以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態で示す例に限られない。
本実施形態に係る炭素担体(以下、「本担体」という。)は、主に炭素から構成される炭素材料である。本担体の炭素含有量は、例えば、70重量%以上であってもよく、75重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、85重量%以上であることが特に好ましい。
また、本担体の炭素含有量は、例えば、100重量%以下であってもよいし、95重量%以下であってもよいし、90重量%以下であってもよい。本担体の炭素含有量は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。炭素担体の炭素含有量は、元素分析(燃焼法)により得られる。
本担体は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいて、ラマンシフト1600cm-1付近(具体的に、例えば、1550cm-1以上、1700cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するGバンドの強度に対する、ラマンシフト2680cm-1付近(具体的に、例えば、2600cm-1以上、2800cm-1以下の範囲内)にピークトップを有する2Dバンドの強度の比(以下、「ラマン2D/G比」という。)が0.36以上、1.0以下を示す炭素構造を有することが好ましい。
本担体のラマン2D/G比は、例えば、0.40以上であることがより好ましく、0.42以上であることがさらに好ましく、0.44以上であることがさらに好ましく、0.45以上であることがさらに好ましく、0.46以上であることがさらに好ましく、0.47以上であることが特に好ましい。
また、本担体のラマン2D/G比は、例えば、0.99以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることがさらに好ましく、0.85以下であることがさらに好ましく、0.80以下であることがさらに好ましく、0.75以下であることがさらに好ましく、0.70以下であることがさらに好ましく、0.65以下であることが特に好ましい。本担体のラマン2D/G比は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
ここで、炭素材料のラマン2D/G比は、当該炭素材料の炭素構造に含まれるグラフェンの積層体を構成する層の数を示す。すなわち、2Dバンドの強度がGバンドの強度よりも大きい場合(ラマン2D/G比>1)は、グラフェンが単層である。2Dバンドの強度がGバンドの強度と同一である場合(ラマン2D/G比=1)は、グラフェンの積層体の層数がおおよそ2層である。2Dバンドの強度がGバンドの強度よりも小さい場合(ラマン2D/G比<1)は、グラフェンの積層体の層数が3層以上である。具体的な積層数は、2Dバンドの強度(ピークトップの高さ)とGバンドの強度(ピークトップの高さ)との比から求めることができる。
小さすぎるラマン2D/G比を示す炭素構造、すなわちグラフェンの積層体の層数が多すぎる炭素構造は、酸化劣化の起点となるエッジ部分のベーサル面に対する相対量が多すぎるため、耐酸化性に劣る。これに対し、上述した下限値以上のラマン2D/G比を示す炭素構造は、グラフェン積層体の層数が適切な範囲(例えば、2層から3層程度)に制御された少層グラフェン(few layer graphene)を含み、露出しているベーサル面に対するエッジ部分の相対量が適切な範囲内に制御されているため、耐酸化性及び/又は耐久性の向上に貢献する。
一方、エッジ部分は触媒金属粒子の担持サイトとしても機能する。このため、大きすぎるラマン2D/G比を示す炭素構造は、ベーサル面に対するエッジ部分の相対量が少なすぎるため、触媒金属粒子を担持するための適性に劣る。これに対し、上述した上限値以下のラマン2D/G比を示す炭素構造は、ベーサル面に対して適度な量のエッジ部分を含むため、触媒金属粒子を担持するための適性に優れるとともに、金属担持触媒の耐久性及び/又は触媒機能の向上に寄与する。
本担体は、ラマン分光法により得られるラマンスペクトルにおいてラマンシフト1340cm-1付近(具体的に、例えば、1320cm-1以上、1360cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するDバンドの半値半幅(以下、「ラマンD半値半幅」という。)が39.0cm-1以下を示す炭素構造を有することが好ましい。
本担体のラマンD半値半幅は、例えば、38.0cm-1以下であることがより好ましく、36.0cm-1以下であることがさらに好ましく、34.0cm-1以下であることがさらに好ましく、32.0cm-1以下であることがさらに好ましく、30.0cm-1以下であることがさらに好ましく、29.0cm-1以下であることがさらに好ましく、28.0cm-1以下であることがさらに好ましく、27.5cm-1以下であることが特に好ましい。
また、本担体のラマンD半値半幅は、例えば、20.0cm-1以上であることが好ましく、21.0cm-1以上であることがより好ましく、22.0cm-1以上であることがさらに好ましく、22.5cm-1以上であることがさらに好ましく、23.0cm-1以上であることがさらに好ましく、23.5cm-1以上であることがさらに好ましく、24.0cm-1以上であることがさらに好ましく、24.5cm-1以上であることが特に好ましい。本担体のラマンD半値半幅は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
ここで、参考文献 (A. Sadezky et al., Carbon 43 (2005) 1731-1742)によれば、炭素材料のラマンスペクトルにおいて、Dバンドは、グラフェン層のエッジ部分のような乱れた格子に近接した炭素原子由来の成分である。そして、Dバンドの半値半幅は、エッジ部周辺の炭素の結晶性を示す。すなわち、炭素構造におけるエッジ部周辺の炭素の結晶性が高くなるにしたがって、当該炭素構造のラマンD半値半幅は小さくなる。したがって、上述した上限値以下のラマンD半値半幅を示す炭素構造は、エッジ部周辺に結晶性が高い炭素を含むため、耐酸化性及び/又は耐久性の向上に貢献する。
一方、小さすぎるラマンD半値半幅を示す炭素構造は、エッジ部周辺の炭素の結晶性が高すぎるため、触媒金属粒子を担持するための適性に劣る。これに対し、上述した下限値以上のラマンD半値半幅を示す炭素構造は、エッジ部周辺に適度な結晶性の炭素を含むため、触媒金属粒子を担持するための適性に優れるとともに、金属担持触媒の耐久性及び/又は触媒機能の向上に寄与する。
本担体は、CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における炭素の(002)回折線から得られる結晶子サイズLc(nm)に対する、当該X線回折図形における炭素の(110)回折線から得られる結晶子サイズLa(nm)の比(以下、「La/Lc比」という。)が2.50以上を示す炭素構造を有することが好ましい。
本担体のLa/Lc比は、例えば、2.55以上であることがより好ましく、2.60以上であることがさらに好ましく、2.65以上であることがさらに好ましく、2.70以上であることがさらに好ましく、2.75以上であることがさらに好ましく、2.80以上であることがさらに好ましく、2.85以上であることがさらに好ましく、2.90以上であることが特に好ましい。
また、本担体のLa/Lc比は、例えば、3.50以下であることが好ましく、3.45以下であることがより好ましく、3.40以下であることがさらに好ましく、3.35以下であることがさらに好ましく、3.30以下であることがさらに好ましく、3.25以下であることがさらに好ましく、3.20以下であることが特に好ましい。本担体のLa/Lc比は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
なお、結晶子サイズLc(nm)は、より具体的には、CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における回折角2θが26°付近(具体的には、例えば、2θが20°以上、28°以下の範囲内)の回折線をピーク分離することで得られる、回折角2θが24.0°±4.0°の範囲内である回折ピークfbroadのブラッグ角及び半値全幅を用いて、次に示すシェラーの式により算出される:Lc=Kλ/βcosθ。この式において、Kは、シェラー定数(0.94)であり、λは、CuKα線の波長(0.15418nm)であり、βは、fbroadの半値全幅(radian)であり、θは、fbroadのブラッグ角(radian)である。
また、結晶子サイズLa(nm)は、より具体的には、CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における回折角2θが43°付近(具体的には、例えば、2θが41°以上、45°以下の範囲内)の回折線のピークトップ角及び半値全幅を用いて、次に示すシェラーの式により算出される:La=Kλ/βcosθ。この式において、Kは、シェラー定数(0.94)であり、λは、CuKα線の波長(0.15418nm)であり、βは、43°付近のピークの半値全幅(radian)であり、θは、回折角2θが43°付近のピークのピークトップ角(radian)である。
炭素材料を比較的高い温度で加熱して黒鉛化を進行させると、その炭素構造はa軸方向に成長するとともに、c軸方向へも成長する。a軸方向の成長に対してc軸方向の成長が大きすぎる場合、得られた炭素構造は小さすぎるLa/Lc比を有する。小さすぎるLa/Lc比を有する炭素構造は、ベーサル面の広がりに対して、酸化劣化の起点となるエッジ部分が多すぎるため、耐酸化性に劣る。また、過剰な黒鉛化は、細孔の高次構造の破壊をもたらす。これに対し、上述した下限値以上のLa/Lc比を示す炭素構造は、細孔の高次構造が維持され、且つ、適度な量のエッジ部分とともに十分な大きさのベーサル面を有するため、耐酸化性及び/又は耐久性の向上に貢献する。
一方、エッジ部分は触媒金属粒子の担持サイトとしても機能する。このため、ベーサル面の広がりに対してエッジ部分の量が少なすぎる炭素構造、すなわち大きすぎるLa/Lc比を有する炭素構造は、触媒金属粒子を担持するための適性を失う。これに対し、上述した上限値以下のLa/Lc比を示す炭素構造は、適度な量のエッジ部分を含むことにより、触媒金属粒子を担持するための適性に寄与する。
本担体は、CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における炭素の(002)回折線から得られる結晶子サイズLcが1.65nm以下を示す炭素構造を有することが好ましい。
本担体のLcは、例えば、1.60nm以下であることがより好ましく、1.55nm以下であることがさらに好ましく、1.50nm以下であることがさらに好ましく、1.45nm以下であることがさらに好ましく、1.40nm以下であることがさらに好ましく、1.35nm以下であることがさらに好ましく、1.30nm以下であることがさらに好ましく、1.25nm以下であることがさらに好ましく、1.20nm以下であることがさらに好ましく、1.15nm以下であることがさらに好ましく、1.10nm以下であることが特に好ましい。
また、本担体のLcは、例えば、0.50nm以上であることが好ましく、0.60nm以上であることがより好ましく、0.70nm以上であることがさらに好ましく、0.80nm以上であることがさらに好ましく、0.85nm以上であることがさらに好ましく、0.90nm以上であることが特に好ましい。本担体のLcは、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。なお、小さすぎるLcを有する炭素構造は、ベーサル面の広がりに対して、酸化劣化の起点となるエッジ部分が多すぎるため、耐酸化性に劣る。これに対し、上述した下限値以上のLcを有する炭素構造は、エッジ部分が多すぎないため、耐酸化性に優れる。
本担体は、CuKα線を用いた粉末X線回折により得られるX線回折図形における炭素の(110)回折線から得られる結晶子サイズLaが2.00nm以上を示す炭素構造を有することが好ましい。
本担体のLaは、例えば、2.10nm以上であることがより好ましく、2.20nm以上であることがさらに好ましく、2.30nm以上であることがさらに好ましく、2.40nm以上であることがさらに好ましく、2.50nm以上であることがさらに好ましく、2.55nm以上であることがさらに好ましく、2.60nm以上であることが特に好ましい。
また、本担体のLaは、例えば、3.40nm以下であることが好ましく、3.30nm以下であることがより好ましく、3.25nm以下であることがさらに好ましく、3.20nm以下であることがさらに好ましく、3.15nm以下であることがより好ましく、3.10nm以下であることが特に好ましい。本担体のLaは、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
本担体は、BET比表面積が150m2/g以上であることが好ましい。本担体のBET比表面積は、例えば、200m2/g以上であることがより好ましく、250m2/g以上であることがさらに好ましく、300m2/g以上であることがさらに好ましく、350m2/g以上であることがさらに好ましく、400m2/g以上であることがさらに好ましく、450m3/g以上であることがさらに好ましく、500m2/g以上であることがさらに好ましく、550m2/g以上であることがさらに好ましく、600m2/g以上であることがさらに好ましく、650m2/g以上であることがさらに好ましく、700m2/g以上であることがさらに好ましく、750m2/g以上であることがさらに好ましく、800m2/g以上であることがさらに好ましく、850m2/g以上であることがさらに好ましく、900m2/g以上であることが特に好ましい。
また、本担体のBET比表面積は、例えば、3000m2/g以下であってもよく、2500m2/g以下であってもよく、2000m2/g以下であってもよく、1500m2/g以下であってもよく、1300m2/g以下であってもよい。本担体のBET比表面積は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本担体のBET比表面積(m2/g)は、温度77Kにおける窒素吸着等温線からBET法により得られる。
本担体は、平均細孔径が5.0nm以下であることが好ましい。本担体の平均細孔径は、例えば、4.8nm以下であることがより好ましく、4.6nm以下であることがさらに好ましく、4.4nm以下であることがさらに好ましく、4.2nm以下であることがさらに好ましく、4.0nm以下であることがさらに好ましく、3.8nm以下であることがさらに好ましく、3.6nm以下であることがさらに好ましく、3.4nm以下であることがさらに好ましく、3.2nm以下であることがさらに好ましく、3.0nm以下であることが特に好ましい。
また、本担体の平均細孔径は、例えば、1.0nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2.0nm以上であることが特に好ましい。本担体の平均細孔径は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本担体の平均細孔径は、温度77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られる。
炭素担体の平均細孔径が大きすぎると、例えば、当該炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒を燃料電池の電極触媒として使用する場合、当該炭素担体の細孔内にアイオノマーが入り込みやすくなり、その結果、当該細孔内に担持された触媒金属粒子がアイオノマーに被覆され、触媒活性の低下が起こりやすい。これに対し、上述した上限値以下の平均細孔径を有する多孔構造は、細孔内にアイオノマーが入り込みにくいため、金属担持触媒の耐久性及び/又は触媒機能の向上に寄与する。
また、炭素担体の平均細孔径が小さすぎると、触媒金属粒子は細孔内よりも炭素担体の外表面に担持されやすくなるため、耐久性が低くなる。これに対し、上述した下限値以上の平均細孔径を有する多孔構造は、細孔内に触媒金属粒子が効果的に担持されるため、金属担持触媒の耐久性の向上に寄与する。
本担体は、孔径が5nm以上、70nm以下の細孔の容積(以下、「5‐70nm細孔容積」という。)(cm3/g)に対する、孔径が5nm未満の細孔の容積(以下、「5nm未満細孔容積」という。)(cm3/g)の比(以下、「5nm未満/5‐70細孔容積比」という。)が2.0以上であることが好ましい。
本担体の5nm未満/5‐70細孔容積比は、例えば、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、3.5以上であることがさらに好ましく、4.0以上であることがさらに好ましく、5.0以上であることがさらに好ましく、6.0以上であることがさらに好ましく、7.0以上であることがさらに好ましく、8.0以上であることがさらに好ましく10.0以上であることがさらに好ましく、12.0以上であることがさらに好ましく、14.0以上であることがさらに好ましく、15.0以上であることが特に好ましい。
また、本担体の5nm未満/5‐70細孔容積比は、例えば、50.0以下であってもよく、45.0以下であることが好ましく、40.0以下であることがより好ましく、35.0以下であることがさらに好ましく、30.0以下であることがさらに好ましく、28.0以下であることがさらに好ましく、27.0以下であることが特に好ましい。本担体の5nm未満/5‐70細孔容積比は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本担体の5nm未満/5‐70細孔容積比は、温度77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られる5‐70nm細孔容積及び5nm未満細孔容積から算出される。
炭素担体の5nm未満/5‐70細孔容積比が小さすぎる(すなわち5nm未満細孔容積に比べて5‐70nm細孔容積が大きすぎる)と、例えば、当該炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒を燃料電池の電極触媒として使用する場合、生成された水が細孔内に入り込みやすく、その結果、当該細孔内に担持された触媒金属粒子の酸化による劣化が起こりやすい。これに対し、上述した下限値以上の5nm未満/5‐70細孔容積比を有する多孔構造は、細孔内に担持された触媒金属粒子が劣化しにくいため、炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒の耐久性及び/又は機能の向上に寄与する。
また、炭素担体の5nm未満/5‐70細孔容積比が大きすぎる(すなわち5‐70nm細孔容積に比べて5nm未満細孔容積が大きすぎる)と、触媒金属粒子は細孔内よりも炭素担体の外表面に担持されやすくなるため、耐久性が低くなる。これに対し、上述した上限値以下の5nm未満/5‐70細孔容積比を有する本担体は、細孔内に触媒金属粒子が効果的に担持されるため、耐久性の向上に寄与する。
本担体は、5‐70nm細孔容積が0.13cm3/g以下であることが好ましい。本担体の5‐70nm細孔容積は、例えば、0.12cm3/g以下であることがより好ましく、0.10cm3/g以下であることがさらに好ましく、0.08cm3/g以下であることがさらに好ましく、0.07cm3/g以下であることがさらに好ましく、0.06cm3/g以下であることがさらに好ましく、0.05cm3/g以下であることが特に好ましい。
また、本担体の5‐70nm細孔容積は、例えば、0.005cm3/g以上であってもよく、0.01cm3/g以上であることが好ましく、0.02cm3/g以上であることが特に好ましい。本担体の5‐70nm細孔容積は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本担体の5‐70nm細孔容積は、温度77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られる。
炭素担体において孔径が比較的大きい細孔は、例えば、当該炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒を燃料電池の電極触媒として用いる場合、生成された水によるプロトンパスが形成されにくい。これに対し、上述した上限値以下の5‐70nm細孔容積を有する多孔構造は、生成された水によるプロトンパスが効果的に形成されるため、炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒の機能の向上に貢献する。
本担体は、5nm未満細孔容積が0.05cm3/g以上であることが好ましい。本担体の5nm未満細孔容積は、例えば、0.10cm3/g以上であることがより好ましく、0.15cm3/g以上であることがさらに好ましく、0.20cm3/g以上であることがさらに好ましく、0.25cm3/g以上であることがさらに好ましく、0.30cm3/g以上であることがさらに好ましく、0.35cm3/g以上であることがさらに好ましく、0.40cm3/g以上であることがさらに好ましく、0.45cm3/g以上であることが特に好ましい。
また、本担体の5nm未満細孔容積は、例えば、1.00cm3/g以下であってもよく、0.95cm3/g以下であることが好ましく、0.90cm3/g以下であることがより好ましく、0.85cm3/g以下であることがさらに好ましく、0.80cm3/g以下であることがさらに好ましく、0.75cm3/g以下であることがさらに好ましく、0.70cm3/g以下であることがさらに好ましく、0.65cm3/g以下であることが特に好ましい。本担体の5nm未満細孔容積は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本担体の5nm未満細孔容積は、温度77Kにおける窒素吸着等温線からBJH法により得られる。
炭素担体において孔径が比較的小さい細孔は、高い触媒活性を示す比較的小さな粒子径を有する触媒金属粒子が担持されやすい。したがって、上述した下限値以上の5nm未満細孔容積を有する多孔構造は、炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒の機能の向上に寄与する。
本担体は、温度77Kで得られる窒素吸着等温線において、飽和蒸気圧(P0)に対する吸着平衡圧(P)の比である相対圧力(P/P0)が0.5における窒素脱着量から窒素吸着量を減じて得られる差(以下、「N2脱着-吸着量差」という。)が50cm3/g以下を示す炭素構造を有することが好ましい。
本担体のN2脱着-吸着量差は、例えば、45cm3/g以下であることがより好ましく、40cm3/g以下であることがさらに好ましく、35cm3/g以下であることがさらに好ましく、30cm3/g以下であることがさらに好ましく、25cm3/g以下であることがさらに好ましく、20cm3/g以下であること特に好ましい。また、本担体のN2脱着-吸着量差は、例えば、0cm3/g以上であってもよく、1cm3/g以上であってもよい。本担体のN2脱着-吸着量差は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
炭素担体に含まれる細孔の連通性が高くなるにつれて、当該炭素担体の窒素吸着等温線が示すヒステリシスは低減され、当該炭素担体のN2脱着-吸着量差は小さくなる。したがって、上述した上限値以下のN2脱着-吸着量差を示す多孔構造(すなわち、連通性の高い多孔構造)は、例えば、炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒を燃料電池の電極触媒として使用した場合において、細孔内で生成された水が効果的に排出されるため、当該金属担持触媒の耐久性及び/又は触媒機能の向上に寄与する。
本担体は、メディアン径が3.0μm以下であることが好ましい。本担体のメディアン径は、例えば、2.5μm以下であることがより好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.9μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、0.7μm以下であることが特に好ましい。
また、本担体のメディアン径は、例えば、0.1μm以上であってもよく、0.2μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.4μm以上であることがさらに好ましく、0.5μm以上であることが特に好ましい。本担体のメディアン径は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本担体のメディアン径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
炭素担体のメディアン径が大きすぎる場合、当該炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒を含む電極の触媒層の厚さが大きくなりすぎる。これに対し、上述した上限値以下のメディアン径を有する炭素担体は、当該炭素担体に触媒金属粒子を担持して得られる金属担持触媒を含む触媒層の厚さの低減に寄与する。
また、炭素担体のメディアン径が小さすぎる場合、当該炭素担体に担持する触媒金属粒子の分散性が不十分となる。これに対し、上述した下限値以上のメディアン径を有する炭素担体は、当該炭素担体に担持される触媒金属粒子の分散性の向上に寄与する。また、炭素担体のメディアン径が小さすぎると、例えば、当該炭素担体を含む金属担持触媒を燃料電池の電極触媒として使用する場合、当該電極の触媒層において当該金属担持触媒が密になりすぎるため、プロトン及び酸素の輸送経路が複雑となって輸送抵抗が増大し、その結果、出力特性(例えば、高電流密度範囲における電圧)が低下しやすい。これに対し、上述した下限値以上のメディアン径を有する炭素担体は、電極の触媒層におけるプロトン及び酸素の輸送抵抗の増大を抑制し、出力特性の向上に寄与する。
本担体は、本担体が担持された作用電極を有する回転リングディスク電極装置を用いて、当該作用電極を1.4V(vs.NHE)の電圧を印加した状態で3秒保持し、その後、0V(vs.NHE)の電圧を印加した状態で3秒保持するというサイクルを17000回繰り返す電位サイクル試験において、下記式(I)で算出されるnサイクル終了時の電気二重層容量の変化量(A・sec)の算術平均値(以下、「平均dQ」という。)が、-3.5×10-5(A・sec)以上であることが好ましい。
なお、上記式(I)において、nは電位サイクル試験におけるサイクル数であって、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000又は17000である。したがって、平均dQは、上記式(I)で得られる8つの電気二重層容量変化量(A・sec)の合計を8で除して得られる。
本担体の平均dQは、例えば、-3.0×10-5(A・sec)以上であることがより好ましく、-2.0×10-5(A・sec)以上であることがさらに好ましく、-1.0×10-5(A・sec)以上であることがさらに好ましく、-5.0×10-6(A・sec)以上であることがさらに好ましく、-3.0×10-6(A・sec)以上であることが特に好ましい。また、本担体の平均dQは、例えば、5.0×10-4(A・sec)以下であってもよいく、1.0×10-4(A・sec)以下であってもよく、5.0×10-5(A・sec)以下であってもよい。本担体の平均dQは、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
炭素担体の耐酸化性が高くなるほど、当該炭素担体の平均dQは大きくなる。すなわち、炭素担体の平均dQが負の値である場合、その絶対値が小さいほど、当該炭素担体の耐酸化性が高いことを意味する。また、炭素担体の平均dQが正の値である場合、その絶対値が大きいほど、当該炭素担体の耐酸化性が高いことを意味する。
本担体は、炭素化材料であることが好ましい。炭素化材料は、有機物を含む原料の炭素化により得られる。炭素化の原料における有機物の含有量は、例えば、5重量%以上、90重量%以下であってもよく、10重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。
原料に含まれる有機物は、炭素化できるものであれば特に限られない。有機物に含まれ
る有機化合物は、ポリマー(例えば、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂)であっても
よいし、及び/又は、より分子量が小さい有機化合物であってもよい。
具体的に、有機物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリアクリル酸メチル共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸-ポリメタリルスルホン酸共重合体、ポリアクリロニトリル-ポリメタクリル酸メチル共重合体、フェノール樹脂、ポリフルフリルアルコール、フラン、フラン樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミン、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、窒素含有キレート樹脂(例えば、ポリアミン型、イミノジ酢酸型、アミノリン酸型及びアミノメチルホスホン酸型からなる群より選択される1種以上)、ポリアミドイミド樹脂、ピロール、ポリピロール、ポリビニルピロール、3-メチルポリピロール、アクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ビニルピリジン、ポリビニルピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、ピラン、モルホリン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、キノキサリン、アニリン、ポリアニリン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ポリスルフォン、ポリアミノビスマレイミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ベンゾイミダゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、リグニン、キチン、キトサン、ピッチ、絹、毛、ポリアミノ酸、核酸、DNA、RNA、ヒドラジン、ヒドラジド、尿素、サレン、ポリカルバゾール、ポリビスマレイミド、トリアジン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリウレタン、ポリアミドアミン及びポリカルボジイミドからなる群より選択される1種以上であってもよい。
本担体は、窒素を含むことが好ましい。すなわち、本担体は、その炭素構造に窒素原子を含むことが好ましい。窒素を含む本担体は、窒素を含む炭素化材料であることが好ましい。窒素含有炭素化材料は、例えば、窒素含有有機物を含む原料の炭素化により得られる。窒素含有有機物は、窒素含有有機化合物を含むことが好ましい。窒素含有有機化合物は、その分子内に窒素原子を含む有機化合物であれば特に限られない。また、本担体に含まれる窒素は、窒素ドープ処理により導入されたものであってもよい。
本担体の窒素含有量は、例えば、0.10重量%以上であってもよく、0.15重量%以上であることが好ましく、0.20重量%以上であることがより好ましく、0.25重量%以上であることがより一層好ましく、0.30重量%以上であることが特に好ましい。本担体の窒素含有量は、例えば、10.00重量%以下であってもよい。炭素担体の窒素含有量は、当該炭素担体の元素分析(燃焼法)により得られる。
本担体は、有機物及び金属を含む原料の炭素化により得られる炭素化材料であることが好ましい。この場合、本担体は、炭素化後に金属除去処理が施された炭素化材料であってもよい。金属除去処理は、炭素化材料に含まれる原料由来の金属の量を低減する処理である。具体的に、金属除去処理は、例えば、酸による洗浄処理及び/又は電解処理であることが好ましい。
本担体が有機物及び金属を含む原料の炭素化により得られる炭素化材料である場合、本担体は、当該炭素化の原料に由来する金属(以下、「原料金属」という。)を含むこととしてもよい。この場合、本担体は、その多孔質構造を構成する骨格の内部に原料金属を含む。本担体が上述のように金属除去処理を経て製造される炭素化材料であっても、本担体の骨格の内部には原料金属が残存する。本担体に含まれる原料金属のうち、本担体の骨格の内部に含まれる原料金属の重量は、本担体の骨格の表面に含まれる原料金属の重量より大きいこととしてもよい。
本担体の骨格の内部の原料金属は、例えば、当該骨格に表面エッチング処理を行い、当該エッチング処理により露出した断面を分析することで検出され得る。すなわち、この場合、本担体の1つの粒子をエッチング処理すると、エッチング処理により露出した当該粒子の断面に原料金属が検出される。本担体に含まれる原料金属は、例えば、本担体の誘導結合プラズマ発光分光分析によって検出することができる。
本担体の原料金属含有量(本担体の重量に対する、本担体に含まれる原料金属の重量の割合)は、例えば、0.001重量%以上であってもよく、0.005重量%以上であってもよく、0.01重量%以上であってもよく、0.02重量%以上であってもよい。また、本担体の原料金属含有量は、例えば、5重量%以下であってもよく、4重量%以下であってもよく、3重量%以下であってもよく、2重量%以下であってもよく、1重量%以下であってもよく、0.8重量%以下であってもよく、0.5重量%以下であってもよい。本担体の原料金属含有量は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本担体の原料金属含有量は、例えば、本担体の誘導結合プラズマ発光分光分析により得られる。
原料金属は、遷移金属であることが好ましい。すなわち、原料金属は、周期表の3族から12族に属する遷移金属であることが好ましく、周期表の3族から12族の第4周期に属する遷移金属であることが特に好ましい。
原料金属は、白金以外の遷移金属であってもよい。また、原料金属は、貴金属(例えば、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及び金(Au))以外の遷移金属であってもよい。
具体的に、原料金属は、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタノイド(例えば、ガドリニウム(Gd))及びアクチノイドからなる群からなる群より選択される1種以上であってもよく、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、Fe、Co、Ni、及びZnからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、Co、Ni、及びZnからなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
炭素化材料の製造における炭素化は、原料に含まれる有機物が炭素化される温度で当該原料を加熱することにより行う。炭素化温度は、原料が炭素化される温度であれば特に限られず、例えば、1200℃以上であることが好ましく、1300℃以上であることがより好ましく、1400℃以上であることがさらに好ましく、1500℃以上であることが特に好ましい。
また、炭素化温度は、例えば、3000℃以下であってもよく、2500℃以下であることが好ましく、2000℃以下であることがより好ましく、1900℃以下であることが特に好ましい。炭素化温度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。炭素化温度までの昇温速度は特に限られず、例えば、0.5℃/分以上、300℃/分以下であってもよい。炭素化は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
炭素化は、常圧(大気圧)下で行ってもよいが、加圧下(大気圧より大きい圧力下)で行うことが好ましい。加圧下で炭素化を行う場合、当該炭素化を行う雰囲気の圧力は、例えば、ゲージ圧で0.05MPa以上であってもよく、ゲージ圧で0.15MPa以上であることが好ましく、0.20MPa以上であることがより好ましく、0.40MPa以上であることがより一層好ましく、0.50MPa以上であることが特に好ましい。炭素化を行う雰囲気の圧力の上限値は特に限られないが、当該圧力は、例えば、ゲージ圧で10MPa以下であってもよい。
本担体は、炭素化後に黒鉛化処理が施された炭素化材料であることが好ましい。すなわち、本担体は、例えば、有機物を含む原料の炭素化により得られた炭素化材料に、さらに黒鉛化処理を施すことにより得られた炭素化材料であることが好ましい。
黒鉛化処理は、黒鉛化が進行する温度で炭素化材料を加熱することにより行う。黒鉛化処理において炭素化材料を加熱する加熱温度は、当該炭素化材料において黒鉛化が進行する温度であれば特に限られないが、当該炭素化材料を得るための炭素化温度より高い温度であることが好ましい。
具体的に、黒鉛化処理における加熱温度は、例えば、1300℃以上であってもよく、1400℃以上であることが好ましく、1500℃以上であることがより好ましく、1600℃以上であることがさらに好ましく、1700℃以上であることがさらに好ましく、1750℃以上であることがさらに好ましく、1800℃以上であることが特に好ましい。
また、黒鉛化処理における加熱温度は、例えば、3000℃以下であってもよく、2500℃以下であることが好ましく、2400℃以下であることがより好ましく、2300℃以下であることがさらに好ましく、2250℃以下であることがさらに好ましく、2200℃以下であることがさらに好ましく、2150℃以下であることがさらに好ましく、2100℃以下であることが特に好ましい。黒鉛化処理における加熱温度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。黒鉛化処理における加熱温度までの昇温速度は特に限られず、例えば、0.5℃/分以上、300℃/分以下であってもよい。黒鉛化処理は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
本担体が炭素化後に黒鉛化処理が施された炭素化材料である場合、当該黒鉛化処理後の炭素化材料には粉砕処理を施さないことが好ましい。すなわち、本担体の製造においては、例えば、原料の炭素化により得られた炭素化材料に粉砕処理を施すことにより、その粒径(例えば、メディアン径)を調整し、その後、粉砕された炭素化材料に黒鉛化処理を施し、当該黒鉛化処理後の炭素化材料には粉砕処理を施さないことが好ましい。
本担体は、触媒活性を示す炭素材料であることが好ましい。すなわち、この場合、本担体は、それ自身が単独で触媒活性を示す炭素触媒である。炭素触媒である本担体は、上述のように有機物と金属とを含む原料を炭素化することにより得られる炭素化材料であることが好ましい。
本担体が示す触媒活性は、例えば、還元活性及び/又は酸化活性であることが好ましく、酸素還元活性及び/又は水素酸化活性であることがより好ましく、少なくとも酸素還元活性であることが特に好ましい。
本担体は、触媒金属粒子を担持するための炭素担体である。この点、本実施形態に係る金属担持触媒(以下、「本触媒」という。)は、本担体と、本担体に担持された触媒金属粒子とを含む。
本触媒は、本担体に触媒金属粒子を担持することにより製造される。すなわち、例えば、本担体に、触媒金属粒子を構成すべき金属の前駆体を含浸させ、次いで、当該前駆体を含浸した本担体に還元処理を施すことにより、本担体に当該金属を含む触媒金属粒子を担持する。
触媒金属粒子は、触媒活性を示す金属粒子であれば特に限られないが、例えば、還元活性及び/又は酸化活性を示す金属粒子であることが好ましく、酸素還元活性及び/又は水素酸化活性を示す金属粒子であることがより好ましく、少なくとも酸素還元活性を示す金属粒子であることが特に好ましい。
具体的に、触媒金属粒子は、貴金属を含む金属粒子(以下、「貴金属粒子」という。)であることが好ましい。貴金属粒子は、純貴金属(合金を形成していない貴金属)及び/又は貴金属合金(貴金属と、貴金属以外の金属(以下、「非貴金属」という。)との合金)を含む。貴金属合金は、1種以上の貴金属と、1種以上の非貴金属との合金である。
貴金属は、例えば、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)及び金(Au)からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、Ru、Pd、Rh、Ir及びPtからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、Ptであることが特に好ましい。すなわち、貴金属粒子は、白金粒子(白金を含む金属粒子)であることが特に好ましい。白金粒子は、純白金(合金を形成していない白金)及び/又は白金合金(白金と非貴金属との合金)を含む。
貴金属合金を構成する非貴金属は、貴金属と合金を形成するものであれば特に限られないが、貴金属以外の遷移金属であることが好ましい。具体的に、貴金属合金に含まれる非貴金属は、例えば、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオビウム(Nb)及びセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、Fe、Co及びNiからなる群より選択される1種以上であることがより好ましく、Co及びNiからなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
本担体が有機物及び原料金属を含む原料の炭素化材料である場合、本担体に担持される触媒金属粒子は、当該原料金属と同一種の金属を含むこととしてもよいし、当該原料金属と同一種の金属を含まないこととしてもよい。
本触媒は、本触媒の重量に対する、本触媒に含まれている貴金属(より具体的には、触媒金属粒子に含まれている貴金属)の重量の割合(以下、「貴金属含有量」という。)が10重量%以上であることが好ましい。本触媒の貴金属含有量は、例えば、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましく、35重量%以上であることがさらに好ましく、40重量%以上であることがさらに好ましく、45重量%以上であることがさらに好ましく、47重量%以上であることが特に好ましい。
また、本触媒の貴金属含有量は、例えば、90重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよく、70重量%以下であってもよく、60重量%以下であってもよい。本触媒の貴金属含有量は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。本触媒の貴金属含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析により得られる。
本実施形態に係る電極(以下、「本電極」という。)は、本触媒を含む。すなわち、本電極は、例えば、電極基材と、当該電極基材に担持された本触媒と、を含む電池電極である。本電極は、電池電極であることが好ましい。すなわち、本電極は、例えば、燃料電池(例えば、固体高分子形燃料電池)、空気電池、水電解槽(例えば、固体高分子形水電解槽)、レドックスフロー電池、又はハロゲン電池の電極であることが好ましい。
本電極は、カソードであってもよいし、アノードであってもよいが、カソードであることが好ましい。すなわち、本電極は、燃料電池、空気電池、水電解槽、レドックスフロー電池、又はハロゲン電池のカソード又はアノードであり、好ましくはカソードである。
本実施形態に係る電池(以下、「本電池」という。)は、本電極を含む。具体的に、本電池は、本電極を含む燃料電池(例えば、固体高分子形燃料電池)、空気電池、レドックスフロー電池、又はハロゲン電池であることが好ましい。本電池は、本電極を含む膜/電極接合体(MEA)を有することが好ましい。
本電池は、カソード又はアノードとして本電極を有する電池であり、好ましくはカソードとして本電極を有する電池である。すなわち、本電池は、カソード又はアノードとして本電極を有する燃料電池、空気電池、レドックスフロー電池、又はハロゲン電池であり、好ましくはカソードとして本電極を有する燃料電池、空気電池、レドックスフロー電池、又はハロゲン電池である。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
[炭素担体の製造]
1.0gのポリアクリロニトリルと、1.0gの2-メチルイミダゾールと、6.0gの塩化亜鉛(ZnCl2)と、30gのジメチルホルムアミドとを混合した。得られた混合物から乾燥により溶媒を除去した。乾燥した混合物を大気中250℃で加熱して不融化を行った。
不融化後の混合物を、窒素雰囲気中、0.90MPaのゲージ圧力下、1500℃で加熱することにより、炭素化を行った。炭素化により得られた炭素化材料に希塩酸を加え、撹拌した。その後、炭素化材料を含有する懸濁液を、ろ過膜を使用してろ過し、ろ液が中性になるまで蒸留水で炭素化材料を洗浄した。こうして酸洗浄による金属除去処理を行った。
微粉砕機によって、金属除去処理後の炭素化材料を、その粒子径の中央値が0.4μm以下になるまで粉砕した。粉砕後の炭素化材料の真空乾燥を行い、水分を除去した。その後、炭素化材料に窒素雰囲気中で300℃の加熱処理を施した。こうして得られた炭素化材料を炭素担体C1500として用いた。
また、炭素化温度として1500℃に代えて2000℃を採用した以外は上述の炭素担体C1500と同様の方法により得られた炭素化材料を炭素担体C2000として用いた。
また、炭素担体C1500を窒素雰囲気中、常圧下、1800℃、1900℃、2000℃、2100℃、2200℃又は2400℃で加熱することにより、黒鉛化処理を行った。こうして1800℃、1900℃、2000℃、2100℃、2200℃及び2400℃の黒鉛化処理によって得られた炭素化材料をそれぞれ、炭素担体C1500-G1800、炭素担体C1500-G1900、炭素担体C1500-G2000、炭素担体C1500-G2100、炭素担体C1500-G2200及び炭素担体C1500-G2400として用いた。
市販のケッチェンブラック(EC600JD、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を炭素担体KBとして用いた。また、炭素担体KBを窒素雰囲気中、常圧下、2000℃で加熱することにより、黒鉛化処理を行った。この黒鉛化処理によって得られた炭素材料を炭素担体KB-G2000として用いた。
市販の多孔質炭素材料(CNovel、東洋炭素株式会社製)を炭素担体PCとして用いた。また、炭素担体PCを常圧下、1700℃又は2000℃で加熱することにより、黒鉛化処理を行った。さらに黒鉛化後の炭素材料を、微粉砕機によって、その粒子径の中央値が0.4μm以下になるまで粉砕した。粉砕後の炭素材料の真空乾燥を行い、水分を除去した。その後、炭素材料に空気雰囲気中、540℃で加熱する賦活化処理を施した。こうして1700℃及び2000℃の黒鉛化処理を経て得られた炭素材料をそれぞれ、炭素担体PC-G1700A及び炭素担体PC-G2000Aとして用いた。
[ラマン分光法]
炭素担体をラマン分光法により解析した。ラマンスペクトルは、HORIBA顕微レーザーラマン分光測定装置(LabRAM、HORIBA Jobin Yvon)を用いて測定した。測定に用いたレーザーは532nmの励起波長で、出力が50mW、減光フィルターD3を介し、露光90秒×積算2回の条件で測定することにより、ラマンスペクトルを得た。
得られたラマンスペクトルにおいて、ベースライン補正を施した。すなわち、ラマンシフト(cm-1)が600cm-1付近の散乱強度と、2000cm-1付近の散乱強度とを結ぶ直線をベースラインに決定し、散乱スペクトルの各強度から当該ベースラインを差し引くことでベースライン補正を行った。
次いでラマンシフト1340cm-1付近(具体的には、1320cm-1以上、1360cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するDバンドを特定した。そして、Dバンドの強度Id(Dバンドのピークトップの強度)に対応するラマンシフト(cm-1)Adから、当該Dバンドの強度Idの半分の強度に対応するラマンシフト(cm-1)Bdを減じることにより、ラマンD半値半幅(cm-1)を算出した。すなわち、炭素担体のラマンD半値半幅は次の式により算出した:ラマンD半値半幅(cm-1)=Ad(cm-1)-Bd(cm-1)。
次いでラマンシフト1580cm-1付近(具体的には、1550cm-1以上、1610cm-1以下の範囲内)にピークトップを有するGバンドと、ラマンシフト2700cm-1付近(具体的には、2670cm-1以上、2730cm-1以下の範囲内)にピークトップを有する2Dバンドとを特定した。そして、2Dバンドの強度I2d(2Dバンドのピークトップの強度)をGバンドの強度Ig(Gバンドのピークトップの強度)で除することにより、ラマン2D/G比を算出した。すなわち、炭素担体のラマン2D/G比は次の式により算出した:ラマン2D/G比=I2d/Ig。
ここで、図1には、ラマンスペクトルの一例として、炭素担体C1500-G1800のラマン分光法により得られたラマンスペクトルを解析した結果を示す。図1において、横軸はラマンシフト(cm-1)を示し、縦軸はベースライン補正後の散乱強度を示し、AdはDバンドのピークトップに対応するラマンシフト(cm-1)を示し、Bdは当該Adより低波数側でDバンド強度Id(Dバンドのピークトップの高さ)の半分の強度を示すラマンスペクトルに対応するラマンシフト(cm-1)を示す。また、図1には、Gバンドの強度Ig(Gバンドのピークトップの高さ)及び2Dバンドの強度I2d(2Dバンドのピークトップの高さ)もそれぞれ示す。
[粉末X線回折]
炭素担体の粉末X線回折(XRD)測定を行った。まず炭素担体のXRD測定で得られた回折パターンから、炭素の(002)回折線の解析を行い、当該炭素担体が有する炭素構造の結晶子サイズLc(nm)を求めた。
まず、炭素(002)回折線の解析においては、「日本学術振興会 第117委員会」により作成された「炭素材料の格子定数および結晶子の大きさ測定法」に基づいて補正を行った。この補正の詳細については、参考文献(炭素,No.221,pp.52-60(2006))に記載されている。
具体的に、「炭素材料の格子定数および結晶子の大きさ測定法」においては、各測定角度における測定強度を、事前に次の式で計算しておいた各測定角度における補正因子FCTで除することで補正を行う:補正因子FCT=L・P・A・Fc2。
ここで、上記補正因子の式において、Lは次の式で表され:L=1/(sin2θ・cosθ)、Pは次の式で表され:P=(1+cos22θ・cos22θ´)/(1+cos22θ´)、Aは次の式で表される:A=[1-sin2θ/2μ´br][1-exp(-2μ´t/sinθ)]+(2t・cosθ/br)exp(-2μ´t/sinθ)。これらの式において、θはゴニオメータの角度であり、θ´はカウンターモノクロメータを使用した時のモノクロメータ結晶の回折角であり、カウンターモノクロメータを使わないときは0°である。μ´は試料の見かけの線吸収係数(0.4219mm-1)であり、tは、サンプルフォルダにおける試料深さであり、brは次の式で与えられる試料面におけるX線の照射幅である:br=Rsinβ。この式において、βは発散スリット幅(2/3°)であり、Rはゴニオメータ半径(285mm)である。
また、上記補正因子の式において、Fcは原子散乱因子であり、次の式で得られる:Fc=(2.26069・exp(-0.226907・s2)+1.56165・exp(-0.00656665・s2)+1.05075・exp(-0.0975618・s2)+0.839259・exp(-0.555949・s2)+0.286977)。この式において、λはX線の波長であり、sは次の式で与えられる:s=(sinθ)/λ。
そして、得られたXRD図形において回折角2θが26°付近(具体的には、例えば、2θが20°以上、28°以下の範囲内)の回折ピークのピーク分離を行った。ピークの分離は、重なり合った回折ピークをガウス型の基本波形の重ね合わせにより近似することにより行った。バックグラウンド補正を行ったXRD図形に対して、各成分となるガウス関数のピーク強度、ピーク半値全幅及びピーク位置をパラメータとして用いて最適化することにより、フィッティングを行った。バックグラウンド補正は、回折角(2θ)が10~20°付近の回折線と、30~40°付近の回折線とを結んだ直線をバックグラウンドとして、当該バックグラウンドを各回折強度から差し引くことで行った。
そして、ピーク分離は、回折角2θ=26°付近の回折ピーク(当該回折角2θ=26°付近にピークトップを有する回折ピーク)を、3つの回折ピークfbroad、fmiddle及びfnarrowのうち少なくとも1つの回折ピークに分離することにより行った。
回折ピークfbroadは、その回折角(2θ)が24.0°±4.0°であり、半値全幅が10°±7.0°である回折ピークとして定義される。回折ピークfmiddleは、その回折角(2θ)が26.0°±1.0°であり、半値全幅が2.0°±0.9°である回折ピークとして定義される。回折ピークfnarrowは、その回折角(2θ)が26.0°±0.6°であり、半値全幅が0.5°±0.5°である回折ピークとして定義される。なお、回折角(2θ)及び半値全幅が異なる2種以上のfmiddle及び/又はfnarrowが同時に現れることもあり得る。
より具体的に、このピーク分離は、以下の手順で行った。上記のバックグラウンド補正を行ったCuKα線によるXRD図形において、回折角2θ=26°付近にピークトップを有する回折ピークをガウス型の基本波形の重ね合わせにより近似し、ピーク強度、ピーク半値全幅及びピーク位置を最適化し、当該回折ピークに含まれる上記3つの回折ピークのうち少なくとも一つのピーク(例えば、2つ以上の回折ピークが含まれる場合には、重なり合った当該2つ以上の回折ピークの各々)をカーブフィッティングすることによりピーク分離を行った。
なお、カーブフィッティングは残差平方和が最も小さくなるように行った。ここで、残差平方とは、測定した各回折角における残差の平方のことをいい、残差平方和とはこれらの残差平方の和である。また、残差とは、補正されたCuKα線によるXRD図形における回折角2θ=26°付近にピークトップを有する回折ピークの強度と、分離して得られた回折ピークの強度和(例えば、ピーク分離により3つの回折ピークfbroad、fmiddle及びfnarrowが得られた場合には当該3つの回折ピークの強度の合計)との差のことをいう。このようなピーク分離により、上述した3つの回折ピークfbroad、fmiddle及びfnarrowのうち、少なくとも1つの回折ピークが得られた。
図2Aには、炭素担体C1500-G2000について得られたXRD図形において回折角2θが26°付近の回折ピークのピーク分離を行った結果を示す。図2Aに示すように、ピーク分離によって、3つの回折ピークfbroad、fmiddle及びfnarrowが得られた。
また、図2Bには、炭素担体C1500-G2400について得られたXRD図形において回折角2θが26°付近の回折ピークのピーク分離を行った結果を示す。図2Bに示すように、ピーク分離によって、1つの回折ピークfbroadと、1つの回折ピークfmiddleと、2つの回折ピークfnarrow1及びfnarrow2とからなる4つの回折ピークが得られた。
そして、上述のピーク分離により得られた回折ピークfbroadを解析することにより、結晶子サイズLc(nm)を算出した。すなわち、結晶子サイズLcは、上記ピーク分離で得られた回折ピークfbroadのブラッグ角及び半値全幅を、次のシェラーの式に代入して算出した:Lc=Kλ/βcosθ。
この式において、Kは、シェラー定数(0.94)であり、λは、CuKα線の波長(0.15418nm)であり、βは、fbroadの半値全幅(radian)であり、θは、fbroadのブラッグ角(radian)である。
一方、炭素担体のXRDで得られた回折パターンから、炭素の(110)回折線の解析を行い、当該炭素担体が有する炭素構造の結晶子サイズLa(nm)を求めた。ここで、炭素の(110)回折線の解析においては、上述した「日本学術振興会 第117委員会」による「炭素材料の格子定数および結晶子の大きさ測定法」に基づく補正及びピーク分離は行わなかった。
すなわち、得られたXRD図形にバックグラウンド補正のみを行った。バックグラウンド補正は、回折角2θが30~40°付近の回折線と、50~60°付近の回折線とを結んだ直線をバックグラウンドとして、当該バックグラウンドを各回折強度から差し引くことで行った。
そして、回折角2θが43°付近(具体的には、例えば、2θが41°以上、45°以下の範囲内)の回折ピークを解析することにより、結晶子サイズLa(nm)を算出した。すなわち、結晶子サイズLaは43°付近の回折ピークの半値全幅及びピークトップ角を、次のシェラーの式に代入して算出した:La=Kλ/βcosθ。
この式において、Kは、シェラー定数(0.94)であり、λは、CuKα線の波長(0.15418nm)であり、βは、回折角2θが43°付近のピークの半値全幅(radian)であり、θは、回折角2θが43°付近のピークのピークトップ角(radian)である。
図2Cには、炭素担体C1500-G2000について得られたXRD図形における回折角2θが43°付近の回折ピークを示す。図2Cにおいて、「1」は、回折角2θが43°付近のピークのピークトップの高さ(ピーク強度)を示し、「1/2」は、当該ピーク強度の半分の強度を示し、「半値全幅」は、当該ピーク強度の半分の強度に対応するピークの幅を示す。
[比表面積、平均細孔径、細孔容積、吸着等温線におけるヒステリシス]
炭素担体の窒素吸着法による比表面積、平均細孔径、細孔容積及び吸着等温線におけるヒステリシスを、比表面積・細孔分布測定装置(TriStar II 3020、株式会社島津製作所製)及び付属の解析ソフトウェア(TriStar II 3020)を用いて測定した。
すなわち、まず0.1gの炭素担体を100℃、6.7×10-2Paで3時間保持することにより、当該炭素担体に吸着している水分を取り除いた。次いで、77Kの温度で、窒素ガスの圧力の変化に伴う炭素担体への窒素吸着量の変化を測定することにより、温度77Kにおける窒素吸着等温線を得た。
図3には、温度77Kで得られる窒素吸着等温線の一例として、炭素担体C1500-G2000について得られた窒素吸着等温線を示す。図3に示す吸着等温線において、横軸は飽和蒸気圧(P0)(77Kの窒素では1.01×105Pa)に対する吸着平衡圧(P)の比である相対圧力(P/P0)を示し、縦軸は窒素吸着量(cm3/g)を示す。図3に示すように、吸着側等温線(相対圧力を増加させながら測定された吸着等温線)と、脱着側等温線(相対圧力を減少させながら測定された吸着等温線)とが得られた。
そして、窒素吸着等温線の相対圧力(P/P0)が0.5における窒素脱着量から窒素吸着量を減じることにより、当該窒素脱着量と当該窒素吸着量との差であるN2脱着-吸着量差(cm3/g)を算出した。
また、温度77Kにおける窒素吸着等温線からBET法により、炭素担体の窒素吸着法によるBET比表面積(m2/g)を得た。また、温度77Kにおける窒素吸着等温線から、BJH法により、炭素担体の平均細孔径(nm)を算出した。また、細孔径が5nm未満の各細孔の容積(cm3/g)を積算することにより、5nm未満細孔容積(cm3/g)を算出した。同様に、細孔径が5nm以上、70nm以下の各細孔の容積(cm3/g)を積算することにより、5‐70nm細孔容積(cm3/g)を算出した。そして、5‐70nm細孔容積(cm3/g)に対する、5nm未満細孔容積(cm3/g)の比(5nm未満/5‐70nm細孔容積比)を算出した。
[メディアン径]
炭素担体のメディアン径を測定した。まず炭素担体の分散液を調製した。すなわち、ガラス容器に炭素担体10mg、界面活性剤(中性洗剤)1滴(約0.05mL)、及び蒸留水40mLを入れた。その後、ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所、MODEL:US-150T TIPΦ12)を用い、OUTPUT ADJを8に合わせて20分間分散処理を行い、炭素担体の分散液を得た。
次いで、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所、SALD-7100H)を用いて、適切な散乱光強度が得られるように炭素担体の分散液をセル中に滴下し、横軸が粒子径(μm)を示し、縦軸が積算相対粒子量(%)を示す粒度分布データを取得した。粒度分布データにおいて、積算相対粒子量が50%となる粒子径を、炭素担体のメディアン径(μm)として得た。
[耐酸化性]
未だ触媒金属粒子を担持していない炭素担体単独の耐酸化性について、回転リングディスク電極装置(RRDE-3A回転リングディスク電極装置ver.1.2、ビー・エー・エス株式会社製)と、デュアル電気化学アナライザー(CHI700C、株式会社ALS社製)とを用いて、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定及び電位サイクル試験を行った。そして、各サイクルでの電気二重層容量(Q)の変化量(dQ)を求め、その平均値により炭素担体の耐酸化性を評価した。以下、具体的に評価方法について説明する。
まず、三極式の回転リングディスク電極装置における炭素担体(触媒金属粒子が担持されていない炭素担体)を含む作用電極を準備した。具体的に、炭素担体5mgと、5%ナフィオン(登録商標)(シグマアルドリッチ社製、ナフィオン 過フッ素化イオン交換樹脂、5%溶液(製品番号:510211))50μLと、水400μLと、イソプロピルアルコール100μLとを混合してスラリーを調製した。次いで、このスラリーに超音波処理を10分施し、その後、ホモジナイザー処理を2分施した。そして、得られたスラリーを、炭素担体の電極の単位面積あたりの含有量が0.1mg/cm2となるように、作用電極(RRDE-3A用リングディスク電極 白金リング-金ディスク電極 ディスク直径4mm、ビー・エー・エス株式会社製)に塗布し、乾燥することにより、当該炭素担体が担持された作用電極を作製した。
また、対極としては白金電極(Ptカウンター電極23cm、ビー・エー・エス株式会社製)を使用し、参照極としては可逆式水素電極(RHE)(溜め込み式可逆水素電極、株式会社イーシーフロンティア製)を使用した。こうして、炭素担体を含む作用電極、対極としての白金電極、及び参照極としての可逆式水素電極(RHE)を有する回転リングディスク電極装置を得た。電解液としては、0.1M過塩素酸水溶液を使用した。
そして、上記回転リングディスク電極装置を用いた電位サイクル試験の開始時(BOL:Beginning Of Life)における電気二重層容量「Q‐BOL」(A・sec)を測定した。
すなわち、炭素担体を含む作用電極を有する、三極式の回転リングディスク電極装置を用いたサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を実施した。具体的に、まず窒素バブリングを10分行い、電解液内の酸素を除去した。次いで、下記プロトコルにて、CV測定を行った。すなわち、電位範囲0.0V~1.0V(vs.NHE(標準水素電極))にて、掃引速度50mV/secで電位掃引を5サイクル行い(1サイクル:1.0V→0.0V→1.0V)、電流を電位の関数として記録した。
ここで、得られた5サイクル目のボルタモグラムから積分により得られたCV面積(A・V)を掃引速度(V/sec)で除することにより、耐久性試験開始時の電気二重層容量「Q‐BOL」(A・sec)を得た。なお、得られたボルタモグラムにおいて、還元電流が負の値、酸化電流が正の値となるように数値に符号を付した。
ここで、図4Aには、上記ボルタモグラムの一例として、炭素担体C1500-G1800を含む作用電極を有する回転リングディスク電極装置を用いて得られた5サイクル目のボルタモグラムを示す。図4Aにおいて、横軸は電位(V vs.NHE)を示し、縦軸は電流(A)を示す。図4Aに示すボルタモグラムにおいて、積分により得られた、1.0Vから0.0Vへの電位掃引印加時の曲線と、0.0Vから1.0Vへの電位掃引印加時の曲線とで囲まれた領域(ハッチングが付された領域)の面積(A・V)を掃引速度(50mV/sec=0.05V/sec)で除することにより、電気二重層容量(A・sec)を得た。
次いで、耐酸化性試験(電位サイクル試験)を行った。すなわち窒素バブリングを行いながら、電解液内を飽和窒素で満たした。そして、まず電極を1.4V(vs.NHE)の電圧を印加した状態で3秒保持し、その後、0V(vs.NHE)の電圧を印加した状態で3秒保持するという1サイクルの間の電流を電位の関数として記録した。そして、このサイクルを100回繰り返した。
100サイクル目の電位サイクル試験が終了した時点で、上記耐久性試験開始時の電気二重層容量「Q‐BOL」と同様のCV測定を行い、100サイクル終了時の電気二重層容量「Q‐100サイクル」(A・sec)を得た。
さらに、電位サイクル試験を17000サイクルまで行った。この17000サイクルのうち、500サイクルの終了時、1000サイクルの終了時、2000サイクルの終了時、3000サイクルの終了時、4000サイクルの終了時、5000サイクルの終了時、6000サイクルの終了時、7000サイクルの終了時、8000サイクルの終了時、9000サイクルの終了時、10000サイクルの終了時、11000サイクルの終了時、12000サイクルの終了時、13000サイクルの終了時、14000サイクルの終了時、15000サイクルの終了時、16000サイクルの終了時、及び17000サイクルの終了時、の各時点で上記100サイクル終了時の電気二重層容量「Q-100サイクル」と同様のCV測定を行い、各サイクル終了時の電気二重層容量(それぞれ電気二重層容量「Q‐500サイクル」、「Q‐1000サイクル」、「Q‐2000サイクル」、「Q‐3000サイクル」、「Q‐4000サイクル」、「Q‐5000サイクル」、「Q‐6000サイクル」、「Q‐7000サイクル」、「Q‐8000サイクル」、「Q‐9000サイクル」、「Q‐10000サイクル」、「Q‐11000サイクル」、「Q‐12000サイクル」、「Q‐13000サイクル」、「Q‐14000サイクル」、「Q‐15000サイクル」、「Q‐16000サイクル」及び「Q‐17000サイクル」)(A・sec)を得た。
さらに、こうして得られたnサイクル終了時の電気二重層容量「Q‐nサイクル」(nはサイクル数)のうち、9000サイクル終了時から17000サイクル終了時までの9つの時点における電気二重層容量を用いて、10000サイクル終了時から17000サイクル終了時までの8つのnサイクル終了時の電気二重層容量変化量「dQ‐nサイクル」(A・sec)を下記式(I)から算出した。
具体的に、例えば、10000サイクル終了時の電気二重層容量変化量「dQ‐10000サイクル」は、10000サイクル終了時の電気二重層容量「Q‐10000サイクル」から9000サイクル終了時の電気二重層容量「Q‐9000サイクル」を減じることにより算出した。また、例えば、17000サイクル終了時の電気二重層容量変化量「dQ‐17000サイクル」は、17000サイクル終了時の電気二重層容量「Q‐17000サイクル」から16000サイクル終了時の電気二重層容量「Q‐16000サイクル」を減じることにより算出した。
そして、得られた8つのnサイクル終了時の電気二重層容量変化量「dQ‐nサイクル」の算術平均値を算出し、これを電気二重層容量の平均変化量「平均dQ」(A・sec)という耐酸化性の指標として用いた。具体的に、平均dQ(A・sec)は、次の式により算出した:平均dQ=(「dQ‐10000サイクル」+「dQ‐11000サイクル」+「dQ‐12000サイクル」+「dQ‐13000サイクル」+「dQ‐14000サイクル」+「dQ‐15000サイクル」+「dQ‐16000サイクル」+「dQ‐17000サイクル」)÷8。
ここで、炭素の標準酸化還元電位は、熱力学的に下記のように与えられる。
一方、非特許文献(炭素 TANSO 2012 [No.251] 18-25)における高配向性熱分解黒鉛(Highly Oriented Pyrolytic Graphite、HOPG)をモデル材料に用いた研究によると、炭素の酸化反応はエッジ等の酸化されやすい部分に水酸基等の表面官能基がまず付与され、その逐次的な高次酸化を経て進行し、最終的に炭素は二酸化炭素や一酸化炭素のような気体となって消耗していくことが明らかとなっている。ここで、上記酸化機構に鑑み、炭素の酸化過程における電気二重層容量の変化を考えてみる。
非特許文献(Journal of The Electrochemical Society, 156(8) B913-B922(2009))にも記載があるように、酸化初期過程で炭素表面に水酸基等の酸素官能基が付与された場合、炭素表面はより親水性になり、電気二重層容量は増加していく。一方、酸化が進行していくと炭素が一酸化炭素や二酸化炭素としてガス化していくため、炭素の消失が起こり、電気二重層容量は減少していくと考えられる。炭素の結晶性や耐酸化性により、酸化の進行度は異なる。上記メカニズムを考慮すると、炭素の耐酸化性が高いほど、酸化の進行が遅く、最終的な炭素のガス化を抑制できるので、上述した耐酸化性試験後半のサイクルにおいても、電気二重層容量は増加していく傾向があると考えられる。
図4Bには、上記メカニズムを実験的に確認した結果の一例として、回転リングディスク電極装置の作用電極に炭素担体C1500-G2100を担持した場合、及び炭素担体C1500を担持した場合のそれぞれで得られた耐酸化性試験における、サイクル数(横軸)と、各サイクル終了時の電気二重層容量「Q‐nサイクル」(A・sec)(縦軸)との関係を示す。
図4Bに示すように、炭素担体C1500を用いた場合(三角印)、初期のサイクルでは電気二重層容量が急激に増加し、その後、2000サイクル以降は電気二重層容量が減少した。これは、サイクルの早い段階から炭素の酸化が進行し、最終段階である炭素のガス化が起こったためと考えられる。
一方、炭素担体C1500-2100を用いた場合(丸印)は、初期のサイクルにおける電気二重層容量は、炭素担体C1500を用いた場合(三角印)に比べて緩やかに増加していき、10000サイクル以降も電気二重層容量の大きな減少は見られなかった。これは、炭素の酸化が緩やかに進行したためと考えられる。すなわち、炭素担体C1500-2100は、炭素担体C1500に比べて耐酸化性に優れていることが確認された。
以上より、耐酸化性試験の後期のサイクルである10000~17000サイクル終了時の電気二重層容量の変化量の平均値(平均dQ)の数値が、大きな正の値を示す炭素担体ほど、炭素の酸化が進行しにくく、耐酸化性が高い(例えば、電気二重層容量の増加要因であり、炭素酸化の初期段階の過程である、表面官能基の付与による親水性の増加が支配的であり、電気二重層容量の減少要因であるガス化による炭素消耗が抑制されている)と考えられる。
[金属担持触媒の製造]
例1~例3、例5、例6及び例C1~例C8においては、炭素担体1gと、白金濃度が5重量%(白金含有量1g)になる量の白金前駆体である塩化白金酸(H2PtCl6)を含む水溶液20gとを18時間混合した。その後、得られた混合液を空気中100℃で乾燥させ、さらに窒素中、150℃中で保持して、溶媒成分を揮発させた。
得られた固形物に、まず水素雰囲気(水素ガス100体積%)中825℃で20分の加熱処理(気相還元処理)を施し、続いて、雰囲気の温度を820℃~830℃の範囲内に維持しながら、当該水素雰囲気を窒素雰囲気(窒素ガス100体積%)に交換し、当該窒素雰囲気中825℃で40分の加熱処理を施した。こうして炭素担体(例1では炭素担体C1500-G1800、例2では炭素担体C1500-G1900、例3では炭素担体C1500-G2000、例5では炭素担体C1500-G2100、例6では炭素担体C1500-G2200、例C1では炭素担体C1500、例C2では炭素担体C1500-G2400、例C3では炭素担体C2000、例C4では炭素担体KB、例C5では炭素担体KB-G2000、例C6では炭素担体PC、例C7では炭素担体PG-G1700A、及び例C8では炭素担体PC-G2000A)と、当該炭素担体に触媒金属粒子として担持された白金粒子とを含む金属担持触媒が得られた。
また、例4においては、炭素担体1gと、白金濃度が5重量%(白金含有量1g)になる量の塩化白金酸(H2PtCl6)及びコバルト濃度が0.216重量%(コバルト含有量0.043g)になる量のコバルト前駆体である塩化コバルト(CоCl2)を含む水溶液20gとを18時間混合した。その後、得られた混合液を空気中100℃で乾燥させ、さらに窒素中、150℃中で保持して、溶媒成分を揮発させた。
得られた固形物に、まず水素雰囲気(水素ガス100体積%)中800℃で20分の加熱処理(気相還元処理)を施し、続いて、雰囲気の温度を790℃~810℃の範囲内に維持しながら、当該水素雰囲気を窒素雰囲気(窒素ガス100体積%)に交換し、当該窒素雰囲気中800℃で40分の加熱処理を施した。こうして炭素担体1500-G2000と、当該炭素担体に触媒金属粒子として担持された白金及びコバルトの合金粒子とを含む金属担持触媒が得られた。
[金属担持触媒を含む電極を有する電池の性能評価]
金属担持触媒を含むカソードを有する燃料電池の性能評価を行った。具体的に、まず金属担持触媒を含む触媒層が形成された電池カソードを製造した。すなわち、上述のようにして製造された金属担持触媒0.25gに、炭素担体に対する重量比が1.1となる量の電解質(等価質量(Equivalent Weight)EW=820)を加え、さらに、蒸留水及び1-プロパノールをそれぞれ2g加えて電解質溶液を調製した。この電解質溶液と、ボール25gとをポットに投入し、200rpm、50分間ボールミルで混合することにより、均一に分散された金属担持触媒を含むスラリー状の触媒層用組成物を得た。
得られたスラリー状の触媒層用組成物を、ガス拡散層(“29BC”、SGLカーボン社製)(2.3cm×2.3cm)の面積5cm2の領域上に、金属担持触媒に担持された触媒金属粒子に含まれる白金の電池電極の単位面積あたりの含有量が0.2(mg‐Pt/cm2)になるように塗布して乾燥させることにより、当該ガス拡散層上に触媒層を形成した。こうして、金属担持触媒を含む触媒層が形成された電池電極を得た。
次に、金属担持触媒を含む触媒層が形成された電池電極を含む燃料電池を製造した。すなわち、正極としては、上述のようにして製造された、触媒層(正極触媒層)を含む電池電極を使用した。
一方、負極は以下のようにして作製した。市販の白金担持触媒Pt/C(炭素担体に担持された白金粒子を含む触媒:UNPC40-II、石福金属興業株式会社製)0.5gと、5%ナフィオン(登録商標)10gと、蒸留水2gと、ボール25gとをポットに投入し、200rpm、50分間ボールミルで混合することにより、スラリー状のPt/C組成物を調製した。このスラリー状のPt/C組成物を、ガス拡散層(5cm2)上に単位面積あたりのPt/C塗布量が0.1mg/cm2となるようにしたこと以外は、上記正極と同様にして、当該Pt/C組成物から形成された触媒層(負極触媒層)を含む負極を作製した。
そして、上記正極触媒層と上記負極触媒層との間に、固体高分子電解質膜(Dupont社製、“Nafion(登録商標)211”)を配置して、これらを150℃、1MPaの条件で3分間圧着することにより、MEAを作製した。このMEAに一対のガスケットを貼り付け、さらに一対のセパレーターで挟み、燃料電池単セルを作製した。その後、上述のようにして作製した単セルを燃料電池自動評価システム(株式会社東陽テクニカ製)に設置し、まず発電試験を行い、その後、耐久性試験を行った。
発電試験は、単セルに対して、背圧150kPaで正極側に飽和加湿空気(酸素)を2.5L/分で供給し(相対湿度100%)、負極側に飽和加湿水素を1.0L/分で供給し(相対湿度100%)、セル温度を75℃に設定して、開回路電圧を5分間測定した。その後、セル電流密度を4.0A/cm2から0A/cm2まで、各電流密度で3分間保持してセル電圧を測定した。
そして、出力特性として、電流密度2.5A/cm2における電圧(mV)を測定した。また、触媒活性として、電流密度0.2A/cm2における電圧(mV)を測定した。また、耐久性試験開始時の電圧として、電流密度1.0A/cm2における電圧(mV)を記録した。
その後、セル温度を75℃に設定して、単セルの両側に背圧150kPaで飽和加湿窒素を0.5L/分で供給し(相対湿度100%)、アノード側に飽和加湿水素を0.5mL/分で供給し(相対湿度100%)、まず電位を0.6Vで30秒保持し、次いで0.95Vで60秒保持する矩形波のサイクルを繰り返すことにより、耐久性試験を行った。
上記矩形波のサイクルを10000回行った後、再び発電試験を行い、耐久試験後の電流密度1.0A/cm2における電圧(mV)を測定した。そして、耐久性試験前の発電試験において初期性能として測定された1.0A/cm2における電圧(mV)から、当該耐久性試験後の発電試験において測定された1.0A/cm2における電圧(mV)(10000サイクル後の電圧(mV))を減じて得られた値である電圧ロス(mV)を、耐久性の指標として用いた。
[結果]
図5には、例1~6及び例C1~C8について、炭素担体及び金属担持触媒の特性を評価した結果を示す。
ラマン2D/G比について、例1~6の炭素担体は、例C1及びC6~C8のそれより高く、例C2、C3及びC5のそれより低いラマン2D/G比を有していた。なお、例C4の炭素担体KBは、そのラマンスペクトルにおいて2Dバンドが検出されなかった。
ラマンD半値半幅について、例1~6の炭素担体は、例C2及びC5のそれより高く、例C1、C4、C7及びC8のそれより低く、例C3のそれと同程度のラマンD半値半幅を有していた。また、例1~6のうち、例1~4の炭素担体は、特に大きなラマンD半値半幅を有していた。
結晶子サイズLcについて、例1~6の炭素担体は、例C1のそれより大きく、例C4、C6及びC8のそれと同程度であり、例C2、C3、C5及びC7より小さい結晶子サイズLcを有していた。また、例1~6のうち、例1~5の炭素担体は、特に小さな結晶子サイズLcを有していた。
結晶子サイズLaについて、例1~6の炭素担体は、例C1、C4及びC6のそれより大きく、例C3及びC7のそれと同程度であり、例C2、C5及びC8より小さい結晶子サイズLaを有していた。
La/Lc比について、例1~6の炭素担体は、例C2~C7のそれより大きく、例C1及びC8のそれと同程度のLa/Lc比を有していた。また、例1~6のうち、例1~5の炭素担体は、特に大きなLa/Lcを有していた。
平均細孔径について、例1~6の炭素担体は、例C1のそれより大きく、例C6のそれと同程度であり、例C1のそれより大きい平均細孔径を有していた。また、例1~6のうち、例1~5の炭素担体は、特に小さな平均細孔径を有していた。
N2脱着-吸着量差について、例1~6の炭素担体は、例C2のそれより大きく、例C1のそれと同程度であり、例C3~C8のそれより小さいN2脱着-吸着量差を有していた。
5nm未満細孔容積について、例1~6の炭素担体は、例C2のそれより大きく、例C3~C5、C7及びC8のそれと同程度であり、例C1及びC6のそれより小さい5nm未満細孔容積を有していた。また、例1~6のうち、例1~5(特に例1~4)の炭素担体は、特に大きな5nm未満細孔容積を有していた。
5‐70nm未満細孔容積について、例1~6の炭素担体は、例C1~C8のそれより小さい5‐70nm未満細孔容積を有していた。
5nm未満/5‐70nm細孔容積比について、例1~6の炭素担体は、例C2~C8のそれより大きく、例C1のそれと同程度の5nm未満/5‐70nm細孔容積比を有していた。例1~6のうち、例1~4の炭素担体は、特に大きな5nm未満/5‐70nm細孔容積比を有していた。
BET比表面積について、例1~6の炭素担体は、例C2のそれより大きく、例C3~C5及びC8のそれと同程度であり、例C1、C6及びC7のそれより小さいBET比表面積を有していた。例1~6のうち、例1~5の炭素担体は、特に大きなBET比表面積を有していた。
メディアン径について、例1~6の炭素担体は、例C3、C4、C7及びC8のそれより大きく、例C1及びC2のそれと同程度であり、例C5及びC6のそれより小さいメディアン径を有していた。
炭素担体自体の耐酸化性を示す電気二重層容量の平均変化量(平均dQ)は、それが負の値である場合には、その絶対値が小さいほど耐酸化性が高いことを示し、それが正の値である場合には、その絶対値が大きいほど耐酸化性が高いことを意味する。この点、図5に示す平均dQによれば、例1~6の炭素担体の耐酸化性は、例C1、C4及びC6~C8のそれより高く、例C3及びC5のそれと同程度であり、例C2のそれより低かった。
金属担持触媒の耐久性を示す電圧ロスは、値が小さいほど、当該金属担持触媒の耐久性が高いことを示す。この電圧ロスは、例えば、耐久性試験において、炭素担体に担持されている触媒金属粒子の凝集及び/又は溶解が進行することによって生じる。この点、図5に示す電圧ロスによれば、例1~6の金属担持触媒の耐久性は、例C4~C8のそれより高く、例C2及びC3のそれと同程度であり、例C1のそれより低かった。例1~6のうち、例1~4の炭素担体は、特に優れた耐久性を有していた。
金属担持触媒の出力特性を示す電流密度2.5A/cm2における電圧(mV)は、値が大きいほど、当該金属担持触媒の出力特性が優れていることを示す。すなわち、2.0A/cm2以上の高電流密度領域では大量の水が生成されるため、炭素担体の細孔内部が生成水により満たされ、物質輸送が阻害される結果、電池の性能としての電圧が低下しやすい。この点、例1~6の金属担持触媒の出力特性は、例C2、C3、C5、C6及びC8のそれより高く、例C1、C4及びC7のそれと同程度であった。例1~6のうち、例1~5の炭素担体は、特に優れた出力特性を有していた。
金属担持触媒の触媒活性を示す電流密度0.2A/cm2における電圧(mV)は、値が大きいほど、当該金属担持触媒の触媒活性が優れていることを示す。すなわち、燃料電池の過電圧は、活性化過電圧、抵抗過電圧及び拡散過電圧に分類されるが、低電流密度領域0.2A/cm2では、抵抗過電圧及び拡散過電圧の影響が小さいため、触媒活性の評価に適している。この点、例1~6の金属担持触媒の触媒活性は、例C2、C5及びC8のそれより高く、例C1、C3、C4、C6及びC7のそれと同程度であった。例1~6のうち、例1~5の炭素担体は、特に優れた触媒活性を有していた。