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JP7632666B2 - データセット生成方法、電磁界解析方法及びコンピュータプログラム - Google Patents
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データセット生成方法、電磁界解析方法及びコンピュータプログラム Download PDF

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Description

本開示は、電気機器の鉄心、主に変圧器鉄心等の磁性体の磁気特性を、磁界強度と磁束密度とをベクトル量として捉えることによって解析するために用いるデータセットの生成方法、電磁界の解析方法及びコンピュータプログラムに関する。
鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有する方向性電磁鋼板は、特に電力用変圧器の鉄心材料として用いられている。変圧器鉄心として要求されることは種々あるが、特に重要なのは鉄損が小さいことである。
その観点で、鉄心素材である方向性電磁鋼鈑に要求される特性としても、鉄損値が小さいことは重要である。また、変圧器における励磁電流を減らして銅損を低減するためには、磁束密度が高いことも必要である。この磁束密度は、磁化力800A/mのときの磁束密度B8(T)で評価され、一般に、Goss方位への方位集積度が高いほど、B8は大きくなる。磁束密度の大きい電磁鋼鈑は一般にヒステリシス損が小さく、鉄損特性上でも優れる。変圧器鉄損を小さくする為には、一般には鉄心素材である方向性電磁鋼鈑の鉄損を小さくすれば良いと考えられる。実際に、単相励磁の巻鉄心変圧器においては素材鉄損と変圧器鉄損がほぼ一致することから、素材の鉄損を小さくすることによって変圧器鉄損を小さくすることができる。
しかし、特に3脚又は5脚を有する三相励磁の変圧器では、素材鉄損と比べて変圧器における鉄損が大きくなることが知られている。変圧器の鉄心として電磁鋼鈑が使用された場合の鉄損値(変圧器鉄損)の、エプスタイン試験等で得られる素材の鉄損値に対する比は、一般にビルディングファクタ(BF)又はディストラクションファクタ(DF)と称される。つまり、3脚又は5脚を有する三相励磁の変圧器では、BFが1を超えるのが一般的である。さらに、三相励磁の変圧器では、鉄心素材の鉄損低減が、必ずしも変圧器の鉄損低減に結びつかないことが指摘されている。特に、B8が1.88T以上のGoss方位への集積度が高い素材(高配向性方向性電磁鋼板:HGO)を用いた鉄心では、素材の磁気特性が良好であっても、変圧器自体の磁気特性は逆に劣化する場合もあることが知られている。このことは、磁気特性に優れる方向性電磁鋼板を製造しても、それが変圧器の実機特性に活かしきれていないことを意味している。また、磁束密度B8以外の素材の特性についても、鋼板被膜の張力の大きさ、又は、磁区細分化処理の有無などの種々の特性変化でBFが変化する。また、変圧器鉄心の形状、又は、鋼板の積層ラップ方式の違いによってもBFは変化し、変圧器の鉄損は変化する。
変圧器の鉄心における鉄損を最大限に低減させるよう、鉄心材料の選定又は鉄心形状の設計をするためには、その結果たる変圧器鉄損を予測することが必要である。しかしながら、上述したように変圧器における種々の条件にて変圧器鉄損は変化するため、その予測は容易ではない。
予測する手法としては、過去に製造した変圧器における鉄損の試験結果、又は実変圧器を模擬して縮小サイズにて作製したモデル変圧器などを試験した場合の鉄損結果等をデータベース化し、解析的あるいは経験的に予測する方法がある。
例えば、特許文献1では、変圧器鉄損を従属変数とし、鉄心幅寸法、鉄心窓枠寸法、鉄心窓長さ寸法、鉄心積高さ寸法、鉄心の板厚寸法及び素材鉄損値、素材磁化特性値を独立変数として、重回帰及び重相関分析を行い、この分析で得られた重回帰式を用いて変圧器鉄損を推定する方法が開示されている。
また、電磁界数値シミュレーションにより、変圧器鉄損を推定する手法も一般的である。Maxwell方程式を有限要素法で解析する電磁界数値シミュレーションは、メッシュモデルの作成、有限要素法による時間解析、その結果の分析を含めた一連の数値解析ツールが、ソフトウェアとして市販されている。
但し、方向性電磁鋼板からなる変圧器鉄心を正確に解析する場合には、解析に使用する電磁特性を適切に選ぶ必要がある。一般的には電磁界数値手法には、磁束密度Bと磁界強度Hが平行であることを前提とし、印加磁界方向と同じ方向に磁束密度等を測定する、単板磁気試験法又はエプスタイン試験法で得られた磁気特性が用いられる。こういった手法で得られた結果は、測定方向における写像量(成分)をスカラー値(一次元磁気特性)として扱ったものである。一方、方向性電磁鋼板といった一方向に極めて磁化しやすい材料に、変圧器鉄心内でしばしば起こり得る磁化容易軸方向に対して傾きを有した磁化、あるいは回転磁化を印加した場合、磁束密度と磁界強度ベクトルの間に空間的な方向差が生じる。こういった磁束密度と磁界強度ベクトルの間に空間的な方向差は、電磁界解析における鉄損の予測結果に非常に大きな影響を及ぼす。しかし、単板磁気試験法又はエプスタイン試験法では、前述の通り測定方向における写像量(成分)を測定するため、磁束密度と磁界強度ベクトルの間の空間的な方向差を測定することが出来なかった。
そこで、二次元磁気特性という概念により、磁界強度Hと磁束密度Bとをベクトル量として捉えて測定し、この測定したベクトル量に基づく電磁界解析を行う方法が提案されている。二次元磁気特性のモデリング(ベクトル磁気特性のモデル)としては、例えばE&Sモデリングが提案されている(例えば特許文献2参照)。こういった手法を使うことで、従来の一次元磁気特性を基にした電磁界解析よりも、正確な変圧器鉄損を得られることが出来るようになる。
特開昭62-75351号公報 特開2004-184234号公報
磁界強度Hと磁束密度Bをベクトル量として捉える二次元磁気特性モデルでは、文献1に記載されるように、その計算の基となる、材料磁気特性の測定には、二次元磁気測定装置が用いられる。
文献1:榎園、「二次元ベクトル磁気特性」、日本応用磁気学会誌、vol.27,No.2,2003年
磁界強度Hについては直交二方向のHコイル、磁束密度Bについては、直交二方向の探りコイル又は探針法等によって測定される。また測定の際には、最大磁束密度、楕円率又は傾角を変更させた様々な楕円磁化条件において測定される。電磁界解析の際には、そうやって測定された様々な楕円磁化条件における、磁界強度Hと磁束密度Bのベクトル磁気特性結果を用いてモデリングした二次元磁気特性を使って解析を行うことで、正確な変圧器等の鉄心の磁気測定を解析できる。
磁界強度Hと磁束密度Bをベクトル量として捉えることを特徴とする電磁界解析手法において、結果の正確性を決めるのは、二次元磁気測定装置を使って得られる磁界強度Hと磁束密度Bの測定結果の正確性である。しかし、上記したような楕円磁化条件における測定においては、その楕円磁化をかける際の回転方向が時計回り(CW)であるか反時計回り(CCW)であるかによって、その測定結果が大きく変わるという問題点があった。
例えば、以下の文献2及び3には、測定対象が方向性電磁鋼板である場合、あるいは無方向性電磁鋼板であっても高励磁磁束密度である場合に、楕円磁化で励磁する場合、時計回り(CW)であるか反時計回り(CCW)であるかによって、測定される鉄損値が大きく異なることが報告されている。
文献2:渡邊、柳瀬、岡崎、「方向性電磁鋼板の二次元磁気特性」、電気学会マグネティクス研究会資料、MAG-08-80、P19-24、2008年
文献3:前田、下地、戸高、榎園、「高磁束密度領域におけるCCW/CW条件下の測定法の検討」、電気学会マグネティクス研究会資料、MAG-07-139、P1-4、2007年
本開示は、上記の課題を鑑み、磁界強度Hと磁束密度Bとをベクトル量として捉えることを特徴とする電磁界解析方法において解析結果の精度を向上できるように、電磁界解析方法における二次元磁気モデリングで用いる二次元磁気特性のデータセットを生成する方法を提案する。また、生成した二次元磁気特性のデータセットを用いて電磁界を解析する方法を提案する。
本開示の一実施形態に係るデータセット生成方法は、
磁界強度と磁束密度とをベクトル量として捉えることによって解析対象の電磁界を解析するために用いる二次元磁気特性を取得する方法であって、
所定の軸比の長軸及び短軸を有し、かつ、長軸が前記解析対象の圧延方向に対して第1角度だけ傾斜する楕円に沿って時計回りに印加される第1楕円磁化に応じて前記解析対象に生じる第1磁界強度ベクトルを測定するステップと、
前記所定の軸比の長軸及び短軸を有し、かつ、長軸が前記解析対象の圧延方向に対して前記第1角度と正負が反対の第2角度だけ傾斜する楕円に沿って反時計回りに印加される第2楕円磁化に応じて前記解析対象に生じる第2磁界強度ベクトルを測定するステップと、
前記第1磁界強度ベクトルと前記第2磁界強度ベクトルとを平均して第1平均磁界強度ベクトルを算出するステップと、
前記第1楕円磁化に対応する第1磁束密度ベクトルと前記第2楕円磁化に対応する第2磁束密度ベクトルとを平均して第1平均磁束密度ベクトルを算出するステップと、
前記第1平均磁界強度ベクトル及び前記第1平均磁束密度ベクトルと、前記所定の軸比及び前記第1角度とを対応づけた、前記二次元磁気特性のデータセットを生成するステップと
を含む。
本開示の一実施形態に係る電磁界解析方法は、
上記データセット生成方法を実行することによって生成された、第1平均磁界強度ベクトルと第1平均磁束密度ベクトルとを組み合わせた二次元磁気特性のデータセットを用いて、前記データセットで特定される二次元磁気特性を有する解析対象を用いた鉄心の電磁界を解析するステップを含む。
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、上記データセット生成方法又は上記電磁界解析方法の各ステップをコンピュータに実行させる。
本開示の一実施形態に係るデータセット生成方法、電磁界解析方法及びコンピュータプログラムによれば、電気機器鉄心、主に変圧器鉄心等の磁性体の磁気特性の解析結果の精度が高められ得る。
本開示に係る解析システムの構成例を示すブロック図である。 磁束密度ベクトルと磁界強度ベクトルとの関係の一例を示す図である。 解析対象に印加する時計回りの楕円磁化の一例を示す図である。 図3Aの楕円磁化を解析対象に印加したときに生じる磁界強度ベクトルの測定結果の一例を示すグラフである。 解析対象の圧延方向に対して磁化容易方向と楕円磁化の長軸方向とが互いに反対方向に傾いている関係を示す図である。 解析対象の圧延方向を軸として図4Aに対して線対称の関係になっている図である。 解析対象の圧延方向に対して磁化容易方向と楕円磁化の長軸方向とが同じ方向に傾いている関係を示す図である。 解析対象の圧延方向を軸として図5Aに対して線対称の関係になっている図である。 解析対象の鋼板を適用した変圧器鉄心の一例を示す図である。 本開示に係るデータセット生成方法の手順例を示すフローチャートである。
以下、本開示に係る解析システム1(図1等参照)及び解析方法の実施形態が図面に基づいて説明される。各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置又は方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(解析システム1の構成例)
図1に示されるように、一実施形態に係る解析システム1は、解析装置10と測定装置20とを備える。解析システム1は、方向性電磁鋼板又は無方向性電磁鋼板等を解析対象として、解析対象の二次元磁気特性を解析可能に構成される。
二次元磁気特性は、磁束密度及び磁界強度それぞれを二次元ベクトルとして取り扱うことによって、磁束密度と磁界強度との間の関係を大きさの関係だけでなく方向の関係も含めて表す特性である。図2に例示されるように、磁束密度ベクトルはBと表される。磁界強度ベクトルはHと表される。図2に例示されるように、ある解析対象において、磁束密度ベクトルBと磁界強度ベクトルHとは、異なる方向を向くことがある。磁束密度ベクトルBは、X軸方向に沿っているとする。磁界強度ベクトルHは、磁束密度ベクトルBと異なる方向を向いているとする。言い換えれば、磁界強度ベクトルHと磁束密度ベクトルBとの間に空間的な方向差が生じているとする。
Hxは、磁界強度ベクトルHのX軸方向の成分を表す。一次元磁気特性では、X軸方向を向いている磁束密度ベクトルBの大きさと、磁界強度ベクトルHのX軸方向の成分Hxとの関係を表すものである。つまり、一次元磁気特性は、磁束密度及び磁界強度の測定方向における写像量(成分)をスカラー値として扱ったものである。
磁界強度ベクトルHと磁束密度ベクトルBとの間に空間的な方向差が生じる解析対象の電磁界を解析することによって鉄損を予測する場合、その空間的な方向差は、鉄損の予測結果に大きい影響を及ぼす。本実施形態に係る解析システム1は、二次元磁気特性を用いて電磁界を解析することによって、一次元磁気特性を用いた方法(単板磁気試験法又はエプスタイン試験法等)よりも高精度で電磁界を解析できる。
図3A及び図3Bに例示されるように、二次元磁気特性は、解析対象に印加する磁束密度を変化させたときに磁束密度ベクトルBの先端が描く軌跡BTと、磁束密度の印加に応じて解析対象に生じる磁界強度を表す磁界強度ベクトルHの先端が描く軌跡HTとを関連づけたデータとして表される。図3Aの横軸及び縦軸は、それぞれ磁束密度のX軸方向の成分(Bx)及びY軸方向の成分(By)を表す。図3Bの横軸及び縦軸は、それぞれ磁界強度のX軸方向の成分(Hx)及びY軸方向の成分(Hy)を表す。
解析対象に印加する磁束密度のX軸方向及びY軸方向それぞれの成分が正弦波で表される場合、磁束密度ベクトルBの先端の軌跡BTは、図3Aに例示されるように楕円になり得る。また、磁束密度のX軸方向及びY軸方向それぞれの成分の振幅によって、軌跡BTは、円になり得る。また、磁束密度のX軸方向及びY軸方向それぞれの成分の位相によって、軌跡BTは、直線になり得る。磁束密度ベクトルBの先端の軌跡BTが楕円又は円等の曲線になるときの磁束は、回転磁束又は回転磁化とも称される。磁束密度ベクトルBの先端の軌跡BTが直線になるときの磁束は、交番磁束又は交番磁化とも称される。回転磁化は、軌跡BTを表す楕円の長軸の長さBmと、楕円の長軸の長さに対する短軸の長さの比αと、楕円の長軸がX軸方向に対してなす角度θと、磁束密度ベクトルBの先端が軌跡BTに沿って動く方向(時計回り(CW)又は反時計回り(CCW))とによって特定される。交番磁化は、回転磁化においてαが0になった場合に対応する。
<解析装置10>
解析装置10は、制御部12と、記憶部14と、インタフェース16とを備える。制御部12は、解析装置10の種々の機能を制御及び管理するために、例えばCPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の少なくとも1つのプロセッサを含んで構成されてよい。制御部12は、1つのプロセッサで構成されてよいし、複数のプロセッサで構成されてよい。制御部12を構成するプロセッサは、記憶部14に格納されたプログラムを読み込んで実行することによって、解析装置10の機能を実現してよい。
記憶部14は、各種の情報又はデータ等を格納する。記憶部14は、例えば制御部12において実行されるプログラム、又は、制御部12において実行される処理で用いられるデータ若しくは処理の結果等を格納してよい。また、記憶部14は、制御部12のワークメモリとして機能してよい。記憶部14は、例えば半導体メモリ等を含んで構成されてよいがこれに限定されない。例えば、記憶部14は、制御部12として用いられるプロセッサの内部メモリとして構成されてもよいし、制御部12からアクセス可能なハードディスクドライブ(HDD)として構成されてもよい。記憶部14は、非一時的な読み取り可能媒体として構成されてもよい。記憶部14は、制御部12と一体に構成されてもよいし、制御部12と別体として構成されてもよい。
インタフェース16は、通信インタフェースを含んで構成されてよい。通信インタフェースは、有線又は無線によって測定装置20等の他の装置と通信するように構成されてよい。通信インタフェースは、ネットワークを介して測定装置20等の他の装置と通信可能に構成されてよい。通信インタフェースは、測定装置20等の他の装置との間でデータを入出力する入出力ポートを含んで構成されてよい。通信インタフェースは、有線通信規格に基づいて通信してよいし、無線通信規格に基づいて通信してもよい。例えば無線通信規格は3G、4G又は5G等のセルラーフォンの通信規格を含んでよい。また、例えば無線通信規格は、IEEE802.11又はBluetooth(登録商標)等を含んでよい。通信インタフェースは、これらの通信規格の1つ又は複数をサポートしてよい。通信インタフェースは、これらの例に限られず、種々の規格に基づいて測定装置20等の他の装置と通信したりデータを入出力したりしてよい。
インタフェース16は、表示デバイスを含んで構成されてよい。表示デバイスは、文字、図形、又は画像等の視覚情報を出力することによってユーザに情報を通知してよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。
インタフェース16は、スピーカ等の音声出力デバイスを備えてもよいし、他の種々の出力デバイスを備えてもよい。解析装置10は、ユーザからの入力を受け付ける入力デバイスを更に備えてもよい。入力デバイスは、例えば、キーボード又は物理キーを含んでもよいし、タッチパネル若しくはタッチセンサ又はマウス等のポインティングデバイスを含んでもよい。入力デバイスは、これらの例に限られず、他の種々のデバイスを含んでもよい。
<測定装置20>
測定装置20は、解析対象に対して回転磁化(回転磁束)を印加する磁束印加部と、回転磁化が印加された解析対象において生じる磁界強度を測定する磁界測定部とを備える。磁界測定部は、解析対象に対して直交2方向に位置するHコイルを含んで構成されてよい。測定装置20は、磁束印加部で発生させた磁束密度の値をそのまま用いてもよい。測定装置20は、解析対象に実際に印加された磁束密度を測定する磁束密度測定部を更に備えてよい。磁束密度測定部は、解析対象に対して直交2方向に位置する探りコイルを含んで構成されてよいし、探針法で測定するように構成されてもよい。
測定装置20は、解析装置10によって制御されてよい。解析装置10は、磁束印加部によって解析対象に印加する回転磁化を制御してよい。解析装置10は、磁界測定部又は磁束密度測定部から測定結果を取得してよい。
(解析システム1の動作例)
以下、本実施形態に係る解析システム1の動作例が説明される。解析システム1において、解析装置10の制御部12は、解析対象の二次元磁気特性として、磁束密度ベクトルBと磁界強度ベクトルHとの関係を表すデータを取得する。解析対象の二次元磁気特性は、少なくとも2方向の磁束密度ベクトルBと、各磁束密度ベクトルBに対応する磁界強度ベクトルHとの組み合わせとして表される。本実施形態において、解析対象の二次元磁気特性は、磁束密度ベクトルBが回転磁化となるように表されるとする。磁束密度ベクトルBと磁界強度ベクトルHとの組み合わせを表すデータは、二次元磁気特性のデータセットとも称される。
解析対象の二次元磁気特性のデータセットは、上述したように、解析対象に印加された磁束密度ベクトルBと、磁束密度ベクトルBの印加に応じて生じた磁界強度ベクトルHとを組み合わせたデータである。
ここで、解析対象は、鋼板であるとする。解析対象に印加する回転磁化の方向が時計回り(CW)であるか反時計回り(CCW)であるかによって、解析対象に生じる磁界強度ベクトルHが異なることがある。具体的には、楕円の回転磁化の長軸方向と、鋼板の磁化容易方向とが異なる場合、時計回りの回転磁化を印加したときの磁界強度ベクトルHの測定結果と、反時計回りの回転磁化を印加したときの磁界強度ベクトルHの測定結果とが大きく異なることが分かった。磁界強度ベクトルHの測定結果が異なることによって、その測定結果に基づく二次元磁気特性のデータセットを用いた電磁界解析によって算出される鉄損の値が異なる値になる。
回転磁化の長軸方向が鋼板の磁化容易方向に対して時計回り方向に傾いている場合、反時計回りの回転磁化を印加して得られた二次元磁気特性のデータセットを用いて算出した鉄損の値は、時計回りの回転磁化を印加して得られた二次元磁気特性のデータセットを用いて算出した鉄損の値よりも大きくなる。逆に、回転磁化の長軸方向が鋼板の磁化容易方向に対して反時計回り方向に傾いている場合、時計回りの回転磁化を印加して得られた二次元磁気特性のデータセットを用いて算出した鉄損の値は、反時計回りの回転磁化を印加して得られた二次元磁気特性のデータセットを用いて算出した鉄損の値よりも大きくなる。
回転磁化の方向による鉄損の値の違いは、磁化容易方向に近く磁化しやすい方向(長軸方向)から磁化容易方向から外れ磁化しにくくなる方向(短軸方向)に磁束密度ベクトルBが変化する間に磁束密度ベクトルBの方向が鋼板の磁化容易方向を通過するか、磁化容易方向から外れ磁化しにくくなる方向(短軸方向)から磁化容易方向に近く磁化しやすい方向(長軸方向)に磁束密度ベクトルBが変化する間に磁束密度ベクトルBの方向が鋼板の磁化容易方向を通過するかに起因する。言い換えれば、磁化容易方向に近く磁化しやすい方向(長軸方向)から磁化容易方向から外れ磁化しにくくなる方向(短軸方向)を向こうとする際に始めに磁化容易方向を通過するか、短軸方向を向いてから磁化容易方向を通過するかによって、磁化の印加に応じて生じる磁界強度が異なる。
回転磁化(回転磁束)の回転方向によって生じる磁界強度が異なる理由の1つとして、回転磁化(回転磁束)の磁束密度ベクトルが磁化容易方向に近く磁化しやすい方向(長軸方向)から磁化容易方向から外れ磁化しにくくなる方向(短軸方向)を向こうとする際に必要な磁界強度が異なることが考えられる。鋼板に対して回転磁化(回転磁束)が印加され、長軸方向から短軸方向に鋼板内部の磁化を向けようとする際、その方向に磁化容易方向が存在すると、回転し始めに磁化容易方向を通過するため、その方向での磁界強度は小さくて良く、磁界強度ベクトルHをそれほど短軸方向に磁束密度ベクトルBに対して位相差をつけて回転させる必要がない。その結果、磁束密度ベクトルBと磁界強度ベクトルHとの間の空間的な方向差が小さくなる。磁束密度ベクトルBと磁界強度ベクトルHとの間の空間的な方向差が小さくなることによって、鉄損が小さくなる。なぜならば、鉄損はヒステリシスループの面積として算出されるので、磁束密度ベクトルBと磁界強度ベクトルHとの差が大きいほど鉄損が大きくなるからである。逆に、短軸方向を向いてから磁化容易方向を通過する際には、回転し始めに磁化容易方向を通過しないため、磁束密度ベクトルBと磁界強度ベクトルHとの間の空間的な方向差が小さくなる効果はなく、鉄損は大きくなると考えられる。
鋼板の圧延方向と磁化容易方向との関係をあらかじめ把握することは困難である。なぜならば、方向性電磁鋼板において、それを構成する二次再結晶粒の磁化容易方向に数度程度のズレがあるからである。また、二次再結晶粒が比較的大きいため、局所的には磁化容易方向自体にバラつきがあるからである。
磁化容易方向が圧延方向と異なり得る理由からすると、鋼板の磁化容易方向が圧延方向に対して時計回り又は反時計回りのどちらに傾いているかをあらかじめ把握することは困難である。そこで、本実施形態に係る解析システム1において、解析装置10の制御部12は、解析対象に時計回りの回転磁化を印加したときの磁界強度ベクトルHの測定結果と、解析対象に反時計回りの回転磁化を印加したときの磁界強度ベクトルHの測定結果とを取得する。制御部12は、時計回りの回転磁化に応じた磁界強度ベクトルHの測定結果と反時計回りの回転磁化に応じた磁界強度ベクトルHの測定結果とを平均した結果を、解析対象に印加した磁束密度ベクトルBに対応づけ、解析対象の二次元磁気特性のデータセットとして生成する。時計回りの結果と反時計回りの結果とを平均することによって、回転磁化の回転方向の違いが磁界強度ベクトルの測定結果に及ぼす影響が低減され得る。
具体的に、制御部12は、測定装置20によって、図4A及び図4B並びに図5A及び図5Bに例示されるように、長軸EL及び短軸ESを有する楕円の軌跡BTに沿って時計回り(CW)又は反時計回り(CCW)の回転磁化を解析対象に印加してよい。図4A及び図4B並びに図5A及び図5Bの横軸は解析対象に回転磁化として印加される磁束密度ベクトルBのX軸方向成分(Bx)を表す。縦軸はY軸方向成分(By)を表す。測定装置20において、圧延方向がX軸方向に一致するように鋼板が配置されているとする。図4Aでは、鋼板の磁化容易方向MEは、圧延方向(X軸方向)から時計回りの方向に傾いているとする。長軸の方向ELは、鋼板の圧延方向(X軸方向)に対して角度θで傾斜しているとする。図4Bでは、鋼板の磁化容易方向MEは、圧延方向(X軸方向)から反時計回りの方向に傾いているとする。長軸の方向ELは、鋼板の圧延方向(X軸方向)に対して角度-θで傾斜しているとする。図5Aでは、鋼板の磁化容易方向MEは、圧延方向(X軸方向)から時計回りの方向に傾いているとする。長軸の方向ELは、鋼板の圧延方向(X軸方向)に対して角度-θで傾斜しているとする。図5Bでは、鋼板の磁化容易方向MEは、圧延方向(X軸方向)から反時計回りの方向に傾いているとする。長軸の方向ELは、鋼板の圧延方向(X軸方向)に対して角度θで傾斜しているとする。
図4A及び図4Bに例示される回転磁化の軌跡BTにおいて、長軸ELがX軸方向から傾いている方向と、磁化容易方向がX軸方向から傾いている方向とが互いに逆になっている。図4Aに記載されている構成と図4Bに記載されている構成とは、X軸を対象軸として線対称の関係となっている。したがって、図4Aの構成で時計回り(CW)の回転磁化を印加した場合と、図4Bの構成で反時計回り(CCW)の回転磁化を印加した場合とが等価の関係になっている。
一方で、図5A及び図5Bに例示される回転磁化の軌跡BTにおいて、長軸ELがX軸方向から傾いている方向と、磁化容易方向がX軸方向から傾いている方向とが同じになっている。図5Aに記載されている構成と図5Bに記載されている構成とは、X軸を対象軸として線対称の関係となっている。したがって、図5Aの構成で時計回り(CW)の回転磁化を印加した場合と、図5Bの構成で反時計回り(CCW)の回転磁化を印加した場合とが等価の関係になっている。
上述したように、磁化容易方向が圧延方向に対してどのように傾いているかあらかじめ把握することは困難である。また、仮に磁化容易方向と圧延方向との関係が分かっていたとしても、解析対象を測定装置20にセットする際の角度ズレによって回転磁化の長軸方向と磁化容易方向との関係は不明になり得る。しかし、磁化容易方向が圧延方向に対して時計回りに傾いているか反時計回りに傾いているかにかかわらず、X軸を対象軸として線対称になる2通りの回転磁化を印加して、それぞれで生じた磁界強度ベクトルHの測定結果を平均することによって、回転方向が磁界強度ベクトルHの測定結果に及ぼす影響が低減される。具体的には、制御部12は、図4Aに記載される軌跡BTに沿って時計回り(CW)に回転磁化を印加して得られる磁界強度ベクトルHの測定結果と、図5Aに記載される軌跡BTに沿って反時計回り(CCW)に回転磁化を印加して得られる磁界強度ベクトルHの測定結果とを平均する。平均によって算出された磁界強度ベクトルは、平均磁界強度ベクトルとも称される。
図4A及び図5Aに例示される構成において、磁化容易方向は、X軸方向に対して時計回りに傾いている。そこで、磁化容易方向がX軸方向に対して時計回りに傾いているときの平均磁界強度ベクトルは、HCWと表されるとする。また、図4Aに例示されるように、長軸方向がX軸方向に対して反時計回りに傾くときの角度は、θで表されるとする。図4Aに例示される軌跡BTに沿って時計回り(CW)に回転磁化を印加して得られる磁界強度ベクトルHの測定結果は、H(Bm,α,θ,CW)と表されるとする。ここでBmは最大磁束密度である。また、図5Aに例示されるように、長軸方向がX軸方向に対して時計回りに傾くときの角度は、-θで表されるとする。図5Aに例示される軌跡BTに沿って反時計回り(CCW)に回転磁化を印加して得られる磁界強度ベクトルHの測定結果は、H(Bm,α,-θ,CCW)と表されるとする。HCWは、H(Bm,α,θ,CW)とH(Bm,α,-θ,CCW)との平均として算出される。平均によって時計回り(CW)及び反時計回り(CCW)の影響が低減されるので、HCWは、HCW(Bm,α,θ)と表される。αは所定の軸比とも称される。θは第1角度とも称される。-θは第2角度とも称される。第1角度と第2角度とは、互いに正負が反対の関係になっている。図4Aに例示される軌跡BTに沿って時計回り(CW)に印加する回転磁化は、第1楕円磁化とも称される。図5Aに例示される軌跡BTに沿って反時計回り(CCW)に印加する回転磁化は、第2楕円磁化とも称される。第1楕円磁化を印加したときの磁界強度ベクトルHは、第1磁界強度ベクトルとも称される。第2楕円磁化を印加したときの磁界強度ベクトルHは、第2磁界強度ベクトルとも称される。
CWのX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれHx-CW及びHy-CWと表されるとする。H(Bm,α,θ,CW)のX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれH(Bm,α,θ,CW)及びH(Bm,α,θ,CW)と表されるとする。H(Bm,α,-θ,CCW)のX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれH(Bm,α,-θ,CCW)及びH(Bm,α,-θ,CCW)と表されるとする。Hx-CW及びHy-CWの算出結果は、以下の数式(1)で表される。Hx-CWについては、X軸方向で同符号になっているため、加算して2で割ることによって平均が算出される。Hy-CWについては、線対称であることからY軸方向で逆符号になっているため、減算して2で割ることによって平均が算出される。
Figure 0007632666000001
制御部12は、解析対象に印加した磁束密度ベクトルBを、解析対象に印加した回転磁化(回転磁束)に基づいて算出してもよい。制御部12は、測定装置20から磁束密度ベクトルBの測定結果を取得してもよい。制御部12は、平均磁界強度ベクトルを算出するために用いた第1楕円磁化及び第2楕円磁化それぞれに対応する磁束密度ベクトルBの測定結果を平均し、平均磁束密度ベクトルを算出してよい。制御部12は、平均磁界強度ベクトルと平均磁束密度ベクトルとを対応づけて二次元磁気特性のデータセットを生成してよい。第1楕円磁化に対応する磁束密度ベクトルBは、第1磁束密度ベクトルとも称される。第2楕円磁化に対応する磁束密度ベクトルBは、第2磁束密度ベクトルとも称される。
図4Aに例示される軌跡BTに沿って時計回り(CW)に回転磁化を印加したときの磁束密度ベクトルBの測定結果は、B(Bm,α,θ,CW)と表されるとする。図5Aに例示される軌跡BTに沿って反時計回り(CCW)に回転磁化を印加したときの磁束密度ベクトルBの測定結果は、B(Bm,α,-θ,CCW)と表されるとする。平均磁界強度ベクトルHCWに対応する平均磁界強度ベクトルBCWは、B(Bm,α,θ,CW)とB(Bm,α,-θ,CCW)との平均として算出される。BCWのX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれBx-CW及びBy-CWと表されるとする。B(Bm,α,θ,CW)のX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれB(Bm,α,θ,CW)及びB(Bm,α,θ,CW)と表されるとする。B(Bm,α,-θ,CCW)のX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれB(Bm,α,-θ,CCW)及びB(Bm,α,-θ,CCW)と表されるとする。Bx-CW及びBy-CWの算出結果は、以下の数式(2)で表される。Bx-CWについては、X軸方向で同符号になっているため、加算して2で割ることによって平均が算出される。By-CWについては、線対称であることからY軸方向で逆符号になっているため、減算して2で割ることによって平均が算出される。
Figure 0007632666000002
制御部12は、図4B及び図5Bに例示される回転磁化を印加したときに得られる測定結果に基づいて、平均磁界強度ベクトル及び平均磁束密度ベクトルを算出してもよい。
図4B及び図5Bに例示される構成において、磁化容易方向は、X軸方向に対して反時計回りに傾いている。そこで、磁化容易方向がX軸方向に対して時計回りに傾いているときの平均磁界強度ベクトルは、HCCWと表されるとする。また、図5Bに例示されるように、長軸方向がX軸方向に対して反時計回りに傾くときの角度は、θで表されるとする。図5Bに例示される軌跡BTに沿って反時計回り(CCW)に回転磁化を印加して得られる磁界強度ベクトルHの測定結果は、H(Bm,α,θ,CCW)と表されるとする。また、図4Bに例示されるように、長軸方向がX軸方向に対して時計回りに傾くときの角度は、-θで表されるとする。図4Bに例示される軌跡BTに沿って時計回り(CW)に回転磁化を印加して得られる磁界強度ベクトルHの測定結果は、H(Bm,α,-θ,CW)と表されるとする。HCCWは、H(Bm,α,θ,CCW)とH(Bm,α,-θ,CW)との平均として算出される。平均によって時計回り(CW)及び反時計回り(CCW)の影響が低減されるので、HCCWは、HCCW(Bm,α,θ)と表される。図5Bに例示される軌跡BTに沿って反時計回り(CCW)に印加する回転磁化は、第3楕円磁化とも称される。図4Bに例示される軌跡BTに沿って時計回り(CW)に印加する回転磁化は、第4楕円磁化とも称される。第3楕円磁化を印加したときの磁界強度ベクトルHは、第3磁界強度ベクトルとも称される。第4楕円磁化を印加したときの磁界強度ベクトルHは、第4磁界強度ベクトルとも称される。
CCWのX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれHx-CCW及びHy-CCWと表されるとする。H(Bm,α,θ,CCW)のX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれH(Bm,α,θ,CCW)及びH(Bm,α,θ,CCW)と表されるとする。H(Bm,α,-θ,CW)のX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれH(Bm,α,-θ,CW)及びH(Bm,α,-θ,CW)と表されるとする。Hx-CCW及びHy-CCWの算出結果は、以下の数式(3)で表される。Hx-CCWについては、X軸方向で同符号になっているため、加算して2で割ることによって平均が算出される。Hy-CCWについては、線対称であることからY軸方向で逆符号になっているため、減算して2で割ることによって平均が算出される。
Figure 0007632666000003
制御部12は、平均磁界強度ベクトルを算出するために用いた第3楕円磁化及び第4楕円磁化それぞれに対応する磁束密度ベクトルBの測定結果を平均し、平均磁束密度ベクトルを算出してよい。制御部12は、平均磁界強度ベクトルと平均磁束密度ベクトルとを対応づけて二次元磁気特性のデータセットを生成してよい。第3楕円磁化に対応する磁束密度ベクトルBは、第3磁束密度ベクトルとも称される。第4楕円磁化に対応する磁束密度ベクトルBは、第4磁束密度ベクトルとも称される。
図5Bに例示される軌跡BTに沿って反時計回り(CCW)に回転磁化を印加したときの磁束密度ベクトルBの測定結果は、B(Bm,α,θ,CCW)と表されるとする。図4Bに例示される軌跡BTに沿って時計回り(CW)に回転磁化を印加したときの磁束密度ベクトルBの測定結果は、B(Bm,α,-θ,CW)と表されるとする。平均磁界強度ベクトルHCCWに対応する平均磁束密度ベクトルBCCWは、B(Bm,α,θ,CCW)とB(Bm,α,-θ,CW)との平均として算出される。BCCWのX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれBx-CCW及びBy-CCWと表されるとする。B(Bm,α,θ,CCW)のX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれB(Bm,α,θ,CCW)及びB(Bm,α,θ,CCW)と表されるとする。B(Bm,α,-θ,CW)のX軸方向成分及びY軸方向成分は、それぞれB(Bm,α,-θ,CW)及びB(Bm,α,-θ,CW)と表されるとする。Bx-CCW及びBy-CCWの算出結果は、以下の数式(4)で表される。Bx-CCWについては、X軸方向で同符号になっているため、加算して2で割ることによって平均が算出される。By-CCWについては、線対称であることからY軸方向で逆符号になっているため、減算して2で割ることによって平均が算出される。
Figure 0007632666000004
第1楕円磁化及び第2楕円磁化の組み合わせは、第3楕円磁化及び第4楕円磁化の組み合わせによって置き換えられてもよい。制御部12は、第1楕円磁化、第2楕円磁化、第3楕円磁化及び第4楕円磁化それぞれを印加したときの測定結果を取得してもよい。制御部12は、第1磁界強度ベクトル、第2磁界強度ベクトル、第3磁界強度ベクトル及び第4磁界強度ベクトルそれぞれの測定結果を平均して平均磁界強度ベクトルを算出してもよい。このようにすることで、回転磁化の回転方向の影響がさらに低減され得る。
制御部12は、Bm、α及びθそれぞれの値を変更した種々の組み合わせにおいて、平均磁界強度ベクトルと平均磁束密度ベクトルとを算出し、平均磁界強度ベクトルと平均磁束密度ベクトルとを対応づけた二次元磁気特性のデータセットを生成してよい。制御部12は、αの値を0に設定することによって、交番磁化(交番磁束)のデータを取得できる。
制御部12は、θの値を0にした場合も含めて二次元磁気特性のデータセットを生成してよい。θの値が0である場合、第1楕円磁化と第4楕円磁化とが等価の関係になる。また、第2楕円磁化と第3楕円磁化とが等価の関係になる。
制御部12は、θで表される第1角度を少なくとも2つの異なる値に設定し、第1角度の各設定値について平均磁界強度ベクトルと平均磁束密度ベクトルとを算出し、それらの組み合わせを二次元磁気特性のデータセットに追加してよい。
制御部12は、上述してきたように生成した、解析対象の二次元磁気特性のデータセットに基づいて電磁界解析を実行することによって、解析対象を鉄心の材料として用いたときの鉄心の励磁特性を予測できる。
制御部12は、第1楕円磁化と第2楕円磁化とに基づいて算出した平均磁界強度ベクトルと平均磁束密度ベクトルとを組み合わせたデータセットに基づく解析と、第3楕円磁化と第4楕円磁化とに基づいて算出した平均磁界強度ベクトルと平均磁束密度ベクトルとを組み合わせたデータセットに基づく解析とをそれぞれ実行してよい。第1楕円磁化と第2楕円磁化とに基づいて算出した平均磁界強度ベクトル及び平均磁束密度ベクトルは、それぞれ第1平均磁界強度ベクトル及び第1平均磁束密度ベクトルとも称される。第3楕円磁化と第4楕円磁化とに基づいて算出した平均磁界強度ベクトル及び平均磁束密度ベクトルは、それぞれ第2平均磁界強度ベクトル及び第2平均磁束密度ベクトルとも称される。制御部12は、第1平均磁界強度ベクトルと第1平均磁束密度ベクトルとを組み合わせたデータセットに基づいて解析した結果を第1の解析結果として取得してよい。制御部12は、第2平均磁界強度ベクトルと第2平均磁束密度ベクトルとを組み合わせたデータセットに基づいて解析した結果を第2の解析結果として取得してよい。制御部12は、第1の解析結果と第2の解析結果とを平均することによって平均解析結果を取得してよい。このようにすることで、電磁界解析の精度が高められ得る。
(実施例)
電磁界解析手法として、例えばE&Sモデル又はE&SSモデルが用いられ得る。本実施例において、E&Sモデルを用いた電磁界解析が説明される。E&Sモデルにおいて、ヒステリシスを考慮した一次元(交番条件)及び二次元(回転磁束条件)における磁気特性を表現するために、磁束密度Bだけでなく、磁束密度Bの増加又は減少を表す磁束密度Bの微分との関係で、磁界強度Hが以下の式(5)及び(6)にてモデリングされる。
Figure 0007632666000005
Figure 0007632666000006
上記式中における磁気抵抗係数vxr,vxi,vyr及びvyiは、測定装置20によって得られるBHループ(二次元磁気特性データセット)の測定結果に基づいて決定される。具体的には、最大磁束密度Bm、楕円率α(軸比)及び傾角θを種々の値に変更して組み合わせた条件において、磁気抵抗係数が決定される。最大磁束密度Bm、楕円率α及び傾角θをどういった範囲で、どの程度の測定刻みで変更するかは、対象となる電気機器(変圧器又はモータなど)の設計により異なるので特に指定しない。一般的には、最大磁束密度は0.5~2.0T(テスラ)の間で0.1T刻みで、楕円率については0~1の間で0.05刻みで、傾角については-180度~+180度(対称性を考慮した場合-90度~+90度)の間で5度刻みで測定することが好適である。
上記の測定で得られた結果について、上述してきたように平均磁界強度ベクトル及び平均磁束密度ベクトルを算出し、その算出結果に基づいて磁気抵抗係数vxr,vxi,vyr及びvyiが決定される。
得られた磁気抵抗係数vxr,vxi,vyr及びvyiのデータセットは、平均磁界強度ベクトルHCWと平均磁束密度ベクトルBCWとの組み合わせから決定されるデータセットと、平均磁界強度ベクトルHCCWと平均磁束密度ベクトルBCCWとの組み合わせから決定されるデータセットとを含む。制御部12は、それぞれの磁気抵抗係数のデータセットによってモデリングされた磁界強度H及び磁束密度Bのベクトル量の関係に基づいて電磁界解析を実行する。その際に、磁気測定を行ってデータが存在する条件以外では、磁気抵抗係数の係数補間にて磁界強度Hと磁束密度Bのベクトル量の関係を求めることとする。本実施例において、電磁界解析の方法として、Maxwell方程式を有限要素法で解析する手法を用いられてよいがそれに限定されない。有限要素法の他にも、境界要素法などの他の離散化解析手法が用いられてよい。詳細な形状情報を参照し、解析できる手法が適する。
CW及びCCWの2種類のデータセットそれぞれにおいて得られた磁気特性結果(例えば鉄損など)については、さらにその結果を平均化することで正確な結果を得ることができる。
三相三脚変圧器鉄心にて、電磁界解析の精度が検証された。まず、図6及び表1に示されるように、鉄心形状P1~P5の5形状の三相三脚モデル変圧器鉄心が、表2に示す4種類の方向性電磁鋼板Q1~Q4を用いて製作された。
Figure 0007632666000007
Figure 0007632666000008
鉄心の脚部に60ターンの巻き線を施し、最大磁束密度1.7T(テスラ)かつ周波数50Hz(ヘルツ)で三相励磁を行い、電力計法にて変圧器鉄損が実測された。結果が表3に示される。
変圧器鉄心を作製した方向性電磁鋼板より、解析対象の鋼板として、80mm角の二次元磁気測定用の試料が作製された。その試料について、最大磁束密度については0.5~1.95T(テスラ)の間で0.05T刻みで、楕円率については0~0.8の間で0.05刻みで、傾角については-180度~+180度の範囲で5度刻みで測定し、その結果よりE&Sモデルにおける磁気抵抗係数vxr,vxi,vyr及びvyiを求めた。その際、時計回りの回転磁化を印加した結果と反時計回りの回転磁化を印加した結果とを平均化する場合と、平均化処理を実施しない場合とそれぞれの場合において、磁気抵抗係数vxr,vxi,vyr及びvyiが求められた。各々の磁気抵抗係数vxr,vxi,vyr及びvyiを使いモデリングされた磁界強度H及び磁束密度Bのベクトル量の関係を基に電磁界解析を行い、上記変圧器鉄損を実測した、三相三脚モデル変圧器鉄心の変圧器鉄損が計算された。計算結果が表3に示される。
Figure 0007632666000009
本実施形態に係る手法(時計回りの回転磁化を印加した結果と反時計回りの回転磁化を印加した結果とを平均化する手法)を使って計算した変圧器鉄損は、実測の変圧器鉄損に対して、いずれも2%以内の精度で計算することが出来た。その実測差の平均は0.7%であった。それに対し、平均化処理を実施しない場合は、いずれの条件においても、本実施形態に係る手法を適用した場合に対して、大幅に計算精度が悪かった。その実測差の平均は13.6%であった。
(解析方法の手順例)
本実施形態に係る解析システム1において、解析装置10の制御部12が実行する解析方法としてデータセットを生成するためのデータセット生成方法の手順例が図7に例示されるフローチャートの手順に基づいて説明される。データセット生成方法は、制御部12を構成するプロセッサ又は解析装置10を構成するコンピュータに実行させるデータセット生成プログラム又はコンピュータプログラムとして実現されてもよい。データセット生成プログラム又はコンピュータプログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
制御部12は、測定装置20によって、解析対象に第1楕円磁化を印加する(ステップS1)。制御部12は、測定装置20によって、第1磁界強度ベクトル及び第1磁束密度ベクトルを測定する(ステップS2)。
制御部12は、測定装置20によって、解析対象に第2楕円磁化を印加する(ステップS3)。制御部12は、測定装置20によって、第2磁界強度ベクトル及び第2磁束密度ベクトルを測定する(ステップS4)。
制御部12は、平均磁界強度ベクトル及び平均磁束密度ベクトルを算出する(ステップS5)。制御部12は、平均磁界強度ベクトル及び平均磁束密度ベクトルの算出結果を組み合わせたデータを追加して二次元磁気特性のデータセットを更新する(ステップS6)。制御部12は、ステップS6の手順の実行後、図7のフローチャートの手順の実行を終了する。
制御部12は、解析方法として、データセット生成方法で生成したデータセットを用いて電磁界を解析する電磁界解析方法を実行してもよい。電磁界解析方法は、制御部12を構成するプロセッサ又は解析装置10を構成するコンピュータに実行させる電磁界解析プログラム又はコンピュータプログラムとして実現されてもよい。電磁界解析プログラム又はコンピュータプログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
以上述べてきたように、本実施形態に係る解析システム1、解析装置10及び解析方法によれば、二次元磁気特性を用いた電磁界解析において回転磁化の回転方向の影響が低減され得る。その結果、電磁界解析の精度が高められ得る。
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
1 解析システム
10 解析装置(12:制御部、14:記憶部、16:インタフェース)
20 測定装置

Claims (15)

  1. 磁界強度と磁束密度とをベクトル量として捉えることによって解析対象の電磁界を解析するために用いる二次元磁気特性を取得する方法であって、
    所定の軸比の長軸及び短軸を有し、かつ、長軸が前記解析対象の圧延方向に対して第1角度だけ傾斜する楕円に沿って時計回りに印加される第1楕円磁化に応じて前記解析対象に生じる第1磁界強度ベクトルを測定するステップと、
    前記所定の軸比の長軸及び短軸を有し、かつ、長軸が前記解析対象の圧延方向に対して前記第1角度と正負が反対の第2角度だけ傾斜する楕円に沿って反時計回りに印加される第2楕円磁化に応じて前記解析対象に生じる第2磁界強度ベクトルを測定するステップと、
    前記第1磁界強度ベクトルと前記第2磁界強度ベクトルとを平均して第1平均磁界強度ベクトルを算出するステップと、
    前記第1楕円磁化に対応する第1磁束密度ベクトルと前記第2楕円磁化に対応する第2磁束密度ベクトルとを平均して第1平均磁束密度ベクトルを算出するステップと、
    前記第1平均磁界強度ベクトル及び前記第1平均磁束密度ベクトルと、前記所定の軸比及び前記第1角度とを対応づけた、前記二次元磁気特性のデータセットを生成するステップと
    を含むデータセット生成方法。
  2. 前記第1平均磁束密度ベクトルを算出するステップは、前記第1磁束密度ベクトル及び前記第2磁束密度ベクトルを測定するステップを含む、請求項1に記載のデータセット生成方法。
  3. 前記所定の軸比の長軸及び短軸を有し、かつ、長軸が前記解析対象の圧延方向に対して前記第1角度だけ傾斜する楕円に沿って反時計回りに印加される第3楕円磁化に応じて前記解析対象に生じる第3磁界強度ベクトルを測定するステップと、
    前記所定の軸比の長軸及び短軸を有し、かつ、長軸が前記解析対象の圧延方向に対して前記第2角度だけ傾斜する楕円に沿って時計回りに印加される第4楕円磁化に応じて前記解析対象に生じる第4磁界強度ベクトルを測定するステップと、
    前記第3磁界強度ベクトルと前記第4磁界強度ベクトルとを平均して第2平均磁界強度ベクトルを算出するステップと、
    前記第3楕円磁化に対応する第3磁束密度ベクトルと前記第4楕円磁化に対応する第4磁束密度ベクトルとを平均して第2平均磁束密度ベクトルを算出するステップと、
    前記第2平均磁界強度ベクトル及び前記第2平均磁束密度ベクトルと、前記所定の軸比及び前記第1角度とを対応づけた、前記二次元磁気特性のデータセットを生成するステップと
    を更に含む、請求項1に記載のデータセット生成方法。
  4. 前記第2平均磁束密度ベクトルを算出するステップは、前記第3磁束密度ベクトル及び前記第4磁束密度ベクトルを測定するステップを含む、請求項3に記載のデータセット生成方法。
  5. 前記第1角度を少なくとも2つの異なる値に設定するステップを更に含み、
    前記二次元磁気特性のデータセットを生成するステップは、前記第1角度の各設定値について算出した前記第1平均磁界強度ベクトル及び前記第1平均磁束密度ベクトルと、前記各設定値とを対応づけて前記二次元磁気特性のデータセットに追加するステップを含む、
    請求項1又は2に記載のデータセット生成方法。
  6. 前記第1角度を少なくとも2つの異なる値に設定するステップを更に含み、
    前記二次元磁気特性のデータセットを生成するステップは、前記第1角度の各設定値について算出した前記第1平均磁界強度ベクトル及び前記第1平均磁束密度ベクトル並びに前記第2平均磁界強度ベクトル及び前記第2平均磁束密度ベクトルと、前記各設定値とを対応づけて前記二次元磁気特性のデータセットに追加するステップを含む、
    請求項3又は4に記載のデータセット生成方法。
  7. 請求項1又は2に記載のデータセット生成方法を実行することによって生成された、第1平均磁界強度ベクトルと第1平均磁束密度ベクトルとを組み合わせた二次元磁気特性のデータセットを用いて、前記データセットで特定される二次元磁気特性を有する解析対象を用いた鉄心の電磁界を解析するステップを含む、電磁界解析方法。
  8. 請求項3又は4に記載のデータセット生成方法を実行することによって生成された、第2平均磁界強度ベクトルと第2平均磁束密度ベクトルとを組み合わせた二次元磁気特性のデータセットを用いて、前記データセットで特定される二次元磁気特性を有する解析対象を用いた鉄心の電磁界を解析するステップを含む、電磁界解析方法。
  9. 請求項1又は2に記載のデータセット生成方法を実行することによって生成された第1平均磁界強度ベクトルと第1平均磁束密度ベクトルとを組み合わせた二次元磁気特性のデータセットを用いて、前記データセットで特定される二次元磁気特性を有する解析対象を用いた鉄心の電磁界を解析して第1の解析結果を取得するステップと、
    請求項3又は4に記載のデータセット生成方法を実行することによって生成された第2平均磁界強度ベクトルと第2平均磁束密度ベクトルとを組み合わせた二次元磁気特性のデータセットを用いて、前記データセットで特定される二次元磁気特性を有する解析対象を用いた鉄心の電磁界を解析して第2の解析結果を取得するステップと、
    前記第1の解析結果と前記第2の解析結果とを平均して平均解析結果を取得するステップと
    を含む、電磁界解析方法。
  10. 請求項1から4までのいずれか一項に記載のデータセット生成方法における各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
  11. 請求項5に記載のデータセット生成方法における各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
  12. 請求項6に記載の電磁界解析方法における各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
  13. 請求項7に記載の電磁界解析方法における各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
  14. 請求項8に記載の電磁界解析方法における各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
  15. 請求項9に記載の電磁界解析方法における各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
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