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JP7655549B2 - 骨様組織及びその製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、骨様組織及びその製造方法に関し、特に人工材料を含まない骨様組織及びその製造方法に関する。
従来から、重篤な骨折や、歯周炎又は腫瘍を原因とした骨摘出術後における広範囲に及ぶ骨欠損を示す患者に対する骨再生療法として、オトガイや腸骨から骨を分離して移植する自家骨移植が行われている。これは、骨欠損部に骨細胞及び骨基質を供給するため、理想的な骨再生療法といえるが、その採取量には限りがあり、実際には骨組織が不足して治療困難となるケースが多い。
一方、多分化能及び自己増殖能を有する間葉系幹細胞(MSCs:Mesenchymal stem cell)は、組織再生療法に適した細胞として考えられており、近年、MSCsと人工足場材料とを混和することで、自家骨に相当する立体的骨様組織を作製及び供給する試みが盛んになされている。例えば、ハイドロキシアパタイト、ポリ乳酸、キトサン、アテロコラーゲンゲル、ヒアルロン酸ゲルなどとMSCsを混和し、これを二次元培養の実験系で確立されている骨分化誘導培地(デキサメタゾン、アスコルビン酸及びβグリセロフォスフェート添加培地)で培養することで、骨再生能の高い立体的移植体が得られることが知られている(非特許文献1を参照。)。
しかしながら、上記のいずれの方法においても、骨に類似する立体的骨様組織の創生には至らず、自家骨移植に相当するほどの骨再生効果は現在のところ得られていない。その原因として、人工足場材料は細胞が産生する骨基質となることはなく、生体にとっては異物でしかないことが考えられる。また、人工材料を足場とする限り、MSCsをどれほど骨分化培地で培養しても、骨基質内に内包され、ネットワーク形成をする骨細胞にまで誘導することは不可能であるためといえる。すなわち、より効果的な骨再生療法として応用可能な、自家骨に相当する立体的骨様組織を作製するためには、人工材料を用いることなく、MSCsを3次元的に培養し、骨基質を産生させ、それに内包される骨細胞にまで誘導する新規の培養方法が必要となる。
これまでに実際に、人工材料を用いないMSCsの代表的な3次元培養法として、細胞間接着を主とするMSCsスフェロイドや、MSCsが産生した細胞外基質(ECM:extracellular matrix)から構築される立体的細胞集塊(C-MSCs)を骨分化培地(デキサメタゾン(100nM)+βグリセロフォスフェート(10mM)+アスコルビン酸(50μg/ml))で培養することにより、立体的骨様組織を作製する試みがなされてきた。しかし、MSCsスフェロイド、C-MSCsのいずれにも、ミネラルの沈着は誘導できるが、適切な骨基質形成と骨細胞の誘導は達成できなかった(非特許文献2及び3を参照。)。
Amini AR et al., Crit Rev Biomed Eng, 2012, 40(5), 363-408. Langenbach F, Clin Oral Invest, 2013, 17(1), 9-17. Kittaka M et al., Cytotherapy, 2015, 17(7), 860-873.
上述したように、人工足場材料とMSCsとの併用は、骨再生療法の分野において多くの期待を集めているが、骨に相当する立体骨様組織の作製技術は未だ開発されていない。効果的な骨再生療法に適用可能な立体的骨様組織を作製及び供給するためには、人工足場材料を用いずに、MSCsを3次元的に培養しながら、骨組織形成まで達成させる必要がある。
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、人工足場材料を用いずに、MSCsを3次元的に培養しながら、骨組織形成までできるようにし、骨再生療法に有効な立体的骨様組織を得ることにある。
前記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、立体的な間葉系幹細胞集塊をゲルに包埋した状態で、骨分化誘導培地を用いて培養することにより、人工足場材料を用いること無く、ミネラルが沈着した骨基質と該骨基質に内包された骨細胞からなる立体的骨様組織を作製できることを見出して本発明を完成した。
具体的に、本発明に係る骨様組織の製造方法は、立体的な間葉系幹細胞集塊をゲルに包埋した状態で、骨分化誘導培地を用いて培養するステップを備え、人工足場材料を用いないことを特徴とする。
本発明に係る骨様組織の製造方法によると、ミネラルが沈着した骨基質と該骨基質に内包された骨細胞とを含み、人工足場材料といった異物を含まない骨欠損部への移植に適した骨様組織を簡便に得ることができる。
本発明に係る骨様組織の製造方法は、間葉系幹細胞を培養容器で接着培養して細胞シートを得るステップと、前記細胞シートを前記培養容器から剥離するステップと、前記剥離された細胞シートを浮遊培養して立体的な間葉系幹細胞集塊を得るステップとをさらに備えていることが好ましい。
本発明に係る骨様組織の製造方法において、前記ゲルは、多糖を主成分とするゲルであることが好ましい。
また、本発明に係る骨様組織の製造方法において、前記ゲルは、前記包埋された細胞から生じた細胞外基質(細胞外マトリクス)成分以外の細胞外基質(細胞外マトリクス)成分を含まないことが好ましい。
また、本発明に係る骨様組織の製造方法において、前記骨分化誘導培地は、アスコルビン酸及びβグリセロフォスフェートを含むことが好ましい。
また、本発明に係る骨様組織の製造方法において、前記骨分化誘導培地は、デキサメタゾンを含むことが好ましい。
一方、本発明に係る骨様組織は、ミネラルが沈着した骨基質と該骨基質に内包された骨細胞とを含み、人工足場材料を含まず、前記骨細胞はネットワーク形成をしていることを特徴とする。また、本発明に係る骨様組織は、血管を含まないことが好ましい。
本発明に係る骨様組織によると、骨基質と該骨基質に内包された骨細胞とを含みながら、異物である人工足場材料を含まないため、骨欠損部への移植に適し、骨再生療法に有効に用いられ得る。
また、本発明に係る医薬組成物は、上記本発明に係る骨様組織を含む骨再生のための医薬組成物であることを特徴とする。
本発明に係る医薬組成物によると、上記のような骨様組織を含むため、骨欠損部への移植に適し、骨再生療法に有効に用いられ得る。
本発明に係る骨様組織及びその製造方法によると、ミネラルが沈着した骨基質と該骨基質に内包された骨細胞とを含む骨再生療法に有効な立体的骨様組織を得ることができる。
C-MSCsをゲルに包埋して濃度至適化骨分化誘導培地で培養して得られた立体骨様組織のパラフィン包埋切片をアリザリンレッド染色又はHE染色した結果を示す写真である。 C-MSCsを従来の骨分化誘導培地を用いて浮遊培養して得られた細胞集塊のパラフィン包埋切片をアリザリンレッド染色又はHE染色した結果を示す写真である。 C-MSCsを濃度至適化骨分化誘導培を用いて浮遊培養して得られた細胞集塊のパラフィン包埋切片をアリザリンレッド染色又はHE染色した結果を示す写真である。 C-MSCsをゲルに包埋して従来の骨分化誘導培地で培養して得られた立体骨様組織のパラフィン包埋切片をアリザリンレッド染色又はHE染色した結果を示す写真である。 C-MSCsをゲルに包埋して濃度至適化骨分化誘導培地で培養して得られた立体骨様組織に対するマイクロCT撮影により得られた写真である。 (a)~(c)はC-MSCsをゲルに包埋して濃度至適化骨分化誘導培地で培養して得られた立体骨様組織のパラフィン包埋切片に対して、骨基質タンパク質の免疫染色を行った結果を示す写真であり、(a)はCOL1を染色した結果を示し、(b)はOPNを染色した結果を示し、(c)はOCNを染色した結果を示す。 C-MSCsをゲルに包埋して濃度至適化骨分化誘導培地で培養して得られた立体骨様組織のパラフィン包埋切片に対してF-actinの免疫染色を行った結果を示す写真である。 (a)~(c)はSCIDマウスに立体骨様組織を皮下移植した4週間後の移植部の状態を示す写真であり、(a)はマウスの皮下移植部においてマイクロCT撮影をした結果を示す写真であり、(b)はマウスの皮下移植部を立体骨様組織ごと取り出し、脱灰後に作製された切片をHE染色した結果を示す写真であり、(c)は当該切片をAZAN染色した結果を示す写真である。 (a)~(c)はSCIDマウスに立体骨様組織を皮下移植した8週間後の移植部の状態を示す写真であり、(a)はマウスの皮下移植部においてマイクロCT撮影をした結果を示す写真であり、(b)はマウスの皮下移植部を立体骨様組織ごと取り出し、脱灰後に作製された切片をHE染色した結果を示す写真であり、(c)は当該切片をAZAN染色した結果を示す写真である。 ヌードラットの頭蓋冠の骨欠損部に立体骨様組織を移植した状態を示す写真である。 SCIDマウスの頭蓋冠骨欠損部に立体骨様組織を移植しなかった場合における欠損作製から4週間後の結果を示す当該骨欠損部を示すHE染色写真である。 SCIDマウスの頭蓋冠骨欠損部に立体骨様組織を移植して4週間後の結果を示す当該骨欠損部を示すHE染色写真である。 (a)はヌードラットの頭蓋冠骨欠損部に立体骨様組織を移植して8週間後の結果を示す当該骨欠損部を示すHE染色写真であり、(b)及び(c)は、それぞれ(a)に示す四角で囲む領域の拡大図である。 (a)はヌードラットの頭蓋冠骨欠損部に立体骨様組織を移植して8週間後の結果を示す当該骨欠損部を示すAZAN染色写真であり、(b)及び(c)は、それぞれ(a)に示す四角で囲む領域の拡大図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明に係る骨様組織は、ミネラルが沈着した骨基質と該骨基質に内包された骨細胞とを含み、人工足場材料を含まず、骨細胞はネットワーク形成をしていることを特徴とするものである。また、好ましくは本発明に係る骨様組織では、血管を含まない。
本発明の一実施形態に係る骨様組織において、本実施形態に係る骨様組織において、骨基質とは、骨形成能を有する細胞によって産生されて細胞外に分泌された物質が蓄積したものであり、以下のものに限定されないが、リン酸カルシウム等であって、オステオカルシンやオステオポンチン、オステオネクチン、コラーゲン等のタンパク質を含むものである。また、骨細胞とは、骨に最も多く存在する細胞であって、骨基質に内包されて細胞同士が互いにネットワークを形成して骨基質と共に骨を構成する細胞である。ここで、ネットワークの形成とは、骨細胞同士が立体的に互いに繋がった状態を形成していることをいう。特に、骨細胞にF-actin等の細胞骨格に関わるタンパク質が発現しており、細胞同士が突起を延ばして互いに接続して立体的なネットワークを形成した状態をいう。
本実施形態において、ミネラルとは、具体的にカルシウム、マグネシウム及びリンを含む。本実施形態におけるミネラルの沈着とは、骨基質に少なくともカルシウムが沈着している状態を意味し、この場合、付加的にマグネシウム又はリンが沈着していてもよい。ミネラルの沈着の有無の確認には、例えばカルシウムに対して結合する色素であるアリザリンレッドを用いて、組織切片を染色する方法が利用できるが、当然にこれに限られず、骨基質におけるミネラルの存在を確認できる方法であれば他の方法を利用することもできる。
本実施形態に係る骨様組織において、人工足場材料とは、従来から3次元的細胞培養に用いられる人工的な足場材料であり、例えばハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムアパタイト、ポリ乳酸、キトサン、アテロコラーゲンゲル、ヒアルロン酸ゲル等が挙げられるがこれらに限られない。
本実施形態に係る骨様組織は、上記人工足場材料を含まず、すなわち骨組織にとっての異物を含まないため、骨基質内で骨細胞が良好にネットワーク形成されており、骨再生療法のための移植材料として極めて優れている。また、本実施形態に係る骨様組織において、骨細胞は人工的に培養された間葉系幹細胞由来であることが好ましい。また、本実施形態に係る骨様組織は、本発明に係る骨様組織の製造方法によって、製造されたものであることが好ましい。また、本実施形態に係る骨様組織は、本発明に係る骨様組織の製造方法等による生体外の培養系で作製されることが好ましく、従ってその組織中に血管を含まない。
本発明に係る骨様組織の製造方法は、人工足場材料を用いずに、立体的な間葉系幹細胞集塊をゲルに包埋した状態で骨分化誘導培地を用いて培養することによって、人工足場材料を含まない立体的骨様組織を作製する方法である。
本発明の一実施形態に係る骨様組織の製造方法において、人工足場材料とは、上記の通り、従来から3次元的細胞培養に用いられる人工的な足場材料であり、例えばハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムアパタイト、ポリ乳酸、キトサン、アテロコラーゲンゲル、ヒアルロン酸ゲル等が挙げられるがこれらに限られない。また、本実施形態に係る骨様組織の製造方法において、間葉系幹細胞は、以下に限定されないが、例えばヒト等の動物の髄、脂肪組織、胎盤組織、臍帯組織、歯髄等の組織から採取されたもの、並びに人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来及び胚性幹細胞(ES細胞)由来の間葉系幹細胞も含む。
また、本実施形態に係る骨様組織の製造方法において、立体的な間葉系幹細胞集塊とは、複数の間葉系幹細胞で構成された細胞集塊であり、2次元的な平たいシート状ではなく、3次元的な粒状等の形状の細胞集塊である。通常、間葉系幹細胞を接着培養すると、二次元的に増殖し、すなわちシート状に増殖して細胞シートが形成されるが、本実施形態では、間葉系幹細胞をゲルに包埋して培養する前に、培養容器で接着培養して増殖させてシート状(細胞シート)にし、当該細胞シートを培養容器から剥離した後に、細胞シートを浮遊培養して立体的な間葉系幹細胞集塊を得て、当該細胞集塊をゲルに包埋した状態で骨分化誘導培地を用いて培養することが好ましい。この細胞集塊を得るまでの増殖培地としては、間葉系幹細胞を増殖できて、アスコルビン酸等の細胞外基質の産生を誘導する因子を含む培地であれば特に限定はされないが、例えば、上記因子の他にFBSや所定の抗生物質を含むHigh glucose DMEM(Sigma社製)を用いることができ、この他にも、例えば異種動物タンパク不含のPrime-XV MSC expansion XSFM(Irvine社製)を用いることができる。
本実施形態に係る骨様組織の製造方法において、ゲルは、その内側に立体的な間葉系幹細胞集塊を包埋して培養ができるものであればその構成成分は特に限定されないが、多糖を主成分とするゲルであることが好ましく、例えばVitrogel(The Well Bioscience社製)を用いることができる。また、ゲルの硬さは適宜調整可能である。Vitrogelの場合、ゲル固形化させる際にその濃度を薄めることで硬さを調整できる。例えばVitrogel:PBS=1:1で作製したものは硬く、1:5で作製すると柔らかく、半固形の状態になる。立体骨様組織の誘導にはVitrogel:PBS=1:3とすることが好ましい。また、多糖を主成分とするゲル以外に、コラーゲンやラミニンなどの細胞外基質(細胞外マトリクス)を主成分とするゲルも使用可能ではあるが、細胞接着因子を多く含むため、細胞集塊から細胞の遊出が生じ、得られる立体骨様組織が小さくなるため、用いるゲルは細胞外マトリクス成分を含まないゲルであることが好ましい。従って、培養過程においても、当該ゲルには包埋された細胞から生じた細胞外マトリクス成分以外の細胞外マトリクス成分は含まれないことが好ましい。
本実施形態に係る骨様組織の製造方法において、骨分化誘導培地は、周知の種々の骨分化誘導培地を用いることができるが、骨分化誘導培地はアスコルビン酸及びβグリセロフォスフェートを含むことが好ましく、また、デキサメタゾンを含むことが好ましい。デキサメタゾンの代わりにBMP2やWnt3aのリコンビナントタンパク質を含んでいてもよい。また、異種動物タンパク不含のMSCgo Osteogenic differentiation medium (Biological Industries社製)も使用できる。
本発明に係る医薬組成物は、上記本発明に係る骨様組織を含む骨再生の用途で用いられる医薬組成物である。
本発明の一実施形態に係る医薬組成物は、骨再生を目的として用いられ、適用可能な骨は限定されず如何なる骨にも適用可能である。以下に特に限定されないが、難治骨折や歯周炎、又は骨摘出術後の広範囲骨欠損症例に対する骨再生療法等に好適に適用可能である。
本実施形態に係る医薬組成物は、上記本発明に係る骨様組織の他に医薬的に許容可能な種々の添加剤を含んでいても構わない。本実施形態に係る医薬組成物は、その形態については特に限定されないが、種々の形状の骨欠損部に直接に移植可能となるように粉状又は粒状であることが好ましい。
以下に、本発明に係る骨様組織及びその製造方法について詳細に説明するための実施例を示す。
[実施例1:間葉系幹細胞の培養及び立体骨様組織の作製]
(C-MSCsの作製)
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSCs、理化学研究所より入手)を96wellプレート(Corning社製)に5.0×104cells/wellの細胞密度で播種し、10%FBS、100U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含むHigh glucose DMEM(Sigma社製)からなる増殖培地(GM培地)に50μg/mlのアスコルビン酸(Sigma社製)を加えた培養液で4日間培養し、十分なECMを産生させた。その後、96wellプレートに接着し、シート状となった細胞集団(細胞シート)を鈍的に剥離した。具体的には、細い棒体をプレートに接着した細胞シートの縁に当てながらウェルの内壁に沿って一周移動させることによって、細胞シートをプレートから隔離することができる。そうすることで、ECMとMSCsとから構成された細胞シートを浮遊させた。この得られたMSCs/ECM複合体をultra-low bindingプレート(Iwaki社製)に移し、上記GM培地に100nMのデキサメタゾン、10mMのβグリセロフォスフェート及び50μg/mlのアスコルビン酸を加えた骨分化誘導培地で3日間培養した。その結果、直径600μm~800μm程度の球形の細胞集塊であるC-MSCsが得られた。
(C-MSCsからの立体骨様組織誘導)
上記のようにして得られたC-MSCsを、多糖を主成分とするハイドロゲル(Vitrogel 3D-RGD(500μl/48well):The Well Bioscience社製)に包埋し、48wellプレートにおいて上記GM培地に10nMのデキサメタゾン、5mMのβグリセロフォスフェート及び50μg/mlのアスコルビン酸を加えた骨分化誘導培地(濃度至適化骨分化誘導培地)を250μl加えて14日間培養した(実施例)。具体的には、ウェル内にC-MSCsを内包する上記ゲルを入れた後に、該ゲルの上に上記培地を添加した。その結果、直径が約1mmの略球形の粒体である立体骨様組織が得られた。一方、比較例として、C-MSCsを上記のようなゲルで包埋すること無く、浮遊状態のままで骨分化誘導培地(比較例1)又は濃度至適化骨分化誘導培地(比較例2)を用いて14日間培養した。その結果、比較例1では球形の石灰化物が得られ、比較例2では球形の細胞集塊から大きな変化が見られなかった。また、比較例3として、C-MSCsを上記の通りゲル包埋し、従来の骨分化誘導培地にて培養した。各実施例及び比較例で得られた立体骨様組織又は細胞集塊の組織学的評価について以下に説明する。
(立体骨様組織の組織学的評価)
上記各培養によって得られた実施例及び比較例の立体骨様組織又は細胞集塊の石灰化物沈着程度を観察するために、それらを1%ホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋後、5μmの切片を作製しアリザリンレッド染色を行った(比較例3を除く)。また、それらの組織学的構造を観察するために、得られたサンプルを10%エチレンジアミン四酢酸によって脱灰処理後に、5μmの切片を作製しHE染色を行った。その結果を図1~4に示す。また、上記実施例に係る立体骨様組織に対してCT撮影を行った結果を図5に示す。さらに、上記実施例に係る立体骨様組織の切片に対して、常法を用いて、骨基質タンパク質のCOL1、OPN及びOCNの免疫染色並びに細胞骨格のF-actinの免疫染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果をそれぞれ図6(a)~(c)及び図7に示す。
図1に示すように、C-MSCsをゲルに包埋して濃度至適化骨分化誘導培地で培養した実施例では、豊富な骨基質と、アリザリンレッドに染色された骨基質に沈着したミネラルが観察され、HE染色像ではHEに濃染する骨様基質とこれを取り囲む骨芽細胞用細胞、さらにその内部には骨細胞様細胞が認められた。すなわち、実施例では、骨細胞様細胞を含む骨基質様組織からなる細胞集塊、すなわち立体骨様組織が得られたことが確認された。これに対して、比較例1では図2に示すように、アリザリンレッドに染色されるミネラルの沈着が観察されたが、脱灰切片にして組織学的に観察すると、骨基質構造は認められず、細胞の多くは核の収縮によって示される細胞死の状態であった。細胞死の原因は、骨分化誘導に用いられる添加因子による過度な石灰化効果であると考えられる。一方、デキサメタゾン及びβグリセロフォスフェートの濃度が低い濃度至適化骨分化誘導培地を用いた比較例2では図3に示すように、細胞死は減少したものの、ECMへのミネラルの沈着は得られなかった。
以上から、C-MSCsをゲルに包埋して骨分化誘導に用いられる添加因子の濃度を低減した濃度至適化骨分化誘導培地で培養した実施例では、良好な立体骨様組織が得られたが、ゲル包埋培養を行わずに浮遊培養を行った比較例1及び2では、立体骨様組織が得られないことが明らかとなった。すなわち、良好な立体骨様組織を得るためには、C-MSCsをゲルに包埋して培養することが必要であることが示唆される。
また、ゲル包埋培養を行う一方、従来の骨分化誘導培地を用いた比較例3を脱灰切片にして組織学的に観察すると、図4に示すように、実施例と比較して多くの細胞が核の収縮によって示される細胞死の状態であり、骨基質量も少ない状態であった。従って、良好な立体骨様組織を得るには、C-MSCsをゲル包埋培養するのに加えて、骨分化誘導に用いられる添加因子濃度を低減させて至適化することが好ましいと考えられる。
また、本実施例に係る立体骨様組織は、図5に示すように、全体的にヒトの骨組織と同様にX線不透過性を示した。さらに、本実施例に係る立体骨様組織において、図6(a)~(c)に示すように、図1に示すHEに濃染する部分に一致して、COL1、OPN、OCNの発現が認められた(図6(a)~(c)における立体骨様組織の内側の白色の部分)。さらに、図7に示すように、実施例に係る立体骨様組織において、F-actinが細胞に全体的に発現しており、各々の細胞が突起を出しながらネットワーク形成をしており、骨細胞としての特徴を示していた。以上の結果から、本実施例において、ヒトの骨組織と同等の特徴を有する立体骨様組織が得られたと考えられる。
[実施例2:立体骨様組織の自律的な骨形成能の評価]
次に、上記のようにして得られた立体骨様組織の自律的な骨形成能の評価を行った。その方法及び結果について以下に示す。
まず、免疫不全動物であるSCIDマウスの皮膚を切開した。その後、人工足場材料を用いることなく、16個の上記本実施例に係る立体骨様組織を上記SCIDマウスに対して皮下移植した。マイクロCTにて皮下での硬組織の存在有無を確認したところ、図8(a)に示すように、移植4週後にX線不透過性を示す立体骨様組織が認められ(図中の白丸部分)、図9(a)に示すように、移植8週後にはその不透過度が向上していた(図中の白丸部分)。
次に、移植された立体骨様組織を皮膚ごと取り出して脱灰した後、HE染色及びAZAN染色を施した。なお、AZAN染色では幼弱骨は青く染まり、成熟骨は赤く染まる。図8(b)に示すように移植4週後のHE染色では骨様組織が観察されたが、図8(c)に示すように、それはAZAN染色に青く染まる幼弱な骨基質であることが示された。一方、移植8週後には、HE染色による濃染(図9(b))と共に、AZAN染色に赤く染まる組織が認められた(図9(c))ことから、成熟した骨様組織となっていることが確認できた。
以上の結果から、本実施例に係る立体骨様組織は、自律的に骨形成する能力を有することが示された。
[実施例3:立体骨様組織の免疫不全マウス・ラット頭蓋冠骨欠損への移植]
次に、上記のようにして得られた立体骨様組織を骨欠損部に移植することによる骨再生効果を検討するために、免疫不全SCIDマウス及びヌードラット頭蓋冠欠損モデルを用いてその効果を評価した。その方法及び結果を以下に説明する。
(方法)
まず、SCIDマウスの頭蓋冠にラウンドバーを用いて直径1.6mmの骨欠損を作製した。一方、ヌードラットの頭蓋冠にトレフィンバーを用いて直径8mmの骨欠損を作製した。その後、SCIDマウスの骨欠損部には1個、ヌードラットに骨欠損部には64個の粒体としての立体骨様組織を、人工足場材料などを用いることなく直接移植した(図10を参照)。なお、SCIDマウスの骨欠損部に立体骨様組織を移植しない場合を比較例とした。SCIDマウスでは移植の4週間後、ヌードラットでは移植の8週間後に、動物を屠殺し、頭蓋冠を取り出して、上記と同様に脱灰後に連続切片を作製してHE染色を行い骨組織の観察を行った。また、移植の8週間後のヌードラットのサンプルについては、AZAN染色も行って観察した。
(結果)
SCIDマウスモデルにおいて、図11に示すように立体骨様組織を移植しなかった比較例では骨の再生は起こらないのに対し、図12に示すように立体骨様組織を移植した実施例では骨再生が観察された。また、ヌードラットモデルにおいても図13に示すように、立体骨様組織の移植により、HE染色では欠損両端をつなぐ骨様組織で満たされていることが観察された。また図14に示すように、AZAN染色においてもほとんどの部分が赤く染まっており、すなわちこれらの骨様組織が成熟骨からなることが確認された。従って、骨欠損部における立体骨様組織の移植により骨再生が起こることが確認された。
上記実施例1~3の結果から、間葉系幹細胞をゲルに包埋して所定の骨誘導培地で培養することにより、人工足場材料が無くても、内部には骨細胞様細胞を含む骨基質様組織からなる細胞集塊、すなわち立体骨様組織が得られることが明らかとなった。また、得られた立体骨様組織を骨欠損部に移植することにより有効に骨再生を誘導することが明らかとなった。
以上の通り、本発明に係る骨様組織の製造方法によると、骨基質と該骨基質に生存しながら内包されて互いにネットワーク形成をした骨細胞からなる立体骨様組織が得られる。また、そのような方法で得られた本発明に係る骨様組織は、優れた骨再生効果を示し、また、人工足場材料を含まず、すなわち異物材料を含まないため、骨再生療法の移植材料として好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. ミネラルが沈着した骨基質と該骨基質に内包された骨細胞とを含み、人工足場材料を含まず、
    前記骨細胞はネットワーク形成をしていることを特徴とする人工の骨様組織であって、
    前記骨様組織はゲルに包埋された状態で浮遊培養された略球形の粒体の組織であり、
    前記骨細胞は間葉系幹細胞から分化誘導された骨細胞であり、
    前記骨基質はリン酸カルシウムであって、オステオカルシン、オステオポンチン、オステオネクチンおよびコラーゲンを含むものであり
    前記人工足場材料はハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムアパタイト、ポリ乳酸、キトサン、アテロコラーゲンゲルまたはヒアルロン酸ゲルである、人工の骨様組織。
  2. 血管を含まないことを特徴とする請求項1に記載の骨様組織。
  3. 請求項1又は2に記載の骨様組織を含む骨再生のための医薬組成物。
  4. 請求項1又は2に記載の骨様組織を製造する方法であって、
    立体的な間葉系幹細胞集塊をゲルに包埋した状態で、骨分化誘導培地を用いて培養するステップを備え、
    人工足場材料を用いないことを特徴とする骨様組織の製造方法であって、
    前記骨分化誘導培地は、100nMよりも低減した濃度のデキサメタゾン、10mMよりも低減した濃度のβグリセロフォスフェート、およびアスコルビン酸を、FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むHigh glucose DMEMに添加したものであり、
    前記人工足場材料はハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムアパタイト、ポリ乳酸、キトサン、アテロコラーゲンゲルまたはヒアルロン酸ゲルであり、
    前記ゲルは多糖を主成分とするゲルである、方法。
  5. 間葉系幹細胞を培養容器で接着培養して細胞シートを得るステップと、
    前記細胞シートを前記培養容器から剥離するステップと、
    前記剥離された細胞シートを浮遊培養して立体的な間葉系幹細胞集塊を得るステップと
    をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載の骨様組織の製造方法。
  6. 前記ゲルは、前記包埋された細胞から生じた細胞外マトリクス成分以外の細胞外マトリクス成分を含まないことを特徴とする請求項4または5に記載の骨様組織の製造方法。
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