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JP7635678B2 - シリコン単結晶の製造方法およびシリコンウェーハの製造方法 - Google Patents
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シリコン単結晶の製造方法およびシリコンウェーハの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、シリコン単結晶の製造方法およびシリコンウェーハの製造方法に関する。
シリコン単結晶の製造には、チョクラルスキー法(Czochralski method、以下「CZ法」と略す。)と呼ばれる製造方法が用いられる。このCZ法を用いた製造方法において、外部から水平磁場を印加した場合、シリコン融液は、磁場印加方向に対して右渦、左渦のどちらかの状態が初期に形成される。その渦の向きはランダムであり、渦の方向と炉内環境によって結晶に取り込まれる酸素濃度がばらついてしまう。安定した酸素濃度を有するシリコン単結晶を得るためには、引き上げ中のシリコン融液の対流パターンを制御することが重要となる。このため、ルツボ内のシリコン融液の対流パターンを制御する手法について様々な検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたシリコン融液の対流パターン制御方法では、ルツボを鉛直上方から見たときに、水平磁場の中心の磁力線と平行であり、かつ、シリコン融液の表面の中心を通る仮想線を設定し、この仮想線を挟んだ両側の加熱能力が異なる加熱部を用いてシリコン融液を加熱し、水平磁場を印加することで、磁場直交断面における対流の方向を固定している。
国際公開第2019/167989号
特許文献1に記載されたシリコン融液の対流パターン制御方法を採用した場合でも、実際にシリコン単結晶を生産する際には、炉内の部材の経時劣化などによって炉内環境が変化するため、安定的に対流を制御できない可能性がある。このため、安定した酸素濃度を有するシリコン単結晶を製造できなくなり、シリコン単結晶から切り出したシリコンウェーハの品質も低下する可能性がある。
本発明は、シリコン融液の対流の向きを安定的に制御することができ、安定した酸素濃度を有するシリコン単結晶およびシリコンウェーハを製造可能なシリコン単結晶の製造方法およびシリコンウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、加熱装置を用いて加熱した石英ルツボ内のシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法であって、前記加熱装置は、前記石英ルツボの周囲に配置された発熱部と、前記発熱部に電力を供給する電力供給部とを備え、前記電力供給部は、前記石英ルツボを鉛直上方から見て、前記石英ルツボの中心軸を通る水平磁場の中心磁力線で前記加熱装置を第1の加熱領域および第2の加熱領域に分割した際に、前記第1の加熱領域に配置される第1電力供給部と、前記第2の加熱領域に配置される第2電力供給部とを備え、前記第1電力供給部の抵抗値である第1抵抗値、および、前記第2電力供給部の抵抗値である第2抵抗値を設定する抵抗値設定工程と、無磁場状態において、前記石英ルツボ内の前記シリコン融液を加熱するシリコン融液加熱工程と、前記石英ルツボ内の前記シリコン融液に対して水平磁場を印加する水平磁場印加工程と、前記シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる引き上げ工程と、を有し、前記抵抗値設定工程は、前記第1抵抗値および前記第2抵抗値を測定する測定工程と、前記第1抵抗値および前記第2抵抗値のうち、高い抵抗値を低い抵抗値で除算した値である抵抗比率が、予め設定された判定値以上であるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程で前記抵抗比率が前記判定値未満であると判定した場合に、前記第1抵抗値および前記第2抵抗値の少なくとも一方を調整する調整工程と、を有し、前記判定工程で前記抵抗比率が前記判定値未満と判定した場合は、前記調整工程および前記測定工程の実行後、前記判定工程を再度実行し、前記判定工程で前記抵抗比率が前記判定値以上と判定した場合は、前記抵抗値設定工程を終了することを特徴とする。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記抵抗値設定工程は、前記引き上げ工程を所定回数実行するごとに行うことが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記所定回数は、1回以上、50回以下であることが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記判定値は1.2以上であることが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記測定工程は、前記発熱部および前記電力供給部の合成抵抗を測定する第1測定工程と、前記発熱部の合成抵抗を測定する第2測定工程と、前記測定された各抵抗値に基づいて前記第1抵抗値と、前記第2抵抗値とを求める抵抗値算出工程と、を備えることが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記各電力供給部は、前記発熱部と一体に形成される端子と、一端が前記端子と接続され、他端が電源に接続される電極とを有し、前記調整工程は、前記端子および前記電極間に導電性シートを配置して電力供給部の抵抗値を小さくする抵抗値低下工程を含むことが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記各電力供給部は、前記発熱部と接続される端子と、一端が前記端子と接続され、他端が電源に接続される電極とを有し、前記調整工程は、前記端子および前記電極の接触面を粗くして電力供給部の抵抗値を大きくする抵抗値増加工程を含むことが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記各電力供給部は、前記発熱部と接続される端子と、一端が前記端子と接続され、他端が電源に接続される電極とを有し、前記端子と前記電極との間には、板状の電気抵抗調整部材が介挿され、前記調整工程は、第1電力供給部の前記端子および前記電極間に介挿される前記電気抵抗調整部材の枚数または厚さ寸法と、前記第2電力供給部の前記端子および前記電極間に介挿される前記電気抵抗調整部材の枚数または厚さ寸法と、を異ならせることにより、抵抗値の調整を行うことが好ましい。
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、シリコン単結晶の製造方法を用いて引き上げられたシリコン単結晶から切り出してシリコンウェーハを製造することを特徴とする。
本発明によれば、シリコン融液の対流の向きを安定的に制御することができ、安定した酸素濃度を有するシリコン単結晶およびシリコンウェーハを製造することができる。
本発明の実施形態に係るシリコン単結晶製造装置の概略構成を示す縦断面図である。 本発明の実施形態に係る加熱装置の要部を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る加熱装置および磁場印加部を示す平面模式図である。 本発明の実施形態に係る加熱装置の構成および水平磁場の印加状態を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る温度計測部の配置状態を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る端子と電極との接続構造を説明する概略図であり、(A)は一部を切り欠いた正面図、(B)は導電性シートの平面図である。 本発明の実施形態に係る加熱装置の等価回路図である。 本発明の実施形態に係るシリコン単結晶製造装置の制御装置を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るシリコン単結晶の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。 図9における抵抗値設定工程を示すフローチャートである。 図10における測定工程を示すフローチャートである。 図10における調整工程を示すフローチャートである。 図9におけるシリコン融液加熱工程を示すフローチャートである。
[シリコン単結晶製造装置]
図1は、本発明の実施形態に係るシリコン単結晶の製造方法に適用できるシリコン単結晶製造装置1の概略構成を示す縦断面図である。
シリコン単結晶製造装置1は、CZ法によりシリコン単結晶SMを引き上げる装置であり、外郭を構成するチャンバ2と、チャンバ2の中心部に配置されるルツボ3と、ルツボ3の周囲に配置される加熱装置4とを備える。
ルツボ3は、外側の黒鉛ルツボ3Aと、内側の石英ルツボ3Bとから構成される二重構造とされ、石英ルツボ3B内にはシリコン融液M(原料融液)が収容される。黒鉛ルツボ3Aおよび石英ルツボ3Bは、有底円筒形状の容器であり、鉛直上方から見る平面視で円形形状とされている。ルツボ3は、回転および昇降が可能な支持軸5の上端部に固定されている。
加熱装置4は、図2に示すように、略円筒状に形成されてルツボ3の周囲に配置されるグラファイトヒーターであり、詳細は後述する。図1に示すように、加熱装置4の外側には、チャンバ2の内面に沿って断熱材6が設けられている。
ルツボ3の上方には、支持軸5と同軸上に引き上げ軸7が配置されている。引き上げ軸7は、ワイヤなどで形成され、支持軸5の回転方向と逆方向または同一方向に所定の速度で回転する。この引き上げ軸7の下端には種結晶SCが取り付けられている。
チャンバ2内には、ルツボ3内のシリコン融液Mの上方で育成中のシリコン単結晶SMを囲む筒状の熱遮蔽体8が配置されている。
熱遮蔽体8は、育成中のシリコン単結晶SMに対して、ルツボ3内のシリコン融液Mからの輻射熱や、加熱装置4およびルツボ3の側壁からの輻射熱を遮断するとともに、結晶成長界面である固液界面の近傍に対しては、外部への熱の拡散を抑制し、シリコン単結晶SMの中心部および外周部の引き上げ軸7方向の温度勾配を制御する役割を担う。
チャンバ2の上部には、アルゴンガスなどの不活性ガスをチャンバ2内に導入するガス導入口9が設けられている。チャンバ2の下部には、図示しない真空ポンプの駆動により、チャンバ2内の気体を吸引して排出する排気口10が設けられている。
ガス導入口9からチャンバ2内に導入された不活性ガスは、育成中のシリコン単結晶SMと熱遮蔽体8との間を下降し、熱遮蔽体8の下端とシリコン融液Mの液面との隙間を経た後、熱遮蔽体8の外側、さらにルツボ3の外側に向けて流れ、その後にルツボ3の外側を下降し、排気口10から排出される。
シリコン単結晶製造装置1は、図3に示す磁場印加部14と、図1および図5に示す温度計測部15とを備える。
磁場印加部14は、それぞれ電磁コイルで構成された第1の磁性体14Aおよび第2の磁性体14Bを備える。第1の磁性体14Aおよび第2の磁性体14Bは、チャンバ2の外側においてルツボ3を挟んで対向するように設けられている。図3の例では、磁場印加部14は、鉛直方向上方から見た平面視で、コイル中心軸を通る磁場中心線(水平磁場の中心磁力線)が、円筒状の発熱部30およびルツボ3の中心軸CAと交差し、第2の磁性体14Bから第1の磁性体14Aに向かう方向(図3における矢印MLで示される上方向であり、図1における紙面手前から奥に向かう方向)となるように、水平磁場を印加している。ただし、磁場中心線はシリコン融液Mの融液面上のルツボ3の中心軸CAの交点CSを通るとは限らない。すなわち、磁場中心線の高さ位置については特に限定されず、シリコン単結晶SMの品質に合わせて、シリコン融液Mの内部にしてもよいし外部にしてもよい。
なお、図5に示すように、ルツボ3の中心軸をCA、ルツボ3内のシリコン融液Mの表面をS、表面Sの中心をCSと定義する。そして、図3に示すように、ルツボ3および加熱装置4を鉛直上方から見る平面視で、ルツボ3の中心軸CAと交差する磁場中心線に沿った仮想線をVLと定義する。したがって、仮想線VLは、ルツボ3の中心軸CAを通り、第2の磁性体14Bから第1の磁性体14Aに向かう矢印MLに沿った線である。
温度計測部15は、図1、図4および図5に示すように、第1の計測点P1および第2の計測点P2の温度を計測する。第1の計測点P1および第2の計測点P2の径方向の位置は、図1に示すように、育成予定のシリコン単結晶SMの外周面と、熱遮蔽体8の開口内周面との間であり、特にその中間位置が好ましい。なお、本実施形態では、第1の計測点P1および第2の計測点P2は、表面Sの中心CSに対して点対称の位置に設定されている。後述するように、計測点P1、P2の温度を測定することで、シリコン融液Mの対流の向き等を確認できる。例えば、加熱装置4によるシリコン融液Mの加熱によって、シリコン融液Mの対流の向きが図4において右回り、つまり右渦に固定された場合は、第1の計測点P1の測定温度は第2の計測点P2の測定温度よりも高くなる。また、加熱装置4によるシリコン融液Mの加熱によって、シリコン融液Mの対流の向きが左回り、つまり左渦に固定された場合は、第1の計測点P1の測定温度は第2の計測点P2の測定温度よりも低くなる。なお、図4は、上昇流がルツボ3の左側に固定され、下降流がルツボ3の右側に固定されて、シリコン融液Mの対流の向きが右回り、つまり右渦に固定された例である。
温度計測部15は、図1,5に示すように、一対の反射部15Aと、一対の放射温度計15Bとを備える。
反射部15Aは、チャンバ2内部に設置されている。反射部15Aは、図5に示すように、その下端からシリコン融液Mの表面Sまでの距離(高さ)Kが600mm以上5000mm以下となるように設置されていることが好ましい。また、反射部15Aは、反射面15Cと水平面Fとのなす角度θfが40°以上50°以下となるように設置されていることが好ましい。
以上説明した構成によって、第1の計測点P1および第2の計測点P2から、鉛直方向の上方向に出射する輻射光Lの反射部15Aに対する入射角θ1および反射角θ2の和が、80°以上100°以下となる。反射部15Aとしては、耐熱性の観点から、一面を鏡面研磨して反射面15Cとしたシリコンミラーを用いることが好ましい。
放射温度計15Bは、チャンバ2の外部に設置されている。放射温度計15Bは、チャンバ2に設けられた石英窓2A(図1参照)を介して入射される輻射光Lを受光して、第1の計測点P1および第2の計測点P2の温度を非接触で計測する。
[加熱装置]
加熱装置4は、図2および図3に示すように、発熱部30と、前記発熱部30に電力を供給する2n(nは2以上の整数)個、本実施形態では、4個の電力供給部20A、20B、20C、20Dとを備える。
発熱部30は、円筒状に形成されたグラファイトヒーターであり、円周方向の全体に亘って均一な厚さで形成され、上端から下方向へ伸びる上スリット31および下端から上方向へ伸びる下スリット32が円周方向に複数形成されている。各上スリット31および下スリット32は、スリットの幅寸法が互いに等しく、スリットの上下方向に沿った切り込み深さも互いに等しい。また、上スリット31と下スリット32との間隔も発熱部30の全周に亘って等しい。
発熱部30は、図3に示すように、発熱部30の中心軸CAを通る仮想線VLで平面視において仮想的に左右に2分割される。このため、加熱装置4は、図3において、仮想線VLの左側に位置する第1の加熱領域4Aと、仮想線VLの右側に位置する第2の加熱領域4Bとを備える。
第1の加熱領域4Aおよび第2の加熱領域4Bは、上スリット31および下スリット32の総数が等しい。図2および図3の例では、第1の加熱領域4Aには、4本の上スリット31と、6本の下スリット32が形成されており、上スリット31および下スリット32の総数は、10本である。また、第2の加熱領域4Bには、4本の上スリット31と、6本の下スリット32が形成されており、上スリット31および下スリット32の総数は、10本である。なお、仮想線VL上に重なる2本の下スリット32は、第1の加熱領域4A、第2の加熱領域4Bに跨がるため、各加熱領域4A,4Bに含まれる本数としては0.5本とカウントした。そして、加熱領域4A,4Bに跨がる下スリット32は2本あるため、各加熱領域4A,4Bには、加熱領域4A,4Bに跨がる下スリット32が、それぞれ0.5本×2=1本ずつ配置されている。
電力供給部20A~20Dは、図2に示すように、4つの端子21A、21B、21C、21Dと、4本の電極22A、22B、22C、22Dと、4つのナット23A~23Dとを備えている。電力供給部20A~20Dは、図3にも示すように、発熱部30の周方向に沿って90度間隔で配置されており、本実施形態では、第1の加熱領域4Aに配置される電力供給部20A、20Bによって第1電力供給部が構成され、第2の加熱領域4Bに配置される電力供給部20C、20Dによって第2電力供給部が構成される。
端子21A~21Dは、発熱部30において2本の下スリット32で区画される部分の下端から下方に延長され、発熱部30と一体に形成されている。また、端子21A~21Dは、下端から内側に向かって直角に屈曲された接続部211A~211Dを備えており、接続部211A~211Dには貫通孔212A~212Dが形成されている。
したがって、本実施形態の加熱装置4は、ヒーターエレメントである円筒状の発熱部30と、ヒーター足部である端子21A~21Dとが一体成形されたグラファイトヒーターを用いて構成されている。
発熱部30は、上スリット31および下スリット32が形成されることにより、ジグザグ状の第1蛇行部33A~第4蛇行部33Dに区画され、これらの第1蛇行部33A~第4蛇行部33Dによって4つのヒーターエレメントが構成される。
すなわち、端子21Aと端子21Bとの間には、2本の上スリット31と、3本の下スリット32とが交互に形成されて第1蛇行部33Aが形成されている。同様に、端子21Bと端子21Cとの間には、2本の上スリット31と、3本の下スリット32とが交互に形成されて第2蛇行部33Bが形成されている。
端子21Cと端子21Dとの間には、2本の上スリット31と、3本の下スリット32とが交互に形成されて第3蛇行部33Cが形成されている。端子21Dと端子21Aとの間には、2本の上スリット31と、3本の下スリット32とが交互に形成されて第4蛇行部33Dが形成されている。
電極22A~22Dは、カーボン製の棒状の電極であり、一端は端子21A~21Dに接続され、他端は電源に接続される。
端子21Aと、電極22Aとの接続構造について、図6を参照して説明する。
図6(A)に示すように、電極22Aは、本体部221Aと、本体部221Aの上面222Aから上方に突設された挿通部223Aとを備えて構成されている。本体部221Aは、円柱状に形成され、上端側は拡径されている。挿通部223Aは、円柱状に形成され、その直径は本体部221Aよりも小さくされている。挿通部223Aの外周には雄ねじ224Aが形成されている。図示は省略するが、電極22B~22Dも電極22Aと同様に形成されている。
電極22Aの挿通部223Aは、端子21Aの接続部211Aに形成された貫通孔212Aに挿通され、接続部211Aの上面213Aから突出した雄ねじ224Aと、カーボン製のナット23Aとを螺合することで、端子21Aと電極22Aの上端とが接続されている。
端子21Aおよび電極22Aを接続した場合の電力供給部20Aの電気抵抗は、端子21Aおよび電極22Aの接触抵抗によって増減する。例えば、電極22Aの上面222Aと接続部211Aの下面214Aとを直接接触させた場合、接触面の面粗さによって接触面積が小さくなると接触抵抗は増加する。一方、図6(A)に示すように、電極22Aの上面222Aと接続部211Aの下面214Aとの間に導電性シート24を配置すると、導電性シート24が下面214Aおよび上面222Aに密着して接触面積が大きくなるため、導電性シート24を配置しない場合に比べて、端子21Aおよび電極22A間の接触抵抗は低下する。導電性シート24は、図6(B)に示すように、挿通部223Aが挿入される孔を有する円板状のシート材であり、例えば、炭素系の繊維素材で形成されている。
なお、導電性シート24は、接続部211Aの下面214Aおよび電極22Aの上面222A間に加えて、接続部211Aの上面213Aおよびナット23A間に配置してもよい。一方、導電性シート24を接続部211Aの下面214A側または上面213A側のいずれか一方に配置する場合は、図6(A)に示すように、接続部211Aの下面214Aと電極22Aの上面222Aとの間の導電性シート24を配置することが好ましい。電源に接続される電極22Aと、発熱部30に一体に形成される端子21Aとの間に導電性シート24を配置したほうが、接触抵抗を効果的に低下できるためである。
各電極22B~22Dと対応する端子21B~21Dとの接続構造は、前記電極22Aと端子21Aとの接続構造と同様である。なお、導電性シート24は、各電極22B~22Dおよび端子21B~21Dの接触抵抗を低下させる必要がある場合に配置され、接触抵抗を低下させる必要が無い場合は配置されない。
図7は、加熱装置4の等価回路図である。図7において、Vは加熱装置4に印加される電圧値である。RA、RB、RCおよびRDは、それぞれ第1蛇行部33A~第4蛇行部33Dの抵抗値である。Rαは端子21Aと電極22Aとの接触抵抗値である。同様に、Rβは端子21Bと電極22Bとの接触抵抗値、Rγは端子21Cと電極22Cとの接触抵抗値、Rδは端子21Dと電極22Dとの接触抵抗値である。図7において、矢印MLは、水平磁場の印加方向を示す。
発熱部30、端子21A~21Dおよび電極22A~22Dは、グラファイトから構成されている。一般にグラファイトは延性が小さいため、各端子21A~21Dと対応する電極22A~22Dとの接触部分には接触抵抗が存在する。図7では各電極22A~22Dの抵抗値は無視している。これは、一般に電極22A~22Dは短く、また各電極22A~22Dと後述する電圧印加部43(図8参照)との間は抵抗値が極めて小さい通電ケーブルを用いるからである。
電力供給部20A~20Dの抵抗分布を不均一にすることで、磁場印加プロセスのシリコン融液の対流挙動を制御でき、酸素濃度のばらつきが少ない高品質のシリコン単結晶を育成することができる。すなわち、発熱部30つまりグラファイトヒーターエレメント部の各抵抗はヒーターの加工精度(厚みや長さ)に大きく依存するもので、抵抗ばらつきは1%以下である。また、発熱部30の各抵抗RA、RB、RC、RDは、電力供給部20A~20Dの接触抵抗Rα、β、γ、Rδに比べて大幅に大きいため、接触抵抗Rα、β、γ、Rδを不均一に設定しても、発熱部30の各抵抗RA、RB、RC、RDを流れる電流値は殆ど変わらない。そのため、発熱部30の発熱分布は、第1の加熱領域4Aおよび第2の加熱領域4Bにおいて殆ど同じであり、シリコン融液の対流挙動に与える影響は無視できる。
したがって、電力供給部20A~20Dの抵抗分布、より具体的には、第1の加熱領域4Aに配置される第1電力供給部(電力供給部20A、20B)の接触抵抗Rα、βの和である第1抵抗値R1と、第2の加熱領域4Bに配置される第2電力供給部(電力供給部20C、20D)の接触抵抗Rγ、Rδの和である第2抵抗値R2を不均一にすることで、第1の加熱領域4Aおよび第2の加熱領域4Bにおいて接触抵抗Rα、β、γ、Rδによる発熱分布をアンバランスにでき、グラファイトヒーターの発熱分布、すなわちシリコン融液の対流の向きを固定することができる。例えば、第1抵抗値R1を第2抵抗値R2よりも大きくすると、第1の加熱領域4Aの発熱量が第2の加熱領域4Bに比べて大きくなり、図1においてルツボ3の左側がより加熱され、左側の上昇流が優勢となる。結果、シリコン融液の対流は水平磁場の印加方向に対し時計方向に回ることになり、右渦が形成される。一方、第2抵抗値R2が第1抵抗値R1よりも大きい場合は、図1においてルツボ3の右側の上昇流が優勢となり、左渦が形成される。
すなわち、第1の加熱領域4A、第2の加熱領域4Bにおいて、発熱部30の発熱分布は殆ど同じであるため、電力供給部の第1抵抗値R1、第2抵抗値R2の大小を制御することで発熱分布のアンバランスを制御でき、狙いとする渦向きの制御が可能となる。
また、チャンバ2内の環境は、使用しているカーボン部材の経時劣化等で常に変化し、加熱装置4における接触抵抗Rα、β、γ、Rδも、端子21A~21D、電極22A~22D等の経時劣化等によって変化する。接触抵抗Rα、β、γ、Rδが変化すると、第1の加熱領域4Aおよび第2の加熱領域4Bの発熱分布も変化し、シリコン融液の対流の向きの安定性に影響を与え、その結果、酸素濃度をばらつかせる要因となる。そこで、本実施形態では、後述するように、シリコン単結晶の引き上げを所定回数繰り返すごとに接触抵抗を測定し、シリコン融液の対流の向きに影響を与えるような変化があった場合は、接触抵抗を調整することで、シリコン単結晶の引き上げを繰り返し実施しても渦の向きを固定することができる。
その結果、バッチ間での石英ルツボ3Bから結晶の成長界面に供給される酸素量のばらつきが小さくなり、安定した酸素濃度を有するシリコン単結晶が得られる。結晶の成長軸方向に所望の酸素濃度を有する結晶が育成できるため、結晶の歩留まりが向上する。
なお、本実施形態では、第1抵抗値R1と第2抵抗値R2とのうち、高い抵抗値を低い抵抗値で除算した値である抵抗比率が、予め設定した判定値以上、具体的には1.2以上となるように調整している。
例えば、接続部211A、211Bと電極22A、22Bの接触面を機械的研磨で粗くすると、電力供給部20A、20Bの接触抵抗の和(Rα+Rβ)である第1抵抗値R1は増加する。一方、接続部211C、211Dと電極22C、22Dの接触面間に導電性シート24を介在させると、電力供給部20C、20Dの接触抵抗の和(Rγ+Rδ)である第2抵抗値R2は低下する。このため、R1>R2であれば、R1/R2>1.2となるように、第1抵抗値R1を増加させたり、第2抵抗値R2を低下させて調整し、R1<R2であれば、R2/R1>1.2となるように、第1抵抗値R1を低下させたり、第2抵抗値R2を増加させて調整すればよい。
シリコン単結晶製造装置1は、図8に示すように、制御装置41と、磁場印加部14と、放射温度計15Bと、記憶部42と、電圧印加部43と、抵抗値測定部44と、表示部45とを備える。
記憶部42は、シリコン単結晶SMの酸素濃度が所望の値となるような引き上げ条件、例えば、不活性ガスの流量、チャンバ2の炉内圧力、ルツボ3の回転数などと、接触抵抗Rα、Rβ、Rγ、Rδの調整ルール、例えば、調整対象とする電力供給部20A~20Dの選択や、導電性シート24の配置、接触面の機械的研磨等の調整方法の選択などを、接触抵抗Rα、Rβ、Rγ、Rδの測定値に応じて設定するルールなどが記憶される。
電圧印加部43は、制御装置41によって制御され、加熱装置4に所定の電圧を印加する。
抵抗値測定部44は、加熱装置4の各抵抗値を測定するものであり、例えば、四端子法で抵抗を測定する抵抗計によって構成されている。抵抗値測定部44は、作業者がプローブを加熱装置4の測定箇所に接触させることで抵抗値を測定し、その測定データを制御装置41に出力するように構成されている。なお、測定値は、作業者が制御装置41に設けられるキーボードやタッチパネルなどの入力装置を用いて入力してもよい。
表示部45は、液晶ディスプレイ等で構成され、作業者に対して各種情報や作業指示を表示する。
制御装置41は、対流パターン制御部410と、引き上げ制御部420と、抵抗値設定部430とを備える。
対流パターン制御部410は、電圧印加部43を制御して加熱装置4を用いてシリコン融液Mを加熱し、磁場印加部14を制御して水平磁場を印加することで、磁場直交断面における対流の方向を固定する。
引き上げ制御部420は、対流パターン制御部410による対流方向の固定後に、シリコン単結晶SMを引き上げる制御を行う。
抵抗値設定部430は、抵抗値測定制御部431、抵抗値算出部432、抵抗比率判定部433、抵抗値調整部434を備える。
抵抗値測定制御部431は、抵抗値測定部44を用いて加熱装置4の各抵抗値を測定する。
抵抗値算出部432は、各抵抗値の測定データを用いて接触抵抗Rα、Rβ、Rγ、Rδを算出し、これらを用いて第1抵抗値R1、第2抵抗値R2を算出する。
抵抗比率判定部433は、第1抵抗値R1と第2抵抗値R2との抵抗比率を求め、この抵抗比率が判定値以上であるかを判定する。
抵抗値調整部434は、抵抗比率判定部433で抵抗比率が判定値以上と判定した場合は、表示部45に接触抵抗の調整が不要であることを表示する。また、抵抗値調整部434は、抵抗比率判定部433で抵抗比率が判定値未満と判定した場合は、抵抗値測定制御部431で算出された接触抵抗Rα、Rβ、Rγ、Rδの値と、記憶部42に記憶している調整ルールとに基づいて、電力供給部20A~20Dの中で接触抵抗を調整する対象の選択や、調整手法を決定し、その調整用の作業指示を表示部45に表示する。
[シリコン単結晶の製造方法]
次に、本実施形態に係るシリコン単結晶の製造方法を図9~図13に示すフローチャートを参照して説明する。
図9は、1本のシリコン単結晶を製造する1回のバッチ処理を示すフローチャートであり、図10は、図9における抵抗値設定工程を示すフローチャートであり、図11は、図10における測定工程を示すフローチャートであり、図12は、図10における調整工程を示すフローチャートであり、図13は、図9におけるシリコン融液加熱工程を示すフローチャートである。
図9のフローチャートを実行する前に、予め、シリコン単結晶SMの酸素濃度が所望の値となるような引き上げ条件(例えば、不活性ガスの流量、チャンバ2の炉内圧力、ルツボ3の回転数など)を事前決定条件として予め把握しておき、記憶部42に記憶させる。なお、事前決定条件の酸素濃度は、シリコン単結晶SMを構成する直胴部の長手方向の複数箇所の酸素濃度の値であってもよいし、前記複数箇所の平均値であってもよい。
また、抵抗値設定工程の実行間隔である所定回数を記憶部42に記憶させる。所定回数は、各電力供給部20A~20Dの接触抵抗の抵抗値を設定する処理を実行するタイミングを設定するものである。この所定回数は、例えば、端子21A~21Dや電極22A~22D等のカーボン部材の経過劣化によって第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率が判定値未満に変化する回数を実験で求めることなどで設定でき、本実施形態では1回から50回の範囲で設定されている。
制御装置41は、シリコン単結晶の製造工程を開始すると、図9に示すように、まず、引き上げ工程の実行回数が所定回数であるか否かを判断する(ステップS1)。所定回数が30回である場合、制御装置41は、引き上げ工程を30回実行する毎に、ステップS1でYESと判定する。
ステップS1でYESと判定した場合、制御装置41は抵抗値設定工程を実行する(ステップS2)。なお、抵抗値設定工程S2は、シリコン単結晶製造装置1の設置時や、加熱装置4のメンテナンス時などにも実行される。
制御装置41は、抵抗値設定工程S2を開始すると、図10に示すように、抵抗値設定部430の抵抗値測定制御部431によって、抵抗値を測定する測定工程を実行する(ステップS21)。測定工程S21を実行すると、抵抗値測定制御部431は、図11に示すように、発熱部30および電力供給部20A~20Dの合成抵抗を測定する第1測定工程を実行する(ステップS211)。第1測定工程では、抵抗値測定部44は、電極22Aおよび電極22B間の合成抵抗を測定する。この際、作業者は、抵抗値測定部44のプローブを、電極22Aおよび電極22B間の合成抵抗を測定可能な位置、例えば、電極22A、22Bを通電ケーブルに接続する金属製の端子部分に接触させることで、電極22Aおよび電極22B間の合成抵抗を測定する。
同様の作業を行うことにより、抵抗値測定部44は、電極22Bおよび電極22C間の合成抵抗、電極22Cおよび電極22D間の合成抵抗、電極22Dおよび電極22A間の合成抵抗を順次測定する。
次に、抵抗値測定制御部431は、発熱部30の合成抵抗を測定する第2測定工程を実行する(ステップS212)。第2測定工程では、抵抗値測定部44は、端子21Aおよび端子21B間の合成抵抗を測定する。同様に、端子21Bおよび端子21C間の合成抵抗、端子21Cおよび端子21D間の合成抵抗、端子21Dおよび端子21A間の合成抵抗を順次測定する。この際、作業者は、抵抗値測定部44のプローブを、各端子21A~21Dにおいて、同じ面および同じ高さ位置に接触させて合成抵抗を測定する。プローブを接触させる位置によって、測定される合成抵抗が変化するためである。
以上により、抵抗値測定部44によって、図7に示す各抵抗値が測定され、その測定データが制御装置41に入力される。
次に、抵抗値算出部432は、図11に示すように、測定した合成抵抗のデータを用いて接触抵抗Rα、Rβ、Rγ、Rδを算出し、さらに第1抵抗値R1、第2抵抗値R2を算出する抵抗値算出工程を実行する(ステップS213)。すなわち、抵抗値算出部432は、図7の回路図に基づいて設定した8元連立方程式と、第1測定工程S211、第2測定工程S212で測定された8個の抵抗値とを用いて、接触抵抗Rα、Rβ、Rγ、Rδを算出する。そして、抵抗値算出部432は、第1抵抗値R1=Rα+Rβ、第2抵抗値R2=Rγ+Rδを算出する。以上により、測定工程S21が終了する。
次に、図10に示すように、測定工程S21が終了すると、抵抗値設定部430の抵抗比率判定部433は、抵抗値算出工程S213で算出した第1抵抗値R1および第2抵抗値R2に基づいて算出した抵抗比率が判定値以上であるかを判定する(ステップS22)。抵抗比率は、高い抵抗値を低い抵抗値で除算して求めたものであり、R1≧R2の場合はR1/R2で算出し、R1<R2の場合はR2/R1で算出する。
なお、判定値は、シリコン単結晶製造装置1の記憶部42に記憶されている。判定値は、例えば、シリコン単結晶製造装置1において、異なる抵抗比率に設定してシリコン融液の対流方向が固定されるか否かを実験し、対流方向が固定される抵抗比率の値を判定値として設定する。本実施形態では、判定値は「1.2」に設定されている。
制御装置41は、ステップS22でNOと判定すると、抵抗値調整部434により抵抗値を調整する調整工程を実行する(ステップS23)。
抵抗値調整部434は、調整工程S23を実行すると、図12に示すように、4つの電力供給部20A~20Dの各接触抵抗Rα、Rβ、Rγ、Rδと、記憶部42に記憶された調整ルールとに基づいて、導電性シート24を配置して接触抵抗を低下させたり、機械的研磨で表面を粗くして接触抵抗を増加させる調整対象を選択する(ステップS231)。
次に、抵抗値調整部434は、選択した調整対象が抵抗値を低下させる対象であるか否かを判定する(ステップS232)。
抵抗値調整部434は、ステップS232でYESと判定した場合は、抵抗値低下工程を実行する(ステップS233)。抵抗値低下工程S233では、抵抗値調整部434は、電力供給部20A~20Dから抵抗値を低下させる対象として選択された電力供給部に対して、導電性シート24を介在させる作業指示を表示部45に表示する。作業者は、作業指示にしたがって、選択された電力供給部の端子と電極との間に導電性シート24を配置して接触抵抗を低下させる。
一方、抵抗値調整部434は、ステップS232でNOと判定した場合は、抵抗値増加工程を実行する(ステップS234)。抵抗値増加工程S234では、抵抗値調整部434は、電力供給部20A~20Dから抵抗値を増加させる対象として選択された電力供給部に対して、機械的研磨で表面を粗くする作業指示を表示部45に表示する。作業者は、作業指示にしたがって、選択された電力供給部の端子と電極との接触面を機械的研磨して接触抵抗を増加させる。
抵抗値調整部434は、ステップS233、S234の実行後、他の調整対象の電力供給部が存在するか否かを判定する(ステップS235)。抵抗値調整部434は、ステップS235でYESと判定した場合は、ステップS231に戻り、ステップS231~S235の処理を再度実行する。また、抵抗値調整部434は、ステップS235でNOと判定した場合は、調整工程S23を終了する。
なお、抵抗値調整部434による調整ルールは、導電性シート24を配置する抵抗値低下工程S233を、抵抗値増加工程S234よりも優先して実行するように設定されている。導電性シート24の配置は、機械的研磨に比べて簡単に作業できるためである。したがって、抵抗値調整部434は、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率が判定値未満の場合、値が小さい抵抗値の接触抵抗を低下させることを優先して作業指示する。
例えば、抵抗値調整部434は、R1>R2で、R1/R2<1.2の場合、第2抵抗値R2つまり接触抵抗Rγ、Rδの一方のみを低下させることで抵抗比率を判定値以上にできると判断した場合は、接触抵抗Rγ、Rδのうち、抵抗値が高い電力供給部20C、20Dに対して導電性シート24を介在させて抵抗値を低下させる作業を指示する。また、接触抵抗Rγ、Rδの両方を低下させることで抵抗比率を判定値以上にできると判断した場合は、抵抗値調整部434は、電力供給部20C、20Dの両方に対して導電性シート24を介在させて抵抗値を低下させる作業を指示する。なお、記憶部42には、過去の実験データに基づいて、導電性シート24を配置する前後での接触抵抗の変化量が記憶されている。例えば、接触抵抗が比較的高い場合は、接触面が粗くされて端子と電極との接触面積が小さい可能性が高い。このため、導電性シート24を配置した場合の抵抗値の低下量は比較的大きい。一方、接触抵抗が比較的低い場合は、端子と電極との接触面積も大きい可能性が高く、導電性シート24を配置した場合の抵抗値の低下量は接触抵抗が高い場合に比べてると小さい。したがって、抵抗値調整部434は、測定された接触抵抗値に基づいて導電性シート24を配置した場合の低下量を推定でき、その推定に基づいて、導電性シート24を一方の電力供給部のみに配置するか、両方に配置するかを判断する。
さらに、抵抗値調整部434は、第2抵抗値R2つまり接触抵抗Rγ、Rδを低下させることだけでは抵抗比率を判定値以上にできないと判断した場合は、第2抵抗値R2を低下させる作業に加えて第1抵抗値R1を増加させる作業を指示する。ここで、抵抗値調整部434は、第1抵抗値R1つまり接触抵抗Rα、Rβの一方のみを増加させることで抵抗比率を判定値以上にできると判断した場合、接触抵抗Rα、Rβのうち、抵抗値が低い電力供給部20A、20Bに対して機械的研磨を行い、抵抗値を増加させる作業を指示する。また、抵抗値調整部434は、接触抵抗Rα、Rβの両方を増加させることで抵抗比率を判定値以上にできると判断した場合、電力供給部20A、20Bの両方に対して機械的研磨を行い、抵抗値を増加させる作業を指示する。
作業者は、表示部45に表示される抵抗値調整部434からの作業指示に基づいて電力供給部20A~20Dの接触抵抗を調整し、調整が終了すれば制御装置41にその旨を入力する。
制御装置41は、ステップS23が終了すると、図10に示すように、再度、測定工程S21、判定工程S22を実行し、抵抗比率が判定値以上となったか否かを再度判定する。
ステップS22でNOと判定した場合、制御装置41は、ステップS22の判定工程でYESと判定するまで、調整工程S23、測定工程S21、判定工程S22を繰り返す。
ステップS22でYESと判定した場合、制御装置41は、電力供給部20A~20Dの接触抵抗を適切に調整できたと判断し、ステップS2の抵抗値設定工程を終了し、図9の処理に戻る。
制御装置41は、図9に示すように、ステップS1でNOと判定した場合、つまり抵抗値を設定するタイミングでは無い場合と、ステップS2の抵抗値設定工程を終了した場合は、対流パターン制御部410によってシリコン融液の加熱工程を実行する(ステップS3)。
シリコン融液加熱工程S3では、図13に示すように、対流パターン制御部410は、無磁場状態でチャンバ2内を減圧下の不活性ガス雰囲気に維持し、ルツボ3を回転させるとともに、電圧印加部43によって加熱装置4を作動し、ルツボ3に充填した多結晶シリコンなどの固形原料を溶融させ、シリコン融液Mを生成する(ステップS31)。
このとき、対流パターン制御部410は、電圧印加部43を用いて第1の加熱領域4Aおよび第2の加熱領域4Bに同じ大きさの電圧を印加する。この際、第1抵抗値R1が第2抵抗値R2の1.2倍以上であれば、ジュール発熱により第2電力供給部(電力供給部20C、20D)に比べて第1電力供給部(電力供給部20A、20B)のほうが高温となり、シリコン融液Mの左側(第1の加熱領域4A側)を右側(第2の加熱領域4B側)よりも高い温度で加熱する。そして、対流パターン制御部410は、シリコン融液Mの温度が1415℃以上1500℃以下となるように加熱を制御する。
ステップS31によって生成されたシリコン融液Mは、熱やルツボ3の回転の影響を受けて対流する。そのため、対流パターン制御部410は、シリコン融液Mの渦が周期的に回っているかの安定性を判断する。具体的には、対流パターン制御部410は、温度計測部15における第1の計測点P1または第2の計測点P2での温度の経時変化(温度推移)を確認し、周期的に変動する計測温度の最高値および最低値の変動幅である周期変動幅が所定の温度範囲(所定範囲)内に入っているか否かを判断する(ステップS32)。
このステップS32の処理によって、シリコン融液Mの渦が周期的に回っているかの安定性を判断できる。
このステップS32において、対流パターン制御部410は、周期変動幅が所定範囲内に入っていない、つまり渦が周期的に回っていないと判断した場合、シリコン融液Mの加熱温度を調整し(ステップS33)、所定時間経過後にステップS32の処理を行う。
一方、ステップS32において、対流パターン制御部410は、周期変動幅が所定範囲内に入っており、渦が周期的に安定して回っていると判断した場合、シリコン融液の加熱温度を調整するステップS3の工程を終了する。なお、ステップS3の工程を終了しても、対流パターン制御部410は電圧印加部43によるシリコン融液の加熱は継続する。
制御装置41は、ステップS3の終了後、図9に示すように、対流パターン制御部410により磁場印加部14を制御して、シリコン融液Mへの0.2テスラ以上0.6テスラ以下の水平磁場を印加する水平磁場印加工程を実行する(ステップS4)。このステップS4の処理によって、シリコン融液Mの対流方向が固定される。
次に、対流パターン制御部410は、温度計測部15における第1の計測点P1および第2の計測点P2の温度差を確認し、対流方向が右回りであるか左回りであるかを確認する対流方向確認工程を実行する(ステップS5)。
その後、引き上げ制御部420は、事前決定条件に基づいて、0.2テスラ以上0.6テスラ以下の水平磁場の印加を継続したままシリコン融液Mに種結晶SCを着液してから、所望の酸素濃度の直胴部を有するシリコン単結晶SMを引き上げる引き上げ工程を実行する(ステップS6)。
なお、ステップS32における周期変動幅の確認処理、ステップS33における加熱温度の調整処理、ステップS4における水平磁場の印加開始処理、ステップS5における温度計測による対流方向確認処理、ステップS6における引き上げ処理は、作業者の操作によって行ってもよい。
以上説明したシリコン単結晶の製造方法を用いて引上げられたシリコン単結晶SMを構成する直胴部をワイヤーソー等でシリコンウェーハに切り出す。次に、切り出されたシリコンウェーハにラッピング工程、研磨工程を施すことにより、シリコンウェーハが得られる。この処理が本発明のシリコンウェーハの製造方法に対応する。
[実施形態の作用および効果]
本実施形態によれば、引き上げ工程S6を所定回数実行する毎に、ステップS2の抵抗値設定工程を実行し、第1の加熱領域4Aに配置された電力供給部20A、20Bの接触抵抗Rα、Rβの和である第1抵抗値R1と、第2の加熱領域4Bに配置された電力供給部20C、20Dの接触抵抗Rγ、Rδの和である第2抵抗値R2との抵抗比率を、判定値である1.2以上に設定しているので、第1の加熱領域4Aの電力供給部20A、20Bの発熱量を、第2の加熱領域4Bの電力供給部20C、20Dの発熱量に比べて大きくできる。
このため、シリコン単結晶製造装置1の構造の対称性に関係なく、磁場直交断面におけるシリコン融液Mの対流の方向を一方向に固定しやすくできる。そして、シリコン融液Mの対流の一方向への固定によって、シリコン単結晶SMごとの酸素濃度のばらつきを抑制できる。これにより、炉間・バッチ間のシリコン単結晶の品質および生産性のばらつきを抑制できる。
特に、各電力供給部20A~20Dを構成する端子21A~21Dと、電極22A~22Dとの間の接触抵抗を、これらの間に導電性シート24を介在させて接触抵抗を低下させたり、接触面を機械的研磨で粗くして接触抵抗を増加させることで、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率を判定値以上に設定しており、このような簡便な手段で、シリコン単結晶SMごとの酸素濃度のばらつきを抑制できる。
本実施形態によれば、引き上げ工程S6を所定回数実行する毎に、ステップS2の抵抗値設定工程を実行しているので、端子21A~21Dや電極22A~22Dの経時劣化が発生した場合でも、定期的に各電力供給部20A~20Dの接触抵抗を測定、調整することができ、シリコン融液Mの対流の向きを固定することができる。このため、シリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。
また、抵抗値設定工程を実施する間隔である所定回数を、1回以上、50回以下に設定したので、シリコン単結晶製造装置1に応じて適切な間隔で接触抵抗を調整することができる。例えば、所定回数を1回とすれば、シリコン単結晶SMを引き上げる毎に接触抵抗を測定し、調整する必要があればその時点で接触抵抗を調整できるので、シリコン融液Mの対流の向きを確実に固定でき、シリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。また、所定回数を50回とすれば、例えば、シリコン単結晶製造装置1においてライフが短い部品を交換するタイミングに合わせて接触抵抗を測定、調整することができるので、シリコン単結晶の製造効率を低下させずにシリコン単結晶の歩留まりを改善することができる。なお、実際の所定回数は、結晶の種類やホットゾーンの形状などのシリコン単結晶製造装置1の構成等に応じて実験によって最適な回数を求めればよい。
本実施形態によれば、端子21A~21Dおよび電極22A~22D間の接触抵抗を調整しているので、加熱装置4には特殊な加工が不要であり、市販品を用いることができ、コストを削減できる。また、加熱装置4には、形状が対称で厚みが均一なものを用いることができ、簡単な構造で耐久性も高い。
さらに、本実施形態によれば、制御装置41は、ステップS2の抵抗値設定工程において、第1抵抗値R1、第2抵抗値R2を測定し、その抵抗比率が判定値未満の場合、測定した接触抵抗に基づいて抵抗値を調整する対象および調整方法を提案するため、作業者は、容易にかつ短時間で抵抗値を調整することができる。
また、測定工程S21では、第1測定工程S211で発熱部30および電力供給部20A~20Dの合成抵抗を測定し、第2測定工程S212で発熱部30の合成抵抗を測定しているので、加熱装置4を分解することなく、正しい接触抵抗を測定することができる。さらに、抵抗値測定部44は、四端子法の抵抗計で構成されているので、各合成抵抗を精度良く測定でき、その測定値に基づいて算出する接触抵抗も精度良く求めることができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の種々の改良並びに設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、抵抗値設定工程を実行する間隔を設定する引き上げ工程の所定回数は、1回以上、50回以下に限定されない。例えば、シリコン単結晶製造装置1において第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率が判定値未満に低下する引き上げ工程の実行回数を実験した際に、例えば、平均60回で判定値未満に低下した場合は、所定回数を60回に設定してもよい。すなわち、所定回数は、シリコン単結晶の製造に用いられるシリコン単結晶製造装置1の種類などに応じて実際に実験して設定すればよい。
また、抵抗値設定工程は、引き上げ工程を所定回数実行するごとに行うものに限定されず、抵抗比率の変化を推定できるパラメータが条件に該当した場合に実行してもよい。例えば、加熱装置4による加熱開始から、放射温度計15Bで測定される第1の計測点P1、第2の計測点P2がそれぞれ所定の温度に達するまでの時間と、抵抗比率との間に相関関係を見出すことができる場合には、所定の温度に達するまでの時間が所定条件に該当した際に抵抗値設定工程を実行してもよい。
抵抗比率を判定する判定値は「1.2」に限定されず、実験によって求められる値に設定すればよい。例えば、実験した結果、シリコン融液Mの対流の向きが固定する抵抗比率が「1.25」であれば、判定値も「1.25」に設定すればよい。すなわち、シリコン融液Mの対流の向きが固定する抵抗比率は、シリコン単結晶製造装置1で製造するシリコン単結晶の種類やホットゾーンの形状、発熱部30の構成など、第1の加熱領域4Aおよび第2の加熱領域4Bの発熱分布に影響する他の要素にも左右されるため、各シリコン単結晶製造装置1において実験して求めることが好ましく、その実験結果の値に応じて設定すればよい。また、加熱装置4の発熱分布やシリコン融液Mの対流などをシミュレーションできる場合には実験せずにシミュレーション結果に応じて判定値を設定してもよい。
さらに、抵抗比率を判定する判定値は、実験やシミュレーションで求められた値以上に設定してもよい。例えば、実験で求めた値が「1.2」であった場合、判定値を「1.2以上」のより大きな値に設定してもよい。判定値をより大きな値に設定して判定すれば、各加熱領域4A,4Bにおける発熱量の差を大きくできるため、シリコン融液Mの対流の向きをより安定化できる。
抵抗比率を判定する判定値はシリコン単結晶の引き上げ工程の実行回数にしたがって、変更してもよい。例えば、引き上げ工程を10回実行するごとに抵抗値設定工程を実行する場合に、引き上げ工程を10回実行した際の判定値は「1.2」とし、20回実行した際の判定値は「1.22」とし、30回実行した際の判定値は「1.24」とするなど、引き上げ工程の実行回数に応じて判定値を変更してもよい。このような判定値を変更すれば、例えば、シリコン単結晶製造装置1が、ホットゾーン内の熱環境が部品の経時劣化等の影響を受け、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率をさらに大きくしないとシリコン融液Mの対流の向きを固定できないような場合に有効である。
前記実施形態では、電力供給部20A~20Dが仮想線VLに対して線対称となる位置に配置されている例を示したが、これに限定されない。すなわち、前記実施形態では、電力供給部20A~20Dと加熱装置4の中心軸CAとを結ぶ線と、仮想線VLとの公差角度は45度に設定されているが、例えば、電力供給部20A、20Cと中心軸CAとを結ぶ線と仮想線VLとの交差角度が30度とされ、電力供給部20B、20Dと中心軸CAとを結ぶ線と仮想線VLとの交差角度が60度とされるように配置してもよい。すなわち、発熱部30の発熱分布を一定にするために、電力供給部20A~20Dは発熱部30の周方向に90度間隔で配置され、さらに、第1電力供給部である電力供給部20A、20Bが第1の加熱領域4Aに配置され、第2電力供給部である電力供給部20C、20Dが第2の加熱領域4Bに配置されていればよい。
前記実施形態では、抵抗値低下工程S233では導電性シート24を配置し、抵抗値増加工程S234では機械的研磨で端子21A~21Dおよび電極22A~22Dの表面を粗くしていたが、他の方法で抵抗値を低下あるいは増加させてもよい。例えば、端子21A~21Dおよび電極22A~22D間に、炭素系の繊維素材等で構成される板状の電気抵抗調整部材を介挿し、その介挿枚数を調整することで抵抗値を調整してもよい。すなわち、第1電力供給部である電力供給部20A、20Bに介挿する電気抵抗調整部材の合計枚数を、第2電力供給部である電力供給部20C、20Dに介挿する電気抵抗調整部材の合計枚数よりも多くすることで、第1抵抗値R1を第2抵抗値R2よりも高めることができ、それらの合計枚数の比率を変更することで、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率も変更することができる。
また、電気抵抗調整部材は、意図的に抵抗を大きくすることができる部材であるポーラス状炭素で形成された厚みのある円板状シートなどを使用してもよく、電力供給部20A、20Bに介挿する円板状シートの厚さ寸法と、電力供給部20C、20Dに介挿する円板状シートの厚さ寸法とを変更することで、第1抵抗値R1、第2抵抗値R2を調整してもよい。
すなわち、第1電力供給部に介挿される電気抵抗調整部材と、第2電力供給部に介挿される電気抵抗調整部材との介挿枚数や、厚さ寸法などを変更して各電気抵抗調整部材の抵抗値を異ならせることで、第1抵抗値R1、第2抵抗値R2を調整してもよい。
また、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗値を変更する方法としては、例えば、電極22A~22Dを端子21A~21Dに接続する際に用いられるナット23A~23Dの締め付け力を調整する方法を用いてもよい。例えば、ナット23A~23Dの締め付け力を高めると、端子21A~21Dと電極22A~22Dとの接触面積が増えるために接触抵抗を低下できる。この際、導電性シート24を配置してナット23A~23Dの締め付け力を高めるとさらに接触抵抗を低下できる。
一方、ナット23A~23Dの締め付け力を弱めると、端子21A~21Dと電極22A~22Dとの接触面積が低下するために接触抵抗を増加できる。この際、接触面を機械的研磨で粗くしてナット23A~23Dの締め付け力を弱めるとさらに接触抵抗を増加できる。
さらに、ナットの締め付け力の調整と、導電性シート24の配置や機械的研磨による調整とを組み合わせて接触抵抗を変更してもよい。
また、前記実施形態は、4個の電力供給部20A~20Dを設けていたが、電力供給部の数は、6個や8個などでもよく、第1の加熱領域4Aおよび第2の加熱領域4Bに同数の電力供給部を設ければ良い。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
炉内が同じ構造を有する前記実施形態のシリコン単結晶製造装置1を、#1~#7まで7台用意した。したがって、これらのシリコン単結晶製造装置1の加熱装置4は、図に示す等価回路で表され、4個の電力供給部20A~20Dを有する。これらの電力供給部20A~20Dの接触抵抗を4端子法の原理を用いた抵抗値測定部44により測定した。
具体的には、電極22Aおよび電極22B間に一定電流を流し、電極22Aおよび電極22B間の電圧を測定し、電極22Aおよび電極22B間の合成抵抗を測定した。同様の方法で、電極22Bおよび電極22C間の合成抵抗、電極22Cおよび電極22D間の合成抵抗、電極22Dおよび電極22A間の合成抵抗をそれぞれ測定した。
次に、同じく電極22Aおよび電極22B間に一定電流を流し、端子21Aおよび端子21B間の電圧を測定し、端子21Aおよび端子21B間の合成抵抗を測定した。同様の方法で、端子21Bおよび端子21C間の合成抵抗、端子21Cおよび端子21D間の合成抵抗、端子21Dおよび端子21A間の合成抵抗をそれぞれ測定した。
制御装置41は、抵抗値測定部44により測定された8つの合成抵抗値を用いて、図の等価回路に基づいて設定した連立方程式を解いて、4つの電力供給部20A~20Dの接触抵抗Rα、Rβ、Rγ、Rδを算出した。
電力供給部20A~20Dの発熱量Wは、接触抵抗Rと、抵抗を流れる電流Iと関係があり、W=RIで求められる。したがって、電力供給部20A~20Dの抵抗分布は、電力供給部20A~20Dの発熱分布と同等とみなすことができる。一方、発熱部30の各抵抗はヒーターの加工精度(厚みや長さ)に大きく依存するもので、抵抗のばらつきは1%以下である。そのため、発熱部30の発熱分布がシリコン融液の対流の固定挙動に与える影響は無視できる。したがって、電力供給部20A~20Dの抵抗分布が、結晶成長に使用する加熱装置4の発熱分布を決定し、この発熱分布によりシリコン融液の対流の向きの固定状況を決定する。
表1は、抵抗値設定工程を実施する前の#1~#7の各シリコン単結晶製造装置1における電力供給部20A~20Dの接触抵抗と、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2と、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率と、シリコン融液の対流の向きつまり渦の向きと、渦固定率、結晶歩留まりの結果を示す。
Figure 0007635678000001
表1において、第1抵抗値R1は、第1の加熱領域4Aの接触抵抗の和、つまりR1=Rα+Rβである。第2抵抗値R2は、第2の加熱領域4Bの接触抵抗の和、つまりR2=Rγ+Rδであり、抵抗比率は、R1>R2であればR1/R2、R1<R2であればR2/R1で求めている。渦の向きは、図の左側が上昇流となり、右側が下降流となって右向きの渦となる確率が95%以上の場合は「右」、逆に左向きの渦となる確率が95%以上の場合は「左」、右向きの渦となる確率が65%以上、95%未満の場合は「右優勢」、左向きの渦となる確率が65%以上、95%未満の場合は「左優勢」、以上の条件に該当しない場合、つまり右向きの渦または左向きの渦となる確率があまり変わらない場合は「左・右」と記載した。
渦固定率は、7台の各シリコン単結晶製造装置1において、それぞれ100本のシリコン単結晶を育成した際に、渦の向きが左向きあるいは右向きで固定された割合を示すものである。結晶歩留まりは、7台の各シリコン単結晶製造装置1において、それぞれ100本のシリコン単結晶を育成した際に、酸素濃度のばらつきや、直径のばらつき等が予め設定された製品基準を満たすシリコン単結晶の本数の割合を示すものである。
表1の結果から、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率が1.20以上と大きい#1と#5は、渦固定率が100%となり、結晶歩留まりも100%と高い値が得られた。また、第1の加熱領域4Aと第2の加熱領域4Bの接触抵抗の和である第1抵抗値R1、第2抵抗値R2の大小で、渦の向きが決定されることを確認した。一方で、第1抵抗値R1、第2抵抗値R2の比が1.00以上、1.10以下の範囲である#2、#6、#7は、渦固定率が50~60%であり、渦の向きがランダムになっており、結晶歩留まりも低い。第1抵抗値R1、第2抵抗値R2の比率が1.10よりも大きく、1.20未満の範囲にある#3、#4は、渦の向きの固定は完全ではなく、結晶歩留まりも#1や#5と比較して低い。表1の結果から、本実施例では、対流の向きが制御できる第1抵抗値R1、第2抵抗値R2の比率は、1.20以上必要であることが分かった。
次に、表1の結果に基づいて判定値を1.2とし、一部の電力供給部20A~20Dの接触抵抗を変更して、第1抵抗値R1、第2抵抗値R2の抵抗比率が判定値以上となるように調整した。その結果を表2に示す。
Figure 0007635678000002
表2は、表1の一部の接触抵抗を調整した後の抵抗値を示す。すなわち、#2、#3では、電力供給部20Dに導電性シート24を挟むことで接触抵抗Rδを低下させた。#4では、電力供給部20Bに導電性シート24を挟むことで接触抵抗Rβを低下させた。
#6では、電力供給部20Aに導電性シート24を挟むことで接触抵抗Rαを低下させたが、それだけでは比率が1.2以上とならないため、電力供給部20C、20Dのうち、接触抵抗が低い電力供給部20Cに機械的研磨を施して接触抵抗Rγを増加させた。
#7では、電力供給部20Dに導電性シート24を挟むことで接触抵抗Rδを低下させ、さらに電力供給部20A、20Bに機械的研磨を施して接触抵抗Rα、Rβを増加させた。
なお、先に導電性シート24を挟みこんで調整するのは、導電性シート24の配置は機械的研磨に比べて短時間で作業できるためである。すなわち、導電性シート24は、端子21A~21D、電極22A~22D間に配置してナット23A~23Dを締めるだけでよく、短時間で配置できる。一方、機械的研磨は研磨作業が必要であり、その分、作業時間も長くなるとともに、結晶育成プロセス中(高電力負荷時)に放電のリスクもあるためである。
表2は、#1~#7のすべてのシリコン単結晶製造装置1において、第1抵抗値R1および第2抵抗値R2の抵抗比率を判定値1.2以上に設定し、100本のシリコン単結晶を育成してデータを集計した結果である。この表2に示すように、シリコン融液の渦の向きの固定率が100%と向上し、結晶歩留まりも100%と大幅に改善した。また、渦の向きを固定した後のプロセスでは、シリコン単結晶の育成中に渦が反転する現象は確認できなかった。
[評価]
以上の結果から、電力供給部20A~20Dの端子21A~21Dおよび電極22A~22D間の接触抵抗を調整し、第1の加熱領域4Aにおける電力供給部20A、20Bの接触抵抗の和である第1抵抗値R1と、第2の加熱領域4Bにおける電力供給部20C、20Dの接触抵抗の和である第2抵抗値R2との抵抗比率が判定値以上となるように設定することで、シリコン融液の対流の向きを完全に固定することができ、シリコン単結晶の歩留まりを改善できることを確認できた。
また、第1の加熱領域4A、第2の加熱領域4Bのうち、接触抵抗の和が大きい領域で、シリコン融液の上昇流が優勢となり、対流の渦の向きが決まる。すなわち、接触抵抗の大小を制御することで、渦の向きを決定するきっかけを作ることができる。
さらに、実施例のシリコン単結晶製造装置1では、シリコン融液の対流の向きが制御できる抵抗比率は「1.2」以上であり、判定値を「1.2」に設定すればよいことが分かった。
また、電力供給部20A~20Dの接触抵抗を制御する手段として、導電性シート24を接触面に挟むことで抵抗を小さくする、あるいは接触面を機械的研磨により粗くして抵抗を大きくすることが有効であることが分かった。さらに、接触抵抗値を調整する方法は、発熱部30の加工が不要であり、作業現場で調整することができ、利用価値が極めて高いことが分かった。
1…シリコン単結晶製造装置、2…チャンバ、2A…石英窓、3…ルツボ、3A…黒鉛ルツボ、3B…石英ルツボ、4…加熱装置、4A…第1の加熱領域、4B…第2の加熱領域、5…支持軸、6…断熱材、7…引き上げ軸、8…熱遮蔽体、9…ガス導入口、10…排気口、14…磁場印加部、14A…第1の磁性体、14B…第2の磁性体、15…温度計測部、15A…反射部、15B…放射温度計、15C…反射面、20A…電力供給部、20B…電力供給部、20C…電力供給部、20D…電力供給部、21A…端子、21B…端子、21C…端子、21D…端子、22A…電極、22B…電極、22C…電極、22D…電極、23A…ナット、23B…ナット、23C…ナット、23D…ナット、24…導電性シート、30…発熱部、31…上スリット、32…下スリット、33A…第1蛇行部、33B…第2蛇行部、33C…第3蛇行部、33D…第4蛇行部、41…制御装置、42…記憶部、43…電圧印加部、44…抵抗値測定部、45…表示部、211A…接続部、211B…接続部、211C…接続部、211D…接続部、212A…貫通孔、212B…貫通孔、212C…貫通孔、212D…貫通孔、213A…上面、214A…下面、221A…本体部、222A…上面、223A…挿通部、224A…雄ねじ、410…対流パターン制御部、420…引き上げ制御部、430…抵抗値設定部、431…抵抗値測定制御部、432…抵抗値算出部、433…抵抗比率判定部、434…抵抗値調整部、CA…中心軸、CS…中心、F…水平面、L…輻射光、M…シリコン融液、ML…矢印、P1…第1の計測点、P2…第2の計測点、R1…第1抵抗値、R2…第2抵抗値、Rα…接触抵抗、Rβ…接触抵抗、Rγ…接触抵抗、Rδ…接触抵抗、S…表面、SC…種結晶、SM…シリコン単結晶、VL…仮想線、W…発熱量、θ1…入射角、θ2…反射角、θf…角度。

Claims (8)

  1. 加熱装置を用いて加熱した石英ルツボ内のシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法であって、
    前記加熱装置は、前記石英ルツボの周囲に配置された発熱部と、前記発熱部に電力を供給する電力供給部とを備え、
    前記電力供給部は、前記石英ルツボを鉛直上方から見て、前記石英ルツボの中心軸を通る水平磁場の中心磁力線で前記加熱装置を第1の加熱領域および第2の加熱領域に分割した際に、前記第1の加熱領域に配置される第1電力供給部と、前記第2の加熱領域に配置される第2電力供給部とを備え、
    前記第1電力供給部の抵抗値である第1抵抗値、および、前記第2電力供給部の抵抗値である第2抵抗値を設定する抵抗値設定工程と、
    無磁場状態において、前記石英ルツボ内の前記シリコン融液を加熱するシリコン融液加熱工程と、
    前記石英ルツボ内の前記シリコン融液に対して水平磁場を印加する水平磁場印加工程と、
    前記シリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる引き上げ工程と、を有し、
    前記抵抗値設定工程は、
    前記第1抵抗値および前記第2抵抗値を測定する測定工程と、
    前記第1抵抗値および前記第2抵抗値のうち、高い抵抗値を低い抵抗値で除算した値である抵抗比率が1.2以上であるか否かを判定する判定工程と、
    前記判定工程で前記抵抗比率が1.2未満であると判定した場合に、前記第1抵抗値および前記第2抵抗値の少なくとも一方を調整する調整工程と、を有し、
    前記判定工程で前記抵抗比率が1.2未満と判定した場合は、前記調整工程および前記測定工程の実行後、前記判定工程を再度実行し、
    前記判定工程で前記抵抗比率が1.2以上と判定した場合は、前記抵抗値設定工程を終了する
    シリコン単結晶の製造方法。
  2. 請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記抵抗値設定工程は、前記引き上げ工程を所定回数実行するごとに行う
    シリコン単結晶の製造方法。
  3. 請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記所定回数は、1回以上、50回以下である
    シリコン単結晶の製造方法。
  4. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記測定工程は、
    前記発熱部および前記電力供給部の合成抵抗を測定する第1測定工程と、
    前記発熱部の合成抵抗を測定する第2測定工程と、
    前記測定された各抵抗値に基づいて前記第1抵抗値と、前記第2抵抗値とを求める抵抗値算出工程と、を備える
    シリコン単結晶の製造方法。
  5. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記各電力供給部は、前記発熱部と一体に形成される端子と、一端が前記端子と接続され、他端が電源に接続される電極とを有し、
    前記調整工程は、前記端子および前記電極間に導電性シートを配置して電力供給部の抵抗値を小さくする抵抗値低下工程を含む
    シリコン単結晶の製造方法。
  6. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記各電力供給部は、前記発熱部と接続される端子と、一端が前記端子と接続され、他端が電源に接続される電極とを有し、
    前記調整工程は、前記端子および前記電極の接触面を粗くして電力供給部の抵抗値を大きくする抵抗値増加工程を含む
    シリコン単結晶の製造方法。
  7. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記各電力供給部は、前記発熱部と接続される端子と、一端が前記端子と接続され、他端が電源に接続される電極とを有し、
    前記端子と前記電極との間には、板状の電気抵抗調整部材が介挿され、
    前記調整工程は、前記第1電力供給部の前記端子および前記電極間に介挿される前記電気抵抗調整部材の枚数または厚さ寸法と、前記第2電力供給部の前記端子および前記電極間に介挿される前記電気抵抗調整部材の枚数または厚さ寸法と、を異ならせることにより、抵抗値の調整を行う
    シリコン単結晶の製造方法。
  8. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法を用いて引き上げられたシリコン単結晶から切り出してシリコンウェーハを製造するシリコンウェーハの製造方法。
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