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JP7626146B2 - 導電性膜およびその製造方法 - Google Patents
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JP7626146B2 - 導電性膜およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、導電性膜およびその製造方法に関する。
近年、導電性を有する新規材料としてMXeneが注目されている。MXeneは、いわゆる2次元材料の1種であり、後述するように、1つまたは複数の層の形態を有する層状材料である。一般的に、MXeneは、かかる層状材料の粒子(MXene粒子ともいい、粉末、フレーク、ナノシート等を含み得る)の形態を有する。
現在、種々の電気デバイスへのMXeneの応用に向けて様々な研究がなされている。上記応用に向け、MXeneを含む材料の導電性、強度等の特性を高めることが求められている。その検討の一環として、MXeneに金属イオンを挿入することが試みられている。例えば特許文献1には、MXene粉体の表面および層間に、ナノニッケル粒子、ナノ銅粒子、ナノアルミニウム粒子、ナノマグネシウム粒子といった金属ナノ粒子を含有させることで、MXeneの強度を高めることが提案されている。
また非特許文献1には、化学エッチングする際に使用したLiClに由来して、MXeneの層間スペースにLiカチオンが存在すること、および、Liカチオンを他の金属イオンと交換することにより、粉末の構造変化が生じることが記載されている。
中国特許出願公開第109207834号明細書
Michael Ghidiu et al.,"Ion-Exchange and Cation Solvation Reactions in Ti3C2 MXene", Chemistry of Materials, 2016, Volume 28, pp.3507-3514
導電性を有する新規材料には、初期導電率が高く、かつ吸湿による導電性の経時劣化が抑制されること、すなわち安定した導電性を示すことが求められるが、特許文献1および非特許文献1には、これらの特性を高めることは示されていない。本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、初期導電率が高く、かつ安定した導電性を示す導電性膜と、その製造方法を提供することにある。
本発明の1つの要旨によれば、
1つまたは複数の層を含む層状材料の粒子を含む導電性膜であって、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を含む導電性膜が提供される。
本発明のもう1つの要旨によれば、
(a1)1つまたは複数の層を含む層状材料の粒子を含み、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含む前駆体膜を準備すること、および
(b1)前記前駆体膜に、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を、イオンとして溶媒中に含む溶液を塗布すること
を含む、導電性膜の製造方法が提供される。
本開示によれば、導電性膜が、所定の層状材料(本明細書において「MXene」とも言う)で形成され、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を含み、これにより、MXeneを含み、初期導電率が高く、かつ導電率の安定性に優れた導電性膜が提供される。
また本開示によれば、(a1)所定の前駆体膜を準備すること、および(b1)前記前駆体膜に、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を、イオンとして溶媒中に含む溶液を塗布することにより、前記導電性膜を製造することができる。
本発明の1つの実施形態における導電性膜に利用可能な層状材料であるMXeneを示す概略模式断面図であって、(a)は単層MXeneを示し、(b)は多層(例示的に二層)MXeneを示す。 本発明の導電性膜の耐吸着性発揮のメカニズムの概略説明図であり、(a)は遷移元素を有さない従来のMXene膜、(b)は遷移元素を含むMXene膜(導電性膜)を示す。 本発明に係る遷移元素含有MXene粒子における層間距離を説明する図である。 本発明の製造方法における前駆体膜の作製に用いうる外部混合式多流体ノズルの1つの例を説明する概略模式図である。 本発明の製造方法における前駆体膜の作製に用いうる外部混合式多流体ノズルの他の例を説明する概略模式図である。 実施例における導電率の経時変化を観察したグラフである。 実施例における1回目のテープ剥離試験の結果を示した写真であり、(a)が実施例1、(b)が比較例1、(c)が比較例2の写真である。 実施例における2回目のテープ剥離試験の結果を示した写真であり、(a)が実施例1、(b)が比較例1、(c)が比較例2の写真である。 実施例におけるスプレーMXene膜のXRD結果を示す図である。 図9の一部(低角側)を拡大したスプレーMXene膜のXRD結果を示す図である。 図9の他の一部(高角側)を拡大したスプレーMXene膜のXRD結果を示す図である。 実施例における別のスプレーMXene膜のXRD結果を示す図である。
(実施形態1:導電性膜)
以下、本発明の1つの実施形態における導電性膜について詳述するが、本開示はかかる実施形態に限定されるものではない。
本実施形態における導電性膜は、
1つまたは複数の層を含む層状材料の粒子を含む導電性膜であって、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を含む。
本明細書では、本実施形態の導電性膜を、上記遷移元素を含まないMXene膜と区別するため、「遷移元素含有MXene膜」または「遷移元素イオン担持MXene膜」ということがある。また、本実施形態の製造方法において、上記遷移元素を含まないMXene膜を「前駆体膜」という。更に、前駆体膜を構成する層状材料を「MXene」、その粒子を「MXene粒子」といい、本実施形態の導電性膜を構成する層状材料の粒子を「遷移元素含有MXene粒子」ということがある。
上記層状材料は、層状化合物として理解され得、「M」とも表され、sは任意の数であり、従来、sに代えてxまたはzが使用されることもある。代表的には、nは、1、2、3または4であり得るが、これに限定されない。
MXeneの上記式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびMnからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、Ti、V、CrおよびMoからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
MXeneは、上記の式:Mが、以下のように表現されるものが知られている。
ScC、TiC、TiN、ZrC、ZrN、HfC、HfN、VC、VN、NbC、TaC、CrC、CrN、MoC、Mo1.3C、Cr1.3C、(Ti,V)C、(Ti,Nb)C、WC、W1.3C、MoN、Nb1.3C、Mo1.30.6C(上記式中、「1.3」および「0.6」は、それぞれ約1.3(=4/3)および約0.6(=2/3)を意味する。)、
Ti、Ti、Ti(CN)、Zr、(Ti,V)、(TiNb)C、(TiTa)C、(TiMn)C、Hf、(HfV)C、(HfMn)C、(VTi)C、(CrTi)C、(CrV)C、(CrNb)C、(CrTa)C、(MoSc)C、(MoTi)C、(MoZr)C、(MoHf)C、(MoV)C、(MoNb)C、(MoTa)C、(WTi)C、(WZr)C、(WHf)C
Ti、V、Nb、Ta、(Ti,Nb)、(Nb,Zr)、(TiNb)C、(TiTa)C、(VTi)C、(VNb)C、(VTa)C、(NbTa)C、(CrTi)C、(Cr)C、(CrNb)C、(CrTa)C、(MoTi)C、(MoZr)C、(MoHf)C、(Mo)C、(MoNb)C、(MoTa)C、(WTi)C、(WZr)C、(WHf)C、(Mo2.71.3)C(上記式中、「2.7」および「1.3」は、それぞれ約2.7(=8/3)および約1.3(=4/3)を意味する。)
代表的には、上記の式において、Mがチタンまたはバナジウムであり、Xが炭素原子または窒素原子であり得る。例えば、MAX相は、TiAlCであり、MXeneは、Tiである(換言すれば、MがTiであり、XがCであり、nが2であり、mが3である)。
なお、本開示において、MXeneは、残留するA原子を比較的少量、例えば元のA原子に対して10質量%以下で含んでいてもよい。A原子の残留量は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下であり得る。しかしながら、A原子の残留量は、10質量%を超えていたとしても、導電性膜の用途や使用条件によっては問題がない場合もあり得る。
本実施形態に係る遷移元素含有MXene粒子は、遷移元素を含有すること、またそれに伴い、層状材料の層間距離が広がること等を除き、その骨格に該当する構造は、前駆体膜を構成するMXene粒子と同じである。以下では、遷移元素含有MXene粒子の骨格に該当する構造について説明しており、図1に遷移元素は図示していない。
上記MXene粒子は、図1に模式的に例示する1つの層のMXene10a(単層MXene)を含む集合物である。MXene10aは、より詳細には、Mで表される層本体(M層)1aと、層本体1aの表面(より詳細には、各層にて互いに対向する2つの表面の少なくとも一方)に存在する修飾または終端T3a、5aとを有するMXene層7aである。よって、MXene層7aは、「M」とも表され、sは任意の数である。
上記MXene粒子は、1つの層と共に複数の層を含みうる。複数の層のMXene(多層MXene)として、図1(b)に模式的に示す通り、2つの層のMXene10bが挙げられるが、これらの例に限定されない。図1(b)中の、1b、3b、5b、7bは、前述の図1(a)の1a、3a、5a、7aと同じである。多層MXeneの、隣接する2つのMXene層(例えば7aと7b)は、必ずしも完全に離間していなくてもよく、部分的に接触していてもよい。前記MXene10aは、上記多層MXene10bが個々に分離されて1つの層で存在するものであり、分離されていない多層MXene10bが残存し、上記単層MXene10aと多層MXene10bの混合物であってもよい。
本実施形態を限定するものではないが、MXeneの各層(上記のMXene層7a、7bに相当する)の厚さは、例えば0.8nm以上、5nm以下、特に0.8nm以上、3nm以下である(主に、各層に含まれるM原子層の数により異なり得る)。含まれうる多層MXeneの、個々の積層体について、層間距離(または空隙寸法、図1(b)中にΔdにて示す)は、例えば0.8nm以上、10nm以下、特に0.8nm以上、5nm以下、より特に約1nmであり、層の総数は、2以上、20,000以下でありうる。
上記MXene粒子は、上記多層MXeneが、層間剥離処理を経て得られた、層数の少ないMXeneであることが好ましい。前記「層数が少ない」とは、例えばMXeneの積層数が6層以下であることをいう。また、層数の少ない多層MXeneの積層方向の厚みは、10nm以下であることが好ましい。以下、この「層数の少ない多層MXene」を「少層MXene」ということがある。また、単層MXeneと少層MXeneを併せて「単層・少層MXene」ということがある。
上記MXene粒子は、好ましくは、単層MXeneと少層MXene、すなわち単層・少層MXeneを含む。本実施形態の導電性膜は、厚みが10nm以下である単層・少層MXeneの割合が、50体積%以上であってもよく、更には70体積%以上、更には90体積%以上、更には95体積%以上であってもよい。
本実施形態の導電性膜は、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を含む。MXeneが金属のd軌道と相互作用することは知られているが、その中でもこれらの遷移元素のd軌道の電子が、MXeneのπ電子と相互作用しやすく、MXeneの層と層を保持する作用を確保しやすいため、導電率の安定性向上に寄与すると考えられる。また、MXeneの層と層を保持する作用が発揮されることにより、導電性膜の強度向上にも寄与しうる。上記遷移元素は、MXeneを構成する元素と同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態の導電性膜は、MXeneに、上記遷移元素のイオンが担持されていることが好ましい。すなわち、遷移元素含有MXene粒子は、遷移元素担持MXene粒子であることが好ましい。本明細書において「担持」とは、上記遷移元素が、MXeneそのものを構成しておらず、かつ、遷移金属のイオンまたは遷移金属の無機酸塩が、MXeneの層と層の間に存在している状態をいう。前記無機酸塩は、例えば、導電性膜の製造方法における工程(b1)または工程(d2)で使用する、無機酸塩でありうる。無機酸塩として例えば硫酸チタンの場合、チタンイオンは、カウンターイオンである硫酸イオンと結合した状態で、MXeneの層と層の間に存在しうる。
無機酸塩における遷移金属のイオンとカウンターイオンとの結合と、それ以外の、例えば不純物として混入することが考えられる遷移金属の炭化物、窒化物における遷移金属と炭素、窒素との結合との区別は、XPS(X線光電子分光法)で確認することができる。また、MXeneシート層間に上記遷移元素が存在していることは、例えばTEM(透過電子顕微鏡)で確認することが可能である。
上記遷移元素の中でも、Ti、CrおよびYのうちの1種以上が好ましく、最も好ましくはTiである。
前記遷移元素は、前記層と層の間に存在することが好ましい。遷移元素が例えばTiの場合、図2(b)に模式的に例示する通り、遷移元素の特にイオン(図2の場合、Tiイオン41)が、遷移元素含有MXene粒子10dの層間にインターカレートされて、遷移元素含有MXene粒子10dの層間にTiイオン41が担持され、層7dと層7dをTiイオン41がつなぎとめる作用効果を発揮すると考える。その結果、従来のMXene粒子10cでは層7cと層7cの間に水分子40が侵入しやすく、水分子40が存在することによる導電率の低下、すなわち、吸湿による導電性の経時劣化を抑制できなかったのに対し、遷移元素含有MXene粒子10dによれば、図2(b)に示す通り、層間への水分子40の侵入が抑制されて、吸湿による導電性の経時劣化を抑制でき、初期導電率を大幅に低下させることなく、高い導電率を維持できると考えられる。更に、遷移元素含有MXene粒子10dの層7dと層7dを遷移元素のイオンがつなぎとめることで、MXene膜の強度確保にも寄与すると考えられる。更に、あくまでも推測であるが、前述の通り遷移元素イオンがMXeneと相互作用することによって電子の移動が促進され、それが、高い初期導電率の達成の一因となりうると考えられる。
また、本開示において、本発明に係る導電性膜の効果を検証するため、耐吸湿性の比較に用いるリファレンスとしてのMXene膜は、焼成過程と粉砕過程を含むMAX相の準備工程、エッチング処理工程、デラミネーション工程、濃縮工程が、本発明に係る導電性膜の製造方法と同一であって、かつMXene膜内に、何らかの形でLiが含まれている状態のものとする。
なお、上記図2では、多層MXene(粒子)内の層間を例に説明したが、本実施形態における遷移元素含有MXene粒子の「層と層の間」とは、これに限定されず、例えば単層MXene(粒子)と他の単層MXene(粒子)との間、および、単層MXene(粒子)と多層MXene(粒子)の間をもいう。
本実施形態の導電性膜は、好ましくはMXeneを構成する層と層の間に遷移元素のイオンが存在し、MXeneを構成する層と層の間の距離が、上記遷移元素を含まないMXene膜よりも短い。上記「MXeneを構成する層と層の間の距離」とは、MがTiで表されるTi(O-term)の場合、結晶構造は図3に模式的に示す通りであり(図3中、50はチタン原子、51は酸素原子であり、その他の元素については省略されている)、この図3における両矢印で示される距離をいう。上記距離は、X線回折測定して得られるXRDプロファイルにおける、MXeneの(002)面に相当する11°(deg)以下の低角のピークの位置で判断できる。XRDプロファイルにおけるピークが高角であるほど、層間距離が狭まっていることを示す。前記ピークは、ピークトップをいう。前記X線回折測定は、後述する実施例に示す条件で測定すればよい。上記低角のピークの位置として、例えば5~11°の範囲が挙げられ、その中でも例えば6.2°以上、更には6.3°以上であることが挙げられる。
また本実施形態の導電性膜が、前記MがTiで表され、前記遷移元素がTiである場合、導電性膜をX線回折測定して得られるプロファイルにおいて、52°以上58°以下にピークを有するとともに、45°以上49°以下にピークを有することで、MXeneの骨格を形成するTiとは別に、遷移元素として担持するTiを有することを判断できる。
上記二つのピークの角度差、すなわち、(前記52°以上58°以下に位置するピークの角度)-(前記45°以上49°以下に有するピークの角度)で求められる角度(単位deg)の差は、7°以上10°以下の範囲でありうる。
なお、本明細書においてXRDプロファイルにおけるピーク、特に前記52°以上58°以下に位置するピークと前記45°以上49°以下に有するピークは、前後1点の測定点より数値が高い(つまり正の極値を有する)部分をピーク頂点とみなし、該ピーク頂点からベースラインへ垂線を引いた時の高さをピーク高さとし、かつピーク高さが(002)面に相当するピークの1/500以上であるものをいう。
本実施形態の導電性膜の初期導電率は、導電性膜の厚みを、マイクロメーターで測定するか、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定するか、または触針式表面形状測定器で測定し、該導電性膜の厚みと、4探針法で測定した前記導電性膜の表面抵抗率を、下記式に代入して求められ、5000S/cm以上でありうる。
導電率[S/cm]=1/(導電性膜の厚み[cm]×導電性膜の表面抵抗率[Ω/□])
前記導電性膜の厚みを、マイクロメーター、走査型電子顕微鏡、または触針式表面形状測定器のいずれで測定するかは、前記導電性膜の厚みに応じて決定する。測定方法の採用の目安として、前記マイクロメーターでの測定は、前記導電性膜の厚みが薄い場合に用いればよい。前記導電性膜の厚みが5μm以上の場合に用いてもよい。前記触針式表面形状測定器での測定は、前記導電性膜の厚みが400μm以下の場合、前記走査型電子顕微鏡での測定は、前記導電性膜の厚みが200μm以下の場合であって、上記触針式表面形状測定器で測定できない場合に用いる。前記走査型電子顕微鏡で測定する場合、測定倍率は、膜厚に応じて決定すればよい。触針式表面形状測定器で測定する場合、Veeco Instruments Inc社のDektak(登録商標)測定器を用いて測定する。前記導電性膜の厚みは、平均値として算出する。
導電率の安定性に優れているとは、後述の実施例に示す通り、温度25℃で湿度99%の環境下に暴露した状態で4週間後の導電率が、初期導電率の10%以上、好ましくは20%以上であることをいう。
本実施形態の導電性膜は、任意の適切な用途に利用され得る。例えば、任意の適切な電気デバイスにおける電極や電磁シールド(EMIシールド)など、高い導電率を維持すること(初期導電率の低下を低減し、酸化を防止すること)が要求されるような用途に利用され得る。
電極は、特に限定されないが、例えばキャパシタ用電極、バッテリ用電極、生体信号センシング電極、センサ用電極、アンテナ用電極などであり得る。本実施形態の導電性膜を使用することにより、より小さい容積(装置占有体積)でも、大容量のキャパシタおよびバッテリ、低インピーダンスの生体信号センシング電極、高感度のセンサおよびアンテナを得ることができる。
キャパシタは、電気化学キャパシタであり得る。電気化学キャパシタは、電極(電極活物質)と電解液中のイオン(電解質イオン)との間での物理化学反応に起因して発現する容量を利用したキャパシタであり、電気エネルギーを蓄えるデバイス(蓄電デバイス)として使用可能である。バッテリは、繰り返し充放電可能な化学電池であり得る。バッテリは、例えばリチウムイオンバッテリ、マグネシウムイオンバッテリ、リチウム硫黄バッテリ、ナトリウムイオンバッテリなどであり得るが、これらに限定されない。
生体信号センシング電極は、生体信号を取得するための電極である。生体信号センシング電極は、例えばEEG(脳波)、ECG(心電図)、EMG(筋電図)、EIT(電気インピーダンストモグラフィ)を測定するための電極であり得るが、これらに限定されない。
センサ用電極は、目的の物質、状態、異常等を検知するための電極である。センサは、例えばガスセンサ、バイオセンサ(生体起源の分子認識機構を利用した化学センサ)などであり得るが、これらに限定されない。
アンテナ用電極は、空間に電磁波を放射する、および/または、空間中の電磁波を受信するための電極である。
(実施形態2:導電性膜の製造方法)
以下、本発明の実施形態における導電性膜の製造方法について詳述するが、本開示はかかる実施形態に限定されるものではない。
本実施形態の1つの導電性膜の製造方法(第1製造方法)は、
(a1)1つまたは複数の層を含む層状材料の粒子を含み、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含む前駆体膜を準備すること、および
(b1)前記前駆体膜に、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を、イオンとして溶媒中に含む溶液を塗布すること
を含む。この製造方法により、上記遷移元素を含む導電性膜を製造できる。
本実施形態のもう1つの導電性膜の製造方法(第2製造方法)は、
(a2)以下の式:
AX
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表されるMAX相を準備すること、
(b2)エッチング液を用いて、前記MAX相から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
(c2)前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、1価の金属イオンを含む金属化合物とを混合する工程を含む、1価の金属イオンのインターカレーション処理を行うこと、
(d2)前記1価の金属イオンのインターカレーション処理により得られた、1価の金属イオンのインターカレーション処理物と、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を、イオンとして溶媒中に含む溶液とを混合する工程を含む、遷移元素インターカレーション処理を行うこと、および
(e2)前記遷移元素インターカレーション処理により得られた、遷移元素インターカレーション処理物から、溶媒を少なくとも部分的に除去して導電性膜を得ること
を含む。この製造方法によっても、上記遷移元素を含む導電性膜を製造できる。
以下、第1製造方法と第2製造方法の各工程について詳述する。まず第1製造方法から説明する。
[第1製造方法]
・工程(a1)
前駆体膜として所定の乾燥したMXene膜を準備する。前駆体膜の製造は、限定されず、例えば、MXene(粒子)を液状媒体中に含むスラリーを用い、スプレーすることにより前駆体膜を得る場合、次の方法で製造することができる。
まず、所定の層状材料の粒子(MXene粒子)を準備する。かかるMXene粒子は、MAX相からA原子(および場合によりM原子の一部)を選択的にエッチング(除去および場合により層分離)することにより合成することができる。MAX相は、以下の式:
AX
(式中、M、X、nおよびmは、上記の通りであり、Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、通常はA族元素、代表的にはIIIA族およびIVA族であり、より詳細にはAl、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、SおよびCdからなる群より選択される少なくとも1種を含み得、好ましくはAlである)
で表され、かつ、Mで表される2つの層(各XがMの八面体アレイ内に位置する結晶格子を有し得る)の間に、A原子により構成される層が位置した結晶構造を有する。MAX相は、代表的にm=n+1の場合、n+1層のM原子の層の各間にX原子の層が1層ずつ配置され(これらを合わせて「M層」とも称する)、n+1番目のM原子の層の次の層としてA原子の層(「A原子層」)が配置された繰り返し単位を有するが、これに限定されない。
上記MAX相は、既知の方法で製造することができる。例えばTiC粉末、Ti粉末およびAl粉末を、ボールミルで混合し、得られた混合粉末をAr雰囲気下で焼成し、焼成体(ブロック状のMAX相)を得る。その後、得られた焼成体をエンドミルで粉砕して次工程用の粉末状MAX相を得ることができる。
MAX相からA原子(および場合によりM原子の一部)が選択的にエッチング(除去および場合により層分離)されることにより、A原子層(および場合によりM原子の一部)が除去されて、露出したM層の表面にエッチング液(通常、含フッ素酸の水溶液が使用されるがこれに限定されない)中に存在する水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子等が修飾して、かかる表面を終端する。
上記エッチングは、Fを含むエッチング液を用いて実施され得、例えば、フッ化リチウムおよび塩酸の混合液を用いた方法や、フッ酸を用いた方法などであってよい。エッチング液に、後記の第2製造方法の工程(b2)と同様に、1価の金属イオンを含む金属化合物が含まれ、上記エッチングと同時に1価の金属イオンのインターカレーション処理を行ってもよい。この場合、エッチング液中の1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率等は、後記の第2製造方法の工程(b2)と同様とすることができる。
上記エッチング後、適宜、任意の適切な後処理(例えば超音波処理、ハンドシェイクまたはオートマチックシェイカーなど)により、MXeneの層分離(デラミネーション、多層MXeneを単層MXeneに分離すること)を促進してもよい。例えば、後記の第2製造方法の工程(c2)と同様の条件で、前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、1価の金属イオンを含む金属化合物とを混合する工程を含む、1価の金属イオンのインターカレーション処理を行ってもよい。なお、超音波処理は、せん断力が大きすぎてMXeneが破壊され得るので、アスペクト比がより大きい2次元形状のMXene(好ましくは単層MXene)を得ることが望まれる場合には、ハンドシェイクまたはオートマチックシェイカーなどにより適切なせん断力を付与することが好ましい。
スプレーすることにより前駆体膜を得る場合、まず、MXene(粒子)を液状媒体中に含むスラリーSを調製する。スラリーSにおける層状材料の粒子の濃度は、例えば5mg/mL以上であり得るが、特に、粒子の凝集/重なりを解き、場合により層分離させることができるので、ノズル詰まりを招くことなく、30mg/mL以上にすることが可能である。スラリーSにおける層状材料の粒子の濃度が高いほど、所望の厚さの膜をより短時間で製造することができ、工業的量産に適する。層状材料の粒子の濃度の上限は、適宜選択できるが、例えば、200mg/mL以下であり得る。層状材料の粒子の濃度は、スラリーSにおける固形分濃度として理解され、固形分濃度は、例えば加熱乾燥重量測定法、凍結乾燥重量測定法、ろ過重量測定法などを用いて測定可能である。
スラリーSは、層状材料の粒子10aおよび/または10bを液状媒体中に含む分散液および/または懸濁液であってよい。液状媒体は、水性媒体および/または有機系媒体であり得、好ましくは水性媒体である。水性媒体は、代表的には水であり、場合により、水に加えて他の液状物質を比較的少量(水性媒体全体基準で例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下)で含んでいてもよい。有機系媒体は、例えばN-メチルピロリドン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、酢酸などであってよい。
このようにして調製したスラリーSを用いて、下記の通りスプレーを実施して前駆体膜が製造される。前駆体膜は、スラリーSの液状媒体に由来する液体成分が残留していても、実質的に存在していなくてもよい。前駆体膜は、いわゆるバインダを含まなくてもよい。
図4を参照して、層状材料の粒子を液状媒体中に含むスラリー(流体)と、気体(別の流体)とをノズル20から別々に吐出して、該ノズル20の外部にて互いに衝突させ(混合し)、層状材料の粒子を基材31上に堆積させて前駆体膜30を形成する方法を説明する。
より詳細には、本実施形態に利用可能なノズル20は、外部混合式多流体ノズルと称されるノズルである。図5に外部混合式多流体ノズルの例を示す。この例の通り、ノズル20は、ノズル20の外部にてスラリーと気体とを渦流にて衝突させる構成を有するものが好ましい。
図5を参照して、外部混合式多流体ノズル20cは、ノズル20cの外部にてスラリーSと気体Gとを渦流にて衝突させる構成を有する、外部混合渦流式多流体ノズルである。より詳細には、外部混合式多流体ノズル20cは、スラリーSを吐出して、別途、渦流(好ましくは高速旋回渦流)として吐出した気体Gと衝突させるように構成されたヘッド部Hを有する。例えば、ノズル20cを用いることにより、以下のようにして、スラリーSおよび気体Gの混合流体から、層状材料の粒子を含むミストMをスプレーすることができる。ノズル20cでは、気体Gを、ヘッド部Hに組み込まれた旋回部材(図示せず)に設けられた1つ以上のスパイラル溝(図示せず)に通過させて、気体吐出口(図示せず)から吐出することにより、気体Gの高速旋回渦流が発生する。スラリーSは、気体Gによる高速旋回渦流の負圧により、スラリーS用に設けられたノズル20c内部の流体供給管に導入され、流体供給管の先端の流体吐出口(図示せず)から吐出される。そして、ノズル20cのヘッド部Hの前方で、流体吐出口から吐出されたスラリーSが、気体吐出口から吐出された気体Gによる高速旋回渦流と衝突する(スラリーが微粒化される)。ヘッド部Hの前方で形成された混合流体(微粒化されたスラリーを含む)は、層状材料の粒子を含むミストMとして、ノズル20cからスプレーされる。かかる外部混合式多流体ノズル20cは、外部混合渦流式多流体ノズル(例えば、株式会社アトマックス製、アトマックスノズル)などであり得る。
このようにして、ノズル20cにより、層状材料の粒子を液状媒体中に含むスラリーSと、気体Gとをノズル20cから別々に吐出して、ノズル20cの外部にて互いに衝突させることにより、スラリーSを極めて微粒で均質なミストMにすることができ、かつ、層状材料の粒子に強いせん断力を印加することができる。これにより、層状材料の粒子が凝集している場合には、凝集を解くことができ、層状材料の粒子が重なりあっている場合には、重なりを解くことができる。そして/あるいは、粒子が多層構造を有する粒子である場合には、層分離(デラミネーション)させることができる。
スラリーSは、ノズル20cに対して加圧方式またはサクション方式のいずれで供給されてもよい。
気体Gは、特に限定されず、例えば空気、窒素ガスなどであってよい。気体Gの圧力は適宜設定され得、例えば0.05~1.0MPa(ゲージ圧)であってよい。
ミストMの粒径は、適宜調整され得、例えば1μm以上15μm以下であってよい。
ノズル20からスプレーされたミストMは、基材31の表面上に供給(塗布)され(スプレーコーティング)、層状材料の粒子が基材31上に堆積されて前駆体膜30が形成される。ミストMに含まれる液体成分(スラリーSの液状媒体に由来する)は、基材31上に供給される間および/またはその後に、乾燥により少なくとも部分的に、好ましくは全部が、除去され得る。
基材は、特に限定されず、任意の適切な材料から成り得る。基材は、例えば樹脂フィルム、金属箔、プリント配線基板、実装型電子部品、金属ピン、金属配線、金属ワイヤなどであってよい。
乾燥は、自然乾燥(代表的には常温常圧下にて、空気雰囲気中に配置する)や空気乾燥(空気を吹き付ける)などのマイルドな条件で行っても、温風乾燥(加熱した空気を吹き付ける)、加熱乾燥、および/または真空乾燥などの比較的アクティブな条件で行ってもよい。
ノズル20からのスプレーおよび乾燥は、所望の膜厚さが得られるまで適宜繰り返してもよい。例えば、スプレーと乾燥との組み合わせを複数回繰り返して実施してもよい。しかしながら、本実施形態によれば、MXene粒子10aおよび/または10bを比較的高濃度で含むスラリーを利用できるので、1回のスプレー(および場合により乾燥)を実施するだけで、比較的厚い膜(例えば厚さ0.5μm以上)を得ることができ、所望の膜厚さが得られるまでに実施するスプレー(および場合により乾燥)の回数を低減することができる。
これにより前駆体膜30として前駆体膜が製造される。前駆体膜30は、層状材料の粒子10aおよび/または10bを含み、スラリーSの液状媒体に由来する液体成分が残留していても、実質的に存在していなくてもよい。前駆体膜30は、いわゆるバインダを含まない。
上記スプレーによる前駆体膜の作製以外に、上記スラリーまたは上記デラミネーションにて得られた、MXene粒子を含む上澄み液を、吸引ろ過することによって、前駆体膜を作製してもよい。また、スプレーによる前駆体膜は、外部混合式多流体ノズル以外のノズルを用いて作製されてもよい。
・工程(b1)
前記前駆体膜に、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を、イオンとして溶媒中に含む溶液を塗布する。
前記遷移元素をイオンとして溶媒中に含む溶液の調製には、上記遷移元素を含む化合物を用いることができる。該化合物として、例えば、上記遷移元素の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、およびリン酸塩からなる群から選択される1以上の無機酸塩を用いることが好ましい。より好ましくは、硫酸塩と酢酸塩のうちの1以上の無機酸塩である。前記溶液に含まれる化合物の濃度は、特に限定されず、例えば0.001M以上、0.1M以下の範囲とすることができる。上記硫酸塩を用いる場合、溶液に含まれる化合物の濃度は0.001M以上、0.1M以下の範囲とすることが好ましい。上記酢酸塩を用いる場合、溶液に含まれる化合物の濃度は0.01M以上、0.1M以下の範囲とすることが好ましい。カウンターアニオン源として、上記無機酸塩を用いることが挙げられるが、酸は必須でなくてもよい。前記溶媒として、水(たとえば、蒸留水、脱イオン水等の精製水等)、炭素数2~4程度の低級アルコール(たとえば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いることができ、好ましくは水である。
前記塗布には、例えば、浸漬、刷毛、ローラー、ロールコーター、エアースプレー、エアレススプレー、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、ダイコーター、静電塗装等の一般に用いられている塗装方法が含まれる。
上記塗布後の工程は特に限定されず、例えば、浸漬による塗布処理物を溶液から引き揚げた後、水で洗浄してから乾燥、例えば70~90℃で1~2時間乾燥し、さらに120~160℃で乾燥することが挙げられる。
[第2製造方法]
・工程(a2)
まず、前記第1製造方法の工程(a1)と同様にしてMAX相を得る。
上記MAX相は、既知の方法で製造することができる。例えばTiC粉末、Ti粉末およびAl粉末を、ボールミルで混合し、得られた混合粉末をAr雰囲気下で焼成し、焼成体(ブロック状のMAX相)を得る。その後、得られた焼成体をエンドミルで粉砕して次工程用の粉末状MAX相を得ることができる。
・工程(b2)
エッチング液を用いて、前記MAX相から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行う。エッチング処理の条件は、特に限定されず、既知の条件を採用することができる。例えば、Fを含むエッチング液を用いて実施され得、例えば、フッ化リチウムおよび塩酸の混合液を用いた方法や、フッ酸を用いた方法などであってよい。エッチング液に、1価の金属イオンを含む金属化合物が含まれ、下記工程(c2)の代わりに、または下記工程(c2)と共に、上記エッチングと同時に1価の金属イオンのインターカレーション処理を行ってもよい。この場合、エッチング液中の1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率は、0.001質量%以上とすることが好ましい。上記含有率は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。一方、溶液中の分散性の観点からは、エッチング液中の1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率を、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
・工程(c2)
前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、1価の金属イオンを含む金属化合物とを混合する工程を含む、1価の金属イオンのインターカレーション処理を行う。1価の金属イオンを含む金属化合物を構成する1価の金属イオンとして、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、銅イオン、銀イオン、金イオン等が挙げられる。前記1価の金属イオンを含む金属化合物として、上記金属イオンと陽イオンが結合したイオン性化合物が挙げられる。例えば上記金属イオンの、ヨウ化物、リン酸塩、硫酸塩を含む硫化物塩、硝酸塩、酢酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。前記1価の金属イオンとして、前述の通りリチウムイオンが好ましく、1価の金属イオンを含む金属化合物として、リチウムイオンを含む金属化合物が好ましく、リチウムイオンのイオン性化合物がより好ましく、リチウムイオンのヨウ化物、リン酸塩、硫化物塩のうちの1以上が更に好ましい。金属イオンとしてリチウムイオンを用いれば、リチウムイオンに水和している水が最も負の誘電率を有するため、単層化しやすくなると考えられる。
1価の金属イオンのインターカレーション処理用配合物に占める、1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率は、0.001質量%以上とすることが好ましい。上記含有率は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。一方、溶液中の分散性の観点からは、1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率を、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
上記混合の後に、撹拌を行ってもよいし、静置してもよい。前記撹拌の方法としては、例えば、スターラー等の撹拌子を用いる方法、撹拌翼を用いる方法、ミキサーを用いる方法、及び遠心装置を用いる方法等が挙げられる。
・工程(d2)
前記1価の金属イオンのインターカレーション処理により得られた、1価の金属イオンのインターカレーション処理物と、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を、イオンとして溶媒中に含む溶液とを混合する。前記溶液に含まれる遷移元素の化合物の種類および濃度等については、第1製造方法の工程(b1)で述べた通りである。上記混合の後に、撹拌を行ってもよいし、静置してもよい。前記撹拌の方法としては、例えば、スターラー等の撹拌子を用いる方法、撹拌翼を用いる方法、ミキサーを用いる方法、及び遠心装置を用いる方法等が挙げられる。
・工程(e2)
遷移元素インターカレーション処理により得られた、遷移元素インターカレーション処理物から、溶媒を少なくとも部分的に除去して導電性膜を得る。前記溶媒を少なくとも部分的に除去する方法は特に限定されず、ろ過、加熱、減圧蒸留等が挙げられる。例えば、遷移元素インターカレーション処理物を、水で洗浄後に得られる、上澄み液またはクレイを吸引ろ過することが挙げられる。ろ過後は例えば80℃で24時間の真空乾燥を行って導電性膜を作製することができる。吸引ろ過のフィルターには、例えばメンブレンフィルター(メルク株式会社製、デュラポア、孔径0.45μm)を用いることができる。
以上、本発明の実施形態における導電性膜およびその製造方法について詳述したが、種々の改変が可能である。なお、本発明の導電性膜は、上述の実施形態における製造方法とは異なる方法によって製造されてもよく、また、本発明の導電性膜の製造方法は、上述の実施形態における導電性膜を提供するもののみに限定されないことに留意されたい。
〔遷移元素含有MXene膜の製造〕
(実施例1)
実施例1では、サンプル(導電性膜)として、Tiイオン担持MXene膜を用意した。
(前駆体膜の形成)
・スラリーの調製
MAX粒子としてTiAlC粒子を既知の方法で調製した。このTiAlC粒子(粉末)をLiFと共に9モル/Lの塩酸に添加して(TiAlC粒子1gにつき、LiF1g、9モル/Lの塩酸10mLとした)、35℃にてスターラーで24時間撹拌して、TiAlC粒子に由来する固体成分を含む固液混合物(懸濁液)を得た。
上記固液混合物(懸濁液)に対して、純水による洗浄および遠心分離機を用いた上澄みの分離除去(上澄みを除いた残りの沈降物を再び洗浄に付す)操作を10回程度繰り返し実施した。そして、沈降物に純水を添加した混合物をオートマチックシェイカーで15分間撹拌し、その後、遠心分離機で5分間の遠心分離操作に付して上澄みと沈降物に分離させ、上澄みを遠心脱水により分離除去した。これにより、上澄みを除いた残りの沈降物に純水を添加することで希釈し、粗精製スラリーを得た。
粗精製スラリーは、MXene粒子として、単層MXeneと、層分離(デラミネーション)不足により単層化されていない多層MXeneとを含み得、更に、MXene粒子以外の不純物(未反応のMAX粒子および、エッチングされたA原子に由来する副生成物の結晶物(例えばAlFの結晶物)等)を含むと理解される。
上記で得た粗精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、2600×gの相対遠心力(RCF)にて5分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みを回収し、精製スラリーを得た。精製スラリーは、MXene粒子として、単層MXeneを多く含むと理解される。上澄みを除いた残りの沈降物は、その後、使用しなかった。
上記で得た精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、3500×gのRCFにて120分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みを分離除去した。分離除去した上澄みは、その後、使用しなかった。上澄みを除いた残りの沈降物として粘土状物質(クレイ)を得た。これにより、MXeneクレイとして、Ti-水分散体クレイを得た。このMXeneクレイと純水とを適切な量で混合して、MXene固形分濃度75mg/mLのMXene水分散体を準備した。
・ろ過による前駆体膜の形成
MXene水分散体(MXene固形分濃度75mg/mL)10mLを純水で15mg/mLに希釈し、全量50mLの水分散体を得た。その後、MXene固形分濃度15mg/mLの水分散体を、5mLをスポイトでとり、一晩吸引ろ過した。上記ろ過にはメンブレンフィルター(孔径0.45μm、メルク株式会社製 デュラポア)を用いた。吸引ろ過して得られたろ物を、その後、80℃の真空オーブンで一晩乾燥させ、前駆体膜としてろ過MXene膜を得た。
・スプレーによる前駆体膜の形成
また別の前駆体膜(MXene膜)として、MXeneスプレー膜を次の通り作製した。外部混合式多流体ノズルとして、外部混合渦流式多流体(二流体)ノズル(株式会社アトマックス製、アトマックスノズルAM12型)を使用した。上記で準備したスラリー(固形分濃度84mg/mL)をプラスチックシリンジに入れ、シリンジポンプ(株式会社ワイエムシィ製、YSP-101)にセットした。シリンジポンプの押し出し速度を5.0mL/minに設定し、プラスチックシリンジの吐出口を、外部混合式多流体ノズルの液状物(スラリー)供給口に接続した。他方、外部混合式多流体ノズルの気体供給口を圧縮空気の供給源(工場内圧縮空気ライン)にプラスチックホースを介して接続し、ノズルからの気体吐出圧力が0.45MPa(ゲージ圧)となるように調整した。
その後、外部混合式多流体ノズルから、上記MXene固形分濃度15mg/mL水分散体および気体(空気)を吐出して、金コートガラス(株式会社和貴研究所製)からなる基材の表面にスプレーした。スプレー後、80℃の真空オーブンで一晩乾燥させ、前駆体膜としてスプレーMXene膜を得た。
(遷移元素含有溶液への浸漬)
次に、硫酸チタン(IV)25%水溶液(キシダ化学株式会社製)を0.0384g計り取り、純水で20mLにメスアップし、0.002M硫酸チタン水溶液を作製した。作製した0.002M硫酸チタン水溶液20mLに、前述の通り作製したろ過MXene膜とスプレーMXene膜をそれぞれ浸し、24時間室温で放置した。24時間後、硫酸チタン水溶液からろ過MXene膜とスプレーMXene膜を取り出し、室温でさらに3日放置して乾燥させ、その後80℃真空オーブンで一晩乾燥させて、実施例1のサンプル(導電性膜)を得た。
(実施例2)
実施例2では、サンプル(導電性膜)として、Crイオン担持MXene膜を用意した。
(前駆体膜の形成)
実施例1のスプレーによる前駆体膜の形成において、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製)からなる基材上にスプレーした以外は、実施例1と同様にして、前駆体膜としてスプレーMXene膜を得た。
(遷移元素含有溶液への浸漬)
次に、酢酸クロム(III)(富士フィルム和光純薬株式会社製)を1.146g計り取り、純水で50mLにメスアップし、0.1M酢酸クロム水溶液を作製した。作製した0.1M酢酸クロム水溶液50mLに、前述の通り作製したスプレーMXene膜を浸し、24時間室温で放置した。24時間後、0.1M酢酸クロム水溶液からスプレーMXene膜を取り出し、室温でさらに1日放置し乾燥させた。その後80℃常圧オーブンで1時間乾燥させ、さらに150℃で30分乾燥させて、実施例2のサンプル(導電性膜)を得た。
(実施例3)
実施例3では、サンプル(導電性膜)として、Yイオン担持MXene膜を用意した。
(前駆体膜の形成)
実施例1のスプレーコーティングにおいて、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製)からなる基材上にスプレーした以外は、実施例1と同様にして、スプレーMXene膜を得た。
(遷移元素含有溶液への浸漬)
次に、酢酸イットリウム四水和物(III)(富士フィルム和光純薬株式会社製)を1.691g計り取り、純水で50mLにメスアップし、0.1M酢酸イットリウム水溶液を作製した。作製した0.1M酢酸イットリウム水溶液50mLに、前述の通り作製したスプレーMXene膜を浸し、24時間室温で放置した。24時間後、0.1M酢酸イットリウム水溶液からスプレーMXene膜を取り出し、室温でさらに1日放置し乾燥させた。その後80℃常圧オーブンで1時間乾燥させ、さらに150℃で30分乾燥させて、実施例3のサンプル(導電性膜)を得た。
なお、上記実施例1~3では、遷移元素を含む水溶液に前駆体膜(MXene膜)を浸すことによって遷移元素イオン担持MXene膜を得たが、遷移元素イオン担持MXene膜を製造する方法はこれに限られず、1価の金属イオンのインターカレーション処理物と遷移元素イオン含有溶液とを混合して遷移元素インターカレーション処理を行った後、例えばろ過などにより、遷移元素インターカレーション処理物から、溶媒を少なくとも部分的に除去して遷移元素イオン担持MXene膜を得てもよい。
(比較例1)
比較例1では、サンプルとして、Alイオン担持MXene膜を用意した。
まず前駆体膜として、実施例1と同様にして、ろ過MXene膜とスプレーMXene膜を得た。
次に、硝酸アルミニウム九水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製)を0.0150g計り取り、20mLの純水に溶解し0.002M硝酸アルミニウム水溶液を作製した。作製した0.002M硝酸アルミニウム水溶液20mLに、前述の通り作製したろ過MXene膜とスプレーMXene膜を浸し、24時間室温で放置した。24時間後、硝酸アルミニウム水溶液からろ過MXene膜とスプレーMXene膜を取り出し、室温でさらに3日放置し乾燥させ、その後80℃真空オーブンで一晩乾燥させて、比較例1のサンプルを得た。
(比較例2)
比較例2では、サンプルとして、イオン担持なしのMXene膜(前駆体膜)を用意した。
前駆体膜として、実施例1と同様にして、ろ過MXene膜とスプレーMXene膜を得た。比較例2では、上記ろ過MXene膜とスプレーMXene膜に対して遷移元素含有溶液への浸漬を行わず、上記ろ過MXene膜とスプレーMXene膜、すなわち前駆体膜を、比較例2のサンプルとした。以下の評価では、比較例2をコントロール(Control)と示している。
〔遷移元素含有MXene膜の評価〕
(加速試験および導電率の測定)
実施例1~3および比較例1と2のサンプルを用い、初期導電率を測定するとともに、導電率の安定性を、以下の通り評価した。
まずサンプルを室温(約25℃)で湿度99%の環境下に暴露した状態で保持し、保持開始から1日後に導電率を測定し、その後、保持開始から1週間の間隔で5週間目まで導電率の測定を行った。導電率の測定は、1サンプルにつき、膜中央付近を含む3か所で行った。また導電率の測定には、低抵抗導電率計(株式会社三菱ケミカルアナリティク製 ロレスタAX MCP-T370)を用いた。サンプル(乾燥膜)の厚さはマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製MDH-25MB)を用いて測定した。実施例1、2および5と、比較例1および2の導電率の経時変化を示した結果を図6に示す。図6の縦軸の「導電率変化率」は、初期導電率を100%とし、その後の導電率を初期導電率に対する割合(%)で示したものである。なお、初期導電率は、実施例1は6044S/cm、実施例2は13514S/cm、実施例3は15707S/cm、比較例1は6305S/cm、比較例2は4454S/cmであった。
図6の結果から、イオン担持なしのMXene膜(前駆体膜)の結果である比較例2(control)は、1日後の導電率が、初期導電率から大幅に低下し、その後も導電率が低下して導電率の安定性に著しく劣る結果となった。これに対して、実施例1では、初期導電率が高く、1日後に導電率は低下するものの、前記比較例2よりも導電率の低下は十分抑えられ、導電率は安定した。また実施例2および実施例3も、実施例1と同様に、初期導電率は高く、一度導電率は落ちるものの、前記比較例2よりも導電率の低下は十分抑えられ、導電率は安定した。実施例2のCrイオン担持MXene膜および実施例3のYイオン担持MXene膜も、実施例1のTiイオン担持MXene膜と同様にMXene膜の層と層をつなぎ留め、水分子が入りにくくなったため、上記の通り導電率が安定したと考えられる。
一方、所定の遷移元素とは異なるAlのイオンを担持した比較例1は、初期導電率から1日後の導電率への低下度合いは、上記実施例1とほぼ同じであったが、その後の導電率低下量が大きく、導電率の安定性に劣った。
なお、実施例2における遷移元素含有溶液への浸漬で、0.1M酢酸クロム水溶液の代わりに、0.01M酢酸クロム水溶液、または0.001M酢酸クロム水溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして形成したスプレーMXene膜(乾燥膜)も別途作成し、上記の導電率の経時変化を測定した。その結果、スプレーMXene膜の製造で使用する遷移元素含有溶液中の遷移元素濃度を変更した場合でも、実施例2と同様の傾向を示すことを確認した。また、実施例3における遷移元素含有溶液への浸漬で、0.1M酢酸イットリウム水溶液の代わりに、0.01M酢酸イットリウム水溶液、または0.001M酢酸イットリウム水溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして形成したスプレーMXene膜(乾燥膜)も別途作成し、上記の導電率の経時変化を測定した。その結果、スプレーMXene膜の製造で使用する遷移元素含有溶液中の遷移元素濃度を変更した場合でも、実施例3と同様の傾向を示すことを確認した。
(強度評価)
実施例1および比較例1と2の、金コートガラス(株式会社和貴研究所製)からなる基材の表面にスプレーMXene膜が形成されたサンプルを用い、サンプルの膜の強度を、次の通りテープ剥離試験を行って評価した。
規格(IPC-TM-650)に基づき、2回のテープ剥離試験を行った。
まず1回目のテープ剥離試験として、3M Brand 600 1/2inch tape(3M社製)を用意し、ロール状テープの一週目は剥ぎ取り、2周目からテストに用いた。テープを5cm以上引き出し、スプレーMXene膜に第1のテープとして張り付け、第1のテープとスプレーMXene膜間の空気をすべて抜くように密着させた。第1のテープを、スプレーMXene膜から約90°の方向に一気に引きはがし、膜状態を観察した。なお、テープを貼っている時間は1分以内とした。その結果を図7に示す。図7の写真は、上記試験後の基材と、引きはがした第1のテープへの付着物を上にして撮影したものである。図7(a)は実施例1、図7(b)は比較例1、図7(c)は比較例2の結果である。
更に2回目のテープ剥離試験として、引きはがしたテープに付着のスプレーMXene膜に対し、上記と同様にして新規のテープを貼り付け、引きはがし、膜状態を観察した。その結果を図8に示す。図8の写真において、上方の基板は図7の下方の基板と同じである。また図8の写真の下方において、左右に分かれたテープのうち、左側が第2のテープの裏側(付着物)、右側が第1のテープの裏側(2回目のテープ剥離試験後の付着物)を示している。図8(a)は実施例1、図8(b)は比較例1、図8(c)は比較例2の結果である。
上記図7(a)の結果から、実施例1では、スプレーMXene膜は金色の基材表面から剥離したが、再度のテープ剥離試験結果である図8(a)から、左側はほぼ張り付けたテープのみであって、右側の最初のテープにスプレーMXene膜は張り付いたままであった。つまり、スプレーMXene膜中での剥離、すなわち凝集剥離は生じなかった。このことから、Tiイオン担持によりスプレーMXene膜は膜が強化されていることが分かる。
それに対して、比較例1では、金のスライドガラス(基材)とスプレーMXene膜の間の密着性が弱く、1回目のテープ剥離試験で金色(図7(b)では灰色)の基板が広く観察された。比較例1では、1回目のテープ剥離試験で、スプレーMXene膜中で剥離する凝集剥離は下記の比較例2ほどは生じなかったが、2回目のテープ剥離試験で、左側の第2のテープにMXene膜が転写されており、凝集剥離が生じた。
また比較例2では、金のスライドガラス(基材)とスプレーMXene膜の間の密着性も、スプレーMXene膜自体の強度も弱いため、1回目のテープ剥離試験で基材からのはく離(金色の基材を確認)も、スプレーMXene膜の一部が残存しており凝集剥離も生じた。このことから、従来のMXene膜は強度が小さいことを示している。
(XRD測定)
実施例1および比較例1と2のスプレーMXene膜(乾燥膜)のXRD測定を行った。より詳細には、下記条件により、スプレーMXene膜のXRD測定を行って、スプレーMXene膜の2次元X線回折像(プロファイル)を得た。その結果として、図9と、図9の2°から9°の範囲を拡大した図10と、図9の35°から55°の範囲を拡大した図11を示す。
2次元X線回折像(プロファイル)において、6~10°範囲にある(002)面のピーク位置はMXene膜のナノシート間の距離(層間距離)を表し、上記ピークが、高角側に位置するほどMXeneの層間距離は小さくなることが知られている。図10において、Tiイオン担持MXene膜は、イオン担持なしの前駆体膜と比較して高角側にピークが出ていた。すなわち、Tiイオンによりナノシート間がつなぎ留められ、MXeneの層間距離が狭くなったと考えられる。また、比較例1のAlイオン担持MXene膜の場合、Tiほどはナノシート間がつなぎ留められず、MXeneの層間距離がTiよりも広がったと考えられる。
(XRD測定条件)
・使用装置:株式会社リガク製 MiniFlex600
・条件
光源:Cu管球
特性X線:CuKα=1.54Å
測定範囲:2度~65度
ステップ:5deg/min
ステップ幅:0.02deg
なお、実施例1における遷移元素含有溶液への浸漬で、0.002M硫酸チタン水溶液の代わりに、0.01M硫酸チタン水溶液、または0.1M硫酸チタン水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして形成したスプレーMXene膜(乾燥膜)も別途作成し、XRD測定を行った。その結果である2次元X線回折像(プロファイル)を図12に示す。図12から、製造時の遷移元素含有溶液の濃度の違いによる構造への影響はほとんどなく、図12に示された、Tiイオン担持MXene膜の2次元X線回折像(プロファイル)は、前記図9のTiイオン担持MXene膜の2次元X線回折像(プロファイル)とほぼ同じであった。
(比較例2の純水への浸漬)
比較例2のサンプルを、純水に浸したところ、サンプルが分散して墨汁状となった。これは、純水中では、MXeneナノシート間を保持するものがないためであると考えられる。
以上の結果から次のことがいえる。すなわち、実施例1の結果の通り、高湿度下において導電率が一定で保たれたのは、TiイオンがMXeneナノシート間に入り込み、2つのナノシートを橋渡しするような役割をしたためと考えられる。MXeneはイオンによって凝集することが以前より知られており、これはTiによるMXeneナノシート間をつなぐ効果によるものと考えらえる。より詳細には、TiイオンによってMXeneナノシート間が静電的につながれているため、前駆体膜と比較するとMXeneナノシート間が広がりにくくなり、水が入りにくくなる。MXeneナノシートの表面は負電荷を帯びているといわれていることからも、カチオン種であるTiイオンが静電的相互作用でMXeneナノシート間を保持していると考えられる。ただし、Tiイオンが入っている分、MXeneナノシート間に一定の隙間は空いてしまうため、その隙間分の吸水し、それが加速試験直後の導電率低下に表れていると考える。一定の吸水はするものの、Tiイオンをドープした実施例1と、Tiイオンをドープしていない比較例1と2とを比較すると、Tiイオンの膜間保持作用によって導電率は一定の値に抑えられると考えられる。同様の作用効果は、Crイオン担持MXene膜とYイオン担持MXene膜についても発揮されていると考えられる。
これに対して、Tiイオンの代わりにAlイオンを担持した比較例1では、図10に示される通り、前駆体膜よりは高角側であるが、Tiイオン担持MXene膜よりも低角側にピークが出た。このことから、Alイオンを用いた場合もナノシート間がつなぎ留められ、狭くはなっているものの、TiほどのMXeneナノシート保持機能の効果はなかった。その結果、比較例1でも吸湿による導電率の低下抑制と、膜強度を有することが確認できたが、Tiイオン担持MXene膜と比較すると性能に劣った。比較例1において、TiほどのMXeneナノシート保持機能の効果を有さなかった理由として、前述のとおり、MXeneが金属のd軌道と特に相互作用することによる傾向があることが考えられる。すなわち、d軌道に電子の多いTiはAlと比較し、MXeneのπ電子とより強い相互作用により、より強いMXene間保持力を持つため、耐吸湿性(導電率の安定性)と膜強度の向上に寄与したと考えられるが、Alはより強いMXene間保持力を確保できなかったため、耐吸湿性(導電率の安定性)と膜強度に劣る結果になったと考えられる。
また、前駆体膜である比較例2では、最も高角側にピークが出た。これは、金属イオンがインターカレートせず、水分子が挿入することで層間が広がってしまったことが示唆される。その結果、比較例2では、遷移金属によるMXeneナノシート保持機能を有さず、導電率が著しく低下し、また膜強度も最も弱かった。
本出願は、日本国特許出願である特願2021-003543号を基礎出願とする優先権主張を伴う。特願2021-003543号は参照することにより本明細書に取り込まれる。
本発明の導電性膜は、任意の適切な用途に利用され得、例えば電気デバイスにおける電極や電磁シールド、電極として、例えば大容量のキャパシタ、バッテリ、低いインピーダンスの生体信号センシング電極、高感度センサ、アンテナ、電磁シールドとして、例えば高遮蔽EMIシールドに特に好ましく使用され得る。
1a、1b 層本体(M層)
3a、5a、3b、5b 修飾または終端T
7a、7b、7c、7d MXene層
10a、10b、10c MXene粒子
10d 遷移元素含有MXene粒子
20 ノズル
20c 外部混合式多流体ノズル
30 前駆体膜(MXene膜)
31 基材
40 水分子
41 Tiイオン
50 チタン原子
51 酸素原子
S スラリー
G 気体
M ミスト
H ノズルのヘッド部

Claims (9)

  1. 1つまたは複数の層を含む層状材料の粒子を含む導電性膜であって、
    前記層が、以下の式:

    (式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
    Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
    nは、1以上4以下であり、
    mは、nより大きく、5以下である)
    で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
    Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を含む導電性膜。
  2. 前記Mが、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、WおよびMnからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の導電性膜。
  3. 前記遷移元素は、前記層と層の間に存在する、請求項1または2に記載の導電性膜。
  4. 前記MがTiで表され、前記遷移元素がTiであって、
    導電性膜をX線回折測定して得られるプロファイルにおいて、52°以上58°以下にピークを有するとともに、45°以上49°以下にピークを有する、請求項1~3のいずれかに記載の導電性膜。
  5. 電極または電磁シールドとして使用される、請求項1~のいずれかに記載の導電性膜。
  6. (a1)1つまたは複数の層を含む層状材料の粒子を含み、
    前記層が、以下の式:

    (式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
    Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
    nは、1以上4以下であり、
    mは、nより大きく、5以下である)
    で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾または終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含む前駆体膜を準備すること、および
    (b1)前記前駆体膜に、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を、イオンとして溶媒中に含む溶液を塗布すること
    を含む、導電性膜の製造方法。
  7. 前記Mが、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、WおよびMnからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の導電性膜の製造方法。
  8. (a2)以下の式:
    AX
    (式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
    Xは、炭素原子、窒素原子またはそれらの組み合わせであり、
    Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
    nは、1以上4以下であり、
    mは、nより大きく、5以下である)
    で表されるMAX相を準備すること、
    (b2)エッチング液を用いて、前記MAX相から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
    (c2)前記エッチング処理により得られたエッチング処理物と、1価の金属イオンを含む金属化合物とを混合する工程を含む、1価の金属イオンのインターカレーション処理を行うこと、
    (d2)前記1価の金属イオンのインターカレーション処理により得られた、1価の金属イオンのインターカレーション処理物と、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WおよびYからなる群より選択される1種以上の遷移元素を、イオンとして溶媒中に含む溶液とを混合する工程を含む、遷移元素インターカレーション処理を行うこと、および
    (e2)前記遷移元素インターカレーション処理により得られた、遷移元素インターカレーション処理物から、溶媒を少なくとも部分的に除去して導電性膜を得ること
    を含む、導電性膜の製造方法。
  9. 前記Mが、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、WおよびMnからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項8に記載の導電性膜の製造方法。
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