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JP7669016B2 - 多核金属化合物の製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、多核金属化合物の製造方法に関する。より詳しくは、触媒・医薬・機能材料等として好適に使用できる可能性がある多核金属化合物、及び、その製造方法に関する。
ポリオキソメタレートは、高い安定性と容易に調整可能な化学的・物理的性質により、触媒・医薬・機能材料等の様々な分野で魅力的な物質である。このため、更に新たな構造を有するポリオキソメタレートの開発が求められている。
ポリオキソメタレートの中には、欠損型ポリオキソメタレート由来の構造を有する不安定なものもある。例えば、これまでに広く研究されてきたタングステン酸化物クラスターに比べると、モリブデンの酸化物クラスターは安定性が極めて低い。そのため、モリブデン酸化物クラスターを基盤とした研究報告例は少なく、特に多核金属化合物の構造設計に応用した例は皆無である。
通常では不安定な欠損型ポリオキソメタレートの安定化に関する報告として、リンモリブデン酸化物クラスター[PMo349-に対して、有機溶媒中でピリジン(py)を配位させることによって、安定なアニオン性ポリオキソメタレート[PMo31(py)3-(I)が得られることが報告されている。また、アニオン性ポリオキソメタレートIと4,4’-ビピリジンからダイマー構造のポリオキソメタレート(II)が、アニオン性ポリオキソメタレートIと5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)ポルフィリンからテトラマー構造のポリオキソメタレート(III)が、それぞれ得られることも報告されている(非特許文献1参照)。
Chifeng Li(チーフェン リ)ら、他3名、「ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of The American Chemical Society)」(米国)、2019年、第141巻、pp.7687-7692
上記のように、新たな構造を有するポリオキソメタレートの更なる開発が求められており、金属原子の種類やその配位状態に応じて発揮される多様な特性をより一層活用することが望まれていた。
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、触媒等として有望な新規な金属化合物を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、金属化合物の製造方法について検討し、特定のポリ原子を含有する欠損型ポリオキソメタレートの欠損構造部位に非共有電子対含有化合物を導入した構造を有するポリオキソメタレート化合物と、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含む化合物とを反応させることで、新規な多核金属化合物を得ることができることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、ポリオキソメタレート化合物の欠損構造部位にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有する多核金属化合物の製造方法であって、上記製造方法は、ヘテロ原子に対して、Mo、V、Nb、及び、Taからなる群より選択される少なくとも1種のポリ原子が酸素原子を介して配位し、かつ欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造を有するポリオキソメタレート化合物(A)と、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含む化合物(B)とを反応させる工程を含む多核金属化合物の製造方法である。
本発明はまた、ポリオキソメタレート化合物の欠損構造部位にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有する多核金属化合物であって、上記多核金属化合物は、ヘテロ原子に対してMo、V、Nb、及び、Taからなる群より選択される少なくとも1種のポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有する多核金属化合物でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<本発明の多核金属化合物の製造方法>
本発明の多核金属化合物の製造方法は、ヘテロ原子に対して、Mo、V、Nb、及び、Taからなる群より選択される少なくとも1種のポリ原子が酸素原子を介して配位し、かつ欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造を有するポリオキソメタレート化合物(A)と、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含む化合物(B)とを反応させる工程を含む。
なお、本明細書中、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を2個以上有する化合物を多核金属化合物という。当該金属原子は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
以下では、先ず、反応工程における原料化合物、好ましい反応条件について説明する。
上記ポリオキソメタレート化合物(A)におけるポリ原子は、中でも、Mo、V、Nb、及び、Taからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、Moであることがより好ましい。
上記ポリオキソメタレート化合物(A)におけるヘテロ原子は、Si、P、Al、S、Ge、As、及び、Seからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、Si及び/又はPがより好ましく、Pが更に好ましい。
上記ポリオキソメタレート化合物(A)が、欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造を有するとは、欠損構造部位における酸素原子又は酸素原子を含む基(例えば、-OH基)が、非共有電子対含有化合物が有する非共有電子対を有する原子と置き換わったかたちの構造を有することをいう。なお、実際に置換反応を経たものである必要はなく、同様の構造を有するものであればよい。上記ポリオキソメタレート化合物(A)における欠損構造部位の数は、通常は二つ以上であり、上記ポリオキソメタレート化合物(A)は、二欠損型、又は、三欠損型であることが好ましい。例えば、上記ポリオキソメタレート化合物(A)は、もともと二欠損構造部位を有し、二つの欠損構造部位の少なくとも一つに非共有電子対含有化合物が導入された構造を有するものでもよく、もともと三欠損構造部位を有し、三つの欠損構造部位の少なくとも一つに非共有電子対含有化合物が導入された構造を有するものでもよい。中でも、上記ポリオキソメタレート化合物(A)は、少なくとも二つの欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造を有することが好ましく、すべての欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造を有することがより好ましい。
上記ポリオキソメタレート化合物(A)は、欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造を有するため、溶媒中で安定であり、副反応が充分に抑制されるとともに、その異性化が抑制されると考えられる。このようなポリオキソメタレート化合物(A)は、上記反応工程に供されることで新規な多核金属化合物を製造できるものである。
上記ポリオキソメタレート化合物(A)における非共有電子対含有化合物は、非共有電子対を有する原子を含有する化合物であり、欠損構造部位にある外れやすい酸素原子又は酸素原子を含む基が当該化合物に置き換わることで、ポリオキソメタレートの安定化に寄与する。欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造において、非共有電子対含有化合物は、原料である非共有電子対含有化合物の構造をそのまま保持したままで導入されていてもよく、原料である非共有電子対含有化合物の構造が変化したかたちで導入されていてもよいが、原料である非共有電子対含有化合物の構造をそのまま保持したままで導入されていることが好ましい。
上記非共有電子対含有化合物が含有する非共有電子対を有する原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子等が好適なものとして挙げられ、中でも窒素原子がより好ましい。すなわち、非共有電子対含有化合物は、窒素原子含有化合物であることが好ましい。
上記窒素原子含有化合物としては、例えば、第1級アミン、第2級アミン、含窒素複素環式芳香族化合物が好適なものとして挙げられ、中でも含窒素複素環式芳香族化合物が好ましい。
上記含窒素複素環式芳香族化合物としては、例えばピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等が好ましい。中でも、ピリジンがより好ましい。
なお、本明細書中、上記ポリオキソメタレート化合物(A)の欠損構造部位に導入された非共有電子対含有化合物は、非共有電子対含有基と言い換えることができ、当該欠損構造部位に導入された含窒素複素環式芳香族化合物は、含窒素複素環式芳香族基と言い換えることができる。
上記ポリオキソメタレート化合物(A)は一般に塩を形成しており、該塩を形成するためのカチオン(対カチオン)は、無機カチオンでも有機カチオンでもよい。
無機カチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオン、典型金属カチオン、プロトン、アンモニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
有機カチオンとしては、有機アンモニウム、有機ホスホニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
中でも、対カチオンは、有機カチオンであることが好ましい。
上記有機カチオンの炭素数は、4~48であることが好ましい。より好ましくは、4~40であり、更に好ましくは、4~30である。
上記有機アンモニウムとしては、第四級有機アンモニウムが好ましい。第四級有機アンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、トリラウリルメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、セチルピリジニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
上記有機ホスホニウムとしては、第四級有機ホスホニウムが好ましい。第四級ホスホニウムとしては、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
本発明の製造方法において、上記ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を有する化合物(B)における当該金属原子は、3d遷移金属原子、4d遷移金属原子、5d遷移金属原子、及び、希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。言い換えれば、上記ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及び、Luからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の製造方法では、安定なポリオキソメタレート化合物(A)を原料として用いることから、これを上記化合物(B)と反応させることで、化合物(B)由来の、ポリオキソメタレートにおける異種金属として知られている金属原子を適宜導入することができる。
上記3d遷移金属原子としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuが挙げられ、中でもV、Mn、Fe、Co、Niが好ましく、V、Mnがより好ましい。
上記4d遷移金属原子としては、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Agが挙げられ、中でもY、Ru、Rh、Pd、Agが好ましい。
上記5d遷移金属原子としては、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Auが挙げられ、中でもHf、Ta、Wが好ましい。
上記希土類元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luが挙げられ、中でもCe、Sm、Eu、Gd、Tb、Dyが好ましい。
上記ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を有する化合物(B)は、カルボキシラート基、トリフルオロメタンスルホナート基、及び、アセチルアセトナート基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含むことが好ましい。中でも、アセチルアセトナート基がより好ましい。
上記ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を有する化合物(B)としては、例えば、バナジルアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナート、銀アセチルアセトナート、ランタンアセチルアセトナート、テルビウムアセチルアセトナート等が特に好適なものとして挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
本発明の製造方法は、上述した特定のポリオキソメタレート化合物(A)と、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含む化合物(B)とを反応させる工程を含む限り、特に限定されないが、好適な製造方法としては、ポリオキソメタレート化合物(A)とヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含む化合物(B)とを反応させる際に、両化合物を有機溶媒中又は有機溶媒を含む溶媒中で混合することが挙げられる。ここで、上記ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を有する化合物(B)が分散又は溶解した液に、ポリオキソメタレート化合物(A)を粉体のまま、もしくは溶液として添加して、上記多核金属化合物の製造を行うことができる。また、ポリオキソメタレート化合物(A)と、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を有する化合物(B)とを同時に上記溶媒に添加してもよい。ポリオキソメタレート化合物(A)の添加は、一括添加しても良いし、徐々に添加しても良い。また、多核金属化合物の製造は、一回の工程で行っても良いし、複数回に分けて行っても良い。例えば、ポリオキソメタレート化合物(A)又は化合物(B)の所定量のうちの一部を混合していない状態でいったん生成物を取り出し、再度生成物を溶媒に再溶解した後、残りのポリオキソメタレート化合物(A)又は化合物(B)を混合する方法としてもよい。
上記反応工程における、ポリオキソメタレート化合物(A)と上記化合物(B)とのモル比は、化合物(B)が有するヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子の数や、1つのポリオキソメタレート化合物(A)に対して導入する当該金属原子の数に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1:1~1:10であることが好ましく、2:3~1:9であることがより好ましく、1:2~1:8であることが更に好ましい。
また上記反応工程では、ポリオキソメタレート化合物(A)が有する非共有電子対含有化合物の数と、上記化合物(B)が有するヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子の数の比が、例えば、1:10~10:1となるようにポリオキソメタレート化合物(A)と化合物(B)とを反応させることもまた好ましい。当該比は、1:5~5:1であることがより好ましく、1:2~2:1であることが更に好ましい。
上記反応工程における、ポリオキソメタレート化合物(A)と化合物(B)との混合時間は、化合物(B)をポリオキソメタレート化合物(A)の欠損構造部位に充分に導入する観点から、1分以上であることが好ましい。該混合時間は、より好ましくは、10分以上であり、更に好ましくは、20分以上である。また、該混合時間は、72時間以下であることが好ましい。より好ましくは、48時間以下であり、更に好ましくは、24時間以下であり、特に好ましくは、3時間以下である。
なお、混合時間とは、主に均一系溶液中でポリオキソメタレート化合物(A)と化合物(B)とが共存、混合される時間を意味し、例えば、化合物(B)を含む溶液中に、ポリオキソメタレート化合物(A)を添加し終えた時点から、多核金属化合物を析出させるために、無機塩や有機塩、貧溶媒を添加する時点までの間の時間を指す。混合は、市販の撹拌機等を用いておこなうことができる。なお、混合中に不純物等の沈殿が発生した場合は、必要に応じて濾過等により取り除くことができる。混合する時間の設定は、多核金属化合物の構造を決定する重要な要素の一つであり、化合物(B)により導入する元素の種類によって上記の範囲内で適宜設定すればよい。多核金属化合物は、再結晶等により精製することが可能である。また、単離することなく系中で調製・保存等し、そのまま触媒等として使用することもできる。
上記反応工程における、ポリオキソメタレート化合物(A)と化合物(B)とを混合する際の温度としては、0℃以上が好ましい。より好ましくは10℃以上であり、更に好ましくは15℃以上である。また、該温度は、150℃以下が好ましい。より好ましくは100℃以下であり、更に好ましくは60℃以下である。
上記反応工程は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでもおこなうことができる。
また、ポリオキソメタレート化合物(A)と化合物(B)との混合時、又は、混合後に、後述するように酸を添加してもよい。また、ポリオキソメタレート化合物(A)又は化合物(B)を混合して、ポリオキソメタレート化合物(A)に化合物(B)由来の元素を導入した後、更にポリオキソメタレート化合物(A)又は化合物(B)を添加して多核金属化合物を得る方法も用いることができる。
また、1つのポリオキソメタレート化合物(A)に化合物(B)由来の元素を導入して得られた化合物を溶媒に溶解した溶液に、当該1つのポリオキソメタレート化合物(A)に化合物(B)由来の元素を導入して得られた化合物を更に添加し、そこに貧溶媒を添加することで多核金属化合物とする方法も用いることができる。
なお、上記溶媒は、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒を含む溶媒は有機溶媒を含んでいる限り、その他の成分を含んでいてもよいが、上記有機溶媒を含む溶媒の好ましい形態の1つとして、有機溶媒と水との混合溶媒の形態が挙げられる。
上記溶媒における、有機溶媒と水との体積比としては、特に制限されないが、100:0~30:70であることが好ましく、より好ましくは、100:0~50:50である。更に好ましくは、100:0~70:30である。
上記有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロエタン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、ブタノール、ジクロロエタン、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタンが好ましく、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、ブタノール、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタンがより好ましい。更に好ましくは、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ブタノール、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタンである。
上記貧溶媒としては、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロエタン、クロロホルム等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記溶媒の体積は、ポリオキソメタレート化合物(A)1mmolに対して、1mL以上であることが好ましい。より好ましくは10mL以上であり、更に好ましくは20mL以上である。また、5000mL以下であることが好ましい。より好ましくは2500mL以下であり、更に好ましくは、1000mL以下である。
上述したように、ポリオキソメタレート化合物(A)と化合物(B)とを混合する際に、又は、混合した後に、更に酸を混合してもよい。酸は、ポリオキソメタレート化合物(A)と化合物(B)とを混合した後に混合することが好ましい。
酸としては、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸の他、p-トルエンスルホン酸、酢酸、安息香酸、マロン酸等の有機酸を用いることができる。
酸の使用量は、上記ポリオキソメタレート化合物(A)1モルに対して、0.01モル以上であることが好ましく、0.1モル以上であることがより好ましく、1モル以上であることが更に好ましい。該使用量は、100モル以下であることが好ましく、50モル以下であることがより好ましく、10モル以下であることが更に好ましい。
本発明の製造方法は、上述した方法により多核金属化合物を製造した後、当該多核金属化合物に対して更に別の操作を行う、多段階(stepwise)の製造方法により製造されるものであってもよい。そのような多段階の製造方法により、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を2種以上含む多核金属化合物や、特定の構造を有する多核金属化合物を製造することができる。
また得られた多核金属化合物を有機溶媒に溶解させ、対カチオンを加えて攪拌した後、溶媒を除去して得られた固形分を特定の有機溶媒存在下で再結晶する多段階の製造方法も好適である。
またヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を1種有する多核金属化合物を製造した後、当該多核金属化合物を有機溶媒に溶解し、得られた溶液に当該多核金属化合物が有する金属原子とは別の金属原子の化合物を添加、攪拌することで、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子として2種以上の金属原子を有する多核金属化合物を製造する多段階の製造方法も好適である。このような製造方法により、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を2種以上有する多核金属化合物を製造することができる。
本発明の製造方法は、ヘテロ原子に対して、Mo、V、Nb、及び、Taからなる群より選択される少なくとも1種のポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有する化合物と、非共有電子対含有化合物とを反応させて、上述したポリオキソメタレート化合物(A)を得る工程を更に含んでいてもよい。
本発明の製造方法により、本発明の多核金属化合物を好適に得ることができる。以下では、本発明の多核金属化合物について説明する。
<本発明の多核金属化合物>
本発明の多核金属化合物は、ポリオキソメタレート化合物の欠損構造部位にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有する多核金属化合物であって、上記多核金属化合物は、ヘテロ原子に対してMo、V、Nb、及び、Taからなる群より選択される少なくとも1種のポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有する。
なお、多核金属化合物が含む2種以上の金属原子が、ポリ原子であるか、欠損構造部位に導入されたヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子であるかが区別できない場合、いずれか1種をポリ原子とし、その他をヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子とすることができる。
本発明の多核金属化合物が、ポリオキソメタレート化合物の欠損構造部位にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有するとは、通常、欠損構造部位における酸素原子等の原子と、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子とが、直接又は間接に結合している構造を有することをいう。中でも、欠損構造部位における酸素原子と、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子とが、直接結合していることが好ましい。上記ポリオキソメタレート化合物における欠損構造部位の数は、通常は二つ以上であり、上記ポリオキソメタレート化合物は、二欠損型、又は、三欠損型であることが好ましい。例えば、上記ポリオキソメタレート化合物は、もともと二欠損型であり、二つの欠損構造部位のそれぞれにヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有するものでもよく、もともと三欠損型であり、三つの欠損構造部位の少なくとも二つにヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有するものでもよい。上記ポリオキソメタレート化合物は、通常、少なくとも二つの欠損構造部位にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有するものであり、すべての欠損構造部位にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有することが好ましい。
本発明の多核金属化合物は、結晶構造中で、ヘテロポリオキソメタレートアニオンを含有する。当該ヘテロポリオキソメタレートアニオンにおけるポリ原子は、Mo、V、Nb、及び、Taからなる群より選択される少なくとも1種である。また、ヘテロ原子は、Si、P、Al、S、Ge、As、及び、Seからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。このようなヘテロポリオキソメタレートアニオンは、例えば、ヘテロ原子に酸素を介してポリ原子が9~11個配位したケギン型と呼ばれる結晶構造を有するものである。
上記ポリオキソメタレート化合物が二欠損型である場合、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオンは、下記一般式(1);
[QZ10k- (1)
(式中、Qはヘテロ原子を表す。Zは、同一又は異なって、Mo、V、Nb、又は、Taから選ばれるポリ原子を表す。jとkは正数であり、kはQとZの価数によって決まる。)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。
また上記ポリオキソメタレート化合物が三欠損型である場合、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオンは、下記一般式(2);
[QZn- (2)
(式中、Qはヘテロ原子を表す。Zは、同一又は異なって、Mo、V、Nb、又は、Taから選ばれるポリ原子を表す。mとnは正数であり、nはQとZの価数によって決まる。)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。
ここで、一般式(1)、(2)において、より好ましくは、ZがMoであるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンである。
すなわち、本発明の多核金属化合物は、そのポリ原子がMoであることもまた本発明の好適な実施形態の1つである。
更に、上記ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンは、その異性体構造がα体、β体、又は、γ体であるものが好ましい。二欠損型の場合、上記ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンとしては、例えば、一般式(1)におけるQがP、Si又はGeである[α-PMo10367-及び/又は[β-PMo10367-及び/又は[γ-PMo10367-、又は、[α-SiMo10368-及び/又は[β-SiMo10368-及び/又は[γ-SiMo10368-、又は、[α-GeMo10368-及び/又は[β-GeMo10368-及び/又は[γ-GeMo10368-である。更に好ましくは、[γ-PMo10367-、[γ-SiMo10368-又は[γ-GeMo10368-が挙げられる。
また三欠損型の場合、上記ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンとしては、例えば、一般式(2)におけるQがP、Si又はGeである[α-PMo349-及び/又は[β-PMo349-及び/又は[γ-PMo349-、又は、[α-SiMo3410-及び/又は[β-SiMo3410-及び/又は[γ-SiMo3410-、又は、[α-GeMo3410-及び/又は[β-GeMo3410-及び/又は[γ-GeMo3410-が挙げられる。
好ましくは、[α-PMo349-、[α-SiMo3410-又は[α-GeMo3410-であり、特に好ましくは、Qがリン又はケイ素である[α-PMo349-又は[α-SiMo3410-である。
更に、本発明の多核金属化合物がヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を1つ有するものである場合、当該多核金属化合物に含まれるヘテロポリオキソメタレートアニオンは、下記一般式(3);
[QRr- (3)
(式中、Qはヘテロ原子を表す。Zは、同一又は異なって、Mo、V、Nb、又は、Taから選ばれるポリ原子を表す。Rは、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を表す。pとqとrは正数であり、rはQとRとZの価数によって決まる。)で表されるヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオンとしては、例えば、一般式(3)におけるQがP、Si又はGeであり、ZがMoであり、RがVである[α-PVMo413-及び/又は[β-PVMo413-及び/又は[γ-PVMo413-、又は、[α-SiVMo414-及び/又は[β-SiVMo414-及び/又は[γ-SiVMo414-、又は、[α-GeVMo414-及び/又は[β-GeVMo414-及び/又は[γ-GeVMo414-が挙げられる。
本発明の多核金属化合物は、塩の形態であってもよい。塩を形成する対カチオンとしては、上記ポリオキソメタレート化合物(A)を形成するための対カチオンとして上述したものが好ましいものとして挙げられる。
本発明の多核金属化合物は、例えば、種々の酸化反応や酸塩基反応等の有機反応用触媒として適用することができるものである。また、医薬・機能材料等の各種分野での利用が期待されるものである。
本発明の多核金属化合物の製造方法は、触媒・医薬・機能材料等の各種分野での利用が期待される新規な多核金属化合物を得ることができるものである。
図1は、本発明の製造方法の概要を示す模式図である。 図2(a)は、実施例1で合成されたマンガン六核構造の単結晶の多面体図を示す。図2(b)は、実施例1で合成されたマンガン六核構造の単結晶の異方性温度因子図を示す。 図3(a)は、実施例2で合成されたバナジウム四核構造の単結晶の多面体図を示す。図3(b)は、実施例2で合成されたバナジウム四核構造の単結晶の異方性温度因子図を示す。 図4(a)は、実施例2で合成されたバナジウム四核構造化合物の31P-NMRスペクトルを示す。図4(b)は、実施例2で合成されたバナジウム四核構造化合物の51V-NMRスペクトルを示す。 図5は、実施例2で合成されたバナジウム四核構造化合物の質量分析結果を示す。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。「TBA」はテトラ-n-ブチルアンモニウムの略であり、「acac」はアセチルアセトナートの略であり、「py」はピリジンの略である。
X線結晶構造解析は、リガク MicroMax-007 Saturn724を使用して回折データを取得し、SHELXL-2014を使用して解析を行った。
質量分析は、JEOL JMS-T100CSを用いて行った。
31P-NMR測定及び51V-NMR測定は、JEOL JNM-ECA500を用い、HPOのDO溶液及びNaVOのDO溶液を外部標準として測定した。
IRの測定はJASCO FT/IR-4100を用いて行った。
(実施例1)Mn六核構造化合物の合成
1,2-ジクロロエタン(100mL)中で、化合物I(TPP[A-α-PMo31(py)],TPP塩 TPP=tetra-phenylphosphonium;500mg,0.19mmol)とマンガンアセチルアセトナートMn(acac)(143mg,0.57mmol,化合物Iに対して3当量)を混合し、この溶液を50℃で2時間撹拌した。反応後の溶液をメンブレンフィルターで濾過した後、ジエチルエーテル(5.0mL)を加え、室温で静置した。1日後に、この溶液から単結晶X線構造解析に適したMn六核構造化合物の単結晶を得た(104mg,収率21%)。
得られた結晶の質量分析(MS)の測定結果は以下のとおりである。
Positive-ion MS(ESI,アセトニトリル):実測値m/z=3059.814(計算値m/z=3059.837;[TPP{Mn(acac)}Mn(PMo342+)。
得られた結晶のX線構造解析結果は、表1のとおりである。
Figure 0007669016000001
またMn六核構造化合物の単結晶の代表的な結合距離及び角度は、表2のとおりである。
Figure 0007669016000002
(実施例2)V四核構造化合物の合成
アセトン(10mL)中にバナジルアセチルアセトナート(VO(acac),212mg,0.80mmol)を分散させ、この溶液に水(0.10mL)と化合物I(TBA [A-α-PMo31(py)],TBA塩 TBA=tetra-n-butylammonium;488mg,0.20mmol)を加えた。この溶液を室温で一時間撹拌した後、得られた沈殿をメンブレンフィルターで濾過して回収した。この沈殿をジクロロメタンとアセトニトリルの混合溶媒に溶かし、70%硝酸水溶液(26μL,0.40mmol)を加えた後、溶液を5分間激しく撹拌した。その後、ジエチルエーテル(3mL)を加えて静置することで、V四核構造化合物の単結晶を得た(160mg,収率32%)。
得られた結晶の質量分析(MS)の測定、31P-NMR及び51V-NMRの測定、IR測定、並びに、元素分析の結果は以下のとおりである。
Positive-ion MS(CSI,アセトニトリル):実測値m/z=2724.5(計算値m/z=2724.2;[TBAPVMo41).
31P-NMR(202.47MHz,アセトニトリル-d):δ=-3.75ppm.
51V-NMR(131.6MHz,アセトニトリル-d):δ=-593.8,-587.8,-593.3ppm(積分比1:2:1).
IR(KBrペレット)1635,1483,1384,1152,1073,1048,1007,952,877,802,650,595,511,381,373cm-1
元素分析:TBAPVMo41の計算値(%):P,1.25;Mo,34.79;V,8.21.実測値:P,1.26;Mo,38.21;V,7.97.
得られた結晶のX線構造解析結果は、表3のとおりである。
Figure 0007669016000003
上述した実施例より、新規なMn六核構造化合物、V四核構造化合物の合成を確認した。
上述した実施例は、ヘテロ原子(P)に対して、ポリ原子(Mo)が酸素原子を介して配位し、かつ欠損構造部位にピリジンが導入された構造を有するポリオキソメタレート化合物と、マンガンアセチルアセトナート又はバナジルアセチルアセトナートとを反応させたものであるが、ヘテロ原子に対して、Mo、V、Nb、及び、Taからなる群より選択される少なくとも1種のポリ原子が酸素原子を介して配位し、かつ欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造を有するポリオキソメタレート化合物であれば、上記の特定のポリ原子を有するポリオキソメタレート化合物であるにも関わらず非共有電子対含有化合物の導入により充分に安定化されると考えられるため、これをヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含む化合物と反応させて、多種多様な新規多核金属化合物を得ることができることは確実である。

Claims (4)

  1. ポリオキソメタレート化合物の欠損構造部位にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有する多核金属化合物の製造方法であって、
    該製造方法は、ヘテロ原子に対して、Moであるポリ原子が酸素原子を介して配位し、かつ欠損構造部位に非共有電子対含有化合物が導入された構造を有するポリオキソメタレート化合物(A)と、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含む化合物(B)とを反応させる工程を含み、
    該非共有電子対含有化合物が含有する非共有電子対を有する原子は、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び、硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    該ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子は、3d遷移金属原子、4d遷移金属原子、5d遷移金属原子、及び、希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種である
    ことを特徴とする多核金属化合物の製造方法。
  2. 前記へテロ原子は、Si、P、Al、S、Ge、As、及び、Seからなる群より選択される少なくとも1種である
    ことを特徴とする請求項1に記載の多核金属化合物の製造方法。
  3. 前記ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を有する化合物(B)は、カルボキシラート基、トリフルオロメタンスルホナート基、及び、アセチルアセトナート基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の多核金属化合物の製造方法。
  4. ポリオキソメタレート化合物の欠損構造部位にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が導入された構造を有する多核金属化合物であって、
    該多核金属化合物は、ヘテロ原子に対してMoであるポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有し、
    該ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子は、3d遷移金属原子、4d遷移金属原子、5d遷移金属原子、及び、希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種である
    ことを特徴とする多核金属化合物。
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