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JP7633066B2 - 材料の評価方法 - Google Patents
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Description

本発明は、材料の評価方法に関する。
特許文献1には、希土類含有合金の金属組織の評価方法に関する発明が記載されている。具体的には、希土類含有合金の断面の顕微鏡画像において特定の向きの直線を引き、当該直線と交わる主相の輝度およびRリッチ相の輝度から主相とRリッチ相とを判別することが記載されている。特許文献1の評価方法では、主相の輝度からRリッチ相の輝度へ変化する回数を直線の長さで除した値がRリッチ相間隔である。
特開2008-058323号公報
本発明は、客観的に材料の微細構造を特定できる評価方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る材料の評価方法は、
材料の断面の画像を得る工程と、
得られた画像を複数の区画に分割する工程と、
各区画に含まれる複数の画素の輝度を測定する工程と、
各画素の輝度から各区画の輝度ヒストグラムを得る工程と、
前記各区画の輝度ヒストグラムから各区画の微細構造を特定する工程と、を有する。
前記材料が合金であってもよい。
前記合金がR-T-B系永久磁石用合金であってもよく、Rが希土類元素、Tが遷移金属元素、Bがホウ素であってもよい。
前記各区画の輝度ヒストグラムにおけるピーク位置およびピーク標準偏差から各区画の微細構造の種類を特定してもよい。
特定の前記微細構造を有する区画の合計面積割合を算出する工程をさらに有してもよい。
最小輝度を0、最大輝度を255とする256階調で前記輝度ヒストグラムを作製する場合において、前記ピーク位置が130~200であり前記ピーク標準偏差が20~40である区画の合計面積割合を算出してもよい。
2種類以上の画像調製用の薄板を基材に埋め込んで電子顕微鏡の同一視野内に含める工程と、
前記視野について調整前輝度ヒストグラムを作成する工程と、
前記調整前輝度ヒストグラムにおける各薄板由来の輝度ピークの位置を所定の位置に調整し、かつ、各薄板由来の輝度ピーク位置の差を所定の大きさに調整する工程と、
を有する電子顕微鏡の調整方法を用いて調整された電子顕微鏡を用いて前記材料の断面の画像を得てもよい。
通常組織の反射電子像である。 チル晶組織の反射電子像である。 微細点状Rリッチ相含有組織の反射電子像である。 微細点状Rリッチ相含有組織の反射電子像である。 点状Rリッチ相含有組織の反射電子像である。 微細線状Rリッチ相含有組織の反射電子像である。 微細線状Rリッチ相含有組織の反射電子像である。 大型点状Rリッチ相含有組織の反射電子像である。 評価用サンプルを区画で区切った反射電子像である。 図9の1区画における輝度ヒストグラムである。 組織による輝度ヒストグラムのピーク位置およびσの違いを表すグラフである。 鋳造装置の模式図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
本実施形態に係る材料の評価方法は、
材料の断面の画像を得る工程と、
得られた画像を複数の領域に分割する工程と、
各領域に含まれる複数の画素の輝度を測定する工程と、
各画素の輝度から各領域の輝度ヒストグラムを得る工程と、
前記各領域の輝度ヒストグラムの形状から各領域の微細構造を特定する工程を有する。
本実施形態に係る材料の評価方法によれば、複数の種類の組織を有する材料について、各人の経験などによらない客観的な方法で材料のどの区画がどの種類の組織であるかを特定することができる。この方法は、組織の特定に必要な時間が短く自動化が容易である点で簡便である。さらに、この方法は、客観的な方法で特定するために測定者の違いによる誤差が生じない点で正確である。
以下、材料の一種である合金の中でも特に本実施形態に係る評価方法を好適に適用できるR-T-B系永久磁石用合金の場合について説明する。
<R-T-B系永久磁石用合金の組織>
本実施形態に係る評価方法を適用するR-T-B系永久磁石用合金は、R,TおよびBを有し、Rが希土類元素、Tが遷移金属元素、Bがホウ素であるR-T-B系永久磁石用合金である。
一般的に、R-T-B系永久磁石用合金は、R14B型結晶構造を有する柱状晶である主相と、主相よりもRの含有量が多いRリッチ相と、を含む。
R-T-B系永久磁石用合金の断面においては、図1の反射電子像に示すように、主相11とRリッチ相13との間に明確な差異が確認でき、かつ、大部分のRリッチ相13の形状が線状である組織7(以下、通常組織7と呼ぶ)が大半を占める。通常組織7に含まれる主相11の大部分が柱状晶である。通常組織7において、形状が線状であるRリッチ相(以下、線状Rリッチ相と呼ぶ)の間隔は平均で2μm以上ある。また、通常組織7は合金の凝固の方向、言いかえれば合金の厚み方向に1次デンドライトが伸びた組織である。
また、R-T-B系永久磁石用合金は、通常組織7に加えて、柱状晶ではない主相を含む組織を含む。柱状晶ではない主相を非柱状晶と呼び、非柱状晶を含む組織を非柱状晶組織と呼ぶ。また、非柱状晶組織は必ずしも合金の凝固の方向に1次デンドライトが伸びていない組織である。
R-T-B系永久磁石用合金に含まれる非柱状晶組織は、後述する組織1aと組織1bとを区別する場合には6種類に分類される。以下、6種類の非柱状晶組織について図面(反射電子像)を用いて説明する。
図2にはチル晶組織1が含まれ、チル晶組織1には組織1a、1bが含まれる。組織1aは組織1bと比較して通常組織7からの差異が大きい。組織1aは主相およびRリッチ相に明確な差異が見られない。組織1aは反射電子像における輝度が主相とRリッチ相との中間程度である。さらに、組織1aは反射電子像における濃淡の変動が滑らかである。
組織1bは、組織1aよりは通常組織7に近い組織である。しかし、組織1bは主相およびRリッチ相に明確な差異が見られない。組織1bは反射電子像における輝度が主相とRリッチ相との中間程度である。さらに、組織1bは反射電子像における濃淡の変動が滑らかである。また、組織1aとは異なり、組織1bには、一部、線状Rリッチ相が含まれる。
以下の記載では、単にチル晶組織と記載する場合には組織1aと組織1bとを区別しない。
図3、図4には微細点状Rリッチ相含有組織3(以下、組織3と記載することがある)が含まれる。なお、図3と図4とでは異なる合金片を観察している。組織3は、主相およびRリッチ相に明確な差異が見られる。しかし、組織3は図1に示す通常組織7と比較して、Rリッチ相が点状に凝集し、かつ、過度に密集している。さらに、後述する点状Rリッチ相含有組織4と比較して、点状Rリッチ相が微細である。
例えば、組織3に含まれる点状Rリッチ相の寸法が円相当径で0.3~1.5μmであってもよく、点状Rリッチ相の単位面積中の個数が0.25個/μm以上であってもよい。
さらに、組織3は、局所的に点状Rリッチ相の円相当径および密集状態が微妙に異なる箇所ごとに切り分けることができる。図4には実際に切り分けた状態が点線で示されている。切り分けられた多角形の領域は長径が10μm以上120μm以下、短径が5μm以上80μm以下であってもよい。なお、長径は多角形の両側から接する2本の平行線間の距離の中での最長距離を指し、短径は多角形の両側から接する2本の平行線間の距離の中での最短距離を指す。
図5には、点状Rリッチ相含有組織4(以下、組織4と記載することがある)が含まれる。組織4は、組織3と比較して、点状Rリッチ相自体が大きい。さらに、点状Rリッチ相が凝集した部分において、主相よりも暗い相が存在している。
図6、図7には微細線状Rリッチ相含有組織5(以下、組織5と記載することがある)が含まれる。なお、図6と図7とでは異なる合金片を観察している。組織5は、主相およびRリッチ相に明確な差異が見られる。しかし、組織5は図1に示す通常組織7と比較して、線状Rリッチ相が細く、かつ、過度に密集している。
例えば、組織5に含まれる線状Rリッチ相の長さが4~125μm、幅が0.3~10μm、線状Rリッチ相の間隔が1.0~1.8μmであってもよい。
さらに、組織5は、局所的に線状Rリッチ相の長さ、幅および密集状態が微妙に異なる箇所ごとに切り分けることができる。図7には実際に切り分けた状態が点線で示されている。切り分けられた多角形の領域は長径が30μm以上200μm以下、短径が5μm以上150μm以下であってもよい。
図8には大型点状Rリッチ相含有組織6(以下、組織6と記載することがある)が含まれる。組織6では、Rリッチ相が大きめに凝集している。そして、凝集したRリッチ相の周囲にある主相の輝度が若干、高くなる。また、大きめに凝集したRリッチ相同士の間に線状Rリッチ相が挟まることがある。
本実施形態に係る評価方法では、R-T-B系永久磁石用合金の断面における非柱状晶組織の面積比率を目視以外の方法、すなわち、人手によらない方法で評価することができる。
<非柱状晶組織の面積比率の評価方法>
本実施形態に係る評価方法では、材料の微細構造を評価するにあたって、反射電子像の輝度解析を用いる。以下、特にR-T-B系永久磁石用合金の断面における非柱状晶組織の面積比率を評価する場合における輝度解析の方法について説明するが、材料の種類により各種条件を適宜変更させてもよい。
まず、輝度解析の準備として、電子顕微鏡の明るさおよびコントラストを調整する。
最初に、標準サンプルに用いる材料としてR-T-B系永久磁石用合金板を準備する。R-T-B系永久磁石用合金板をそのまま用いてもよく、R-T-B系永久磁石用合金板に対して熱処理を行った熱処理板を用いてもよい。熱処理を行うことで、主相11のみを電子顕微鏡の視野に入るようにする工程が容易になる。その結果、電子顕微鏡の明るさおよびコントラストの調整も容易になる。熱処理を行う場合に熱処理時間および温度には特に制限はない。例えば800~1000℃で30~120分、熱処理を行う。
次に、画像調整用の金属薄板、すなわち、明るさおよびコントラストを調整するための金属薄板を複数枚、準備する。例えば、Ni薄板、Cu薄板およびZn薄板を準備する。そして、R-T-B系永久磁石用合金板、Ni薄板、Cu薄板およびZn薄板を基材に埋め込む。基材としては、例えば電子顕微鏡観察用の埋込樹脂が挙げられる。この際に、各板の厚さ方向に平行な断面が並ぶように配置し、標準サンプルを作製する。この際のR-T-B系永久磁石用合金板以外の薄板の種類には特に制限はなく、薄板が少なくとも2種類あればよい。後述する各金属の輝度ピーク位置および各金属の輝度ピーク位置の差を薄板の種類により適宜設定すればよい。以下の記載では、Ni薄板、Cu薄板およびZn薄板を用いる場合について説明する。
次に、標準サンプルの断面を鏡面研磨し、金蒸着を行う。断面を鏡面研磨し、金蒸着を行うことで明るさおよびコントラストを好適に調整することができる。
次に、標準サンプルを電子顕微鏡にセットする。撮像モードは反射電子像とする。画素数には特に制限はなく観察する材料により異なる。例えば1280×960pixelとする。倍率には特に制限はないが、Ni薄板、Cu薄板およびZn薄板が同一視野に入る倍率とする。
次に、Ni薄板、Cu薄板およびZn薄板がこの順番で同一視野に含まれるように視野を移動させる。
次に、前記視野について最小輝度を0、最大輝度を255とする256階調で調整前輝度ヒストグラムを作成する。その後、材料の種類および金属薄板の種類により、各金属薄板由来の輝度ピークの位置を所定の位置に調整する。そして、各金属薄板由来の輝度ピークの位置の差を所定の大きさに制御する。本実施形態では、Cu薄板由来の輝度ピークの位置が150程度(145~155)となるように明るさを調整する。さらに、Ni薄板由来の輝度ピークの位置とCu薄板由来の輝度ピークの位置との差が55程度(45~65)、Cu薄板由来の輝度ピークの位置とZn薄板由来の輝度ピークの位置との差が45程度(35~55)となるようにコントラストを調整する。コントラストを調整する際に、Cu薄板由来の輝度ピークの位置が150程度である状態を維持するため、必要に応じて補助的に明るさを調整する。
次に、コントラストを維持したまま電子顕微鏡の視野をR-T-B系永久磁石用合金板が入る位置に移動させる。材料の種類および金属薄板の種類により、明るさを適切に制御する。本実施形態では、倍率を上げて白い相(Rリッチ相13)が視野に入らず主相11のみが視野に入るようにする。倍率は最大で10000倍程度としてもよい。さらに、輝度ヒストグラムのピークの位置が110程度(105~115)となるように明るさを調整する。最後に、標準サンプルを電子顕微鏡から回収する。
次に、輝度解析の方法について説明する。
まず、輝度解析を行う材料を準備する。以下、材料がR-T-B系永久磁石用合金である場合について説明する。次に、R-T-B系永久磁石用合金の断面が観察できるように加工し、評価用サンプルを作製する。評価用サンプルを複数個作製して得られた結果を平均してもよい。
次に、撮像モードは反射電子像とし、観察範囲を設定する。材料の種類および評価する微細構造により測定条件は異なるが、R-T-B系永久磁石用合金の上記の微細構造について評価する場合には、倍率350倍、画素数1280×960pixelとして、観察範囲を設定する。なお、上記の倍率および画素数であると観察範囲は360μm×270μmとなる。
次に、上記の観察範囲に含まれる評価用サンプルである部分を一定間隔の区画で分割する。1区画の寸法には特に制限はなく材料の種類および評価する微細構造により変化する。R-T-B系永久磁石用合金の上記の微細構造について評価する場合には、40pixel以上60pixel以下とすることが好ましく、50pixelとすることが特に好ましい。実際に評価用サンプルの断面を観察して1区画の寸法を50pixelとして区切った画像が図9である。R-T-B系永久磁石用合金の厚さ方向に平行な断面を観察しており、図9の画像の大きさは、図9全体で横が1280pixel(=360μm)、縦が960pixel(=270μm)である。
次に、各区画について輝度ヒストグラムを作製する。例えば、図9のうち、上から7番目、左から3番目の区画について輝度ヒストグラムを作製した結果が図10である。そして、輝度ヒストグラムの形状から各区画の微細構造を特定する。
R-T-B系永久磁石用合金の上記の微細構造について評価する場合には、各区画が通常組織であるか、非柱状晶組織であるかについて、輝度ヒストグラムの形状から特定する。具体的には、各区画について輝度ヒストグラムのピーク位置および標準偏差(σ)を取得し、取得したピーク位置およびσから特定する。以下、R-T-B系永久磁石用合金の場合の具体例を述べる。
本発明者らは、多数のR-T-B系永久磁石用合金について断面を観察した。そして、上記の方法で得られた断面の反射電子像を目視にて観察し、通常組織および6種類の非柱状晶組織に分類した。そして、各組織について輝度ヒストグラムを作成する場合におけるピークの位置およびσの傾向を観察した。
その結果、非柱状晶組織である区画の輝度ヒストグラムは、ほとんどはピークの位置が130以上200以下であり、かつ、σが20以上40以下であった。これに対し、通常組織7である区画の輝度ヒストグラムは、ほとんどはσが40を上回った。
図11は通常組織に該当する区画および6種類の非柱状晶組織に該当する区画の平均ピーク位置および平均σを図示したものである。組織1a、組織1b、組織3~組織6のいずれかに該当する区画のほとんどはピークの位置が130以上200以下であり、かつ、σが20以上40以下であった。
以上より、輝度ヒストグラムのピークの位置が130以上200以下であり、かつ、σが20以上40以下である区画を非柱状晶組織であるとみなすことができる。そして、全ての区画に対する輝度ヒストグラムのピークの位置およびσが上記の範囲内である区画の個数割合を非柱状晶組織の面積比率であるとみなすことができる。
そして、上記の方法で特定した非柱状晶組織の面積比率が1.0%以上30.0%以下であるR-T-B系永久磁石用合金を用いて作製したR-T-B系永久磁石は磁気特性が良好であることが判明した。特に、1.0%以上である場合に高温でのHcJが高くなりやすいことが判明した。また、30%以下である場合に室温でのHk/HcJが高くなりやすいことが判明した。非柱状晶組織の面積比率が4.0%以上30.0%以下であることが好ましいことが判明した。
さらに、輝度ヒストグラムのピークの位置が130以上200以下であり、かつ、σが30以上40以下である区画を前記非柱状晶組織における前記チル晶組織以外の組織であるとみなすことができる。そして、前記非柱状晶組織における前記チル晶組織以外の組織の面積比率が50%以上であってもよく、85%以上95%以下であることが好ましく、87%以上91%以下であることがさらに好ましいことが判明した。
なお、輝度ヒストグラムを作製するための各区画について、1区画の寸法が大きすぎる場合には、同一区画内に2種以上の異なる組織が含まれる場合が多くなる。1区画の寸法が小さすぎる場合には、各区画に含まれる画素数が減少するために各区画について作成する輝度ヒストグラムの精度が低下する。その結果、輝度ヒストグラムのピーク位置およびσが不明瞭になる。すなわち、1区画の寸法には、材料の種類などに応じて適切な範囲がある。
<R-T-B系永久磁石用合金の組成>
R-T-B系永久磁石用合金の組成には特に制限はない。Rは、希土類元素の少なくとも1種を表す。希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するScとYとランタノイド元素とのことをいう。ランタノイド元素には、例えば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が含まれる。希土類元素は、軽希土類元素および重希土類元素に分類され、重希土類元素とは、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luをいい、軽希土類元素は重希土類元素以外の希土類元素である。本実施形態においては、製造コストおよび磁気特性を好適に制御する観点から、RとしてNdおよび/またはPrを含んでもよい。また、特にHcJを向上させる観点から軽希土類元素と重希土類元素との両方を含んでもよい。重希土類元素の含有量には特に制限はなく、重希土類元素を含まなくてもよい。重希土類元素の含有量は例えば5質量%以下(0質量%を含む)である。
Rの含有量は、29.0質量%以上33.5質量%以下であってもよい。Rの含有量が小さい場合には、得られるR-T-B系永久磁石のHcJが低下しやすくなる。Rの含有量が大きい場合には、Brが低下しやすくなる。
Bの含有量は0.70質量%以上であってもよく0.80質量%以上であってもよい。Bの含有量の上限は1.0質量%未満であってもよく、0.96質量%未満であってもよく、0.90質量%以下であってもよい。Bの含有量が化学量論比よりも小さい場合、具体的には1.0質量%未満である場合には、非柱状晶組織の面積比率を1.0~30.0%としやすくなる。また、Bの含有量が小さい場合には、Hk/HcJが低下しやすくなる。さらに、高温で焼結する場合に異常粒成長が生じやすくなる。また、低温で焼結する場合にはHk/HcJが高くなりにくくなる。Bの含有量が大きい場合には、異常粒成長が生じやすくなる。そして、Brが低下しやすくなる。
Tは遷移金属元素である。Fe単独またはFeおよびCoであってもよい。Coの含有量は0質量%以上2.0質量%以下であってもよい。Coの含有量が小さいほど、高温で焼結する場合に異常粒成長が生じやすくなる。また、低温で焼結する場合にはHk/HcJが高くなりにくくなる。Coの含有量が大きい場合には、BrおよびHcJが低下する。また、R-T-B系永久磁石用合金が高価となる傾向がある。
R-T-B系永久磁石用合金はMを含んでもよい。MはCu,Ga,ZrおよびAlから選択される1種以上である。Mの合計含有量には特に制限はない。0.1質量%以上2.0質量%以下であってもよい。
Cuの含有量には特に制限はない。例えば0.05質量%以上0.50質量%以下であってもよい。Cuを0.05質量%以上含むことにより高温で焼結する場合に異常粒成長が生じにくくなる。また、低温で焼結する場合でもHk/HcJが十分に高くなりやすくなる。Cuを0.50質量%以下、含むことにより、Brが向上しやすくなる。
Gaの含有量には特に制限はない。例えば0質量%以上1.0質量%以下であってもよい。Gaを含むことにより高温で焼結する場合に異常粒成長が生じにくくなる。さらに、低温で焼結する場合でもHk/HcJが十分に高くなりやすくなる。さらに、HcJも向上しやすくなる。Gaを1.0質量%以下含むことによりBrが向上しやすくなる。
Alの含有量には特に制限はない。例えば0.05質量%以上1.00質量%以下であってもよい。Alを0.05質量%以上含むことによりHcJが向上しやすくなる。また、高温で焼結する場合でも異常粒成長が生じにくくなる。さらに低温で焼結する場合でもHk/HcJが十分に高くなりやすくなる。Alを1.00質量%以下含むことによりBrが向上しやすくなる。
Zrの含有量には特に制限はない。例えば0.05質量%以上1.00質量%以下であってもよい。Zrを0.05質量%以上含むことにより、低温で焼結する場合でもHk/HcJが十分に高くなりやすくなる。また、高温で焼結する場合でも異常粒成長が生じにくくなる。Zrを1.00質量%以下含むことによりBrが向上しやすくなる。
Feの含有量は、R-T-B系永久磁石用合金の構成要素における実質的な残部である。Feの含有量が実質的な残部であるとは、R、Fe、Co、B、M以外の元素の合計含有量が1.0質量%以下である場合を指す。
上記のR-T-B系永久磁石用合金を用いて作製されるR-T-B系永久磁石は、任意の形状に加工されて使用される。R-T-B系永久磁石の形状は特に限定されるものではなく、例えば、直方体、六面体、平板状、四角柱などの柱状、R-T-B系永久磁石の断面形状がC型の円筒状等の任意の形状とすることができる。
また、R-T-B系永久磁石には、当該磁石を加工して着磁した磁石製品と、当該磁石を着磁していない磁石製品との両方が含まれる。
<R-T-B系永久磁石用合金の製造方法>
R-T-B系永久磁石用合金を製造する方法の一例として、図12に示す鋳造装置を用いるストリップキャスト法により製造する方法を説明する。
図12に示す鋳造装置は、冷却ロール21、タンディッシュ23を有する。また、図12には図示していないが、鋳造装置は耐火物るつぼおよび捕集コンテナなど、鋳造装置の部品として周知の部品を有していてもよい。耐火物るつぼの種類には特に制限はない。例えばアルミナるつぼ、ムライトるつぼ、ジルコニアるつぼなどが挙げられる。冷却ロール21の材質には特に制限はない。例えば、銅、銅合金、銅の表面にメッキまたは溶射を行ったもの、銅合金の表面にメッキまたは溶射を行ったものなどが挙げられる。
まず、目的とするR-T-B系永久磁石用合金の合金組成となるように原料金属を秤量し、混合して原料混合物を得る。
次に、得られた原料混合物を耐火物るつぼに装填し、装填された原料混合物を溶融させて合金溶湯を得る。原料混合物を溶融させる方法には特に制限はない。例えば、原料混合物を装填した耐火物るつぼを高周波真空誘導炉内に設置して加熱する方法が挙げられる。
そして、図12に示す鋳造装置を用いるストリップキャスト法により、得られた合金溶湯を鋳造して鋳造合金薄帯(R-T-B系永久磁石用合金)を得る。具体的には、タンディッシュ23を介して、内部が水冷された冷却ロール21に合金溶湯25を供給する。冷却ロール21上に供給された合金溶湯25は冷却されてタンディッシュ23の反対側で冷却ロール21から離脱し、鋳造合金薄帯として回収される。
鋳造合金薄帯のうち、冷却ロール21に接する面がロール面、ロール面の反対側の面が自由面である。ロール面は自由面と比較して冷却ロール21により急激に冷却される。ここで、非柱状晶組織は通常組織よりも冷却速度が速い場合に生成しやすい。非柱状晶組織の中でもチル晶組織は冷却速度が特に速い場合に生成しやすい。したがって、ロール面は自由面と比較してチル晶組織が生成しやすく非柱状晶組織が生成しやすい。なお、図1~図9は全て左側にロール面がある。
非柱状晶組織(チル晶組織)の面積割合は、主に合金溶湯25の温度(鋳造温度)、合金溶湯25の組成、冷却ロール21のロール面粗さRz、ロール面粗さRzに影響を及ぼす凹凸の形状、溶湯ヘッド圧27、冷却ロール21のロール周速度、および冷却ロール21への合金溶湯25の供給速度(合金溶湯25と冷却ロール21との単位接触幅あたりの供給速度)により変化する。合金溶湯25の温度は例えば1300~1600℃である。冷却ロール21のロール面粗さRzは例えば10~50μmである。冷却ロール21のロール周速度は例えば0.5~2.5m/sである。冷却ロール21への合金溶湯25の供給速度は例えば0.5~2.5kg/(min・cm)である。
以下、溶湯ヘッド圧27について説明する。溶湯ヘッド圧27とは、冷却ロール21に接触する合金溶湯25の深さのことである。溶湯ヘッド圧27が大きいほど、合金溶湯25が自重により冷却ロール21に押し付けられる圧力が強くなる。そのため、溶湯ヘッド圧27が大きいほど、合金溶湯25と冷却ロール21とが強く密着し、合金溶湯25から冷却ロール21への熱伝達率が高くなる。同時に、冷却ロール21と接触する合金溶湯25の長さも変化する。したがって、他の条件が同一であれば、溶湯ヘッド圧27が高い方が、鋳造合金薄帯が厚くなる。実際には他の鋳造条件とあわせて溶湯ヘッド圧27を適宜選択する。
上記の通り、冷却速度が速いほど非柱状晶組織(チル晶組織)が生成しやすくなる。したがって、溶湯ヘッド圧27が大きいほど非柱状晶組織(チル晶組織)の面積割合が大きくなる傾向にある。
溶湯ヘッド圧27を大きくする方法としては、タンディッシュ23内における合金溶湯25の量を増やす方法が挙げられる。タンディッシュ23内における合金溶湯25の量を増やす方法としては、タンディッシュ23への合金溶湯25の供給速度を速くする方法が挙げられる。タンディッシュ23への合金溶湯25の供給速度が速くなれば鋳造合金薄帯が厚くなる。鋳造合金薄帯の厚さを変化させずに溶湯ヘッド圧27を大きくする方法としては、冷却ロール21の周速度を速くする方法が挙げられる。
すなわち、同じ厚さの鋳造合金薄帯を作製する場合には、合金溶湯25の供給速度が速く、冷却ロール21の周速度が速い場合には溶湯ヘッド圧27が大きくなり、合金溶湯25の供給速度が遅く、冷却ロール21の周速度が遅い場合には溶湯ヘッド圧27が小さくなる。
上記の方法で製造したR-T-B系永久磁石用合金を用いてR-T-B系永久磁石を製造する方法には特に制限はない。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。各種測定条件を変化させることで、R-T-B系永久磁石用合金以外の合金の微細構造や合金以外の材料の微細構造を特定することにも用いることができる。
<R-T-B系永久磁石の製造方法>
上記の方法で製造したR-T-B系永久磁石用合金を用いてR-T-B系永久磁石を製造する方法には特に制限はない。例えば、以下の工程を有する方法が挙げられる。
(a)R-T-B系永久磁石用合金を粉砕する粉砕工程
(b)得られた合金粉末を成形する成形工程
(c)成形体を焼結し、R-T-B系永久磁石を得る焼結工程
(d)R-T-B系永久磁石を時効処理する時効処理工程
(e)R-T-B系永久磁石を冷却する冷却工程
(f)R-T-B系永久磁石を加工する加工工程
(g)R-T-B系永久磁石の粒界に重希土類元素を拡散させる粒界拡散工程
(h)R-T-B系永久磁石に表面処理する表面処理工程
[粉砕工程]
R-T-B系永久磁石用合金を粉砕する(粉砕工程)。粉砕工程は、粒径が数百μm~数mm程度になるまで粉砕する粗粉砕工程と、粒径が数μm程度になるまで微粉砕する微粉砕工程とがある。
(粗粉砕工程)
R-T-B系永久磁石用合金を粒径が数百μm~数mm程度になるまで粗粉砕する(粗粉砕工程)。これにより、R-T-B系永久磁石用合金の粗粉砕粉末を得る。粗粉砕は、例えばR-T-B系永久磁石用合金に水素を吸蔵させた後、異なる相間の水素吸蔵量の相違に基づいて水素を放出させ、脱水素を行なうことで自己崩壊的な粉砕を生じさせる(水素吸蔵粉砕)ことによって行うことができる。
なお、粗粉砕工程は、上記のように水素吸蔵粉砕を用いる以外に、不活性ガス雰囲気中にて、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等の粗粉砕機を用いて行うようにしてもよい。
また、酸素濃度は、各製造工程における雰囲気の制御等により調節される。高い磁気特性を得る観点からは、最終的に得られるR-T-B系永久磁石の酸素量を低くしてもよい。このためには、粉砕工程から後述する焼結工程までの各工程の酸素濃度を100ppm以下としてもよい。
(微粉砕工程)
R-T-B系永久磁石用合金を粗粉砕した後、得られたR-T-B系永久磁石用合金の粗粉砕粉末を平均粒子径が数μm程度になるまで微粉砕する(微粉砕工程)。これにより、R-T-B系永久磁石用合金の微粉砕粉末を得る。粗粉砕した粉末を更に微粉砕することで、例えば1μm以上10μm以下、または3μm以上5μm以下の粒子を有する微粉砕粉末を得ることができる。
微粉砕は、粉砕時間等の条件を適宜調整しながら、ジェットミル、ボールミル、振動ミル、湿式アトライター等の微粉砕機を用いて粗粉砕した粉末の更なる粉砕を行なうことで実施される。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(たとえば、Nガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により原料合金の粗粉砕粉末を加速して原料合金の粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットまたは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
原料合金の粗粉砕粉末を微粉砕する際、ステアリン酸亜鉛、尿素、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の粉砕助剤を添加することにより、成形時に配向性の高い微粉砕粉末を得ることができる。
[成形工程]
微粉砕粉末を目的の形状に成形する(成形工程)。成形工程では、微粉砕粉末を、電磁石に抱かれた金型内に充填して加圧することによって、微粉砕粉末を任意の形状に成形する。このとき、磁場を印加しながら行い、磁場印加によって微粉砕粉末に所定の配向を生じさせ、結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。これにより成形体が得られる。得られる成形体は、特定方向に配向するので、より磁性の強い異方性を有するR-T-B系永久磁石が得られる。
成形時の加圧は、30MPa~300MPaで行ってもよい。印加する磁場は、950kA/m~1600kA/mであってもよい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場とを併用することもできる。
なお、成形方法としては、上記のように微粉砕粉末をそのまま成形する乾式成形のほか、微粉砕粉末を油等の溶媒に分散させたスラリーを成形する湿式成形を適用することもできる。
微粉砕粉末を成形して得られる成形体の形状は特に限定されるものではなく、例えば直方体、平板状、柱状、リング状等、所望とするR-T-B系永久磁石の形状に応じて任意の形状とすることができる。
[焼結工程]
磁場中で成形し、目的の形状に成形して得られた成形体を真空または不活性ガス雰囲気中で焼結し、R-T-B系永久磁石を得る(焼結工程)。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要がある。成形体に対して、例えば、真空中または不活性ガスの存在下、1000℃以上1200℃以下で1時間以上48時間以下、加熱することにより焼結する。これにより、微粉砕粉末が液相焼結を生じ、主相粒子の体積比率が向上したR-T-B系永久磁石(R-T-B系磁石の焼結体)が得られる。成形体を焼結して焼結体を得た後は、生産効率を向上させる観点から焼結体を急冷してもよい。
[時効処理工程]
成形体を焼結した後、R-T-B系永久磁石を時効処理する(時効処理工程)。焼結後、得られたR-T-B系永久磁石を焼結時よりも低い温度で保持することなどによって、R-T-B系永久磁石に時効処理を施す。時効処理は、例えば、700℃以上1000℃以下の温度で10分から6時間、更に500℃から700℃の温度で10分から6時間加熱する2段階加熱や、600℃付近の温度で10分から6時間加熱する1段階加熱等、時効処理を施す回数に応じて適宜処理条件を調整する。このような時効処理によって、R-T-B系永久磁石の磁気特性を向上させることができる。また、時効処理工程は後述する加工工程の後に行ってもよい。
[冷却工程]
R-T-B系永久磁石に時効処理を施した後、R-T-B系永久磁石はArガス雰囲気中で急冷を行う(冷却工程)。これにより、上記のR-T-B系永久磁石を得ることができる。冷却速度は、特に限定されるものではなく、30℃/min以上としてもよい。
[加工工程]
得られたR-T-B系永久磁石は、必要に応じて所望の形状に加工してもよい(加工工程)。加工方法は、例えば切断、研削などの形状加工や、バレル研磨などの面取り加工などが挙げられる。
[粒界拡散工程]
加工されたR-T-B系永久磁石の粒界に対して、さらに重希土類元素を拡散させてもよい(粒界拡散工程)。粒界拡散の方法には特に制限はない。例えば、塗布または蒸着等により重希土類元素を含む化合物をR-T-B系永久磁石の表面に付着させた後に熱処理を行うことで実施してもよい。また、重希土類元素の蒸気を含む雰囲気中でR-T-B系永久磁石に対して熱処理を行うことで実施してもよい。粒界拡散により、R-T-B系永久磁石のHcJをさらに向上させることができる。
[表面処理工程]
以上の工程により得られたR-T-B系永久磁石は、めっきや樹脂被膜や酸化処理、化成処理などの表面処理を施してもよい(表面処理工程)。
なお、本実施形態では、加工工程、粒界拡散工程、表面処理工程を行っているが、これらの工程は必ずしも行う必要はない。
以上のようにして得られるR-T-B系永久磁石は、良好な磁気特性を有するとともに、焼結温度幅が広い。その結果、上記のR-T-B系永久磁石は、安定して生産が可能な磁石となる。
このようにして得られる上記のR-T-B系永久磁石は、例えば、ロータ表面に磁石を取り付けた表面磁石型(Surface Permanent Magnet:SPM)回転機、インナーロータ型のブラシレスモータのような内部磁石埋込型(Interior Permanent Magnet:IPM)回転機、PRM(Permanent magnet Reluctance Motor)などの磁石として好適に用いられる。具体的には、上記のR-T-B系永久磁石は、ハードディスクドライブのハードディスク回転駆動用スピンドルモータやボイスコイルモータ、電気自動車やハイブリッドカー用モータ、自動車の電動パワーステアリング用モータ、工作機械のサーボモータ、携帯電話のバイブレータ用モータ、プリンタ用モータ、発電機用モータ等の用途として好適に用いられる。
以下、実施例により発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(R-T-B系永久磁石用合金の作製)
Ndメタル(純度99質量%以上)、NdとPrとの合金(ジジム、純度99質量%以上)、Tbメタル(純度99質量%以上)と、フェロボロン(Fe含有量80質量%、B含有量20質量%)、Feメタル(純度99質量%以上)、Coメタル(純度99質量%以上)、Zrメタル(純度99質量%以上)、Cuメタル(純度99質量%)、Alメタル(純度99質量%以上)、Gaメタル(純度99質量%以上)を、下記の表1に示す合金組成になるように秤量し、混合して原料混合物を得た。表1における「T.RE」は希土類元素(Nd、Pr、DyおよびTb)の合計含有量(質量%)、「T.RL」は軽希土類元素(NdおよびPr)の合計含有量(質量%)である。「bal.」は残部である。Feの含有量を「bal.」と記載するのは、Feの含有量が表1に記載した元素以外の元素を含むR-T-B系永久磁石用合金全体を100質量%とした場合の残部であることを示すためである。
得られた原料混合物をアルミナるつぼに装填した。原料混合物を装填したアルミナるつぼを高周波真空誘導炉内に設置した後に高周波真空誘導炉内をArで置換した。そして、高周波真空誘導炉内を加熱することでアルミナるつぼに装填された原料混合物を溶融させて合金溶湯を得た。図12に示す鋳造装置を用いるストリップキャスト法により、得られた合金溶湯を鋳造して鋳造合金薄帯(R-T-B系永久磁石用合金)を得た。鋳造はAr雰囲気中で行った。
合金溶湯の温度、冷却ロールのロール面粗さRz、および溶湯ヘッド圧は表2に記載されたR-T-B系希永久磁石用合金が得られるように適宜選択した。具体的には、合金溶湯の温度(鋳造温度)が1300~1600℃、冷却ロールのロール面粗さRzが5~50μm、溶湯ヘッド圧が5~25mmの範囲内で適宜、選択した。また、冷却ロールの材質は銅合金とした。冷却ロールのロール周速度、および冷却ロールへの溶湯の供給速度(溶湯と冷却ロールの単位接触幅あたりの供給速度)は下記の表2に示す値となるように調整した。
(電子顕微鏡の調整)
得られたR-T-B系永久磁石用合金の断面を電子顕微鏡(日本電子製)で観察して輝度解析により非柱状晶組織の面積比率を算出するための準備として、電子顕微鏡の明るさおよびコントラストを調整した。
まず、得られたR-T-B系永久磁石用合金に対して、1000℃で120分、熱処理を行い、標準サンプルに組み込むための熱処理板を2枚得た。
次に、0.1mm厚のNi薄板、0.1mm厚のCu薄板および0.1mm厚のZn薄板を準備した。次に、熱処理板、Ni薄板、Cu薄板およびZn薄板を電子顕微鏡観察用の埋込樹脂に埋め込んだ。この際に、熱処理板、Ni薄板、Cu薄板、Zn薄板、熱処理板の順に各板の厚さ方向に平行な断面が並ぶように配置して標準サンプルを作製した。
次に、標準サンプルの断面を鏡面研磨し、金蒸着を行った。
次に、標準サンプルを電子顕微鏡にセットした。撮像モードは反射電子像とし、倍率150倍、画素数1280×960pixelとした。
次に、Ni薄板、Cu薄板およびZn薄板がこの順番で同一視野に入るように視野を調整した。
次に、最小輝度を0、最大輝度を255とする256階調で調整前輝度ヒストグラムを作製し、Cuの輝度ピークの位置が150程度(145~155)となるように明るさを調整した。さらに、Niの輝度ピークの位置とCuの輝度ピークの位置との差が55程度(45~65)、Cuの輝度ピークの位置とZnの輝度ピークの位置との差が45程度(35~55)となるようにコントラストを調整した。コントラストを調整する際に、Cuの輝度ピークの位置が150程度である状態を維持するため、必要に応じて補助的に明るさを調整した。
次に、コントラストを維持したまま視野を熱処理品が入る位置に移動させた。そして、倍率を上げて白い相(Rリッチ相13)が視野に入らず主相11のみが視野に入るようにした。倍率は最大で10000倍程度とした。さらに、輝度ヒストグラムのピークの位置が110程度(105~115)となるように明るさを調整した。最後に、標準サンプルを電子顕微鏡から回収した。
(R-T-B系永久磁石用合金の評価)
上記の方法で明るさおよびコントラストを調整した電子顕微鏡を用いてR-T-B系永久磁石用合金の微細構造を評価した。
まず、評価用サンプルを採取した。具体的には、1製造ロット分のR-T-B系永久磁石用合金が上記のストリップキャスト法により供給される工程にて、一定時間間隔で供給されるR-T-B系永久磁石用合金から合金片をサンプリングした。R-T-B系永久磁石用合金から無作為に30枚の合金片を採取して各合金片を評価用サンプルとした。
次に、採取した評価用サンプルの厚さを測定した。
そして、30枚の評価用サンプルのうち、厚さが2、3、4番目に厚いサンプルを厚めサンプル、14、15、16番目に厚いサンプルを平均付近サンプル、27、28、29番目に厚いサンプルを薄めサンプルとして選別した。
次に、選別した9枚の評価用サンプルを瞬間接着剤で貼り付け、厚さ方向に平行な断面が観察できるように加工した。なお、評価用サンプルを張り付ける際には、どの評価用サンプルが厚めサンプル、平均付近サンプルまたは薄めサンプルであるかがわかるように配列させた。
次に、瞬間接着剤で張り付けた9枚の評価用サンプルが1個の埋込樹脂サンプルとなるようにまとめて樹脂埋込した。そして、厚さ方向に平行な断面を鏡面加工して観察面とした。
次に、撮像モードは反射電子像とし、倍率350倍、画素数1280×960pixelとして、観察範囲を設定した。観察範囲としては、各評価用サンプルの観察面のうち、平均的な状態である部分を選択した。次に、観察範囲における非柱状晶組織の面積比率を解析により算出した。
以下、具体的な解析手順について説明する。まず、上記の観察範囲を一定間隔の区画で区切った。1区画の寸法は50pixelとした。
次に、各区画について輝度ヒストグラムを作製した。そして、各区画について輝度ヒストグラムのピーク位置およびσを取得した。
次に、各区画が非柱状晶組織であるか否かについて判定した。具体的には、輝度ヒストグラムのピーク位置が130以上200以下であり、かつ、σが20以上40以下である区画を非柱状晶組織であるとした。輝度ヒストグラムのピーク位置またはσが上記の範囲外である区画を非柱状晶組織ではないとした。観察範囲に含まれる全ての区画について非柱状晶組織であるか否かを判定し、観察範囲に含まれる非柱状晶組織である区画の数を全ての区画の数で割ることにより各評価用サンプルの断面における非柱状晶組織の面積比率とした。
そして、各評価用サンプルの断面における非柱状晶組織の面積比率を平均して1製造ロット分のR-T-B系永久磁石用合金の断面における非柱状晶組織の面積比率を算出した。結果を表2に示す。
(R-T-B系永久磁石の作製)
R-T-B系永久磁石用合金に対して室温で水素を吸蔵させた後、真空中で600℃、1時間の脱水素を行う水素粉砕処理(粗粉砕)を行い、合金粉末(粗粉砕粉末)を得た。なお、本実施例では、水素粉砕処理から焼結までの各工程(微粉砕および成形)を、50ppm未満の酸素濃度のAr雰囲気下または真空中で行った。
次に、合金粉末に対して、粉砕助剤として、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸アミドを添加し、ナウタミキサを用いて混合した。ステアリン酸亜鉛の添加量は粗粉砕粉末100質量部に対して0.05質量部である。ステアリン酸アミドの添加量は粗粉砕粉末100質量部に対して0.05質量部である。その後、ジェットミルを用いて微粉砕を行い、平均粒径が3.0μm程度の微粉砕粉末とした。
得られた微粉砕粉末を、電磁石中に配置された金型内に充填し、1200kA/mの磁場を印加しながら120MPaの圧力を加える磁場中成形を行い、成形体を得た。
その後、得られた成形体を、真空中にて1050℃で4時間保持して焼結した後、急冷して、表1に示す磁石組成を有する焼結体を得た。そして、得られた焼結体に対して、900℃で1時間、および、500℃で1時間(ともにAr雰囲気下)の2段階の時効処理を施し、R-T-B系永久磁石(R-T-B系焼結磁石)を得た。
[磁気特性]
各試料のBr、HcJおよびHk/HcJはB-Hトレーサーを用いて測定した。全ての試料について室温でBrを測定した。試料番号1~5ではHcJおよびHk/HcJを室温で測定した。その他の試料ではHcJおよびHk/HcJを150℃で測定した。なお、本実施例でのHkは、減磁曲線の第二象限において磁化がBr×0.9であるときの磁界の値である。
Figure 0007633066000001
Figure 0007633066000002
試料番号1~5より、非柱状晶組織の面積比率、すなわちピーク位置が130~200でありσが20~40である区画の面積比率が1.0%以上30.0%以下であるR-T-B系永久磁石用合金を用いて作製された試料番号1~4のR-T-B系永久磁石は、非柱状晶組織の面積比率が上記の範囲外である点以外は同条件で作製されたR-T-B系永久磁石用合金を用いて作製された試料番号5のR-T-B系永久磁石と比較してBrが高く、HcJが同程度であり、Hk/HcJが高くなった。特に室温でのHk/HcJが高くなった。
試料番号6~12より、非柱状晶組織の面積比率が4.0%以上30.0%以下であるR-T-B系永久磁石用合金を用いて作製された試料番号7~12のR-T-B系永久磁石は、非柱状晶組織の面積比率が1.0%以上4.0%未満である点以外は同条件で作製された試料番号6と比較してHcJが高くなった。
試料番号7~12より、R-T-B系永久磁石用合金における非柱状晶組織の面積比率を4.0%以上30.0%以下で変化させた点以外は同条件で作製されたR-T-B系永久磁石は、R-T-B系永久磁石用合金における非柱状晶組織の面積比率が高いほどHcJが高くなる傾向にあった。
試料番号13はBの含有量が0.96質量%であり他の試料よりも高い。そのため、他の試料に近い鋳造条件としても非柱状晶組織の面積比率が低下した。その結果、他の試料と比較してHcJが低下した。
また、全ての非柱状晶組織の面積比率が1.0%以上30.0%以下である試料では、非柱状晶組織におけるチル晶組織以外の組織の面積比率が85%以上95%以下であることを確認した。
1…チル晶組織
3…微細点状Rリッチ相含有組織
4…点状Rリッチ相含有組織
5…微細線状Rリッチ相含有組織
6…大型点状Rリッチ相含有組織
7…通常組織
11…主相
13…Rリッチ相
21…冷却ロール
23…タンディッシュ
25…合金溶湯
27…溶湯ヘッド圧

Claims (4)

  1. 材料の断面の画像を得る工程と、
    得られた画像を複数の区画に分割する工程と、
    各区画に含まれる複数の画素の輝度を測定する工程と、
    各画素の輝度から各区画の輝度ヒストグラムを得る工程と、
    前記各区画の輝度ヒストグラムにおけるピーク位置およびピーク標準偏差から各区画の微細構造の種類を特定する工程と、
    特定の前記微細構造を有する区画の合計面積割合を算出する工程と、を有し、
    最小輝度を0、最大輝度を255とする256階調で前記輝度ヒストグラムを作製する場合において、前記ピーク位置が130~200であり前記ピーク標準偏差が20~40である区画の合計面積割合を算出する材料の評価方法
  2. 前記材料が合金である請求項1に記載の材料の評価方法。
  3. 前記合金がR-T-B系永久磁石用合金であり、Rが希土類元素、Tが遷移金属元素、Bがホウ素である請求項2に記載の材料の評価方法。
  4. 2種類以上の画像調製用の薄板を基材に埋め込んで電子顕微鏡の同一視野内に含める工程と、
    前記視野について調整前輝度ヒストグラムを作成する工程と、
    前記調整前輝度ヒストグラムにおける各薄板由来の輝度ピークの位置を所定の位置に調整し、かつ、各薄板由来の輝度ピーク位置の差を所定の大きさに調整する工程と、
    を有する電子顕微鏡の調整方法を用いて調整された電子顕微鏡を用いて前記材料の断面の画像を得る請求項1~のいずれかに記載の材料の評価方法。

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