JP7640831B2 - 床構造、床構造の設計方法、及び床構造の施工方法 - Google Patents
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Description
近年、小梁のスパン(長さ)が増大している。これに伴い、質量比剛性が大きく断面効率の良いH形鋼として、ウェブの幅厚比を70程度まで大きく(ウェブを薄く)設定したものが小梁に使用されている。ウェブの幅厚比が70程度のH形鋼は、圧延H形鋼の製造限界に近い。
さらに断面効率を高める方法として、製造制約の少ない溶接組立H形鋼を用いて、ウェブの幅厚比を大きくする方法が考えられる。
本発明の床構造は、複数の柱部材と、前記複数の柱部材に架設される複数の大梁と、前記複数の大梁で取り囲んだ内側に設けられ、前記複数の大梁に架設される小梁と、前記複数の大梁及び前記小梁の上方に設けられる床スラブと、を備える床構造において、前記小梁は、溶接組立H形鋼であり、前記複数の大梁、前記小梁、及び前記床スラブの1次振動モードの振動数をffloor,1st、前記小梁においてウェブの上端部を中心として下フランジが回動して振動するモードの振動数をfbeam,1stと規定し、前記小梁に対応する、所定の外力を受けたときの、許容値に対する応答値の比が1以下で最も高い、JIS G 3192の規格による圧延H形鋼を、基準梁と規定したときに、(1)式を満たし、前記基準梁に対して、前記小梁は、質量に対する断面二次モーメントの比が大きいことを特徴としている。
ffloor,1st≦fbeam,1st ・・(1)
ffloor,1st≦fbeam,1st ・・(2)
ffloor,1st≦fbeam,1st ・・(3)
一般的に、床構造の居住性の観点から問題となるのは、床構造上を人が歩行する際に生じる振動である。通常、人の歩行が加振源となる場合の振動数は、2Hz程度の低い振動数が卓越するような特性を持つ。通常、振動数ffloor,1st及び振動数fbeam,1stは、加振源となる人の振動数より大きい。(1)式を満たすことにより、人の歩行による振動数と振動数ffloor,1stとの差よりも、人の歩行による振動数と振動数fbeam,1stとの差が大きくなる。従って、人の歩行による加振を受けても、複数の大梁、小梁、及び床スラブ全体に比べて、小梁の下フランジがウェブの上端部を中心として振動し難くなる。下フランジが振動し易いと、ウェブを厚くしたり、振止材を用いたりして、下フランジの振動を抑制する必要が生じるが、本発明では、その必要が生じないため、小梁や床構造全体として質量が大きくなり過ぎるのが抑制される。小梁の下フランジが振動し難くなることにより、床構造の居住性を確保することができる。
また、小梁に対応して、所定の外力に対する応答値が許容値以下であるJIS G 3192の規格による圧延H形鋼が、基準梁と規定される。この基準梁に対して本発明の小梁は、断面性能を表す指標の1つとして、質量に対する断面二次モーメントの比が大きい。これにより、小梁の質量に対する断面性能の比を大きくすることができる。
また、前記床構造の設計方法において、前記曲げ許容値は、前記基準梁の降伏強度、及び前記基準梁に曲げモーメントが作用するときの前記基準梁のウェブと一対のフランジとの連成座屈を考慮した弾性座屈耐力のうち、小さい値を安全率で割った値であり、前記せん断許容値は、前記基準梁の降伏強度を√3で割った値、及び前記基準梁にせん断力が作用するときの前記基準梁のウェブと一対のフランジとの連成座屈を考慮した弾性座屈耐力のうち、小さい値を安全率で割った値であり、前記たわみ許容値は、前記基準梁の長さを300で割った値であってもよい。
また、前記床構造の設計方法において、前記基準梁に対して、前記小梁は、前記小梁の材軸方向の長さに対する質量の比が小さくてもよい。
これらの発明によれば、基準梁に対して小梁を、質量に対する断面二次モーメントの比を大きくすることに加えて、材軸方向の長さに対する質量の比を小さくすることができる。従って、小梁を、より断面性能の高い梁とすることができる。
また、前記床構造の設計方法において、前記所定の外力は、前記小梁の負担幅に対応する前記床スラブの質量と、前記小梁の前記負担幅に対応する積載荷重と、前記小梁の自重との和であってもよい。
これらの発明によれば、所定の外力を、負担幅、床スラブの質量、積載荷重、及び小梁の質量(自重)を用いて具体的に規定することができる。
この発明によれば、エネルギー法に基づいて、ウェブにおける面外変位及び一対のフランジにおける面外変位から弾性座屈耐力を効率的に求めることができる。
図1に示すように、床構造2は建築物1に用いられる。なお、図1では、後述する床スラブ35を二点鎖線で示している。
図1及び図2に示すように、床構造2は、複数の柱部材10と、複数の大梁15と、複数の小梁25と、床スラブ35と、を備える。なお、複数の大梁15、複数の小梁25、及び床スラブ35で、合成梁構造3を構成する。床構造2が備える小梁25の数は、1つでもよい。
例えば、大梁15及び小梁25は、それぞれ鉄骨製である。大梁15及び小梁25には、それぞれH形鋼が用いられる。大梁15及び小梁25は、例えば水平面に沿う方向に延びる。大梁15は、第1ウェブ16と、第1上フランジ17と、第1下フランジ18と、を有する。複数の大梁15は、複数の柱部材10に架設される。複数の大梁15は、平面視で額縁状に配置され、所定の領域を取り囲んでいる。
大梁15の第1ウェブ16等には、ガセットプレート19が溶接等により接合される(図2参照)。
第2ウェブ26は、第2ウェブ26の厚さ方向に見たときに矩形を呈する平板状に形成される。第2ウェブ26は、第2ウェブ26の厚さ方向が水平面に沿うように配置される。
フランジ27,28は、平板状に形成され、フランジ27,28の厚さ方向が上下方向に沿うようにそれぞれ配置される。第2下フランジ28は、第2上フランジ27よりも下方に配置される。フランジ27,28は、第2ウェブ26を上下方向に挟む。第2ウェブ26は、第2上フランジ27の下面における幅方向の中心と、第2下フランジ28の上面における幅方向の中心とを連結する。
小梁25が有する第2ウェブ26及びフランジ27,28は、弾性要素である鋼板で形成される。弾性要素は、材料非線形を考慮しない要素である。
複数の小梁25は、複数の大梁15に架設される。複数の小梁25は、複数の大梁15にピン接合される。具体的には、図2に示すように、小梁25の第2ウェブ26とガセットプレート19とが、高力ボルト等を含む締結部材29により互いに接合される。
デッキプレート36は、鋼板を折り曲げること等により形成される。デッキプレート36は、大梁15の第1上フランジ17及び小梁25の第2上フランジ27上にそれぞれ配置される。
コンクリート37は、厚さ方向が上下方向に沿う平板状に形成される。コンクリート37は、デッキプレート36上に配置される。
例えば、シアコネクタ39は、頭付きスタッドである。床スラブ35は、シアコネクタ39を複数備えている。複数のシアコネクタ39の下端部は、大梁15の第1上フランジ17及び小梁25の第2上フランジ27の上面に、互いに間隔を空けて固定される。シアコネクタ39は、デッキプレート36を通して、コンクリート37内に埋設される。
以下では、小梁25を梁25と言う場合がある。同様に、第2ウェブ26をウェブ26と言い、第2上フランジ27を上フランジ27と言い、第2下フランジ28を下フランジ28と言う場合がある。
梁25にせん断力が作用する場合の算出方法では、図3に示すように、梁25の位置座標を、x軸、y軸、及びz軸で構成する右手系の直交座標系に基づいて認識する。なお、図3及び後述する図5では、ウェブ26等の面外変位を推定値よりも大きく示している。図3では、梁25が座屈している状態を示している。
梁25の材軸(梁25が延びる方向に延びる軸)を、x軸と規定する。フランジ27,28がウェブ26を挟む方向に延びる軸を、y軸と規定する。ウェブ26の板厚方向に延びる軸を、z軸と規定する。x軸、y軸、及びz軸は、互いに直交する。z軸に沿う方向(以下、z軸方向と言う)に見て、ウェブ26は、x軸に沿う方向(以下、x軸方向と言う)に延びる辺、及びy軸に沿う方向(以下、y軸方向と言う)に延びる辺をそれぞれ有する。ウェブ26の面外変位は、ウェブ26のz軸方向に向けた変位である。
フランジ27,28の面外変位は、y軸方向に向けた変位である。
梁25のx軸方向の各端面25aに作用するせん断力F1は、互い等しい大きさの、向きが反対となる外力である。例えば、x軸方向の負の向き側の端面25aにy軸方向の正の向きのせん断力F1が作用し、x軸方向の正の向き側の端面25aにy軸方向の負の向きのせん断力F1が作用する。なお、x軸方向の負の向き側の端面25aにy軸方向の負の向きのせん断力F1が作用し、x軸方向の正の向き側の端面25aにy軸方向の正の向きのせん断力F1が作用してもよい。
x軸に沿って変位したウェブ26の1波長分において、x軸方向の第1端とは反対の第2端をx軸の原点とし、この第2端からx軸方向の第1端に向かう向きをx軸の正の向きとする。
z軸の原点を、ウェブ26のz軸方向の中心(厚さ方向の中心)とする。z軸の正の向きを、x軸の正の向き及びy軸の正の向きに対して、右手系の直交座標系を構成する向きとする。
ウェブ26の厚さ(z軸方向の長さ)を、twと規定する。y軸方向における上フランジ27及び下フランジ28の板厚中心間の距離を、bwと規定する。梁25のせいを、Hと規定する。
上フランジ27の幅(z軸方向の長さ)及び下フランジ28の幅は互いに等しく、上フランジ27及び下フランジ28それぞれの幅の半分の値を、bfと規定する。なお、上フランジ27及び下フランジ28それぞれの幅を、Wとする。
上フランジ27の厚さ及び下フランジ28の厚さは互いに等しく、上フランジ27及び下フランジ28それぞれの厚さを、tfとする。
梁25(ウェブ26及びフランジ27,28)のヤング係数をEと規定し、梁25のポアソン比をνと規定する。
1.ウェブ26の厚さは薄く、ウェブ26の厚さはウェブ26のx軸方向の長さ及びy軸方向の長さに比べて短い。
2.ウェブ26のたわみ(座屈による面外変位)は小さく、ウェブ26の厚さよりも小さい。
3.ウェブ26の厚さ方向の中央面は、ウェブ26の曲げによって伸縮することなく、中立面を保つ。
4.梁25の断面では、曲げに対して平面保持の仮定が成立する。
5.梁25の材料は、均質であり、等方性を有する。
6.梁25に外力が作用したときの変位は、フックの法則に従う。
図5は、梁25のx軸方向の長さが半波長aである部分の梁25の全領域における面外変位Wwを示す図である。
発明者らは、三角関数を用いつつも、フーリエ級数よりも少ない項数で、x軸の座標がある値であったとき、y軸のある座標におけるz軸方向に向けたウェブ26の面外変位(第1面外変位)wwを推定できる関数を複数検討した。なお、面外変位wwは、y軸の座標の関数であり、x軸の座標の関数ではない(x軸上のある座標における関数である)。
その結果、梁25にせん断力F1が作用する場合、x軸の座標がある値であったとき、y軸のある座標におけるz軸方向に向けたウェブ26の面外変位wwは(10)式により、フーリエ級数よりも少ない項数で推定されることを見出した。ただし、Nは2以上の自然数であり、a0,an,bnは未定係数である。
(10)式は、y軸の座標の累乗関数を用いた三角関数による項を含む。cosπ(2y/bw)n及びcos(π/2)(2y/bw)nは、基底となる。(10)式は、ウェブ26等の板要素の面外変位の推定に好ましく用いることができる。
なお、図3の面外変位Wwは、図5の面外変位Wwをx軸方向に繰り返したものである。面外変位Wwは、y軸の座標及びx軸の座標それぞれの関数であり、ウェブ26の弾性座屈耐力を推定する際に用いられる。
なお、(11)式に(10)式を代入すると、(12)式が得られる。
(14)式及び(15)式は、y軸の座標の累乗関数を用いた三角関数による項を含む。
ここで、エネルギー法に基づいて、座屈変形によりウェブ26内で生じる歪エネルギーUwは(17)式のように表され、フランジ27,28の歪エネルギーUfは(18)式のように表される。
関数δwは、座屈が発生した時のウェブ26のx軸方向の変形を表現した関数であり、下フランジ28の中心に対する上フランジ27の中心に生じるx軸方向変位をδとして(21)式のように表される。
連立方程式の解となる未定係数an,bnの組が1つのみの場合には、an,bnの組が(34)式による弾性座屈耐力τcrに最小の正の値を与える場合に、an,bnの組に基づいて弾性座屈耐力τcrを求める。次に、半波長a及び未定係数λを変数として扱い、前述のように弾性座屈耐力τcrを求める。
次に、梁25に曲げモーメントが作用する場合の弾性座屈耐力の算出方法について、梁25にせん断力が作用する場合の弾性座屈耐力の算出方法とは異なる点について説明する。この場合の算出方法では、図7に示すように、梁25の位置座標を、x軸、y軸、及びz軸で構成する右手系の直交座標系に基づいて認識する。
この場合、図7及び図8に示すように、下フランジ28(一対のフランジのうちの一方)におけるy軸方向の中心の位置を、y軸の原点と規定する。y軸の原点から上フランジ27(一対のフランジのうちの他方)に向かう向きを、y軸の正の向きと規定する。
梁25のx軸方向の各端面25aに作用する曲げモーメントF2は、互い等しい大きさの外力である。
この例では、下フランジ28が曲げモーメントF2により引張力を受け、上フランジ27が曲げモーメントF2により圧縮力を受け、梁25が下方に向かって凸となって曲がるように、梁25に曲げモーメントF2が作用している。
図9は、梁25のx軸方向の長さが半波長aである部分の梁25の全領域における面外変位Wwを示す図である。
発明者らは、三角関数を用いつつも、フーリエ級数よりも少ない項数で、x軸の座標がある値であったとき、y軸のある座標におけるz軸方向に向けたウェブ26の面外変位(第1面外変位)wwを推定できる関数を複数検討した。
その結果、梁25に曲げモーメントF2が作用する場合、x軸の座標がある値であったとき、y軸のある座標におけるz軸方向に向けたウェブ26の面外変位wwは(40)式により、フーリエ級数よりも少ない項数で推定されることを見出した。ただし、Nは2以上の自然数であり、a0,an,bnは未定係数である。
(40)式は、y軸の座標の累乗関数を用いた三角関数による項を含む。cos(2πyn/bw n)及びsin(πyn/bw n)は、基底となる。(40)式は、ウェブ26等の板要素の面外変位の推定に好ましく用いることができる。
なお、図7の面外変位Wwは、図9の面外変位Wwをx軸方向に繰り返したものである。面外変位Wwは、y軸の座標及びx軸の座標それぞれの関数であり、ウェブ26の弾性座屈耐力を推定する際に用いられる。
なお、(41)式に(40)式を代入すると、(42)式が得られる。
(44)式及び(45)式は、y軸の座標の累乗関数を用いた三角関数による項を含む。
ここで、エネルギー法に基づいて、座屈変形によりウェブ26内で生じる歪エネルギーUwは(47)式のように表され、フランジ27,28の歪エネルギーUfは(48)式のように表される。
関数δwは、座屈が発生した時のウェブ26のy軸のある座標におけるx軸方向の変位であり、下フランジ28の中心に生じるx軸方向変位をδとして(52)式のように表される。
関数δf1,δf2は、座屈が発生した時のフランジ27,28のx軸方向の変位を表現した関数である。関数δf1は-δに等しく、関数δf2はδに等しい。
連立方程式の解となる未定係数an,bnの組が1つのみの場合には、an,bnの組が(65)式による弾性座屈耐力σcrに最小の正の値を与える場合に、an,bnの組に基づいて弾性座屈耐力σcrを求める。次に、半波長aを変数として扱い、前述のように弾性座屈耐力σcrを求める。
次に、床構造の断面性能及び居住性を高める検討を行った結果について説明する。
図11に示す床構造2を用いて検討を行った。床構造2が備える複数の大梁15の一部(以下、大梁15Aとも言う)に沿う軸をX軸と規定する。床構造2が備える、複数の大梁15の残部(以下、大梁15Bとも言う)、及び複数の小梁25に沿う軸をY軸と規定する。X軸及びY軸にそれぞれ直交する軸を、Z軸と規定する。
床構造2の構成及び境界条件を、以下のように設定した。
・柱部材10は、CFT製(800×800×28)である。柱部材10を、大梁15の上下端から上下に±500mmの範囲で、剛棒としてモデル化した。
・柱部材10のX軸方向のピッチL1は、19,200mmである。
・柱部材10のY軸方向のピッチは、L2(変数)である。
・大梁15Aとして、断面寸法が900×400×19×32の溶接組立H形鋼を用いた。
・大梁15Bとして、断面寸法が900×350×22×40の溶接組立H形鋼を用いた。
・大梁15は、柱部材10に剛接合されている。
・複数の小梁25は、ピッチL3で配置されている。
・デッキプレートとして、複数の山が形成されたEZ75(日鉄建材株式会社製)を用いる。
・デッキプレートでは、厚さtが1.2mm、高さが75mm(図12参照)である。デッキプレートによる単位面積当たりの荷重は、142.1N/m2である。
・X軸方向の幅が3,200mmである図示しないデッキプレートを、X軸方向に6枚並べた。
・コンクリートは、軽量コンクリートである。コンクリートの設計基準強度は18N/mm2、比重は2.0、コンクリートによる単位面積当たりの荷重は2,420N/m2である。コンクリートのヤング係数Ecは、鋼のヤング係数Esの(1/15)であり、205,000/15=13,667N/mm2である。
・山上コンクリート厚さは、85mm(図12参照)である。
・引用文献:會田他、「デッキプレートスラブの固有振動解析と平板への換算に関する検討」、日本建築学会技術報告集、第21巻、第47号、p.171-176、2015年2月
・図14に示すように、小梁25は、大梁15にガセットプレート19を介して接合される。
・小梁25の第2ウェブ26とガセットプレート19が重なる部分について、両者の変位が共有されるようにモデル化した。
・大梁15の中心軸(通り芯)上に、対称条件の境界条件を与えた。
大梁15Bについては、X軸方向の変位を拘束し、Y軸及びZ軸方向の変位を自由とした。大梁15Bについては、Y軸回りの回転を自由とし、X軸及びZ軸回りの回転を拘束した。
大梁15Aについては、Y軸方向の変位を拘束し、X軸及びZ軸方向の変位を自由とした。大梁15Aについては、Y軸回りの回転を自由とし、X軸及びZ軸回りの回転を拘束した。
・積載荷重として、長期Plongを4,900N/m2とし、床振動評価Pvibを(Plong/3)とした。
FEM解析により、床構造2の振動解析を行った。そして、合成梁構造3の1次振動モードの振動数(固有振動数)ffloor,1stを求めた。さらに、小梁25において第2ウェブ26の上端部を中心として第2下フランジ28が回動して振動するモードの1次振動モードの振動数fbeam,1stを求めた。
小梁25としては、表1に示す梁ケース1から梁ケース10の仕様で解析を行った。
基準梁を選定するに当たり、表2に示すように、床スラブ35の単位面積当たりの質量Wdを、2,562N/m2とした。積載荷重Wlは、床構造2を備える建築物が事務室に用いられるとして、建築基準法に基づいて4,900N/m2とした。なお、積載荷重Wlを2,900N/m2としてもよい。なお、建築物が住宅、自動車車庫等に用いられるとして、積載荷重Wlを設定してもよい。
所定の外力は、小梁25の負担幅bに対応する床スラブ35の質量と、小梁25の負担幅bに対応する積載荷重Wlと、小梁25の自重(質量)との和である。負担幅bは、床構造2が、複数の大梁15で取り囲まれた領域に複数の小梁25を有する場合には、小梁25のピッチL3である。床構造2が、複数の大梁15で取り囲まれた領域に1本の小梁25を有する場合には、L1/2である。
本検討では、負担幅bを、3.2mとした。
この場合、床構造2に作用する等分布荷重wは、(70)式により得られる。
(Wd+Wl)×b ・・(70)
小梁25に作用する曲げモーメントMは、(71)式により得られる。
(w/1000)×l2/8 ・・(71)
小梁25に作用するせん断力Qは、(72)式により得られる。
(w/1000)×l/2 ・・(72)
小梁25の単位長さ当たりの質量は、24.4kg/mと求められる。
σb1=M/Z×106 ・・(74)
せん断応答値τs1は、小梁25、基準梁に所定の外力が作用することにより生じるせん断力による(せん断力に対する)応答値である。せん断応答値τs1は、(75)式により得られる。
τs1=Q×103/As ・・(75)
たわみ応答値δ1は、小梁25、基準梁に所定の外力が作用することにより生じるたわみ(たわみの最大値)による(基準梁に所定の外力が作用することにより生じる)応答値である。たわみ応答値δ1は、(76)式により得られる。
δ1=5w(l×103)4/(384×205000×I×103) ・・(76)
曲げ許容値σb2は、小梁25、基準梁に作用する曲げモーメントに対する長期許容応力度(基準梁に作用する曲げモーメントに対する許容値)である。言い換えれば、曲げ許容値σb2は、小梁25、基準梁の降伏強度σby、及び小梁25、基準梁に曲げモーメントが作用するときの弾性座屈耐力σcrのうち、小さい値を安全率で割った値である。小梁25、基準梁の降伏強度σbyは、小梁25、基準梁の設計基準強度Fに等しい。本発明における小梁25は、熱間圧延鋼帯で形成される。従来の熱間圧延鋼帯で形成される建築用鋼材と同様に、製造段階においてコイル状への巻取り、及び平板状への巻戻し加工が発生することを踏まえ、本発明における小梁25の降伏強度σbyは、295N/mm2となる。一方、基準梁の降伏強度σbyは、基準梁が従来の熱間圧延形鋼であり、製造段階において巻取りや巻戻し加工が発生しないことを踏まえ、例えば235N/mm2である。
小梁25、基準梁の弾性座屈耐力σcrは、〔3.〕で述べた算出方法から求められる。例えば、安全率は1.5である。
たわみ許容値δ2は、小梁25、基準梁に許容されるたわみ(小梁25、基準梁に許容される許容値)である。例えば、たわみ許容値δ2は、小梁25、基準梁の長さを300で割った値である。
そして、所定の外力を受けたときの、許容値に対する応答値の比(以下、応答値比と言う)とは、以下の3つの比のことを意味する。
1つ目の比は、曲げ許容値σb2に対する曲げ応答値σb1の比である曲げ許容値比Cb(σb1/σb2)である。2つ目の比は、せん断許容値τs2に対するせん断応答値τs1の比であるせん断許容値比Cs(τs1/τs2)である。3つ目の比は、たわみ許容値δ2に対するたわみ応答値δ1の比であるたわみ許容値比Cd(δ1/δ2)である。
梁ケース2は、小梁25である梁ケース1に対する基準梁の候補である。同様に、梁ケース4は梁ケース3に対する基準梁の候補であり、梁ケース6は梁ケース5に対する基準梁の候補であり、梁ケース8は梁ケース7に対する基準梁の候補であり、梁ケース10は梁ケース9に対する基準梁の候補である。
表4に、梁ケース2,4,6,8,10における許容値比Cb,Cs,Cd等を示す。
表4に、小梁25である梁ケース1,3,5,7,9について、合成梁構造3の1次振動モードの振動数ffloor,1st及び小梁25の下フランジ28の1次振動モードの振動数fbeam,1stを求めた結果を示す。このとき、梁ケース1,3,5,7,9では、(80)式を満たす。
ffloor,1st≦fbeam,1st ・・(80)
例えば、梁ケース1では、合成梁構造3の振動数ffloor,1stである8.7Hzは、小梁25の下フランジ28の振動数fbeam,1stである18.0Hz以下であり、(80)式を満たす。
以下では、質量に対する断面二次モーメントの比を、断面二次モーメント比と言う。なお、断面二次モーメント比は、小梁25の材軸方向の単位長さ当たりの、質量に対する断面二次モーメントの比であってもよい。
表4に示すように、小梁25である梁ケース1の断面二次モーメント比は、6.42×105mm4/kgであり、基準梁である梁ケース2の断面二次モーメント比は、4.09×105mm4/kgである。従って、基準梁である梁ケース2の断面二次モーメント比に対して、小梁25である梁ケース1の断面二次モーメント比が大きい。梁ケース2の断面二次モーメント比に対する、梁ケース1の断面二次モーメント比の割合は、157%である。
梁ケース4に対する梁ケース3の断面二次モーメント比の関係、梁ケース6に対する梁ケース5の断面二次モーメント比の関係、梁ケース8に対する梁ケース7の断面二次モーメント比の関係、梁ケース10に対する梁ケース9の断面二次モーメント比の関係も、それぞれ同様である。
また、本実施形態の床構造2を施工する施工方法では、(80)式を満たし、基準梁の断面二次モーメント比に対して、小梁25の断面二次モーメント比が大きくなるように施工する。
図19から図21に、梁ケース4における解析結果の一例を示す。図19及び図20に示すように、床構造2全体の振動モードにおいては、床スラブ35Aの中心の変位が大きいことが分かる。図21示すように、梁25の第2下フランジ28の振動モードにおいては、梁25の第2下フランジ28の振動の変位が大きいことが分かる。
本実施形態の床構造2、設計方法、及び施工方法では、(80)式を満たすことにより、人の歩行による振動数と振動数ffloor,1stとの差よりも、人の歩行による振動数と振動数fbeam,1stとの差が大きくなる。従って、人の歩行による加振を受けても、複数の大梁15、複数の小梁25、及び床スラブ35全体に比べて、小梁25の第2下フランジ28が第2ウェブ26の上端部を中心として振動し難くなる。下フランジ28が振動し易いと、第2ウェブ26を厚くしたり、振止材を用いたりして、下フランジ28の振動を抑制する必要が生じるが、本発明ではその必要が生じないため、小梁25や床構造2全体としての質量が大きくなり過ぎるのが抑制される。小梁25の第2下フランジ28が振動し難くなることにより、床構造2の居住性を確保することができる。
また、小梁25に対応して、所定の外力に対する応答値が許容値以下であるJIS規格による圧延H形鋼が、基準梁と規定される。この基準梁に対して本実施形態の小梁25は、断面性能を表す指標の1つとして、断面二次モーメント比が大きい。これにより、小梁25の質量に対する断面性能の比を大きくすることができる。
一般的に、小梁25に対応する基準梁の使用時には、軸力に比べて、曲げモーメント及びせん断力が作用しやすい。従って、基準梁に作用しやすい曲げモーメント及びせん断力、そして基準梁に生じるたわみを指標とした曲げ応答値σb1、せん断応答値τs1、たわみ応答値δ1、曲げ許容値σb2、せん断許容値τs2、及びたわみ許容値δ2を用いて、基準梁をより正確に選ぶことができる。
弾性座屈耐力τcr,σcrを、ウェブ26における面外変位Ww及びフランジ27,28における面外変位Wf1、Wf2からエネルギー法に基づいて求める。従って、エネルギー法に基づいて、ウェブ26における面外変位Ww及びフランジ27,28における面外変位Wf1、Wf2から弾性座屈耐力τcr,σcrを効率的に求めることができる。
なお、基準梁に対する、小梁25の材軸方向の長さに対する質量の比は、30%以上小さいことが好ましい。
10 柱部材
15 大梁
25 小梁
26 第2ウェブ(ウェブ)
28 第2下フランジ(下フランジ)
35 床スラブ
Claims (10)
- 複数の柱部材と、
前記複数の柱部材に架設される複数の大梁と、
前記複数の大梁で取り囲んだ内側に設けられ、前記複数の大梁に架設される小梁と、
前記複数の大梁及び前記小梁の上方に設けられる床スラブと、
を備える床構造において、
前記小梁は、溶接組立H形鋼であり、
前記複数の大梁、前記小梁、及び前記床スラブの1次振動モードの振動数をffloor,1st、前記小梁においてウェブの上端部を中心として下フランジが回動して振動する1次振動モードの振動数をfbeam,1stと規定し、
所定の外力を受けたときの、許容値に対する応答値の比が1以下で最も高い、前記小梁と同じ長さの、JIS G 3192の規格による圧延H形鋼を、前記小梁に対応する基準梁と規定したときに、
(1)式を満たし、
前記基準梁に対して、前記小梁は、質量に対する断面二次モーメントの比が大きく、
前記所定の外力は、前記小梁の負担幅に対応する前記床スラブの質量と、前記小梁の前記負担幅に対応する積載荷重と、前記小梁の自重との和である、床構造。
ffloor,1st≦fbeam,1st ・・(1) - 前記応答値は、
前記基準梁に前記所定の外力が作用することにより生じる曲げモーメントに対する曲げ応答値と、
前記基準梁に前記所定の外力が作用することにより生じるせん断力に対するせん断応答値と、
前記基準梁に前記所定の外力が作用することにより生じるたわみ応答値と、
を有し、
前記許容値は、
前記基準梁に作用する曲げモーメントに対する曲げ許容値と、
前記基準梁に作用するせん断力に対するせん断許容値と、
前記基準梁に許容されるたわみ許容値と、
を有し、
前記所定の外力を受けたときの、前記許容値に対する前記応答値の比が1以下で最も高いとは、
前記曲げ許容値に対する前記曲げ応答値の比である曲げ許容値比が1以下であり、
前記せん断許容値に対する前記せん断応答値の比であるせん断許容値比が1以下であり、
前記たわみ許容値に対する前記たわみ応答値の比であるたわみ許容値比が1以下であり、前記曲げ許容値比、前記せん断許容値比、及び前記たわみ許容値比の最大値が最も高いことを意味する、請求項1に記載の床構造。 - 前記曲げ許容値は、前記基準梁の降伏強度、及び前記基準梁に曲げモーメントが作用するときの前記基準梁のウェブと一対のフランジとの連成座屈を考慮した弾性座屈耐力のうち、小さい値を安全率で割った値であり、
前記せん断許容値は、前記基準梁の降伏強度を√3で割った値、及び前記基準梁にせん断力が作用するときの前記基準梁のウェブと一対のフランジとの連成座屈を考慮した弾性座屈耐力のうち、小さい値を安全率で割った値であり、
前記たわみ許容値は、前記基準梁の長さを300で割った値である、請求項2に記載の床構造。 - 前記基準梁に対して、前記小梁は、前記小梁の材軸方向の長さに対する質量の比が小さい、請求項1から3のいずれか一項に記載の床構造。
- 複数の柱部材と、
前記複数の柱部材に架設される複数の大梁と、
前記複数の大梁で取り囲んだ内側に設けられ、前記複数の大梁に架設される小梁と、
前記複数の大梁及び前記小梁の上方に設けられる床スラブと、
を備える床構造を設計する床構造の設計方法において、
前記小梁は、溶接組立H形鋼であり、
前記複数の大梁、前記小梁、及び前記床スラブの1次振動モードの振動数をffloor,1st、前記小梁においてウェブの上端部を中心として下フランジが回動して振動する1次振動モードの振動数をfbeam,1stと規定し、
所定の外力を受けたときの、許容値に対する応答値の比が1以下で最も高い、前記小梁と同じ長さの、JIS G 3192の規格による圧延H形鋼を、前記小梁に対応する基準梁と規定したときに、
(2)式を満たすように設計し、
前記基準梁に対して、前記小梁は、質量に対する断面二次モーメントの比が大きくなるように設計し、
前記所定の外力は、前記小梁の負担幅に対応する前記床スラブの質量と、前記小梁の前記負担幅に対応する積載荷重と、前記小梁の自重との和である、床構造の設計方法。
ffloor,1st≦fbeam,1st ・・(2) - 前記応答値は、
前記基準梁に前記所定の外力が作用することにより生じる曲げモーメントに対する曲げ応答値と、
前記基準梁に前記所定の外力が作用することにより生じるせん断力に対するせん断応答値と、
前記基準梁に前記所定の外力が作用することにより生じるたわみ応答値と、
を有し、
前記許容値は、
前記基準梁に作用する曲げモーメントに対する曲げ許容値と、
前記基準梁に作用するせん断力に対するせん断許容値と、
前記基準梁に許容されるたわみ許容値と、
を有し、
前記所定の外力を受けたときの、前記許容値に対する前記応答値の比が1以下で最も高いとは、前記曲げ許容値に対する前記曲げ応答値の比である曲げ許容値比が1以下であり、前記せん断許容値に対する前記せん断応答値の比であるせん断許容値比が1以下であり、前記たわみ許容値に対する前記たわみ応答値の比であるたわみ許容値比が1以下であり、前記曲げ許容値比、前記せん断許容値比、及び前記たわみ許容値比の最大値が最も高いことを意味する、請求項5に記載の床構造の設計方法。 - 前記曲げ許容値は、前記基準梁の降伏強度、及び前記基準梁に曲げモーメントが作用するときの前記基準梁のウェブと一対のフランジとの連成座屈を考慮した弾性座屈耐力のうち、小さい値を安全率で割った値であり、
前記せん断許容値は、前記基準梁の降伏強度を√3で割った値、及び前記基準梁にせん断力が作用するときの前記基準梁のウェブと一対のフランジとの連成座屈を考慮した弾性座屈耐力のうち、小さい値を安全率で割った値であり、
前記たわみ許容値は、前記基準梁の長さを300で割った値である、請求項6に記載の床構造の設計方法。 - 前記基準梁に対して、前記小梁は、前記小梁の材軸方向の長さに対する質量の比が小さい、請求項5から7のいずれか一項に記載の床構造の設計方法。
- 前記弾性座屈耐力を、前記ウェブにおける面外変位及び前記一対のフランジにおける面外変位からエネルギー法に基づいて求める、請求項7に記載の床構造の設計方法。
- 複数の柱部材と、
前記複数の柱部材に架設される複数の大梁と、
前記複数の大梁で取り囲んだ内側に設けられ、前記複数の大梁に架設される小梁と、
前記複数の大梁及び前記小梁の上方に設けられる床スラブと、
を備える床構造を施工する床構造の施工方法において、
前記小梁は、溶接組立H形鋼であり、
前記複数の大梁、前記小梁、及び前記床スラブの1次振動モードの振動数をffloor,1st、前記小梁においてウェブの上端部を中心として下フランジが回動して振動する1次振動モードの振動数をfbeam,1stと規定し、
所定の外力を受けたときの、許容値に対する応答値の比が1以下で最も高い、前記小梁と同じ長さの、JIS G 3192の規格による圧延H形鋼を、前記小梁に対応する基準梁と規定したときに、
(3)式を満たすように施工し、
前記基準梁に対して、前記小梁は、質量に対する断面二次モーメントの比が大きくなるように施工し、
前記所定の外力は、前記小梁の負担幅に対応する前記床スラブの質量と、前記小梁の前記負担幅に対応する積載荷重と、前記小梁の自重との和である、床構造の施工方法。
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| 會田 祐,外1名,デッキプレートスラブの固有振動解析と平板への換算に関する検討-鉄骨造デッキプレートスラブの振動および床衝撃音に関する数値解析的研究 その1-,日本建築学会報告集,第21巻第47号,日本,日本建築学会,2015年02月,171-176 |
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