[自動二輪車の全体構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る燃料タンク固定構造が適用された自動二輪車の側面図である。自動二輪車は、燃料タンク1と、車体フレーム101と、前輪102及び後輪103と、ヘッドパイプ104と、フロントフォーク105と、ハンドル106と、スイングアーム107と、シート108と、エンジン109とを備える。すなわち、自動二輪車は、エンジン109の駆動力により走行する二輪の自動車であって、鞍乗型車両の一種である。
燃料タンク1は、エンジン109に供給される燃料を貯留するタンクである。燃料タンク1は、後述する固定構造により車体フレーム101に固定される。
車体フレーム101は、メインフレーム111と、ロアフレーム112と、第1連結フレーム113と、第2連結フレーム114と、リヤフレーム115とを備える。メインフレーム111は、ヘッドパイプ104の上部から後方かつ下方に傾斜しつつ延びるフレームである。ロアフレーム112は、ヘッドパイプ104の下部から後方かつ下方に傾斜しつつ延びるフレームである。ロアフレーム112は、メインフレーム111の下方において、後方ほどメインフレーム111との距離が拡大するように大きく傾斜している。第1連結フレーム113は、メインフレーム111の前端部とロアフレーム112の前端部とを上下方向に連結するフレームである。第2連結フレーム114は、メインフレーム111及びロアフレーム112の各中間部どうしを前後方向に連結するフレームである。リヤフレーム115は、メインフレーム111の後部から後方かつ上方に傾斜しつつ延びるフレームである。
詳細は省略するが、車体フレーム101は左右対称の構造を有する。すなわち、上述した車体フレーム101のフレーム群111~115は、図1に示される車体の左側だけでなく、右側にも設けられる。言い換えると、車体フレーム101は、ヘッドパイプ104から左右に分岐しつつ斜め下方に延びる一対のメインフレーム111及び一対のロアフレーム112と、左右のメインフレーム111と左右のロアフレーム112とを連結する一対の第1連結フレーム113及び一対の第2連結フレーム114と、左右のメインフレーム111から後方に延びる一対のリヤフレーム115とを備える。
ヘッドパイプ104は、メインフレーム111及びロアフレーム112の各前端部が共通に結合されるパイプ材である。ヘッドパイプ104は、上端部が下端部よりも後方に位置するように傾斜した姿勢で上下方向に延びるように配置されている。
フロントフォーク105は、図外のステアリングシャフトを介してヘッドパイプ104に回転自在に支持されている。フロントフォーク105は、ヘッドパイプ104と同一の角度で傾斜しつつ上下方向に延びている。フロントフォーク105の上端部にはハンドル106が取り付けられ、フロントフォーク105の下端部には前輪102が軸支されている。
スイングアーム107は、車体フレーム101と後輪103とを連結する前後方向に延びるアームである。スイングアーム107の前端部は、メインフレーム111の後端部に軸支されている。スイングアーム107の後端部には、後輪103が軸支されている。すなわち、スイングアーム107は、メインフレーム111に対し上下方向に揺動可能な状態で後輪103を支持している。
シート108は、自動二輪車を運転する乗員(ライダー)が着座するシートである。シート108は、リヤフレーム115上に支持されている。
エンジン109は、例えば4サイクルの内燃機関である。エンジン109は、燃料タンク1の下方において車体フレーム101に支持されている。エンジン109は、燃料タンク1からの供給燃料が燃焼する空間(シリンダ)を内包するシリンダブロック121を備える。シリンダブロック121の下部には、エンジン109の出力軸であるクランク軸が回転自在に取り付けられている。クランク軸の回転は、変速機123及びチェーン124を介して後輪103に伝達される。すなわち、エンジン109は、後輪103を回転駆動する駆動源である。
本実施形態の自動二輪車は、エンジン109の周囲を覆うカバー(カウル)が装備されない、いわゆるネイキッドタイプの自動二輪車である。このため、シリンダブロック121を含むエンジン109の主要部品は、その左右両側部が外気に露出している。
[燃料タンクの固定構造]
図2は、燃料タンク1とその下の車体フレーム101とを示す断面図であり、図3は、図2の一部を拡大した拡大断面図である。本図に示すように、燃料タンク1は、燃料が貯留される貯留空間Sを内部に有するタンクであり、タンクアウタパネル11とタンクインナパネル12とを備える。タンクアウタパネル11は、燃料タンク1の外壁を構成するパネルであり、タンクインナパネル12は、燃料タンク1の内壁を構成するパネルである。燃料タンク1は、タンクアウタパネル11が上に、タンクインナパネル12が下になる姿勢で車体フレーム101に固定される。
タンクアウタパネル11及びタンクインナパネル12は、それぞれの周縁部にフランジ部11a,12aを有する。タンクアウタパネル11のフランジ部11aとタンクインナパネル12のフランジ部12aとが溶接等により接合されることで、両パネル11,12が一体化した燃料タンク1が構築される。タンクアウタパネル11及びタンクインナパネル12は、フランジ部11a,12a以外の領域において互いに離間するように形成される。これにより、タンクアウタパネル11及びタンクインナパネル12の間に貯留空間Sが形成される。
タンクアウタパネル11の前部には、給油口として機能するタンクキャップ13が取り付けられている。タンクインナパネル12の後部には、図外の燃料ポンプが取り付けられる燃料供給孔12bが形成されている。燃料ポンプは、貯留空間Sに貯留された燃料を燃料供給孔12bを通じてエンジン109に供給する。
燃料タンク1は、その前部がメインフレーム111に締結され、かつ後部がリヤフレーム115に締結されることにより、車体フレーム101に固定される。燃料タンク1の前部及び後部のそれぞれの固定構造は、詳しくは次のとおりである。
まず、燃料タンク1の後部の固定構造について説明する。燃料タンク1の後部は、リヤステー60を介してリヤフレーム115の前部に固定される。リヤステー60は、側面視L字状のプレートであり、タンクアウタパネル11の後側固定部18に溶接等により接合されている。後側固定部18は、貯留空間Sの後端下部の領域を後方から覆う上下方向に延びる縦壁である。リヤステー60は、後側固定部18に接合された状態で当該後側固定部18から後方に突出する突出部60aを有する。リヤフレーム115の前部には、リヤステー60の突出部60aと対向する台座115aが、溶接等により接合されている。燃料タンク1の後部は、リヤステー60の突出部60aがボルト等の締結部材61を介して台座115aに締結されることにより、リヤフレーム115に固定される。締結部材61によるリヤステー60と台座115aとの締結部には、ゴムブッシュ62が取り付けられる。ゴムブッシュ62は、燃料タンク1の前部に適用される後述するゴムブッシュ52と同様の制振用のゴム部品である。
リヤステー60は、左右のリヤフレーム115に対し個別に使用される。すなわち、燃料タンク1の後部は、図2に示される右側のリヤフレーム115と、左側のリヤフレーム115とに、それぞれリヤステー60を用いて固定される。具体的には、燃料タンク1の後部の左右2箇所にそれぞれリヤステー60が接合されるとともに、左右のリヤフレーム115の前部にそれぞれ台座115aが設けられる。そして、各リヤステー60が各台座115aにそれぞれ締結部材61を介して固定されることにより、燃料タンク1の後部が左右のリヤフレーム115にそれぞれ固定される。
次に、燃料タンク1の前部の固定構造について説明する。燃料タンク1の前部は、フロントステー20及びブラケット40を介して、メインフレーム111の前端部に固定される。前側固定部16は、貯留空間Sの前端領域を下方から覆う底壁である。フロントステー20は、前側固定部16に溶接により接合されている。ブラケット40は、その後端部(後述する第1固定部41)がボルト等からなる第1締結部材51を介してフロントステー20に締結されることにより、フロントステー20及びタンクインナパネル12に固定される。メインフレーム111の前端部には、上方に突出するボス部111aが溶接等により接合されている。燃料タンク1の前部は、ブラケット40の前端部(後述する第2固定部42)がボルト等からなる第2締結部材55を介してボス部111aに締結されることにより、メインフレーム111に固定される。なお、ブラケット40は、本開示における「連結部材」に相当する。
フロントステー20及びブラケット40は、左右のメインフレーム111に対し共通に使用される。すなわち、図2及び図3に示される右側のメインフレーム111だけでなく、左側のメインフレーム111にも、共通のフロントステー20及びブラケット40を用いて燃料タンク1の前部が固定される。具体的には、タンクインナパネル12の前側固定部16に共通のフロントステー20が接合されるとともに、左右のメインフレーム111の前端部にそれぞれボス部111aが設けられる。そして、左右のボス部111aとフロントステー20とが共通のブラケット40を介して互いに連結されることにより、燃料タンク1の前部が左右のメインフレーム111に固定される。
燃料タンク1の前部の固定構造をより図4~図9を用いてより詳細に説明する。図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。図5は、フロントステー20単体の断面図である。図6は、燃料タンク1の前端部を下方から見た底面図である。図7は、フロントステー20をタンクインナパネル12に固定する様子を示す分解斜視図である。図8は、ブラケット40をフロントステー20に固定する様子を示す分解斜視図である。図9は、ブラケット40のフロントステー20への固定が完了した様子を示す斜視図である。
図3~図7に示すように、フロントステー20は、プレート部材21と左右一対のボス部材25とを備える。プレート部材21は、タンクインナパネル12の前側固定部16に接合される板状の部材である。各ボス部材25は、プレート部材21から下方に突出する状態でプレート部材21に接合される円柱状の部材である。
プレート部材21は、厚み方向に重なり合う2枚のプレートから構成された複合品である。具体的に、プレート部材21は、メインプレート22とサブプレート23とを含む。メインプレート22は、左右方向(車幅方向)の寸法が前後方向の寸法よりも大きい矩形状の板材である。サブプレート23は、メインプレート22よりも面積の小さい帯状(長楕円形状)の板材である。サブプレート23は、その左右方向及び前後方向の寸法がメインプレート22の対応する寸法よりもいずれも小さくなるように形成される。メインプレート22及びサブプレート23は、メインプレート22の上面22bにサブプレート23の下面23aが当接するように重なり合った状態で互いに接合される。
本実施形態では、図5に示すように、サブプレート23の板厚t2は、メインプレート22の板厚t1よりも大きい。また、メインプレート22の板厚t1は、タンクインナパネル12の板厚t3(図4)よりも大きい。すなわち、本実施形態では、t2>t1>t3の関係が成立するように、メインプレート22及びサブプレート23の各板厚が設定されている。より具体的に、サブプレート23の板厚t2は、メインプレート22の板厚t1の1倍超2倍以下である(t1<t2≦t1×2)。また、メインプレート22の板厚t1は、タンクインナパネル12の板厚t3の1倍超2倍以下である(t3<t1≦t3×2)。タンクインナパネル12の板厚t3がメインプレート22の板厚t1及びサブプレート23の板厚t2のいずれよりも小さいため、燃料タンク1の軽量化を図りやすい。
サブプレート23は、一対のボス部材25との接合用の孔として、各ボス部材25を受け入れ可能な一対の接合孔h2を有する。各接合孔h2は、サブプレート23を厚み方向に貫通する円形の孔である。各ボス部材25は、その上端部が各接合孔h2に挿入された状態でサブプレート23に接合される。すなわち、各ボス部材25の上端部は、各接合孔h2の周縁とアーク溶接等により溶接されることにより、サブプレート23に接合される。上端部が各接合孔h2の周縁に溶接されることにより、ボス部材25は、上端部を除く大部分がサブプレート23の下面23aよりも下方に突出する状態でサブプレート23に接合される。なお、図4及び図5には、ボス部材25とサブプレート23との溶接により生じる溶接ビードを符号Wで示している。
メインプレート22は、サブプレート23の各接合孔h2と重なる位置に、一対の挿通孔h1を有する。各挿通孔h1は、メインプレート22を厚み方向に貫通する円形の孔である。挿通孔h1の径は、接合孔h2の径と同じかわずかに大きい。挿通孔h1には、サブプレート23に接合されたボス部材25が挿通される。すなわち、メインプレート22及びサブプレート23は、メインプレート22の一対の挿通孔h1に一対のボス部材25がそれぞれ挿通される状態で厚み方向に重ね合わせられる。
メインプレート22及びサブプレート23は、前記のように厚み方向に重なり合った状態で、スポット溶接により接合される。図6では、このスポット溶接が行われるポイントを溶接ポイントP2として図示している。本実施形態では、溶接ポイントP2が合計3つである場合が例示される。すなわち、メインプレート22及びサブプレート23は、一対のボス部材25の間に設定された1つの溶接ポイントP2と、一対のボス部材25の外側に設定された2つの溶接ポイントP2とにおいて、スポット溶接により接合される。なお、溶接ポイントP2は複数あればよく、3つに対し適宜増減され得る。
前記のようにメインプレート22及びサブプレート23が接合されることにより、両プレート22,23からなるプレート部材21と一対のボス部材25とが相互に固定され、フロントステー20が構築される。この状態で、一対のボス部材25は、メインプレート22の下面22aよりもさらに下方に突出する。言い換えると、一対のボス部材25は、プレート部材21(メインプレート22)の下面22aの法線に沿って燃料タンク1から離間する方向、つまりプレート部材21の面外方向に突出する状態でプレート部材21に固定される。
メインプレート22は、タンクインナパネル12の前側固定部16にスポット溶接により接合される。図6では、このスポット溶接が行われるポイントを溶接ポイントP1として図示している。本実施形態では、溶接ポイントP1が合計12個である場合が例示される。すなわち、メインプレート22は、その周縁に沿って略等間隔に並ぶように配置された12個の溶接ポイントP1において、タンクインナパネル12の前側固定部16にスポット溶接により接合される。なお、溶接ポイントP1は複数あればよく、12個に対し適宜増減され得る。
ここで、メインプレート22とタンクインナパネル12との各溶接ポイントP1の位置は、隣接する溶接ポイントP1の中心間距離であるピッチが予め定められた規定値以上になるように設定される。この規定値は、溶接品質等を考慮して定められるものであり、例えば20mm程度に設定され得る。同様に、メインプレート22とサブプレート23との各溶接ポイントP2の位置は、溶接ポイントP2のピッチが前記規定値以上になるように設定される。
サブプレート23は、メインプレート22とタンクインナパネル12との溶接ポイントP1の内側においてメインプレート22と接合される。すなわち、サブプレート23は、メインプレート22の中心部を含みかつ周縁部を除く領域に接合される。図6では、メインプレート22とサブプレート23との重複領域を着色して示している。このように、プレート部材21は、メインプレート22とサブプレート23とが重複する着色領域と、その外側の非着色領域とに分けることができる。着色領域は、一対のボス部材25が接合される領域であり、非着色領域は、タンクインナパネル12に接合される領域である。
ここで、プレート部材21のうちタンクインナパネル12(燃料タンク1)との接合部である非着色領域を第1接合部R1、ボス部材25との接合部である着色領域を第2接合部R2と称する。第1接合部R1の板厚は、メインプレート22の板厚t1そのものである。第2接合部R2の板厚は、メインプレート22の板厚t1とサブプレート23の板厚t2との合計である。よって、第2接合部R2の板厚(t1+t2)は、第1接合部R1の板厚(t1)よりも大きい。言い換えると、プレート部材21は、燃料タンク1に接合される板厚の小さい第1接合部R1と、ボス部材25が接合される板厚の大きい第2接合部R2とを備える。
プレート部材21(メインプレート22及びサブプレート23)は、タンクインナパネル12の前側固定部16に接合された状態で、燃料タンク1を左右に2等分するタンク軸線L1(図6)に対し左右対称となる形状を有する。これにより、一対のボス部材25は、タンク軸線L1に対し対称配置される。言い換えると、一対のボス部材25は、タンク軸線L1を挟んだプレート部材21の左右2箇所であってタンク軸線L1からの距離が同一になる位置に取り付けられている。
特に図5に示すように、一対のボス部材25には、それぞれネジ孔25aが形成されている。ネジ孔25aは、第1締結部材51の軸部と螺合可能なネジ孔であり、ボス部材25の軸心に沿って形成されている。ネジ孔25aは、ボス部材25を貫通しないように、ボス部材25の下面から上面の近傍(上下方向の途中)にかけて穿孔されている。言い換えると、ボス部材25は、ネジ孔25aと、ネジ孔25aの上端(タンクインナパネル12側の端部)を塞ぐ閉塞部25bとを有する。
タンクインナパネル12の前側固定部16は、プレート部材21(もしくはメインプレート22)の平面形状に対応した略矩形の領域である。すなわち、図3及び図7に示すように、前側固定部16は、矩形枠状の凸部16aと、凸部16aの内側に形成された凹部16bとを含む。凹部16bは、底面視にて、左右方向に長い長楕円形を呈する。凸部16aは、凹部16bの周りを一段盛り上げる(下方に突出させる)ことで形成された凸部であり、凹部16bを取り囲む矩形枠状に形成される。凸部16aは、メインプレート22の周縁部と底面視で重なる領域に形成される。なお、凸部16aは、本開示における「被接合部」に相当する。
図6及び図7に示すように、凸部16aには、複数の突条17が設けられている。各突条17は、凸部16aの外周に沿って配置される。また、メインプレート22の外周には、各突条17との干渉を避けるための複数の段差部22dが形成されている。各段差部22dは、矩形状のメインプレート22の4つの角部にそれぞれ形成されている。すなわち、メインプレート22の4つの角部の外形線がその他の部分の外形線よりも一段内側に凹むように形成されることにより、メインプレート22の4つの角部にそれぞれ段差部22dが形成されている。
メインプレート22が前側固定部16に接合される際には、各突条17が各段差部22dと摺接することにより、メインプレート22が前側固定部16(タンクインナパネル12)に対し位置決めされる。この位置決めにより、メインプレート22は、その周縁部が前側固定部16の凸部16aと底面視で重なるように配置される。そして、このようにメインプレート22と凸部16aとが重なり合った状態で、当該重なり部の複数箇所(上述した溶接ポイントP1)がスポット溶接されることにより、メインプレート22が前側固定部16に固定される。
前記のようにメインプレート22の周縁部が前側固定部16の凸部16aに接合された状態で、サブプレート23は、底面視で凹部16bと重なる位置に配置される。すなわち、サブプレート23は、底面視で凹部16bよりも一回り小さい外形を有する。そして、このようなサブプレート23がメインプレート22の中心部を含む領域に接合されることにより、メインプレート22の前側固定部16への接合時にサブプレート23が凹部16b内に収められる。このことは、サブプレート23と前側固定部16との干渉回避につながる。
メインプレート22は、左右一対の突片24を有する。一対の突片24は、メインプレート22の平板部の左右の側辺部から下方に突出するように形成されている。各突片24には吊り孔24aが形成されている。吊り孔24aは、燃料タンク1の塗装時に燃料タンク1を吊り下げるための孔である。すなわち、燃料タンク1は、塗装時に所定のハンガーによって吊り下げ状態で保持される。このとき、吊り孔24aは、当該ハンガーを突片24に係合させるための係合孔として機能する。
図3、図8及び図9に示すように、ブラケット40は、フロントステー20のボス部材25に固定される第1固定部41と、メインフレーム111のボス部111aに固定される第2固定部42と、第1固定部41と第2固定部42とをつなぐ中間部43とを含む。図3に示すように、第1固定部41は、フロントステー20のプレート部材21の下方において、当該プレート部材21と略平行に配置される。詳しくは、第1固定部41は、プレート部材21(メインプレート22)の下面22aに沿って後方ほど高さが高くなるように傾斜した姿勢で、ボス部材25に固定される。第2固定部42は、メインフレーム111の前端部の上方において、当該メインフレーム111と略平行に配置される。詳しくは、第2固定部42は、メインフレーム111の前端部に沿って後方ほど高さが低くなるように傾斜した姿勢で、メインフレーム111のボス部111aに固定される。中間部43は、第1固定部41及び第2固定部42のいずれに対しても非平行になるように傾斜した姿勢で、第1固定部41と第2固定部42とをつなぐ。
第2固定部42には、左右一対の締結孔42a(図8及び図9)が形成されている。各締結孔42aは、第2締結部材55(図3)を挿通するための円形の貫通孔である。第2締結部材55は、締結孔42aに挿通された状態で、メインフレーム111のボス部111aに螺合される。すなわち、左右のメインフレーム111の各ボス部111aに、一対の締結孔42aに挿通された第2締結部材55がそれぞれ螺合されることにより、第2固定部42が左右のメインフレーム111に固定される。
第1固定部41には、左右一対の締結孔41a(図8)が形成されている。各締結孔41aは、ボス部材25を受け入れるための貫通孔である。締結孔41aに挿入されたボス部材25には、第1締結部材51が螺合される。すなわち、一対の締結孔41aに挿入された一対のボス部材25に第1締結部材51がそれぞれ螺合されることにより、第1固定部41がフロントステー20に固定される。
図4、図8及び図9に示すように、第1固定部41の各締結孔41aには、それぞれゴムブッシュ52が装着される。ゴムブッシュ52は、弾性を有する筒状のゴム製部品である。ゴムブッシュ52の軸方向の途中部には、外径が相対的に縮小されたくびれ部52a(図4)が形成されている。ゴムブッシュ52は、そのくびれ部52aが締結孔41aの内側に入り込むように締結孔41aに圧入される。これにより、くびれ部52aが締結孔41aの周縁と係合し、ゴムブッシュ52が第1固定部41に固定される。
ゴムブッシュ52は、ボス部材25を受け入れ可能な中空部を有する。すなわち、第1固定部41の締結孔41aに装着されたゴムブッシュ52の内側に、ボス部材25が同軸に挿入される。また、このようにゴムブッシュ52の内側にボス部材25が挿入された状態で、当該ボス部材25のネジ孔25aに第1締結部材51が螺合される。ゴムブッシュ52と第1締結部材51の頭部との間には、リング状のワッシャ53が配置される。これにより、ゴムブッシュ52は、第1締結部材51の頭部(もしくはワッシャ53)とプレート部材21との間に挟み込まれて固定される。すなわち、ゴムブッシュ52は、ボス部材25を取り囲んだ状態で第1締結部材51により圧縮されて固定される。また、このようにゴムブッシュ52がボス部材25の周囲に固定されることにより、当該ゴムブッシュ52を介して第1固定部41がボス部材25に固定される。言い換えると、ブラケット40の第1固定部41は、第1締結部材51、ワッシャ53及びゴムブッシュ52を介して、ボス部材25に固定される。
[燃料タンクの前部を車体に固定する手順]
次に、以上のような構造のフロントステー20及びブラケット40を用いて燃料タンク1の前部をメインフレーム111に固定する手順について説明する。なお、以下の説明における「上」「下」とは、燃料タンク1の車体フレーム101への取り付けが完了した状態を基準にした方向であり、固定作業中における燃料タンク1の姿勢を限定する趣旨ではない。
まず、フロントステー20を組み立てる。すなわち、サブプレート23に一対のボス部材25を接合するとともに、サブプレート23をメインプレート22の上面22bに重ねて接合する。具体的には、一対のボス部材25の上端部をサブプレート23の一対の接合孔h2に挿入し、各ボス部材25の上端部を各接合孔h2の周縁に溶接する。そして、サブプレート23に接合された各ボス部材25をメインプレート22の一対の挿通孔h1に通しながら、メインプレート22の上面22bにサブプレート23を重ねる。そして、両者の重なり部に設定された3つの溶接ポイントP2(図6)をスポット溶接することにより、メインプレート22とサブプレート23とを互いに接合する。以上により、メインプレート22及びサブプレート23からなるプレート部材21と、一対のボス部材25とを一体に備えたフロントステー20が完成する。
次に、完成したフロントステー20を、タンクインナパネル12の前側固定部16に接合する。具体的には、前側固定部16の周囲の突条17に囲まれる規定の位置にフロントステー20を位置決めしつつ当該フロントステー20を前側固定部16に対し下から当接させる。これにより、プレート部材21の第1接合部R1(図6)、つまりサブプレート23とメインプレート22との重複領域の外側に位置するメインプレート22の周縁部が、前側固定部16の凸部16aと重ねられる。そして、メインプレート22と凸部16aとの重なり部に設定された12個の溶接ポイントP1をスポット溶接することにより、フロントステー20を前側固定部16に接合する。なお、フロントステー20の接合時、タンクインナパネル12はタンクアウタパネル11と接合されていない。つまり、フロントステー20は、タンクアウタパネル11と接合されていない単品状態のタンクインナパネル12に接合される。
次に、タンクインナパネル12にタンクアウタパネル11を接合する。これにより、タンクアウタパネル11及びタンクインナパネル12からなる燃料タンク1が構築される。
次に、燃料タンク1の前部にブラケット40を取り付ける。すなわち、タンクインナパネル12の前側固定部16に接合されたフロントステー20にブラケット40の第1固定部41を締結する。具体的には、第1固定部41の一対の締結孔41aにゴムブッシュ52をそれぞれ装着するとともに、当該ゴムブッシュ52をフロントステー20の一対のボス部材25にそれぞれ外挿させる。そして、この状態で一対のボス部材25のネジ孔25aに第1締結部材51をそれぞれ螺合させる。このとき、各締結部材51の頭部と各ゴムブッシュ52との間にはそれぞれワッシャ53を配置する。これにより、第1締結部材51の頭部(もしくはワッシャ53)とプレート部材21との間にゴムブッシュ52を挟み込んで固定するとともに、当該ゴムブッシュ52を介して第1固定部41をボス部材25に固定する。
次に、ブラケット40の第2固定部42をメインフレーム111に締結する。具体的には、第2固定部42の一対の締結孔42aに第2締結部材55をそれぞれ挿通しつつ、当該第2締結部材55を左右のメインフレーム111のボス部111aにそれぞれ螺合させることにより、第2固定部42を各メインフレーム111に固定する。以上の手順により、燃料タンク1の前部が左右のメインフレーム111に固定される。
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態では、プレート部材21(メインプレート22及びサブプレート23)とボス部材25とを含むフロントステー20がタンクインナパネル12の前側固定部16に接合されるとともに、ボス部材25がブラケット40を介してメインフレーム111に連結されることにより、燃料タンク1が車体(車体フレーム101)に固定される。このような構成によれば、比較的簡単な構造で燃料タンク1を車体に適切に固定できるという利点がある。
具体的に、本実施形態では、面積の大きいメインプレート22と面積の小さいサブプレート23とが厚み方向に重ね合わせて接合されることにより、板厚の異なる第1接合部R1及び第2接合部R2を含むプレート部材21が構築される(図6参照)。そして、板厚の大きい第2接合部R2にボス部材25が接合されるとともに、板厚の小さい第1接合部R1がタンクインナパネル12の前側固定部16に接合される。これにより、ボス部材25をプレート部材21に強固に接合できるとともに、プレート部材21とタンクインナパネル12との接合品質を良好に確保することができる。
より詳しくは、メインプレート22とサブプレート23との重複領域である第2接合部R2は、両プレート22,23の合計板厚(図5のt1+t2)に相当する板厚を有する。この第2接合部R2の板厚は、両プレート22,23が重複しない第1接合部R1の板厚(つまりメインプレート22単体の板厚t1)よりも大きい。したがって、このような板厚の大きい第2接合部R2にボス部材25を接合することにより、プレート部材21からボス部材25を突出させつつ当該ボス部材25をプレート部材21に強固に接合することができる。
一方、タンクインナパネル12には板厚の小さい第1接合部R1が接合されるので、両者の板厚差を抑制することができ、接合品質を良好に確保することができる。すなわち、タンクインナパネル12の板厚t3は、一般に、燃料タンク1の軽量化等の観点から比較的小さい値に制限される。このような薄いタンクインナパネル12にプレート部材21をスポット溶接により接合する場合に、両者の板厚差が大きいと、溶け込み不良などの不具合が生じ易くなり、接合不良が起きる可能性が高くなる。これに対し、本実施形態では、相対的に板厚の小さい第1接合部R1がタンクインナパネル12にスポット溶接により接合されるので、前記板厚差が小さくなる結果、溶け込み不良などの不具合が生じ難くなり、接合品質を良好に確保することができる。
このように、本実施形態では、ボス部材25とプレート部材21との接合、及びプレート部材21とタンクインナパネル12との接合を共に良好に行い得るので、ボス部材25をプレート部材21を介してタンクインナパネル12にしっかり固定することができる。したがって、当該ボス部材25をブラケット40を介してメインフレーム111に連結することにより、燃料タンク1の前部をメインフレーム111に適切に固定することができ、燃料タンク1の支持剛性を高めることができる。
また、プレート部材21(第1接合部R1)とタンクインナパネル12との接合品質を確保し易い本実施形態では、接合強度を補うためのロウ付けなどの後処理を行うことが不要になる。これにより、燃料タンク1の前部を車体に固定する構造を簡素化しつつ、燃料タンク1の支持剛性を高めることができる。
また、本実施形態では、サブプレート23の板厚t2がメインプレート22の板厚t1よりも大きくされる。このような構成によれば、メインプレート22とサブプレート23との重複領域からなる第2接合部R2の板厚(t1+t2)を十分に大きくすることができ、当該第2接合部R2にボス部材25を十分な強度で接合することができる。
また、本実施形態では、サブプレート23に形成された接合孔h2にボス部材25の上端部が挿入された状態で、当該上端部と接合孔h2の周縁とが溶接される。また、ボス部材25を挿通可能な挿通孔h1がメインプレート22に形成される。このような構成によれば、ボス部材25をサブプレート23に強固に接合しつつ、ボス部材25を挿通孔h1を通じてメインプレート22の下方に突出させることができる。
特に、サブプレート23に接合孔h2を設ける本実施形態では、ボス部材25とサブプレート23との溶接により生じる溶接ビードW(図4及び図5参照)が、サブプレート23とメインプレート22との接合時に邪魔にならないので、メインプレート22とサブプレート23との接合品質を高めることができる。すなわち、仮に孔のないサブプレート23の下面にボス部材25の上端部を突合せ溶接した場合は、当該溶接により生じる溶接ビードがメインプレート22とサブプレート23との間に介在することになり、メインプレート22とサブプレート23との間に隙間が生じる可能性がある。これに対し、本実施形態では、ボス部材25の上端と接合孔h2の周縁とが溶接されるので、溶接ビードWがサブプレート23の上面に形成される。これにより、メインプレート22とサブプレート23との間に溶接ビードが介在する前記のような事態を回避して、メインプレート22とサブプレート23とを十分に密着させつつ接合することができる。
また、本実施形態では、タンクインナパネル12の前側固定部16におけるサブプレート23と対向する領域に、上方に凹んだ凹部16bが形成される。すなわち、前側固定部16は、メインプレート22の周縁部(第1接合部R1)に接合される矩形枠状の凸部16aと、凸部16aの内側であってサブプレート23と底面視で重複する(対向する)領域に形成された凹部16bを有する。このような構成によれば、メインプレート22が凸部16aに接合された状態でサブプレート23が前側固定部16と干渉しないように、サブプレート23が収まる空間を凹部16bにより形成することができる。これにより、プレート部材21と前側固定部16との接合品質をより高めることができる。
また、本実施形態では、ボス部材25に非貫通のネジ孔25aが形成されるとともに、当該ネジ孔25aに螺合される第1締結部材51を介してブラケット40の第1固定部41がボス部材25に締結される。このような構成によれば、第1締結部材51をボス部材25のネジ孔25aに螺合させる作業時に、タンクインナパネル12が人為ミスにより損傷するのを防止することができる。仮に、ネジ孔25aがボス部材25を貫通していたとすると、例えば本来よりも軸長が長い締結部材が誤って使用された場合に、当該締結部材がボス部材25を貫通してタンクインナパネル12(凹部16bの壁面)まで到達し、タンクインナパネル12が損傷するおそれがある。これに対し、ネジ孔25aが非貫通とされた本実施形態では、サイズ違いの締結部材がボス部材25を貫通する心配がない。このため、前記のようなタンクインナパネル12の損傷を回避でき、燃料タンク1の品質を良好に確保することができる。
また、本実施形態では、ブラケット40の第1固定部41に形成された締結孔41aにゴムブッシュ52が装着される。ゴムブッシュ52は、ボス部材25を取り囲んだ状態で、ボス部材25に螺合される第1締結部材51により圧縮されて固定される。このような構成によれば、メインフレーム111(車体)からブラケット40を介して燃料タンク1に伝達される振動をゴムブッシュ52により吸収することができ、燃料タンク1の振動を抑制することができる。このことは、自動二輪車の乗り心地の向上に貢献する。
また、本実施形態では、メインプレート22の左右の側辺部に突片24が備えられ、当該突片24に吊り孔24aが形成される。このような構成によれば、車体への固定のために燃料タンク1に接合される部品を利用して、燃料タンク1の塗装時に当該燃料タンク1を吊り下げることができる。特に、本実施形態では、タンクインナパネル12の前側固定部16に接合されるメインプレート22に吊り孔24aが形成されるので、燃料タンク1の塗装時に、燃料タンク1の前部が上になる姿勢で燃料タンク1を吊り下げることができる。このことは、燃料供給孔12bを含む燃料タンク1の後部が下になる姿勢で燃料タンク1が吊り下げられることを意味する。このような姿勢で燃料タンク1が吊り下げられていれば、燃料タンク1の内部(貯留空間S)に浸入した余計な液体を燃料供給孔12bから容易に吸い出すことができる。すなわち、燃料タンク1の塗装時、燃料タンク1の内部には、脱脂等の前処理において使用される溶剤等の液体が浸入していることがある。このような場合でも、メインプレート22に吊り孔24aが形成される本実施形態によれば、燃料供給孔12bを含む燃料タンク1の後部が下になる姿勢で燃料タンク1を吊り下げることができるので、例えば当該燃料供給孔12bから燃料タンク1の内部にサクションホースを導入することにより、前記のような液体を容易に吸い出すことができる。
[変形例]
前記実施形態では、メインプレート22の板厚t1と、サブプレート23の板厚t2と、タンクインナパネル12(燃料タンク1)の板厚t3との間に、t2>t1>t3の関係が成立するものとしたが、板厚の関係はこれに限られない。例えば、メインプレート22及びサブプレート23の各板厚t1,t2を同一に設定してもよいし、メインプレート22の板厚t1をサブプレート23の板厚t2より大きくしてもよい。また、メインプレート22及びサブプレート23の少なくとも一方の板厚(t1又はt2)を、タンクインナパネル12の板厚t3以下にしてもよい。
前記実施形態では、プレート部材21として、面積の異なる2枚のプレート(メインプレート22及びサブプレート23)を厚み方向に重ね合わせ接合したものを用いたが、プレート部材21は、場所によって厚みが異なる単一のプレートから構成されていてもよい。すなわち、プレート部材21は、燃料タンク1に接合される部分(第1接合部R1)の板厚が小さく、かつボス部材25が接合される部分(第2接合部R2)の板厚が大きくなるように形成されたプレートであればよく、複数のプレートの組合せであるか単一のプレートであるかは問わない。
前記実施形態では、プレート部材21を構成するメインプレート22及びサブプレート23の各板厚t1,t2を、タンクインナパネル12(燃料タンク1)の板厚t3よりも大きく設定したが、板厚の関係はこれに限られない。ただし、少なくともプレート部材21は、その第2接合部R2の板厚(前記実施形態ではt1+t2)がタンクインナパネル12の板厚t3よりも大きくなるように形成されるべきである。このようにすれば、燃料タンク1の成形性を向上させつつ、プレート部材21の第1接合部R1を燃料タンク1に良好に接合することができる。すなわち、タンクインナパネル12の板厚を少なくとも第2接合部R2の板厚よりも小さくすることにより、タンクインナパネル12をプレス成形等により成形する際の成形性を向上させることができ、燃料タンク1の製造効率を高めることができる。一方、タンクインナパネル12の板厚が第2接合部R2の板厚よりも小さいことは、タンクインナパネル12と第1接合部R1との板厚差が小さく抑えられることを意味する。これにより、タンクインナパネル12と第1接合部R1との溶接時に溶け込み不良等の不具合が生じ難くなるので、接合品質を良好に確保することができる。
前記実施形態では、プレート部材21に左右一対の(2つの)ボス部材25を接合した例について説明したが、ボス部材の数は2つに限られず、1つ又は3つ以上でもよい。
前記実施形態では、プレート部材21(メインプレート22)が接合される凸部16aと当該凸部16aに対し凹んだ凹部16bとを含む前側固定部16をタンクインナパネル12に形成したが、前側固定部16の形状はこれに限られない。例えば、前側固定部16との対向面が平坦なプレート部材を用いることも可能であり、このようなケースでは前側固定部16を平坦に形成し得る。また、前記実施形態のようにメインプレート22とサブプレート23とを含むプレート部材21を用いる場合でも、前側固定部16は、少なくともボス部材25の上端部とサブプレート23の接合孔h2の周縁との接合部位(溶接ビードW)に対し隙間が生じるように凹んだ凹部を有していればよい。これにより、少なくとも溶接ビードWとタンクインナパネル12との干渉を回避することができる。
前記実施形態では、本開示の燃料タンク固定構造を燃料タンク1の前部に適用した例について説明したが、本開示の燃料タンク固定構造は、燃料タンクの前部以外の箇所を車体に固定する場合にも適用可能である。
前記実施形態では、鞍乗型車両の一種である自動二輪車に本開示の燃料タンク固定構造を適用した例について説明したが、本開示の燃料タンク固定構造は、三輪車や四輪バギー等の他の鞍乗型車両にも適用可能である。
[まとめ]
前記実施形態及びその変形例をまとめると以下のとおりである。
燃料タンク固定構造は、鞍乗型車両の車体に燃料タンクを固定する構造であって、前記燃料タンクに接合されるプレート部材と、前記プレート部材から面外方向に突出する状態で当該プレート部材に接合されるボス部材と、前記ボス部材を前記車体に連結する連結部材とを備える。前記プレート部材は、前記燃料タンクとの接合部である第1接合部と、前記ボス部材との接合部である第2接合部とを含み、かつ前記第2接合部の板厚が前記第1接合部の板厚よりも大きくなるように形成される。
この態様では、板厚の大きいプレート部材の第2接合部にボス部材が接合されるので、プレート部材からボス部材を突出させつつ当該ボス部材をプレート部材に強固に接合することができる。一方、板厚の小さいプレート部材の第1接合部が燃料タンクに接合されるので、両者の接合品質を良好に確保することができる。すなわち、燃料タンクの板厚は、一般に、軽量化等の観点から比較的小さい値に制限される。このような板厚の小さい燃料タンクにプレート部材をスポット溶接等により接合する場合に、両者の板厚差が大きいと、溶け込み不良などの不具合が生じ易くなり、接合不良が起きる可能性が高くなる。これに対し、本態様では、相対的に板厚の小さい第1接合部が燃料タンクに接合されるので、前記板厚差を抑制することができ、接合品質を良好に確保することができる。
このように、本態様では、ボス部材とプレート部材との接合、及びプレート部材と燃料タンクとの接合を共に良好に行い得るので、ボス部材をプレート部材を介して燃料タンクにしっかり固定することができる。したがって、当該ボス部材を連結部材を介して車体に連結することにより、燃料タンクを車体に適切に固定することができ、燃料タンクの支持剛性を高めることができる。
また、プレート部材(第1接合部)と燃料タンクとの接合品質を確保し易い本態様では、接合強度を補うためのロウ付けなどの後処理を行うことが不要になる。これにより、燃料タンクを車体に固定する構造を簡素化しつつ、燃料タンクの支持剛性を高めることができる。
好ましくは、前記燃料タンクの板厚は、前記第2接合部の板厚よりも小さい。
この態様では、燃料タンクの成形性を向上させつつ、プレート部材の第1接合部を燃料タンクに良好に接合することができる。すなわち、燃料タンクの板厚を少なくともプレート部材の第2接合部の板厚よりも小さくすることにより、燃料タンクをプレス成形等により成形する際の成形性を向上させることができ、燃料タンクの製造効率を高めることができる。一方、燃料タンクの板厚が第2接合部の板厚よりも小さいことは、燃料タンクと第1接合部との板厚差が小さく抑えられることを意味する。これにより、燃料タンクと第1接合部との溶接時に溶け込み不良等の不具合が生じ難くなるので、接合品質を良好に確保することができる。
好ましくは、前記プレート部材は、メインプレートと、当該メインプレートと厚み方向に重なる状態で接合されかつ当該メインプレートよりも面積の小さいサブプレートとを含む。この場合、前記プレート部材における前記メインプレートと前記サブプレートとの重複領域が前記第2接合部であり、かつ前記メインプレートにおける前記サブプレートとの非重複領域が前記第1接合部である。
この態様では、面積の小さいサブプレートを面積の大きいメインプレートに重ねて接合することにより、場所によって板厚が異なる(第1接合部及び第2接合部を含む)前記プレート部材を容易に成形することができる。
好ましくは、前記サブプレートの板厚は前記メインプレートの板厚よりも大きい。
この態様では、メインプレートとサブプレートとの重複領域からなる第2接合部の板厚を十分に大きくすることができ、当該第2接合部にボス部材を十分な強度で接合することができる。
好ましくは、前記サブプレートは、前記ボス部材における前記燃料タンク側の端部を受け入れ可能な接合孔を有する。前記メインプレートは、前記接合孔と重なる位置に、前記ボス部材を挿通可能な挿通孔を有する。
この態様では、ボス部材をサブプレートに強固に接合しつつ、ボス部材を挿通孔を通じてメインプレートから突出させることができる。
特に、サブプレートに接合孔を設ける本態様では、例えばボス部材の端部を接合孔の周縁と溶接する際に生じる溶接ビードが、サブプレートとメインプレートとの接合時に邪魔にならない。これにより、メインプレートとサブプレートとを十分に密着させつつ接合することができ、両者の接合品質を高めることができる。
好ましくは、前記燃料タンクは、前記ボス部材の前記端部と前記接合孔の周縁との接合部位に対し隙間が生じるように凹んだ凹部を有する。
この態様では、前記ボス部材の端部と前記接合孔の周縁との接合部位(例えば溶接ビード)が燃料タンクに干渉するのを回避することができる。
より具体的に、前記燃料タンクは、前記メインプレートに接合される被接合部と、前記サブプレートと対向する領域に形成されかつ前記被接合部に対し凹んだ前記凹部を有することが好ましい。
この態様では、凹部に対し突出した被接合部にメインプレートを良好に接合することができる。また、メインプレートが接合された状態でサブプレートが燃料タンクと干渉しないように、サブプレートが収まる空間を凹部により形成することができる。
好ましくは、前記燃料タンク固定構造は、前記連結部材を前記ボス部材に締結する締結部材をさらに備える。前記ボス部材は、前記締結部材が螺合されるネジ孔と、当該ネジ孔の前記燃料タンク側の端部を塞ぐ閉塞部とを有する。
この態様では、締結部材をボス部材のネジ孔に螺合させる作業時に、燃料タンクが人為ミスにより損傷するのを防止することができる。仮に、ネジ孔がボス部材を貫通していたとすると、例えば本来よりも軸長が長い締結部材が誤って使用された場合に、当該締結部材がボス部材を貫通して燃料タンクの壁面まで到達し、燃料タンクが損傷するおそれがある。これに対し、ネジ孔が非貫通とされた本態様では、サイズ違いの締結部材がボス部材を貫通する心配がない。このため、前記のような燃料タンクの損傷を回避でき、燃料タンクの品質を良好に確保することができる。