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JP7638481B2 - 生体由来物質の濃縮方法 - Google Patents
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JP7638481B2 - 生体由来物質の濃縮方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞外小胞(EV、例えば、エクソソーム)などの生体由来物質を簡便に濃縮するための生体由来物質の濃縮方法に関する。
従来、温度やpH、有機溶剤の存在などといった、環境因子の影響を受けやすい生体由来物質(例えば、タンパク質やウイルス、EVなど)を、生物活性を維持したまま、液体試料中から回収/濃縮する技術が提案されている。
即ち、生体由来物質を回収/濃縮する技術としては、超遠心分離法、限外ろ過法、サイズ排除クロマトグラフィ法、および、アフィニティを利用した精製法などがよく知られており、試料の特性や後処理、操作時間やコストなどに応じて適した手法が用いられる。また、特殊な装置を必要とせず、低コストで実施可能な回収/濃縮方法として、排除体積効果を利用したポリマー沈殿法や水性二相系(ATPS)を利用した分配法もある。
なお、EVに関して言及すると、Total Exosome Isolation Reagent (Invitrogen)やExoQuickシリーズ(System Biosciences)など、ポリマー沈殿法を用いた回収/濃縮キットが市販されている。
特許第6932529号公報 韓国登録特許第10-1761680号 韓国登録特許第10-1745455号 特表2022-508122号公報 国際公開第2019/160519号 特許第5271354号公報
従来の、生体由来物質を回収/濃縮するための、排除体積効果を利用したポリマー沈殿法や水性二相系を利用した分配法の場合、いずれも特殊な装置を必要とせずにスケールアップ/ダウンが比較的容易で、かつ、低コストという利点を有する。
しかしながら、前者は、操作が非常に簡便ではあるものの、目的物質の回収効率向上のためには、目的物質を排除体積効果によって遠心沈降可能なサイズにまで凝集させるインキュベーション工程や、小型の凝集物まで沈殿させる遠心分離工程に長い時間を要する。
後者は、速やかな二相形成を利用するため(数十秒間程度)、短時間で目的物質を二相(層)分配できるものの、ある程度の修練が必要であった。即ち、水と有機溶媒との二相系とは異なり、二相とも水相であるために相間の界面張力が小さく、界面を乱さずに目的物質を優先的に含む相のみを分け取る操作は非常に困難を要する。
また、後者において、目的物質の回収効率向上のためには、分散するドロップレット(微小液滴)を残さず集めて各相を二層へと分離させることが重要となる。相間界面張力の増加や二層分離の促進にはポリマー濃度の増加が有効ではあるが、ポリマー濃度の増加は同時に水溶液の粘性を増加させることになるため、回収効率と操作性とを共に向上させることが難しいという課題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、液体試料から生体由来物質を迅速、かつ、簡便に、高効率で回収/濃縮することが可能な生体由来物質の濃縮方法を提供することにある。
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、生体由来物質の濃縮方法であって、前記生体由来物質を含む液体試料に、高分子クラウダーと可逆的なゾル/ゲル変換特性を有するゲル形成ポリマーとを添加し、撹拌する工程と、遠心分離によって、前記液体試料を高分子クラウダー相からなる高分子クラウダー層およびゲル形成ポリマー相からなるゲル形成ポリマー層を含む、多層に分離する工程と、前記ゲル形成ポリマー層のゲル化を誘導する工程と、ゲル化された前記ゲル形成ポリマー層を分け取る工程と、を備え、前記生体由来物質は、細胞外小胞であり、前記高分子クラウダーは、分子クラウディング効果を有するポリマーであって、平均分子量が8,000~35,000で、終濃度が5~15%のPEGであり、前記ゲル形成ポリマー相は、繰返しゾル/ゲル転換可能なポリマーであって、平均分子量が10,000~100,000で、終濃度が0.1~0.5%のゼラチンであることを特徴とする。
また、本発明の第2の態様は、生体由来物質の濃縮方法であって、前記生体由来物質を含む液体試料に、高分子クラウダーと可逆的なゾル/ゲル変換特性を有するゲル形成ポリマー相とを添加し、撹拌する工程と、前記ゲル形成ポリマー相のドロップレットのゲル化を誘導する工程と、遠心分離によって、前記液体試料を高分子クラウダー相からなる高分子クラウダー層およびゲル化されたゲル形成ポリマー層を含む、多層に分離する工程と、ゲル化された前記ゲル形成ポリマー層を分け取る工程と、を備え、前記生体由来物質は、細胞外小胞であり、前記高分子クラウダーは、分子クラウディング効果を有するポリマーであって、平均分子量が8,000~35,000で、終濃度が5~15%のPEGであり、前記ゲル形成ポリマー相は、繰返しゾル/ゲル転換可能なポリマーであって、平均分子量が10,000~100,000で、終濃度が0.1~0.5%のゼラチンであることを特徴とする。
本発明によれば、液体試料から生体由来物質を迅速、簡便、かつ、高効率で回収/濃縮することが可能な生体由来物質の濃縮方法を提供できる。
本発明の実施形態に係る生体由来物質の濃縮方法をドロップレット分離する場合を例に示す図(実施例1)である。 本発明の実施形態に係る生体由来物質の濃縮方法をマイクロゲル分離する場合を例に示す図(実施例2)である。 検証1の結果を示すグラフであって、実施例2に係るゼラチン-ポリエチレングリコール(PEG) ATPSを例に、ゼラチン相をマイクロゲル化することで二層分離可能なポリマー濃度域がポリマー低濃度域へ拡張されることを示すもので、図(a)は、ゼラチン 100kとPEG 35kとからなるATPSの場合であり、図(b)は、ゼラチン 100kとPEG 8kとからなるATPSの場合であり、図(c)は、ゼラチン 20kとPEG 8kとからなるATPSの場合である。 検証2の結果を示すグラフであって、実施例2に係るゼラチン-PEG ATPSを例に、マイクロゲル化後に遠心分離することで、より高比率のゼラチンが下層(沈殿物)として分離されることを示すもので、図(a)は、ゼラチン 100kとPEG 35kとからなるATPSの場合であり、図(b)は、ゼラチン 100kとPEG 8kとからなるATPSの場合であり、図(c)は、ゼラチン 60kとPEG 8kとからなるATPSの場合であり、図(d)は、ゼラチン 20kとPEG 8kとからなるATPSの場合であり、図(e)は、ゼラチン 10kとPEG 8kとからなるATPSの場合である。 検証3の結果を示すものであって、実施例1,2に係るゼラチン-PEG ATPSを対象に、ゼラチン相をマイクロゲル化することでEV回収率が増加することを、従来と対比して示すグラフである。 検証4の結果を示すものであって、実施例2に係るゼラチン-PEG ATPSを対象に、ゼラチン相をマイクロゲル化することでEV回収率の増加と併せてウシ血清タンパク質のコンタミ率の低減がもたらされることを、従来と対比して示すグラフである。 検証5の結果を示すものであって、実施例2に係るゼラチン-PEG ATPSを用いた濃縮法でのEV回収率を、他の濃縮方法によるEV回収率と対比して示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る生体由来物質の濃縮方法について説明する。なお、実施の形態(態様)において、図面は、発明の概要を模式的に示すものであって、実際のものとは異なるものであることに留意すべきである。
用語の説明
まず、実施形態に係る生体由来物質の濃縮方法の説明を行う前に、本明細書の記載において使用される用語について説明する。本明細書中の記載において、特に断りがない限り、用語は、この項の記載に基づいて解釈される。
生体由来物質とは、生体から回収された物質の総称であり、生体を構成する細胞や生体から分泌された小胞、および、生体内で合成・分解された(高分子)化合物などを含む。具体的には、細胞、血球、ウイルス、細胞小器官、細胞外小胞、細胞外膜小胞、および、タンパク質などを含む。
液体試料とは、培養細胞や生物(個体)から採取される液体成分の試料である。具体的には、細胞培養系においては馴化培地や細胞溶解液といった液体成分であり、動物個体から採取される液体成分としては、血清、血漿、リンパ液、尿、腹水、胸水、脳脊髄液、および、間質液などを含み、植物個体から採取される液体成分としては、果汁、間質液、導管液、および、師管液などを含む。
高分子クラウディング(高分子混みあい)とは、近年、材料科学やバイオ関連分野において注目を集めている生物物理学的現象であり、排除体積効果によって分子が占有できる体積を制限することで、分子の会合や折り畳みが促進される。
ここで、分子クラウディング効果を有するポリマー、即ち高分子クラウダーは、通常、分子量が約5,000以上、濃度が約5%以上で、高分子のクラウディング状態を作り出す。高分子クラウダーとしては、例えば、ポリエチンレングリコールやポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、デキストラン(DEX)、および、フィコールが挙げられる。
本実施形態で使用される高分子クラウダーとしては、好ましくは、PEGやPVAである。詳細については後述するが、本発明の目的を達するために、望ましいPEGの平均分子量は3,000~50,000であり、さらに好ましくは8,000~35,000である。
可逆的ゲル形成ポリマーは、一定の条件下で、ポリマー間/内に部分的に架橋を形成し、内部に多くの水分子を保持したメッシュワーク構造(ゲル)を構築できるポリマーのうち、繰返しゾル/ゲル転換可能なポリマーである。繰返しゾル/ゲル転換可能なポリマーとしては、例えば、ゼラチンやアルギン酸塩、アガロースなどが挙げられる。
本実施形態で使用されるゲル形成ポリマーとして、好ましくは、ゼラチンやアルギン酸塩である。ゼラチンやアルギン酸塩は、生体内での分解が可能で、安全性が高く、食用・工業用のみならず、医療分野においても幅広く利用されている生体適合性ポリマーである。
ゼラチンのゾル/ゲル変換特性は、原材料となる生物種や分子量などにも影響されるが、本実施形態で使用されるゼラチンは4℃~37℃の間に凝固点と融点とを有すれば、原材料や分子量、等電点はいずれでも良い(ウシやブタ由来のゼラチンの凝固点は23-30℃、融点は30-35℃程度)。詳細については後述するが、本発明の目的を達するために、好ましいゼラチンの分子量は10,000~100,000である。
エマルジョン状態とは、水性二相系を懸濁することによって、液量の多い相の中に液量の少ない相がドロップレット(または、マイクロゲル)として分散した状態であり、ドロップレット(または、マイクロゲル)が光を散乱することで白濁して見えることがある。
二相の比重の違いによって、系に分散したドロップレットを一つのまとまり(多くの場合、層)として分離させることを、二層分離と呼ぶ。ドロップレットが分散したままでは、ドロップレットのみを選択的に回収するのは困難である。そのため、効率的な二層分離の工程(操作)が大切となる。
後述する本実施形態に係る生体由来物質の濃縮方法においては、排除体積効果の高い高分子クラウダーと可逆的ゲル形成ポリマーとを組み合わせた水性二相系を用いた生体由来物質の濃縮と、ゾル/ゲル変換特性を利用した生体由来物質の分離・回収と、を特徴とする。
ここで、生体由来物質を濃縮するとは、液体試料よりも高濃度の生体由来物質を含む液体を調製することを意味する。
本実施形態による生体由来物質の濃縮方法は、複数段階精製の初期段階目の精製として用いられ得る。具体的には、生体由来物質を含む液体試料とゲル形成ポリマーおよび高分子クラウダーとを混ぜ、撹拌することで、エマルジョン化した水性二相系を調製する工程を含む。
撹拌方法は特に限定されず、エマルジョンの形成が可能であれば、ボルテックスミキサーによる撹拌であっても、ピペッティングによる撹拌であっても、転倒混和であっても良い。
系としては、少なくともゲル形成ポリマー相(ゲル形成ポリマー層)および高分子クラウダー相(高分子クラウダー層)を含む。高分子クラウダー相は、主として高分子クラウダーを含む液相であり、微量のゲル形成ポリマーを含み得るが、その濃度は、本発明の目的を達するために、ゲル形成濃度未満でなくてはならない。
ゲル形成ポリマー相は、主としてゲル形成ポリマーを含む液相であり、好ましくは、実際は高分子クラウダーを含まない。ここでの「実際は高分子クラウダーを含まない」とは、本発明の作用・効果を失わない程度の微量の高分子クラウダーを含み得ることを意味する。
本発明の目的を達するためには、高分子クラウダー相中にゲル形成ポリマー相のドロップレットが分散した方が好ましい。
特に、ゲル形成ポリマー相および高分子クラウダー相の二相が形成されるまでは、ゲル形成ポリマーとしては、一相のままでのゲル化を起こさずに、ゾル状態を維持させる必要がある。即ち、ゲル形成ポリマーは、ゲル形成可能な濃度よりも低く、かつ、二相形成により初めてゲル形成ポリマー相中のゲル形成ポリマー濃度がゲル形成可能な濃度まで濃縮されるように、系の終濃度を設定する必要がある。
加えて、高分子クラウダー相は、生体由来物質とゲル形成ポリマーとを高分子クラウダー相から排斥し、かつ、ゲル形成ポリマー相のゲル形成ポリマー濃度をゲル化可能な濃度まで濃縮させるように、系の終濃度を設定する必要がある。
そこで、望ましくは、高分子クラウダー相よりもゲル形成ポリマー相の方が比重は高く、遠心分離工程後には、ゲル形成ポリマー相が沈降するように、系のゲル形成ポリマーの終濃度が設定される。例えば、ゲル形成ポリマーがゼラチンの場合、ゼラチンの終濃度は、0.05%~5.0%の範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1~0.5%である。これに対し、高分子クラウダーがPEGの場合、PEGの終濃度は、1~20%の範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、5~15%である。
なお、液体試料と混合されるゲル形成ポリマーおよび高分子クラウダーは、固体であっても良いし、液体であっても良い。また、ゲル形成ポリマーまたは高分子クラウダーを溶媒に溶解してから、液体試料と混合するようにしても良い。
溶媒としては、水、生理食塩水、細胞培養培地、および、緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))などから、濃縮する生体由来物質に適した溶媒を選択する。
本実施形態においては、エマルジョン化した水性二相系を調製する工程の後に、ゲル形成ポリマー相をゲル化させる工程を含む。ゲル化工程は、ゲル形成ポリマーのゾル/ゲル変換特性にしたがい、例えば、ゼラチンであれば冷却(ゲル化温度以下、0℃以上)、アルギン酸塩であればカルシウムイオン濃度の増加などが挙げられる。
本発明の目的を達するためには、生体由来物質を優先的に含む相を分け取るまでは、ゲル化状態を維持する(ゲル化条件を保つ)必要がある。
本実施形態においては、ゲル形成ポリマー相をゲル化させた後の工程として、ゲル形成ポリマー相を回収する工程を含む。ゲル形成ポリマー相の回収は、ゲル形成ポリマー相の全部または一部を高分子クラウダー相から分けて取得できる限り、その方法に制限されない。即ち、回収方法としては、例えば、ゲル形成ポリマー相と高分子クラウダー相とを二層分離させた後、高分子クラウダー相を吸引やデカントで除去し、ゲル形成ポリマー相だけを残すことを含む。
なお、本実施形態においては、系の二層分離を促進するために、遠心分離させる工程を含んでも良い。例えば、ゲル形成ポリマー相をドロップレットのまま分離する場合には、エマルジョン化の工程とゲル形成ポリマー相のゲル化の工程との間に、また、ゲル形成ポリマー相をマイクロゲル化して回収する場合には、マイクロゲル化の工程と回収の工程との間に、それぞれ遠心分離の工程が入り得る。
遠心処理の条件としては、系のサイズにも依存するが、遠心加速度の範囲は1,000~10,000xg、時間は1~10分間であれば良い。また、温度は、ゼラチンのようにゲル化条件が温度である場合にはゲル化温度に制約されるが、特に制約がない場合には、好ましくは4℃である。
さらに、本実施形態においては、ゲル形成ポリマー相のゲル/マイクロゲルを回収した後に、ゲルを再融解するゾル化誘導の工程を含んでも良い。ゾル化誘導の工程は、ゲル形成ポリマーのゾル/ゲル変換特性にしたがい、例えば、ゼラチンであれば加温(ゾル化温度以上、望ましくは37℃以下)、アルギン酸塩であればカルシウムイオンキレータ(EDTAなど)の添加によるカルシウムイオン濃度の低下などが挙げられる。ゲル形成ポリマー相の再ゲル化を妨げるために、適宜、溶媒で希釈するようにしても良い。
実施形態
以下に、ポリマー沈殿のメカニズムの一つである排除体積効果による粒子の排斥と、水性二相系の速やかな二相形成、そしてゲル形成ポリマーの可逆的なゾル/ゲル変換特性を組み合わせることで、簡便、かつ、効率的な生体由来物質の回収/濃縮の方法について説明する。
実施例1
図1は、本実施形態に係る生体由来物質の濃縮方法について、ドロップレット分離する場合を例に説明するための図である。
まずは、例えば図1に示すように、生体由来物質を含む液体試料に、高分子クラウダーと可逆的なゾル/ゲル変換特性を有するゲル形成ポリマーとを添加し、撹拌する(1)。これにより、高分子クラウダー相の中にゲル形成ポリマー相のドロップレット( ゾル)が分散したエマルジョン状態(二相形成)を得る。高分子クラウダー相は、以降の工程間において、常に液相の状態を維持する。
次いで、遠心分離によって、高分子クラウダー相とゲル形成ポリマー相とを上層/下層の二層へと分離する(2-a)。
そして、ゲル形成ポリマーのゲル化を誘導し、下層のゲル形成ポリマー相のみをゲル化する(3-a)。
この後、下層のゲル形成ポリマー相(ゲル相)と上層の高分子クラウダー相(液相)とを分け取り、ゲル形成ポリマー相を回収(下層回収)する(4-a)。
最後に、必要に応じて、回収したゲル形成ポリマー相のゲルを再びゾル化/融解させ、濃縮された生体由来物質の液体試料(サンプル)を得る(5)。このサンプルは、適宜、緩衝液(PBSなど)で希釈し、ゲル形成ポリマーの濃度を下げても良い。
本実施例1によれば、液体試料から生体由来物質を迅速に、かつ、高効率で濃縮することができる。
実施例2
図2は、本実施形態に係る生体由来物質の濃縮方法について、マイクロゲル分離する場合を例に説明するための図である。
まずは、例えば図2に示すように、生体由来物質を含む液体試料に、高分子クラウダーと可逆的なゾル/ゲル変換特性を有するゲル形成ポリマーとを添加し、撹拌する(1)。これにより、高分子クラウダー相の中にゲル形成ポリマー相のドロップレット(ゾル)が分散したエマルジョン状態(二相形成)を得る。高分子クラウダー相は、以降の工程間において、常に液相の状態を維持する。
次いで、ドロップレットのゲル化を誘導し、ゲル形成ポリマー相のマイクロゲルを調製する(2-b)。
そして、ゲル形成ポリマー相をマイクロゲル化した後、遠心分離によって、高分子クラウダー相からマイクロゲルを沈殿(二層分離)させる(3-b)。
この後、下層のゲル形成ポリマー相のマイクロゲル(沈殿物)と上層の高分子クラウダー相(上清)とを分け取り、マイクロゲルを回収(沈殿回収)する(4-b)。
最後に、必要に応じて、回収したゲル形成ポリマー相のマイクロゲルを再びゾル化/融解させ、濃縮された生体由来物質の液体試料(サンプル)を得る(5)。このサンプルは、適宜、 緩衝液(PBSなど)で希釈し、ゲル形成ポリマーの濃度を下げても良い。
本実施例2によれば、液体試料から生体由来物質を迅速に、かつ、高効率で濃縮することができる。
上記したように、高い排除体積効果を有する高分子クラウダーによって排斥された生体由来物質が、それのみで沈殿可能なサイズにまで凝集するには時間を要するが、高分子クラウダーと組み合わせることにより二相形成が可能なゲル形成ポリマーをさらに加えることで、液体試料から生体由来物質を迅速に、かつ、高効率で濃縮することができる。
即ち、実施例1,2においては、ゲル形成ポリマーとの親和性が高い生体由来物質が、ゲル形成ポリマー相内へと排斥(分配)される際に、生体由来物質を含んだゲル形成ポリマー相のドロップレットが速やかに形成される(水性二相系の迅速性)。
しかも、ドロップレッドがゲル形成ポリマー相内に取り込まれない場合でも、ゲル形成ポリマー相のドロップレットが形成されることで、高分子クラウダーと生体由来物質との占有可能な空間が制約され(有効濃度が上昇し)、さらに、排除体積効果による生体由来物質の凝集場となる界面(ドロップレットの表面)が多量に形成されるとともに、ドロップレット同士の自発的な融合の繰り返しによって界面上の生体由来物質の凝集が加速することから、速やか、かつ、効率的に排除体積効果による物質の凝集が促進される。
さらに、相間の界面張力が小さいために二相の分け取りが困難であるという水性二相系の弱点も、ゲル形成ポリマーの性質(可逆的なゾル/ゲル変換特性)を利用して、一相をゲル相に変換することで克服される(操作性の向上)。
ゲル化誘導の工程を挿入し得るタイミングは二通りの可能性があり、一方は二層分離の工程と相の分取の工程との間(実施例1)、他方はエマルジョン化の工程と二層分離の工程との間(実施例2)であり、いずれも後に続く回収相のみの分取操作が容易になる。
特に、後者の場合には、ゲル化誘導によって、高分子クラウダー相中に分散したまま分離/回収できずに残留していたゲル形成ポリマーやゲル形成ポリマー相のドロップレットが分離/沈殿されやすくなる(二相形成並びに二層分離の効率向上)。これにより、従来の水性二相系において利用可能な至適ポリマー濃度域を下げることが可能となり、系の粘度低下も操作性の向上に繋がる。
具体例
以下において、ゲル形成ポリマーとしてゼラチンを、高分子クラウダーとしてPEGを、それぞれ用いて、生体由来物質としてEVを濃縮する方法について、具体的に説明する。なお、本実施形態の態様は、この具体例のみに限定されるものではない。
上述したように、ゼラチンは、PEGやPVAなどの高分子クラウダーと組み合わせることで、水性二相系を構築することができる。両ポリマーの種類や分子量、系全体の終濃度を調整することで、系の中にゼラチン相がドロップレットとして分散する状態を作り出す。
例えば、平均分子量が10,000、20,000、60,000、および、100,000のゼラチン(新田ゼラチン社製で、いずれも等電点は5)を、それぞれPBSで膨潤させ、37℃で、1時間、加温しながら撹拌する。そして、5%(w/w)のゼラチン10k溶液と、5%(w/w)のゼラチン20k溶液と、5%(w/w)のゼラチン60k溶液と、5%(w/w)のゼラチン100k溶液と、を調製した。
同様に、例えば、平均分子量が8,000のPEG(MP Biomedicals)と、平均分子量が35,000のPEG(Sigma-Aldrich)と、平均分子量が50,000のDEX(MP Biomedicals)と、をそれぞれPBSで膨潤させ、室温でしっかり撹拌する。そして、20%(w/w)のPEG 8k溶液と、20%(w/w)のPEG 35k溶液と、10%(w/w)のDEX 50k溶液と、を調製した。
これに対し、ヒト脂肪由来の間葉系幹細胞hADSCの馴化培地(MEM-α;GIBCO)/培養上清から2段階の低速の遠心分離(それぞれの条件は、4℃、2,000xg、20分間、および、4℃、10,000xg、30分間)により、混在した死細胞や細胞断片を取り除いた。そして、0.22-μmフィルターでろ過した後、超遠心分離(4℃、200,000xg、1時間)によってEVを沈殿させ、夾雑する馴化培地由来のタンパク質を除くためにPBSで再懸濁後、さらに超遠心分離(4℃、200,000xg、1時間)を行うことで、精製EVを回収した。
PBSにより懸濁したEVに、標識試薬 ExoSparkler Exosome Protein Labeling Kit-Deep Red(同仁化学研究所;以下では、ExoSparklerと記載;キットマニュアルにしたがって調製)を混和し、37℃で、30分間、反応させることで標識した。
標識後、サイズ排除クロマトグラフィカラム(PD-10;Cytiva、バッファとしてPBSを使用)により未反応の標識を取り除くことで、ExoSparkler標識EVサンプルを得た(蛍光測定に使用した励起/蛍光波長は640/680nm)。
以降、ExoSparkler標識EVサンプルは、ExoSparkler標識EVサンプル量とExoSparkler標識の蛍光量とが直線関係になる濃度範囲内で使用した。
検証1
ここでは、予備実験を行って、ドロップレットのマイクロゲル化による水性二相系での二層分離能の向上とポリマー濃度域の拡大とについて検証した。
本検証1においては、まず、1.5mLのマイクロチューブ内でPEG溶液およびゼラチン溶液とPBSとを合わせて任意のポリマー濃度の系(1mL)を調製し、ボルテックスミキサーでしっかりと撹拌した。
次いで、37℃に設定した卓上遠心機により、10,000xgで、10分間遠心し、チューブの底にゼラチン相の層(ゾル)が分離しているかを目視で確認した。
ゼラチン相(層)の分離が確認できなかった場合には、再びボルテックスミキサーでしっかりと撹拌した系を、37℃で、10分間静置した後、氷上で10分間、チューブごと冷却した。
その後、4℃に設定した卓上遠心機により、10,000xgで、10分間遠心し、チューブの底にゼラチン相のマイクロゲルが沈殿しているかを目視で確認した。
図3は、系のPEG終濃度とゼラチン終濃度とを2軸とした状態を示すもので、図(a)は、ゼラチンとPEGとからなる水性二相系の組み合わせを、ゼラチン100k-PEG 35kとした場合の結果である。同様に、図(b)は、ゼラチン100k-PEG 8kとした場合の結果であり、図(c)は、ゼラチン20k-PEG 8kとした場合の結果である。
図3(a)~図3(c)において、高濃度範囲(右上領域)では、ゼラチン相はドロップレットのままでも遠心操作による二層分離が確認できた(図中の〇印)。
しかしながら、ポリマー濃度を下げていく(左下領域へと移動していく)と、エマルジョン化により系が白濁した(二相形成された)としても、二層分離が認められない濃度範囲が現れた。
ところが、そのような濃度範囲であっても、冷却によりゼラチン相をマイクロゲル化することによって、ゼラチン相をPEG相から沈殿させることができた(図中の■印)。
なお、図中の×印は、マイクロゲル化しても一相のままで分離しなかった濃度範囲のものである。
上記の結果から、マイクロゲル化が二層分離に与える影響は、ポリマー分子量が小さいほど顕著であることが分かった。
即ち、マイクロゲル化工程を導入することで、これまで水性二相系を構築しにくかった低分子量のポリマーを組み合わせても、また、より低濃度のポリマーの組み合わせでも、水性二相系を用いた物質の濃縮が可能になり、併せて、ポリマーの使用に伴う系の粘性の課題も緩和される。
検証2
ここでは、予備実験を行って、ドロップレットのマイクロゲル化による水性二相系での二層分離能の向上とゼラチン分布の変化とについて検証した。
本検証2においては、まず、1.5mLのマイクロチューブ内でPEG溶液およびゼラチン溶液とPBSとを合わせて、終濃度が0.4%のゼラチン(4mg)と任意の終濃度のPEGとからなる一対の系(各1mL)を調製し、ボルテックスミキサーでしっかりと撹拌した。
一方の系は、37℃に設定した卓上遠心機により、10,000xgで、10分間遠心した後、氷上で冷却して下層であるゼラチン相をゲル化させ、さらに、上層であるPEG相を別チューブに移動させることで、2層を分け取った。
他方の系は、37℃で、10分間静置した後、氷上で10分間、チューブごと冷却した。そして、4℃に設定した卓上遠心機により、10,000xgで、10分間遠心した後、上清(PEG相)を別チューブに移動させることで、チューブの底に沈殿したゼラチン相のマイクロゲル沈殿物とPEG相とを分け取った。
その後、回収したゼラチン相のゲル/マイクロゲル沈殿物は、37℃でインキュベートすることにより、ゾル化させた。
図4は、PEG終濃度とゼラチン相へのゼラチンの分布の割合(ゼラチン相ゼラチン分布)とを2軸とした状態を示すもので、図(a)は、ゼラチンとPEGとからなる水性二相系の組み合わせを、ゼラチン100k-PEG 35kとした場合の結果である。同様に、図(b)は、ゼラチン100k-PEG 8kとした場合の結果であり、図(c)は、ゼラチン60k-PEG 8kとした場合の結果であり、図(d)は、ゼラチン20k-PEG 8kとした場合の結果であり、図(e)は、ゼラチン10k-PEG 8kとした場合の結果である。
ここでは、ゼラチン相とPEG相中のタンパク質濃度とを、BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific)により定量化し、系に添加したゼラチン(4mg)のうち、ゼラチンゲルもしくはマイクロゲル沈殿物として回収されたゼラチンの割合をゼラチン相ゼラチン分布として求めた。
図4(a)~図4(e)からも明らかなように、二層分離後のゼラチン相へのゼラチンの分布はポリマー分子量に影響され、組み合わせるゼラチン分子量が大きいほど、また、PEG分子量が大きいほど、ゼラチン相の分離が促進された。
また、同じポリマー濃度であっても、ドロップレットのまま二層分離(図中の〇)させるよりも、マイクロゲル化してから沈降(図中の■)させた方が、より効率的にPEG相からゼラチン(相)を分離できることが分かった。
上記の結果から、ドロップレットのマイクロゲル化により、系全体に分散するドロップレットが効率よく他相から分離されて二層分離が促進されること、また実現の難しかった低濃度・低分子量ポリマーの組み合わせによる水性二相系の構築が可能となり、粘度の低下による操作性の向上がもたらされる。
検証3
ここでは、ゼラチン-PEG ATPSを用いた濃縮方法におけるEV回収率の向上に対するドロップレットのマイクロゲル化の効果について検証を行った。
本検証3においては、まず、1.5mLのマイクロチューブ内で、ExoSparkler標識EVサンプルと、ゼラチン溶液と、PEG溶液と、DEX溶液と、PBSと、を適宜組み合わせて、図5に示すようなポリマー終濃度の系(1mL)1~8を調製した。
系1~6は、0.4%のゼラチン(ゼラチン分子量が100k、60k、20k)-7%のPEG 8kのゼラチン-PEG ATPSとした。系7は、7%のPEG 8kのPEG沈殿系とし、系8は、7%のPEG 8k-1%のDEX 50kのPEG-DEX ATPSとした。
系1,3,5は、ドロップレット分離により調製されたゼラチン-PEG ATPSであって、後掲する下記表1に示すように、ボルテックスミキサー(Vortex)でしっかりと撹拌される。そして、ゼラチン相がドロップレットのまま遠心分離(37℃に設定した卓上遠心機により、10,000xgで、10分間)された後、氷上でゲル化させた下層がPEG相から回収されることによってサンプル化される。
系2,4,6は、マイクロゲル分離により調製されたゼラチン-PEG ATPSであって、後掲する下記表1に示すように、ボルテックスミキサーでしっかりと撹拌され、37℃下での10分間のインキュベーションの後、氷上で10分間冷却される(マイクロゲル化)。遠心操作(4℃に設定した卓上遠心機により、10,000xgで、10分間)により二層分離された後、沈殿させたマイクロゲルがPEG相から回収されることによってサンプル化される。
系7は、系1~6における二相形成の効果を示すために、ゼラチン添加を省いた系、つまりPEG沈殿法に相当する系であって、後掲する下記表1に示すように、ボルテックスミキサーによる撹拌の後に遠心分離(37℃に設定した卓上遠心機により、10,000xgで、10分間)が行われて、沈殿物が回収されることによってサンプル化される。本発明の操作と条件を合わせたことで、一般的なPEG沈殿法の系と比べ、インキュベーション工程が省かれ、遠心時間も短縮されていることに留意すべきである。
系8は、従来の水性二相系により調製されたPEG-DEX ATPSであって、後掲する下記表1に示すように、ボルテックスミキサーによる撹拌の後、4℃に設定した卓上遠心機により、10,000xgで、10分間遠心され、下層が回収されることによってサンプル化される。
なお、回収したサンプルがゲル化されている系1~6では、加温(37℃)により融解後、再ゲル化を妨げるために、適宜PBSにより希釈される。
Figure 0007638481000001
図5に示すように、回収したサンプルの蛍光量(励起波長を640nm、蛍光波長を680nm)からEV回収率(系に加えたEV量のうち、濃縮回収されたEV量の割合)を見積もったところ、同じ組成の系であっても、ゼラチン相をドロップレット状態のまま遠心分離する系1,3,5よりも、マイクロゲル化して遠心分離する系2,4,6の方が、EV回収率が向上することが分かった。このマイクロゲル化による回収率向上の効果は、二相形成/二層分離が起こりにくい低分子量のポリマーを組み合わせた系5,6間において、特に顕著となった。
なお、同じ濃度・同じ分子量の高分子クラウダーを用いても、二相が形成されない系7では、系1~6と比して、極僅かしかEVを回収できなかった。このことから、本発明の濃縮技術におけるドロップレット/マイクロゲル形成の有用性が示される。
系7を水性二相系同様の時短工程で処理したPEG沈殿系とみなせば、その回収率の低さから、水性二相系を用いた濃縮方法のタイムパフォーマンスの高さが示唆される(後述する検証5(図7)における、充分な時間のインキュベーションと遠心処理工程を経たPEG沈殿系でのEV回収率との違いに留意すべき)。
ドロップレット分離およびマイクロゲル分離のいずれであっても、ゼラチン相のゲル化を伴うゼラチン-PEG 系1~6は、上下層とも液相である従来の一般的なPEG-DEX 系8よりも、作業性(操作性)が大幅に向上する。
加えて、特に、マイクロゲル分離を行う系2,4,6では系8よりもEV回収率の増加がみとめられ、従来のATPSを用いた濃縮法よりも、本発明の濃縮法の方が操作性と回収効率とにおいて、優位性が認められる。
検証4
ここでは、ゼラチン相のマイクロゲル化工程を含むゼラチン-PEG ATPSを用いた濃縮方法と、従来のPEG-DEX ATPSを用いた濃縮方法と、の比較を行った。
本検証4においては、まず、1.5mLのマイクロチューブ内で、ExoSparkler標識EVサンプル、もしくは、0.22μmフィルターでろ過した仔ウシ血清(FCS)サンプルへ、ゼラチン20k溶液と、ゼラチン100k溶液と、PEG 8k溶液と、DEX 50k溶液と、PBSと、を適宜組み合わせて、ATPS(1mL)を調製した。
ゼラチン終濃度は0.4%、DEX終濃度は1%とし、PEG終濃度は7%もしくは15%とした。さらに、FCSタンパク質定量のために、標識EVサンプルもFCSサンプルも加えないバックグラウンド(BKG)の系も調製した。
ゼラチン-PEG ATPSにおいては、実施例2に係るゼラチン-PEG ATPS(0.4% ゼラチン100k-PEG 8k)を用いた濃縮方法において、ボルテックスミキサーにより撹拌した系を、37℃と氷上とでそれぞれ10分間インキュベーションした後、遠心分離(4℃、10,000xg、10分間)した。
そして、上清(PEG相)を分け取り、得られたゼラチン相のマイクロゲル沈殿物を37℃で融解し、PBSを添加して100μLに調製した。
一方、PEG-DEX ATPS(PEG 8k-1% DEX 50k)を用いた濃縮方法においては、ボルテックスミキサーにより撹拌した系を遠心分離(4℃、10,000xg、10分間)し、上層(PEG相)を分け取って、下層(DEX相)を得た。
EV回収率に関しては、EVに標識したExoSparkler蛍光量に基づいて測定した。FCSタンパク質コンタミ量に関しては、FCSサンプルを添加した系とBKG系の上下層のタンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Thermo Scientific)により定量化し、FCSサンプル系のタンパク質濃度からBKG系のタンパク質濃度を減算することで、FCSタンパク質の濃度を補正した。
FCSタンパク質コンタミ率は、系に添加したFCSタンパク質のうち、下層に取り込まれたFCSタンパク質の割合として見積もられた。
図6は、本発明(実施例2)の濃縮方法と従来のPEG-DEX ATPSを用いた濃縮方法でのEV回収率(縦軸)とFCSタンパク質コンタミ率(横軸)を2軸としたプロットである。
従来のPEG-DEX系ではPEG相とDEX相との界面張力を増加させ相分離を促進するためにPEG濃度を増加させると、系の粘度が増加するため相(層)の分け取り操作が困難となるだけでなく、PEG-DEX系のプロット(図6中の△)の横方向への広がりから、濃縮されたEVサンプル中に共に取り込まれるFCSタンパク質コンタミ率がPEG濃度の上昇に伴い増加することが示される。
それに対し、本発明では、ゼラチン分子量に関わらず、プロット(図6中の●■〇□)がPEG-DEX系のプロット域とは独立して左上領域に集中することから、EVサンプル中のFCSタンパク質コンタミ率はPEG-DEX系よりも低レベルに抑えられ、かつ、EV回収率は高レベルに向上したことが示された。
上記の結果から、従来のATPSを用いた濃縮法よりも、本発明の濃縮法、特にドロップレットのマイクロゲル化を含む実施例2の濃縮法の方が、EV濃縮において、EV回収率に加え、馴化培地等に含まれるFCSタンパク質の除去能が高い利点が認められる。
また、細胞培養後の馴化培地(培養液)/培養上清に、直接、高分子クラウダーと可逆的ゲル形成ポリマーなどを添加し、多相形成することでも、濃縮を達成し得る。
検証5
ここでは、ゼラチン相のマイクロゲル化工程を含むゼラチン-PEG ATPSを用いた濃縮方法でのEV回収率と、他の濃縮方法によるEV回収率との比較を行った。
図7は、検証5の結果として、実施例2で示した濃縮方法により回収/濃縮されたEV回収率を、従来の一般的な方法により回収/濃縮されたEV回収率と、対比して示すものである。
EV回収率の算出には、ExoSparkler標識EVサンプルを、以下の方法によって回収/濃縮したものを用いた(超遠心分離では、10-mLの遠心チューブを用いた10mLの系、水性二相系およびポリマー沈殿を用いた方法では、1.5-mLのマイクロチューブを用いた1mLの系)。
即ち、実施例2に係るゼラチン-PEG ATPS(0.4%のゼラチン100k-7%のPEG 8k)を用いた濃縮方法においては、ボルテックスミキサーにより撹拌した系を、37℃と氷上とでそれぞれ10分間インキュベーションした後、遠心分離(4℃、10,000xg、10分間)した。そして、上清(PEG相)を分け取り、得られたゼラチン相のマイクロゲル沈殿物を37℃で融解し、PBSを添加して100μLに調製した。
一方、PEG-DEX ATPS(7%のPEG 8k-1%のDEX 50k)を用いた濃縮方法においては、ボルテックスミキサーにより撹拌した系を遠心分離(4℃、10,000xg、10分間)し、上層(PEG相)を分け取って、下層(DEX相)を得た。
また、ポリマー沈殿-TEI(Total Exosome Isolation Reagent、Invitrogen)を用いた濃縮方法においては、マニュアルにしたがって系を調製し、4℃で、overnightのインキュベートを行った後、遠心分離(4℃、10,000xg、60分間)して沈殿物を得た。
また、PEG沈殿法(7%のPEG 8k)においては、調製した系を、4℃で、overnightのインキュベートを行った後、遠心分離(4℃、10,000xg、60分間)して沈殿物を得た。
また、超遠心分離法においては、PBSで液量を10mLに調整後、超遠心分離(4℃、200,000xg、60分間)して沈殿物を得た。
これに対し、サイズ排除クロマトグラフィ法においては、PBSで液量を0.5mLに調整後、マニュアルにしたがってカラムqEV original GEN 2(IZON)上にロードし、PBSで溶出し、2.2-3.4mL画分をサンプルとして回収した。
図7からも明らかなように、それぞれに得られたサンプルのExoSparkler標識の蛍光量からEV回収率を求めたところ、実施例2に係るゼラチン-PEG ATPSは、一般的なPEG-DEX ATPSを用いた濃縮方法やポリマー沈殿法などと比べ、操作性の向上または操作時間の短縮に加え、高いEV回収率を示した。
上記したように、本実施形態によれば、ポリマー沈殿のメカニズムの一つである排除体積効果による粒子の排斥と、水性二相系の速やかな二相形成、そしてゲル形成ポリマーの可逆的なゾル/ゲル変換特性を組み合わせることで、簡便、かつ、効率的な生体由来物質の回収/濃縮が可能となる。
即ち、液体試料に対して、高分子クラウダーと、該高分子クラウダーとの組み合わせにより二相形成可能なゲル形成ポリマーと、を加えることにより、液体試料から生体由来物質を迅速、かつ、簡便に、高効率で濃縮することが可能となる。
なお、本明細書中では、1種の高分子クラウダーと1種の可逆的ゲル形成ポリマーとを含む水性二相系に限定して記述したが、さらに1種以上の高分子クラウダーや1種以上のゲル形成ポリマーなどを追加した水性多相系(多層)としても、本発明の目的達成を阻害しない限り、差し支えない。
以上、実施の形態を例示して本発明の態様について説明したが、一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。

Claims (3)

  1. 生体由来物質の濃縮方法であって、
    前記生体由来物質を含む液体試料に、高分子クラウダーと可逆的なゾル/ゲル変換特性を有するゲル形成ポリマーとを添加し、撹拌する工程と、
    遠心分離によって、前記液体試料を高分子クラウダー相からなる高分子クラウダー層およびゲル形成ポリマー相からなるゲル形成ポリマー層を含む、多層に分離する工程と、
    前記ゲル形成ポリマー層のゲル化を誘導する工程と、
    ゲル化された前記ゲル形成ポリマー層を分け取る工程と、
    を備え
    前記生体由来物質は、細胞外小胞であり、
    前記高分子クラウダーは、分子クラウディング効果を有するポリマーであって、平均分子量が8,000~35,000で、終濃度が5~15%のPEGであり、
    前記ゲル形成ポリマー相は、繰返しゾル/ゲル転換可能なポリマーであって、平均分子量が10,000~100,000で、終濃度が0.1~0.5%のゼラチンである
    ことを特徴とする生体由来物質の濃縮方法。
  2. 生体由来物質の濃縮方法であって、
    前記生体由来物質を含む液体試料に、高分子クラウダーと可逆的なゾル/ゲル変換特性を有するゲル形成ポリマー相とを添加し、撹拌する工程と、
    前記ゲル形成ポリマー相のドロップレットのゲル化を誘導する工程と、
    遠心分離によって、前記液体試料を高分子クラウダー相からなる高分子クラウダー層およびゲル化されたゲル形成ポリマー層を含む、多層に分離する工程と、
    ゲル化された前記ゲル形成ポリマー層を分け取る工程と、
    を備え
    前記生体由来物質は、細胞外小胞であり、
    前記高分子クラウダーは、分子クラウディング効果を有するポリマーであって、平均分子量が8,000~35,000で、終濃度が5~15%のPEGであり、
    前記ゲル形成ポリマー相は、繰返しゾル/ゲル転換可能なポリマーであって、平均分子量が10,000~100,000で、終濃度が0.1~0.5%のゼラチンである
    ことを特徴とする生体由来物質の濃縮方法。
  3. 分け取った前記ゲル形成ポリマー層のゾル化を誘導し、融解させる工程を、さらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の生体由来物質の濃縮方法。
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