JP7632127B2 - 複合体 - Google Patents
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Description
この種の複合体として、例えば、金属部(メタルシート)上に、樹脂部として炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)からなる補強部材(リブ)をプレス形成する自動車部品が検討されている。これらの複合体による部品は、加熱した熱可塑性樹脂とメタルシートとを金型内で一体形成することで製造される。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、樹脂部と金属部とを相互に対向する接合面で接合した複合体において、樹脂部と金属部との相互に対向する接合面の密着性(垂直引張強度)をより向上(密着性の改善)させ得る複合体および複合体の製造方法を提供することを課題とする。
また、以下に示す実施形態ないし実施態様は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態ないし実施態様に特定するものではない。
まず、本発明の第一実施形態に係る複合体とその金属部の第一態様について説明する。
図1に示すように、第一態様の金属部10は、例えば板厚が1mm程度のアルミ合金製(例えばA5052)のメタルシートである。
この金属部10は、同図のX方向に沿って、接合面11に垂直に複数個所に形成された第一の垂直溝40と、同図のY方向に沿って複数個所に形成されて、接合面11にそれぞれ開口する一対の傾斜溝30a、30bと、を有する。
同図の例では、パルスレーザ処理により形成される溝幅Wは、第一の垂直溝40、および、一対の傾斜溝30a、30bともに例えば50μmである。また、第一の垂直溝40の厚さ方向Zでの溝深さd1は、例えば50μmであり、また、一対の傾斜溝30a、30bの厚さ方向Zでの溝深さd2は、例えば50μmである。
特に、第一態様での一対の傾斜溝30a、30bは、第一の垂直溝40との交差部において、金属部10内で相互に連通してトンネル構造Tを構成している。これにより、一対の傾斜溝30a、30bの間の部分に、逆三角形状をなす引掛部(アンカ)60が形成されている。
次に、上記第一実施形態に係る複合体1の製造方法について説明する。
第一実施形態に係る複合体1を製造するには、まず、金属部10の接合面11に対して凹凸形成加工をレーザ処理で行う。第一実施形態に係る複合体1においては、金属部10としてアルミ(A5052)製の薄板材を用いている。
そして、パルスレーザ処理によって、このY方向での斜め照射により、一方の傾斜溝30aを、溝幅Wが50μmであって溝深さd1が50μmをねらい目とするとともに、隣接する他の傾斜溝30aとのX方向での離隔ピッチPを例えば400μmとして複数条形成する。
これにより、第一実施形態に係る複合体1の製造方法では、一対の傾斜溝30a、30bを形成しつつ、引掛部60を形成することによって垂直方向での引張強度を増すことができる金属部10の表面加工を効率良く行うことができる。
これにより、図2に示したように、樹脂部20は、上記金属部10に形成されたトンネル構造Tの内部を充填した状態で一体化される。以下、トンネル構造Tの内部に充填された樹脂を充填樹脂22とも呼称する。
次に、第一実施形態に係る複合体1の作用効果について説明する。
ここで、図15に従来型の一例を示すように、従来、金属部110と樹脂部120との複合体100では、接合面の密着性(垂直引張強度)を向上させるために、金属部110の接合面111に、接合面111に対して面直の縦溝150と面直の横溝140とを交差させて格子状に形成している。
このような従来の構成では、金属部10と樹脂部20相互の密着性を十分に維持できなければ、例えば自動車部品の構造体として必要な強度を発揮できない。そのため、垂直方向での引張強度が低い金属部110と樹脂部120との密着性を向上(密着性の改善)する上で未だ検討の余地がある。
そのため、第一実施形態の複合体1およびその製造方法によれば、パルスレーザ加工による照射軸を斜めに設定するだけで、所望のV字溝およびトンネル構造を容易に形成できる。
したがって、パルスレーザ処理での複数の溝によるトンネル構造Tを形成しつつ、引掛部60を金属部10の接合面11から外さずに残すように加工する上で好適であり、引掛部(アンカ)60により、垂直引張強度を向上させるための複合体およびその製造方法として好適である。
次に、トンネル構造Tによる引掛部のアンカ効果の見積もり(対比検討試験)について図6を参照しつつ説明する。
なお、同図において、[従来例]とは、図15に示した上述の態様に基づく試験結果である。同様に、[本発明 第一実施形態]は図1の第一態様の試験結果であり、[本発明 第二実施形態]は図7の第二態様の試験結果、[比較例]は図8に示す態様での試験結果にそれぞれ対応している。比較する各例の溝幅や溝深さは同じとしている。
対比検討の骨子は、各複合体の金属部での単位面積当たりに形成された複数条の溝の構成の差異と、その差異による垂直引っ張り強度およびせん断強度を比較すること、および、その強度を得るために形成する複数条の溝の形成時間とを対比検討することにある。なお、ここでは定性把握を目的とするので、計算の詳細な式や複合体の構成材料の仔細なせん断強度や破断強度および係数等を含む製品情報に係る説明は省略する。
このような溝の構成において、9条の溝を形成する時間に対する7条の溝の形成時間は約77%となる。また、垂直溝の形成時間に対する傾斜溝の形成時間は約120%を要する。ただし、傾斜溝の形成時間に、レーザヘッドまたは処理対象部品を斜めに設置する作業時間は含まない。
例えば、レーザ処理についてもパルスレーザ処理に限定されない。但し、本発明の作用効果を奏するようなトンネル構造若しくは傾斜溝構造を形成する上では、パルスレーザ処理を用いて金属部10の接合面11に溝加工を施すことが好ましい。但し、例えば化成処理を施す場合、接合面以外には処理痕跡を形成しないで、金属部10の接合面11のどの場所でも所期性能が安定するように溝を加工する上では、本発明の例で示したような直交する格子状の溝や45°のV字溝の加工は不可能であり、意図した形状を処理効率良く加工することは極めて困難である。
例えば金属部10の溝構造の他の態様として、図9に示すように、金属部10の接合面11での一の方向(X)に沿って接合面10に面直に形成された第一の垂直溝40を設け、左右一対の傾斜溝30a、30bによるV字溝31は、一の方向(X)とは交差する他の方向(Y)に沿って第一の垂直溝40の形成位置には形成することなく他の方向に離隔して複数箇所に形成できる[技術5]。
このような構成であれば、一の方向とこれに交差する他の方向の両方ともに垂直溝が形成されるので、垂直引張強度を向上させるとともに、第二の垂直溝50の部分でレーザ処理時間の短縮と、アンカ効果による強度の発現程度とを適宜に調節できる。よって、処理時間の短縮と垂直引張強度の向上とを両立させる上で好適である。
例えば、左右一対の傾斜溝30a、30bによりV字溝31を形成する場合にあっても、上記第一の実施形態に係る複合体1では、一対の傾斜溝30a、30bによるV字溝31のVの内角が、θ=45°(±5%)に形成されている例を示したがこれに限定されない。但し、一対の傾斜溝30a、30bによるV字溝31のVの内角(θ)が、40°~50°の範囲内の角度に形成されていることは好ましい[技術9]。
また、図12(c)に示すように、V字形状のトンネル構造TにおけるVの角度(θ)が50°よりも大きくなると、引掛部(アンカ)60の角度が急になり、レーザ加工の処理時間がより長くかかる。また、金属部10の板厚が1mm程度以下の薄板の場合には、図13(b)に示すように、溝の深さが深く、金属部10の裏面にレーザが貫通するおそれがあり、また、レーザが貫通しない場合であっても金属部10の強度が弱くなるおそれがある。なお、図12(c)の例は、θ=60°の例である。
なお、図13の垂直引張強度の向上代が図6と一致しないのは、V字溝の部分のみをシミュレーションしているためと考えている。いいかえると、他に、溝を斜めにすることで、V字溝を形成しなくても、垂直引張時に溝側面で引っ掛かりが生じて、強度の向上効果を期待できる。図13では、この他の効果を考慮していないためである。
10 金属部
11 (金属部の)接合面
20 樹脂部
21 (樹脂部の)接合面
22 充填樹脂
30a、30b 傾斜溝
31 第一のV字溝
40 第一の垂直溝
41a、41b 傾斜溝
42 第二のV字溝
50 第二の垂直溝
60 引掛部(アンカ)
100 従来の複合体
T トンネル構造
X 一の方向
Y 他の方向
Z 厚さ方向
Claims (10)
- 樹脂部と金属部とが相互に対向する接合面で接合された複合体であって、
前記金属部は、当該金属部の接合面にそれぞれ開口する一対の傾斜溝を有するとともに、該一対の傾斜溝が、当該金属部内で相互に近づく傾斜構造を構成しており、
前記樹脂部の接合面は、前記金属部の接合面に前記一対の傾斜溝の溝内部を充填した状態で接合されており、
前記一対の傾斜溝は、前記金属部内で相互に連通するトンネル構造を構成している複合体。 - 前記トンネル構造は、前記金属部の厚さ方向に沿った断面形状において、前記一対の傾斜溝が前記金属部の接合面の表面側に向かって広がるV字形状に形成されたV字溝をなしている請求項1に記載の複合体。
- 前記トンネル構造は、前記金属部の接合面での一の方向に沿って当該接合面に垂直に形成された第一の垂直溝と、前記一の方向とは交差する他の方向に沿って形成された前記V字溝と、の交差する部分に、前記他の方向に離隔して複数の箇所に形成されている請求項2に記載の複合体。
- 前記金属部の接合面での一の方向に沿って当該接合面に垂直に形成された第一の垂直溝を有し、
前記トンネル構造は、前記一の方向とは交差する他の方向に沿って前記第一の垂直溝の形成位置には形成されることなく前記他の方向に離隔する複数の前記V字溝によって形成されている請求項2に記載の複合体。 - 前記トンネル構造を構成する前記V字溝は、前記金属部の接合面での一の方向に沿って当該一の方向に離隔して複数の箇所に形成された第一のV字溝と、前記一の方向とは交差する他の方向に沿って前記第一のV字溝の形成位置には形成されることなく前記他の方向に離隔して複数の箇所に形成された第二のV字溝と、によって形成されている請求項2に記載の複合体。
- 前記金属部の接合面での前記他の方向に沿って当該接合面に垂直に形成された第二の垂直溝を更に有する請求項3~5のいずれか一項に記載の複合体。
- 前記第一の垂直溝と前記V字溝とは、前記金属部の前記接合面において80°~100°の範囲内の角度で交差している請求項3または4に記載の複合体。
- 前記V字溝のVの内角は、40°~50°の範囲内の角度に形成されている請求項2~7のいずれか一項に記載の複合体。
- 樹脂部と金属部とを相互に対向する接合面で接合して複合体を製造する方法であって、
前記金属部の接合面に、当該接合面にそれぞれ開口するとともに当該金属部内で相互に近づく一対の傾斜溝を形成する溝形成工程と、
前記溝形成工程で前記金属部に形成された前記一対の傾斜溝の内部を充填するように前記樹脂部の接合面を前記金属部の接合面に接合する接合工程と、を含み、
前記溝形成工程は、前記金属部内で前記一対の傾斜溝を相互に連通させてなるトンネル構造を形成する複合体の製造方法。 - 前記溝形成工程は、
前記金属部の接合面での一の方向に沿って当該接合面に垂直な垂直溝を形成する垂直溝形成工程と、
該垂直溝形成工程の後に、前記一の方向とは交差する他の方向に沿って且つ前記他の方向に離隔して複数の箇所に前記一対の傾斜溝を形成する傾斜溝形成工程と、
を含む請求項9に記載の複合体の製造方法。
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