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JP7647582B2 - 金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体 - Google Patents
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Description

本発明は、金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体に関する。
従来より、成形体の意匠性を高めるために、成形体の表面に金属光沢を付与することが行われている。金属光沢を付与する手段として、金属光沢を有する加飾シートを金型内に配置し、その金型内に樹脂を射出成型することにより、成形体に金属蒸着シートを接着させる手段が知られている(例えば特許文献1)。
特許5809768号公報
しかしながら、上述した金属光沢を有する金属蒸着シートを用いて成形体を形成した場合、成形体表面が白っぽく見え、期待した金属光沢が得られないことが頻発した。
本発明は、金属光沢感に優れる金属調加飾シート、及び、該加飾シートを備え、金属光沢感に優れる金属調加飾成形体を提供することを目的とする。
本願発明者が検討した結果、複数の島部と該島部間の海部とを有するいわゆる「海島構造」を有する金属層を形成した金属調加飾シートにおいて、海部の面積比率が小さい場合に、成型体を作製した際に白化が起こりやすいことを見出した。更に、海部の面積比率によって、金属調加飾シートの反射率が変化することを見出した。すなわち、金属光沢に優れ、成形時の白化を抑制することができる金属調加飾シートを得るためには、海部の面積比率及び反射率に適切な範囲があり、これらを適切に制御する必要があることが分かった。
すなわち、上記課題を解決するために、本発明は、以下の[1]~[4]を提供する。
[1]基材層上に金属層を有する金属調加飾シートであって、前記金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有し、前記金属層を平面視したときの前記海部の面積比率をX(%)、波長550nmにおける前記金属調加飾シートの反射率をY(%)としたときに、下記条件式(1)~(3)を満たす金属調加飾シート。
X≧10 …(1)
Y≧60 …(2)
Y≦-0.4182X+73.382 …(3)
[2]前記島部の各々を円形と仮定し、前記島部1個あたりの面積から算出した直径の平均値を、前記島部のサイズと定義した場合に、前記サイズが75nm以上400nm以下である、[1]に記載の金属調加飾シート。
[3]前記金属層は、インジウム又はスズを含む、[1]または[2]に記載の金属調加飾シート。
[4][1]~[3]の何れかに記載の金属調加飾シートと、被着体とを有する金属調加飾成形体。
本発明に依れば、金属光沢感に優れる金属調加飾シート、及び、該加飾シートを備える金属調加飾成形体を得ることができる。
横軸を海部の面積比率(%)、縦軸を波長550nmにおける金属調加飾シートの反射率(%)とした場合に、条件式(1)~(3)を満たす領域を表すグラフである。 実施例1で用いた細線モデルを説明する図である。 実施例1による海部の面積比率と反射率との関係を示すグラフである。 実施例2の金属調加飾シートにおける金属層の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例3の金属調加飾シートにおける金属層の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例4の金属調加飾シートにおける金属層の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例5の金属調加飾シートにおける金属層の走査型電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の金属調加飾シート及び金属調加飾成形体について、詳細に説明する。なお、本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
[金属調加飾シート]
本発明の金属調加飾シートは、基材層上に金属層を有する金属調加飾シートであって、前記金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有し、前記金属層を平面視したときの前記海部の面積比率をX(%)、波長550nmにおける前記金属調加飾シートの反射率をY(%)としたときに、下記条件式(1)~(3)を満たす金属調加飾シートである。
X≧10 …(1)
Y≧60 …(2)
Y≦-0.4182X+73.382 …(3)
本発明の金属調加飾シートにおける金属層は、金属を含む複数の島部と、島部の間に位置する海部とを有する「海島構造」を有する。例示的には、図4~7に示す構造であり、複数の島部が密集し、島部間は海部で隔てられている。図4~7に示す構造は、金属調加飾シートの金属層を走査型電子顕微鏡で観察した際に見られる。金属層が海島構造を有することにより、金属調の光沢感を有しつつ、レーダー波長領域の電磁波を透過する金属調加飾シートとすることができる。
〔海部の面積比率〕
本発明において、海部の面積比率X(%)は、以下の方法で求めることができる。
まず、下記の条件で金属層表面の電子顕微鏡観察を行い、画像を取得する。
装置:走査型電子顕微鏡
観察条件
加速電圧:5kV
エミッションカレント:10μA
ピクセルサイズ:9.5~10.0nm
ワーキングディスタンス:15mm
観察倍率:10,000倍
階調:8ビット
上記条件での観察で得られた画像から80~90万画素分を切り出す。切り出した画像をOtsu’s methodに基づいて2値化処理する。切り出した画像全体に対する海部の面積の割合を、当該箇所の海部の面積比率(%)とする。当該作業を画像の20箇所で行い、20箇所の平均値を金属層の海部の面積比率X(%)とした。
〔金属調加飾シートの反射率〕
本発明における反射率Y(%)は、基材層側から波長550nmの光を入射したときの値であり、分光光度計を用いて取得することができる。なお本発明において、反射率Y(%)は、入射角5度としたときの値である。
〔条件式(1)~(3)〕
本発明の金属調加飾シートは、上述した条件式(1)~(3)を満たすことを要件とする。
条件式(1)は、海部の面積比率の規定である。海部の面積比率が小さいことは、隣り合う島部が近接していることを意味する。射出成形により金属調加飾シートを接着させたり、金属調加飾シートを成型体に貼着したりして金属調加飾成形体を製造する際に、三次元曲面への金属調加飾シートの追従による変形や熱による金属調加飾シートの収縮などが起こる場合がある。海部の面積比率が小さく島部が近接していると、島部同士が接触して、金属調加飾シートが白化する虞がある。白化の発生を抑制するとの観点から、海部の面積比率は10%以上(すなわち、X≧10)とする。確実に白化の発生を抑制するために、海部の面積比率は14%以上が好ましく、16%以上がより好ましい。
なお、海部の面積比率が大きくなることは、島部(金属部分)の面積比率が小さくなることを意味する。すなわち、海部の面積比率が大きすぎると、金属調加飾シートの反射率が低下し、金属光沢感を得ることが難しくなる。この観点から、海部の面積比率Xは、32%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
条件式(2)は、反射率の規定である。金属光沢感のある優れた意匠性を有する金属調加飾シートを得る観点から、反射率は60%以上(すなわち、Y≧60)とする。Yは61%以上であることが好ましく、62%以上であることがより好ましい。なお、海部の面積比率が大きいほど、反射率が低くなる傾向がある。条件式(1)を満たしやすくするとの観点から、Yは、69.2%以下であることが好ましく、68.1%以下であることがより好ましく、66.5%以下であることがより好ましく、65.5%以下であることが更に好ましいい。
条件式(3)は、海部の面積が増加することによる反射率の低下を考慮した規定である。島部を大きくすることにより、金属を含む島部による可視光の吸収が抑制されるため、反射率を高くすることができる。一方で、海部の面積比率が大きくなると、島部のサイズを大きくして吸収の影響を排除したとしても、透過光量が大きくなるため、反射率が低下してしまう。また、島部が大きすぎる場合には、海部の面積比率を調整しても島部のエッジからの拡散光が視認され、ざらついた金属光沢となる虞がある。これらを考慮して、本発明では、海部の面積比率と反射率とが条件(3)を満たすことを要件とする。
海部の面積比率X(%)をx軸、反射率Y(%)をy軸としたときに、条件式(1)~(3)を満たす領域は、図1の太枠及び網掛けで示される領域に相当する。
本発明の金属調加飾シートは更に、下記条件式(4)を満たすことが好ましい。
Y≧-0.75X+70.5 …(4)
条件式(4)は、反射率の低下及び白化の発生の抑制を考慮した規定である。具体的に、島部のサイズが小さくなると、反射率が低下する傾向がある。特に島部のサイズが小さい場合(例えば島部のサイズが75nm以下)では、島部のサイズ及び海部の面積比率の変動による反射率の変化が顕著となる傾向がある。条件式(4)を満たすことにより、金属調加飾シートの製造条件のブレにより島部のサイズ及び海部の面積比率が変化した場合でも、得られる金属調加飾シートの反射率の変動幅を小さくすることができる。また、海部の面積比率が小さいことは島部が密に形成されていることであるため、成形時に島部同士が接触しやすくなる。条件式(4)を満たすことにより、成形時の白化の発生を確実に抑制することができる。
〔金属調加飾シートの層構成の例〕
金属調加飾シートの具体例としては、例えば、下記(1)~(8)の構成が挙げられる。なお、「/」は各層の境界を意味する。
(1)基材層/金属層/接着層
(2)基材層/金属層/接着層/剥離層
(3)基材層/プライマー層/金属層/接着層
(4)基材層/プライマー層/金属層/接着層/剥離層
(5)基材層/金属層/接着層/バッカー層
(6)基材層/プライマー層/金属層/接着層/バッカー層
(7)基材層/金属層/接着層/バッカー層/接着層
(8)基材層/プライマー層/金属層/接着層/バッカー層/接着層
以下、各層の構成について詳細に説明する。
<基材層>
基材層は、金属調加飾シートの支持体としての役割を有する。また、基材層は、加飾成形体となった場合に、最も外層側に配置されることが好ましい。このため、基材層は、金属調加飾シート及び金属調加飾成形体に耐擦傷性を付与する役割を有する。この場合、金属層を視認できるとの観点から、基材層は透明性を有することが好ましい。
基材層としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ナイロン6又はナイロン66などで代表されるポリアミド系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル―スチレン―ブタジエン共重合体樹脂)などの樹脂を含むプラスチックフィルムを用いることが好ましい。
これらの中でも、耐候性、成形性に優れるとともに、屈折率が低いため透明性に優れ、
かつ傷が目立ちにくい、アクリル系樹脂フィルムが好適である。
基材層を形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、基材層は、これら樹脂の単層フィルムで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層フィルムで形成されていてもよいが、単層フィルムで形成されていることが好ましい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び「メタクリル」の総称であり、(メタ)の付く他の類似するものも同様の意である。
基材層は、金属層、後述するプライマー層などとの密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材層の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、基材層の表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材層を構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
基材層は、JIS K7136:2000のヘイズが5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
また、基材層は、JIS K7361-1:1997の可視光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
基材層の厚みは、金属調加飾シートの用途等に応じて適宜設定されるが、通常50~250μm程度、好ましくは60~150μm程度、さらに好ましくは70~125μm程度が挙げられる。基材層の厚みが上記範囲内であると、金属調加飾シートに対してより一層優れた三次元成形性、意匠性などを備えさせることができる。
<金属層>
金属層は、基材層の上に設けられ、金属調加飾シートに金属光沢を付与する層である。本発明の金属層は、図4~7に例示されるように、金属を含む複数の島部と、島部の間に位置する海部とを有する、海島構造を有する。
本発明の金属層は、レーダー波長の電磁波を透過する電磁波透過性を有していることが好ましい。具体的に、周波数76.5GHzの電磁波の透過率が90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。また、周波数100kHzの電磁波の透過率が93%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
本発明では、蒸着による金属層形成で海島構造をとりやすいとの観点から、金属層はインジウム、スズ、金、及びこれらの合金のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。金属層は、融点が240℃以下の金属を含むことがより好ましく、金属層がインジウム又はスズを含むことがより好ましい。中でも、インジウムは融点が低いために、海島構造となりやすい傾向がある。また、インジウムからなる金属層は、金属光沢に優れ、耐候性が良好である点でも好適である。
インジウムまたはスズを含む金属層が海島構造を形成しやすい理由は以下のように推測される。
比較的融点の低い金属を蒸着法等により成膜する場合、基材表面に到達した金属が凝固するまでに比較的時間を要する。蒸着時の基材温度が高い程、凝固までの時間が長くなる。このため、固体になる前の金属が基材表面を移動して他の金属と衝突し、合体することによって、島部が形成されると考えられる。その後、衝突及び合体を繰り返しながら、基材表面に到達する金属を取り込んで島部が成長することで、海島構造が形成されると考えられる。特に、インジウム及びスズは、それぞれ融点が156℃、232℃と極めて低い。このため、基材表面での凝固速度が遅く、上述の衝突及び合体の発生頻度が高いため、海島構造をより形成しやすいと考えられる。
金属層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相蒸着法(PVD)や、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat-CVD)等の化学的気相蒸着法(CVD)が挙げられる。これらの中でも、あらゆる素材に処理可能である真空蒸着法が好ましい。すなわち、金属層としては物理的気相蒸着膜が好ましく、その中でも真空蒸着膜が好ましい。
金属光沢感及び成形性等の観点から、島部1個あたりの厚みが30~100nmとなるように形成するものとすることが好ましく、40~80nmであることがより好ましい。
島部1個あたりの厚みは、例えば、蒸着の時間で調整することができる。すなわち、蒸着時間を長くすると、島部1個あたりの厚みを増大させることができる。
本発明における金属層は、島部の各々を円形と仮定し、島部1個あたりの面積から算出した直径の平均値を「島部のサイズ」と定義した場合に、島部のサイズが75nm以上400nm以下であることが好ましい。
上記定義で求めた島部のサイズが75nm以上であると、海部の面積比率Xが10%以上としたときに、高い反射率(60%以上)を得ることができる。この結果、金属光沢に優れる金属調加飾シートを得ることができる。更に、島部のサイズを160nm以上、より望ましくは200nm以上とすることにより、より高反射率の金属層が形成された金属調加飾シートを得やすくなる。
一方、島部のサイズが大きくなるほど、島部が占める面積が大きくなるため、相対的に海部の面積比率が下がる傾向がある。この場合、成形時の島部同士の接触による金属調加飾シートの白化が発生する虞がある。また、成形時に金属調加飾シートが延伸された場合に、島部が割れることにより金属光沢感が低下する虞がある。さらに、島部のサイズが大きすぎると、海部の幅(すなわち、島部の間隔)が大きくなり、島部のエッジからの拡散光が視認される場合がある。この結果、ざらついた金属光沢となり、所望の美観を得ることができない虞がある。これらを抑制するとの観点から、島部のサイズを350nm以下とすることが好ましく、300nm以下とすることがより好ましい。
島部1個あたりの面積は、下記の手法で算出することができる。
まず、海部の面積比率を算出する場合と同じ条件で、金属層表面の電子顕微鏡画像を取得し、画像を2値化処理する。
次いで、撮影した写真上に、島部が50個以上100個以下入る正方形の枠を重ねる。該枠の一辺の長さをL[nm]とする。「L」はサンプル上の実サイズを表し、例えば、SEM写真のピクセルサイズ又はスケールバーを基準として算出することができる。
次いで、該枠内に全体が含まれる島部の数(n)、該枠内にその島部の面積の1/2以上1未満が存在すると認められる島部の数(n)、該枠内にその島部の面積の1/2未満が存在すると認められる島部の数(n)をカウントする。カウントしたn、n及びnに基づいて下記式(i)で示される「n」を、該枠内に存在する島部の個数と擬制する。
n=n+(3n+n)/4 (i)
次いで、該枠における島部の合計面積を算出し、該合計面積を「S[nm]」とする。
そして、S[nm]及び式(i)で算出した該枠内の島部の数(n)に基づいて下記式(ii)で示される「a」を、該枠内における島部1個あたりの面積[nm]と擬制する。
a=S/n (ii)
図4~7の電子顕微鏡写真のように、島部は不定形を有する。このため、本明細書において島部サイズを算出するにあたって、各島部を円形と仮定する。円形と仮定した島部の直径を「島部のサイズ」と定義する。
本明細書では、20箇所における島部1個あたりの面積a[nm]から、島部のサイズd[nm]を式(iii)から算出する。そして、20箇所の「d」の平均値を、本明細書における島部のサイズD[nm]とする。
d=(4a/π)1/2 (iii)
海部の面積比率は及び島部のサイズは、蒸着時間、蒸着時の基材温度、基材層の材質、後述するプライマー層の材質などで調整することができる。具体的に、蒸着時間を長くすると、島部のサイズを増加させることができる一方で、海部の面積割合を小さくすることができる。蒸着時の基材温度が高い方が、島部サイズが小さく、海部の面積割合が大きくなる傾向がある。
<接着層>
本発明の金属調加飾シートは、金属層を形成した基材層を被着体に接着するために、接着層を有していても良い。この場合、接着層は、金属層の基材と反対側の面に設けられる。
接着層は、感熱性又は感圧性の樹脂から構成することが好ましい。言い換えると、接着層は、いわゆる感熱性接着層や感圧性接着層であることが好ましい。
接着層に用いられる樹脂としては、汎用のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂若しくは酢酸ビニル系樹脂、又はこれらの2種以上の混合物若しくは共重合体を用いることが好ましい。粘着強度の観点から、アクリル系樹脂がさらに好ましい。
感熱性接着層の場合、厚みは0.5~3μmであることが好ましく、0.5~1.5μmであることがより好ましい。また、感圧性接着剤の場合、厚みは20~100μmであることが好ましく、30~60μmであることがより好ましい。
接着層のガラス転移温度Tgは、0~30℃であることが好ましく、5~28℃であることがより好ましく、10~26℃であることがさらに好ましい。
ガラス転移温度を0℃以上とすることにより、チッピングへの耐性(耐チッピング性)を良好にしやすきでき、また、耐熱性が良好となり、加飾成形体の表面の平滑性が低下することを抑制しやすくなる。また、ガラス転移温度を30℃以下とすることにより、密着性の低下により耐チッピング性が低下することを抑制しやすくなる。さらに、ガラス転移温度が0~30℃であると、加飾成形体の耐チッピング性と金属調加飾シートの高温での表面の平滑性とのバランスがとりやすくなる。
<プライマー層>
プライマー層は、金属層と金属層に隣接する層(例えば、基材層)との密着性向上、金属層に隣接する層に含まれる成分(例えば塩素成分など)による金属層の劣化の抑制、金属層を蒸着で形成する場合の下地などを目的として、必要に応じて設けられる層である。
プライマー層の材質は特に限定されないが、反射率に与える影響を小さくする観点から、基材層と屈折率差が小さい材質で形成されることが好ましい。プライマー層の材質としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル-ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂が挙げられる。基材層がアクリル系樹脂を含む場合、金属層との密着性を向上させるために、プライマー層はアクリル系樹脂を含むことが好ましい。また、基材層、プライマー層及び金属層がこの順に直接接している場合、海島構造がプライマー層の影響を受ける観点から、プライマー層はアクリルポリオール及びイソシアネートを含む層であることが好ましい。
プライマー層中には、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
プライマー層の厚みは、特に限定されないが、通常0.5~2.5μm程度、好ましくは1~2μm程度である。
<剥離層>
金属調加飾シートは、接着層を保護する目的で、接着層の基材と反対側の表面に剥離層を有していても良い。剥離層は、加飾成形品を真空成形法により製造する際には、接着層から容易に剥離可能なものである。
剥離層は、剥離性を向上させるために、離型剤を含むことが好ましい。例えば、剥離層は、離型剤及びバインダー樹脂を含む層とすることができる。離型剤としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース樹脂系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤、アクリル樹脂系離型剤、及び、これらの複合型離型剤等の離型剤が好ましい。これらのなかで、シリコーン系離型剤が特に好ましい。バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いるのがよく、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、および塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
剥離層は、上記の離型剤およびバインダー樹脂に必要な添加剤を加えたものを適当な溶剤に溶解または分散させて調製したインキを、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、およびグラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段により塗布・乾燥させて形成することができる。
あるいは、剥離層として、ポリエステルフィルム等の公知の樹脂フィルムの片面に、上記の離型剤を含む離型層を設けた剥離フィルムを用いてもよい。
<バッカー層>
金属調加飾シートは、金属層の内層側(金属層を挟んで基材層と反対側)にバッカー層を有していても良い。バッカー層は、金属調加飾シートの強度を向上させたり、金属調加飾シートから形成した金属調加飾成形体の形状を保持したりする役割を有する。
バッカー層の厚みは特に制限されず、例えば、0.1~10mmの範囲で適宜選択すればよい。なお、金属層の内層側には、複数枚のバッカー層が積層されていてもよい。
バッカー層は透明であってもよいが、バッカー層の表面反射を抑制するために、白を除く無彩色(灰色、黒色)であることが好ましく、黒色であることがより好ましい。
バッカー層は、無彩色とするための顔料を含むことが好ましい。バッカー層の顔料としては、黒色顔料の単独でもよいし、黒色顔料と他の顔料(白色顔料等)との混合であってもよい。
バッカー層のバインダー樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂の中でも成形時のクラックを抑制する観点から、ABS樹脂を含むことが好ましい。バッカー層の全バインダー樹脂に対するABS樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
バッカー層には、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤等の光安定剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤等の任意の添加剤を添加することができる。
バッカー層は、75℃で30分加熱した際の熱収縮率が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましい。バッカー層の熱収縮率を低くすることにより、バッカー層を起因とする金属光沢の低下を抑制しやすくできる。
<その他の層>
金属調加飾シートは、反射率に大きな影響を与えない範囲で、上記に例示した以外の層を有していてもよい。
[金属調加飾成形体]
本発明の金属調加飾成形体は、本発明の金属調加飾シートに被着体を一体化させることにより成形されてなるものである。金属調加飾シートが接着層を有する場合、接着層は被着体側に位置する。
<被着体>
本発明の金属調加飾シートの金属調加飾成形体に用いられる被着体としては、特に限定されることなく、ガラス、セラミックス、樹脂等からなる成形体が挙げられる。
なお、被着体は、あらかじめ成形体の形状に成形されたものを用いてもよいし、真空成形やインサート成形などによる加飾成形時に成形体の形状としてもよい。
被着体の厚みは特に限定されないが、通常、1mm以上であり、1~10mmであることが好ましい。
[金属調加飾成形体の製造方法]
例えば、下記(y1)~(y2)の工程を有する真空成形により、金属調加飾成形体を製造することができる。
(y1)金属調加飾シートの接着層側の面と、被着体とを貼着させた積層体を作製する。
(y2)上記積層体の被着体側の面を型に向けて配置して真空成形する。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
図2に示す細線モデルについて、厳密結合波解析(RCWA, Rigorous Coupled Wave Analysis)法に基づいて、金属層の島部のサイズ及び海部の面積比率を変えた場合の波長550nmにおける金属調加飾シートの反射率(%)のシミュレーションにより計算した。
上記シミュレーションでは、海島構造を一次元に単純化して行った。また、上記シミュレーションでは、金属調加飾シートの層構成は、基材層(PMMA)/金属層(インジウム蒸着膜)とした。基材層側に発光面が配置され、基材層に光が垂直入射(入射角5°)すると設定した。
金属層部分の光入射方向に垂直な方向の長さ(図2中、符号Lm)と規定した。図2の細線モデルにおいて、海部の比率x(%)は、基材層部分の光入射方向に垂直な方向の長さ(図2中、符号Ls)とした場合に、x=(Ls-Lm)/Ls×100と規定した。細線モデルにおける海部の比率は、金属調加飾シート(金属層)を平面視したときの海部の面積比率X(%)に相当すると見做した。
計算に用いたパラメータを下記に示す。
基材層の光学定数:n=1.49、k=0
基材層の厚さ:1.0μm
金属層の光学定数:n=1.0556、k=4.9524
金属層の厚さ:50nm
島部のサイズ:50nm~400nm
海部の面積比率:0~31%
図3は、上記シミュレーションで得た海部の面積比率と反射率との関係を示すグラフである。横軸は海部の面積比率、縦軸は反射率である。図3中に、条件式(1)~(3)で表される領域を太枠及び網掛けで示した。
図3によると、基材層上に海島構造を有する金属層を形成した金属調加飾シートでは、海部の面積比率が大きくなるに従い、反射率が低下する傾向がある。金属層(インジウム蒸着膜)の島サイズが75nm以上である場合はいずれも、所定の海部の面積比率とすることにより、反射率60%以上となった。すなわち、図3から、金属層(インジウム蒸着膜)の島サイズが75nm~400nmである場合、海部の面積比率を適切に調整することにより、60%以上の高い反射率を有する金属調加飾シートが得られることが確認できた。
[実施例2]
PMMA基材(エスカーボシート株式会社製、商品名「テクノロイフィルム S001G」、幅1m、厚さ125μm)上に、表1に示す蒸着条件でインジウム蒸着膜を形成し、実施例2の金属調加飾シートを得た。蒸着は、抵抗加熱蒸着方式の蒸着装置((株)アルバック製、EX-200)を用いて行った。蒸着開始時のチャンバ内圧力は、1.0×10-3Paであった。
[実施例3,5]
表1に示す蒸着条件にしたこと以外は実施例2と同様の条件でインジウム蒸着膜を形成し、実施例3及び実施例5の金属調加飾シートを得た。
[実施例4]
実施例2と同じPPMA基材の一方の面に、コロナ処理を施した。コロナ処理は、操出・巻取装置付コロナ処理装置を用い、出力100W、基材-電極間距離1.5mm、基板搬送速度20m/分の条件で行った。
次いで、上記基材のコロナ処理が施された面に、表1に示す条件としたこと以外は実施例2と同様の条件でインジウム蒸着膜を形成し、実施例4の金属調加飾シートを得た。
[実施例6]
下記処方のプライマー層形成用塗布液1を作製した。
実施例2と同じPPMA基材上に、プライマー層形成用塗布液1を塗布し、乾燥させ、厚み2μmのプライマー層を形成した。形成したプライマー層上に、表1に示す条件としたこと以外は実施例2と同様の条件でインジウム蒸着膜を形成し、実施例6の金属調加飾シートを得た。
<プライマー層形成用塗布液1>
・ポリエステル系樹脂(昭和インク工業社製、商品名SIVM用HS) 100質量部
・イソシアネート系化合物(昭和インク工業社製、商品名OP No.81) 5.0質量部
・溶剤(株式会社昭和インク工業所製、商品名:化X-NT溶剤) 適量
[比較例1]
表1に示す蒸着条件にしたこと以外は実施例2と同様の条件でインジウム蒸着膜を形成し、比較例1の金属調加飾シートを得た。
1.電子顕微鏡観察
実施例2~6及び比較例1の金属調加飾シートからサンプルを切り出し、インジウム蒸着膜表面を電子顕微鏡で観察し画像を取得した。観察条件を以下に記載する。
装置:走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、SU8040)
観察条件
加速電圧:5kV
エミッションカレント:10μA
ピクセルサイズ:9.5~10.0nm
ワーキングディスタンス:15mm
観察倍率:10,000倍
階調:8ビット
実施例2~5の金属層の電子顕微鏡画像を、それぞれ図4~7に示す。
2.海部の面積比率の算出
上記1.に記載した条件で得た実施例2~6及び比較例1の金属調加飾シートの電子顕微鏡画像から、80万画素分を切り出した。切り出した画像をOtsu’s methodに基づいて2値化処理し、海部の面積比率X(%)を算出した。なお、当該作業を画像の20箇所で行い、20箇所の平均値を、実施例2~6及び比較例1の金属層の海部の面積比率X(%)とした。結果を表1に示す。
3.島部サイズの計測
上記2.で得た2値化画像から、上述した方法に従い、島部のサイズD[nm]を算出した。結果を表1に示す。
4.反射率計測
実施例2~6及び比較例1の金属調加飾シートからサンプルを切り出し、分光反射率測定器(分光光度計)(日本分光株式会社製、商品名:V-670)を用いて、基材層(PMMA)側から測定光を入射角5度でサンプルに入射させ、サンプルの波長550nmにおける反射率を測定した。
各々10箇所から切り出したサンプルについて反射率(波長550nm)を測定し、その平均値を実施例2~6及び比較例1の金属調加飾シートの反射率Y(%)とした。結果を表1に示す。
5.成形時の白化の観察
実施例2~6及び比較例1の金属調加飾シートを用い、射出成形により金属調加飾成形体を得た。射出樹脂としてメタクリル樹脂を用いた。成形体の形状は、10cm×15cmの平板とした。射出時の樹脂温度は240℃とした。
得られた金属調加飾成形体の表面を目視で観察し、下記の基準で金属調加飾シートの白化を評価した。結果を表1に示す。
A:白化が全く見られなかったもの
B:白化がわずかに見られたもの
C:全体的に白化が確認できたもの
Figure 0007647582000001
図3に、実施例2~6及び比較例1のプロットを表示する。いずれの実施例も、条件式(1)~(3)で表される領域内に入ることが分かる。
実施例2(島サイズ:246nm)のプロットは、シミュレーションで得た島サイズ250nmの場合のグラフに近接している。また、例えば、実施例4(島サイズ:122nm)は、シミュレーションで得た島サイズ100nmの場合のグラフと島サイズ150nmの場合のグラフとの間に位置する。このように、一次元の細線モデルでシミュレーションした結果とサンプルとの間に強い相関があり、シミュレーション結果とほぼ一致した。
表1に示すように、実施例2~6の金属調加飾シートを用いることにより、成形時の白化が抑制されることが確認できた。

Claims (4)

  1. 基材層上に金属層を有する金属調加飾シートであって、
    前記金属層は金属を含む複数の島部と、前記島部の間に位置する海部とを有し、
    前記金属層は、融点が240℃以下の金属を含み、
    前記金属層を平面視したときの前記海部の面積比率をX(%)、波長550nmにおける前記金属調加飾シートの反射率をY(%)としたときに、下記条件式(1)~(3)を満たす金属調加飾シート。
    X≧10 …(1)
    Y≧60 …(2)
    Y≦-0.4182X+73.382 …(3)
  2. 前記島部の各々を円形と仮定し、前記島部1個あたりの面積から算出した直径の平均値を、前記島部のサイズと定義した場合に、前記サイズが75nm以上400nm以下である、請求項1に記載の金属調加飾シート。
  3. 前記金属層は、インジウム又はスズを含む、請求項1または請求項2に記載の金属調加飾シート。
  4. 請求項1~3の何れか1項に記載の金属調加飾シートと、被着体とを有する金属調加飾成形体。
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