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JP7625820B2 - 仮撚加工用ポリアミド糸およびポリアミド仮撚加工糸 - Google Patents
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JP7625820B2 - 仮撚加工用ポリアミド糸およびポリアミド仮撚加工糸 - Google Patents

仮撚加工用ポリアミド糸およびポリアミド仮撚加工糸 Download PDF

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Description

本発明は、仮撚加工を施した際に高い捲縮性能が発現する、主としてポリカプロアミドからなる仮撚加工用ポリアミド糸、およびポリアミド仮撚加工糸に関するものである。
合成繊維であるポリアミド糸やポリエステル糸は、機械的・化学的性質において優れた特性を有することから衣料用途や産業用途などで幅広く利用されている。特に、ポリアミド糸は、肌触り、光沢性において優れた特性を有することから一般衣料製品等に広く使用されている。とりわけ、衣料用途の中でも仮撚加工糸は、織物や編物などに広く使用されている。特に、捲縮率が高い仮撚加工糸は、布帛にしたときの地厚感が高くなることから、ソフト性やストレッチ性等の触感が向上することに加え、保温性や吸水性等の機能も、通常の捲縮率を有する仮撚加工糸よりも向上することとなる。このことからも、仮撚加工糸の中でも特に捲縮率が高い仮撚加工糸の市場要求は極めて高い。
特許文献1には、単糸繊度7dtex以上、かつフィラメント数2または3の仮撚加工用ポリアミド糸が提案されている。単糸繊度が太いことから、さわやかなドライタッチを有することが可能となるが、逆に、単糸繊度が極端に太いことから、捲縮自体は入りにくくなり、ソフト性やストレッチ性等の触感や、保温性や吸水性等の発現は困難である。
一般的に、仮撚加工糸の捲縮率を向上させる手段としては、ピン仮撚といった強制的に撚りを入れる方法の他、仮撚加工時に糸条を溶融しない程度に積極的に加熱する(接触式熱板の使用、加工温度を上げる等)を好ましくは用いる。糸条設計としては、仮撚加工温度を上げた際に、その仮撚加工温度に耐えうるだけの融点を有する樹脂(ポリアミドの場合は例えばポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66))を用いる。
特許文献2、特許文献3には、単糸繊度1.2dtex以下の仮撚加工用ポリアミド糸が提案されている。単糸繊度が細いことから、ソフト性やストレッチ性等の触感に優れ、保温性や吸水性等の機能に富んだ仮撚加工糸とすることが可能となっている。
特開2003-113531号公報 特開2009-84749号公報 特開2005-320655号公報
しかしながら、仮撚加工糸で最も重要な特性である捲縮性能の付与という観点において、特許文献2は、用いる樹脂が実施例ではポリヘキサメチレンアジパミドに限定されており、ポリアミドの中でも糸条形成性や力学的特性の観点からも特に好適なポリカプロアミド(ポリアミド6)を用いた場合は、融点がポリヘキサメチレンアジパミドよりも低いことから、仮撚加工温度を積極的に上げることができず、結果として、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることは困難であった。
また特許文献3は、実施例でポリカプロアミドを例示しており、仮撚加工温度も200℃と高いものとなっている。しかしながら、実施例で例示されている仮撚加工機(帝人製機社製HTS-1500)は非接触式熱板であり、糸条を積極的に加熱するという観点においては、まだ不十分であり、結果として、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることは困難であった。
本発明は、従来技術では困難であった、ポリカプロアミドを用いた場合においても、仮撚加工温度を積極的に上げることができ、高い捲縮性能が発現する仮撚加工用ポリアミド糸、およびそのポリアミド仮撚加工糸を提供することを課題とする。
上記課題を達成するために、次の構成を有する。
(1)ε-カプロラクタム単位が90モル%以上であるポリカプロアミドからなるポリアミド糸において、200℃、10秒間の乾熱処理をした後の収縮率が4.5~8.0%、伸度が50~70%、かつ単糸繊度が5.0dtex以下である仮撚加工用ポリアミド糸。
(2)98%硫酸相対粘度が2.9~3.4である、前記(1)に記載の仮撚加工用ポリアミド糸
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、乾熱収縮率を規定することにより、ポリカプロアミドでありながら、仮撚加工温度を積極的に上げることができ、また、単糸繊度を規定することにより、仮撚加工時の実撚りを安定して入れられるため、捲縮性能に優れるポリアミド仮撚加工糸を提供することができる。
本発明のポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された樹脂であり、主としてポリカプロアミドからなる。ここでいう「主として」とは、ポリカプロアミドを構成するε-カプロラクタム単位とし90モル%以上である。その他の成分としては、本発明の効果を阻害しなければ特に限定されるものではなく、例えば、ポリドデカノアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカノアミド(ポリアミド612)等のポリアミドを構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミン等の単位が挙げられる。また、酸化チタンやカーボンブラック等の顔料の他、従来公知の酸化紡糸剤、着色防止剤、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、吸湿性樹脂等が含まれていても良い。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、200℃で10秒間乾熱処理した後の収縮率(乾熱収縮率)が4.5~8.0%である。かかる範囲とすることで、通常のポリカプロアミドの仮撚加工温度(接触式熱板で170℃前後)よりも高い温度(接触式熱板で190℃前後)での仮撚加工が可能となり、結果として、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。仮撚加工は、加撚部分で糸条を加熱して可塑化することで撚りを入れることが可能となるわけであるが、撚りの変形を受けるのは糸条の非晶歪み部分である。本発明で規定している乾熱収縮率は、非晶歪み部分の変形量を視たものであり、この値が大きいと、高い温度で仮撚加工した場合に高捲縮となる。乾熱収縮率が4.5%未満の場合、撚りの変形量が小さくなり低い捲縮性能となる。また、糸条の融解軟化が極端に進行し、糸条にヘタリが生じて、仮撚加工時に糸切れが発生する。乾熱収縮率が4.5%以上であると、糸条の非晶歪み量も十分となるので、高い温度(接触式熱板で190℃前後)での仮撚加工が可能となり、結果として、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。乾熱収縮率は高い方がもちろん良いが、ポリカプロアミドの性質や、仮撚加工用ポリアミド糸の製造過程を鑑みた場合、8.0%を超えるものを得ることは困難である。乾熱収縮率の好ましい範囲は、5.0~8.0%である。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、単糸繊度が5.0dtex以下である。かかる範囲とすることで、糸条の柔性を維持でき、仮撚加工時の実撚りを安定して入れられるため、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。単糸繊度が5.0dtexを超える場合、糸条の柔性を維持できず、仮撚加工時の実撚りを安定して入れられないため、低い捲縮性能となる。仮撚加工温度を積極的に上げて捲縮性能に優れるポリアミド仮撚加工糸を得るという観点においては、単糸繊度の下限値を特に設ける必要はないが、仮撚加工用ポリアミド糸の品質(特に強度や糸条長手方向の太さムラ(U%))良く安定して得るという観点においては、単糸繊度が1.0dtex以上であることが好ましい。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、98%硫酸相対粘度が2.9~3.4であることが好ましい。98%硫酸相対粘度が2.9以上であると、高い温度(接触式熱板で190℃前後)で仮撚加工した場合に、高い捲縮性能に加え、仮撚加工糸の強度も維持できる。98%硫酸相対粘度が3.4以下であると、糸条の柔性を維持でき、仮撚加工時の実撚りを安定して入れられるため、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、伸度が50~70%である伸度が50%以上であると、糸条の柔性を維持でき、仮撚加工時の実撚りを安定して入れられるため、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。また、毛羽や単糸切れの発生もなく、品質的にも安定した仮撚加工糸を得ることができる。伸度が70%以下であると、仮撚加工時の加工張力を安定して上げられるため、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。また、仮撚加工用ポリアミド糸の製造過程において、パッケージ巻取中に糸条が伸長する現象、いわゆる膨潤を抑制することができるため、巻取中のパッケージで糸層がずれる等もなく、安定した巻取が可能となる。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、15%伸長時強度が1.5~2.2cN/dtexであることが好ましい。15%伸長時強度が1.5cN/dtex以上であると、仮撚加工時の加工張力を安定して上げられるため、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。15%伸長時強度が2.2cN/dtex以下であると、糸条の柔性を維持でき、仮撚加工時の実撚りを安定して入れられるため、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。また、毛羽や単糸切れの発生もなく、品質的にも安定した仮撚加工糸を得ることができる。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸の総繊度、単糸本数は、本発明の効果を阻害しなければ特に限定されるものではないが、衣料用素材として使用する場合は、総繊度は10~240dtex、フィラメント数は2~150本であることが好ましい。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、従来公知の溶融紡糸の手法により得ることができ、例示すると以下の通りである。例えば、ポリカプロアミド樹脂を溶融し、ギヤポンプにて計量、輸送し、紡糸口金から吐出し糸条を形成する。チムニー等の糸条冷却装置によって冷却風を吹きあてることにより糸条を室温まで冷却し、給油装置で給油するとともに集束し、流体処理装置で交絡し、必要に応じて、再度、給油装置で給油するとともに集束し、引取ローラー、延伸ローラーを通過し、その際は引取ローラーと延伸ローラーの周速度の比に従って延伸する。延伸後は、巻取装置で巻き取る。本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、いわゆるPartially Oriented Yarn(POY:半延伸糸)に分類されるものであり、その製造方法は、POY方式(高速紡糸法)に準拠する。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸について、乾熱収縮率や伸度、15%伸長時強度をかかる範囲に制御するためには、樹脂ペレットの98%硫酸相対粘度や水分率、延伸工程等で好ましく制御することができる。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸の製造において、用いるポリカプロアミド樹脂ペレットの98%硫酸相対粘度は、2.9~3.4であることが好ましい。98%硫酸相対粘度が2.9以上であると、紡糸口金から引取ローラー間の紡糸線上での応力集中が緩和され、糸条の非晶量を確保できるとともに、引取ローラーから延伸ローラー間で適切な延伸倍率にすることで、糸条の非晶歪み量は十分となり、乾熱収縮率の制御が容易となる。98%硫酸相対粘度が3.4以下であると、溶融紡糸に適した溶融粘度となるため、溶融紡糸の際の曳糸性が向上して、糸切れがない安定した製造が可能となる。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸の製造においては、ポリカプロアミド樹脂ペレットを溶融する際の98%硫酸相対粘度の変化を抑制することが好ましい。その方法として、溶融紡糸機に投じる前のポリカプロアミド樹脂ペレットの水分率を調整する方法を好ましく用いる。ポリカプロアミド樹脂ペレットの水分率は、紡糸系等によって変わるものであるが、1200ppm以下であることが好ましい。ポリカプロアミド樹脂ペレットの水分率が1200ppm以下であると、ポリカプロアミド樹脂ペレットを溶融する段階でポリカプロアミドの加水分解が抑制されるため、98%硫酸相対粘度の変化を抑制することができる。
溶融紡糸機に投じる前のポリカプロアミド樹脂ペレットの水分率を調整する以外の方法としては、マグネシウム化合物をポリカプロアミド樹脂ペレットに適量添加することでも可能となる。好ましいマグネシウム化合物としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムである。また、マグネシウム添加量としては、該ポリカプロアミド樹脂ペレット100gに対して、マグネシウム元素として0.5~10ミリモルとすることが好ましい。マグネシウム添加量が0.5ミリモル以上であると、ポリカプロアミド樹脂ペレットを溶融する段階でポリカプロアミドの重合反応が抑制されるため、98%硫酸相対粘度の変化を抑制することができる。マグネシウム添加量が10ミリモル以下であると、マグネシウム化合物が異物とならず、紡糸パックの濾圧上昇がない安定した製造が可能となる他、本発明の仮撚加工用ポリアミド糸においても、毛羽や単糸切れの発生がない、品質的にも安定した仮撚加工用ポリアミド糸を得ることができる。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸の製造において、ポリカプロアミド樹脂ペレットの溶融温度は、本発明の効果を阻害しなければ特に限定されるものではないが、98%硫酸相対粘度が2.9~3.4であるポリカプロアミド樹脂ペレットを用いる場合は、260~300℃で溶融することが好ましい。溶融温度が260℃以上であると、溶融紡糸に適した溶融粘度となるため、溶融紡糸の際の曳糸性が向上して、糸切れがない安定した製造が可能となる。溶融温度が300℃以下であると、ポリカプロアミド樹脂ペレットを溶融する際の98%硫酸相対粘度の変化を抑制することができ、また、溶融時の低重合物成分(モノマー、オリゴマー)生成も抑制されるため、紡糸口金の吐出孔汚れが軽減され、糸切れがない安定した製造が可能となる。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸の製造において、引取速度は4000m/分以下であることが好ましく、更に好ましくは3800m/分以下である。引取速度が4000m/分以下であると、紡糸口金から引取ローラー間の紡糸線上での応力集中が緩和され、糸条の非晶量を確保できるとともに、引取ローラーから延伸ローラー間で適切な延伸倍率にすることで、糸条の非晶歪み量は十分となり、乾熱収縮率の制御が容易となる。引取速度の下限値については、引取ローラーから延伸ローラー間で適切な延伸倍率を設定できる範囲であれば特に設ける必要はないが、仮撚加工用ポリアミド糸を効率良く得るという観点においては、引取速度が2500m/分以上であることが好ましい。
また、延伸倍率は1.1~1.4倍であることが好ましい。更に好ましくは1.1~1.3倍である。延伸倍率が1.1倍以上であると、紡糸口金から引取ローラー間で確保した糸条の非晶に十分な歪みを付与でき、乾熱収縮率の制御が容易となる。延伸倍率が1.4倍以下であると、伸度や15%伸長時強度が好ましい範囲となり、糸条の柔性を維持できることから、仮撚加工時の実撚りを安定して入れられ、高い捲縮性能を有する仮撚加工糸を得ることができる。延伸倍率は1.1~1.4倍であることが好ましいわけであるが、特許文献1に記載の単糸繊度7dtex以上といった特殊な繊維を除くと、POY方式の中では高い延伸倍率である。本発明の仮撚加工用ポリアミド糸における、乾熱収縮率の制御を容易にするためであるが、この乾熱収縮率に関して、糸条長手方向でムラがなく安定して得るという観点においては、引取ローラーと延伸ローラーの表面が鏡面処理されていることが好ましい。ここでいう「鏡面」とは、表面粗度を指標とすると、表面粗度0.5~0.9Sであるものをいう。鏡面処理の方法を例示すると、金属表面をコーティングする方法、バフモーターやリューターなどの機械を使いフェルト等の柔らかい布に研磨剤を塗って研磨する方法、金属研磨剤を使って表面を研磨する方法、電解液を介して直流電流を流し金属表面を溶解させ研磨する方法等である。この中でも、金属表面にコーティング材料でコーティングする方法が好ましく、コーティング材料は、クロム、チタン、亜鉛等があるが、耐久性やコストの面からクロムが好ましい。なお、表面粗度とは、JIS B0601(1970)に従い測定される値であり、山高さと谷深さとの和で表される。本発明においては、各ローラー表面中、少なくとも糸条と接触する部分の任意の3点を回転方向に1cm間隔で測定し、その平均値を用いるものとする。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸の製造において、巻取速度は、適切な引取速度、延伸倍率を設定できる範囲であれば特に設ける必要はないが、仮撚加工用ポリアミド糸を効率良く安定して得るという観点においては、3500~4500m/分であることが好ましい。更に好ましくは3800~4200m/分である。巻取速度が3500m/分以上であると、仮撚加工用ポリアミド糸を効率良く得られる他、パッケージ巻取中に糸条が伸長する現象、いわゆる膨潤を抑制することができるため、巻取中のパッケージで糸層がずれる等もなく、安定した巻取が可能となる。巻取速度が4500m/分以下であると、引取速度が糸条の曳糸性の観点から適切な範囲となり、糸切れがない安定した製造が可能となる。
本発明の仮撚加工用ポリアミド糸を用いて得られるポリアミド仮撚加工糸は、捲縮率(CR2)が25~40%である。かかる範囲とすることで、織物に用いた際にもソフト性やストレッチ性等の触感に優れたものとなる。一般的に、織物の場合、織り重なりでの糸同士の拘束力が強くなることから、編物等と比較した場合、ソフト性やストレッチ性等の触感に劣る。織物でソフト性やストレッチ性等の触感を向上させるには、糸自体に伸縮復元性を有するスパンデックスや仮撚加工糸等が好ましく用いられる。
本発明のポリアミド仮撚加工糸における捲縮率とは、糸が拘束された状態での伸縮復元率を視たものである。捲縮率が25%未満の場合、織物にした際に、ソフト性やストレッチ性等の触感に劣るものとなる。捲縮率が40%を超えた場合、織物にした際に、伸縮性が高くなりすぎて、ソフト性やストレッチ性等の触感が粗硬化するとともに、織物表面品位が悪化する。
本発明のポリアミド仮撚加工糸の捲縮率が25%以上であると、糸の伸縮復元性能も十分なものとなり、ソフト性やストレッチ性等の触感に富んだ織物とすることができる。捲縮率が40%以下であると、糸の伸縮性が適度なものとなり、ソフト性やストレッチ性等の触感が粗硬化することもなく、表面品位にも優れた織物とすることができる。本発明のポリアミド仮撚加工糸の捲縮率は30~40%が好ましい。
本発明のポリアミド仮撚加工糸は、従来公知の仮撚加工の手法により得ることができ、好ましくは、延伸摩擦仮撚加工装置にて仮撚加工が施される。例示すると以下の通りである。例えば、延伸摩擦仮撚加工装置に供給された本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、所望の糸道ガイドや流体処理装置を介して供給ローラーへと送られる。その後、加熱された仮撚ヒーター、冷却板および延伸摩擦仮撚を行う施撚体を通して延伸ローラーに導かれ、仮撚加工糸として巻き取られる。延伸摩擦仮撚としては、延伸摩擦仮撚加工装置の供給ローラー以前に熱ピンやホットプレートによる延伸を加えられた後に摩擦仮撚加工を行ってもよいし、供給ローラーと延伸ローラーの間で延伸されながら摩擦仮撚加工を行ってもよい。
施撚方法としてもスピンドル方式や3軸ツイスター方式、ベルトニップ方式など限定されるものではない。捲縮を強めたいときにはスピンドル方式を用いることが好ましいし、加工速度を上げて生産コストを下げたいときには摩擦仮撚方式である3軸ツイスター、ベルトニップを用いることが好ましい。
加熱方式も限定されるものではない。高温接触型ヒーターや高温非接触型のヒーターを用いれば良いが、仮撚加工温度を積極的に上げて、捲縮性能に優れるポリアミド仮撚加工糸を得るという観点において、高温接触型ヒーターの方が好ましい。仮撚加工は、糸条を加熱して可塑化し、撚りを掛け、冷却して固定すると繊維内の分子を再配列して歪み緩和され、曲げや撚りの変形がそのまま固定された糸条となり撚り特性が付与される。この変形は100%熱固定されるのではなく、ポリアミドでは80~90%程度のセット率である。そのため、高温接触型ヒーターでしっかりと糸条に熱を掛けて、繊維内の分子を再配列させて歪みを緩和することが、高い捲縮性能が得られるために必要である。そのため、高温接触型ヒーターの方が好ましく、その加工温度(接触式熱板でヒーター設定温度)は、183~200℃である
冷却方法としても冷却板を用いても、空冷、水冷などが挙げられ、限定されないが、効率と糸のダメージを考えて、冷却板を用いることが好ましい。
加撚張力(T1)と解撚張力(T2)の比(T2/T1)が0.7~1.0であることが好ましい。比(T2/T1)が1.0以下、すなわち解撚張力(T2)が小さい場合には、毛羽の発生、つまり単糸切れを抑制できるため、施撚体後の糸切れが少なくなり、安定した延伸摩擦仮撚加工が可能となり、得られた仮撚加工糸も品位に優れたものとなる。比(T2/T1)を0.7以上にすることで、解撚不良を抑制できるため、高い捲縮が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における特性値の測定法等は次の通りである。
(1)乾熱収縮率
TESTRITE社製“thermal shrinkage oven(型式MK3)”(以後、MK3と呼称)を用いて測定した。糸条試料が50dtex以上となるように必要に応じて合糸(例えば、20dtexの場合は3本合糸、26dtexの場合は2本合糸)、引き揃えして、MK3にセットした。MK3に糸条試料をセットする際は、糸条試料に極力触れないように、また、合糸して引き揃える際も糸条試料を極力引っ張らないように細心の注意を払った。測定ローラーに糸条試料を把持させる初期加重重量については、糸条試料に対して0.05cN/dtexとなるように調整した。MK3にセットした糸条試料にタルミがないことを確認後、糸条試料をヒーターに押し入れ、アラーム作動時の収縮率をMK3の目盛りから正確に読み取った。測定回数は10回とし、その平均値を乾熱収縮率とした。なお、ヒーター温度は200℃、アラーム作動タイマーは10秒に設定した。
(2)98%硫酸相対粘度
試料0.25gを濃度98重量%の硫酸100mlに対して1gになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(t1)を測定した。引き続き、濃度98重量%の硫酸のみの流下時間(t2)を測定した。t2に対するt1の比、すなわちt1/t2を98%硫酸相対粘度とした。
(3)総繊度、単糸繊度
周長1mの検尺機に糸条試料をセットし、250回転させて、ループ状カセを作成し、熱風乾燥機にて乾燥(105±2℃×60分)後、秤量天秤にてカセ重量を量り、公定水分率分を乗じた値から総繊度を算出した。なお、公定水分率は4.5%とした。単糸繊度は算出して得られた総繊度をフィラメント数で除した値とした。
(4)15%伸長時強度、強度、伸度
糸条試料を、オリエンテック社製“TENSILON(型式UCT-100)でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)に示される定速伸長条件で測定した。なお、つかみ間隔は50cm、引張速度は50cm/分とした。15%伸長時強度は、57.5cmまで伸長させた際の応力を総繊度で除した値とした。強度は、最大点応力を総繊度で除した値とした。伸度は、最大点応力を示した際の引っ張り長を50cmで除した値に100を乗じた値とした。なお、15%伸長時強度、強度、伸度とも、測定回数は3回とし、その平均値を算出した。
(5)捲縮率(CR2)
糸条試料をカセ取りし、初期荷重0.0018cN/dtexをかけ、98℃水中で20分間処理し、24時間風乾した。次に、25℃水中で同重量の初期荷重をかけ、2分間後のカセ長L1を測定した。次に、25℃水中で上記の初期荷重を外し、新たに0.09cN/dtex相当の荷重に交換し、2分後のかせ長L0を測定した。そして下式により捲縮率を算出した。
捲縮率=[(L0-L1)/L0]×100(%)
(6)筒編地の触感評価
筒編機へ糸条試料を2本で給糸し、筒編機にて度目が50となるように調整して筒編地を作製した。得られた筒編地について、5人の被験者に手を通してもらい、ソフト性とストレッチ性の触感について、それぞれアンケートをとった。ソフト性とストレッチ性について優れていると回答した人数が5人の場合を◎、4人の場合を○、3人の場合を△、2人以下の場合を×とした。
(実施例1、3~6、比較例2~4)
ε-カプロラクタム単位として100モル%(他の共重合成分は含まない)のポリカプロアミド樹脂ペレットを乾燥し、樹脂ペレットの水分率を100ppm以下に調整した。水分率調整後の樹脂ペレットの98%硫酸相対粘度は3.15であった。このポリカプロアミド樹脂ペレット100gに対して酸化マグネシウム粉末を0.04g(マグネシウム元素として1ミリモル)の割合で添加、ドライブレンドした。これを、表1に示す溶融温度で溶融後、ギヤポンプにて計量、輸送し、表1に示すフィラメント数群を有する紡糸口金から吐出し糸条を形成した。そして、ユニフローチムニーで糸条を室温まで冷却固化し、給油装置により含水油剤を給油した後、流体処理装置で交絡を付与し、再度、給油装置により含水油剤を給油した。延伸に関しては、鏡面処理した引取ローラー、及び延伸ローラー(表面粗度が0.5S、クロムコーティング仕上げ)を用いた。引取速度、延伸倍率は表1に示す通りであり、延伸後、表1に示す巻取速度で巻き取り、仮撚加工用ポリアミド糸を得た。得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、総繊度、単糸繊度、強度、伸度、15%伸長時強度、98%硫酸相対粘度、乾熱収縮率を測定した。これらの結果を表1に示す。
得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、3軸摩擦型フリクションディスクタイプの延伸摩擦仮撚加工装置(IVF1205)にて、加工温度(加熱接触式熱板でヒーター設定温度)198℃、加工速度650m/分、延伸倍率1.24、D/Y比2.0、T2/T1=13g/16g=0.81にて延伸同時仮撚り加工を行い、22dtex、20フィラメントのポリアミド仮撚加工糸を得た。得られたポリアミド仮撚加工糸について捲縮率を測定した。これらの結果を表1に示す。
得られたポリアミド仮撚加工糸から筒編地を作製して、ソフト性とストレッチ性の触感について評価した。これらの結果を表1に示す。なお、実施例3においては、単糸繊度が3.7dtexと他の実施例(単糸繊度が1.1dtex)と比較して太いためか、若干ソフト性に劣る結果となった。
(実施例2)
水分率調整後(100ppm以下)のε-カプロラクタム単位として100モル%のポリカプロアミド樹脂ペレットの98%硫酸相対粘度を2.90、仮撚加工用ポリアミド糸の98%硫酸相対粘度を2.96とする以外は、実施例1と同様に溶融紡糸し、約26dtexの仮撚加工用ポリアミド糸を得た。得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、総繊度、単糸繊度、強度、伸度、15%伸長時強度、98%硫酸相対粘度、乾熱収縮率を測定した。この結果を表1に示す。
得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、実施例1と同様の仮撚加工を行い、ポリアミド仮撚加工糸を得た。得られたポリアミド仮撚加工糸について捲縮率を測定した。この結果を表1に示す。
得られたポリアミド仮撚加工糸から筒編地を作製して、ソフト性とストレッチ性の触感について評価した。この結果を表1に示す。
(比較例1)
水分率調整後(100ppm以下)のε-カプロラクタム単位として100モル%のポリカプロアミド樹脂ペレットの98%硫酸相対粘度を2.63、仮撚加工用ポリアミド糸の98%硫酸相対粘度を2.70とする以外は、実施例1と同様に溶融紡糸し、仮撚加工用ポリアミド糸を得た。得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、総繊度、単糸繊度、強度、伸度、15%伸長時強度、98%硫酸相対粘度、乾熱収縮率を測定した。この結果を表1に示す。乾熱収縮率は3.5%と4.5%未満と低い値であり、仮撚加工糸の捲縮率(CR2)は12.0%と低くストレッチ性が劣位のものであった。
得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、実施例1と同様の仮撚加工を行い、ポリアミド仮撚加工糸を得た。T2/T1比=0.64が低く、得られたポリアミド仮撚加工糸に部分的に融着、解撚不良が発生し、未解撚が散見された。得られたポリアミド仮撚加工糸について捲縮率を測定した。この結果を表1に示す。
得られたポリアミド仮撚加工糸から筒編地を作製して、ソフト性とストレッチ性の触感について評価した。この結果を表1に示す。
(参考例1)
比較例1で得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、3軸摩擦型フリクションディスクタイプの延伸摩擦仮撚加工装置(IVF1205)にて、加工温度(加熱接触式熱板でヒーター設定温度)180℃、加工速度630m/分、延伸倍率1.23、D/Y比2.0、T2/T1=11g/10g=1.1にて延伸同時仮撚り加工を行い、22dtex、20フィラメントのポリアミド仮撚加工糸を得た。得られたポリアミド仮撚加工糸について捲縮率を測定した。この結果を表1に示す。
得られたポリアミド仮撚加工糸から筒編地を作製して、ソフト性とストレッチ性の触感について評価した。この結果を表1に示す。
(参考例2)
ポリヘキサメチレンアジパミド樹脂ペレットを乾燥し、樹脂ペレット水分率を1100ppmに調整した。水分率調整後の樹脂ペレットの98%硫酸相対粘度は2.63であった。マグネシウム化合物は添加せずに、後は、実施例1と同様に溶融紡糸し、仮撚加工用ポリアミド糸を得た。得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、総繊度、単糸繊度、強度、伸度、15%伸長時強度、98%硫酸相対粘度、乾熱収縮率を測定した。この結果を表1に示す。
得られた仮撚加工用ポリアミド糸について、3軸摩擦型フリクションディスクタイプの延伸摩擦仮撚加工装置(IVF1205)にて、加工温度(加熱接触式熱板でヒーター設定温度)195℃、加工速度630m/分、延伸倍率1.25、D/Y比2.2、T2/T1=10g/10g=1にて延伸同時仮撚り加工を行い、22dtex、20フィラメントのポリアミド仮撚加工糸を得た。得られたポリアミド仮撚加工糸について捲縮率を測定した。この結果を表1に示す。
得られたポリアミド仮撚加工糸から筒編地を作製して、ソフト性とストレッチ性の触感について評価した。この結果を表1に示す。
Figure 0007625820000001
表1の結果から明らかなように、本発明の仮撚加工用ポリアミド糸は、従来の仮撚加工用ポリアミド糸と比較して、ポリカプロアミドでありながら、仮撚加工温度を積極的に上げることができ、捲縮性能に優れるポリアミド仮撚加工糸を得ることができるといった極めて顕著な効果を奏するものといえる。

Claims (2)

  1. ε-カプロラクタム単位が90モル%以上であるポリカプロアミドからなるポリアミド糸において、200℃、10秒間の乾熱処理をした後の収縮率が4.5~8.0%、伸度が50~70%、かつ単糸繊度が5.0dtex以下である仮撚加工用ポリアミド糸。
  2. 98%硫酸相対粘度が2.9~3.4である請求項1記載の仮撚加工用ポリアミド糸。
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