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JP7636636B2 - セメント組成物及び水硬性組成物 - Google Patents
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JP7636636B2 - セメント組成物及び水硬性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、セメント組成物及び該セメント組成物を含む水硬性組成物に関する。
現在、地球温暖化の抑制のため、二酸化炭素の排出量の低減が重要な課題になっている。
セメント質硬化体の製造における、二酸化炭素の排出量を低減する方法として、セメント質硬化体の養生過程において二酸化炭素を吸収させることにより、セメント質硬化体を得るまでに排出される二酸化炭素の総量を低減する方法が知られている。
養生過程において多量の二酸化炭素を吸収することにより、排出される二酸化炭素の総量を大幅に低減することができるセメント質硬化体として、特許文献1には、(A)ムライトとアノーサイトのいずれか一方または両方を含むセメント混合用粉末、及び、ポルトランドセメントを含む粉末状セメント組成物、(B)水、及び、(C)骨材、を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなることを特徴とするセメント質硬化体が記載されている。
また、特許文献2には、養生過程において多量の二酸化炭素を吸収することにより、排出される二酸化炭素の総量を大幅に低減することができ、かつ、粉末材料の全量がポルトランドセメントからなる場合を基準にしたとき、圧縮強さの低下の割合が小さいセメント質硬化体として、(A)CS100質量部に対して、CASを10~200質量部含有し、かつ、CAの含有量が20質量部以下である焼成物の粉砕物と、ポルトランドセメントを含む粉末状セメント組成物と、(B)水と、(C)骨材、の各材料を含むセメント混練物の硬化体を、炭酸化してなることを特徴とするセメント質硬化体が記載されている。
一方、セメント混和材として、焼成物の粉砕物(セメントクリンカ粉砕物に該当しないもの)を用いたセメント組成物が知られている。
例えば、セメントの水和熱を低下させ、かつ流動性を良好にすることができる焼成物(セメント混和材)として、特許文献3には、CS100重量部に対して、CASを10~100重量部含有し、かつ、CAの含有量が20重量部以下であることを特徴とする焼成物が記載されている。
特開2016-153357号公報 特開2016-47788号公報 特開2004-2155号公報
本発明の目的は、セメント混和材として焼成物の粉砕物(セメントクリンカ粉砕物に該当しないもの)を含み、強度発現性に優れ、かつ、養生過程において多量の二酸化炭素を吸収、固定化することにより、排出される二酸化炭素の総量を低減することができるセメント組成物及び該セメント組成物を含む水硬性組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)(i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、(ii)2CaO・SiO及び2CaO・Al・SiOを含み特定の条件を満たす焼成物の粉砕物を含む粉末状セメント含有物、並びに、(B)(iii)アミンを含むセメント組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[15]を提供するものである。
[1] (A)(i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、(ii)2CaO・SiO及び2CaO・Al・SiOを含む焼成物の粉砕物であって、以下の(1)~(2)の条件を満たす焼成物の粉砕物、を含む粉末状セメント含有物、並びに、(B)(iii)アミンを含むことを特徴とするセメント組成物。
(1)上記2CaO・SiO100質量部に対する上記2CaO・Al・SiOの量が10~100質量部であること
(2)上記焼成物が3CaO・Alを含まない、又は、上記2CaO・SiO100質量部に対して15質量部以下の量で含むこと
[2] 上記粉末状セメント含有物が、(iv)アルカリ土類金属含有物を含み、上記粉末状セメント含有物中のアルカリ土類金属(ただし、上記アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)の含有率が、酸化物換算で0.1~10質量%である前記[1]に記載のセメント組成物。
[3] 上記粉末状セメント含有物100質量部に対する上記アミンの量が0.001~5.0質量部である前記[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
[4] 上記アミンが、アルカノールアミンである前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメント組成物。
[5] 上記粉末状セメント含有物中の上記焼成物の粉砕物の含有率が10~90質量%である前記[1]~[4]のいずれかに記載のセメント組成物。
[6](i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物、(ii)2CaO・SiO及び2CaO・Al・SiOを含む焼成物であって、以下の(1)~(2)の条件を満たす焼成物の粉砕物、並びに(iv)アルカリ土類金属含有物、を含むセメント組成物であって、上記セメント組成物中のアルカリ土類金属(ただし、上記アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)の含有率が、酸化物換算で0.1~10質量%であることを特徴とするセメント組成物。
(1)上記2CaO・SiO100質量部に対する上記2CaO・Al・SiOの量が10~100質量部であること
(2)上記焼成物が3CaO・Alを含まない、又は、上記2CaO・SiO100質量部に対して15質量部以下の量で含むこと
[7] 上記セメント組成物中の上記焼成物の粉砕物の含有率が10~90質量%である前記[6]に記載のセメント組成物。
[8] 上記アルカリ土類金属が、マグネシウム(Mg)である前記[6]又は[7]に記載のセメント組成物。
[9] 上記アルカリ土類金属が、カルシウム(Ca)である前記[6]~[8]のいずれか記載のセメント組成物。
[10] 前記[1]~[5]のいずれかに記載のセメント組成物、水、及び骨材を含む水硬性組成物であって、上記粉末状セメント含有物100質量部に対する上記水の量が25~70質量部である水硬性組成物。
[11] 上記水硬性組成物が、炭酸化養生を行ってなる炭酸化硬化体である前記[10]に記載の水硬性組成物。
[12] 前記[6]~[9]のいずれかに記載のセメント組成物、水、及び骨材を含む水硬性組成物であって、上記セメント組成物100質量部に対する上記水の量が25~70質量部である水硬性組成物。
[13] 上記水硬性組成物が、炭酸化養生を行ってなる炭酸化硬化体である前記[12]に記載の水硬性組成物。
[14] 前記[11]に記載の水硬性組成物を製造するための方法であって、上記セメント組成物を構成する各材料、上記水、及び上記骨材を用いて、これらの混合物である混練物を調製する混練物調製工程と、上記混練物を型枠内に打設する打設工程と、上記型枠内の上記混練物が硬化した後に、上記混練物の硬化体を上記型枠から脱型する脱型工程と、上記型枠から脱型した上記混練物の硬化体を炭酸化養生して、上記炭酸化硬化体を得る炭酸化養生工程を含む、水硬性組成物の製造方法。
[15] 前記[13]に記載の水硬性組成物を製造するための方法であって、上記セメント組成物を構成する各材料、上記水、及び上記骨材を用いて、これらの混合物である混練物を調製する混練物調製工程と、上記混練物を型枠内に打設する打設工程と、上記型枠内の上記混練物が硬化した後に、上記混練物の硬化体を上記型枠から脱型する脱型工程と、上記型枠から脱型した上記混練物の硬化体を炭酸化養生して、上記炭酸化硬化体を得る炭酸化養生工程を含む、水硬性組成物の製造方法。
本発明のセメント組成物は、水を加えて硬化体とするときに、強度発現性に優れたものである。
また、本発明のセメント組成物は、水を加えて硬化物とする際の養生過程において炭酸化養生等を行うことによって、多量の二酸化炭素を吸収、固定化することにより、排出される二酸化炭素の総量を低減することができる。
さらに、本発明のセメント組成物を構成する(ii)焼成物の粉砕物の原料組成を調整し、ポルトランドセメントに比べて、CaOの含有率を小さくすることによって、製造時の二酸化炭素の排出量を削減することができる。また、上記焼成物の製造時の焼成温度を、ポルトランドセメントの製造時の焼成温度に比べて低くすることによって、焼成用の燃料から生じる二酸化炭素の排出量を削減することができる。
[セメント組成物A]
本発明のセメント組成物の一例は、(A)(i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、(ii)2CaO・SiO(以下、「CS」ともいう。)及び2CaO・Al・SiO(以下、「CAS」ともいう。)を含む焼成物の粉砕物であって、以下の(1)~(2)の条件を満たす焼成物の粉砕物、を含む粉末状セメント含有物、並びに、(B)(iii)アミンを含むものである(以下、「セメント組成物A」ともいう)。
(1)上記2CaO・SiO100質量部に対する上記2CaO・Al・SiOの量が10~100質量部であること
(2)上記焼成物が3CaO・Al(以下、「CA」ともいう。)を含まない、又は、上記2CaO・SiO100質量部に対して15質量部以下の量で含むこと
以下、詳しく説明する。
[(A)成分:粉末状セメント含有物]
粉末状セメント含有物は、(i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、(ii)2CaO・SiO及び2CaO・Al・SiOを含む焼成物の粉砕物であって、上記(1)~(2)の条件を満たす焼成物の粉砕物を含むものである。
〔(i)成分:ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物〕
ポルトランドセメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。
また、ポルトランドセメントクリンカ粉砕物の例としては、上述の各種ポルトランドセメントのクリンカの粉砕物が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、コストや汎用性等の観点から、普通ポルトランドセメントまたは普通ポルトランドセメントクリンカの粉砕物が好ましい。ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物のブレーン比表面積は、好ましくは2,500~5,000cm/g、より好ましくは3,000~4,500cm/gである。上記ブレーン比表面積が2,500cm/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が5,000cm/g以下であれば、セメント組成物の硬化前の流動性がより向上する。
粉末状セメント含有物中のポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物の含有率は、好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%、特に好ましくは25~40質量%である。上記含有率が10質量%以上であれば、水硬性組成物の硬化体の強度をより大きくすることができる。上記含有率が60質量%以下であれば、(ii)焼成物の粉砕物の含有率がより大きくなるため、上述の二酸化炭素の排出量の削減をより一層実現することができる。
セメント組成物A中のポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物の含有率は、好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~50質量%、特に好ましくは25~40質量%である。上記含有率が10質量%以上であれば、硬化体の強度をより大きくすることができる。上記含有率が60質量%以下であれば、(ii)焼成物の粉砕物の含有率がより大きくなるため、上述の二酸化炭素の排出量の削減をより一層実現することができる。
〔(ii)成分:CSとCASを含む焼成物の粉砕物〕
SとCASを含む焼成物(以下、単に「焼成物」ともいう。)において、CS100質量部に対するCASの量は10~100質量部、好ましくは20~80質量部、より好ましくは25~70質量部、特に好ましくは30~60質量部である。上記量が10質量部未満である焼成物は、炭酸化養生時の水硬性組成物(例えば、モルタル)の炭酸化が進みにくくなり、初期材齢における二酸化炭素の吸収量が少なくなる。上記量が100質量部を超える場合、相対的にCSの量が少なくなるため、セメント組成物の強度発現性が低下するともに、長期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量が少なくなる。
焼成物がCAを含む場合、CS100質量部に対するCAの量は15質量部以下、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、特に好ましくは1~3質量部である。上記量が15質量部を超える焼成物は製造が困難である。また、上記量が15質量部以下であれば、水硬性組成物の硬化前の流動性がより向上する。
焼成物は4CaO・Al・Fe(以下、「CAF」ともいう。)を含んでいてもよい。
S100質量部に対するCAFの量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは0.5~15質量部、特に好ましくは1.0~10質量部である。上記量が30質量部以下であれば、水硬性組成物の初期材齢の水和活性をより向上させることができる。
S100質量部に対するCAF及びCASの合計量は、好ましくは10~100質量部、より好ましくは20~90質量部、特に好ましくは30~80質量部である。上記量が10質量部以上である焼成物は、炭酸化養生時の水硬性組成物(例えば、モルタル)の炭酸化が進みやすくなり、初期材齢における二酸化炭素の吸収量がより多くなる。上記量が100質量部以下であると、相対的にCSの量が多くなるため、セメント組成物の強度発現性がより向上するともに、長期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量がより多くなる。
AS100質量部に対するCAFの量は、好ましくは210質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。上記量が210質量部以下であれば、水硬性組成物の初期材齢の水和活性をより向上させることができる。
焼成物中のCS(ビーライト)の含有率は、好ましくは50~80質量%、より好ましくは55~75質量%、特に好ましくは60~70質量%である。上記含有率が50質量%以上であれば、セメント組成物の長期強度発現性がより向上する。上記含有率が80質量%以下であれば、セメント組成物の初期強度発現性がより向上する。
焼成物中のCASの含有率は、好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~50質量%、特に好ましくは25~40質量%である。上記含有率が10質量%以上であれば、水硬性組成物の炭酸化が進みやすくなり、初期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量がより多くなる。上記含有率が60質量%以下であれば、相対的にCSの量が多くなるため、セメント組成物の強度発現性がより向上するともに、長期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量がより多くなる。
焼成物中のCA(アルミネート相)の含有率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは0.1~5質量%、特に好ましくは0.5~3.5質量%である。上記含有率が10質量%以下であれば、水硬性組成物の硬化前の流動性がより向上する。
焼成物中のCAF(フェライト相)の含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。上記含有率が20質量%以下であれば、水硬性組成物の初期材齢の水和活性をより向上することができる。
焼成物中のCS(エーライト;3CaO・SiO)の含有率は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。上記含有率が5質量%以下であれば、水硬性組成物の硬化前の流動性をより向上することができる。
焼成物(特に、石灰石を原料として用いた場合)中のCaOの含有率は、好ましくは50~59質量%、より好ましくは52~58質量%、特に好ましくは53~57質量%である。上記割合が50質量%以上であればセメント組成物の強度発現性が向上する。上記含有率が59質量%以下であれば、焼成時の二酸化炭素の排出量をより低減することができる。
焼成物中のSiOの含有率は、好ましくは15~45質量%、より好ましくは20~40質量%、特に好ましくは25~35質量%である。
焼成物中のAlの含有率は、好ましくは1~10質量%、より好ましくは3~9質量%、特に好ましくは4~8質量%である。
焼成物中のFeの含有率は、好ましくは1~8質量%、より好ましくは2~6質量%、特に好ましくは3~5質量%である。
焼成物の鉱物組成(CS、CAS、CA、及びCAF等の含有率)は、焼成物に対してX線回折(XRD)/リートベルト法等を用いて定量することができる。具体的には、各鉱物の理論プロファイルを、焼成物の粉末X線回折チャート(実測プロファイル)にフィッティングしてリートベルト解析により定量できる。該定量には、市販の解析ソフトを使用することができる。また、顕微鏡観察や電子線後方散乱回折を用いたポイントカウンティング等によっても上記鉱物組成を定量することができる。
上述した焼成物は、例えば、産業廃棄物、一般廃棄物、および建設発生土等から選ばれる1種以上を原料として、目標とする焼成物の鉱物組成、化学組成等となるように原料を調製した後、この原料を、例えば1,000~1,400℃(好ましくは1,200~1,400℃、さらに好ましくは1,300~1400℃)で焼成することで製造することができる。
また、上記原料だけでは、焼成物の鉱物組成が目標とする数値になるように調製することが難しい場合は、カルシウム原料(例えば、石灰石)、ケイ素原料、アルミニウム原料、および鉄原料等の原料を用いてもよい。
得られた焼成物は、例えば、ボールミルやロッドミル等の粉砕機を用いて適宜粉砕される。粉末状セメント含有物が石膏を含む場合、焼成物と石膏を同時に粉砕し混合してもよい。焼成物のブレーン比表面積は、好ましくは2,500~5,000cm/g、より好ましくは3,000~4,500cm/gである。上記ブレーン比表面積が2,500cm/g以上であれば、水和反応がより促進され、二酸化炭素の吸収量がより増大し、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が5,000cm/g以下であれば、水硬性組成物の硬化前の流動性がより向上する。
粉末状セメント含有物中の焼成物の粉砕物の含有率は、好ましくは10~90質量%、より好ましくは30~85質量%、さらに好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~80質量%、特に好ましくは60~80質量%である。上記含有率が10質量%以上であれば、初期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量がより多くなる。上記量が90質量%以下であれば、ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物の量が相対的に少なくなることによるセメント組成物の強度発現性の低下が起こりにくくなる。
ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物100質量部に対する、焼成物の粉砕物の量は、好ましくは65~500質量部、より好ましくは100~400質量部、さらに好ましくは150~350質量部、特に好ましくは200~320質量部である。上記量が65質量部以上であれば、初期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量がより多くなる。上記量が500質量部以下であれば、ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物の量が相対的に少なくなることによるセメント組成物の強度発現性の低下が起こりにくくなる。
また、セメント組成物中の焼成物の粉砕物の含有率は、好ましくは10~90質量%、より好ましくは30~85質量%、さらに好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~80質量%、特に好ましくは60~80質量%である。上記含有率が10質量%以上であれば、初期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量がより多くなる。上記量が90質量%以下であれば、ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物の量が相対的に少なくなることによるセメント組成物の強度発現性の低下が起こりにくくなる。
(A)粉末状セメント含有物中の(i)成分と(ii)成分の合計量の割合は、セメント組成物の強度発現性の向上及び二酸化炭素の吸収量をより大きくする観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
〔(iv)成分:アルカリ土類金属含有物〕
粉末状セメント含有物は、(iv)アルカリ土類金属含有物を含んでいてもよい。粉末状セメント含有物が、アルカリ土類金属含有物を含むことで、セメント組成物の強度発現性をより向上することができる。
アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属の例としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、及びベリリウム(Be)等が挙げられる。これらは一種が単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
中でも、セメント組成物の強度発現性、及び、入手の容易性等の観点から、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)が好ましく、マグネシウム(Mg)がより好ましい。
また、セメント組成物に含まれるアルカリ土類金属の形態は、セメント組成物の強度発現性向上の観点から、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、アルカリ土類金属の酸化物がより好ましい。
アルカリ土類金属含有物が、アルカリ土類金属として、マグネシウムを含む場合のマグネシウム源(マグネシウム含有物質)としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、及び塩化マグネシウム等が挙げられる。中でも、セメント組成物の強度発現性がより向上する観点から、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムが好ましく、酸化マグネシウムがより好ましい。
これらは、試薬であってもよいが、ペリクレース(酸化マグネシウムを含む鉱物)、軽焼マグネシア(MgO)、軽焼マグネシアの部分水和物、軽焼ドロマイト(CaO・MgO)、及び軽焼ドロマイトの部分水和物等のマグネシウム含有物質であってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ土類金属含有物が、アルカリ土類金属として、カルシウムを含む場合のカルシウム源(カルシウム含有物質)としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、及び塩化カルシウム等が挙げられる。これらは、試薬であってもよいが、生石灰、消石灰、生コンクリートスラッジ、及び廃コンクリート等のカルシウム含有物質であってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、セメント組成物の強度発現性がより向上する観点から、酸化カルシウム、水酸化カルシウムが好ましく、酸化カルシウムがより好ましい。
なお、生コンクリートスラッジは、生コンクリート工場やコンクリート製品工場において、コンクリートの製造工程で発生するスラッジを、ふるい等を用いてふるい分けすることにより、セメント水和物やセメント未水和物を含む微粉として採取された粉末状のものが好ましい。生コンクリートスラッジは、炭酸化が容易なものであり、また、CaOの含有率が、通常、30質量%以上のものである。
また、廃コンクリートは、コンクリート構造物等を解体する際に発生するコンクリート廃棄物を破砕した後、該破砕物から骨材を除去した、セメント水和物やセメント未水和物を含む微粉末状のものが好ましい。廃コンクリートの微粉末は炭酸化が容易であり、また、CaOの含有率が、通常、15質量%以上のものである。
また、アルカリ土類金属含有物は、水硬性組成物の強度発現性の向上等の観点から、通常、粉末状のものである。
粉末状セメント含有物中のアルカリ土類金属(ただし、アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属(換言すると、粉末状セメント含有物に含まれるアルカリ土類金属含有物以外の材料に含まれているアルカリ土類金属)としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)の含有率は、酸化物換算で0.1~10質量%、より好ましくは0.2~8質量%、特に好ましくは0.5~6質量%である。上記含有率が0.1質量%未満であると、セメント組成物の強度発現性が低下する。上記含有率が10質量%を超えると、セメント組成物の初期強度発現性(例えば、材齢1日)が低下する場合がある。
なお、粉末状セメント含有物が複数のアルカリ土類金属(ただし、アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)を含む場合、上記含有率は、その合計の含有率である。
上述した(i)~(ii)成分、及び、(v)~(vi)成分(後述)等には、ペリクレース(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化カルシウム(CaO;特に遊離酸化カルシウム)、水酸化カルシウム(Ca(OH))等が含まれる場合がある。上記アルカリ土類金属の含有率には、アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外に、これらのアルカリ土類金属も含まれるものとする。
なお、(i)~(iii)成分、及び、(v)~(vi)成分に含まれる、ケイ酸塩鉱物(例えば、ビーライト、エーライト)、アルミネート相、フェライト相に固溶しているアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)や、石膏(CaSO)、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウム以外のアルカリ土類金属)は、本願発明の効果に影響を及ぼすものではないか、ごく少量であるため本発明の効果にほとんど影響を及ぼさないものである。
(i)~(ii)成分、及び、(v)~(vi)成分等に含まれるペリクレース(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))の含有率は、X線回折(XRD)/リートベルト法等によって測定することができる。
(i)~(ii)成分、及び、(v)~(vi)成分等に含まれる酸化カルシウム(CaO)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))の含有率は、X線回折(XRD)/リートベルト法等や、「JCAS I-01-1997(遊離酸化カルシウムの定量方法)」に準拠して測定することができる。
また、アルカリ土類金属としてマグネシウムを含む場合、粉末状セメント含有物中のマグネシウムの含有率は、酸化物換算で、好ましくは1.0~10質量%、より好ましくは2.5~8.0質量%、特に好ましくは4.0~6.0質量%である。上記含有率が1.0質量%以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記含有率が10質量%を超えると、セメント組成物の初期強度発現性(例えば、材齢1日)が低下する場合がある。
また、アルカリ土類金属としてカルシウムを含む場合、粉末状セメント含有物中のカルシウムの含有率は、酸化物換算で、好ましくは0.8~10質量%、より好ましくは1.0~4.0質量%、さらに好ましくは1.2~3.0質量%、特に好ましくは1.5~2.0質量%である。上記含有率が0.8質量%以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記含有率が10.0質量%を超えると、セメント組成物の初期強度発現性(例えば、材齢1日)が低下する場合がある。
〔(v)成分:石膏〕
粉末状セメント組成物中のSOの含有率は、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは0.5~5.0質量%、さらに好ましくは1.0~4.5質量%、特に好ましくは1.5~4.0質量%である。上記含有率が6.0質量%以下であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上することができる。
(i)成分としてポルトランドセメントクリンカを用いた場合や、(ii)成分のSOの含有率が少ない場合等、粉末状セメント含有物中のSOの含有率が、所望の数値範囲内にならない場合には、粉末状セメント含有物中のSOの含有率を上述した数値範囲内になるように調整する目的で、粉末状セメント組成物の材料として、(i)~(ii)、及び(iv)成分の他に、石膏を用いることができる。
石膏の種類の例としては、特に限定されるものではなく、例えば、天然二水石膏、排脱石膏(排煙脱硫石膏)、リン酸石膏、チタン石膏、フッ酸石膏等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。石膏の形態(水和物であるか否か)の例としては、二水石膏、半水石膏及び無水石膏が挙げられる。これらは1種の形態のみからなるものであってもよく、2種以上の形態を含むものであってもよい。
また、粉末状セメント含有物は、(i)成分がポルトランドセメントクリンカ粉砕物である場合、(i)~(ii)、及び(iv)成分に加えて、好ましくは石膏を含む。
〔(vi)成分:その他〕
粉末状セメント含有物は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて、上述の各成分((i)~(ii)、及び(iv)成分)以外に、他の材料を配合してもよい。必要に応じて配合される他の材料としては、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等の各種混和材や、粉末状の各種混和剤が挙げられる。また、粉末状セメント含有物は、アルカリ金属を含んでいてもよい。
粉末状セメント含有物中の他の材料の含有率は、粉末状セメント含有物の強度発現性等の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
[(B)成分]
セメント組成物Aは、(B)成分として、(iii)アミンを含む。
〔(iii)成分:アミン〕
アミンの例としては、アルカノールアミン、アルキルアミン、ポリアミン、及びヒドロキシルアミン等の鎖状アミン、並びに、環状アミン等の水溶性アミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、強度発現性の向上、及び、二酸化炭素の固定化量をより大きくする観点から、鎖状アミンが好ましく、アルカノールアミンがより好ましい。
ここで、アルカノールアミンとは、分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有するアミンである。
アルカノールアミンの例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリス(2-ヒドロキシブチル)アミン、ジグリコールアミン、等が挙げられる。中でも、入手の容易性や、強度発現性向上の観点から、モノエタノールアミン、ジエタノール、トリイソプロパノールアミンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカノールアミンの一部がポリマーと結合している構造のアルカノールアミンを用いてもよい。
また、アルカノールアミンとして、二酸化炭素回収装置から得た使用済みのアルカノールアミンを用いてもよい。工場等の排ガスから二酸化炭素を回収するためのアミン系二酸化炭素回収装置では、通常、劣化したアルカノールアミンを含む液は廃棄されている。しかし、本発明では、上記廃液を有効に利用することができる。
なお、アルカノールアミンは、粉砕助剤として知られており、粉砕助剤の用途も兼ねて使用してもよい。
上述した(A)粉末状セメント含有物100質量部に対する(B)アミンの量は、好ましくは0.001~5.0質量部、より好ましくは0.005~4.0質量部、さらに好ましくは0.02~2.0質量部、さらに好ましくは0.05~1.8質量部、さらに好ましくは0.1~1.6質量部、さらに好ましくは0.5~1.4質量部、特に好ましくは0.8~1.2質量部である。上記量が0.001質量部以上であれば。二酸化炭素の固定化量をより多くし、強度発現性をより向上することができる。上記量が5.0質量部以下であれば、水硬性組成物の硬化前の流動性が、悪化することを防ぐことができる。
また、セメント組成物Aは、運搬及び水硬性組成物の製造の容易性等の観点から、好ましくは粉末状である。
[セメント組成物Aの製造方法]
セメント組成物Aの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、上述した(i)~(vi)成分等の各材料を混合して、セメント組成物を調製する方法が挙げられる。
各材料を混合する順番は特に限定されるものではなく、例えば、(a-1)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、CSとCASを含む焼成物の粉砕物と、アミンを同時に混合する方法、(a-2)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカと、CSとCASを含む焼成物を同時に粉砕し混合した後、得られた混合物とアミンを混合する方法、(a-3)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカと、CSとCASを含む焼成物と、アミンを同時に粉砕し混合する方法等が挙げられる。
特に、(a-3)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカと、CSとCASを含む焼成物と、アミンを同時に粉砕し混合する方法では、アミンは粉砕助剤としての効果も有する。
セメント組成物が、さらに、アルカリ土類金属含有物等の材料を含む場合、該材料は、通常、ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ、CSとCASを含む焼成物と同時に混合される。
また、(i)~(ii)成分を予め混合してなる粉末状セメント含有物、(iii)成分、水、及び骨材を混練(混合)して水硬性組成物(後述)を製造する方法において、(iii)成分は、水と予め混合され、水溶液とすることが好ましい。特に、(iii)成分として、二酸化炭素回収装置から得た使用済みのアルカノールアミン(アルカノールアミンを含む廃液)を用いる場合、上記方法において、水と予め混合することが好ましい。
各材料の配合量は、セメント組成物の各材料の含有率が、目標の数値範囲内となるように定められる。例えば、アルカリ土類金属含有物の量は、予め、各材料に含まれるアルカリ土類金属の含有率を測定等によって求めたうえで、セメント組成物中のアルカリ土類金属(ただし、上記アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)の含有率(酸化物換算)が、目標とする数値範囲内になるように、定められる。
[セメント組成物B]
本発明のセメント組成物の他の例は、(i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物、(ii)2CaO・SiO及び2CaO・Al・SiOを含む焼成物であって、上述した(1)~(2)の条件を満たす焼成物の粉砕物、並びに(iv)アルカリ土類金属含有物、を含むセメント組成物(以下、「セメント組成物B」ともいう。)であって、セメント組成物中のアルカリ土類金属(ただし、アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属(換言すると、セメント組成物に含まれるアルカリ土類金属含有物以外の材料に含まれているアルカリ土類金属)としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)の含有率が、酸化物換算で0.1~10質量%であるものである。
なお、セメント組成物Bは、上述した(iii)成分を含まないものである。
セメント組成物Bにおいて、(i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物、(ii)2CaO・SiOと2CaO・Al・SiOを含む焼成物であって、上述した(1)~(2)の条件を満たす焼成物の粉砕物、及び(iv)アルカリ土類金属含有物は、各々、セメント組成物Aで使用した、(i)成分、(ii)成分、及び(iv)成分と同様のものを使用することができる。
セメント組成物B中のポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物の含有率は、好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~50質量%、特に好ましくは20~40質量%である。上記含有率が10質量%以上であれば、硬化体の強度をより大きくすることができる。上記含有率が60質量%以下であれば、(ii)焼成物の粉砕物の含有率がより大きくなるため、上述の二酸化炭素の排出量の削減をより一層実現することができる。
セメント組成物Bにおいて、ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物100質量部に対する、焼成物の粉砕物の量は、好ましくは30~500質量部、より好ましくは65~450質量部、さらに好ましくは100~400質量部、さらに好ましくは150~350質量部、特に好ましくは200~320質量部である。上記量が65質量部以上であれば、初期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量がより多くなる。上記量が500質量部以下であれば、ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物の量が相対的に少なくなることによるセメント組成物の強度発現性の低下が起こりにくくなる。
また、セメント組成物B中の焼成物の粉砕物の含有率は、好ましくは10~90質量%、より好ましくは30~85質量%、さらに好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~80質量%、特に好ましくは60~80質量%である。上記含有率が10質量%以上であれば、初期材齢における水硬性組成物の二酸化炭素の吸収量がより多くなる。上記量が90質量%以下であれば、ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物の量が相対的に少なくなることによるセメント組成物の強度発現性の低下が起こりにくくなる。
セメント組成物B中の(i)成分と(ii)成分の合計量の割合は、セメント組成物の強度発現性の向上及び二酸化炭素の吸収量をより大きくする観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
セメント組成物B中のアルカリ土類金属(ただし、アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属(換言すると、セメント組成物Bに含まれるアルカリ土類金属含有物以外の材料に含まれているアルカリ土類金属)としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)の含有率は、酸化物換算で0.1~10質量%、より好ましくは0.2~8質量%、特に好ましくは0.5~6質量%である。上記含有率が0.1質量%未満であると、セメント組成物の強度発現性が低下する。上記含有率が10質量%を超えると、セメント組成物の初期強度発現性(例えば、材齢1日)が低下する場合がある。
なお、セメント組成物Bが複数のアルカリ土類金属(ただし、アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)を含む場合、上記含有率は、その合計の含有率である。
上述した(i)~(ii)成分、(v)成分(後述)、及び(vi)成分(後述)等には、ペリクレース(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化カルシウム(CaO;特に遊離酸化カルシウム)、水酸化カルシウム(Ca(OH))等が含まれる場合がある。上記アルカリ土類金属の含有率には、アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外に、これらのアルカリ土類金属も含まれるものとする。
なお、(i)~(ii)成分、及び、(v)~(vi)成分に含まれる、ケイ酸塩鉱物(例えば、ビーライト、エーライト)、アルミネート相、フェライト相に固溶しているアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)や、石膏(CaSO)、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウム以外のアルカリ土類金属)は、本願発明の効果に影響を及ぼすものではないか、ごく少量であるため本発明の効果にほとんど影響を及ぼさないものである。
セメント組成物Bが、アルカリ土類金属としてマグネシウムを含む場合、セメント組成物B中のマグネシウムの含有率は、酸化物換算で、好ましくは1.0~10質量%、より好ましくは2.5~8質量%、特に好ましくは4.0~6質量%である。上記含有率が1.0質量%以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記含有率が10質量%を超えると、セメント組成物の初期強度発現性(例えば、材齢1日)が低下する場合がある。
また、セメント組成物Bが、アルカリ土類金属としてカルシウムを含む場合、セメント組成物B中のカルシウムの含有率は、酸化物換算で、好ましくは0.8~10質量%、より好ましくは1.0~4.0質量%、さらに好ましくは1.2~3.0質量%、特に好ましくは1.5~2.0質量%である。上記含有率が0.8質量%以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記含有率が10.0質量%を超えると、セメント組成物の初期強度発現性(例えば、材齢1日)が低下する場合がある。
セメント組成物B中のSOの含有率は、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは0.5~5.0質量%、さらに好ましくは1.0~4.5質量%、特に好ましくは1.5~4.0質量%である。上記含有率が6.0質量%以下であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上することができる。
(i)成分としてポルトランドセメントクリンカを用いた場合や、(ii)成分のSOの含有率が少ない場合等、セメント組成物B中のSOの含有率が、所望の数値範囲内にならない場合には、セメント組成物B中のSOの含有率を上述した数値範囲内になるように調整する目的で、セメント組成物Bの材料として、(i)~(ii)及び(iv)成分の他に、(v)成分として、石膏を用いることができる。
セメント組成物Bにおいて、(v)石膏としては、セメント組成物Aで使用した、(v)成分と同様のものを使用することができる。
セメント組成物Bの(i)成分がポルトランドセメントクリンカ粉砕物である場合、(i)~(ii)及び(iv)成分に加えて、石膏を含むことが好ましい。
セメント組成物Bは、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて、上述の各成分((i)、(ii)、(iv)、(v)成分)以外に、他の材料((vi)成分)を配合してもよい。
必要に応じて配合される他の材料としては、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等の各種混和材や、粉末状の各種混和剤が挙げられる。また、セメント組成物Bはアルカリ土類金属の他に、アルカリ金属を含んでいてもよい。
セメント組成物B中の他の材料の含有率は、セメント組成物の強度発現性等の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
また、セメント組成物Bは、運搬及び水硬性組成物の製造の容易性等の観点から、好ましくは粉末状である。
[セメント組成物Bの製造方法]
セメント組成物Bの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、上述した(i)~(ii)、(iv)~(vi)成分等の各材料を混合して、セメント組成物を調製する方法が挙げられる。
各材料を混合する順番は特に限定されるものではなく、例えば、(i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、CSとCASを含む焼成物の粉砕物と、粉末状のアルカリ土類金属含有物を同時に混合する方法、(ii)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカと、CSとCASを含む焼成物と、塊状のアルカリ土類金属含有物を同時に粉砕し混合する方法、(iii)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカと、CSとCASを含む焼成物を同時に粉砕し混合した後、得られた混合物と粉末状のアルカリ土類金属含有物を混合する方法等が挙げられる。
また、ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカと、CSとCASを含む焼成物を粉砕する場合、粉砕助剤を用いてもよい。
各材料の配合量は、セメント組成物の各材料の含有率が、目標の数値範囲内となるように定められる。例えば、アルカリ土類金属含有物の量は、予め、各材料に含まれるアルカリ土類金属の含有率を測定等によって求めたうえで、セメント組成物中のアルカリ土類金属(ただし、上記アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属以外のアルカリ土類金属としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び水酸化カルシウムのみが含まれるものとする。)の含有率(酸化物換算)が、目標とする数値範囲内になるように、定められる。
[水硬性組成物]
上述したセメント組成物A又はBは、水を含むことで、硬化させることができる。
本発明の水硬性組成物の一例は、上述したセメント組成物A、水、及び骨材を含み、粉末状セメント含有物100質量部に対する水の量が25~70質量部であるものである(以下、「水硬性組成物A」ともいう。)。
本発明の水硬性組成物の他の例は、上述したセメント組成物B、水、及び骨材を含み、セメント組成物100質量部に対する水の量が25~70質量部であるものである(以下、「水硬性組成物B」ともいう。)
なお、本明細書中、「水硬性組成物」とは、硬化前の流動性を有する形態および硬化後の形態を包含するものである。
水としては、特に限定されるものではなく、水道水、「JIS A 5308:2019(レディーミクストコンクリート)」に規定される回収水等が挙げられる。
水硬性組成物Aにおいて、粉末状セメント含有物100質量部に対する水の量は、25~70質量部、好ましくは30~65質量部、より好ましくは40~60質量部、特に好ましくは45~55質量部である。上記量が25質量部未満であると、水硬性組成物の硬化前の流動性が低下する。上記量が70質量部を超えると、水硬性組成物の硬化体の強度が低下する。
水硬性組成物Bにおいて、セメント組成物B100質量部に対する水の量は、25~70質量部、好ましくは30~65質量部、より好ましくは40~60質量部、特に好ましくは45~55質量部である。上記量が25質量部未満であると、水硬性組成物の硬化前の流動性が低下する。上記量が70質量部を超えると、水硬性組成物の硬化体の強度が低下する。
骨材としては、細骨材のみ、または、細骨材と粗骨材の組み合わせが挙げられる。また、天然骨材、人工骨材、再生骨材のいずれも用いることができる。
細骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石細骨材、スラグ細骨材、軽量細骨材、クリンカ細骨材、ガラス骨材、及びCCU細骨材(再生骨材、廃コンクリート、高炉スラグ、および製鋼スラグから選ばれる1種以上に二酸化炭素を固定した細骨材)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粗骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、石灰石粗骨材、スラグ粗骨材、軽量粗骨材、クリンカ粗骨材、ガラス骨材、及びCCU粗骨材(再生骨材、廃コンクリート、高炉スラグ、および製鋼スラグから選ばれる1種以上に二酸化炭素を固定した粗骨材)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水硬性組成物が粗骨材を含む場合、細骨材率(細骨材/(細骨材+粗骨材)の体積比を100分率で表したもの)は、好ましくは5~70%、より好ましくは10~60%、特に好ましくは20~50%である。細骨材率が前期範囲内であれば、水硬性組成物の硬化前のワーカビリティや成型のし易さが向上する。
水硬性組成物A中の骨材の含有量(細骨材と粗骨材を併用する場合はその合計量)は、粉末状セメント含有物100質量部に対して、好ましくは200~750質量部、より好ましくは300~650質量部である。
水硬性組成物B中の骨材の含有量(細骨材と粗骨材を併用する場合はその合計量)は、セメント組成物B100質量部に対して、好ましくは200~750質量部、より好ましくは300~650質量部である。
上記含有量が前記数値範囲内であれば、水硬性組成物の硬化体の強度がより大きくなり、また、硬化体の収縮率がより小さくなる。
水硬性組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて、セメント分散剤(減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤)、AE剤、消泡剤、収縮低減剤等の各種混和剤や、有機繊維や、ガラス繊維等を含んでいてもよい。
本発明の水硬性組成物が、炭酸化してなる炭酸化硬化体(特に、炭酸化養生を行ってなる硬化体)である場合、水硬性組成物の強度をより大きくすることができる。
炭酸化硬化体は、例えば、水硬性組成物に対して炭酸化養生を行うことで得ることができる。炭酸化養生によって、水硬性組成物に二酸化炭素が固定化され、水硬性組成物の組織が緻密化することで、水硬性組成物の強度をより大きくすることができる。
炭酸化養生の方法としては、特に限定されないが、例えば、水硬性組成物を二酸化炭素に晒して炭酸化養生する方法や、水硬性組成物の混練時に、該水硬性組成物中に二酸化炭素を吹き込む方法(この場合、二酸化炭素をより多く吸収させることができる。)等が挙げられる。
なお、水硬性組成物の炭酸化(炭酸化養生以外のもの)には、コンクリート製品、コンクリート構造物、またはコンクリート舗装等の形態で、長期間にわたり空気中の二酸化炭素を吸収して自然に炭酸化が行われる態様も含まれるものとする。
セメント組成物1トンあたりの二酸化炭素の固定量は、好ましくは80~400kg/トン、より好ましくは100~350kg/トン、さらに好ましくは150~330kg/トン、さらに好ましくは200~315kg/トン、特に好ましくは250~300kg/トンである。上記固定化量が80kg/トン以上であれば、排出される二酸化炭素の総量をより低減することができる。上記固定化量が400kg/トン以下であれば、生産性をより向上することができる。
[水硬性組成物の製造方法]
炭酸化養生を行ってなる水硬性組成物の硬化体を製造するための方法の一例としては、セメント組成物を構成する各材料、水、及び骨材を用いて、これらの混合物である混練物を調製する混練物調製工程と、混練物を型枠内に打設する打設工程と、型枠内の混練物が硬化した後に、混練物の硬化体を型枠から脱型する脱型工程と、型枠から脱型した混練物の硬化体を炭酸化養生して、炭酸化硬化体を得る炭酸化養生工程を含む方法が挙げられる。
以下、工程ごとに詳しく説明する。
[混練物調製工程]
本工程は、セメント組成物を構成する各材料、水、及び骨材を用いて、これらの混合物である混練物を調製する工程である。
水硬性組成物Aにおいて、セメント組成物Aを構成する各材料、水、及び骨材を用いて、これらの混合物である混練物を調製する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、(a-1)予め調製されたセメント組成物Aと、水と、骨材を同時に混練(混合)する方法、(a-2)(A)成分を構成する(i)~(ii)成分を予め混合してなる(A)粉末状セメント含有物と、(B)成分と、水と、骨材を同時に混練(混合)する方法等が挙げられる。
水硬性組成物Bにおいて、セメント組成物Bを構成する各材料、水、及び骨材を用いて、これらの混合物である混練物を調製する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、(b-1)予め調製されたセメント組成物Bと、水と、骨材を同時に混合する方法、(b-2)予め混合された(i)~(ii)成分の混合物と、(iv)成分と、水と、骨材を同時に混合する方法等が挙げられる。
各材料を混練する方法は、特に限定されるものではない。また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、例えば、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。
[打設工程]
本工程は、前工程で得られた混練物を型枠内に打設する工程である。
打設方法としては、特に限定されるものではなく、流し込み成形等の慣用の方法を使用することができる。
混練物を型枠内に打設した後、脱型するまでの養生方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、気中養生、湿空養生、水中養生、封かん養生、及び蒸気養生等の一般的な養生方法を採用することができる。
[脱型工程]
本工程は、型枠内の混練物が硬化した後に、混練物が硬化してなる水硬性組成物の硬化体を型枠から脱型する工程である。
[炭酸化養生工程]
本工程は、型枠から脱型した水硬性組成物の硬化体を炭酸化養生して、水硬性組成物の硬化体を、炭酸化してなる炭酸化硬化体を得る工程である。
また、炭酸化養生における二酸化炭素ガスの濃度は、炭酸化養生における二酸化炭素の吸収をより多くする観点からは、好ましくは1体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上、特に好ましくは60体積%以上である。また、養生設備費等にかかるコストを低減する等の観点からは、二酸化炭素ガスの濃度は、好ましくは95体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下である。
炭酸化養生における温度は、好ましくは5~100℃、より好ましくは10~90℃、さらに好ましくは15~80℃、さらに好ましくは20~75℃、さらに好ましくは25~70℃、さらに好ましくは30~65℃、さらに好ましくは30~50℃、特に好ましくは30~40℃である。上記温度が5℃以上であれば、炭酸化の効率がより向上し、硬化体の強度がより大きくなる。上記温度が100℃以下であれば、炭酸化養生にかかるエネルギーコストをより小さくすることができる。
また、炭酸化養生における相対湿度は、好ましくは20~90%、より好ましくは30~80%、特に好ましくは40~70%である。上記相対湿度が20%以上であれば、炭酸化の効率がより向上し、硬化体の強度がより大きくなる。上記相対湿度が90%以下であれば、養生設備等にかかるコストをより低減することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[A.(ii)成分である焼成物の製造]
下水汚泥、建設発生土、石灰石、及び粘土を原料に用いて、表1に示す化学組成(実施例での実測値)を含む目標の化学組成範囲内となるように、各原料を混合し、焼成用原料に調製した後、ロータリーキルンを用いて1,370℃で、この焼成用原料を焼成して、焼成物を得た。なお、焼成の際の燃料としては、重油のほかに、廃油や廃プラスチックを使用した。
次いで、焼成物を粉砕した後、得られた粉砕物について、X線回折装置(ブルカージャパン社製、商品名「D8 ADVANCE A-25型」)を用いて、粉砕物の粉末X線回折(XRD)パターンを取得した。粉末X線回折の測定条件は、ターゲット:CuKα、管球条件:40kV-40mA、走査範囲:2θ=5~65°、ステップ幅:0.023°/step、及び測定時間:0.13秒/stepとした。得られた粉末XRDパターンを、解析ソフトウェア(ブルカージャパン社製、商品名「DIFFRAC.EVA」)を用いて定性分析したところ、CS(β-CS)、CAS、CA、及びCAのピークが認められた。一方、MgO(ペリクレース)のピークは認められなかった。
解析ソフトウェア(ブルカージャパン社製、商品名「DIFFRAC.TOPAS ver.6」を用いて、リートベルト法によって、CS(β-CS)、CAS、CA、及びCAの各鉱物の理論プロファイルを、粉末XRDの結果から得られた実測プロファイルにフィッティングすることにより、粉砕物の鉱物組成を測定した。結果を表2に示す。
「JCAS I-01-1997(遊離酸化カルシウムの定量方法)」に準拠して、焼成物中のf.CaOの含有率を測定したところ、0.3質量%であった。
焼成物には、Mg(OH)、Ca(OH)は含まれていなかった。
焼成物の粉砕物のブレーン比表面積は、3,310cm/gであった。
Figure 0007636636000001
Figure 0007636636000002
[B.水硬性組成物の調製]
[使用材料]
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(ブレーン比表面積:3,290cm/g);太平洋セメント社製;表3に示す化学組成を有しかつ表4に示す鉱物組成を有するもの;セメントの化学組成は、「JIS R 5204:2019(セメントの蛍光X線分析方法)」に準拠して測定した。X線回折において、ペリクレース(MgO)のピークは認められなかった。セメントの鉱物組成は、解析ソフトウェアの鉱物の設定を、表4に示す種類の鉱物に変更した以外は、上述の焼成物の粉砕物と同様にして測定した。セメントの「JCAS I-01-1997(遊離酸化カルシウムの定量方法)」に準拠して測定されたf.CaOの含有率は0.2質量%であった。セメントには、Mg(OH)、Ca(OH)は含まれていなかった。
(2)焼成物:上述したもの
(3)石膏:排脱二水石膏
(4)アミンA:モノエタノールアミン(2-アミノエタノール)
(5)アミンB:ジエタノールアミン(2,2´‐イミノジエタノール)
(6)アミンC:トリイソプロパノールアミン水溶液(トリイソプロパノールアミンの含有率:85質量%)
(7)アミンD:2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール
(8)MgO:ペリクレース(工業試薬、MgO含有率:95.0質量%以上)
(9)MgSO4・7HO:試薬
(10)CaO:硬焼生石灰(工業試薬、CaO含有率:93.0質量%以上)
(11)生コンクリートスラッジ:前処理として生コンクリートスラッジを105℃で乾燥した後、粉砕したもの、BET比表面積14.71m/g、平均粒径(頻度基準)46.9μm、50%体積累積粒径(D50)20.4μm、表5に示す化学組成(「JIS R 5204:2019(セメントの蛍光X線分析方法)」に準拠して測定したもの)を有するもの、水酸化カルシウム量15.8質量%
(12)細骨材:セメント協会標準砂
Figure 0007636636000003
Figure 0007636636000004
Figure 0007636636000005
[実施例1~3]
焼成物と排脱二水石膏を、質量比が95.67:4.33となる量で混合粉砕して、焼成物の粉砕物及び排脱二水石膏の混合物を得た。
上記混合物と普通ポルトランドセメントを、質量比が75:25(混合物:普通ポルトランドセメント)となる量で混合して、粉末状セメント含有物を得た。粉末状セメント含有物について、化学組成(実測値)を表6に、鉱物組成(計算値)を表7にそれぞれ示す。なお、粉末状セメント含有物の化学組成は、「JIS R 5204:2019(セメントの蛍光X線分析方法)」に準拠して測定した。鉱物組成は焼成物の粉砕物と同様にして測定した。粉末状セメント含有物のブレーン比表面積は、3,300cm/gであった。
得られた粉末状セメント含有物と、表8に示す種類のアミンと、細骨材と、水を、表8に示す各量(表8中の「水/粉末状セメント含有物」は、粉末状セメント含有物に対する水の質量比を示す。)で用いて、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して供試体を作製して1日経過後に脱型し、温度65℃、相対湿度60%、二酸化炭素濃度80体積%の養生槽内で、炭酸化養生を行った。炭酸化養生を行いつつ、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢7日(供試体を作製後、脱型するまでの1日を除く。)の時点における供試体(水硬性組成物の硬化体)の圧縮強さ及び曲げ強さを測定した。
上述の圧縮強さ及び曲げ強さの測定と同様にして供試体を作製し、脱型後、温度65℃、相対湿度60%、二酸化炭素濃度20体積%の養生槽内で、炭酸化養生を行った。材齢3日、7日、14日の各時点の供試体を粉砕した後、炭素・硫黄分析装置にて供試体中の炭素量を測定し、得られた測定値をCOに換算することで供試体中の二酸化炭素量(A)を求めた。次いで、炭素硫黄分析装置で測定した各供試体(水硬性組成物の硬化体)に含まれる炭素量と水硬性組成物の配合に基づき、炭酸化養生前の供試体に含まれる二酸化炭素量(B)を求め、供試体の二酸化炭素量の固定化量を、炭酸化養生前の二酸化炭素量と養生後の二酸化炭素量の差(A-B)から算出した。
二酸化炭素の固定化量(kg/トン)は、供試体の二酸化炭素の固定化量を供試体に使用されるセメントの量で除すことで算出した。
また、炭酸化養生を材齢3日まで行った後、養生槽から供試体を取り出して、温度20℃、相対湿度60%の恒温恒湿室においてさらに4日間養生した供試体(表8中、「3日+4日」と示す。)の二酸化炭素の固定化量について、同様にして測定した。
[比較例1]
アミンを使用しない以外は実施例1と同様にして、材齢7日における水硬性組成物の圧縮強さ及び曲げ強さ等を測定した。
結果を表9に示す。
Figure 0007636636000006
Figure 0007636636000007
Figure 0007636636000008
Figure 0007636636000009
表9から、実施例1~3の圧縮強さ(55.9~68.2N/mmは、比較例1の圧縮強さ(55.6N/mm)よりも大きいことがわかる。
また、実施例1~3の材齢7日の曲げ強さ(10.4~12.2N/mm)は、比較例1の材齢7日の曲げ強さ(10.4N/mm)と同様以上であることがわかる。
さらに、実施例1~3の二酸化炭素の固定量(材齢3日:232~236kg/トン、材齢7日:237~240kg/トン、材齢14日:239~247kg/トン、材齢3日+4日:236~238kg/トン)は、比較例1の二酸化炭素の固定量(材齢3日:227kg/トン、材齢7日:231kg/トン、材齢14日:234kg/トン、材齢3日+4日:233g/トン)よりも大きいことがわかる。
[実施例4~8]
実施例1で調製した粉末状セメント含有物と表10に示す種類のアルカリ土類金属含有物を、表10に示す配合量で混合して、セメント組成物を得た。なお、表10中、「アルカリ土類金属の含有率」は、セメント組成物中のアルカリ土類金属の含有率(酸化物換算)である。また、表10中、「f・CaO由来」は、セメント組成物に含まれるf・CaOを意味する。得られたセメント組成物(表10中、「組成物」と示す。)と、細骨材と、水を、表10に示す各量(表10中の「水/組成物」は、セメント組成物に対する水の質量比を示す。)で用いて、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して供試体を作製し、脱型後、温度30℃、相対湿度60%、二酸化炭素濃度80体積%の養生槽内で、炭酸化養生を行った。炭酸化養生を行いつつ、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日及び7日の各時点における供試体(水硬性組成物の硬化体)の圧縮強さ及び曲げ強さを測定した。
また、曲げ強さの測定と同様にして炭酸化養生を行った材齢1日、3日、7日の各時点における供試体について、曲げ試験後の供試体の破壊断面に、フェノールフタレイン1%エタノール溶液を噴霧し、ノギスを用いて、供試体側面(4面)からの中性化深さ(フェノールフタレイン1%エタノール溶液の噴霧によって、呈色した領域)を測定し、その平均値を中性化深さ(炭酸化深さ)の値とした。なお、表11中、「20.0mm」は、完全に中性化されたことを示す。
[比較例2]
アルカリ土類金属含有物を使用しない以外は実施例4と同様にして、材齢3日及び7日の各時点における水硬性組成物の圧縮強さ及び曲げ強さを測定した。
結果を表11に示す。
Figure 0007636636000010
Figure 0007636636000011
表11から、実施例4~8の圧縮強さ(材齢3日:48.9~58.0N/mm、材齢7日:58.3~72.7N/mm)は、比較例2の圧縮強さ(材齢3日:45.1N/mm、材齢7日:52.8N/mm)よりも大きいことがわかる。
また、実施例4~6及び8の材齢3日の曲げ強さ(10.1~12.5N/mm)は、比較例2の材齢3日の曲げ強さ(9.8N/mm)よりも大きいことがわかる。
さらに、実施例4~8の材齢7日の曲げ強さ(12.1~14.8N/mm)は、比較例2の材齢7日の曲げ強さ(11.7N/mm)よりも大きいことがわかる。
さらに、実施例4~8の中性化深さから、材齢3日において、供試体がその内部にまで炭酸化されていることがわかる。
[実施例9~12、14]
実施例1で調製した、焼成物の粉砕物及び排脱二水石膏の混合物と普通ポルトランドセメントの混合物(実施例1の粉末状セメント含有物に該当するもの:表12中、「粉体原料」と示す。)と、表12に示す種類及び配合量のアミンを混合して、セメント組成物を得た。
得られたセメント組成物(表12中、「組成物」と示す。)と、細骨材と、水を、表12に示す各量(表12中の「水/組成物」は、セメント組成物に対する水の質量比を示す。)で用いて、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して供試体を作製し、脱型後、温度30℃、相対湿度60%、二酸化炭素濃度80体積%の養生槽内で、炭酸化養生を行った。炭酸化養生を行いつつ、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢7日における供試体(水硬性組成物の硬化体)の圧縮強さを測定した。
上述の圧縮強さの測定と同様にして供試体を作製し、脱型後、温度30℃、相対湿度60%、二酸化炭素濃度20体積%の養生槽内で、炭酸化養生を行った。材齢3日、7日の各時点の供試体について、実施例1と同様にして、二酸化炭素の固定化量(kg/トン)を算出した。
なお、表13中、「―」は測定を行わなかったことを示す。
[実施例13]
実施例1で調製した、焼成物の粉砕物及び排脱二水石膏の混合物と普通ポルトランドセメントの混合物と、表12に示す量のアルカリ土類金属含有物を混合して、粉末状セメント含有物を得た。得られた粉末状セメント含有物と、表12に示す種類及び配合量のアミンを混合して、セメント組成物を得た。なお、表12中、「f・CaO由来」は、粉末状セメント含有物に含まれるf・CaOを意味する。
得られたセメント組成物を用いて、実施例9と同様にして供試体を作製し、供試体の材齢7日の圧縮強さを、実施例9と同様に測定した。
また、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日及び7日の各時点の供試体の曲げ強さを測定した。
曲げ強さの測定と同様にして炭酸化養生を行った材齢3日、7日の各時点における供試体について、実施例4と同様にして、供試体側面(4面)からの中性化深さを測定し、その平均値を中性化深さ(炭酸化深さ)の値とした。なお、表13中、「20.0mm」は、完全に中性化されたことを示す。
結果を表13に示す。
Figure 0007636636000012
Figure 0007636636000013
表9、表13から、実施例9~12、14の材齢7日の二酸化炭素の固定量(292~315kg/トン)は、実施例1~3(温度65℃、相対湿度60%、二酸化炭素濃度20体積%の養生槽内で、炭酸化養生を行ったもの)の材齢7日の二酸化炭素の固定量(237~240kg/トン)よりも大きいことがわかる。
表11、表13から、実施例9~14の材齢7日の圧縮強さ(60.6~74.8N/mm)は、比較例2(アミン及びアルカリ土類金属含有物のいずれも使用しておらず、かつ、実施例9~14と養生条件が同じもの)の圧縮強さ(材齢7日:52.8N/mm)よりも大きいことがわかる。
特に、実施例13(アミン及びアルカリ土類金属含有物を使用したもの)の材齢7日の圧縮強さ(74.8N/mm)は、最も大きいことがわかる。
実施例13の曲げ強さ(材齢3日:11.8N/mm、材齢7日:16.6N/mm)は、比較例2の曲げ強さ(材齢3日:9.8N/mm、11.7N/mm)より大きいことがわかる。
実施例13の中性化深さから、材齢7日において、供試体がその内部にまで炭酸化されていることがわかる。
[実施例15~16]
実施例1で調製した、焼成物の粉砕物及び排脱二水石膏の混合物と普通ポルトランドセメントの混合物(実施例1の粉末状セメント含有物に該当するもの:表14中、「粉体原料」と示す。)と、表14に示す種類及び配合量のアルカリ土類金属含有物を混合して、セメント組成物を得た。なお、実施例16では、2種類のアルカリ土類金属含有物を混合した。
なお、表14中、「アルカリ土類金属の含有率」は、セメント組成物中のアルカリ土類金属の含有率(酸化物換算)である。
得られたセメント組成物(表14中、「組成物」と示す。)と、細骨材と、水を、表14に示す各量(表14中の「水/組成物」は、セメント組成物に対する水の質量比を示す。)で用いて、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して供試体を作製し、脱型後、温度30℃、相対湿度60%、二酸化炭素濃度80体積%の養生槽内で、炭酸化養生を行った。炭酸化養生を行いつつ、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢7日における供試体(水硬性組成物の硬化体)の圧縮強さ、並びに、材齢3日及び7日の各時点における曲げ強さを測定した。
曲げ強さの測定と同様にして炭酸化養生を行った材齢3日、7日の各時点における供試体について、実施例4と同様にして、供試体側面(4面)からの中性化深さを測定し、その平均値を中性化深さ(炭酸化深さ)の値とした。なお、表13中、「20.0mm」は、完全に中性化されたことを示す。
結果を表15に示す。
Figure 0007636636000014
Figure 0007636636000015
表11、表15から、実施例15~16の材齢7日の圧縮強さ(53.5~56.9N/mm)は、比較例2(アミン及びアルカリ土類金属含有物のいずれも使用しておらず、かつ、実施例15~16と養生条件が同じもの)の圧縮強さ(材齢7日:52.8N/mm)よりも大きいことがわかる。
実施例15~16曲げ強さ(材齢3日:10.3~11.5N/mm、材齢7日:11.6~13.1N/mm)は、比較例2の曲げ強さ(材齢3日:9.8N/mm、11.7N/mm)と同等か、より大きいことがわかる。
実施例15~16の中性化深さから、供試体がその内部にまで炭酸化されていることがわかる。

Claims (7)

  1. (A)(i)ポルトランドセメント又はポルトランドセメントクリンカ粉砕物(ii)2CaO・SiO及び2CaO・Al・SiOを含む焼成物の粉砕物であって、以下の(1)~(2)の条件を満たす焼成物の粉砕物、並びに
    (iv)アルカリ土類金属含有物(ただし、上記(i)及び上記(ii)以外のものに限る。)を含むセメント組成物であって、
    上記アルカリ土類金属含有物に含まれるアルカリ土類金属がマグネシウム(Mg)であり、
    上記セメント組成物中、遊離酸化カルシウムの含有率、及び、上記アルカリ土類金属含有物に含まれるマグネシウム(Mg)の酸化物換算の含有率の合計が2.0~5.3質量%であり、
    上記セメント組成物中、上記アルカリ土類金属含有物に含まれるマグネシウム(Mg)の酸化物換算の含有率が1.7~5.0質量%であり、
    上記セメント組成物中の上記(ii)焼成物の粉砕物の含有率が60~80質量%であることを特徴とするセメント組成物。
    (1)上記2CaO・SiO100質量部に対する上記2CaO・Al・SiOの量が10~100質量部であること
    (2)上記焼成物が3CaO・Alを含まない、又は、上記2CaO・SiO100質量部に対して15質量部以下の量で含むこと
  2. 請求項に記載のセメント組成物、水、及び骨材を含む水硬性組成物であって、
    上記セメント組成物100質量部に対する上記水の量が25~70質量部である水硬性組成物。
  3. さらに、(B)(iii)アミンを含み、
    上記(i)及び上記(ii)の合計100質量部に対する上記アミンの量が0.5~2.0質量部である請求項に記載のセメント組成物。
  4. 上記アミンが、アルカノールアミンである請求項に記載のセメント組成物。
  5. 請求項3又は4に記載のセメント組成物、水、及び骨材を含む水硬性組成物であって、
    上記(i)及び上記(ii)の合計100質量部に対する上記水の量が25~70質量部である水硬性組成物。
  6. 請求項に記載の水硬性組成物を製造するための方法であって、
    上記セメント組成物を構成する各材料、上記水、及び上記骨材を用いて、これらの混合物である混練物を調製する混練物調製工程と、
    上記混練物を型枠内に打設する打設工程と、
    上記型枠内の上記混練物が硬化した後に、上記混練物の硬化体を上記型枠から脱型する脱型工程と、
    上記型枠から脱型した上記混練物の硬化体を炭酸化養生して、炭酸化硬化体を得る炭酸化養生工程を含む、水硬性組成物の製造方法。
  7. 請求項に記載の水硬性組成物を製造するための方法であって、
    上記セメント組成物を構成する各材料、上記水、及び上記骨材を用いて、これらの混合物である混練物を調製する混練物調製工程と、
    上記混練物を型枠内に打設する打設工程と、
    上記型枠内の上記混練物が硬化した後に、上記混練物の硬化体を上記型枠から脱型する脱型工程と、
    上記型枠から脱型した上記混練物の硬化体を炭酸化養生して、炭酸化硬化体を得る炭酸化養生工程を含む、水硬性組成物の製造方法。
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