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JP7656914B2 - 遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法およびそのための装置 - Google Patents
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遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法およびそのための装置 Download PDF

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Description

本発明は、遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法およびそのための装置に関する。
近年、MoSやWSeなどの遷移金属ダイカルコゲナイド層状膜(以下、TMDCともいう)と呼ばれる分子層レベルの厚さをもつ半導体材料に注目が集まっている。
この材料は、有限なバンドギャップをもつ2次元層状半導体である。TMDCはユニットセルの厚さがわずか原子3層からなる結晶であり、本質的に極薄性と平坦性に優れている。
また、2次元結晶の面直(c軸)方向に不飽和結合(ダングリングボンド)が無い特徴的な結晶構造をもつため、格子不整合や表面再結合など、従来の半導体材料が抱える諸問題が大幅に緩和されると期待されている。
加えて、単層膜の形成だけでなく、ファンデルワールス(vdW)力を介したTMDC間のヘテロ構造にも興味がもたれていて、MOSFETのチャネルやトンネルトランジスタをはじめ、軽量かつ超低消費電力で、機械的柔軟性にも優れる電子デバイスへの応用も検討されている。
さらに、単層化されたTMDCが直接遷移型のバンド構造をもち、極めて大きな励起子効果などユニークな物性を示すことが明らかにされていることから、極薄かつ柔軟性に優れた発光・受光素子のほか、光機能デバイス材料としても極めて有望と考えられている。
以上のように、TMDCは、従来の半導体にない数多くの特徴や可能性をもつが、その成膜技術には解決すべき課題が多く、制御性、安定性、大面積化および量産性に優れた形成方法が確立されていないという問題がある。
TMDCの物性やデバイス応用の研究は2010年頃より活発化したが、初期の頃の多くの研究では天然鉱物として産出するMoSの結晶表面をスコッチテープで剥離して使用していた。2012年になって、非特許文献1に開示されているように、三酸化モリブデン(MoO)と硫黄(S)の粉末から昇華させたガス成分を用いて、MoSの単層膜を合成する手法が初めて報告された。この手法は粉末昇華法(粉末法)とも呼ばれるもので、現在でもMoSの成膜に関する多くの報告は、これと同じ、あるいはそれを改善した方法を使っている。
例えば、非特許文献2に開示されている技術では、MoとSの原料として粉末状態のMoOとSを用い、それぞれをホットウォール型の石英管内の最適な温度領域に置くことで揮発性のガス成分を昇華させて輸送し、基板上で反応させている。
この方法では、昇華の開始と終了をはじめ、原料輸送量を容易には制御できないという問題があるほか、粉末原料の減少や枯渇による昇華量の低下や、MoO粉末がボート内でSと反応して変化して昇華が妨げられるといった課題も生じる。このことから、成膜プロセスにおいて毎回MoO粉末を交換することが必要になるが、それでも再現性を得ることが難しい。また、小さなボート内に置いたMoO粉末と基板との幾何学的な配置関係はPoint-to-face供給法とも呼ばれるが、この方法は成膜領域でのガス成分の空間的濃度の均一化の実現が難しく、原理的に成膜の均一化や大面積化が容易ではないという問題がある。
非特許文献3では、Moの金属箔を成膜用の基板領域にカバーとして被せ、このMo箔の表面からMo酸化物を昇華させて基板上に供給するFace-to-face手法の一種であるMoを用いたフォイル法(Moフォイル法)が開示されている。
この方法では、Mo箔の下部空間に置いた基板上に均一にMo原料が供給されるため、MoO粉末を用いる方法と比べて、成膜の均一化が得られやすいという利点が報告されている。しかしながら、この方法では、基板上だけでなくMo箔表面にも硫黄元素Sが供給されるので、Mo箔表面でMoSが意図せず形成されたり、MoOのような揮発性の高い成分が揮発性の低いMoOのような低酸化数の物質に変化し、Mo酸化物ガスの生成効率が下がったり、その生成が不安定になったりという色々な問題が発生する。
上述のように、粉末MoO原料を使う方法では、原料ガスの安定供給、ひいては均一なMoS膜の形成が難しい。その一因として粉末原料の粒径分布の不均一性があるとして、非特許文献4には、基板上にあらかじめ微量のMoOを蒸着して粒径の均一化を図り、これを基板と対向させてMo原料に使う方法が開示されている。
また、単層MoSの単結晶ドメインサイズを大きくするためには、ごく微量の体積のMoOを使って気相中のMoOの過飽和度を大幅に下げることが極めて重要との考えから、非特許文献5には、基板上にMoOを溶かした溶液をあらかじめスピンコート法で分散・乾燥させ、これをMoOの昇華源として用いる方法が開示されている。
非特許文献4,5に開示されている方法は、前記した粉末法とMoフォイル法の中間的な複合法の位置づけの技術である。
しかしながら、これらの複合法でも、基板上に完全被覆されたMoS連続膜を形成できていない。これは、基板上にあらかじめ堆積したMoOが微量であるため、成膜時間内に全て昇華し尽くしてしまい、原料が完全に枯渇していることが原因と考えられる。
また、非特許文献4の方法に関しては、昇華用のMoOと原料Sの直接反応があり、原料ガスの安定供給の問題があるとの課題提起もなされている。
なお、TMDC成膜法に関する特許としては、特許文献1および2が開示されている。
以上述べてきたように、従来の方法には、成膜の安定性、制御性、成膜面積の大面積化およびコストといった品質および実用上の問題を抱えていた。なお、ここでは主にMoS膜についての従来技術について述べたが、上記の課題はMoS膜に限らずMoSe2や、さらにWSやWSe膜でも同様と考えられ、TMDCに共通の課題になっている。
特開平7-069782号公報 特表2019-522106号公報
Y.H.Lee et al.,Adv.Mater.,24,2320(2012) H.Nguyen et al.,Mater.Lett.,168,1(2016) J.Zheng et al.,Adv.Mater.,29,1604540(2017) S.S.Withanage.,ACS Omega,3,18943(2018) J.Lee et al.,Adv.Mater.,29,1702206(2017)
本発明では、背景技術のところで述べた従来技術の課題を解決する膜形成方法およびそのための製造装置を提供することを課題とする。すなわち、MoSなどの遷移金属ダイカルコゲナイド層状膜の成膜の安定性、制御性が高く、成膜面積の大面積化が図れ、かつコストの面でも優れる膜形成方法およびそのための製造装置を提供することを課題とする。
課題を解決するための本発明の構成を下記に示す。
(構成1)
遷移金属のブロックを酸化させて前記遷移金属の表面に前記遷移金属の酸化物層を形成することと、
前記酸化物層から前記酸化物を昇華させ、専用配管を介して、第1の不活性キャリアガスとともに前記酸化物のガスを基板に供給することと、
カルコゲン原子を含む反応性ガスを第2の不活性キャリアガスとともに前記基板に供給することと、
前記酸化物のガスおよび前記反応性ガスの前記基板への供給時に前記基板を加熱することと、
前記酸化物のガス、前記反応性ガス、前記第1の不活性キャリアガスおよび前記第2の不活性キャリアガスを排気すること、を含む遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成2)
前記遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)およびレニウム(Re)からなる群より選ばれる1である、構成1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成3)
さらに、前記酸化物層を水素化された酸化物層とすることを含む、構成1または2記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成4)
前記水素化は、前記酸化を行う際に水素ガスを添加することによってなされる、構成3記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成5)
酸素を含むガスを供給しながらモリブデンからなるブロックを第1の温度T1で加熱して前記ブロックの表面に酸化モリブデン層を形成することと、
前記酸化モリブデン層から三酸化モリブデン(MoO)を昇華させ、専用配管を介して、第1の不活性キャリアガスとともに前記MoOのガスを基板に供給することと、
カルコゲン原子を含む反応性ガスを第2の不活性キャリアガスとともに前記基板に供給することと、
前記MoOのガスおよび前記反応性ガスの前記基板への供給時に前記基板を第2の温度T2で加熱することと、
前記MoOのガス、前記反応性ガス、前記第1の不活性キャリアガスおよび前記第2の不活性キャリアガスを排気すること、を含む遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成6)
前記第1の温度T1は、500℃以上1200℃以下である、構成5記載のカルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成7)
前記第2の温度T2は、300℃以上1200℃以下である、構成5または6に記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成8)
前記専用配管は、生成した前記MoOの原料ガス成分が管内の途中で再堆積することを防止する温度で、少なくとも前記ブロックが配置されている場所から前記基板の直前の領域まで加熱されている、構成5から7の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成9)
前記カルコゲン原子は、硫黄(S)、セレン(Se)およびテルル(Te)からなる群より選ばれる1である、構成1から8の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成10)
前記第1の不活性ガスおよび前記第2の不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、ネオンガス、ヘリウムガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる1以上である、構成1から9の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成11)
前記第1の不活性ガスおよび前記第2の不活性ガスは、窒素ガスである、構成1から9の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成12)
前記基板は、アルカリ金属元素を組成として含有することを特徴とする、構成1から11の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成13)
前記アルカリ金属元素は、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)およびカリウム(K)からなる群より選ばれる1以上である、構成12記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成14)
前記基板は、アルカリ・アルミノ・シリケートガラスである、構成1から12の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
(構成15)
酸化物のガスを基板に供給する酸化物ガス供給手段と、反応性ガスを前記基板に供給する反応性ガス供給手段と、前記基板上に遷移金属カルゴゲナイドを層状膜として形成する反応室部と、排気手段とを備え、
前記酸化物ガス供給手段は、酸素を含むガスを流量を制御して供給する手段と、第1の不活性ガスを流量を制御して供給する手段と、ブロック状の遷移金属と、前記遷移金属を加熱する第1の加熱手段と、前記遷移金属から昇華生成される酸化物のガスを前記基板上に供給する専用配管とを備え、
前記反応性ガス供給手段は、カルコゲン原子を含む反応性ガスを流量を制御して供給する手段と、第2の不活性ガスを流量を制御して供給する手段とを備え、
前記反応室部は、試料台と、前記試料台上に載置された前記基板を加熱する第2の加熱手段を備え、かつ前記遷移金属が載置されている場所とは別室になっており、
前記専用配管の管壁には、前記遷移金属の酸化物の昇華温度以上の温度に保たれる熱処理手段が備えられている、遷移金属カルコゲナイド層状膜を形成するための装置。
(構成16)
前記酸化物ガス供給手段は、さらに水素を含むガスを流量を制御して供給する手段を有する、構成15記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜を形成するための装置。
(構成17)
MoOのガスを基板に供給するMoOガス供給手段と、硫黄を含む反応性ガスを前記基板に供給する反応性ガス供給手段と、前記基板上にMoSを層状膜として形成する反応室部と、排気手段とを備え、
前記MoOガス供給手段は、酸素を含むガスを流量を制御して供給する手段と、第1の不活性ガスを流量を制御して供給手段と、モリブデンからなるブロックと、前記ブロックを加熱する第1の加熱手段と、前記ブロックから昇華生成されるMoOのガスを前記基板上に供給する専用配管とを備え、
前記反応性ガス供給手段は、前記反応性ガスを流量を制御して供給する手段と、第2の不活性ガスを流量を制御して供給手段とを備え、
前記反応室部は、試料台と、前記試料台上に載置された前記基板を加熱する第2の加熱手段を備え、かつ前記ブロックが載置されている場所とは別室になっており、
前記専用配管の管壁には、MoOの昇華温度以上の温度に保たれる熱処理手段が備えられている、MoS層状膜を形成するための装置。
(構成18)
前記反応性ガスは、硫黄(S)、硫化水素(HS)、ジメチル硫黄((CHS)、ジエチル硫黄((CS),ジターシャリブチル硫黄([(CHC]S)、ジイソプロピル硫黄((i-CS)からなる群より選ばれる1以上である、構成17記載の装置。
(構成19)
前記第1の加熱手段および第2の加熱手段は、抵抗加熱、誘導加熱およびランプ加熱からなる群より選ばれる1以上の方式による、構成15から18の何れか1記載の装置。
(構成20)
前記第1の不活性ガスおよび前記第2の不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、ネオンガス、ヘリウムガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる1以上である、構成15から19の何れか1記載の装置。
(構成21)
前記第1の不活性ガスおよび前記第2の不活性ガスは、窒素ガスである、構成15から19の何れか1記載の装置。
(構成22)
前記専用配管は、石英ガラス、ガラス、ステンレスおよびセラミックスからなる群より選ばれる1からなる、構成15から21の何れか1記載の装置。
(構成23)
前記セラミックスは、アルミナ、SiCからなる群より選ばれる、構成22に記載の装置。
(構成24)
前記専用配管の前記基板近接部にはシャワーヘッドが備えられている、構成15から23の何れか1記載の装置。
(構成25)
前記試料台には回転機構が備えられている、構成15から24の何れか1記載の装置。
本発明によれば、遷移金属ダイカルコゲナイド、特にMoSの成膜の安定性、制御性が高く、成膜面積の大面積化が図れ、かつコストの面でも優れる膜形成方法およびそのための製造装置が提供される。
装置の概略構成を示す説明図である。 装置の概略構成を示す説明図である。 装置の概略構成を示す説明図である。 ガス供給系の構成を示す説明図である。 本発明の成膜方法を示すフローチャート図である。 本発明の成膜方法を示すフローチャート図である。 MoOガス発生のメカニズムを示す説明図である。 試作した装置の断面構成図である。 試作した装置のガス配管系を中心とした構成図である。 作製したMoS膜の光学顕微鏡写真である。 作製したMoS膜の光学顕微鏡写真である。 作製したMoS膜の光学顕微鏡写真である。 作製したMoS膜の光学顕微鏡写真である。 作製したMoS膜の光学顕微鏡写真である。 作製したMoS膜の光学顕微鏡写真である。 作製したMoS膜の膜評価を行った結果で、(a)はラマン分光評価、(b)は発光分光評価の結果である。 作製したMoS膜の光学顕微鏡写真である。 作製したMoS膜の膜評価を行った結果で、(a)はラマン分光評価、(b)は発光分光評価の結果である。 作製したMoS膜のSEM写真である。 作製したWS膜のSEM写真と膜特性をラマンおよびPLスペクトルで評価した図である。 作製したMoS膜のSEM写真である。
以下本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、MoSを例示しながら、遷移金属カルコゲナイド層状膜の成膜装置およびその装置を使った成膜方法について述べる。
<装置>
本発明の遷移金属カルコゲナイド層状膜形成装置は、図1に示すように、酸化物のガスを基板上に供給する酸化物ガス供給手段6と、反応性ガスを基板上に供給する反応性ガス供給手段7と、基板(試料)上に遷移金属カルゴゲナイドを層状膜として形成する反応室部8と、排気手段9とを具備する。
酸化物ガス供給手段6は、酸素を含むガスを流量を制御して供給する手段と、第1の不活性ガスを流量を制御して供給手段と、ブロック状の遷移金属と、遷移金属を加熱する第1の加熱手段と、遷移金属から昇華生成される酸化物ガスを基板上に供給する専用配管とを備える手段を備える。
具体的には、本発明の遷移金属カルコゲナイド層状膜形成装置10の酸化物ガス供給手段は、図2に示すように、酸素を含むガスを流量を制御して供給する手段としての開閉・流量制御装置33、第1の不活性ガスを流量を制御して供給手段としての開閉・流量制御装置34、ブロック状の遷移金属32とそれを載置するためのステージ31を備える酸化物ガス発生室21、および遷移金属から昇華生成される酸化物ガスを基板上に供給する専用配管23を備える。なお、開閉・流量制御装置33と開閉・流量制御装置34は、後述の開閉・流量制御装置40に示すように、1つの開閉・流量制御装置とすることもできる。
ここで、遷移金属としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)およびレニウム(Re)からなる群より選ばれる1を挙げることができる。Moを用いると特に応用の期待が高いMoS層状膜を形成するすることができる。また、Mo金属については、高純度の多結晶Mo金属が入手しやすく、コストも低いというメリットがある。
使用する遷移金属の形態としては、単結晶が好ましい。多結晶では多くの結晶粒界が存在するが、その状態では酸化物の生成、蓄積および昇華の進行が単結晶部と粒界部とで異なり、酸化物の生成、昇華の再現性、安定性が低下する傾向がある。例えば、多結晶Moには高密度の結晶粒界が存在し、Mo酸化物の生成や蓄積、昇華の進行が単結晶部と粒界部で異なる。ここで、一般には、Mo酸化物の生成や蓄積、昇華の進行は、粒界部で優位に進みやすい。そのため、MoOの生成と昇華の再現性や安定性を高め、制御をより厳密に行う観点からは、例えば電子ビーム溶融法等で作製した、単結晶Moを用いることが好ましい。
遷移金属を加熱する第1の加熱手段としては、抵抗加熱、誘導加熱およびランプ加熱を挙げることができ、例えばステージ31をヒーター付きのものとすればよい。なお、抵抗加熱はコストが低く、扱いが容易であるという特徴があり、ランプ加熱や誘導加熱は応答性に優れるという特徴がある。
第1の加熱手段による温度T1の設定範囲は、500℃以上1200℃以下が好ましい。この温度範囲により、遷移金属酸化物ガスを効率的に高い安定性で生成でき、その結果、均一で欠陥も少ない遷移金属カルコゲナイド層状膜を安定して形成することが可能になる。
第1の不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、ネオンガス、ヘリウムガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる1以上を挙げることができる。ブロック状の遷移金属32に遷移金属酸化物の層を形成し、その層から遷移金属酸化物のガスを昇華させるときの温度の関係で窒素ガスは十分な不活性ガスとして機能する。窒素ガスは入手が容易でコストも低いため、窒素ガスは第1の不活性ガスとして特に好適である。
専用配管23は、その管壁が使用する遷移金属の酸化物の昇華温度以上に保たれる構成になっていることが必要で、例えば図3に示されるように管壁あるいはその近傍にヒーター25を備えておく。ヒーター25は抵抗加熱の他、誘導加熱やランプ加熱でもよい。また、専用配管23は、実施例のところで述べるように、専用配管23専用のヒーターを備えず、試料38の熱処理の一環の炉内に設置されて、遷移金属の酸化物の昇華温度以上に保たれるようにしてもよい。
専用配管の管壁に遷移金属酸化物が付着すると、試料38への遷移金属酸化物ガスの供給の制御性や安定性が低下する。上記構成にすることによって、この問題を解決することが可能になる。
専用配管23の管壁の材料としては、石英ガラス、ガラス、ステンレスおよびセラミックスからなる群より選ばれる1を挙げることができる。セラミックスとしては、例えばアルミナ、SiCからなる群より選ばれるものを挙げることができる。
なお、専用配管23の先端や試料38が置かれている場所の近傍にはシャワーヘッド36が設けられて、遷移金属酸化物のガスが試料38の面内に均一に供給されるようにしておくことが好ましい。
反応性ガス供給手段は、カルコゲン原子を含む反応性ガスを流量を制御して供給する手段と、第2の不活性ガスを流量を制御して供給手段とを備えて前記反応性ガスを前記基板上に供給する手段とを具備する。
具体的には、本発明の遷移金属カルコゲナイド層状膜形成装置10の反応性ガス供給手段は、図2に示すように、カルコゲン原子を含む反応性ガスを流量を制御して供給する手段および第2の不活性ガスを流量を制御して供給手段としての開閉・流量制御装置40、および開閉・流量制御装置40からその反応性ガスを試料38近傍に供給する配管43を備える。ここで、開閉・流量制御装置40には反応性ガスを供給するポート(配管)41と第2の不活性ガスを供給するポート(配管)42が備えられている。また、図2では開閉・流量制御装置40は1つの装置としているが、反応性ガスを供給する開閉・流量制御装置と第2の不活性ガスを供給する開閉・流量制御装置の2つの開閉・流量制御装置としてもよい。
カルコゲン原子としては、硫黄(S)、セレン(Se)およびテルル(Te)からなる群より選ばれる1を挙げることができる。
また、カルコゲン原子含む反応性ガスとしては、硫黄(S)、硫化水素(HS)、ジメチル硫黄((CHS)、ジエチル硫黄((CS),ジターシャリブチル硫黄([(CHC]S)、ジイソプロピル硫黄((i-CS)からなる群より選ばれる1以上を挙げることができる。この中で、SおよびHSは、入手が容易で、低コストであるため、好んで用いることができる。
第2の不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、ネオンガス、ヘリウムガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる1以上を挙げることができる。窒素ガスは入手が容易でコストも低いため、窒素ガスは第2の不活性ガスとして特に好適である。
反応室(反応室部)22は、試料38とそれを載置する試料台37を備えた部屋で、遷移金属が載置されている酸化物ガス発生室21および専用配管23とはガスの往来の観点から隔離された別室とする。そして、反応室(反応室部)22は、試料38を加熱する第2の加熱手段を備える。第2の加熱手段としては、抵抗加熱、誘導加熱およびランプ加熱を挙げることができ、これらの中から選ばれた単独でも、複合でもよい。ヒーターを備えた試料台37を第2の加熱手段としてもよい。第2の加熱手段による温度T2の設定範囲は300℃以上1200℃以下が好ましい。この温度範囲により、効率的に均一で欠陥も少ない遷移金属カルコゲナイド層状膜を安定して形成することが可能になる。
なお、試料台37には回転機構が備えられているのが好ましい。このようにすると、試料38に遷移金属カルコゲナイド層状膜を形成する際、試料38を回転しながら成膜することにより膜形成の面内均一性を向上させることができる。
第1の加熱手段と第2の加熱手段は、その温度制御が個々別々としてもよいし、1つに集約して装置を簡素化してもよい。すなわち、2ゾーンあるいは2ゾーン以上としてもよいし1ゾーンとしてもよい。多ゾーンの制御の場合、例えば試料32の温度と酸化物ガス発生室21での温度を独立に制御でき、相互のパラメータの干渉を抑制できるので制御性が向上する。
また、本発明の装置として実施の形態1では、横型リアクターと呼ばれる形状に分類される装置を例示して説明した。しかしながらこれは本質的ではなく、ガスの流れが上下方向となる縦型リアクターとしてもよい。
図4に示される開閉および流量が制御されるガス供給系12は、配管51、手動バルブ52、マスフローコントローラ53、エアバルブ54,56からなる第1のガス系統と、配管61、手動バルブ62、マスフローコントローラ63、エアバルブ64,66からなる第2のガス系統を例示として示したものである。第1のガス系統からのガスと第2のガス系統からのガスは、混合、On/Offおよび流量制御されて配管55により供給される。また、配管内のガス純度を十分確保するための排気配管57も備えられていてエアバルブ56や66を開閉することにより配管内を排気することが可能になっている。ここに示したガス供給系12を開閉・流量制御装置33,34,40,44に適用できる。
ガス供給系12は、マスフローコントローラ53、63によって供給側でのガス流量が制御される。本発明では、図2に示すように、酸化物ガス発生室21に供給されるOを含んだガスと第1の不活性ガスの流量と遷移金属ブロック32への熱処理温度(T1)を制御することによって、試料38に供給する酸化物ガスの流量を制御することを1つの特徴にしている。
酸化物ガス発生室21で発生した酸化物ガスの流量やOn/Offを酸化物ガス発生室21より下流側で制御しようとすると、高温下でのOn/Offや流量制御が必要になり、装置コストのアップ、制御の精度低下と不安定化、故障の多発、メンテのしにくさといった問題が発生する。本発明の構成によりこのような問題を回避することが可能になる。
なお、図3は、反応室22に2つの開閉・流量制御装置40、44が繋がれている例を示している。このように複数の開閉・流量制御装置が反応室22に接続されていると、反応性ガスと第2の不活性ガスの導入のみならず、環境制御としての不活性キャリアガスに混じったOガスの供給などが行えて、より高度な制御が可能になる。なお、開閉・流量制御装置44には配管45,46および47が接続されている。
上記では、酸化物ガスの発生源をブロック状の遷移金属とした場合を示したが、遷移金属ブロック32をブロック状金属モリブデン(Mo)とすると昇華発生する酸化物ガスはMoOになる。専用配管23を介してこのガスを反応室22に導き、また別系統で硫黄を含む反応性ガスを流量制御を伴って反応室22に導き、試料38に熱処理を加えれば、試料38にMoS層状膜を形成することができる。
本発明の装置の特徴を下記に示す。これらの特徴により、MoSなどの遷移金属ダイカルコゲナイド層状膜の成膜の安定性、制御性が高く、成膜面積の大面積化が図れ、かつコストの面でも優れる製造装置を提供することが可能になる。
(1)Moなどの遷移金属ブロック32を載置する酸化物ガス発生室21が、S原料ガスなど他の反応性ガスが意図せず侵入して反応しないように分離されている。
(2)遷移金属ブロックを載置する酸化物ガス発生室21には、Nのような不活性ガスと反応性をもつOの両方を供給可能な構成となっており、バルブ動作により遷移金属ブロック32に接触するガスが切り替えられる。
(3)上記(2)の構成で、各ガスラインにはマスフローコントローラ等の流量制御機器が設置されており、これによりNおよびOガスの流量や濃度の制御が可能になっている。しかも、この流量制御は常温下で行えるので、安定性、制御性、メンテ性が高く、コストを抑えられて故障発生頻度も少ない。
(4)遷移金属ブロックを載置する酸化物ガス発生室21は試料38が置かれている領域とは独立になっており、発生した酸化物ガスを試料38が置かれている領域に導くことができる構成となっている。
(5)試料38が置かれている領域に導かれた酸化物ガスは、シャワーヘッド方式などガス吹き出し部の形状加工により、試料38が置かれている場所でのガス濃度の均一化が図れる構造になっている。
(6)S原料等の反応性ガスが、(5)のようにして試料38が置かれている場所に導かれた酸化物ガスと試料38の近傍で混合されて反応する構成となっている。
<方法>
本発明の方法を、フローチャート図である図5および5を参照しながら説明する。
本発明の方法では、遷移金属のブロックを酸化させて前記遷移金属の表面に前記遷移金属の酸化物層を形成すること(図5、工程S1)と、酸化物層から酸化物を昇華させ、専用配管を介して、第1の不活性キャリアガスとともに酸化物のガスを基板(試料)に供給すること(工程S2)と、カルコゲン原子を含む反応性ガスを第2の不活性キャリアガスとともに前記基板に供給すること(工程S3)と、前記酸化物のガスおよび前記反応性ガスの前記基板への供給時に前記基板を加熱して基板上に遷移金属カルコゲン層状膜を形成すること(工程S4)と、工程S4時を含めて酸化物のガス、反応性ガス、第1の不活性キャリアガスおよび第2の不活性キャリアガスを排気すること(工程S5)を行う。ここで、工程S2と工程S3は同時に行ってもよいし、工程S3が工程S2に先行して行われてもよい。
ここで、遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)およびレニウム(Re)からなる群より選ばれる1とする。
遷移金属カルコゲナイド層状膜として大いに嘱望されているMoS層状膜を形成する場合は、酸素を含むガスを供給しながらモリブデンからなるブロックを第1の温度T1で加熱して前記ブロックの表面に酸化モリブデン層を形成すること(図6、工程S11)と、酸化モリブデン層から三酸化モリブデン(MoO)を昇華させ、専用配管を介して、第1の不活性キャリアガスとともに前記MoOのガスを基板に供給すること(工程S12)と、カルコゲン原子を含む反応性ガスを第2の不活性キャリアガスとともに基板に供給すること(工程S13)と、MoOのガスおよび反応性ガスの基板への供給時に基板を第2の温度T2で加熱すること(工程S14)と、工程S14時を含めてMoOのガス、反応性ガス、第1の不活性キャリアガスおよび第2の不活性キャリアガスを排気すること(工程S15)を含めてMoS層状膜を形成する。ここで、工程S12と工程S13は同時に行ってもよいし、工程S13が工程S12に先行して行われてもよい。
ここで、第1の温度T1は、500℃以上1200℃以下が好ましい。この温度範囲により、遷移金属酸化物ガスを効率的に高い安定性で生成でき、その結果、均一で欠陥も少ない遷移金属カルコゲナイド層状膜を安定して形成することが可能になる。
また、第2の温度T2は、300℃以上1200℃以下が好ましい。この温度範囲により、効率的に均一で欠陥も少ない遷移金属カルコゲナイド層状膜を安定して形成することが可能になる。
専用配管は、装置のところで述べたように、生成したMoO等の原料ガス成分が管内の途中で再堆積することを防ぐ目的で、少なくとも金属ブロックが配置されている場所から基板の直前の領域まで加熱されていることが好ましい。
カルコゲン原子としては、硫黄(S)、セレン(Se)およびテルル(Te)からなる群より選ばれる1を挙げることができる。
第1の不活性ガスおよび第2の不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、ネオンガス、ヘリウムガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる1以上を挙げることができる。この中で、窒素ガスは低コストで入手も容易であることから特に好んで用いることができる。
酸素を含むガスの酸素含有量は0.01体積%以上100体積%以下が好ましい。
第2の不活性ガスのsccm流量S02に対するHSのsccm流量Sの比S/S02は、0.01体積%以上100体積%以下が好ましい。
以上の条件により、遷移金属カルコゲナイド層状膜を安定して形成することが可能になる。
遷移金属カルコゲナイド層状膜を形成する基板(試料基板)は、アルカリ金属元素を組成として含有することが好ましい。
ここで、アルカリ金属元素としては、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)およびカリウム(K)からなる群より選ばれる1以上を挙げることができる。アルカリ金属を含む基板上にMoSなどのTMDCのCVDを行うと、アルカリ金属による触媒効果によって堆積速度が向上して成膜の生産効率が上がるとともに、単結晶ドメインのサイズも増大して成膜品質の改善にも寄与する。
この基板の具体例としては、アルカリ・アルミノ・シリケートガラスを挙げることができる。アルカリ・アルミノ・シリケートガラスは、スマートフォンなどの強化カバーガラス用に表面でのイオン交換反応を促進するために開発された素材であり、SiOやAlのほか、重量比で20%前後のNaO成分を含んでいる。
次に、TMDCとしてMoSを例示として、TMDC形成のメカニズムを説明する。
本発明の重要な点は、独立して設けた酸化物ガス発生室21内に金属モリブデン(Mo)を置き、そこに酸素(O)を含むガスを供給することによって、Moの原料ガスとなる酸化モリブデン(三酸化モリブデン(MoO)が主)を発生させ、このMo原料ガスを試料(基板)38が置かれた成膜領域に導いて利用する点にある。
一般に、遷移金属元素であるMoは高融点金属に分類され、融点は約2600℃以上と非常に高く、金属原料自体を蒸発させるには極めて高い温度が必要である。
一方で、Moを酸化して得られる6価酸化物のMoOは比較的蒸気圧が高く、500℃以上で急速に昇華が進行する。本発明では、金属Mo表面に希薄なOガスを供給した際に同時進行するMoOの生成反応と昇華を積極的に利用している。
次に、本発明をMo金属表面にOガスを供給した際に進行する酸化膜(酸化スケールとも呼ばれる)の形成とその昇華反応について説明する。
図7に、加熱された環境下でMo金属1にOガスを供給した際に考えられる酸化スケール形成と昇華の描像を示す。供給されたO(4)はMo表面に吸着後、Moと反応して酸化スケール(2や3)が形成されるが、有限な厚さの酸化スケールが形成された後は、OはMo金属と酸化スケールの界面まで拡散し、そこで新たな酸化スケールが形成されることになる。そして、MoOがガスとなって昇華していく。ここで、図7(a)は後程説明するように、希薄なOガスが供給される場合を示し、図7(b)は十分なOガスが供給される場合を示す。
形成される酸化スケールの化学組成に関しては、充分なO分圧下であれば表面層の大部分は蒸気圧(昇華性)の高いMoO(3)であるが、Mo金属との界面付近には昇華性が低くごく薄い厚さをもつMoOが存在する。また、MoOからMoOへの遷移領域にMoO(2<x<3)のようなサブオキサイドも存在する。図7では、MoOおよびサブオキサイドを2として表示している。
一方、酸化スケールの膜厚の時間発展については、酸化開始の初期では時間(t)に対して線形に膜厚が増加し、次第にt1/2(パラボリック則)に変化するとの報告もあるが、温度やO分圧にも依存する。このようにMoの酸化スケールの形成過程やその構造は複雑である。
本発明において特に重要なことは、酸化スケールの形成速度と昇華速度の競合関係である。酸化スケール(2,3)の形成速度と昇華速度の大小により、差し引きの酸化スケールの成長速度あるいは厚みが決まるからである。この競合関係は温度やOの供給量(分圧)に影響される。
図7には、酸化スケールの形成と昇華の競合関係として考えられる2つの両極端な状況が示されている。
図7(a)は酸化スケールの形成速度よりも昇華速度が圧倒的に大きい、「酸化スケール形成速度<<昇華速度」の場合である。このような状況は、O供給量が少ない、あるいは温度が高く昇華が極めて活発に起こるような場合に実現される。理想的な極限状況下では、形成された酸化スケールのうちMoO成分は直ちにMoO(5)となって昇華して表面には滞留せず、定常的に揮発性が低いMoOやMoOの薄膜が露出しているような描像となる。この場合、MoSのCVDに重要な単位時間当たりのMoO昇華量は、Oの供給流量で律速されると考えられる。そのため、Oの供給量を一定に保てばMoSの成長速度は一定となり、MoSの堆積量(成長時間内の積分量)は時間に比例する。
一方、図7(b)は酸化スケール形成が昇華によるスケールの目減りを上回り、結果としてMoO酸化スケールの厚さが増加する状況である。すなわち、「酸化スケール形成速度>昇華速度」の場合である。これはO供給量が充分で、かつ比較的温度が低く昇華速度が抑えられた状況下で実現される。
このような状況では、Mo金属の表面がMoO(3)で常に覆われており、かつMoO(3)の厚み(すなわち体積)が時間とともに増加する。このような状況でMoSのCVDを行うと、Oガスの供給量を一定にしたとしても、MoOの昇華量は時間に対して一定にはならず、MoOの厚みとともに時間に比例して増加すると考えられる。そのため、CVDにおけるMoSの成長速度も時間に対して線形に増加し、積分量である総堆積量は時間に対して2次関数的に増えると予想される。また、このような状況下では、バルブ操作でO供給を停止してもMo(1)表面に蓄積したMoO(3)が昇華して無くなるまでは発生が続くことになるから、MoSの成長を停止する場合、応答が悪くなる。
以上のように、金属Mo表面の酸化スケール形成とMoOの昇華を使ったMoSのCVDでは2つの状態が起こりうる。どちらの状況下でもMoSの成膜は実現できるが、制御性や応答性の観点からは図7(a)の状況を達成するのが好ましい。
以上のことから、実施の形態1により、MoSなどの遷移金属ダイカルコゲナイド層状膜の成膜の安定性、制御性が高く、成膜面積の大面積化が図れ、かつコストの面でも優れる成膜方法を提供することが可能になる。
背景技術で述べた3つの方法、すなわち(i)MoOなどの金属酸化物として粉末原料を用いる方法(粉末法)、(ii)試料に対向させたMoなどの金属箔を用いる方法(フォイル法)、(iii)上記2つを組み合わせたような複合法の3つの方法と本発明の方法との違いをまとめて下記に示す。
粉末法との差異は、本発明の方法ではMoOなどの金属酸化物の発生をブロック状の金属表面にOガスを供給してその場で生成するので粉末原料が不要なことと、金属酸化物の原料部でSなどのカルコゲン元素との直接反応が起こらず制御性が高まることである。
フォイル法との差異は、金属箔である必要が無くブロック状としたことによりMoなどの金属原料の形状や大きさを試料のサイズや枚数に依存せず選択できる自由度が得られること、金属フォイルを基板に対向させる必要が無く、酸化物ガス発生室で発生する金属酸化物ガスを配管やノズル、シャワーヘッド等で試料が置かれている反応室に導く自由度が高く、その結果成膜均一性を高めやすい構造であること、および使用する金属が変質せず繰り返し使用できることである。
複合法との差異は、MoOなどの金属酸化物は金属とOの反応でその場で生成されるため金属酸化物の枯渇を回避できること、金属酸化物の昇華量(特に、低い過飽和度の実現)がO流量で広範囲に制御可能でかつ成膜中に自由に変化できること、および金属酸化物の原料部でSなどのカルコゲン元素との直接反応が起こらず制御性が高まることである。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、水素ガス添加により成膜効率を高めた遷移金属カルコゲナイド層状膜の成膜装置およびその装置を使った成膜方法について述べる。
装置は、基本的に実施の形態1に準拠しているが、実施の形態1と異なる点は、酸化物ガス発生室に流量を正確に制御できる水素ガス(Hガス)供給系統をさらに備えていることである。すなわち、図2または図3でいうと、開閉・流量制御装置33,34に加えて酸化物ガス発生室21に水素ガスを供給する開閉・流量制御装置33や34と同じような設備を備えることである。
昇華温度が高い金属酸化物から遷移金属カルコゲナイド層状膜を作製する場合、実施の形態1の方法では酸化物ガスを生成するための第1の加熱処理の温度T1は高くなり、酸化物ガスの生成効率を高めるのも容易ではなくなる。例えば、W金属ブロックを酸化・昇華させて反応室22までWOガスを導いてWS層状膜を製膜する場合、WOはMoOと比べて著しく昇華が起こりにくいので、その昇華には800℃以上というような高温の処理が必要となる。
実施の形態2では、遷移金属ブロック上に形成された金属酸化物やその生成を行うときの環境に水素ガスを加える。このようにするとその金属酸化物分子に水(HO)が付加される。すなわち、水素化された酸化物層が形成される。このようにすると昇華温度が下がり、加熱処理の温度T1を与える設備を簡便なものにすることができるとともに、扱いやすくなって制御性も高めやすくなり、酸化物ガスの発生効率も高めやすくなる。
例えば、W金属ブロックに酸素ガスと水素ガスを供給して第1の加熱処理を行ってW金属ブロックの表面にHWOを生成させ、その物質を昇華させる。この場合、昇華温度が下がり(WOと比べて相対的に蒸気圧が高くなる)、700℃という温度でWS層状膜を形成することが可能になる。
以下では実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、この実施例はあくまで本発明の理解を助けるためここに挙げたものであり、本発明をこれに限定するものではない。
(実施例1)
実施例1では、MoSの成膜装置を作製し、その装置を用いて基板上にMoSを形成してその膜を評価した。
<装置>
実施例1で試作した装置13の要部構成を図8に示す。ここで、図8(a)は全体概要で、図8(b)に示す石英管部14は、石英管71内の主要部の構成を寸法を併記しながら示したものである。
装置13は、土台となる基体72の上に支持具73を介して石英管71が配置され、さらに、石英管71内に配置されたMoS層状膜形成室部(反応室部)79とMo反応室(MoOガス発生室)81を含んだ領域を覆うように電気炉74が配置された構成になっている。また、石英管71内には石英で作られたAライン76とBライン77用の配管チューブが設置されており、石英管71にはCライン78用のチューブが取り付けられていて、Cライン用のガスは石英管71内に供給されるようになっている。
ここで、MoS層状膜形成室部79には、MoS層状膜が形成される試料が載置されるサセプタ75が配置され、シャワーヘッドをもつ上部ノズル82からはMo反応室81から供給されるMoOガスが、Bライン77に繋がれている下部ノズル83からはHS反応性ガスが供給されるようになっている。なお、雰囲気ガスやガスの流れ、排気の促進などを石英管71に繋がれているCライン78からのガスで制御できるようになっている。
Mo反応室81はその管壁が石英で、Mo反応室81内には金属モリブデンのブロックが配置されている。そして、上流側に繋がれたAライン76から酸素ガス(Oガス)および不活性キャリアガスとしての窒素ガス(Nガス)が供給され、下流側に繋がれた上部ノズル82からMoOガスがMoS層状膜形成室部79に供給される構成になっている。ここで、Mo反応室81から上部ノズル82にかけての管は専用配管の状態になっているが、その専用配管は電気炉74の内側に配置されており、電気炉74がオンされるとその管壁は温められるので、その管壁にはMoやMoOxが付着しにくい構成になっている。
なお、石英管71の末端部には排気系が繋がれていて、排気80されるようになっている。ここで、排気設備としては空冷式の小型ドライポンプを用いた。また、ポンプの下流にはHSの乾式吸着を行うための除害装置を設置した。
ガス供給系統を中心に描いた装置13の構成図を図9に示す。
装置13では、希釈Oガスの供給ライン(A-2ライン)に設置した手動バルブ62aおよびエアバルブ64aの開閉動作により、Aライン76に繋がれているMo反応室81内でのMoOガスの発生と停止が行える。また、N専用のA-1ラインおよび希釈Oライン(A-2)には、それぞれマスフローコントローラ(MFC)53aおよび63aが設置されており、この2つのMFCの流量比により、Mo反応室内の実効的なO濃度を精密に変えられる構成になっている。なお、A-1ラインおよびA-2ラインにはそれぞれ排気57aに繋がるエアバルブ56aおよび66aが配置されていて、排気動作により配管内の清浄度が十分保たれるようになっている。また、A-1ラインにはNラインガスを接続し、A-2ラインにはNを用いて1%に希釈されたOガスのボンベを接続している。なお、装置13には、手動バルブ85が備えられていて手動バルブ85を開くことにより石英管71の排気80を行うことができるようになっている。また、装置13には、圧力表示器84が備えられていて石英管71内の圧力をモニターできるようになっている。
硫黄(S)原料は、HSガスを別系統のガスライン(B-1)から供給する構成とした。
Bラインのガス供給系はAラインのガス供給系と同様の構成とした。そこでは、手動バルブ52b、MFC53b、エアバルブ54bを介して1%に希釈したHSガスのボンベから供給される反応性ガスがB-1ラインに供給され、手動バルブ62b、MFC63b、エアバルブ64bを介してラインのNガスがB-2ラインに供給される構成になっている。また、配管内のガス純度を高めるために、B-1ライン側にエアバルブ56bを、B-2ライン側にエアバルブ64bを配置して、両エアバルブの先から排気をとれる構成とした。
ここで、S原料については粉末Sを使うことも可能であるが、ここでは、バルブによるOn/Off動作や、マスフローコントローラ(MFC)を使ったより精密な供給量の制御を可能にする本構成とした。なお、粉末Sの枯渇の問題を回避するうえで、MOCVD法で実績のあるHSや(CHSや(CSといった有機金属化合物をガス原料として供給できる構成が好ましい。
Cラインについては、手動バルブ62c、MFC63c、エアバルブ64cを介してラインのNガスがC-1ラインに供給され、手動バルブ52c、MFC53c、エアバルブ54cを介してNガスにより1%に希釈されたOガスボンベから供給される希釈OスがC-2ラインに供給される構成になっている。
装置13は、実施の形態1でも述べた遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成に求められる下記技術項目を満たす構成になっている。
(1)金属Moを載置する反応室が、S原料ガスなど他の反応性ガスが意図せず侵入して反応しないように分離されていること。
(2)金属Moを載置する反応室には、Nのような不活性ガスと反応性をもつOの両方を供給可能な構成となっており、バルブ動作によりMo金属に接触するガスを切り替えられること。
(3)上記(2)の構成で、各ガスラインにはマスフローコントローラ等の流量制御機器が設置されており、これによりNおよびOガスの流量や濃度の制御が可能なこと。
(4)金属Moを載置する反応室は基板領域と独立になっており、発生したMoOガスを基板領域に導くことができる構成となっていること。
(5)基板領域に導かれたMoOガスは、シャワーヘッド方式などガス吹き出し部の形状加工により、基板部でのガス濃度の均一化が図れる構造になっていること。
(6)S原料の原料ガスが、(5)のようにして基板部に導かれたMoOと基板部領域で混合されて反応する構成となっていること。
<プロセス>
酸化物ガス(MoOガス)発生室(Mo反応室)81内に設置する金属Moとして、純度99.97%の高純度のブロック(Pansee社製)を準備し、それを20mm×6mm×2mmの短冊状に切断した。そして、有機溶剤と純水でクリーニングした後、酸化物ガス発生室81にチャージした。
ガスとHSはどちらも高純度Nで1%に希釈されたボンベを用意した。代表的な成膜条件は下記のとおりである。
・石英反応室71内圧:20Torr
・成膜温度:700℃または750℃
・Aライン流量:100sccm(1%O/N20sccm+N80sccm、またはN100sccm)
・Bライン流量:50sccm(1%HS/N10sccm+N40sccm、またはN50sccm)
・Cライン流量:250sccm(N
・成膜時間:3分以上15分以下
・基板:アルカリ・アルミノ・シリケートガラス(20mm×20mm×0.55mm)
基板は、有機溶剤(アセトン、IPS)と純水で超音波洗浄し、Nブローで乾燥したのち、アルミナ製のサセプタ75に載せて電気炉74の所定位置に導入した。
その後、石英管内を真空度約2Pa付近まで充分に真空引きしたのち、Aライン76からCライン78の各ラインに所定流量のNガスのみを流しながら、リアクタ内圧力が20Torrになるように排気側のニードルバルブを調整した。このNフローの状態から、25℃/minの昇温速度で成膜温度700℃まで昇温し、700℃に到達後5分間安定化させた。
その後、切り替えバルブでBライン77にHS混合ガスを流し、30秒待ってから切り替えバルブでAライン76にO混合ガスを流して、酸化物ガス発生室で酸化モリブデンスケールの生成と昇華を開始した。
そして、Aライン76にOを流し始めた時間を成膜開始時間と定義し、所定の成膜時間の経過後に切り替えバルブでOをNに切り替えることでMoOの発生を停止し、成膜を終了した。
その後、Bライン77のHSは流したまま電気炉74を自然冷却し、室温付近になったのちに試料を取り出した。
<材料評価>
図10から図13に、700℃、20Torrで成膜時間を3分、5分、10分、15分と変えて成膜したMoSの光学顕微鏡写真を示す。ここで、各図の(a)、(b)および(c)はそれぞれ上流、中央、下流の場所(図8(b)の79で示された領域の左、中央および右側の場所)でのそれを示す。
本発明の方法により、光学顕微鏡で認識できるサイズをもったMoSの三角形ドメインが形成できていることがわかるが、この事実はこの分野では画期的であり、従来法に比べて高い品質のTMDCになっている。
また、成膜時間の増加とともに三角形ドメインのサイズは数μm(成膜時間3分)から数十μm(成膜時間10分、15分)へと増大し、最終的には合体して連続膜が形成されていた。ここで、連続膜の例として、700℃、20Torrで成膜時間を15分として形成したときの膜で、上記図の(c)より更なる下流での光学顕微鏡写真を図14に示す。
なお、Mo金属原料を交換することなく、かつ再現性よく実現できることも確認している。
ここでは時間依存性を示したが、O流量によっても制御できることを確認した。そこでは、Oに対する成膜プロセスの時間応答の線形(比例)性と応答速度を重視する場合、図7を用いて説明してきたように、酸化スケールの形成速度が小さく、昇華速度を上回らない範囲にO流量を抑えることが重要であった。
図16(a)は、10分成膜した下流の場所の三角形ドメイン部(図15参照)で測定したMoSのラマンスペクトルの測定例である。A1gとE 2gのモードが明確に観測され、その波数間隔は20cm-1であることから、単層であることがわかる。
また、図16(b)は、同じ測定部から得られた室温でのフォトルミネッセンス(PL)・スペクトルの測定結果である。この図から、666nm付近に非常に強い発光が観測され、このMoSが直接遷移型バンド構造を持つ単層膜であることが示唆された。
図18(a)と(b)は、各々15分成長したサンプルの連続膜の部分(図17参照)で測定したラマンとPLスペクトルである。この場合にも、得られた膜が極めて結晶性の良好なMoS単層膜であることが示されている。
以上のように、本発明が結晶性の良好なMoSの単層膜の成膜方法として有用なことが実験的に示された。
(実施例2)
実施例2では、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)方式の成膜装置を用いて、MoS成膜の基板依存性を調べた。
使用した装置は、高純度のグラファイトからなるサセプタを有する減圧・横型式のリアクタを用いたMOCVD用の装置である。そして、サセプタ上に載置されるウエハ(試料)は、サセプタ裏面からハロゲンランプ加熱により、所望の温度での熱処理を行うことができる構成になっている。
モリブデン元素の原料プリカーサとしてはオキシクロライド、具体的なプリカーサとしては、二酸化二塩化モリブデン(MoOCl)を用いた。一方、カルコゲン元素の硫黄(S)原料にはN2ガスで体積濃度10%に希釈された硫化水素(HS)ガスを用いた。
ここで、MoOClは室温では固体であるが、加熱による昇華でガスを発生させることができる。実施例2では、その封入容器を約20℃の恒温槽で保温して蒸気を発生させ、Nガスをキャリアとして原料ガスの輸送を行った。
実施例2は前記オキシクロライドとHSを用いたカーボンレス成膜である。
したがって、実施例2は、MOCVD装置を用いているが、厳密にはMOCVD成膜ではない。繰り返しになるが、実施例1と同様のカーボンレス(有機レス)成膜である。
実施例2におけるMoS膜の典型的な成膜条件を下記に示す。
・成長温度:700℃
・圧力:50Torr
・成長時間:1時間
・リアクタ内総流量:Nガス 2.5slm
・MoOCl供給条件:Nガス 75sccm、充填容器18.0℃、内圧760Torrで制御
・10%HS流量:10sccm
基板としては、成膜時に加わる熱による基板変形や溶融を回避する観点から軟化点の高い、ガラス中にアルミナ成分(Al)を含むアルミノ・シリケート・ガラスおよびNaやKのようなアルカリ元素の触媒効果の付加も期待したアルカリ・アルミノ・シリケート・ガラスを選択して、成膜性を評価した。そのガラスの一覧を下記表1および2に示す。組成は蛍光X線で測定した。
ここで、AはDragontrailTM(DT)(AGC製)、BはDragontrail ProTM(AGC製)、CはDinorexTM(NEG製)、DはGorilla-3TM(Corning製)、そしてEはEagle-XGTM(Corning製)である。A~Dがアルカリ・アルミノ・シリケート・ガラスであり、Eは無アルカリのアルミノ・シリケート・ガラスである。
上記の成膜条件にて、ガラス基板の種類を変えてMoSを成膜した。試料表面のSEM観察の結果を図19に示す。
図19から、ガラスの種類により、MoSのドメインサイズや密度が大きく異なることがわかる。特に、Eの無アルカリガラスではMoSの成膜が見られなかったことから、ガラス中のNaやKなどアルカリ金属元素の触媒効果が働いていると推察される。
最も大きな単結晶ドメインが得られたのは、AやBのガラスを用いたときであった。この再現性は極めて高かった。
なお、ここでは、プリカーサとして二酸化二塩化モリブデン(MoOCl)を用いたMoSの成膜について示したが、MoOClに限らず、一酸化四塩化タングステン(WOCl)を用いてWSの成膜を行う場合でも同様の結果を得た。
その一例として、AのDragontrailTM(DT)(AGC製)ガラス上にMOCVD方式の装置でWSを成膜した結果(電子顕微鏡写真、ラマンスペクトル、PLスペクトル)を図20に示す。WSの場合にも、AのDragontrailTM(DT)(AGC製)ガラス上に大きな単結晶ドメインが形成され、ラマンとPLのスペクトルは結晶性が良好であることを示している。ここで、WOClを用いる場合には、その封入容器を40~45℃の恒温槽で保温して蒸気を発生させ、Nガスをキャリアとして、原料ガスの輸送を行った。
WS膜の典型的な成膜条件を下記に示す。
・成長温度:700℃
・圧力:50Torr
・成長時間:1時間
・リアクタ内総流量:Nガス 2.5slm
・WOCl4供給条件:Nガス 250sccm、充填容器45.0℃、内圧760Torrで制御
・10%HS流量:5sccm
以上、実施例2では、MOCVD装置を用いてMoSを成膜した場合を示したが、第1の実施の形態、実施例1と2は共にカーボンレスの原料ガスを用いた無機の成膜法で、ガラス基板に対する成膜特性も第1の実施の形態、実施例1と2は共通するものであった。
(実施例3)
実施例3では、実施例2において少量の酸素ガス(Oガス)を添加したときの効果を実施例2で述べた装置を用いて調べた。
実施例3におけるMoS膜の典型的な成膜条件を下記に示す。
・成長温度:700℃
・圧力:50Torr
・成長時間:1時間
・リアクタ内総流量:Nガス 2.5slm
・MoOCl供給条件:Nガス 75sccm、充填容器18.0℃、内圧760Torrで制御
・10%HS流量:10sccm
・0.1%O流量:100sccm
したがって、0.1%Oの添加以外は実施例2と同じ条件である。ここで、0.1%のOとは、Nガスに対する体積比で0.1%のOガスのことである。
基板としては実施例2に示したA~Dの4種類のアルカリ・アルミノ・シリケートガラスを用いて評価した。
MoS成膜試料表面のSEM観察の結果を図21に示す。
基板としてガラスAを用いた場合、単結晶ドメインは、約10μmと他のガラス基板を用いた場合より圧倒的に大きい。ガラス基板Bより数倍は大きく、ガラス基板C、Dとは桁違いの大きさである。
の添加効果は、実施例2との比較でわかるが、単結晶ドメインに有意の差があるのはガラス基板Aを用いた場合のみで、他のガラス基板を用いた場合はO添加に対して優位の差は認められなかった。
ガラス基板Aは、特異に単結晶のMoS成膜に効果のある基板であった。
第1の実施の形態および実施例1では、成膜時に自動的にOが添加される。実施例1でも、ガラス基板Aを用いたときは、大きな単結晶ドメインのMoS成膜に効果が認められた。
遷移金属カルコゲナイド層状膜(TMDC)は、前述のように、極薄かつ柔軟性に優れた発光・受光素子、光機能デバイスおよび超低消費電力電子デバイスのメインの機能材料として大いに期待されているが、本発明によれば、遷移金属カルコゲナイド層状膜、特にMoSの成膜の安定性、制御性が高く、成膜面積の大面積化が図れ、かつコストの面でも優れる膜形成方法およびそのための製造装置が提供される。
したがって、本発明は上記素子、デバイスを中心に革新的に産業に寄与するものと考えられる。
1:金属モリブデン(Mo)
2:酸化スケール(MoO層(2≦x<3)
3:酸化スケール(MoO層)
4:O
5:MoO
6:酸化物ガス供給手段
7:反応性ガス供給手段
8:反応室部
9:排気手段
10:成膜装置
11:成膜装置
12:ガス供給系
13:装置
14:石英管部
21:酸化物ガス発生室
22:反応室
23:専用配管
25:ヒーター
31:ステージ(ヒーター付きステージ)
32:遷移金属ブロック
33:開閉・流量制御装置
34:開閉・流量制御装置
35:排気配管
36:ノズル
37:試料台(ヒーター付き試料台)
38:試料
40:開閉・流量制御装置
41:配管(ポート)
42:配管(ポート)
43:配管
44:開閉・流量制御装置
45:配管(ポート)
46:配管(ポート)
47:配管
51:配管
52、52a、52b、52c:バルブ(手動バルブ)
53、53a、53b、53c:マスフローコントローラ
54、54a、54b、54c:バルブ(エアバルブ)
55:配管
56、56a、56b:バルブ(エアバルブ)
57:排気配管
61:配管
62、62a、62b、62c:バルブ(手動バルブ)
63、63a、63b、63c:マスフローコントローラ
64、64a、64b、64c:バルブ(エアバルブ)
66、66a、66b:バルブ(エアバルブ)
71:石英管
72:基体(土台)
73:支持具
74:電気炉
75:試料台(基板用サセプタ)
76:Aライン
77:Bライン
78:Cライン
79:MoS層状膜形成室部(反応室部)
80:排気
81:Mo反応室(MoOガス発生室)
82:上部ノズル
83:下部ノズル
84:圧力表示器
85:手動バルブ

Claims (25)

  1. 遷移金属のブロックを酸化させて前記遷移金属の表面に前記遷移金属の酸化物層を形成することと、
    前記遷移金属の酸化物層の形成と同時に前記酸化物層から前記酸化物を昇華させ、専用配管を介して、第1の不活性キャリアガスとともに前記酸化物のガスを基板に供給することと、
    カルコゲン原子を含む反応性ガスを第2の不活性キャリアガスとともに前記基板に供給することと、
    前記酸化物のガスおよび前記反応性ガスの前記基板への供給時に前記基板を加熱することと、
    前記酸化物のガス、前記反応性ガス、前記第1の不活性キャリアガスおよび前記第2の不活性キャリアガスを排気すること、を含む遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  2. 前記遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)およびレニウム(Re)からなる群より選ばれる1である、請求項1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  3. さらに、前記酸化物層を水素化された酸化物層とすることを含む、請求項1または2記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  4. 前記水素化は、前記酸化を行う際に水素ガスを添加することによってなされる、請求項3記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  5. 酸素を含むガスを供給しながらモリブデンからなるブロックを第1の温度T1で加熱して前記ブロックの表面に酸化モリブデン層を形成することと、
    前記酸化モリブデン層の形成と同時に前記酸化モリブデン層から三酸化モリブデン(MoO)を昇華させ、専用配管を介して、第1の不活性キャリアガスとともに前記MoOのガスを基板に供給することと、
    カルコゲン原子を含む反応性ガスを第2の不活性キャリアガスとともに前記基板に供給することと、
    前記MoOのガスおよび前記反応性ガスの前記基板への供給時に前記基板を第2の温度T2で加熱することと、
    前記MoOのガス、前記反応性ガス、前記第1の不活性キャリアガスおよび前記第2の不活性キャリアガスを排気すること、を含む遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  6. 前記第1の温度T1は、500℃以上1200℃以下である、請求項5記載のカルコゲナイド層状膜の形成方法。
  7. 前記第2の温度T2は、300℃以上1200℃以下である、請求項5または6に記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  8. 前記専用配管は、生成した前記MoOの原料ガス成分が管内の途中で再堆積することを防止する温度で、少なくとも前記ブロックが配置されている場所から前記基板の直前の領域まで加熱されている、請求項5から7の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  9. 前記カルコゲン原子は、硫黄(S)、セレン(Se)およびテルル(Te)からなる群より選ばれる1である、請求項1から8の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  10. 前記第1の不活性ガスおよび前記第2の不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、ネオンガス、ヘリウムガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる1以上である、請求項1から9の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  11. 前記第1の不活性ガスおよび前記第2の不活性ガスは、窒素ガスである、請求項1から9の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  12. 前記基板は、アルカリ金属元素を組成として含有することを特徴とする、請求項1から11の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  13. 前記アルカリ金属元素は、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)およびカリウム(K)からなる群より選ばれる1以上である、請求項12記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  14. 前記基板は、アルカリ・アルミノ・シリケートガラスである、請求項1から12の何れか1記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜の形成方法。
  15. 酸化物のガスを基板に供給する酸化物ガス供給手段と、反応性ガスを前記基板に供給する反応性ガス供給手段と、前記基板上に遷移金属カルゴゲナイドを層状膜として形成する反応室部と、排気手段とを備え、
    前記酸化物ガス供給手段は、ブロック状の遷移金属と、前記遷移金属を加熱する第1の加熱手段と、加熱した前記ブロック状の遷移金属に酸素を含むガスを流量を制御して供給する手段と、第1の不活性ガスを流量を制御して供給する手段と、前記遷移金属から昇華生成される酸化物のガスを前記基板上に供給する専用配管とを備え、
    前記反応性ガス供給手段は、カルコゲン原子を含む反応性ガスを流量を制御して供給する手段と、第2の不活性ガスを流量を制御して供給する手段とを備え、
    前記反応室部は、試料台と、前記試料台上に載置された前記基板を加熱する第2の加熱手段を備え、かつ前記遷移金属が載置されている場所とは別室になっており、
    前記専用配管の管壁には、前記遷移金属の酸化物の昇華温度以上の温度に保たれる熱処理手段が備えられている、遷移金属カルコゲナイド層状膜を形成するための装置。
  16. 前記酸化物ガス供給手段は、さらに水素を含むガスを流量を制御して供給する手段を有する、請求項15記載の遷移金属カルコゲナイド層状膜を形成するための装置。
  17. MoOのガスを基板に供給するMoOガス供給手段と、硫黄を含む反応性ガスを前記基板に供給する反応性ガス供給手段と、前記基板上にMoSを層状膜として形成する反応室部と、排気手段とを備え、
    前記MoOガス供給手段は、モリブデンからなるブロックと、前記ブロックを加熱する第1の加熱手段と、加熱した前記モリブデンからなるブロックに酸素を含むガスを流量を制御して供給する手段と、第1の不活性ガスを流量を制御して供給手段と、前記ブロックから昇華生成されるMoOのガスを前記基板上に供給する専用配管とを備え、
    前記反応性ガス供給手段は、前記反応性ガスを流量を制御して供給する手段と、第2の不活性ガスを流量を制御して供給手段とを備え、
    前記反応室部は、試料台と、前記試料台上に載置された前記基板を加熱する第2の加熱手段を備え、かつ前記ブロックが載置されている場所とは別室になっており、
    前記専用配管の管壁には、MoOの昇華温度以上の温度に保たれる熱処理手段が備えられている、MoS層状膜を形成するための装置。
  18. 前記反応性ガスは、硫黄(S)、硫化水素(HS)、ジメチル硫黄((CHS)、ジエチル硫黄((CS),ジターシャリブチル硫黄([(CHC]S)、ジイソプロピル硫黄((i-CS)からなる群より選ばれる1以上である、請求項17記載の装置。
  19. 前記第1の加熱手段および第2の加熱手段は、抵抗加熱、誘導加熱およびランプ加熱からなる群より選ばれる1以上の方式による、請求項15から18の何れか1記載の装置。
  20. 前記第1の不活性ガスおよび前記第2の不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、クリプトンガス、ネオンガス、ヘリウムガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる1以上である、請求項15から19の何れか1記載の装置。
  21. 前記第1の不活性ガスおよび前記第2の不活性ガスは、窒素ガスである、請求項15から19の何れか1記載の装置。
  22. 前記専用配管は、石英ガラス、ガラス、ステンレスおよびセラミックスからなる群より選ばれる1からなる、請求項15から21の何れか1記載の装置。
  23. 前記セラミックスは、アルミナ、SiCからなる群より選ばれる、請求項22に記載の装置。
  24. 前記専用配管の前記基板近接部にはシャワーヘッドが備えられている、請求項15から23の何れか1記載の装置。
  25. 前記試料台には回転機構が備えられている、請求項15から24の何れか1記載の装置。
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