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JP7652082B2 - 二次電池用バインダー組成物、二次電池用スラリー組成物、および固体電解質含有層、並びに、全固体二次電池および全固体二次電池の製造方法 - Google Patents
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JP7652082B2 - 二次電池用バインダー組成物、二次電池用スラリー組成物、および固体電解質含有層、並びに、全固体二次電池および全固体二次電池の製造方法 - Google Patents

二次電池用バインダー組成物、二次電池用スラリー組成物、および固体電解質含有層、並びに、全固体二次電池および全固体二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、二次電池用バインダー組成物、二次電池用スラリー組成物、および、固体電解質含有層、並びに、全固体二次電池および全固体二次電池の製造方法に関するものである。
有機溶媒電解質を用いた非水電解液系二次電池(以下、「非水系二次電池」と略記する場合がある。)や、有機溶媒電解質に替えて固体電解質を用いた全固体二次電池などに例示される二次電池は、小型で軽量、かつエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。
ここで、二次電池の電池部材を作製するに際して、結着材としての重合体と、有機溶媒とを含む二次電池用バインダー組成物が用いられる。具体的には、バインダー組成物を、例えば電池部材に所望の機能を発揮させるために配合される成分と混合することで二次電池用スラリー組成物を調製する。次いで、二次電池用スラリー組成物から有機溶媒を除去することで二次電池用の電極合材層や固体電解質層などを形成し、それらを電池部材または電池部材の一部として用いることができる。
そして、二次電池の性能を向上させるべく、二次電池用バインダー組成物の改良が行われている。
例えば、特許文献1では、特定の重合体と、有機溶媒とを含む非水系二次電池正極用バインダー組成物であって、該非水系二次電池正極用バインダー組成物の溶液濁度が所定の範囲内である非水系二次電池正極用バインダーが提供されている。
また、特許文献2では、所定の無機固体電解質(A)と、脱水剤(B)と、分散媒体(C)とを含有する固体電解質組成物が提供されている。
また、特許文献3では、正極活物質層、無機固体電解質層および負極活物質層をこの順に有する全固体二次電池であって、該正極活物質層、該無機固体電解質層および該負極活物質層の少なくとも1層が、少なくともシロキサン結合を有する環状化合物、および、周期表第1族もしくは第2族に属する金属を含みかつイオン伝導性を有する無機固体電解質をそれぞれ含有する全固体二次電池が提供されている。
特開2018-160421号公報 国際公開第2017/199821号 特開2016-33917号公報
しかし、上記従来のバインダー組成物には、二次電池の耐水性を向上させると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させるという点において、改善の余地があった。
そこで、本発明は、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用バインダー組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用スラリー組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、耐水性に優れた固体電解質含有層、並びに、電池特性に優れた全固体二次電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、重合体と、有機溶媒と、所定の元素を含み、かつ、所定の性質を有する無機物または有機物からなる化合物とを含むバインダー組成物を用いれば、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得ることができることを新たに見出し、本発明を完成させた。
すなわち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用バインダー組成物(以下、単に「バインダー組成物」ともいう。)は、重合体と、有機溶媒と、有機物または無機物からなる化合物と、を含む二次電池用バインダー組成物であって、前記化合物は、温度25℃の水に対する溶解性が10質量%以下であり、かつ、前記化合物は、周期表第13族および/または第14族に属する元素(ただし、炭素およびゲルマニウムを除く。)を含み、前記二次電池用バインダー組成物中の前記元素の含有量が、前記重合体に対して5質量ppm以上5000質量ppm以下であることを特徴とする。このように、重合体と、有機溶媒と、水に対する溶解性が所定値以下であり、かつ、所定の元素を含む化合物とを含むバインダー組成物であって、当該バインダー組成物中の上記元素の含有量が所定範囲内であるバインダー組成物とすれば、かかるバインダー組成物を用いることで二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
ここで、本発明の二次電池用バインダー組成物において、前記重合体が、カルボニル基、エーテル基、カルボキシ基、およびヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。上述した特定の官能基を有する重合体を用いることで、重合体の接着性を高めることができる。
そして、本発明の二次電池用バインダー組成物において、前記化合物が、-O-Si―O-、SiO、および、-O-Al-O-からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有することが好ましい。本発明のバインダー組成物に含まれる化合物が、-O-Si-O-、SiO、および-O-Al-O-からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有していれば、かかるバインダー組成物を用いることで、二次電池の耐水性をより向上させることができると共に、二次電池により優れた電池特性を発揮させることができる。
そして、本発明の二次電池用バインダー組成物において、前記重合体は、シアン化ビニル単量体単位、芳香族単量体単位、または共役ジエン単量体単位および/またはアルキレン構造単位の少なくともいずれかを、下記(i)~(iii)に示す割合で含むことが好ましい。
(i)シアン化ビニル単量体単位を2質量%以上35質量%以下
(ii)芳香族単量体単位を5質量%以上40質量%以下
(iii)共役ジエン単量体単位および/またはアルキレン構造単位を20質量%以上60質量%以下
バインダー組成物中に含まれる重合体が、シアン化ビニル単量体単位、芳香族単量体単位、並びに、共役ジエン単量体単位および/またはアルキレン構造単位の少なくともいずれかを上記割合で含むことにより、かかるバインダー組成物を用いて調製されたスラリー組成物中で、当該スラリー組成物中に含まれる各成分の分散性を向上させることができる。
なお、本発明において、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位(繰り返し単位)が含まれている」ことを意味する。また、本発明において、重合体中の「構造単位」の含有割合は、H-NMRなどの核磁気共鳴(NMR)法を用いて測定することができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用スラリー組成物(以下、単に「スラリー組成物」ともいう。)は、上述したいずれかの二次電池用バインダー組成物を含むことを特徴とする。上述したいずれかのバインダー組成物を含むスラリー組成物を用いれば、二次電池の耐水性を向上させると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
そして、本発明の二次電池用スラリー組成物は、固体電解質を含むことが好ましい。固体電解質を含むスラリー組成物を用いれば、全固体二次電池の耐水性を向上させると共に、全固体二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の固体電解質含有層は、上述した固体電解質を含むスラリー組成物を用いてなることを特徴とする。固体電解質を含む本発明のスラリー組成物を用いて固体電解質含有層を形成すれば、高密度化が容易な固体電解質含有層を形成することができる。
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の全固体二次電池は、上述した固体電解質含有層を備えることを特徴とする。本発明の固体電解質含有層を備える全固体二次電池は、耐水性に優れると共に、優れた電池特性を発揮し得る。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の全固体二次電池の製造方法は、上述した固体電解質含有層を300MPa未満の圧力でプレスする工程を含むことを特徴とする。本発明の製造方法によれば、耐水性に優れると共に、優れた電池特性を発揮し得る全固体二次電池を製造することができる。
本発明によれば、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用バインダー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用スラリー組成物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、耐水性に優れた固体電解質含有層、並びに、電池特性に優れた全固体二次電池およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の二次電池用バインダー組成物および二次電池用スラリー組成物は、非水系二次電池や全固体二次電池などの二次電池の作製に用いられる。そして、本発明の二次電池用バインダー組成物は、本発明の二次電池用スラリー組成物を調製する際に用いられる。また、本発明の二次電池用スラリー組成物は、例えば、全固体二次電池において用いられる電極合材層や固体電解質層などの固体電解質含有層を形成する際に用いられる。さらに、本発明の固体電解質含有層は、本発明の二次電池用スラリー組成物を用いて形成される。そして、本発明の全固体二次電池は、本発明の固体電解質含有層を備える。また、本発明の全固体二次電池は、本発明の全固体二次電池の製造方法によって製造することができる。
(二次電池用バインダー組成物)
本発明のバインダー組成物は、重合体と、有機溶媒と、有機物または無機物からなる化合物とを含み、任意にその他の成分を更に含み得る。ここで、本発明のバインダー組成物は、上記化合物が、温度25℃の水に対する溶解性が10質量%以下であり、かつ、周期表第13族および/または第14族に属する元素(ただし、炭素およびゲルマニウムを除く。)を含むこと、そして、バインダー組成物中の上記元素の含有量が、上記重合体に対して5質量ppm以上5000質量ppm以下であることを特徴とする。
<重合体>
本発明のバインダー組成物に含まれる重合体としては、二次電池において通常は結着材として使用される任意の重合体を用いることができる。中でも、重合体として、カルボニル基、エーテル基、カルボキシ基、およびヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体を用いることが好ましい。上述したいずれかの官能基を有する重合体を用いれば、重合体の結着性を高めることができる。
上述した官能基を有する重合体は、例えば、重合体に上述した官能基を導入することで得られる。ここで、重合体に上述した官能基を導入する方法は特に限定されず、例えば、上述した官能基を含有する単量体を用いて重合体を調製してもよいし、任意の重合体を末端変性することにより、上述した官能基を末端に有する重合体を得てもよい。
[カルボニル基を有する重合体]
カルボニル基を有する重合体は、カルボニル基含有単量体を含む単量体組成物を重合して得られる。ここで、カルボニル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;などが挙げられる。
その他、カルボニル基含有単量体としては、マレイン酸メチルアリル、マレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸ジシクロヘキシル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチルなどの多価カルボン酸エステルが挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
そして、重合体中、カルボニル基含有単量体に由来するカルボニル基含有単量体単位の含有割合は、重合体中の全繰り返し単位(単量体単位と構造単位との合計)を100質量%とした場合に、25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。重合体中におけるカルボニル基含有単量体単位の含有割合を25質量%以上とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物によって、電極合材層と集電体との密着強度を高めることができる。また、重合体中におけるカルボニル基含有単量体単位の含有割合を95質量%以下とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物において、電極活物質や導電助剤の分散性を向上させることができる。
[エーテル基を有する重合体]
エーテル基を有する重合体は、エーテル基含有単量体を含む単量体組成物を重合して得られる。ここで、エーテル基含有単量体としては、フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
そして、重合体中、エーテル基含有単量体に由来するエーテル基含有単量体単位の含有割合は、重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、5質量%以上であることが好ましく、7.5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。重合体中におけるエーテル基含有単量体単位の含有割合を5質量%以上とすることで、電極合材層と集電体との密着強度を高めることができる。また、重合体中におけるエーテル基含有単量体単位の含有割合を50質量%以下とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物において、電極活物質や導電助剤の分散性を高めることができる。
[カルボキシ基を有する重合体]
カルボキシ基を有する重合体は、カルボキシ含有単量体を含む単量体組成物を重合して得られる。ここで、カルボキシ基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸(2-エチルアクリル酸)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などのカルボン酸単量体;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノ-n-ブチルなどのブテンジオン酸モノアルキルエステル単量体;などのエチレン性不飽和カルボン酸化合物が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
そして、重合体中、カルボキシ基単量体に由来するカルボキシ基含有単量体単位の含有割合は、重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。重合体中におけるカルボキシ基含有単量体単位の含有割合を1質量%以上とすることで、電極合材層と集電体との密着強度を高めることができる。また、重合体中におけるカルボキシ基含有単量体単位の含有割合を10質量%以下とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物により、優れたイオン伝導性を発揮し得る固体電解質含有層を形成することができる。
[ヒドロキシ基を有する重合体]
ヒドロキシ基を有する重合体は、ヒドロキシ基含有単量体を含む単量体組成物を重合して得られる。ここで、ヒドロキシ基含有単量体としては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
そして、重合体中、ヒドロキシ基含有単量体に由来するヒドロキシ基含有単量体単位の含有割合は、重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。重合体中におけるヒドロキシ基含有単量体単位の含有割合を1質量%以上とすることで、電極合材層と集電体との密着強度を高めることができる。また、重合体中におけるヒドロキシ基含有単量体単位の含有割合を10質量%以下とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物により、優れたイオン伝導性を発揮し得る固体電解質含有層を形成することができる。
また、本発明のバインダー組成物中に含まれる重合体は、例えば、シアン化ビニル単量体単位、芳香族単量体単位、共役ジエン単量体単位および/またはアルキレン構造単位などの単量体単位を含み得る。
[シアン化ビニル単量体単位]
シアン化ビニル単量体単位を形成し得るシアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、およびα-エチルアクリロニトリルが挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。そしてこれらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。
そして、重合体中、シアン化ビニル単量体単位の含有割合は、重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以下であることが好ましく、28質量%以下であることがより好ましく、26質量%以下であることが更に好ましい。重合体中におけるシアン化ビニル単量体単位の含有割合を2質量%以上とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物により、固体電解質が良好に分散した固体電解質含有層を形成することができる。また、重合体中におけるシアン化ビニル単量体単位の含有割合を35質量%以下とすることで、有機溶媒に対する重合体の溶解性を良好にすることできる。そのため、かかるバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物によれば、当該スラリー組成物中に含まれる各成分の分散性を向上させることができる。
[芳香族単量体単位]
芳香族単量体単位を形成し得る芳香族単量体としては、例えば、スチレン、スチレンスルホン酸およびその塩、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、並びに、ビニルナフタレン、フェノキシエチルアクリレートなどが挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。そしてこれらの中でも、スチレンが好ましい。
そして、重合体中、芳香族単量体単位の含有割合は、重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量以下であることが更に好ましい。重合体中おける芳香族単量体単位の含有割合を5質量%以上とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物により、電極活物質や導電助材の分散性を高めることができる。また、重合体中における芳香族単量体単位の含有割合を40質量%以下とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物によって、電極合材層と集電体との密着強度を高めることができる。また、当該スラリー組成物を用いることで、固体電解質が良好に分散した固体電解質含有層を形成することができる。
[共役ジエン単量体単位]
共役ジエン単量体単位を形成し得る共役ジエン単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(以下、「イソプレン」という。)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類の脂肪族共役ジエン単量体などが挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明において、「ジエン単量体単位」には、ジエン単量体を用いて得た重合体中に含まれる単量体単位に、更に水素添加することで得られる構造単位(水素化物単位)も含まれるものとする。
[アルキレン構造単位]
アルキレン構造単位は、一般式:-C2n-(ただし、nは2以上の整数)で表されるアルキレン構造のみで構成される繰り返し単位である。
なお、アルキレン構造単位は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、アルキレン構造単位は直鎖状、すなわち直鎖アルキレン構造単位であることが好ましい。また、アルキレン構造単位の炭素数は4以上である(すなわち、上記一般式のnが4以上の整数である)ことが好ましい。
そして、重合体へのアルキレン構造単位の導入方法は、特に限定されないが、例えば以下の(1)または(2)の方法:
(1)共役ジエン単量体を含む単量体組成物から重合体を調製し、当該重合体に水素添加することで、共役ジエン単量体単位をアルキレン構造単位に変換する方法
(2)1-オレフィン単量体を含む単量体組成物から重合体を調製する方法
が挙げられる。
これらの中でも、(1)の方法が重合体の製造が容易であり好ましい。
すなわち、アルキレン構造単位は、共役ジエン単量体単位を水素化して得られる構造単位(共役ジエン水素化物単位)であることが好ましく、1,3-ブタジエン単位を水素化して得られる構造単位(1,3-ブタジエン水素化物単位)であることがより好ましい。
また、1-オレフィン単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセンなどが挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
そして、重合体中、共役ジエン単量体単位および/またはアルキレン構造単位の含有割合は、重合体中の全繰り返し単位を100質量%とした場合に、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましい。なお、本発明において、重合体中に共役ジエン単量体単位およびアルキレン構造単位の両方が含まれる場合には、共役ジエン単量体単位とアルキレン構造単位との合計が上述した範囲内であることが好ましい。そして、重合体中における共役ジエン単量体および/またはアルキレン構造単位の含有割合を20質量%以上とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物により、電極活物質や導電助材の分散性を高めることができる。また、重合体中における共役ジエン単量体単位および/またはアルキレン構造単位の含有割合を60質量%以下とすることで、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物により、電極合材層と集電体との密着強度を高めることができる。また、当該スラリー組成物を用いることで、固体電解質が良好に分散した固体電解質含有層を形成することができる。
[その他の単量体単位]
そして、本発明のバインダー組成物中に含まれる重合体は、上述した単量体以外のその他の単量体単位を更に含んでいてもよい。そして、そのような単量体単位を形成し得るその他の単量体としては、特に限定されず、例えば、架橋性単量体(例えば、アリルメタクリレート、エチレンジメタクリレートなど)が挙げられる。
<<重合体の調製方法>>
本発明のバインダー組成物中に含まれる重合体の調製方法は特に限定されず、例えば、上述した単量体を含む単量体組成物を重合し、任意に、水素添加を行うことで調製することができる。
ここで、本発明において単量体組成物中の各単量体の含有割合は、重合体における各単量体単位および構造単位の含有割合に準じて定めることができる。
また、重合様式は、特に制限なく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。各重合法において、必要に応じて既知の乳化剤や重合開始剤を使用することができる。
さらに、水素添加の方法は、特に制限なく、触媒を用いる一般的な方法(例えば、国際公開第2012/165120号、国際公開第2013/080989号および特開2013-8485号公報参照)を使用することができる。
<有機溶媒>
本発明のバインダー組成物に含まれる有機溶媒は、特に限定されることなく、バインダー組成物の用途に応じて適宜選定することができる。ここで、有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸ブチル、酪酸ヘキシル、イソ酪酸イソブチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル、n-ブチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
そして、例えば、本発明のバインダーを用いて全固体二次電池用スラリー組成物を調製する場合には、固体電解質の分散性を高めつつ副反応による劣化を抑制する観点から、有機溶媒としては、キシレン、メシチレン、ジイソブチルケトン、酪酸ブチル、酪酸ヘキシル、n-ブチルエーテルが好ましく、キシレン、メシチレン、ジイソブチルケトンがより好ましい。
<有機物または無機物からなる化合物>
本発明のバインダー組成物に含まれる有機物または無機物からなる化合物は、温度25℃の水に対する溶解性が10質量%以下であり、かつ、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物である。ただし、本発明において、周期表第13族および/または第14族に属する元素のうち、炭素およびゲルマニウムは除くとする。
そして、本発明のバインダー組成物に含まれる上記化合物は、-O-Si-O-、SiO、および、-O-Al-O-からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有することが好ましく、-O-Si―O-および-O-Al-O-の少なくとも一方の構造を有することがより好ましい。化合物が-O-Si-O-、SiO、および、-O-Al-O-のいずれかの構造を有していれば、本発明のバインダー組成物を用いることで、耐水性が向上した二次電池を製造することができる。
ここで、-O-Si-O-、SiO、および、-O-Al-O-からなる群より選択される少なくとも1つの構造を有する化合物としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル、ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、二次電池の耐水性やサイクル特性を高める観点からは、上記化合物として、ゼオライト、シリカゲル、ポリジメチルシロキサンが好ましい。
<その他の成分>
本発明のバインダー組成物が任意に含み得るその他の成分としては、特に限定されない。その他の成分として、例えば、上述した重合体以外の結着材、分散剤、レベリング剤、消泡剤および補強材などが挙げられる。これらのその他の成分は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば、特に制限されない。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
<二次電池用バインダー組成物の性状>
本発明のバインダー組成物は、上述した重合体と、有機溶媒と、化合物とを少なくとも含むバインダー組成物であって、当該バインダー組成物中、上述した元素の含有量が、重合体に対して5質量ppm以上5000質量ppm以下であることを必要する。これにより、本発明のバインダー組成物を用いることで、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
ここで、本発明のバインダー組成物中の上記元素の含有量は、上記重合体に対して10質量ppm以上であることが好ましく、20質量ppm以上であることがより好ましく、500質量ppm以上であることが更に好ましく、4000質量ppm以下であることが好ましく、3500質量ppm以下であることがより好ましく、3000質量ppm以下であることが更に好ましく、2000質量ppm以下であることが特に好ましい。バインダー組成物中の上記元素の含有量が上記重合体に対して10質量ppm以上であれば、副反応による劣化を抑制することができる。また、上記元素の含有量が上記重合体に対して3500質量ppm以下であれば、本発明のバインダー組成物を用いて調製したスラリー組成物により、当該スラリー組成物中の各成分の凝集を抑制して、スラリー特性を向上させることができる。さらに、上記元素の含有量が上記重合体に対して3000質量ppm以下であれば、二次電池のセル抵抗が上昇するのを十分に抑制することができる。
<二次電池用バインダー組成物の調製方法>
本発明のバインダー組成物の調製方法は、特に限定されず、例えば、上述した重合体と、化合物と、必要に応じて用いられるその他の成分とを、有機溶媒中で混合して調製することができる。その際、混合方法は特に限定されず、通常用いられる撹拌機や分散機を用いて混合を行うことができる。
(二次電池用スラリー組成物)
本発明の二次電池用スラリー組成物は、少なくとも、上述した本発明の二次電池用バインダー組成物を含むものである。より詳細には、本発明のスラリー組成物は、上述した重合体と、有機溶媒と、化合物とを少なくとも含み、任意に、その他の成分を含み得る。そして、本発明のスラリー組成物は、上述したバインダー組成物を含んでいるため、かかるスラリー組成物を用いることで、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
ここで、本発明のスラリー組成物は、上述したその他の成分として、固体電解質を含んでいてもよい。固体電解質を含むスラリー組成物によれば、かかるスラリー組成物を用いることで、耐水性に優れた固体電解質含有層を形成することができる。
<二次電池用スラリー組成物の調製方法>
本発明のスラリー組成物の調製方法は、特に限定されることなく、例えば、任意の混合手段を用い、バインダー組成物を、任意に、固体電解質などのその他の成分と混合して調製することができる。
<固体電解質>
本発明のスラリー組成物に任意に含まれ得る固体電解質としては、イオン伝導性を有する固体からなる粒子であれば特に限定されず、例えば、無機固体電解質を用いることができる。
無機固体電解質としては、特に限定されることなく、結晶性の無機イオン伝導体、非晶性の無機イオン伝導体またはそれらの混合物を用いることができる。そして、本発明のスラリー組成物を用いて形成された固体電解質含有層を全固体リチウムイオン二次電池に用いる場合には、無機固体電解質としては、通常は、結晶性の無機リチウムイオン伝導体、非晶性の無機リチウムイオン伝導体またはそれらの混合物を用いることができる。中でも、イオン伝導性に一層優れる固体電解質含有層を形成する観点からは、無機固体電解質は、硫化物系無機固体電解質と酸化物系無機固体電解質の少なくとも一方を含むことが好ましい。
そして、結晶性の無機リチウムイオン伝導体としては、LiN、LISICON(Li14Zn(GeO)、ペロブスカイト型(例:Li0.5La0.5TiO)、ガーネット型(例:LiLaZr12)、LIPON(Li3+yPO4-x)、Thio-LISICON(Li3.25Ge0.250.75)などが挙げられる。
非晶性の無機リチウムイオン伝導体としては、S(硫黄原子)を含有し、かつ、イオン伝導性を有するもの(硫化物固体電解質材料)であれば特に限定されるものではない。ここで、本発明のスラリー組成物が固体リチウム二次電池に用いられる場合、硫化物固体電解質材料として、LiSと、第13族~第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。このような原料組成物を用いて硫化物固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。メカニカルミリング法によれば、常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
上記第13族~第15族の元素としては、例えばAl、Si、Ge、P、As、Sb等を挙げることができる。また、第13族~第15族の元素の硫化物としては、具体的には、Al、SiS、GeS、P、P、As、Sb等を挙げることができる。中でも、第14族または第15族の硫化物を用いることが好ましい。特に、LiSと、第13族~第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質材料は、LiS-P材料、LiS-SiS材料、LiS-GeS材料またはLiS-Al材料であることが好ましく、LiS-P材料であることがより好ましい。これらは、Liイオン伝導性が優れているからである。
上述した結晶性の無機リチウムイオン伝導体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、固体電解質の粒子径は、特に限定されることなく、従来使用されている固体電解質の粒子径と同様とすることができる。
(固体電解質含有層)
本発明の固体電解質含有層(以下、単に「固体電解質含有層」ともいう。)は、本発明のスラリー組成物を用いてなる層である。そして、本発明の固体電解質含有層を形成する際に使用するスラリー組成物には、少なくとも固体電解質が含まれるものとする。ここで、本発明の固体電解質含有層は、特に限定されず、例えば、電気化学反応を介して電子の授受を行う電極合材層(正極合材層、負極合材層)や、互いに対向する正極合材層と負極合材層との間に設けられる固体電解質層として用いることができる。
本発明の固体電解質含有層の形成方法は、特に限定されず、例えば、上述した固体電解質を含む本発明のスラリー組成物を適切な基材の表面に塗布して塗膜を形成した後、形成した塗膜を乾燥することにより形成することができる。すなわち、本発明の固体電解質含有層は、上述した固体電解質を含む本発明のスラリー組成物の乾燥物よりなり、通常、固体電解質と、重合体と、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物とを少なくとも含むものである。なお、固体電解質含有層に含まれている各成分は、上記スラリー組成物中に含まれていたものであり、それらの成分の含有比率は、通常、上記スラリー組成物中における含有比率と等しい。
また、固体電解質含有層中における固体電解質の含有量は、例えば10質量%以上であり、100質量%以下とすることができる。また、固体電解質含有層の厚さは、例えば1μm以上、500μm以下とすることができる。
本発明の固体電解質含有層は、本発明のスラリー組成物から形成されるため、耐水性に優れる。また、本発明の固体電解質含有層を電極合材層とすれば、例えば300MPa未満の圧力(プレス圧)でプレス処理する場合でも、電極合材層を十分に高密度化することができる。
(全固体二次電池)
本発明の全固体二次電池は、上述した本発明の固体電解質含有層を備える。ここで、本発明の全固体二次電池は、例えば、正極、固体電解質層および負極を有しており、正極の正極合材層、負極の負極合材層および固体電解質層の少なくとも一つが本発明の固体電解質含有層である。
そして、本発明の全固体二次電池は、本発明の固体電解質含有層を備えているので、耐水性に優れると共に、電池特性に優れている。
ここで、本発明の全固体二次電池に使用し得る、本発明の固体電解質含有層に該当しない電極合材層を備える全固体二次電池用電極としては、本発明の固体電解質含有層に該当しない電極合材層を有するものであれば特に限定されることなく、任意の全固体二次電池用電極を用いることができる。
また、本発明の全固体二次電池に使用し得る、本発明の固体電解質含有層に該当しない固体電解質層としては、特に限定されることなく、例えば、特開2012-243476号公報、特開2013-143299号公報および特開2016-143614号公報などに記載されている固体電解質層などの任意の固体電解質層を用いることができる。
そして、本発明の全固体二次電池は、正極と負極とを、正極の正極合材層と負極の負極合材層とが固体電解質層を介して対向するように積層し、任意に加圧して積層体を得た後、電池形状に応じて、そのままの状態で、または、巻く、折るなどして電池容器に入れ、封口することにより得ることができる。なお、必要に応じて、エキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを電池容器に入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
(全固体二次電池の製造方法)
本発明の全固体二次電池の製造方法は、上述した本発明の固体電解質含有層を300MPa未満の圧力でプレスする工程(プレス工程)を含み、任意に、プレス工程の前に、本発明のスラリー組成物を基材上に塗布する工程(塗布工程)と、基材上に塗布されたスラリー組成物を乾燥して固体電解質含有層を形成する工程(固体電解質含有層形成工程)とを含み得る。なお、以下では本発明の固体電解質含有層を二次電池の電極合材層として用いる場合の全固体二次電池の製造方法について説明するが、本発明の全固体二次電池の製造方法は、少なくとも上述したプレス工程を含むものであれば、特に限定されない。
<塗布工程>
塗布工程では、基材上にスラリー組成物を塗布する。ここで、スラリー組成物を基材上に塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。
<固体電解質含有層形成工程>
固体電解質含有層形成工程では、基材上のスラリー組成物を乾燥する。ここで、基材上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。乾燥法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。
<プレス工程>
プレス工程では、固体電解質含有層を300MPa未満のプレス圧でプレス処理する。ここで、プレス処理する方法としては、特に限定されず、ロールプレスなどを用いてプレス処理を行うことができる。そして、本発明の全固体二次電池の製造方法において、電極合材層として機能する固体電解質層を形成した場合には、300MPa未満の低いプレス圧で固体電解質含有層をプレス処理した場合でも、電極合材層を十分に高密度化することができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
そして、実施例および比較例において、バインダー組成物中の重合体に対する周期表第13族および/または第14族に属する元素の含有量、分散性、イオン伝導度、正極のピール強度、セル抵抗、プレス性、セル特性(サイクル特性)は、以下の方法で測定または評価した。また、実施例および比較例で使用した化合物の水に対する溶解性は、以下の方法で測定した。
<周期表第13族および/または第14族に属する元素の含有量>
バインダー組成物約1gを、温度550℃の電気炉で約3時間加熱し、灰化した。その後、灰化したバインダー組成物に約5mLの濃硫酸を加えて溶解させ、約5mLの濃硝酸を徐々に添加して湿式分解した。分解後、酸を濃縮し、超純水で10mLに定容して、ICP-AES装置(SIIナノテクノロジー社製、型番「SPS-5100」)を用いて、バインダー組成物中における金属イオン濃度を測定した。得られた金属イオン濃度の値を元に、バインダー組成物中に含まれる重合体に対する周期表第13族および/または第14族に属する元素(ただし、炭素およびゲルマニウムを除く。)の含有量を算出した。
<分散性>
固体電解質層用スラリー組成物の粘度を、ブルックフィールドB型粘度計60rpm(温度25℃)で測定し、下記の基準で評価した。固体電解質層用スラリー組成物の粘度が小さいほど、固体電解質層用スラリー組成物に含まれる固体電解質が良好に分散していることを示す。
A:粘度が3000mPa・s未満
B:粘度が3000mPa・s以上5000mPa・s未満
C:粘度が5000mPa・s以上8000mPa・s未満
D:粘度が8000mPa・s以上または分散しない(流動性なし)
<イオン伝導度>
グローブボックス内(水分量1ppm以下)で、固体電解質層用スラリー組成物を温度130℃のホットプレートで乾燥し、得られた粉体を、直径10mm、厚さ1mmの円筒状に成形して測定試料とした。この測定試料について、交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度(温度25℃)の測定を行った。なお、測定には、周波数応答アナライザー(Solartron Analytical社製、製品名「ソーラトロン(登録商標)1260」を用い、測定条件は、印加電圧10mV、測定周波数域0.01MHz~1MHzとした。得られたリチウムイオン伝導度をS0とした。
別途、ドライルーム内(水分量127ppm以下 露点-40℃相当)で、固体電解質層用スラリー組成物を温度130℃のホットプレートで乾燥し、得られた粉体を、直径10mm、厚さ0.5mmの円筒状に成形して測定試料とした。この測定試料について、上記S0と同様にしてリチウムイオン伝導度(温度25℃)の測定を行った。得られたリチウムイオン伝導度をS1とした。
そして、伝導度維持率=S1/S0×100(%)を求め、下記の基準で評価した。伝導度維持率が大きいほど、水分による固体電解質の劣化が抑制されており、耐水性に優れるといえる。また、伝導度維持率が大きいほど、当該固体電解質層用スラリー組成物を用いて形成した固体電解質層(固体電解質含有層)は優れたイオン伝導性を発揮する。
A:伝導度維持率が95%以上
B:伝導度維持率が85%以上95%未満
C:伝導度維持率が60%以上85%未満
D:伝導度維持率が60%未満
<正極のピール強度>
正極を幅1.0cm×長さ10cmの矩形に切り出し、試験片とした。この試験片の正極合材層側表面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180°方向に引き剥がしたときの応力を測定した。測定を計3回行い、その平均値を求めてこれを正極のピール強度(N/m)とし、下記の基準で評価した。正極のピール強度が大きいほど、正極合材層が接着性に優れ、集電体と強固に密着していることを示す。
A+:ピール強度が4N/m以上
A:ピール強度が3N/m以上4N/m未満
B:ピール強度が2N/m以上3N/m未満
C:ピール強度が1N/m以上2N/m未満
D:ピール強度が1N/m未満
<セル抵抗>
3セルの全固体二次電池を0.1Cの定電流法によって4.2Vまで充電しその後0.1Cにて3.0Vまで放電し、0.1C放電容量を求めた。次いで、0.1Cにて4.2Vまで充電しその後2Cにて3.0Vまで放電し、2C放電容量を求めた。3セルの0.1C放電容量の平均値を放電容量a、3セルの2C放電容量の平均値を放電容量bとし、放電容量aに対する放電容量bの比(容量比)=放電容量b/放電容量a×100(%)を求め、以下の基準で評価した。容量比の値が大きいほど、セル抵抗が低いことを意味する。
A:容量比が90%以上
B:容量比が80%以上90%未満
C:容量比が60%以上80%未満
D:容量比が60%未満
<プレス性>
作製した正極を直径10mmに打ち抜き、一軸プレス機を用いて所定の圧力で2分間プレスし、目標密度3.3g/cmに到達するときのプレス圧(MPa)の測定を行い、以下の基準で評価した。プレス圧が低いほど、プレス性に優れることを示す。
A:200MPa未満
B:200MPa以上300MPa未満
C:300MPa以上400MPa未満
D:400MPa以上
<セル特性(サイクル特性)>
得られた全固体二次電池を、45℃で0.1Cで3Vから4.2Vまで充電し、次いで0.1Cで4.2Vから3Vまで放電する充放電を、50サイクル繰り返し行った。1サイクル目の0.1C放電容量に対する50サイクル目の0.1C放電容量の割合を百分率で算出した値を容量維持率とし、以下の基準で評価した。容量維持率の値が大きいほど、放電容量減が少なく、セル特性(サイクル特性)に優れることを意味する。
A:容量維持率が90%以上
B:容量維持率が80%以上90%未満
C:容量維持率が70%以上80%未満
D:容量維持率が70%未満
<化合物の水に対する溶解性>
実施例および比較例で使用した化合物の温度25℃の水に対する溶解性は、EPA法(EPA Chemical Fate testing Guideline CG-1500 Water Solubility)で測定した。
(実施例1)
<バインダー組成物の調製>
撹拌機を備えたセプタム付き1Lフラスコにイオン交換水100部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を加え、気相部を窒素ガスで置換し、温度60℃に昇温した後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)0.25部をイオン交換水20.0部に溶解させ加えた。
一方、別の容器でイオン交換水40部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム1.0部、そしてカルボニル基含有単量体としてn-ブチルアクリレート69部、シアン化ビニル単量体としてアクリロニトリル6部、芳香族単量体としてスチレン25部を混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を3時間かけて前記セプタム付き1Lフラスコに連続的に添加して重合を行った。添加中は、温度60℃で反応を行った。添加終了後、さらに温度80℃で3時間撹拌して反応を終了した。
続いて、有機溶媒としてのジイソブチルケトンを適量添加して混合物を得た。その後、温度80℃にて減圧蒸留を実施して混合物から水および過剰なジイソブチルケトンを除去し、バインダー前駆体組成物(固形分濃度:8%)を得た。
さらに、得られたバインダー前駆体組成物に、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物として第1の合成ゼオライト(新越化成工業株式会社製、製品名「モレキュラーシーブス4A」、形状:粉末、粒径:325mesh、温度25℃の水に対する溶解性:0.1%未満)5部を加え、24時間後に10μmフィルターでろ過することでバインダー組成物を得た。
<正極合材層用スラリー組成物の調製>
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(個数平均粒子径:11.5μm)70部と、固体電解質としてのLiSとPとからなる硫化物ガラス(LiS/P=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.9μm)25.5部と、導電材としてのアセチレンブラック2.5部と、上述のようにして得られたバインダー組成物2部(固形分相当量)とを混合し、さらに有機溶媒としてジイソブチルケトンを加えて固形分濃度80%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分間混合した。その後、さらにジイソブチルケトンを加えて固形分濃度70%に調整した後に10分間混合して正極合材層用スラリー組成物を調製した。
<負極合材層用スラリー組成物の調製>
負極活物質粒子としてのグラファイト(個数平均粒子径:20μm)60部と、固体電解質粒子としてのLiSとPとからなる硫化物ガラス(LiS/P=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.9μm)36.5部と、導電材粒子としてのアセチレンブラック1.5部と、上述のようにして得られたバインダー組成物2部(固形分相当量)とを混合し、さらに有機溶媒としてジイソブチルケトンを加えて固形分濃度65%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分間混合した。その後、さらにジイソブチルケトンを加えて固形分濃度60%に調整した後にプラネタリーミキサーで混合して負極合材層用スラリー組成物を調製した。
<固体電解質層用スラリー組成物の調製>
アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス(水分濃度0.6質量ppm、酸素濃度1.8質量ppm)で、固体電解質粒子としてのLiSとPとからなる硫化物ガラス(LiS/P=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.9μm)100部と、上述のようにして得られたバインダー組成物2部(固形分相当量)とを混合し、さらに、有機溶媒としてのジイソブチルケトンを加えて、固形分濃度60質量%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分間混合した。その後、さらにジイソブチルケトンを加えて固形分濃度45%に調整した後にプラネタリーミキサーで混合して、固体電解質層用スラリー組成物を調製した。得られた固体電解質層用スラリー組成物を用いて各種測定を行った。結果を表1に示す。
<全固体二次電池の製造>
集電体(アルミ箔、厚さ:20μm)表面に上記正極合材層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(温度120℃、60分間)させて厚さが50μmの正極合材層(固体電解質含有層)を形成し、正極を得た。この正極を用いて、正極のピール強度およびプレス性を測定した。結果を表1に示す。
また、別の集電体(銅箔、厚さ:15μm)表面に上記負極合材層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(温度120℃、60分間)させて厚さが60μmの負極合材層(固体電解質含有層)を形成し、負極を得た。
次いで、イミドフィルム(厚さ:25μm)に、上記固体電解質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(温度120℃、60分間)させて厚さが150μmの固体電解質層(固体電解質含有層)を形成した。正極合剤層と固体電解質層とが接するように貼り合わせ、400MPaの圧力(プレス圧)が加わるようにプレス処理を行い、固体電解質層をイミドフィルムから正極合剤層上に転写することで、固体電解質層付き正極を得た。
上記固体電解質層付き正極と負極を、固体電解質層付き正極の固体電解質層と負極の負極合材層とが接するように貼り合わせ、固体電解質層付き正極の固体電解質層(固体電解質含有層)に400MPaの圧力(プレス圧)が加わるようにしてプレス処理を行い、全固体二次電池を得た。プレス後の全固体二次電池の固体電解質層の厚さは、120μmであった。この全固体二次電池を用いてセル抵抗およびセル特性(サイクル特性)を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
バインダー組成物の調製に際し、単量体として、芳香族単量体としてのスチレンに替えてエーテル基含有単量体としてのフェノキシエチルアクリレート25部を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3,4)
バインダー組成物の調製に際し、バインダー組成物中に含まれる重合体に対する周期表第13族および/または第14族に属する元素の含有量が4300質量ppm(実施例3)、12質量ppm(実施例4)になるように調整した以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
バインダー組成物の調製に際し、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物として、第1の合成ゼオライトに替えて、第2の合成ゼオライト(新越化成工業株式会社製、製品名「モレキュラーシーブス13X」、形状:粉末、粒径:325mesh、温度25℃の水に対する溶解性0.1%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
バインダー組成物の調製に際し、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物として、第1の合成ゼオライトに替えて、第3の合成ゼオライト(新越化成工業株式会社製、製品名「モレキュラーシーブス3A」、形状:粉末、粒径:325mesh、温度25℃の水に対する溶解性0.2%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
バインダー組成物の調製に際し、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物として、第1の合成ゼオライトに替えて、第4の合成ゼオライト(Zeochem社製、製品名「ZEOflair110」、形状:粉末、粒径:325mesh、温度25℃の水に対する溶解性0.1%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
バインダー組成物の調製に際し、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物として、第1の合成ゼオライトに替えて、シリカゲル(豊田化工株式会社製、製品名「シリカゲルA型」、温度25℃の水に対する溶解性0.3%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例9)
バインダー組成物の調製に際し、カルボニル基含有単量体としてn-ブチルアクリレート71部、カルボキシ基含有単量体としてメタクリル酸3部、シアン化ビニル単量体としてアクリロニトリル6部、芳香族単量体としてスチレン20部を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例10)
バインダー組成物の調製に際し、カルボキシ基含有単量体に替えてヒドロキシ基含有単量体としてのアクリル酸2-ヒドロキシエチルを用いた以外は実施例9と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例11,12,16,17)
バインダー組成物の調製に際し、有機溶媒として、ジイソブチルケトンに替えて酪酸ブチル(実施例11)、メシチレン(実施例12)、キシレン(実施例16)、イソ酪酸イソブチル(実施例17)を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表2、表3に示す。
(実施例13)
以下のようにして調製したバインダー組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
<バインダー組成物の調製>
反応器に、乳化剤としてオレイン酸カリウム2部、安定剤としてリン酸カリウム0.1部、水150部を仕込み、さらにカルボニル基含有単量体としてn-ブチルアクリレート35部、シアン化ビニル単量体としてアクリロニトリル19部、共役ジエン単量体として1,3-ブタジエン31部、芳香族単量体としてスチレン15部、および分子量調整剤としてt-ドデシルメルカプタン0.31部を加え、活性剤として硫酸第一鉄0.015部および重合開始剤としてパラメンタンハイドロパーオキサイド0.05部の存在下に、温度10℃で乳化重合を開始した。重合転化率が85%になった時点で、単量体100部あたり0.2部のヒドロキシルアミン硫酸塩を添加して重合を停止させた。
重合停止に続いて、加温し、減圧下、温度70℃で、水蒸気蒸留により、未反応単量体を回収した後、老化防止剤としてアルキル化フェノールを2部添加し、重合体(共重合体ラテックス)を得た。
<<水素化反応>>
得られた重合体の水分散液400mL(全固形分:48g)を、撹拌機付きの1リットルオートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流して重合体溶液中の溶存酸素を除去した。その後、水素化反応触媒として、酢酸パラジウム50mgを、Pdに対して4倍モルの硝酸を添加した水180mLに溶解して、添加した。系内を水素ガスで2回置換した後、圧力3MPaまで水素ガスで加圧した状態でオートクレーブの内容物を温度50℃に加温し、6時間水素化反応させた。
内容物を常温に戻し、系内を窒素雰囲気とした後、エバポレーターを用いて、固形分濃度が40%となるまで濃縮して、重合体(水素化ニトリルゴム)を得た。
得られた重合体(水素化ニトリルゴム)100gを、メタノール1Lで凝固させた後、温度60℃で12時間真空乾燥した。得られた乾燥重合体をH-NMRで分析した。得られた分析値に基づいて、重合体に含まれる各単量体単位および構造単位の含有割合(%)を算出した。結果を表2に示す。
続いて、得られた重合体の水分散液に、ジイソブチルケトンを適量添加して混合物を得た。その後、温度80℃にて減圧蒸留を実施して混合物から水および過剰なジイソブチルケトンを除去し、バインダー前駆体組成物(固形分濃度:8%)を得た。
さらに、バインダー前駆体組成物に、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物として第1の合成ゼオライト(新越化成工業株式会社製、製品名「モレキュラーシーブス4A、形状:粉末、粒径:325mesh」、温度25℃の水に対する溶解性:0.1%未満)5部を加え、24時間後に10μmフィルターでろ過することでバインダー組成物を得た。
(実施例14)
重合体として、重合体Aおよび重合体Bの2種類の重合体(重合体Aと重合体Bの質量比は1:1)を用いた以外は実施例1と同様にして正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表3に示す。なお、重合体Aおよび重合体Bは以下のようにして調製した。
<重合体Aのジイソブチルケトン分散液の調製>
撹拌機を備えたセプタム付き1Lフラスコにイオン交換水100部を加え、気相部を窒素ガスで置換し、温度70℃に昇温した後、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)0.5部をイオン交換水20.0部に溶解させた溶液を加えた。
一方、別の容器で、イオン交換水40部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、そしてカルボニル基含有単量体としてn-ブチルアクリレート50部およびエチルアクリレート20部、並びに、シアン化ビニル単量体としてアクリロニトリル10部、および芳香族ビニル単量体としてスチレン20部を混合して、単量体組成物を得た。
得られた単量体組成物を、2時間かけて上述したセプタム付き1Lフラスコに連続的に添加して、重合を行った。なお、単量体組成物の添加中は、反応温度を70℃とした。単量体組成物の添加後は、温度80℃で3時間撹拌し、その後重合を終了した。
そして、得られた重合体Aの水分散液に、有機溶媒としてのジイソブチルケトンを適量添加して混合物を得た。
その後、温度80℃にて減圧蒸留を実施して混合物から水および過剰なジイソブチルケトンを除去し、重合体Aのジイソブチルケトン分散液(固形分濃度:8%)を得た。
<重合体Bのジイソブチルケトン分散液の調製>
撹拌機を備えたセプタム付き1Lフラスコにイオン交換水100部を加え、気相部を窒素ガスで置換し、温度70℃に昇温した後、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム(APS)0.5部をイオン交換水20.0部に溶解させた溶液を加えた。
一方、別の容器で、イオン交換水40部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、そして、カルボニル基含有単量体としてn-ブチルアクリレート54.5部およびエチルアクリレート25部、シアン化ビニル単量体としてアクリロニトリル10部、芳香族単量体としてスチレン10部、その他の単量体としてアリルメタクリレート0.5部を混合して、単量体組成物を得た。
得られた単量体組成物を、2時間かけて上述したセプタム付き1Lフラスコに連続的に添加して、重合を行った。なお、単量体組成物の添加中は、反応温度を70℃とした。単量体組成物の添加後は、温度80℃で3時間撹拌し、その後重合を終了した。
そして、得られた重合体Bの水分散液に、有機溶媒としてのジイソブチルケトンを適量添加して混合物を得た。
その後、温度80℃にて減圧蒸留を実施して混合物から水および過剰なジイソブチルケトンを除去し、重合体Bのジイソブチルケトン分散液(固形分濃度:8%)を得た。
<重合体Aおよび重合体Bを含むバインダー組成物の調製>
上述のようにして得られた重合体Aのジイソブチルケトン分散液および重合体Bのジイソブチルケトン溶液を、それらの量比(固形分相当量)が重合体A:重合体B=1:1となるように混合して、バインダー組成物を調製した。
(実施例15)
バインダー組成物の調製に際し、カルボニル基含有単量体としてn-ブチルアクリレート52部およびエチルアクリレート42部、カルボキシ基含有単量体としてメタクリル酸3部、ヒドロキシ基含有単量体としてアクリル酸2-ヒドロキシエチル3部を用いた以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例18)
バインダー組成物の調製に際し、カルボニル基含有単量体としてn-ブチルアクリレート65部およびエチルアクリレート25部、シアン化ビニル単量体としてアクリロニトリル10部を用いた以外は、実施例16と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例1)
バインダー組成物の調製に際し、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含む化合物を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例2)
バインダー組成物の調製に際し、バインダー組成物中の周期表第13族および/または第14族に属する元素の含有量が10000質量ppmとなるように調整した以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例3)
重合体の調製に際し、水酸化ナトリウムを用いることで、バインダー組成物中に周期表第13族および/または第14族に属する元素に替えてNaが含まれるように調整した以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例4)
重合体の調製に際し、水酸化ナトリウムおよび水酸化カルシウムを用いることで、バインダー組成物中に周期表第13族および/または第14族に属する元素に替えてNaおよびCaが含まれるように調整した以外は、実施例1と同様にしてバインダー組成物、正極合材層用スラリー組成物、負極合材層用スラリー組成物、固体電解質層用スラリー組成物、および全固体二次電池を作製し、各種評価を行った。結果を表4に示す。
なお、以下に示す表1~3中、
「BA」は、n-ブチルアクリレート単位を示し、
「PEA」は、フェノキシエチルアクリレート単位を示し、
「EA」は、エチルアクリレート単位を示し、
「MAA」は、メタクリル酸単位を示し、
「B-HEA」は、アクリル酸2-ヒドロキシエチル単位を示し、
「AN」はアクリロニトリル単位を示し、
「ST」はスチレン単位を示し、
「H-BD」は1,3-ブタジエン水素化物単位を示し、
「AMA」は、アリルメタクリレート単位を示し、
「DIK」は、ジイソブチルケトンを示し、
「HB」は、酪酸ブチルを示し、
「MES」は、メシチレンを示す。
Figure 0007652082000001
Figure 0007652082000002
Figure 0007652082000003
Figure 0007652082000004
表1~3より、重合体と、有機溶媒と、温度25℃の水に対する溶解性が10質量%以下であり、かつ、周期表第13族および/または第14族に属する元素(ただし、炭素およびゲルマニウムを除く。)を含む化合物、とを含むバインダー組成物であって、当該バインダー組成物中の上記元素の含有量が、上記重合体に対して5質量ppm以上5000質量ppm以下であるバインダー組成物(実施例1~18)を用いることで、耐水性に優れると共に、優れた電池特性を有する全固体二次電池を製造できることがわかる。
これに対し、上記化合物を含まないバインダー組成物(比較例1)、バインダー組成物中の重合体に対する周期表第13族および/または第14族に属する元素の含有量が上記範囲外であるバインダー組成物(比較例2)、周期表第13族および/または第14族に属する元素を含まないバインダー組成物(比較例3,4)を用いると、得られる全固体二次電池は、各実施例で得られた全固体二次電池と比較して、耐水性および電池特性が劣っていることがわかる。
本発明によれば、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用バインダー組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、二次電池の耐水性を向上させることができると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用スラリー組成物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、耐水性に優れた固体電解質含有層、並びに、電池特性に優れた全固体二次電池およびその製造方法を提供することができる。

Claims (10)

  1. 重合体と、
    有機溶媒と、
    有機物または無機物からなる化合物と、を含む二次電池用バインダー組成物であって、
    前記化合物は、温度25℃の水に対する溶解性が10質量%以下であり、かつ、前記化合物は、周期表第13族および/または第14族に属する元素(ただし、炭素およびゲルマニウムを除く。)を含み、
    前記化合物が、ゼオライト、シリカゲルおよびポリジメチルシロキサンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記二次電池用バインダー組成物中の前記元素の含有量が、前記重合体に対して5質量ppm以上5000質量ppm以下である、二次電池用バインダー組成物。
  2. 前記重合体が、カルボニル基、エーテル基、カルボキシ基、およびヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する、請求項1に記載の二次電池用バインダー組成物。
  3. 前記重合体が、シアン化ビニル単量体単位を2質量%以上35質量%以下の割合で含む、請求項1または2に記載の二次電池用バインダー組成物。
  4. 前記重合体が、芳香族単量体単位を5質量%以上40質量%以下の割合で含む、請求項1~のいずれか1項に記載の二次電池用バインダー組成物。
  5. 前記重合体が、共役ジエン単量体単位および/またはアルキレン構造単位を20質量%以上60質量%以下の割合で含む、請求項1~のいずれか1項に記載の二次電池用バインダー組成物。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載の二次電池用バインダー組成物を含む、二次電池用スラリー組成物。
  7. 固体電解質を含む、請求項に記載の二次電池用スラリー組成物。
  8. 請求項に記載の二次電池用スラリー組成物を用いてなる、固体電解質含有層。
  9. 請求項に記載の固体電解質含有層を備える、全固体二次電池。
  10. 請求項に記載の固体電解質含有層を300MPa未満の圧力でプレスする工程を含む、全固体二次電池の製造方法。
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