高容量材料を得るためには、キャリアイオン(例えば、リチウムイオン)挿入時の電荷補償量の大きな材料を選定することが望ましい。このために、さらに高容量な化合物として、例えば、6価の元素であるタングステン元素(W)、或いはモリブデン元素(Mo)を含んだ複合酸化物が採用され得る。タングステン-ニオブ複合酸化物材料としては、例えばW比の多い組成としてNb18W8O69やNb16W5O55等で表される結晶構造を有する化合物が存在する。しかしながら、そのような材料について報告されている可逆的なリチウム吸蔵・放出量は250 mAh/gを超えない。また、モリブデン-ニオブ複合酸化物材料としては、ニオブ含有比の多いものについて電池材料の報告は見られない。
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図は実施形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる点があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜設計変更することができる。
[第1の実施形態]
第1の実施形態によると、正方晶の結晶構造を有する複合酸化物を含む活物質が提供される。上記複合酸化物は、一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表される。一般式において、MはW及びMoからなる群より選択される何れか一つである。式中の各添字は、それぞれ0≦a≦b+4+3c,0<b<2-2d,及び0<c<2-4dを満たす。係る活物質は後述するとおり微量の添加元素を含むことができ、該微添加元素を置換元素として複合酸化物に含んだ形態も第1の実施形態に含まれるが、上記一般式では、そのような微置換元素を省略した組成を表している。
係る活物質は、電池用活物質であり得る。該活物質は、例えば、リチウムイオン電池や非水電解質等の二次電池の電極に用いられる電極活物質であり得る。より具体的には、活物質は、例えば、二次電池の負極に用いられる負極活物質であり得る。
上記一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3c(MはW又はMo;0≦a≦b+4+3c,0<b<2-2d,及び0<c<2-4d)で表され、正方晶型の結晶構造を有する複合酸化物を電極活物質として用いることで、高容量な二次電池を実現できる。
<結晶構造>
第1の実施形態に係る活物質が含む正方晶構造の複合酸化物は、ニオブを含む酸化物材料における結晶相であるWadsley-Roth相の構造を有する酸化物材料の一部に対応する。Wadsley-Roth相は、組成中の酸素Oと金属元素Mとの比について、酸素の原子数及び金属元素の原子数をそれぞれAO及びAMとして、2.33≦AO/AM≦2.65の範囲で結晶構造を取ることが報告されている。例えば、TiNb2O7の場合にはAO/AM=2.33の還元側の結晶構造となる。
ここで、還元とは構造内の酸素の割合が低いことを意味する。Wadsley-Roth相は酸素‐金属の八面体の頂点共有構造が酸化レニウム型のブロック構造を形成し、ブロックが八面体の菱を共有するか、あるいは四面体が間に入り頂点共有することにより酸化レニウム型のブロック(ReO3型ブロック)が二次元方向に接続するような結晶構造を取る。還元側の結晶構造は、酸化レニウム型のブロックのサイズが小さい構造を取る。酸化レニウム型の結晶構造はLiを多く挿入出来る空隙を有しているものの、対称性の高い結晶構造のためにLiが挿入した際に電荷反発を解消するために金属元素と酸素元素の結合長が変化することが難しい。このため酸化レニウム型の結晶構造は、Li挿入した時の電荷反発によりLi挿入が制約される構造と言える。ここで、還元側の結晶構造とすることはAO/AMが小さくなることから構造内の酸素数が減少するため酸化レニウム型のブロックのサイズが小さくなる。この結果、Liが挿入したときに金属元素と酸素元素の結合長の変化による体積膨張が可能な結晶構造になり得る。このために酸化レニウム型の結晶構造を含むことで広い空隙を有しながらも、Liが挿入した時の構造変化にも制約がないために多くのLi挿入が達成できる。
第1の実施形態に係る活物質が含む複合酸化物についても、TiNb2O7のように還元側の結晶構造を取ることにより、結晶構造内により多くリチウム(Li)を挿入することが可能となり、可逆容量が大きな結晶構造が得られている。つまり、係る複合酸化物の結晶構造は、低価数である4価元素のチタンを含んだ三元素からなるWadsley-Roth相に属する、還元側の結晶構造である。
上記一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3c(MはW又はMo;a, b, c, dは0≦a≦b+4+3c,0<b<2-2d,及び 0<c<2-4dを満たす数値)で表される正方晶構造の複合酸化物には、大まかに、M=Wであって一般式LiaTibNb2WcO2b+5+3cで表される正方晶型チタン-ニオブ-タングステン複合酸化物、及びM=Moであって一般式LiaTibNb2-2dMoc+2dO2b+5+3cで表される正方晶型チタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物が含まれる。
一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cにおいて、添字b, c, 及びdは、それぞれ0<b<2、0<c<2、及び0≦d<0.5の範囲内に含まれ得る。正方晶型チタン-ニオブ-タングステン複合酸化物を表す一般式LiaTibNb2WcO2b+5+3cについては、添字b及びcがそれぞれ0.4≦b≦1.6及び0.4≦c≦1.6の範囲内に在ることが好ましい。正方晶型チタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物を表す一般式LiaTibNb2-2dMoc+2dO2b+5+3cついては、添字b, c, 及びdがそれぞれ0.3≦b≦1.6、0.3≦c<1.6、及び0≦d<0.4の範囲内に在ることが好ましい。
一般式LiaTibNb2McO2b+5+3cで表される正方晶型チタン-ニオブ-タングステン複合酸化物の一例として、Ti2Nb10W5O44の結晶構造の模式図を、図1に示す。図1では、該結晶構造をc軸方向に沿って見た[001]方向の単位格子について示す。なお、当該複合酸化物における化学量論比をTi2Nb10W5O44と表しているが、当該組成はTi0.4Nb2WO8.8という式に等しい。結晶構造の空間群表記はI-4に属し、空間群番号は82で帰属される。ここでいう空間群とは、International Tables for Crystallography(非特許文献3)、具体的には、当該資料のVol.A: Space-group symmetry(第2オンライン版(2016);ISBN: 978-0-470-97423-0、 doi: 10.1107/97809553602060000114)の内容に対応する。但し、空間群はP4(空間群番号75)、I4(空間群番号79)、P-4(空間群番号81)、(P42/n(空間群番号86)、P4nc (空間群番号104)、P-421c(空間群番号114)、P-4n2(空間群番号118)といったI-4(空間群番号82)に類似した四回対称軸もしくは四回反軸を有する単純立方格子による帰属で説明することも可能であり、組成比の調整によって量論組成比からずれたり、異相との混在があることで構造に歪みが生じた場合には変化することがあり得る。Ti2Nb10W5O44では、金属元素M(Ti,Nb,Wを含む)の原子数AMに対する酸素Oの原子数AOの比は、AO/AM=2.59となる。結晶構造10内には金属元素18と酸素元素19でそれぞれ構成される八面体10a及び四面体10bが含まれる。八面体10aは、頂点共有で互いに結ばれて酸化レニウム型のブロック(ReO3型ブロック)を構成する。ブロックのサイズは、八面体が4個×4個=16個となる。酸化レニウム型のブロックは八面体10aの稜を共有するか、四面体10bの頂点を共有することによってa軸方向およびb軸方向に平面を形成する。この16個の八面体10aを含む平面が、c軸側にも八面体稜共有あるいは四面体頂点共有によって複数結ばれることにより、結晶構造が構成される。
一般に、タングステン-ニオブ複合酸化物は、タングステン組成比が多い結晶構造を有し、該結晶構造はブロックサイズが4個×5個=20個か、或いは5個×5個=25個であるブロック構造を含む。第1の実施形態の一態様であるチタン-ニオブ-タングステン複合酸化物は、低価数である4価元素のチタンを含むことによって、タングステン組成比が高い状態でもブロック構造を低減出来ることを見出した結果、達成されたものである。ブロックサイズの低減によって、Li挿入量を向上させることが可能となる。また、タングステンは第6周期元素に属するために、チタン元素、ニオブ元素と比較しより重い元素であることから、従来のTiNb2O7と比較して真密度が向上した材料が得られる。この結果、体積あたりの容量を向上することが可能となる。
結晶構造において、6価のタングステン元素、4価のチタン元素、5価のニオブ元素のイオン半径は互いに近しいため、等価なサイトを共有することが可能である。八面体中の金属サイトである8gサイト(八面体構造の中心サイト)と四面体の金属サイトである2cサイト(四面体構造の中心サイト)には、ニオブ元素(Nb)とチタン元素(Ti)とタングステン元素(W)が結晶構造内の電荷のバランスを調整する形で配置される。占有比はそれぞれのサイト毎に異なり、偏在し得る。このように原子が偏在した結晶構造を取ることにより多数の元素を結晶構造内に含む場合においても電荷バランスを維持し骨格構造を維持することが可能となる。また、このように四面体サイトを含む結晶構造では、Liの固体内拡散性が向上することが期待できる。
一般式LiaTibNb2WcO2b+5+3cで表されるチタン-ニオブ-タングステン複合酸化物の他の例として、TiNb2WO10の結晶構造の模式図を、図2に示す。図2についても、該結晶構造をc軸方向に沿って見た[001]方向の単位格子を示す。図1と異なり、酸化レニウム型のブロック同士を結ぶ四面体による頂点共有構造が、酸化レニウム型のブロック間の八面体11aの稜共有構造に変更されている。結晶構造の空間群表記はI-4(空間群番号82)か、P4(空間群番号75)、I4(空間群番号79)、P-4(空間群番号81)、(P42/n(空間群番号86)、P4nc (空間群番号104)、P-421c(空間群番号114)、P-4n2(空間群番号118)といったI-4(空間群番号82)に類似した四回対称軸もしくは四回反軸を有する単純立方格子による帰属で説明することが可能であり、組成比の調整によって量論組成比からずれたり、異相との混在があることで構造に歪みが生じた場合に変化することがあり得る。TiNb2WO10では、金属元素Mの原子数(AM=Ti原子の数+Nb原子の数+W原子の数)に対する酸素Oの原子数(AO)の比は、AO/AM=2.50となる。結晶構造中のTi組成比を高めることでAO/AM比を小さくすることによって、図2のような結晶構造を取ることが可能となる。四面体の頂点接続が八面体の稜接続へ置き代わることにより、Li挿入による空隙量が増加すると共に、Li挿入時の結合長の変化による構造緩和が容易となる。そのため、TiNb2WO10(図2)では、Ti2Nb10W5O44(図1)よりも可逆容量がさらに向上されている。
第1の実施形態に係る活物質について一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cにおける元素Mがタングステン(W)である態様では、活物質としてのチタン-ニオブ-タングステン複合酸化物は一般式LiaTibNb2WcO2b+5+3cで表される。当該複合酸化物の結晶構造は、例えば、図1に例示した結晶構造、図2に例示した結晶構造、又は両者が混在した結晶構造を取り得る。上記一般式LiaTibNb2WcO2b+5+3cで表される組成の範囲は、式中の各添字についての0≦a≦b+4+3c、0<b<2、及び0<c<2の範囲において取ることが可能である。当該範囲内のいずれの場合においても高容量な活物質材料を得ることができ、電池設計に応じて組成を選択することが出来る。
一般に、タングステン元素(W)とチタン元素(Ti)は、組成比が異なる多型が多く存在するWadsley-Roth相において構造内に入りやすい元素である。このため、中のニオブ元素(Nb)の置き換えは他の元素と比べ容易である。従って、これらW、Ti、及びNbの元素を組み合わせることにより、結晶構造中の組成比の調整が可能である。
一般式LiaTibNb2-2dMoc+2dO2b+5+3cで表される正方晶型チタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物の一例として、TiNb5Mo2O20の結晶構造の模式図を図3に示す。図3では、該結晶構造をc軸方向に沿って見た[001]方向の単位格子について示す。なお、当該複合酸化物における化学量論比をTiNb5Mo2O20と表しているが、当該組成はTi1/3Nb5/3Mo2/3O20/3という式に等しい。結晶構造の空間群表記はI-4に属し、空間群番号は82で帰属される。
但し、空間群はP4(空間群番号75)、I4(空間群番号79)、P-4(空間群番号81)、P42/n(空間群番号86)、P4nc (空間群番号104)、P-421c(空間群番号114)、P-4n2(空間群番号118)といったI-4(空間群番号82)に類似した四回対称軸もしくは四回反軸を有する単純立方格子による帰属で説明することも可能であり、組成比の調整によって量論組成比からずれたり、異相との混在があることで構造に歪みが生じた場合には変化することがあり得る。TiNb5Mo2O20では、金属元素M(Ti,Nb,Moを含む)の原子数に対する酸素Oの原子数の比は、AO/AM=2.50となる。結晶構造12内には金属元素18と酸素元素19で構成される八面体12a及び四面体12bが含まれる。八面体12aは、頂点共有で互いに結ばれて酸化レニウム型のブロックを構成する。ブロックのサイズは、3個×3個=9個の八面体12aを配置した構造に該当する。
モリブデン元素(Mo)は、6価だけではなく5価の状態でも結晶構造に取り入れることが出来る。6価の元素では、Ti元素とのLi挿入時の電荷補償が3電子反応となることから、挿入可能なLiの理論容量を高めることが出来る。5価の元素は、Nb元素を置き換える形で存在する。5価の状態のMo元素は、Mo元素のdバンドに電子が供給される形で結晶構造内で存在する。そのため、5価のMo元素を含むことで導電性が変化し、電池容量を高めることが出来る。モリブデンを含むWadsley-Roth相は作動電位が高くなる(貴になる)ことが知られている。第1の実施形態に係る一態様であるチタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物では、モリブデン元素を高濃度で含んだ結晶構造を有することにより、作動電位をTiNb2O7よりも高めることが出来る。そのことから、作動電位が電解液の還元副反応の少ない電位領域となるために、高い寿命性能を発揮出来る。さらに、電位曲線の形状がTiNb2O7よりもより急峻に変化することから、当該複合酸化物を負極に用いた二次電池は入出力性能がより改善することが期待できる。
なお、一般式LiaTibNb2-2dMoc+2dO2b+5+3c中の添字cは、6価のMo元素の量論比を表す。添字dは、5価のMo元素の量論比と比例しており、“2d”が5価のMo元素の量論比を表す。ところで、先に説明したチタン-ニオブ-タングステン複合酸化物については、W元素は5価の状態で結晶構造に取り込まれないため、一般式LiaTibNb2WocO2b+5+3cは添字dを含まない(言い換えると、d=0である)。
上述した正方晶型の結晶構造を有する複合酸化物に対するCu-Kα線源を用いた粉末X線回折の回折図(回折スペクトル)において、2θ=25.1±0.5°の範囲内に現れる最も強度の高いピークのピーク強度I1と、2θ=23.8±0.5°の範囲内に現れるピークのピーク強度I2とが、0.1≦I2/I1≦1.0の関係を満たすことが望ましく、0.1≦I2/I1≦0.8の関係を満たすことがさらに望ましい。ピーク強度I1に対応する、X線回折図において2θ=25.1±0.5°の範囲内に現れるメインピークは、結晶構造のうちc軸を含まない面に帰属される。ピーク強度I2に対応する、X線回折図において2θ=23.8±0.5°の範囲内に現れるピークは、c軸を含む面方向に帰属される。
係る活物質の複合酸化物の結晶構造は、c軸方向に広い空隙を有する。そのため、結晶構造中のLiは、主にc軸方向に拡散する。上記ピーク強度比I2/I1が0.1≦I2/I1≦1.0や0.1≦I2/I1≦0.8の範囲内にあることは、Liの拡散距離を低減することにつながる。つまり、I2/I1比が0.1≦I2/I1≦1.0の範囲内にある複合酸化物や0.1≦I2/I1≦0.8の範囲内にある複合酸化物では、結晶構造におけるc軸方向の配向が抑制されている。そのため、このような強度比を満たすことによって、電池性能を向上することが可能である。ピーク強度比I2/I1は、0.1≦I2/I1≦0.9の範囲内にあることが好ましく、0.1≦I2/I1≦0.65の範囲内にあることがより好ましい。
上記ピーク強度比の条件は、量論組成におけるTi/Nb比か、或いはM/Nb比(M=W又はMo)を調整することによって、複合酸化物の合成時の焼成中の結晶成長の速度を抑制することによって達成することが出来る。即ち、複合酸化物中の元素比の調整により、結晶構造におけるc軸方向の配向を制御できる。係る複合酸化物は、Ti/Nb比及びM/Nb比を調整しても結晶構造を変化させながら構造を維持することが可能であるために、組成範囲が広い。従って、組成比を調整することによって配向を制御する余裕がある。
<微添加元素>
係る活物質では、複合酸化物に対する元素添加を行うことによってさらに性能を改善することが出来る。つまり、第1の実施形態に係る活物質には、上記一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表される正方晶型複合酸化物に加え、添加元素が微量に含まれ得る。元素としては、Ti, V, Ta, Fe, Bi, Sb, As, P, Cr, Mo, W, B, Na, K, Mg, Al, Ca, Y, Zr 及びSiが挙げられる。
上記添加元素は、複合酸化物の構成元素の一部を置換した形態で、構造内に含まれ得る。つまり、第1の実施形態に係る活物質には、上記一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表される正方晶型複合酸化物をベースとする置換酸化物も包含される。また、上記添加元素は、複合酸化物の結晶構造には含まれない形態で活物質中に存在し得る。
例えばバナジウム(V)及びリン(P)の元素は、5価元素として結晶構造内に取りこむことが出来る。基本構成元素として含有している4価のTi元素を5価元素で一部置き換えることにより、活物質の電子導電性を向上させることができる。それにより、活物質のレート性能や寿命性能を高めることが出来る。さらに、チタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物については、その骨格構造はNb9VO25やNb9PO25と同型の結晶構造であることから、V及びPの構造内への置換が特に容易である。Nb9VO25及びNb9PO25はチタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物よりも作動電位が低い(卑である)が、V 及び/又は Pを導入することでチタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物の作動電位をNb9VO25やNb9PO25のそれに近づけさせることができる。そのため、V 及び/又は Pで元素置換を行うことにより、電池の曲線形状を調整することが可能である。
Mo, W及びV, カリウム(K), ホウ素(B), ナトリウム(Na)から選択される元素は、複合酸化物の融点が低いことから焼結助剤としての効果をもたらすことが出来る。ここでは、添加元素としてのWは、ニオブ-チタン-モリブデン複合酸化物(LiaTibNb2-2dMoc+2dO2b+5+3c)へ適用するものを指す。同様に、添加元素としてのMoは、ニオブ-チタン-タングステン複合酸化物(LiaTibNb2WcO2b+5+3c)へ適用するものを指す。V, K, B, Naは、両方の複合酸化物に適用することが出来る。これら元素の微量添加により、複合酸化物の合成時の焼成温度をさげて結晶性を向上させることが可能である。結晶性を高めることにより、活物質のレート性能やサイクル性能を高めることが出来る。さらに、ニオブ-チタン-モリブデン複合酸化物およびニオブ-チタン-タングステン複合酸化物にて基本構成元素としてそれぞれ含まれるMoやWは焼成時に蒸散しやすいが、焼成温度を下げることで焼成時に蒸散を抑制することが可能となる。
チタン(Ti)は、4価の元素としてNb元素を一部置き換えることが可能である。これによって、電荷調整のために構造内の6価の元素の置換量を高めることが可能であり、電池性能の改善が可能となる。
タンタル(Ta)は、5価の元素としてNb元素を置き換えることが可能である。Ta及びNbは周期表上で同族の元素に該当することから、物理的及び化学的な性質が類似している。そのため、NbをTaで置換しても同等の電池性能を得ることが可能である。
鉄(Fe),クロム(Cr),アルミニウム(Al),ビスマス(Bi),アンチモン(Sb),及びヒ素(As)から選択される元素は、3価の元素として結晶構造内に取りこむことが出来る。マグネシウム(Mg)は2価の元素として結晶構造内に取りこむことが出来る。Ti元素を一部3価あるいは2価の元素に置き換えることによって、構造内の電気的中性を保つために6価であるW元素、あるいはMo元素の組成比を増加させることが可能である。これによって電池の理論容量を高めることが可能であり、活物質のLi挿入量をさらに増加させることが可能である。
カルシウム(Ca),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)、シリコン(Si)といった元素は、それらの酸化物が係る複合酸化物の合成における焼成の条件において安定に存在し得る元素であり、かつ結晶構造内には置換がされない元素である。これらの元素が微量に存在することによって、焼成中の粒成長を抑制させる粒成長抑制剤として機能させることが可能である。これによって、粒度分布の形状を整えられ、粒度分布のバラつきをさらに抑制することが可能である。
これらTi, V, Ta, Fe, Bi, Sb, As, P, Cr, Mo, W, B, Na, K, Mg, Al, Ca, Y, Zr及びSiからなる群より選択される1以上の元素による添加は、微量のものであることが望ましい。具体的には、一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cに対し質量単位で10ppm以上10000ppm以下の範囲内に留めることが望ましく、3000ppm以下の範囲に留めることがより望ましい。第1の実施形態に係る活物質は、複合酸化物の組成を一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表しても、その結晶構造中に取り込まれた微置換元素を含んだ置換複合酸化物を除外するものではない。当然ながら、複合酸化物の結晶構造中に取り込まれていない微量添加元素も上記一般式には表記されないが、第1の実施形態に係る活物質は、複合酸化物に加えて上記元素を含む形態も包含する。第1の実施形態に係る活物質は、上記微置換元素を含まない無置換のLiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3c複合酸化物であってもよい。
<活物質粒子>
第1の実施形態に係る活物質は、例えば、粒子の形態を取り得る。即ち、係る活物質は、一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3c(微置換元素の有無は問わない)で表され、正方晶型の結晶構造を有する複合酸化物の粒子からなり得る。また、係る活物質は、複合酸化物に加え、上述した微量添加可能な元素が混在する粒子から成り得る。活物質は、単独の一次粒子、複数の一次粒子が凝集してなる二次粒子、又はこれらの混合物であり得る。活物質は、例えば、複合酸化物の一次粒子の表面や複合酸化物の一次粒子間に上記元素を含み得る。
第1の実施形態に係る活物質の平均一次粒子径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。活物質の平均一次粒子径が小さいと、一次粒子内でのリチウムイオンの拡散距離が短いため、リチウムイオン拡散性が高まる傾向にある。また、活物質の平均一次粒子径が小さいと、反応面積が増加するため、活物質とリチウムイオンとの反応性が高まり、リチウムイオン挿入脱離反応が向上する傾向にある。
第1の実施形態に係る活物質の平均二次粒子径は、1μm以上50μm以下であることが好ましい。活物質の平均二次粒子径をこの範囲にすることにより、電極製造時の生産性を向上させると共に、良好な性能の電池を得ることができる。この平均二次粒子径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求めた粒度分布において、体積積算値が50%となる粒径を意味している。
活物質のBET比表面積は、3.0m2/g以上120m2/g以下であることが望ましく、4.0m2/g以上110m2/g以下であることがより望ましい。比表面積が高い活物質を用いると、電池の放電レート性能を高めることができる。また、比表面積の低い活物質を用いると、電池の寿命性能を向上させることができ、第2の実施形態にて後述する電極の製造工程において、活物質を含むスラリーの塗工性を良好なものにすることができる。
BET比表面積は、窒素BET(Brunauer, Emmet and Teller)法により求めた比表面積を意味している。この窒素BET法に基づく比表面積を求める方法は、後段にて詳述する。
<製造方法>
第1の実施形態に係る活物質は、下記のとおり製造することができる。一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cにおいて元素MがWであるチタン-ニオブ-タングステン複合酸化物の態様および元素MがMoであるチタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物の態様のそれぞれについて、製造方法を説明する。
(チタン-ニオブ-タングステン複合酸化物の合成)
チタン-ニオブ-タングステン複合酸化物の製造は特に限定されるものではないが、例えば、固相反応法、ゾルゲル法、水熱合成法などの方法により合成することが出来る。一例として固相反応法について記載する。固相反応法は液相を用いないために簡便かつ安価な製造方法である。
出発原料として、チタン化合物、ニオブ化合物、及びタングステン化合物を用いる。チタン化合物としては、例えば、水酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンが挙げられる。ニオブ化合物としては、例えば、水酸化ニオブ、酸化ニオブが挙げられる。タングステン化合物としては、例えば、パラタングステン酸アンモニウム及びその水和物、タングステン酸アンモニウム及びその水和物、水酸化タングステン、酸化タングステンが挙げられる。
結晶構造中のチタン、ニオブ、又はタングステンの一部が上述した微量の元素(微添加元素)で置換された置換複合元素を製造する場合は、例えば、置換元素として導入する元素の酸化物を出発原料さらに含ませることができる。
出発原料としては、例えば、粒子状の材料を用いる。出発原料の平均粒子径は5μm以下、より好ましくは2μm以下とする。固相反応法は粒子同士の接触点から反応が進行するため、粒子径を小さくすることによって反応性を高めることが可能となり、目的の相を得やすくなる。
出発原料を所定の組成比で秤量した後に、十分に原料の混合を行う。混合は、湿式方式、乾式方式のいずれの方法でも可能である。原料を混合した後に、焼成を行う。
焼成にあたり、本焼成の前に仮焼成を含めることが出来る。仮焼成は800℃以上、1100℃以下の焼成温度とし、焼成時間は5時間以上20時間以下で実施することが好ましい。このような焼成温度、焼成時間の範囲において固相反応を進行させることが出来る。本焼成前に仮焼成を事前に含めることによって事前に反応をさせておくことにより、反応性を高めることが可能である。
本焼成温度は、1000℃以上、1200℃以下の焼成温度とし、焼成時間は5時間以上20時間以下で実施することが好ましい。このような焼成温度、焼成時間の範囲において固相反応を進行させることが可能であり、目的の結晶相を取得することが出来る。
焼成後、粉砕機により原料の粉砕を行い所定の平均粒子径になるまで粉砕を行う。粉砕を行う際、機械的な衝撃によって活物質の結晶性は低下する恐れがある。この場合には、再度アニール焼成を行うことで結晶性を修復することが好ましい。アニール焼成の温度は、800℃以上、1000℃以下の焼成温度とし、焼成時間は1時間以上5時間以下で実施することが好ましい。
(チタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物の合成)
チタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物の製造は特に限定されるものではないが、例えば固相反応法、ゾルゲル法、水熱合成法などの方法により合成することが出来る。この一例としてゾルゲル法を用いた製造方法について記載する。
出発原料としては、チタン化合物、ニオブ化合物、モリブデン化合物を用いる。チタン化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、硫酸チタニル、塩化チタン、シュウ酸チタンアンモニウム及びその水和物、水酸化チタンが挙げられる。ニオブ化合物としては、例えば、塩化ニオブ、シュウ酸ニオブアンモニウム及びその水和物、水酸化ニオブが挙げられる。モリブデン化合物としては、例えば、塩化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム及びその水和物、水酸化モリブデンが挙げられる。
出発原料は、事前に純水、あるいは酸に溶解させて溶解液としておくことが好ましい。溶液化することによって各元素が均質に混合した乾燥ゲルを得ることが可能であるため、反応性を高めることが出来る。純水に溶解出来ない場合は、酸を用いて溶解を行う。
原料を溶解させるために使用する酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸が挙げられるが、溶解性の観点からシュウ酸を用いることが好ましい。例えばシュウ酸を用いる場合には、0.5M以上1M以下の濃度とすることが好ましい。溶解させる際には、反応時間を短縮するために70℃以上の温度を用いることが好ましい。
原料の溶解が難しい場合には、分散液としても反応を進めることが出来る。この場合の分散液中に含まれる原料の平均粒子径については、3μm以下、より好ましくは1μmであると良い。各化合物について所定の組成比に調整した溶液(又は分散液)を調製した後、溶液を加熱・攪拌させながらアンモニア水溶液による中和を行いpHの調整を行う。pH調整によりゲル液を得る。pHは5以上8以下とすることにより、各原料を均質に含むゲルを形成することが可能であり、これにより焼成時の反応性が良好な乾燥ゲルを取得することが出来る。
続いて、ゲル液を沸点近傍まで加熱することによって水分を蒸発させてゲル化を進行させる。ゲル化を行った後、さらに水分を蒸発させて乾燥を行うことによって乾燥ゲルを取得する。ゲル化及び乾燥の際は、溶液全量を蒸発濃縮して乾燥ゲルを得ることも出来るが、噴霧乾燥機を用いると乾燥後の粒子径をより小さくすることが出来るため、より好ましい。溶液全量を蒸発濃縮して製造した乾燥ゲルは、焼成前に粉砕を行うことによって平均粒子径を10μm以下、より好ましくは5μm以下まで小さくすることが好ましい。これにより焼成後の粒子径を小さくすることが出来る。得られた乾燥ゲルを焼成する。
乾燥ゲルの焼成にあたって、200℃以上500℃以下、焼成時間1時間以上10時間以下で仮焼成を行う。これによって余分な有機成分を消失させることが可能であることから、本焼成時の反応性を高めることが可能である。
本焼成は、700℃以上、900℃以下の焼成温度とし、焼成時間は1時間以上10時間以下で実施することが好ましい。このような温度範囲で焼成を行うことによって、モリブデンの昇華を抑制しながら、目的の相を取得することが可能である。
焼成後の粉末は凝集体を形成することで平均粒子径が高いことがあり得る。この場合には、粉砕を行うことで所定の平均粒子径を調整することが好ましい。
ゾルゲル法により合成する複合酸化物を含む活物質に上述した微量の元素を添加する場合は、例えば、焼成に先駆けて、乾燥ゲルを粉砕して得られる粉末試料に、添加する元素の酸化物を混合する。酸化物を混合した状態で焼成を行うことで、複合酸化物とともに元素が含まれている活物質、又は複合酸化物の結晶構造内に元素が導入されている置換複合酸化物を含む活物質を得ることができる。なお、焼結助剤としての効果を発揮する元素の酸化物を添加した場合は、焼成温度を下げることができる。
<各種測定方法>
以下、活物質の測定方法を説明する。具体的には、複合酸化物の確認、活物質粒子の平均粒子径の測定、及び活物質の比表面積の測定を説明する。
電池の電極に含まれている活物質を試料とする場合、以下の方法により前処理を行って、測定試料を準備する。先ず、電池を完全に放電状態とする。次いで、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で電池を分解し、電極を取り出す。次いで、取り出した電極をエチルメチルカーボネートなどの溶媒を用いて洗浄する。実施する測定ごとにさらに加工を行って、適切な形態の試料を準備する。
(複合酸化物の確認)
活物質が上述した正方晶型の結晶構造を有するとともに一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表される複合酸化物を含むことの確認は、広角X線回折(XRD)法、並びに誘導結合プラズマ(Inductively coupled plasma:ICP)発光分析法および不活性ガス溶解-赤外線吸収分光法を組合わせることで行うことができる。広角XRD法により結晶構造を求め、ICP発光分析法および不活性ガス溶解-赤外線吸収分光法により元素組成を求めることができる。
XRD測定は、次のとおり行う。先ず、活物質粒子を十分に粉砕して、粉末状試料を得る。粉末状試料の平均粒子径は、20μm以下とすることが好ましい。この平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により求めることができる。
次いで、この粉末状試料を、ガラス試料板のホルダー部分に充填し、その表面を平坦にする。ガラス試料板としては、例えば、ホルダー部分の深さが0.2mmのものを用いることができる。
次いで、このガラス試料板を粉末X線回折装置に設置し、Cu-Kα線を用いてXRDスペクトルを測定する。具体的な測定条件は、例えば、以下のとおりとする:
X線回折装置:株式会社リガク社製 SmartLab
X線源:CuKα線
出力:40kV,200mA
パッケージ測定名称:汎用測定(集中法)
入射並行スリット開口角:5°
入射長手制限スリット長さ:10mm
受光PSA:無し
受光並行スリット開口角:5°
単色化法:Kβフィルター法
測定モード:連続
入射スリット幅:0.5°
受光スリット幅:20mm
測定範囲(2θ):5~70°
サンプリング幅(2θ):0.01°
スキャン速度:1° ~ 20°/分。
このようにして、活物質に係るXRDスペクトルを得る。このXRDスペクトルにおいて、横軸は入射角(2θ)を示し、縦軸は回折強度(cps)を示す。スキャン速度は、XRDスペクトルのメインピークのカウント数が5万カウント以上、15万カウント以下となるような範囲で調整することが出来る。
電池の電極に含まれている活物質を試料とする場合、上述した前処理を行って得られた洗浄後の電極を、ガラス試料板のホルダーの面積とほぼ同じ面積に切断し、測定試料とする。
次に、得られた測定試料を、ガラスホルダーに直接貼り付け、XRD測定を行う。次いで、集電体、導電剤、及びバインダなど、電極に含まれ得る活物質以外の材料についてXRDを用いて測定し、これらに由来するXRDパターンを把握する。次いで、測定試料において活物質に由来すると考えられるピークと、その他の材料のピークとで重なるピークがある場合、活物質以外の材料のピークを分離する。このようにして活物質に係るXRDスペクトルを得る。
測定した試料が含む結晶構造が上述した正方晶型の結晶構造に帰属されるか確認するためには、リートベルト法を用いる。解析プログラムとしては、例えばRIETAN-FPを用い、信頼度因子であるRwp値について少なくとも20%以下、より好ましくは15%以下となることを確認することによって確かめることが出来る。この時、不純物を含むピークが存在し、解析目的とする相と重複する場合には解析精度を悪化させることがあり得る。この場合には、不純物由来のピークと重複することが明瞭な箇所について、解析範囲から除外した解析を行う方法が好ましい。但し、第1の実施形態に係る活物質以外の材料が試料に含まれる場合や、試料の配向性が著しく高い場合、粗大粒子が混在している場合については強度比が変化するためにこの限りでは無く、結晶構造に帰属される全てのピークの位置や相対強度に矛盾が無いことを確認することで構造を確かめる。また、スペクトルの強度が低くてバックグラウンド強度が低い状態にあるとRwp値が小さくなることがあり、信頼度因子はその絶対値に意味を持つものではなく、一定の測定条件においてフィッティングの良さを相対的に判断することに意味を有するものである。
RIETAN-FPを用いた解析方法については、例えば、非特許文献4(「粉末X線解析の実際」初版(2002年)日本分析化学会X線分析研究懇談会編 中井泉、泉富士夫編著(朝倉書店))の第9章「RIETAN-FPを使ってみよう」に詳細に説明されている。
なお、RIETAN-FPは、その開発者のインターネット上のウェブページ(http://fujioizumi.verse.jp/)にて無料配布されている(2021年2月現在)リートベルト解析用プログラムである。
試料に含まれている活物質粒子における各元素の含有量は、金属元素に関してはICP発光分析法により確かめることが出来る。O元素については不活性ガス溶解-赤外線吸収分光等の方法によって定量することができるが、厳密な定量は難しい。
電極に含まれている活物質粒子については、上述した前処理後、次の処理をさらに行う。洗浄後の電極から、活物質を含んでいる部材(例えば、第2の実施形態で説明する活物質含有層)を、例えば、電極の集電体から剥離する。電極から剥離した部分を大気中で短時間加熱(500℃で1時間程度)して、バインダー成分やカーボンなど不要な部分を焼失させる。その後、ICP発光分析などを行うことによって各元素の含有量を定量することができる。
(平均粒子径の測定)
活物質の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope : SEM)を用いた観察により求めることが出来る。具体的には、SEM観察による平均一次粒子径は、以下の方法により算出することができる。
先ず、SEM観察により得られたSEM画像の一次粒子において、最も長軸な部分の長さと、最も短軸な部分の長さとを測定し、これらの相加平均値を一次粒子径とする。この一次粒子径の測定を、任意に選出した100個の粒子で行い、それらの平均値を平均一次粒子径とする。
活物質の平均二次粒子径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて測定される粒度分布から求めることができる。この粒度分布測定を行う際の試料としては、活物質の濃度が0.1質量%乃至1質量%となるようにN-メチル-2-ピロリドンで希釈した分散液を用いる。得られた粒度分布において体積積算値が50%となる粒径を、平均二次粒子径とする。
(BET比表面積の測定)
活物質粒子についてのBET比表面積は、以下の方法により求めることができる。
先ず、試料として、4gの活物質を採取する。次いで、測定装置の評価用セルを、100℃以上の温度で15時間にわたって減圧乾燥させ、脱ガス処理を行う。評価用セルとしては、例えば、1/2インチのものを使用することができる。次いで、試料を測定装置に設置する。測定装置としては、例えば、島津製作所-マイクロメリティックス社製トライスターII3020を用いることができる。次いで、77K(窒素の沸点)の窒素ガス中で、窒素ガスの圧力P(mmHg)を徐々に高めながら、各圧力P毎に、試料の窒素ガス吸着量(mL/g)を測定する。次いで、圧力P(mmHg)を窒素ガスの飽和蒸気圧P0(mmHg)で除した値を相対圧力P/P0として、各相対圧力P/P0に対する窒素ガス吸着量をプロットすることにより吸着等温線を得る。次いで、この窒素吸着等温線とBET式とからBETプロットを算出し、このBETプロットを利用して比表面積を得る。
なお、BETプロットの算出には、BET多点法を用いる。
第1の実施形態に係る活物質は、正方晶の結晶構造を有し、一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表される複合酸化物を含む。上記一般式において、MはW及びMoからなる群より選択される何れか一つである。添字a,b,c及びdは、0≦a≦b+4+3c,0<b<2-2d,及び0<c<2-4dを満たす数である。上記複合酸化物を電極活物質として用いた電極は、体積当たりの容量が高い。また、上記複合酸化物を電極活物質として用いた二次電池および電池パックは、体積当たりの容量が高い。即ち、係る活物質は、高容量を示す。
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、電極が提供される。
第2の実施形態に係る電極は、第1の実施形態に係る活物質を含む。この電極は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電池用電極であり得る。電池用電極としての電極は、例えば、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む負極であり得る。或いは、電極は、第1の実施形態に係る活物質を正極活物質として含む正極であり得る。
第2の実施形態に係る電極は、集電体と活物質含有層とを含むことができる。活物質含有層は、集電体の片面又は両面に形成され得る。活物質含有層は、活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
活物質含有層は、第1の実施形態に係る活物質を単独で含んでもよく、第1の実施形態に係る活物質を2種類以上含んでもよい。さらに、第1の実施形態に係る活物質を1種又は2種以上と、更に1種又は2種以上の他の活物質とを混合した混合物を含んでもよい。第1の実施形態に係る活物質と他の活物質との総質量に対する第1の実施形態に係る活物質の含有割合が10質量%以上100質量%以下であることが望ましい。
例えば、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む場合は、他の活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+xTi3O7、0≦x≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物、ニオブ酸化物、ニオブチタン酸化物、ニオブモリブデン複合酸化物、ニオブタングステン複合酸化物が挙げられる。
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+eM22-fTi6-gM3hO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M2は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M3はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦e≦6、0≦f<2、0≦g<6、0≦h<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+eNa2Ti6O14(0≦e≦6)が挙げられる。
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM4yNb2-zM5zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M4は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M5は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM6y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M6は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x<5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。また、導電剤を用いると共に活物質表面に炭素や導電性材料を被覆することで、活物質含有層の集電性能を向上させることもできる。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
活物質表面を炭素や導電性材料で被覆する場合、被覆材量は導電剤量に含めたものとみなすことができる。炭素または導電性材料による被覆量は、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この範囲の被覆量であれば、集電性能と電極密度を高められる。
集電体は、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、活物質が負極活物質として用いられる場合は、集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiからなる群より選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、集電体は、その表面に活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、集電タブとして働くことができる。
電極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、電極を作製する。
或いは、電極は、次の方法により作製してもよい。まず、活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、電極を得ることができる。
第2の実施形態に係る電極は、第1の実施形態に係る活物質を含んでいる。そのため、第2の実施形態に係る電極は、体積当たりの容量が高い二次電池を実現することができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、負極と、正極と、電解質とを含む二次電池が提供される。この二次電池は、負極、正極、又は負極および正極の両方として、第2の実施形態に係る電極を含む。つまり、第3の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電極を、電池用電極として含む。望ましい態様の二次電池は、負極として、第2の実施形態に係る電極を含む。つまり、望ましい態様の二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を電池用活物質として含む電極を、負極として含む。以下、望ましい態様を説明する。
第3の実施形態に係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。
また、第3の実施形態に係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
さらに、第3の実施形態に係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
第3の実施形態に係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
1)負極
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極集電体及び負極活物質含有層は、それぞれ、第2の実施形態に係る電極が含むことのできる集電体及び活物質含有層であり得る。負極活物質含有層は、第1の実施形態に係る活物質を負極活物質として含む。
負極の詳細のうち、第2の実施形態について説明した詳細と重複する部分は、省略する。
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
負極は、例えば、第2の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの挿入脱離サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
正極は、例えば、正極活物質を用いて、第2の実施形態に係る電極と同様の方法により作製することができる。
3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO2F)2;LiFSI)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
或いは、非水電解質の代わりに、液状水系電解質又はゲル状水系電解質を電解質として用いることができる。液状水系電解質は、溶質として、例えば、上記電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される。ゲル状水系電解質は、液状水系電解質と上記高分子材料とを複合化することにより調製される。水系溶媒としては、水を含む溶液を用い得る。水を含む溶液とは、純水であってもよく、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は1質量%以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi挿入脱離電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
以上、第2の実施形態に係る電極を負極として含む態様を説明した。第3の実施形態に係る二次電池の態様のうち、正極として第2の実施形態に係る電極を含む態様では、その対極である負極として、例えば、次のような対極を用いることができる。リチウム金属、リチウム金属合金、黒鉛、シリコン、酸化シリコン、酸化スズ、シリコン、スズ、その他合金から選ばれる少なくとも一種の電極を、負極として用いることができる。活物質中にLiを含まない材料は、Li元素のプレドープを行うことにより負極として用いることができる。
第2の実施形態に係る電極を正極として含む態様において、当該正極の詳細は第2の実施形態にて説明したものと重複するため、省略する。
次に、第3の実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
図4は、第3の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図5は、図4に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
図4及び図5に示す二次電池100は、図4に示す電極群1と、図4及び図5に示す袋状外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図4に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、図5に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図5に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図4に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
第3の実施形態に係る二次電池は、図4及び図5に示す構成の二次電池に限らず、例えば図6及び図7に示す構成の電池であってもよい。
図6は、第3の実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。図7は、図6に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
図6及び図7に示す二次電池100は、図6及び図7に示す電極群1と、図6に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
電極群1は、図7に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。図7に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
第3の実施形態に係る二次電池は、第2の実施形態に係る電極を含んでいる。つまり第3の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る活物質を含む電極を含んでいる。そのため、第3の実施形態に係る二次電池は、体積当たりの容量が高い。
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、組電池が提供される。第4の実施形態に係る組電池は、第3の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
第4の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第4の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第4の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図8に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第3の実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図8の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
第4の実施形態に係る組電池は、第3の実施形態に係る二次電池を具備する。従って、係る組電池の体積当たりの容量が高い。
[第5の実施形態]
第5の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第4の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第4の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第3の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第5の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第5の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第5の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第5の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図10は、図9に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図9及び図10に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図9に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
複数の単電池100の少なくとも1つは、第3の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図10に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第5の実施形態に係る電池パックは、第3の実施形態に係る二次電池又は第4の実施形態に係る組電池を備えている。従って、係る電池パックの体積当たりの容量が高い。
[第6の実施形態]
第6の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第5の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第6の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
第6の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第6の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
第6の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第6の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図11は、第6の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
図11に示す車両400は、車両本体40と、第5の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図11に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図11では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図12を参照しながら、第6の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図12は、第6の実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図12に示す車両400は、電気自動車である。
図12に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図12に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第3の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図12に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第6の実施形態に係る車両は、第5の実施形態に係る電池パックを搭載している。電池パックの体積当たりの容量が高いため、車両の設計の自由度が高い。従って、車両の性能を損なうことなく多様な車両を提供することが可能である。
[実施例]
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
<合成>
(実施例1)
次のとおり、Ti2Nb10W5O44及びTiNb2WO10で表される組成を有するチタン-ニオブ-タングステン複合酸化物を合成した。
原料として、酸化チタン、酸化ニオブ、及び酸化タングステンを準備した。これら原料を所定の組成比で混合し、乾式による粉砕・混合処理を実施した。その後、得られた混合物をアルミナ製坩堝に投入し、1200℃及び12時間の大気雰囲気下の条件における焼成処理を行い、その後炉令した。焼成物の乾式粉砕を行い、粉砕物に対し分級を施すことによって粒度の調整を行った。上記のようにして酸化物粉末を得た。
(実施例2)
次のとおり、Ti2Nb10W5O44及びTiNb2WO10で表される組成を有するチタン-ニオブ-タングステン複合酸化物を合成した。
目的の組成に応じて酸化チタンと酸化ニオブと酸化タングステンについての組成比を変更し、焼成温度を1150℃と変更した以外は、実施例1と同様の方法によって酸化物粉末を合成した。
(実施例3)
次のとおり、TiNb5Mo2O20で表される組成を有するチタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物を合成した。
原料として、シュウ酸ニオブアンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、及びチタンテトライソプロポキシドを準備した。これら原料を所定の組成比により秤量した。シュウ酸ニオブアンモニウムとモリブデン酸アンモニウムについて、純水により溶解させることで溶液Aを調整した。次に、濃度1Mのシュウ酸水溶液にチタンテトライソプロポキシドを投入し、加熱・攪拌により溶解させた溶液Bを調整した。溶液Aと溶液Bについて混合を実施した後、加熱・攪拌しながらアンモニア溶液を添加してpHを7に調整することで、ゾルを得た。pH調整後、加熱攪拌させながら溶媒を蒸散させることによってゲルを取得した。その後、ゲルを100℃の乾燥炉に投入して乾燥を行った。乾燥後、粉砕処理を行うことによって得られた固形物を微細化し、白色の前駆体粉末を得た。前駆体粉末をアルミナ坩堝に投入し、モリブデンの蒸散抑制のために蓋を施して800℃及び4時間の条件で焼成を行った。その後、焼成物の乾式粉砕を行い、粉砕物に対し分級を施すことによって粒度の調整を行った。上記のようにして活物質粉末を得た。
(実施例4)
ゲルの乾燥後の粉砕処理まで実施例3と同様の手順を行い、白色の前駆体粉末を取得した。この前駆体粉末に酸化カリウム (K2O)を仕込み量で活物質粉末の焼成後に得られる予想合成量に対しKの添加量が10000ppmとなるように添加し、乾式による混合、粉砕処理を行った。前駆体粉末をアルミナ坩堝に投入し、モリブデンの蒸散抑制のために蓋を施して750℃及び4時間の条件で焼成を行った。その後、焼成物の乾式粉砕を行い、粉砕物に対し分級を施すことによって粒度の調整を行った。上記のようにして活物質粉末を得た。
(実施例5)
実施例2と同様の混合比で原料を混合し、この混合物にさらに酸化鉄 (Fe2O3)を、活物質粉末の焼成後に得られる予想合成量に対しFeの添加量が2000ppmとなるように添加した。その後、実施例2と同様の作製条件で材料の作製を行い、活物質粉末を取得した。
(実施例6)
ゲルの乾燥後の粉砕処理まで実施例3と同様の手順を行い、白色の前駆体粉末を取得した。この前駆体粉末に酸化リン (P2O5)を仕込み量で活物質粉末の焼成後に得られる予想合成量に対しPの添加量が2000ppmとなるように添加し、乾式による混合、粉砕処理を行った。その後について、工程を実施例3と同様の条件で材料の合成を行い、活物質粉末を取得した。
(実施例7)
実施例2と同様の混合比で原料を混合し、この混合物にさらに酸化モリブデン (MoO3)を、活物質粉末の焼成後に得られる予想合成量に対しMoの添加量が8000ppmとなるように添加した。その後、焼成温度を1100℃に変更する以外は実施例2と同様の条件で材料の合成を行い、活物質粉末を取得した。
(実施例8)
実施例1と同様の混合比で原料を混合し、この混合物にさらに酸化ジルコニウム (ZrO2)を、活物質粉末の焼成後に得られる予想合成量に対しZrの添加量が2000ppmとなるように添加した。その後、実施例1と同様の条件で材料の合成を行い、活物質粉末を取得した。
(比較例1)
次のとおり、TiNb2O7で表される組成を有するチタン-ニオブ複合酸化物を合成した。
原料として、酸化チタン及び酸化ニオブを準備した。これら原料を所定の組成比で混合し、混合物に対し乾式による粉砕・混合処理を実施した。その後、得られた混合粉をアルミナ製坩堝に投入し、1100℃及び12時間の大気雰囲気下の条件における焼成処理を行い、その後炉令した。焼成物の乾式粉砕を行い、粉砕物に対し分級を施すことによって粒度の調整を行った。上記のようにして酸化物粉末を得た。
(実施例9-10)
原料の組成比を変更したことを除き実施例3と同様の手順を行うことにより、Ti4Nb10Mo4O45、Ti2Nb10Mo2O35、Ti5Nb10Mo7O55、及びTi7Nb10Mo7O60で表される組成を有するチタン-ニオブ-モリブデン複合酸化物を合成した。上記のようにして活物質粉末を得た。
<測定>
上記実施例および比較例のそれぞれにて得られた粉末について、広角X線散乱測定による測定を行った。測定は、先に説明した詳細に沿って行った。得られたスペクトルについてリートベルト法による結晶構造解析を行った。
得られた各スペクトルの一部を、図13-図16に示す。図13は、実施例1で得られた複合酸化物についてのスペクトルを示す。図14は、実施例2で得られた複合酸化物についてのスペクトルを示す。図15は、実施例3で得られた複合酸化物についてのスペクトルを示す。図16は、比較例1で得られた複合酸化物についてのスペクトルを示す。
実施例1で得られた複合酸化物については、構造解析の結果、図1及び図2にそれぞれ示した結晶構造に類する結晶構造の相が2つ混在する結晶構造として同定した。具体的には、空間群表記をI-4(空間群番号:82)で帰属される結晶構造であり、四面体の頂点共有構造を含む酸化レニウム型のブロック構造を4×4=16個とし、単位格子内の酸素数と金属元素数との比をAO/AM=2.59とする結晶構造と、空間群表記をI-4(空間群番号:82)で帰属される結晶構造であり、四面体構造を含まない酸化レニウム型のブロック構造を4×4=16個とし、単位格子内の酸素数と金属元素数との比をAO/AM=2.50とする結晶構造の2相を推定モデルとした。このような結晶構造を推定モデルとした場合に、5°~70°で現れる異相を除いた全てのピークについてリートベルト法の信頼度因子であるRwp値について9.86%となるフィッティングを行うと共に、ピーク位置や相対強度について矛盾がないことを確認出来たことから、上記結晶構造として同定した。
各相の組成はTi2Nb10W5O44及びTiNb2WO10と判別され、これらの各組成は2:1の組成比で含まれていた。
実施例2で得られた複合酸化物については、構造解析の結果、図1及び図2にそれぞれ示した結晶構造に類する結晶構造の相が2つ混在する結晶構造として同定した。具体的には、空間群表記をI-4(空間群番号:82)で帰属される結晶構造であり、四面体の頂点共有構造を含む酸化レニウム型のブロック構造を4×4=16個とし、単位格子内の酸素数と金属元素数との比をAO/AM=2.59とする結晶構造と、空間群表記をP-4n2(空間群番号:82)で帰属される結晶構造であり、四面体構造を含まない酸化レニウム型のブロック構造を4×4=16個とし、単位格子内の酸素数と金属元素数との比をAO/AM=2.50とする結晶構造の2相を推定モデルとした。このような結晶構造を推定モデルとした場合に、5°~70°で現れる異相を除いた全てのピークについてリートベルト法の信頼度因子であるRwp値について13.78%となるフィッティングを行うと共に、ピーク位置や相対強度について矛盾がないことを確認出来たことから、上記結晶構造として同定した。
各相の組成はTi2Nb10W5O44及びTiNb2WO10と判別され、これらの各組成は1:9の組成比で含まれていた。
実施例3で得られた複合酸化物については、構造解析の結果、図3に示した結晶構造に類する結晶構造として同定した。具体的には、空間群表記をI-4(空間群番号:82)で帰属される結晶構造であり、四面体の頂点共有構造を含む酸化レニウム型のブロック構造を3×3=9個とし、単位格子内の酸素数と金属元素数との比をAO/AM=2.56とする結晶構造を推定モデルとした。このような結晶構造を推定モデルとした場合に、5°~70°で現れる異相を除いた全てのピークについてリートベルト法の信頼度因子であるRwp値について9.92%となるフィッティングを行うと共に、ピーク位置や相対強度について矛盾がないことを確認出来たことから、上記結晶構造として同定した。
比較例1で得られた複合酸化物については、構造解析の結果、単斜晶型の結晶構造として同定した。具体的には、推定モデルを、空間群表記をC2/m(空間群番号:12)で帰属される結晶構造であり、四面体の頂点共有構造を含まず、酸化レニウム型のブロック構造を3×3=9個とし、単位格子内の酸素数と金属元素数との比をAO/AM=2.33とする結晶構造を推定モデルとした。このような結晶構造を推定モデルとした場合に、5°~70°で現れる異相を除いた全てのピークについてリートベルト法の信頼度因子であるRwp値について4.36%フィッティングを行うと共に、ピーク位置や相対強度について矛盾がないことを確認出来たことから、結晶構造として同定した。
<電池性能の評価>
上記実施例および比較例にて各々得られた複合酸化物の粉末をそれぞれ活物質として用いて、次のとおり電極を作製した。
先ず、100質量部の活物質、6質量部の導電剤、及び4質量部の結着剤を、溶媒に分散してスラリーを調製した。活物質としては、上述した方法で得られた複合材料粉末をそれぞれ用いた。導電剤としては、アセチレンブラックとカーボンナノチューブ及びグラファイトとの混合物を用いた。結着剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジェンゴム(SBR)との混合物を用いた。溶媒としては、純水を用いた。
次いで、得られたスラリーを、集電体の片面に塗布し、塗膜を乾燥させることで活物質含有層を形成した。集電体としては、厚さ12μmのアルミニウム箔を用いた。次いで、集電体と活物質含有層とをプレスして、電極を得た。電極の目付は、60g/m2であった。
次のとおり、非水電解質を調製した。電解質塩を有機溶媒に溶解させて、液状非水電解質を得た。電解質塩としては、LiPF6を用いた。非水電解質におけるLiPF6のモル濃度は、1mol/Lとした。有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒を用いた。ECとDECとの体積比は、1:2であった。
上述した方法で得られた電極を作用極とし、金属リチウム箔を対極及び参照極とし、上述した方法で調製した非水電解質を用いて、三電極式ビーカーセルを作製した。
作製した各セルについて、サイクル性能を評価した。具体的には、先ず、セルを25℃の温度下で、0.2Cの充電電流で電池電圧が0.7Vとなるまで充電した。その後、0.2Cの放電電流で電池電圧が3.0Vとなるまで放電した。このときの充放電容量を測定し、電極活物質含有層の体積(集電体を含まず)あたりの容量値を、充電および放電のそれぞれについて算出した。また、上記初回充放電における充放電効率を算出した(初回充放電効率=[(初回放電容量/初回充電容量)×100%])。
図17-図19に、一部のビーカーセルの初回充放電曲線を表すグラフを示す。図17には、実施例1で得られた複合酸化物を用いたセルの充放電曲線を実線(充電曲線51及び放電曲線61)で示す。図17には、比較例1で得られた複合酸化物を用いたセルの充放電曲線を破線(充電曲線50及び放電曲線60)で併せて示す。図18には、実施例2で得られた複合酸化物を用いたセルの充放電曲線を実線(充電曲線52及び放電曲線62)で示す。図19には、実施例3で得られた複合酸化物を用いたセルの充放電曲線を実線(充電曲線53及び放電曲線63)で示す。図18及び図19には、比較例1で得られた複合酸化物を用いたセルの充放電曲線も、破線(充電曲線50及び放電曲線60)で併せて示す。
下記表1及び表2に、各実施例および比較例で合成した複合酸化物の組成および結晶構造の詳細、並びに電池用活物質としての性能をまとめる。具体的には、複合酸化物の詳細としては、複合酸化物組成、結晶構造、結晶構造中の単位格子あたりの酸化レニウム型ブロックの数、単位格子あたりの酸素数(AO)と金属元素数(AM)との比(AO/AM比)、X線回折スペクトルにおけるピーク強度比I2/I1、及び添加元素の種類を示す。なお、元素添加していない場合は、添加元素の項に“(無)”と表記する。電池用活物質としての性能としては、体積あたりの充電容量および放電容量、並びに初回充放電効率を示す。なお、比較例1については、図16に示すとおりスペクトルにて2θ=25.1±0.5°の範囲内にピークが得られず、I2/I1比を算出することができなかったため、I2/I1比の項については“-”(非該当)と表記している。
表1に示す複合酸化物の組成については、構成元素の化学量論比を示す数値が整数となるよう、化学式をある係数で乗算した式を示している。例えば、実施例1や実施例2については、一方の相の組成をTi2Nb10W5O44と表記しているが、この式はTi0.4Nb2WO8.8という化学式を係数5で掛けて得られる式に等しい。即ち、実施例1や実施例2で合成した複合酸化物は、LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表され、MがWであり、且つ、a=0,b=0.4,c=1,及びd=0である化合物に対応する相を含む。他方の相の組成TiNb2WO10については、係数が1で、換算をしない状態で一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cに対応する。実施例3についてのTiNb5Mo2O20は、Ti1/3Nb5/3Mo2/3O20/3という化学式を係数3で掛けて得られる式に等しい。即ち、実施例3で合成した複合酸化物は、LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表され、MがMoであり、且つ、a=0,b=1/3,c=1/3,及びd=1/6である化合物に対応する。比較例1については係数が1で、換算をしない状態で一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cに対応する。実施例4-8については、微量の添加元素・置換元素を含まない組成を示す。実施例4-8についての複合酸化物組成は、実施例1-3の何れかの複合酸化物の組成と同様にして、一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cに対応する。
表2に示す複合酸化物の組成についても、化学式をある係数で乗算した式を示している。実施例9についてのTi4Nb10Mo4O45は、係数が5であって、MがMoであり、且つa=0,b=0.8,c=0.8,及びd=0である化合物に対応する。実施例10についてのTi2Nb10Mo2O35は、係数が5であって、MがMoであり、且つa=0,b=0.4,c=0.4,及びd=0である化合物に対応する。実施例11についてのTi5Nb10Mo7O55は、係数が6であって、MがMoであり、且つa=0,b=5/6,c=5/6,及びd=1/6である化合物に対応する。実施例12についてのTi7Nb10Mo7O60は、係数が5であって、MがMoであり、且つa=0,b=7/5,c=7/5,及びd=0である化合物に対応する。
実施例1-12で得られた活物質が含む複合酸化物は、上述した一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3c(M=W,Mo;0≦a≦b+4+3c,0<b<2-2d,0<c<2-4d;添加元素の有無を問わない)で表す化合物に対応していたことに対し、比較例1で得られた複合酸化物は当該一般式を満たすものではなかった。表1が示すとおり、実施例1-12の活物質は、比較例1の複合酸化物と比較して高い充電容量および放電容量を示した。また、実施例1-12の活物質を用いて得られた初回充放電効率は、比較例1を用いた場合と同程度だった。
従って、正方晶型の結晶構造を有し、且つ上記一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3c(MはW又はMo;0≦a≦b+4+3c,0<b<2-2d,0<c<2-4d)で表される複合酸化物は、電極活物質として良好な初回充放電効率を示すとともに、体積あたりの充放電容量が高いことがわかる。
以上説明した1以上の実施形態および実施例によれば、複合酸化物を含んだ活物質が提供される。該複合酸化物は、正方晶型の結晶構造を有し、且つ一般式LiaTibNb2-2dMc+2dO2b+5+3cで表される。ここで、式中のMは、W及びMoからなる群より選択される何れか一つである。式中の各添字は、それぞれ0≦a≦b+4+3c,0<b<2-2d,0<c<2-4dの関係を満たす。係る活物質は、高容量な二次電池を実現できる電極、高容量な二次電池および電池パック、並びに該電池パックを搭載した車両を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 正方晶結晶構造を有し、且つ一般式Li
a
Ti
b
Nb
2-2d
M
c+2d
O
2b+5+3c
で表され、MはW及びMoからなる群より選択される何れか一つであり、0≦a≦b+4+3c,0<b<2-2d,0<c<2-4dである複合酸化物を含む、活物質。
[2] 前記一般式におけるMはWであり、前記複合酸化物は、酸素と金属元素で構成される八面体構造を含み、且つ、16個の前記八面体構造が頂点共有で構成する酸化レニウム型のブロック構造を含む結晶構造を有する、[1]記載の活物質。
[3] 前記一般式におけるMはMoであり、前記複合酸化物は、酸素と金属元素で構成される八面体構造を含み、且つ、9個の前記八面体構造が頂点共有で構成する酸化レニウム型のブロック構造を含む結晶構造を有する、[1]記載の活物質。
[4] Ti, V, Ta, Fe, Bi, Sb, As, P, Cr, Mo, W, B, Na, K, Mg, Al, Ca, Y, Zr及びSiからなる群より選択される1以上の元素をさらに含む、[1]乃至[3]の何れか1つに記載の活物質。
[5] Cu-Kα線源を用いた粉末X線回折による回折スペクトルにおいて、2θ=25.1±0.5°の範囲内に現れる最も強度の高いピークのピーク強度I1と、2θ=23.8±0.5°の範囲内に現れるピークのピーク強度I2とが、0.1≦I2/I1≦1.0の関係を満たす、[1]乃至[4]の何れか1つに記載の活物質。
[6] [1]乃至[5]の何れか1つに記載の活物質を含む、電極。
[7] 前記活物質を含んだ活物質含有層を含む、[6]に記載の電極。
[8] 正極と、
負極と、
電解質と
を具備する二次電池であって、
前記負極は、[6]又は[7]に記載の電極である、二次電池。
[9] 正極と、
負極と、
電解質と
を具備する二次電池であって、
前記正極は、[6]又は[7]に記載の電極である、二次電池。
[10] [8]又は[9]に記載の二次電池を具備する、電池パック。
[11] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する、[10]に記載の電池パック。
[12] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている、[10]又は[11]に記載の電池パック。
[13] [10]乃至[12]の何れか1つに記載の電池パックを具備する、車両。
[14] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む、[13]に記載の車両。