、本体部110の厚みが0.3mm以下である場合(特に0.2mm以下である場合)、本体部110が適用される生体組織に本体部110が密着して生体組織に追随するのに十分な柔軟性を備えさせることができる。
本体部110は、貫通孔112のピッチP(図2に示すように、隣接する貫通孔112の間の距離)に対する貫通孔112の孔径Dの比の値が0.25以上40未満であることが好ましい。なお、貫通孔112の平面形状が真円である場合、貫通孔112の孔径Dは真円の直径に等しくなる。一方、貫通孔112の平面形状が真円でない場合には、貫通孔112の開口部(貫通孔112において表面111または裏面113に面した部分)の面積と同じ面積を有する真円の直径(円相当径)を当該貫通孔112の孔径Dとすることができる。
本体部110は、複数の貫通孔112を有するため、各貫通孔112に対応する孔径Dの値が複数存在する。そこで、本実施形態では、上述した比の値を算出するにあたっては、複数の貫通孔112にそれぞれ対応する孔径Dの値の2点以上の算術平均値を孔径Dの代表値として用いるものとする。一方、複数の貫通孔112のピッチPは、2つの貫通孔112の開口部同士の最短距離で定義する。ただし、ピッチPの値についても隣接する貫通孔112の組み合わせに対応するピッチPの値が複数存在する。したがって、本実施形態では、上述した比の値を算出するにあたっては、隣接する貫通孔112の組み合わせにそれぞれ対応するピッチPの値の2点以上の算術平均値をピッチPの代表値として用いるものとする。
なお、上記の貫通孔112のピッチP、孔径D、ピッチPに対する孔径Dの比等は一例であり、これに限定されることはない。
本体部110は、生分解性の材料で構成することができる。本体部110の構成材料について特に制限はなく、例えば、生分解性樹脂が挙げられる。生分解性樹脂としては、例えば、特表2011-528275号公報、特表2008-514719号公報、国際公報第2008-1952号、特表2004-509205号公報等に記載されるものなどの公知の生分解性(共)重合体が使用できる。具体的には、(1)脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体;(2)上記(1)を構成する一以上の単量体から構成される共重合体などが挙げられる。すなわち、生分解性シートは、脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体、ならびに前記重合体を構成する一以上の単量体から構成される共重合体からなる群より選択される少なくとも一種の生分解性樹脂を含むことが好ましい。
本体部110の製造方法は特に限定されないが、例えば上述した生分解性樹脂からなる繊維を作製し、当該繊維を用いてメッシュ形状のシートを製造する方法が挙げられる。生分解性樹脂からなる繊維を作製する方法としては特に限定されないが、例えばエレクトロスピニング法(電界紡糸法・静電紡糸法)や、メルトブロー法等が挙げられる。本体部110は、上記方法のうち、1種のみを選択して用いてもよいし、2種以上を選択し適宜組み合わせてもよい。なお、本体部110の製造方法のさらに別の例として上述した生分解性樹脂からなる繊維を常法に従って紡糸し、得られた繊維をメッシュ状に編むことによって本発明に係る生分解性のシート部材を製造してもよい。
本体部110は、本体部110を構成する生分解性樹脂の構成材料によって生体反応を惹起させる。本体部110は、この作用により、フィブリン等の生体成分の発現を誘導する。このようにして誘導された生体成分は、本体部110の貫通孔112を貫通するようにして集積することで、癒合を促進することができる。したがって、膵実質B1と空腸B2の間に本体部110を配置することにより、上記のメカニズムによる癒合の促進が生じうる。
なお、癒合促進シート100の材質は、生体器官の癒合を促進させることができれば生分解性でなくてもよい。また、癒合促進シート100は、生体器官の癒合を促進させることができれば、材質にかかわらず、貫通孔112が形成されていなくてもよい。
<医療器具200>
次に、医療器具200について説明する。医療器具200は膵実質B1と空腸B2のように、接合対象となる一対の消化管の管腔が連通した状態を維持する際に用いられる。図3~図12は、医療器具200の説明に供する図である。
なお、以下の説明において、空腸B2に挿入され得る医療器具200の一端部側を「基端側」、膵実質B1に挿入され得る医療器具200の他端部側を「先端側」と称す。また、先端側から基端側に向かう方向(またはその逆方向)を軸方向Xと称する。
医療器具200は、接合対象となる消化管(膵実質B1と空腸B2)の間に配置される本体部210(「管状部材」に相当する)と、少なくとも一方の消化管(膵実質B1)に対して本体部210を固定可能に構成するための固定力を生じさせる固定部220と、外力を固定部220に伝えることによって固定部220を変形させる操作部230と、操作部230が固定部220に外力を伝えている状態を維持する補助部240と、を有する。
<本体部210>
本体部210は、ルーメンLを備える。本実施形態において中空断面の形状を真円や楕円等の円形状として構成している。本体部210の外径r1および内径は特に限定されないが、好ましくは3Fr(外径1.0mm、内径0.5mm)~15Fr(外径5.0mm、内径3.0mm)であり、より好ましくは4Fr(外径1.3mm、内径0.7mm)~6Fr(外径2.0mm、内径1.4mm)である。
本体部210は、膵実質B1と空腸B2の間に配置されると、先端側開口部210AからルーメンLに膵液を導入し、基端側開口部210Bから空腸B2へ該膵液を排液する。
本体部210は、弾性を有する非生分解性の材料で構成することができる。本体部210は、術者が消化管を吻合して本体部210を生体内に留置してから所定の期間(数週間~数か月)が経過した後に、自然に空腸B2に脱落し、体外に導出される。すなわち、本体部210は、いわゆる内瘻チューブとして機能する。
本体部210は、図1、図3に示すように、先端側に少なくとも一つの側孔210Pを備える。側孔210Pは、膵実質B1と空腸B2の間に配置されると、膵液をルーメンLに導入し空腸B2へ排液する。そのため、側孔210Pは、先端側開口部210Aが閉塞した場合も膵液を空腸B2へ排液することができる。
本体部210の構成材料について特に制限はなく、例えば、塩化ビニル、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)などの熱可塑性エラストマー、ナイロン、PETなどの熱可塑性樹脂、又はゴム、シリコーンエラストマー等で構成することができる。
<固定部220>
固定部220は、図3、図4に示すように、本体部210の先端側の一定の領域に設けられている複数の孔部221と、孔部221の各々の間にそれぞれ配置される複数の梁部222と、によって構成される。
図4に示すように、固定部220が外力によって軸方向Xに圧縮されると、梁部222の各々を放射方向(径方向)外向きに折り曲がることによって、医療器具200の外形(外径r1)を円形状(放射状)に拡張させることができる(図5を参照)。
孔部221の各々は、図4、図5、図7、図10に示すように、放射方向(径方向)外向きに折り曲がることによって、露出面221mを露出させる。
固定部220は、医療器具200の外径r1を拡張させることによって、膵管B1bの内壁を押し広げて、膵実質B1に対する医療器具200の嵌合力(抵抗力)を高めることができる。そのため、固定部220は、膵管B1bに対して本体部210を固定することができる。
術者は、膵管B1bに医療器具200を一度挿入し、固定部220によって膵管B1bに対して本体部210を固定すると、医療器具200が膵実質B1の管腔(膵管B1b)に挿入されている状態を維持することができる。また、術者は、医療器具200を膵管B1bから抜き差しすることなく、膵実質B1の切断面B1aの周囲(前壁B1dと後壁B1c)と空腸B2とを運針して、膵実質B1と空腸B2を接合することができる。そのため、術者は、膵管B1bと空腸B2とを縫合することなく、膵実質B1と空腸B2の吻合を行うことができ、膵実質B1と空腸B2とを簡便に接合させることができる。
孔部221および梁部222は、図5に示すように、それぞれ8か所設けられている。また、孔部221の各々(および梁部222の各々)は、固定部220の周方向θに対して所定の間隔をおいて設けられている。なお、孔部221および梁部222の数は特に限定されず、好ましくはそれぞれ2~16か所、より好ましくはそれぞれ4~8か所設けられている。
孔部221は、本体部210に形成された直線状の切れ目(スリット)である。孔部221の長手方向に沿う各々の長さkは、図3に示すように同一または略同一であり、好ましくは3~8mmである。孔部221の作成方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー加工によって作成することができる。
孔部221は、図3に示すように、軸方向Xに交差するように形成される。軸方向Xに対する孔部221の傾斜角度θ1(軸方向Xに対する孔部221の起点221aから終点221bまでの仮想線m1の傾斜角度)は、好ましくは0~89°、より好ましくは17~45°である。
また、固定部220の拡張後の外径r2(図4を参照)は、膵管B1bの内径に対して、2~4倍であることが好ましい。膵管B1bの内径が2mmである場合、固定部220の拡張後の外径r2は、好ましくは4~8mmであり、より好ましくは5mmである。
術者は、孔部221の長さkや傾斜角度θ1を調整することによって、固定部220の拡径後の外径r2を変更し、消化管に対して本体部210を固定可能に構成するための固定力(以下、医療器具200の固定力と称する)を調整することができる。
医療器具200の拡張後の固定力は、拡張前に対して1.1~4倍であることが好ましい。なお、該固定力とは、膵実質B1に医療器具200を挿入し、固定部220によって医療器具200の外径r1を拡張した後に、医療器具200の基端側を鉗子などでつかんで一定の速度で引っ張った時の最大強度である。拡張前の固定力が1.2~1.7Nである場合、拡張後の固定力は2~5Nであることが好ましい。
また、孔部221は直線状であると説明したが、孔部221の形状は特に限定されない。孔部221は、例えば、楕円の円弧のような曲線状(図6を参照)であってもよい。孔部221の形状を楕円の円弧のような曲線状にすることによって、固定部220が外力によって軸方向Xに圧縮されたときの軸方向Xから視た梁部222の形状を調整することができる(図5、図7を参照)。そのため、術者は、膵管B1bの内壁と梁部222との接触量(接触箇所)を調整し、消化管に対する医療器具200の固定力を調整することができる。
また、孔部221は、複数の直線を組み合わせてなる折れ線状(図8を参照)であってもよい。仮想線m1に対する孔部221の起点221a側の角度(傾斜角度θ2)は、仮想線m1に対する孔部221の終点221b側の角度(傾斜角度θ3)より大きいことが好ましい。この場合、梁部222は、外力によって軸方向Xに圧縮されると、軸方向Xに直交する方向から視たときに基端側に傾斜して折り曲がる。そのため、固定部220は、消化管に対する医療器具200の固定力をより生じさせることが期待できる。
また、孔部221は螺旋状であってもよい。
また、孔部221が延在する方向は特に限定されない。
また、孔部221の各々の配置は特に限定されない。図4に示すように、孔部221の起点221a(または終点221b)各々は、本体部210の周方向θに揃って(本体部210の軸方向Xに対して同じ位置に)配置されていてもよく、図9に示すように、ジグザグ状に(本体部210の軸方向Xに対して互いに異なる位置に)配置されていてもよい。
図9に示すように、孔部221の各々が本体部210の軸方向Xに対して互いに異なる位置に配置されている場合、固定部220は、外力によって軸方向Xに圧縮されると、図10に示すように、医療器具200の外形を略矩形状に拡張させることができる。
また、図11に示すように、梁部222の基端側には、孔部221より長さの短い1つ以上の孔部223が形成されていてもよい。梁部222の基端側は、孔部223が形成されることによって、孔部223が形成されていない先端側より柔軟性を有する。そのため、梁部222は、外力によって軸方向Xに圧縮されると、軸方向Xに直交する方向から視て、孔部221が形成されている位置(軸方向Xに対する孔部221の起点221aの位置を示す仮想線m2から終点221bを示す仮想線m3まで間)より基端側に傾斜して折り曲がる(図12を参照)。そのため、固定部220は、消化管に対する医療器具200の固定力をより生じさせることが期待できる。
<操作部230、補助部240>
操作部230は、図1、図3、図4に示すように、牽引されることによって固定部220に外力を付与する牽引部250と、本体部210に対する牽引部250の接続を可能にする接続部260と、を有している。また、補助部240は、図4に示すように、接続部260を起点として本体部210のルーメンLに少なくとも部分的に挿通した牽引部250を外部に露出させる孔部270(「挿通孔」に相当する)と、牽引部250の少なくとも一部を孔部270に係止可能に構成される係止部280と、を有している。
牽引部250は、所定の長さであって、本体部210のルーメンLや孔部270に挿通可能な断面形状を備える長尺状の部材(例えば、細径な紐状の部材や所定の幅を有する帯状の部材)で構成することができる。なお、牽引部250の長さ等について特に制限はない。
接続部260は、本体部210の先端に形成されている。牽引部250の基端を本体部210の先端側に固定する方法は特に限定されないが、縫合や接着剤によって固定したり、融着等を用いて接続したり、牽引部250の一端を輪っか状に結んで本体部210の先端に引掛けたりすることができる。
孔部270は、本体部210に形成され、先端部に形成された固定部220より基端側(本体部210の一端部側に形成された固定部220より中央側)に配置されている。本実施形態における牽引部250は、本体部210の先端に形成されている接続部260から本体部210の基端側に形成されている孔部270までの本体部210のルーメンLに挿通し、牽引されることによって固定部220に外力を付与することができる。そのため、術者は、固定部220に直接的に外力を与えることなく、固定部220を変形させることができる。また、術者は、孔部270が本体部210の側面に設けられていることによって、手技にあわせて牽引部250を牽引する位置を調整することができる。
術者は、牽引部250の少なくとも一部を本体部210のルーメンLに挿通した状態で、牽引部250を牽引する(牽引部250に軸方向X張力を付与する)ことによって、固定部220に外力を付与し、固定部220を軸方向Xに圧縮させることができる。
係止部280は、牽引部250の一定の範囲に設けられている1つ以上の突起である。係止部280の各々は、弾性を有する材料で構成され、牽引部250に所定以上の張力が付与されると弾性変形することによって孔部270を通過したり(乗り越えたり)、孔部270に係止したりすることができる。なお、該突起の形状(断面形状)は特に限定されず、例えば、棘状(鋭利な形状が直線によって形成されている状態)であってもよく、鎌状(鋭利な形状が部分的に曲線によって形成されている状態)であってもよく、球形状(牽引部250を玉結びすることによって形成されている状態)であってもよい。
術者は、牽引部250を牽引するときに牽引部250に設けられている係止部280のいずれかを孔部270に係止させることによって、牽引部250を牽引している状態(以下、牽引状態と称する)を維持することができる。したがって、術者は、牽引部250を牽引していない(操作部230を操作していない間)も、係止部280によって固定部が外形を拡張させている状態(以下、拡張状態と称する)を維持することができる。
なお、牽引部250の材料は、ルーメンLに挿通された状態で牽引されたときに、固定部220を軸方向Xに圧縮させることが可能である限り、特に限定されない。
牽引部250が生分解性の材料で構成されている場合、牽引部250が生体内で分解されると、牽引部250の強度が低下する。そして、本体部210に対する牽引部250の牽引力が低下する(牽引状態が解除される)。そして、固定部220は、本体部210の弾性力によって、拡張状態(梁部222の各々を放射方向外向きに折り曲げている状態)から自然状態(梁部222の各々が折り曲がっていない状態)に戻る。そのため、膵実質B1に対する医療器具200の固定力が減弱し、医療器具200が自然に空腸B2内に脱落可能となる。
また、牽引部250の構成材料について特に制限はなく、例えば、塩化ビニル、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)などの熱可塑性エラストマー、ナイロン、PETなどの熱可塑性樹脂、又はゴム、シリコーンエラストマー等で構成することができる。
また、牽引部250の断面形状や細さは、消化管の吻合を阻害しない限り、特に制限はない。
また、牽引部250は、接続部260に固定される一端部とは反対の他端部に生体適合性を備える針部を有していてもよい。これにより、術者は、牽引部250で空腸B2の漿膜上で縫合固定し、空腸B2と膵実質B1を近づけることができる。
また、係止部280は、孔部270側に設けられていてもよい。孔部270には、たとえば、弁体や切り込みを設けることができる。係止部280は、牽引部250の少なくとも一部を挟み込むことによって牽引状態を維持することができる。係止部280が孔部270側に設けられた弁体である場合、術者が牽引部250に所定以上の張力を付与したときに係止部280を弾性変形させることによって、牽引部250を進退可能に構成することができる。また、係止部280が孔部270側に設けられた切り込み(スリット)である場合、術者が牽引部250に所定以上の張力を付与したときに係止部280を切り込みから外すことによって、牽引部250を進退可能に構成することができる。
また、係止部280の材料は、弾性を有する限り特に制限はないが、生分解性の材料で構成することが好ましい。係止部280が生体内で分解されると、牽引状態が解除される。したがって、膵実質B1に対する医療器具200の固定力が減弱し、医療器具200が自然に空腸B2内に脱落可能となる。なお、係止部280が生分解性の材料で構成されている場合、牽引部250は非生分解性の材料で構成されていてもよい。
係止部280の構成材料について特に制限はなく、例えば、塩化ビニル、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)などの熱可塑性エラストマー、ナイロン、PETなどの熱可塑性樹脂、又はゴム、シリコーンエラストマー等で構成することができる。
また、係止部280の形状は、弾性変形によって本体部210の孔部270を通過したり、孔部270に係止したりことができる限り、特に制限はない。また、係止部280の各々の形状は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、本実施形態に係る医療器具200は、前述したように、本体部210と固定部220と操作部230と補助部240とを備えていると説明したが、本体部210と固定部220と操作部230で構成してもよい。また、牽引部250は、本体部210と一体的に構成されていなくてもよい。この場合、術者は、手技に際し、医療器具200とは別に牽引部250を準備する。術者は、手技の進行等に応じて、医療器具200と牽引部250とを適宜組み合わせて使用することができる。
以上説明したように本実施形態に係る医療器具200は、膵実質B1と空腸B2(接合対象となる一対の消化管)の間に配置され、ルーメンLを備える本体部210(管状部材)と、膵実質B1(少なくとも一方の消化管)に対して本体部210を固定可能に構成するための固定力を生じさせる固定部220と、を有し、固定部220は、外力によって外形(外径r1)を拡張可能に構成される。
上記医療器具200によれば、固定部220は、医療器具200の外形(外径r1)を拡張させることによって、膵管B1bの内壁を押し広げて、膵実質B1に対する医療器具200の嵌合力(抵抗力)を高めることができる。そのため、固定部220は、膵管B1bに対して本体部210を固定することができる。したがって、術者は、膵管B1bに医療器具200を一度挿入し、固定部220によって膵管B1bに対して本体部210を固定すると、医療器具200が膵実質B1の管腔(膵管B1b)に挿入されている状態を維持することができる。また、術者は、医療器具200を膵管B1bから抜き差しすることなく、膵実質B1の切断面B1aの周囲(前壁B1dと後壁B1c)と空腸B2とを運針して、膵実質B1と空腸B2を接合することができる。そのため、術者は、膵管B1bと空腸B2とを縫合することなく、膵実質B1と空腸B2の吻合を行うことができ、膵実質B1と空腸B2とを簡便に接合させることができる。
また、医療器具200は、外力を固定部220に伝えることによって固定部220を変形させる操作部230を備える。そのため、術者は、膵実質B1と空腸B2とを簡便に接合させることができる。
また、操作部230は、牽引されることによって固定部220に外力を付与し、固定部220を軸方向Xに圧縮させる牽引部250と、本体部210に対する牽引部250の接続を可能にする接続部260と、を備える。そのため、術者は、固定部220に直接的に外力を与えることなく、固定部220を変形させることができる。
また、医療器具200は、操作部230が固定部220に外力を伝えている状態を維持する補助部240をさらに備える。そのため、術者は、操作部230を操作していない間も、医療器具200の拡張状態を維持することができる。
また、補助部240は、本体部210に形成され、本体部210の先端側(軸方向Xの端部)に形成された固定部220より基端側(本体部210の一端部側に形成された固定部220より中央側)に配置され、牽引部250をルーメンLに挿入した状態において牽引部250を外部に露出させる孔部270(挿通孔)と、牽引部250および孔部270の少なくとも一方に設けられ、牽引部250の少なくとも一部を孔部270に係止可能に構成される係止部280と、を備える。そのため、術者は、牽引部250を牽引するときに、牽引部250に設けられている係止部280のいずれかを本体部210の孔部270に係止させることによって、牽引状態を維持することができる。したがって、術者は、係止部280によって、医療器具200の拡張状態を維持することができる。
また、固定部220は、本体部210の先端側(軸方向Xの端部)に設けられている複数の孔部221と、孔部221の各々の間にそれぞれ配置される複数の梁部222とを有し、固定部220は、牽引部250によって軸方向Xに圧縮されると、梁部222の各々を放射方向外向きに折り曲げることによって、外径r1を拡張させる。医療器具200の外形(外径r1)を拡張させることによって、膵管B1bの内壁を押し広げて、膵実質B1に対する医療器具200の嵌合力(抵抗力)を高めることができる。そのため、固定部220は、膵管B1bに対して本体部210を固定することができる。
また、医療器具セット1は、上述した医療器具200と、膵実質B1と空腸B2の間に配置されることにより膵実質B1と空腸B2の癒合を促進する癒合促進シート100と、を有する。このように構成することによって、一対の消化管を接合する手技において、術後における縫合不全のリスクを低減させることができるとともに、手技中に膵管B1bからの膵液の漏出を抑制しつつ、簡便に膵実質B1と空腸B2を接合できる。
次に、第1実施形態に係る医療器具200の変形例1~3について説明する。なお、変形例1~3の説明において、上述した医療器具200と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。また、変形例の説明で特に説明がない内容については、前述した実施形態と同一のものとすることができる。
<変形例1>
図13、図14は、変形例1に係る医療器具300の説明に供する図である。
医療器具300は、接合対象となる消化管(膵実質B1と空腸B2)の間に配置される本体部210と、少なくとも一方の消化管(膵実質B1)に対して本体部210を固定可能に構成するための固定力を生じさせる固定部320と、外力を固定部320に伝えることによって固定部320を変形させる操作部330と、を有する。
図13に示すように、変形例1に係る固定部320は、本体部210の先端側の一定の領域に設けられている複数の孔部321と、本体部210の内部に部分的に収容され、外力によって軸方向Xに圧縮されると孔部321の各々から突出可能な複数のワイヤ322の先端側と、によって構成されていてもよい。
また、変形例1に係る操作部330は、本体部210の基端側に突出するように設けられ、本体部210の先端側に向かって押し込むことが可能に構成されるワイヤ322の基端側によって構成されていてもよい。
変形例1に係るワイヤ322の先端側は、本体部210の内周壁と外周壁との間に設けられている凹部に収容されている。また、ワイヤ322の基端側は、本体部210の基端側に突出するように設けられいる。また、該凹部は、孔部321に連通している。そのため、ワイヤ322は、部分的に孔部321に沿うように、本体部210に挿入されている。
術者が操作部330を操作する(本体部210の基端側に突出しているワイヤ322を先端側に押し込む)と、図14に示すように、ワイヤ322は軸方向Xに圧縮されて放射方向(径方向)外向きに折り曲がる。そして、ワイヤ322の折れ曲がった部分が孔部321から突出する。このように、術者は、ワイヤ322に外力を付与することによって、医療器具300の外形(外径)を円形状(放射状)に拡張させることができる。
術者は、孔部321の長さやワイヤ322の長さを調整することによって、固定部320の拡径後の外径や、ワイヤ322が変形した後の形状を変更し、消化管に対する医療器具300の固定力を調整することができる。
ワイヤ322は、弾塑性または形状記憶性を有し、生分解性を有する合金であることが好ましく、例えば、Mg、またはMgを主成分とする合金で構成することができる。ワイヤ322は、弾塑性または形状記憶性を有しているため、外力によって変形した後の形状を維持することができる。したがって、医療器具300は拡張状態を維持することができる。また、ワイヤ322は、生分解性を有しているため、生体内で分解されると強度が低下する。そのため、医療器具300は、生体内に留置されてから所定期間が経過すると拡張状態を解除し、自然に空腸B2内に脱落可能となる。
<変形例2>
図15、図16は、変形例2に係る医療器具400の説明に供する図である。
医療器具400は、接合対象となる消化管(膵実質B1と空腸B2)の間に配置される本体部210と、少なくとも一方の消化管(膵実質B1)に対して本体部210を固定可能に構成するための固定力を生じさせる固定部420と、外力を固定部420に伝えることによって固定部420を変形させる操作部430と、を有する。
図15に示すように、変形例2に係る固定部420は、後述する操作部430と本体部210の先端側に接続され、本体部210の周囲を螺旋状に巻回するように設けられているワイヤ421によって構成されていてもよい。
また、変形例2に係る操作部430は、本体部210の基端側に設けられ、本体部210の周方向θに対して回転可能に構成された把持部によって構成されていてもよい。
術者が操作部430を操作する(ワイヤ421の巻き方向と反対側に回転させる)と、図16に示すように、ワイヤ421の巻き径が拡大する。そのため、術者は、ワイヤ421に外力を付与することによって、医療器具400の外形(外径)を拡張させることができる。
術者は、操作部430の操作量を調整することによって、固定部420の拡径後の外径を変更し、消化管に対する医療器具400の固定力を調整することができる。
ワイヤ421は、変形例1のワイヤ322と同様の材料で構成することができる。
また、ワイヤ421の断面形状は、特に限定されない。ワイヤ421には、部分的に突起が設けられていてもよく、ワイヤ421は、該突起によって膵実質B1に対する嵌合力(抵抗力)をより高めることができる。
なお、操作部430と本体部210との接続部分の形態は特に限定されない。例えば、操作部430は部分的に本体部210のルーメンLに挿入されていてもよい。また、操作部430と本体部210の接続方法は特に限定されず、例えば、本体部210のルーメンLに突起などを設けることによって、本体部210と操作部430とを接続させることができる。該突起は、本体部210と同じ材料で構成してもよく、異なる材料で構成してもよいが、例えば、生分解性を有する材料や、水溶性を有する材料によって構成することができる。このように構成することによって、該突起が生体内で分解されると、本体部210のルーメンLが拡張される。そのため、膵管B1bからの膵液を空腸B2へ排出する排出経路をより確保することができる。
<変形例3>
図17、図18は、変形例3に係る医療器具500の説明に供する図である。
医療器具500は、接合対象となる消化管(膵実質B1と空腸B2)の間に配置される本体部510と、少なくとも一方の消化管(膵実質B1)に対して本体部510を固定可能に構成するための固定力を生じさせる固定部520と、外力を固定部520に伝えることによって固定部520を変形させる操作部530と、を有する。
変形例3に係る本体部510は、弾塑性または形状記憶性を有し、生分解性を有する合金であることが好ましく、例えば、Mg、またはMgを主成分とする合金で構成されている。
図17に示すように、変形例3に係る固定部520は、本体部510の先端側の一定の領域に設けられている複数の孔部521と、孔部521の各々の間にそれぞれ配置される複数の梁部522と、によって構成されていてもよい。
変形例3に係る操作部530は、本体部510の基端側の一定の領域を把持部として用いることによって構成されていてもよい。
術者が操作部530を操作する(本体部510の基端側をひねる)と、図18に示すように、固定部520は螺旋状に変形し、梁部522は放射方向(径方向)外向きに折り曲がる。このように、術者は、固定部520に外力を付与することによって、医療器具500の外形(外径)を拡張させることができる。
術者は、孔部321の長さや傾斜角度を調整することによって、固定部320の拡径後の外径や、軸方向Xから視たときの外形を変更し、消化管に対する医療器具200の固定力を調整することができる。
<処置方法の実施形態(生体器官吻合術)>
次に、医療器具セットを用いた処置方法を説明する。
図19は、医療器具セットを用いた処置方法の各手順を示すフローチャートである。
処置方法は、生体器官の接合対象となる一方の被接合部位と他方の被接合部位の間に医療器具を配置すること(S11)、生体組織の癒合を促進するシート状の本体部を備える癒合促進シートを医療器具に挿通させ、一方の被接合部位に医療器具を固定すること(S12)、一方の被接合部位と他方の被接合部位との間に癒合促進シートの本体部の少なくとも一部を配置した状態で一方の被接合部位と他方の被接合部位とを接合すること(S13)、を含む。
処置方法により接合される生体器官および生体器官における被接合部位は特に限定されず、任意に選択することができる。以下の説明では、膵実質-空腸吻合術を例に挙げて説明する。また、以下に説明する各手技において使用される医療器具セットとしては、例えば、前述した医療器具セットの中から任意のものを選択することが可能であるし、その他の医療器具セットを選択することもできる。ただし、以下の説明では、各手技に好適に用いることができる代表的な例として、図1に示した医療器具セット1の使用例を説明する。また、以下に説明する各手技において、公知の手技手順や公知の医療装置・医療器具等については詳細な説明を適宜省略する。
以下、本明細書の説明において「生体器官の間に癒合促進シート(または医療器具)を配置する」とは、生体器官に癒合促進シート(または医療器具)が直接的にまたは間接的に接触した状態で配置されること、生体器官との間に空間的な隙間が形成された状態で癒合促進シート(または医療器具)が配置されること、またはその両方の状態で癒合促進シート(または医療器具)が配置されること(例えば、一方の生体器官に癒合促進シート(または医療器具)が接触し、他方の生体器官には癒合促進シート(または医療器具)が接触していない状態で配置されること)の少なくとも一つを意味する。また、本明細書の説明において「周辺」とは、厳密な範囲(領域)を規定するものではなく、処置の目的(生体器官同士の接合)を達成し得る限りにおいて、所定の範囲(領域)を意味する。また、各処置方法において説明する手技手順は、処置の目的を達成し得る限りにおいて、順番を適宜入れ替えることが可能である。また、本明細書の説明において「相対的に接近させる」とは、接近させる対象となる2つ以上のものを、互いに接近させること、一方のみを他方のみに接近させることの両方を意味する。
<処置方法の実施形態(膵実質-空腸吻合術)>
図20は、処置方法の実施形態(膵実質-空腸吻合術)の手順を示すフローチャートであり、図21~図26は、膵実質-空腸吻合術の説明に供する図である。
本実施形態に係る処置方法において、接合対象となる生体器官は、膵頭十二指腸切除後の膵実質B1と、空腸B2である。以下の説明では、切断した膵実質B1の切断面B1a周辺(一方の被接合部位)と空腸B2の腸壁の任意の部位(他方の被接合部位)を接合する手順を説明する。
図20に示すように、本実施形態に係る処置方法は、癒合促進シート100と、医療器具200とを有する医療器具セット1を準備すること(S101)、医療器具200を膵管B1bに挿入して配置すること(S102)、癒合促進シート100を医療器具200に取り付けること(S103)、医療器具200を空腸B2に挿入すること(S104)、膵実質B1と空腸B2とを縫合すること(S105)、を含む。
次に、図21~図26を参照して、本実施形態に係る処置方法の一例を具体的に説明する。なお、図26では、後述する複数の両端針920a~920eを省略している。
まず、術者は、癒合促進シート100と、医療器具200と、を有する医療器具セット1を準備する(S101)。
次に、図21に示すように、術者は、医療器具200を本体部210の先端側(図1に示す先端側開口部210A側)から膵管B1bに挿入する。そして、術者は、医療器具200を膵実質B1に対して固定しうる(S102)。このとき、術者は、牽引部250を牽引して、固定部220を軸方向Xに圧縮させることによって、固定部220の外形(外径r1)を拡張することができる(図22を参照)。また、術者は、牽引部250に形成されている係止部280を本体部210の孔部270に係止させることによって、本体部210に対する牽引部250の牽引力を維持することができる。そのため、術者は、膵管B1bに対する医療器具200の位置を固定部220によって固定することができる。
次に、図23に示すように、術者は、癒合促進シート100に孔部120(図1を参照)を形成して医療器具200に取り付ける(S103)。なお、術者が孔部120を形成する際に使用するデバイスは特に限定されない。また、孔部120は、使用前の状態であらかじめ癒合促進シート100に形成されていてもよい。また、術者は、癒合促進シート100の孔部120に医療器具200を挿通させた後に、医療器具200を膵管B1bに挿入してもよい。
次に、術者は、本体部210の基端側(図1に示す基端側開口部210B側)を空腸B2に挿入する(S104)。これによって、膵管B1bからの膵液を空腸B2へ排出する排出経路が形成され(図26を参照)、膵管B1bからの膵液が膵実質B1と空腸B2の被接合部位に漏出することを抑制することができる。
次に、術者は、図24に示すように、癒合促進シート100を膵実質B1の切断面B1aに配置し、膵実質B1と空腸B2とを縫合する(S105)。なお、以下の説明では、複数の両端針920a~920eを固定部材として用いて癒合促進シート100を膵実質B1に固定する手順の一例を説明する。両端針920a~920eとしては、生体吸収性を備える吸収糸(縫合糸)と、吸収糸の両端に取り付けられた生体適合性を備える針部と、を有する公知のものを用いることができる。
まず、術者は、膵実質B1の後壁B1c(膵実質B1の周方向の背側の部分)および癒合促進シート100において後壁B1c上に配置された部分から、膵実質B1の前壁B1d(膵実質B1の周方向の腹側の部分)および癒合促進シート100において前壁B1d上に配置された部分に向かって、両端針920aを運針する。
次に、術者は、空腸B2の吻合予定部位(空腸B2に形成される貫通孔B2aの周辺)の空腸漿膜筋層を挿通するように両端針920aを運針する。術者は、このような操作を繰り返し、癒合促進シート100、膵実質B1、および空腸B2の空腸漿膜筋層に複数の両端針920a~920eを挿通させる。このように、術者は、膵実質B1と空腸B2を縫合する複数の両端針920a~920eを利用して、癒合促進シート100を膵実質B1に固定できる。
なお、膵実質B1、および空腸B2の空腸漿膜筋層に挿通させる両端針の本数や両端針を挿通させる位置は特に限定されない。また、術者は、複数の両端針920a~920eではなく、生分解性のステープル等を固定部材として、癒合促進シート100を膵実質B1に固定してもよい。
次に、術者は、図25に示すように、術者の指を以って空腸B2を膵実質B1に対して押さえつけながら両端針920a~920eを結紮する。これによって、膵実質B1と空腸B2が癒合促進シート100を挟み込んだ状態で縫合される(図26を参照)。空腸B2は、縫合時に生じる張力により、膵実質B1の切断面B1aおよび癒合促進シート100の本体部110を包み込むように変形する。
術者は、上記操作により、膵実質B1の切断面B1aと空腸B2の腸壁との間に、癒合促進シート100の本体部110を留置することができる。また、術者は、膵実質B1と空腸B2との間に、医療器具200をいわゆる内瘻チューブとして留置することができる。癒合促進シート100の本体部110は、膵実質B1の切断面B1aと空腸B2の腸壁とに接触しつつ、膵実質B1の切断面B1aと空腸B2の腸壁との間に留置されることにより、膵実質B1の生体組織と空腸B2の腸壁の生体組織の癒合を促進する。また、医療器具200は、術者が生体器官を吻合してから所定の期間(数週間~数か月)が経過した後に、自然に空腸B2に脱落し、体外に導出される。
以上のように、本実施形態に係る処置方法は、膵実質B1および空腸B2を接合する手技に適用される。また、上記の処置方法では、切断された膵実質B1の切断面B1a周辺と空腸B2の腸壁(空腸漿膜筋層)を接合する。この処置方法によれば、膵実質B1の切断面B1aと空腸B2の腸壁の間に挟み込んだ癒合促進シート100の本体部110により、膵実質B1の生体組織と空腸B2の腸壁の生体組織の癒合を促進することができ、膵実質-空腸吻合術後の縫合不全のリスクを低減させることができる。
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず特許請求の範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記では癒合促進シートと医療器具は別体であると説明したが、一体であってもよい。
また、上記では、固定部を本体部の軸方向Xにおける片側に配置する医療器具の実施形態について説明した。しかし、医療器具を配置する生体管腔に固定部が係止しやすい形状であれば、図27に示すように、固定部220を本体部210の軸方向Xにおける両側に配置してもよい。このように固定部220を医療器具200Aの両側に設けることによって、医療器具の生体器官に対する固定力が増加することが期待できる(図28を参照)。なお、本体部210の両側に配置されている固定部220をそれぞれ牽引するための牽引部250の各々は、互いに接続されていてもよい。これにより、術者は、本体部210の両側に配置されている固定部220を一度に操作することができる。
また、上記では本体部の軸方向Xにおける片側に固定部が1つ設けている医療器具の実施形態について説明したが、固定部は医療器具の一端部側に複数設けられていてもよい。この場合、一の固定部と他の固定部との間隔は、医療器具が拡張状態のときに本体部の外周面より径方向に突出して延在する梁部の高さ(図4に示すt1を参照)より狭いことが好ましい。これにより、固定部の各々が消化管の内壁に反発することによって径方向内方に倒れてしまう可能性を抑制することができる。そのため、このように配置された固定部によれば、消化管に対する医療器具の固定力が手技中に低下してしまうことを抑制することができる。
また、医療器具の一端部側に複数の固定部が設けられている場合、本体部は、牽引部によって外力が与えられたときに、本体部が固定部の各々を起点として軸方向Xに直交する方向から視てW字状に折れ曲がる場合がある。このように配置された固定部によれば、医療器具の外形を拡張させることができ、消化管に対する医療器具の固定力をより確保することが期待できる。
また、医療器具の一端部側に複数の固定部が設けられている場合、本体部のルーメンに管状部材(以下、内部チューブと称する)がさらに設けられていてもよい。内部チューブは、牽引部によって外力が与えられたときに、本体部が固定部の各々を起点として軸方向Xに直交する方向から視てW字状に折れ曲がることを防止し、膵液が本体部のルーメンを通過しやすくすることができる。また、内部チューブは、牽引部によって外力が与えられたときに、外力が複数の梁部に均一に伝わるように固定部を補助することができる。そのため、内部チューブは、固定部を均一に拡張させて医療器具の固定力を維持することができる。
なお、内部チューブの外径は、本体部の内径より小さい限り、特に限定されない。また、内部チューブの構成材料は、本体部または固定部より硬い材料で構成することができる限り、特に限定されない。また、内部チューブの軸方向Xに対する長さは、特に限定されないが、内部チューブの先端側端部は、本体部の先端側に配置される一の固定部(先端側の固定部)より先端側に配置され、内部チューブの基端側端部は、一の固定部より基端側に配置される他の固定部(末端側の固定部)より基端側に配置されていることが好ましい。そのため、内部チューブは、接続部から孔部にかけて延在していることが好ましく、接続部から末端側の固定部にかけて延在していることがより好ましい。また、本体部に対する内部チューブの接続方法や接続位置は、特に限定されないが、内部チューブは接続部で本体部と接続されていてもよい。また、内部チューブが本体部と接続されていない場合、本体部の内表面や内部チューブの外表面には、シリコーンオイルなどの潤滑コーティングが施されていてもよい。この場合、本体部に対する内部チューブの潤滑性が向上し、内部チューブが本体部のルーメンをよりスムーズに動くことができる。そのため、術者が牽引部を牽引する時に必要な力を小さくすることができる。なお、本体部の内表面や内部チューブの外表面に滑り性を与える材料は、先に述べた潤滑コーティングに限定されず、摩擦係数の小さい材料の組み合わせることによって構成することができる。
また、上記では、本体部を内瘻チューブとして機能するように配置する実施形態について説明した。しかし、本体部は、外瘻チューブとして機能するように配置してもよい。この場合、本体部は、膵実質、空腸及び皮膚を貫通するように、体内から体外に向けて配置される。そして、本体部は、体外に向かう端部が排液バッグに接続されることによって、膵液を体外へ排液することができる。本体部は、所定の期間が経過した後に、術者が本体部を牽引することによって体外に導出される。
本出願は、2020年3月30日に出願された日本国特許出願第2020-60482号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。