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JP7669693B2 - 化学反応における活性化エネルギーの学習装置及び予測装置 - Google Patents
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化学反応における活性化エネルギーの学習装置及び予測装置 Download PDF

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Description

本発明は、化学反応における活性化エネルギーの学習装置、予測装置、学習プログラム、予測プログラム、学習方法及び予測方法に関する。
活性化エネルギーは、反応物の化学反応の進行に必要なエネルギーであり、化学工業、製薬等の様々な分野において、化学反応の進行のし易さを見積もるための重要な要素である。そこで、活性化エネルギーの大きさを現実的な計算時間及び計算環境で計算する方法が求められている。
ここで、反応物の励起状態、新材料、新配合等を予測する技術として、モデルを用いて予測する技術が提案されている。
例えば、分子の基底状態と励起状態に関するデータを用いて機械学習を行い、機械学習を行うことで生成したモデルを用いて、分子の励起状態の特性を予測する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
活性化エネルギーを量子化学計算で直接求めようとすると、遷移状態探索が難しいという問題があった。また、活性化エネルギーを求める際に用いる計算手法は励起状態を求める計算手法と異なることから、非特許文献1の技術を適用することはできないという問題があった。
本発明の一態様は、高精度に活性化エネルギーを予測するように学習させることができる学習装置を提供することを目的とする。
本発明に係る学習装置の一態様は、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得部と、量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得部と、量子化学計算によって算出された、前記反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を取得する第3の取得部と、前記第1の説明変数及び前記第2の説明変数と、前記目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルの学習を行う学習部と、を有する。
本発明に係る予測装置の一態様は、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得部と、量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得部と、所定の反応系について予め算出された第1の説明変数及び第2の説明変数と、該所定の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数と、が対応付けられた学習用データを用いて学習された学習済みモデルと、予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、前記学習済みモデルにより予測された、該予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する予測部と、を有する。
本発明に係る学習プログラムの一態様は、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、量子化学計算によって算出された、前記反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を取得する第3の取得工程と、前記第1の説明変数及び前記第2の説明変数と、前記目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルの学習を行う学習工程と、をコンピュータに実行させる。
本発明に係る予測プログラムの一態様は、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、所定の反応系について予め算出された第1の説明変数及び第2の説明変数と、該所定の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数と、が対応付けられた学習用データを用いて学習された学習済みモデルに、予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、前記学習済みモデルにより予測された、該予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する予測工程と、をコンピュータに実行させる。
本発明に係る学習方法の一態様は、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、量子化学計算によって算出された、前記反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を取得する第3の取得工程と、前記第1の説明変数及び前記第2の説明変数と、前記目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルの学習を行う学習工程と、を有する。
本発明に係る予測方法の一態様は、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、所定の反応系について予め算出された第1の説明変数及び第2の説明変数と、該所定の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数と、が対応付けられた学習用データを用いて学習された学習済みモデルに、予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、前記学習済みモデルにより予測された、該予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する予測工程と、を有する。
本発明に係る学習装置の一態様は、高精度に活性化エネルギーを予測するように学習させることができる。
反応系から生成系に反応の進行が進む時の自由エネルギーの変化を示す図である。 本発明の実施形態に係る学習装置及び予測装置の概略構成を示すブロック図であり、図2(a)は、学習装置の概略構成を示すブロック図であり、図2(b)は、予測装置の概略構成を示すブロック図である。 学習部の概略構成を示すブロック図である。 学習用データ及び予測用データの一例を示す図であり、図4(a)は、学習用データを示し、図4(b)は、予測用データを示す。 予測部の概略構成を示すブロック図である。 学習装置及び予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る学習方法を説明するフローチャートである。 本発明の実施形態に係る予測方法を説明するフローチャートである。 データテーブルに格納されている目的変数の値の分布を示す図である。 機械学習モデルにおける学習用データの予測検証結果を示す図である。 計算値と予測値を学習データと共にプロットした図である。 系の電子数に対する計算所要時間をプロットした図である。 学習用データ94パターンと予測対象A~Eにおける系の電子数の分布を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
本実施形態に係る学習装置及び予測装置について説明する。図1は、反応系から生成系に反応の進行が進む時の自由エネルギーの変化を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る学習装置は、安定状態にある反応系の第1の説明変数と、安定状態にある生成系の第2の説明変数と、反応系の自由エネルギーと遷移状態の自由エネルギーとの差から得られる活性化エネルギーを含む目的変数とを用いて機械学習を行い、学習済みモデルを生成するものである。
本実施形態に係る予測装置は、安定状態にある反応系の第1の説明変数と、安定状態にある生成系の第2の説明変数とを第1の説明変数及び第2の説明変数と目的変数とが対応付けられた学習済みモデルに入力することで、活性化エネルギーを含む目的変数を予測するものである。
<学習装置>
本実施形態に係る学習装置について説明する。図2は、本実施形態に係る学習装置及び予測装置の概略構成を示すブロック図である。図2(a)に示すように、学習装置1は、第1の取得部11、第2の取得部12、第3の取得部13及び学習部14を備える。学習装置1は、さらに、データテーブル作成部15及び表示部16を備えることができる。学習装置1は、化合物等の反応物が化学反応して遷移状態を経て生成物が生成される際に生じる活性化エネルギーの値を学習するものである。
学習される化学反応は、化学反応により、物質が遷移状態を経て生成物を生じるものであれば特に限定されず、例えば、共役ジエンにアルケンが付加して6員環構造を生じる有機化学反応であるディールス・アルダー反応等が挙げられる。
第1の取得部11は、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する。
第1の説明変数は、精度が低い量子化学計算(低精度量子化学計算)によって得られる反応系に関する構造パラメータ、電子プロパティ等の各種情報である。第1の説明変数の詳細については後述する。
なお、本実施形態において、低精度は、反応系の条件等に応じて適宜異なるものであり、高精度の計算条件で算出される各種情報の精度よりも低いことをいう。以下の低精度の意味も同様の意味で用いられる。計算条件の精度は、後述するように、量子科学計算において用いる手法と基底関数系で判断することができる。
第2の取得部12は、量子化学計算によって算出された、反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する。
第2の説明変数は、低精度量子化学計算によって得られる生成物に関する構造パラメータ、電子プロパティ等の各種情報である。第2の説明変数の詳細については後述する。
第3の取得部13は、量子化学計算によって算出された、反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を取得する。
目的変数は、精度が高い量子化学計算(高精度量子化学計算)によって得られる活性化エネルギーを含む各種情報である。目的変数の詳細については後述する。
なお、本実施形態において、高精度は、反応系の条件等に応じて適宜異なるものであり、高精度の計算条件で算出される各種情報の精度をいう。以下の高精度の意味も同様の意味で用いられる。
第1の説明変数、第2の説明変数、目的変数は、いずれも、上述の通り、量子化学計算により算出される。量子化学計算は、汎用のソフトウェアを用いて行うことができ、例えば、Gaussian16(Gaussian社製)等を好適に用いることができる。
Gaussian16を用いて分子の安定構造を求める場合、計算手法、基底関数系、分子モデルの初期座標、電荷及びスピン多重度を入力して、インプットファイルを作成し、計算を実行することで、分子の安定構造が求められる。
量子化学計算の手法としては、ハートリーフォック法、密度汎関数法(DFT法)等が挙げられるが、計算時間等のコストと計算精度のバランスとを実用的に満足しうる点から、DFT法が好ましい。
なお、DFT法では、どの汎関数を選ぶかによって計算結果が大きく変わってしまう点に注意する必要がある。そのため、正確性が求められる計算の場合は、長距離補正(長距離の2粒子間に働く効果を考慮する)及び分散力補正(ファンデルワールス力等の弱い分子間相互作用を考慮する)を含む汎関数を選択することが好ましい。長距離補正と分散力補正を併せもつ代表的な汎関数としては、例えば、ωB97XD、M06-2X等がある。
Gaussian16において使用できる汎関数の一部の序列を一例として挙げると、M06系であればM06-L、M06、M06-2Xの順、ωB97系であればωB97、ωB97X、ωB97XDの順に、計算精度が上がるとともに計算コストが高い。
基底関数系も、量子化学計算の手法と同様、計算精度と計算コストに影響を及ぼす重要な因子である。一般に、分子軌道をより正確に再現するためには、できる限り数多くの関数を割り当てられる基底関数系を用いることが望ましい。しかし、精度レベルを上げるほど計算コストも増大していく。そのため、現実的に使用できる範囲で選択する必要がある。例えば、3-21G基底は、低い計算コストで計算可能である。しかし、精度が低く、得られる結果の定量性は保証されない。一方、6-311++G(3df,3pd)基底は、高精度の結果が得られる。しかし、計算コストが高く、分子サイズが大きい系の場合には現実的な時間内に結果が得られないこともあり得る。
Pople系の基底関数の序列を一例として挙げると、STO-3G、3-21G、3-21G、6-31G、6-31G(d)、6-311G(d)、6-311+G(d)、6-311+G(d,p)、6-311+G(2d,p)、6-311++G(2d,p)、6-311++G(3df,3pd)の順に、計算精度が上がるとともに計算コストが高い。
学習部14は、第1の説明変数及び第2の説明変数と、目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルの機械学習を行う。
図3は、学習部14の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、学習部14は、読み出し部141、モデルM1及び予測精度検証部142を有する。
読み出し部141は、データテーブル作成部15で作成した学習用データテーブルから、学習用データを読み出す。
モデルM1は、第1の説明変数及び第2の説明変数から活性化エネルギーの値を含む目的変数を算出するモデルである。
モデルM1は、コンピュータの計算能力を使用して対象データを機械学習し、未知のデータに対して予測を行うものである。一般に、機械学習を実行するためのプログラムには、Python等のプログラミング言語が使用されることが多く、数値演算、データ分析等の機能も備えた開発環境の構築が必要である。手軽に機械学習の環境を整えるには、例えば米国Anaconda社から配布されているソフトウェアであるAnaconda(登録商標)を用いる方法が好ましい。
Anaconda(登録商標)には、Python及び機械学習でよく使われるライブラリ群が含まれており、これらを一括導入できるため、機械学習の環境構築作業を容易に行うことができる。また、次に述べる機械学習の実行前のデータ解析にも、Anaconda(登録商標)に含まれるライブラリが有用である。
学習部14は、学習用データを確認できる。学習部14は、データテーブル作成部15で作成した学習用データテーブルに格納されている各サンプルの、第1の説明変数、第2の説明変数及び目的変数について、変数ごとの値の分布や変数間の相関の有無等を確認できる。
値の分布については、ヒストグラムを作図することにより、視覚的に確認できる。一般的には、学習させるデータ群が多様であるほど、幅広い未知データの予測に対応可能になるため、学習用データの変数分布はできるだけ幅広く、不均衡になっていないことが好ましい。特に目的変数の分布が極端に偏っている場合には、偏りを緩和するような領域の値をとるサンプルデータを学習用データに追加することが好ましい。
変数間の相関の有無については、2組の変数データについて相関係数を求めることにより見積もることができる。相関係数は、例えば下記式(1)によって算出できる。
Figure 0007669693000001
変数間の相関の有無は、2組の変数データの散布図をすべての変数組み合わせについて作図することで、視覚的に確認することもできる。目的変数と強く相関する説明変数が存在する場合、その説明変数が目的変数の決定に大きく寄与している可能性が高い。一方、目的変数との相関が全くみられない説明変数は、目的変数とは無関係であり、未知データの予測には不要である可能性が高い。また、ある2つの説明変数間の相関が強い場合、多重共線性によって予測精度が悪化することが一般的に知られている。そのため、この場合は、どちらか一方の説明変数を学習用データから削除する等の対処法が有効である。
モデルM1は、用意した学習用データについて、第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を計算するための回帰分析を行うことができる。連続値を取る目的変数を予測する場合に用いる回帰手法としては、一般的に様々な手法があり、例えば、線形回帰、ランダムフォレスト法等があるが、基本的には機械学習後の予測精度の検証結果等を見ながら、対象のデータセットに合う手法を採用することが好ましい。
予測精度検証部142は、回帰分析によって得られたモデルM1の予測精度を検証(答え合わせ)する。予測精度を検証する手法としては、例えば、交差検証がある。交差検証は、用意したデータをいくつかのグループに分割し、そのうちの1つをテスト用データ、残りを学習用データとする。そして、学習用データとテスト用データを変更しながら分割したグループの数と同じ回数だけ学習と検証を繰り返し、得られた結果を平均してモデルの予測精度を評価する手法である。データ数が限られている場合は、特に、データ全体のうち1つだけをテスト用データとするリーブワンアウト交差検証が有用である。
モデルM1による予測値と実測値がどの程度一致しているかを表す精度評価指標としては、R(決定係数)やRMSE(二乗平均平方根誤差)、MAE(平均絶対誤差)等がある。これらの指標からモデルM1の予測精度が不十分であると判断された場合には、予測精度検証部142は、再度データのチェックに立ち戻り、データの偏りを緩和するために、モデルM1にデータを追加したり、説明変数の追加、削減等の修正を行う。
完成したモデルM1は、予測対象(未知物質)の予測の際に呼び出せるよう保存しておく。
各種回帰手法及び予測精度検証のアルゴリズムは、上述のAnaconda(登録商標)に含まれるライブラリであるScikit-learnに用意されている。
図2(a)に示すように、データテーブル作成部15は、第1の取得部11、第2の取得部12及び第3の取得部13で得られた第1の説明変数、第2の説明変数及び目的変数を用いて、学習用データを作成する。学習用データの一例を図4(a)に示す。図4(a)に示すように、データテーブル作成部15によって、第1の説明変数、第2の説明変数及び目的変数で構成された学習用データが作成される。
学習用データに含めるサンプル物質としては、素反応の機構が共通していることを前提に、置換基の種類及び位置関係が異なるものを少なくとも数十種類以上用意することが好ましい。分子サイズは、基本的に計算コストの高くない比較的小さいサイズのものだけでよい。ただし、嵩高さが活性化エネルギーに直接影響するような反応においては、嵩高い置換基を持つ分子サイズの大きいサンプル物質を学習用データに含める必要が出てくる場合もある。
サンプル物質の反応系(反応前の安定状態)及び生成系(反応後の安定状態)の分子構造を量子化学計算によって決定することで、学習用の説明変数として、第1の説明変数及び第2の説明変数が取得される。
量子化学計算による構造最適化が完了すると、結合長、結合角等の構造パラメータ、系のポテンシャルエネルギー、軌道エネルギー、双極子モーメント、電荷分布等の様々な情報が出力される。
データテーブル作成部15は、各サンプル物質の情報をそれぞれ抽出して、学習用データテーブルに加える。
データテーブル作成部15は、サンプル物質の反応系及び遷移状態の分子構造を量子化学計算によって決定することで、活性化エネルギーの値を含む、学習用の目的変数を取得し、学習用データを学習用データテーブルに加える。
この際の計算条件は、可能な範囲でできるだけ高精度であることが好ましい。遷移状態計算については、まずは置換基の少ない最も単純な構造をもつサンプルで適正な遷移状態構造を探索し、得られた構造をひな形として他のサンプルのインプット構造を作成することにより、試行錯誤する回数を極力減らすことができる。構造の最適化の計算を完了した後、反応系及び遷移状態のポテンシャルエネルギーの差から活性化エネルギーが算出される。
第1の説明変数及び第2の説明変数は、目的変数よりも計算精度の低い量子化学計算によって算出されることが好ましい。即ち、第1の説明変数及び第2の説明変数を得るために行う量子化学計算は、計算条件を統一しておく必要はあるが、反応系の目的変数を量子化学計算によって算出する場合に比べて高精度である必要はなく低精度でよい。
この際、学習用データテーブルは、CSV形式で用意されることが好ましい。CSV形式のデータは、汎用的であり、多くの表計算ソフトで取り扱うことができる。
図2に示すように、表示部16は、モデルM1の学習において用いられる学習用データの情報と、モデルM1に関する情報とを表示できる。
なお、本実施形態では、学習装置1は、予測精度検証部142を備えなくてもよい。
<予測装置>
本実施形態に係る予測装置について説明する。図2(b)は、本実施形態に係る予測装置の構成を示すシステム構成図である。図2(b)に示すように、予測装置2は、第1の取得部21、第2の取得部22、学習済みモデルM2及び予測部23を備える。予測装置2は、さらに、予測用データテーブル作成部24及び表示部25を備えてもよい。
第1の取得部21は、第1の取得部11と同様、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する。第1の取得部21の機能は、第1の取得部11と同様であるため、詳細は省略する。
第2の取得部22は、第2の取得部12と同様、量子化学計算によって算出された、反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する。第2の取得部22の機能は、第2の取得部12と同様であるため、詳細は省略する。
図1に示すように、学習済みモデルM2は、所定の反応系について予め算出された第1の説明変数及び第2の説明変数と、該所定の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて学習されたものである。学習済みモデルM2としては、上記の学習装置1が備えるモデルM1を機械学習させたモデルを用いることができる。学習済みモデルM2として、具体的には、Anaconda等を用いて保存した機械学習モデルを用いることができる。
予測部23は、予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、学習済みモデルM2により予測された、予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する。
図5は、予測部23の概略構成を示すブロック図である。図5に示すように、予測部23は、読み出し部231を有する。
読み出し部231は、予測用データテーブルに格納された第1の説明変数及び第2の説明変数を読み出す。
予測部23は、学習済みモデルM2を呼び出して、読み出し部231により予測用データテーブルに格納された第1の説明変数及び第2の説明変数を学習済みモデルM2に読み込ませて、化学反応の活性化エネルギーを含む目的変数の予測値を出力する。
図2(b)に示すように、予測用データテーブル作成部24は、第1の取得部21及び第2の取得部22で取得した第1の説明変数及び第2の説明変数を用いて、予測用データテーブルを作成する。予測用データテーブルの一例を図4(b)に示す。図4(b)に示すように、予測用データテーブルには、第1の説明変数及び第2の説明変数が格納される。第1の説明変数及び第2の説明変数は、上述の学習装置1で使用される第1の説明変数及び第2の説明変数と同様の内容であるため、詳細は省略する。
予測用データテーブルは、学習用データテーブルと同様、CSV形式で用意されることが好ましい。CSV形式のデータは、汎用的であり、多くの表計算ソフトで取り扱うことができる。
表示部25は、学習済みモデルM2により予測された、予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を表示できる。
なお、図2(a)及び図2(b)に示す学習装置1及び予測装置2は、学習システム及び予測システムとして構成されてもよい。即ち、学習装置1は、各構成を装置内に備えた、PC(Personal Computer)等の単独の装置としているが、各構成の1つ以上は装置の外側に配置してネットワークを介して接続されてもよい。例えば、学習用データテーブルはクラウド上に設けられてもよい。この場合、学習装置1は、ネットワークを介して接続される学習用データテーブルにより学習システムとして構成される。同様に、図2(b)に示す予測装置2も、各構成の1つ以上は装置の外側に配置してネットワークを介して接続されてもよい。例えば、予測用データテーブルはクラウド上に設けられてもよい。この場合、予測装置2は、ネットワークを介して接続される予測用データテーブルにより予測システムとして構成される。
<学習装置1及び予測装置2のハードウェア構成>
次に、学習装置1及び予測装置2のハードウェア構成の一例について説明する。図6は、学習装置1及び予測装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。図6に示すように、学習装置1及び予測装置2は、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、入力デバイスである入力装置104、出力装置105、通信モジュール106並びにハードディスク等の補助記憶装置107等を含むコンピュータシステムとして構成することができる。これらは、バス108で相互に接続されている。なお、出力装置105及び補助記憶装置107は、外部に設けられていてもよい。
CPU101は、学習装置1及び予測装置2の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU101は、ROM103又は補助記憶装置107に格納された学習プログラム及び予測プログラムを実行して、測定収録画面と解析画面の表示動作を制御する。
RAM102は、CPU101のワークエリアとして用いられ、主要な制御パラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
ROM103は、基本入出力プログラム等を記憶する。予測プログラムはROM103に保存されてもよい。
入力装置104は、キーボード、マウス、操作ボタン、タッチパネル等である。
出力装置105は、モニタディスプレイ等である。出力装置105では、予測結果等が表示され、入力装置104や通信モジュール106を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
通信モジュール106は、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスであり、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとして機能する。
補助記憶装置107は、SSD(Solid State Drive)、及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、例えば、学習装置1及び予測装置2の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納する。
図2に示す学習装置1及び予測装置2の各機能は、CPU101、RAM102等の主記憶装置又は補助記憶装置107に所定のコンピュータソフトウェア(学習プログラム及び予測プログラムを含む)を読み込ませ、RAM102、ROM103又は補助記憶装置107に格納された学習プログラム及び予測プログラム等をCPU101により実行する。入力装置104、出力装置105及び通信モジュール106を動作させると共に、RAM102、ROM103及び補助記憶装置107等におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで、学習装置1及び予測装置2の各機能は、実現される。即ち、本実施形態に係る学習プログラム及び予測プログラムをコンピュータ上で実行させることで、学習装置1及び予測装置2は、図2の各構成として機能する。
学習プログラム及び予測プログラムは、例えばコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、学習プログラム及び予測プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール106等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、学習プログラム及び予測プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリ等の持ち運び可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
<学習プログラム>
本実施形態に係る学習プログラムは、以下の構成のプログラムを用いることができる。
即ち、本実施形態に係る学習プログラムは、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、
量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、
量子化学計算によって算出された、前記反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を取得する第3の取得工程と、
前記第1の説明変数及び前記第2の説明変数と、前記目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルの学習を行う学習工程と、
を少なくともコンピュータに実行させるプログラムを用いることができる。
<予測プログラム>
本実施形態に係る予測プログラムは、以下の構成のプログラムを用いることができる。
即ち、本実施形態に係る予測プログラムは、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、
量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、
所定の反応系について予め算出された第1の説明変数及び第2の説明変数と、該所定の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数と、が対応付けられた学習用データを用いて学習された学習済みモデルに、予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、前記学習済みモデルにより予測された、該予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する予測工程と、
を少なくともコンピュータに実行させるプログラムを用いることができる。
<学習方法>
次に、本実施形態に係る学習方法について説明する。本実施形態に係る学習方法は、図2(a)に示すような構成を有する学習装置1において、第1の説明変数及び第2の説明変数と、目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルM1の学習を行う方法である。
図7は、本実施形態に係る学習方法を説明するフローチャートである。図7に示すように、第1の取得部11により、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数が取得される(第1の取得工程:ステップS11)。
次に、第2の取得部12により、量子化学計算によって算出された、反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数が取得される(第2の取得工程:ステップS12)。
次に、第3の取得部13により、量子化学計算によって算出された、反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数が取得される(第3の取得工程:ステップS13)。
次に、データテーブル作成部15により、第1の説明変数、第2の説明変数及び目的変数を含む学習用データテーブルが作成される(学習用データテーブルの作成工程:ステップS14)。データテーブル作成部15は、入力された第1の説明変数、第2の説明変数及び目的変数を紐付けて、例えば、図4(a)に示すような学習用データテーブルを作成する。
次に、学習部14により、第1の説明変数及び第2の説明変数と、目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルM1の学習が行われる(学習工程:ステップS15)。学習部14は、学習用データに含まれる第1の説明変数及び第2の説明変数の入力に応じて、これらの説明変数に紐付けられた目的変数と合致した出力となるように、モデルM1の学習を行う。
次に、表示部16により、モデルM1の学習において用いられる学習用データの情報と、モデルM1に関する情報とが表示される(表示工程:ステップS16)。
なお、第1の説明変数の取得工程(ステップS11)は、第2の説明変数の取得工程(ステップS12)と同時に行ってもよいし、第2の説明変数の取得工程(ステップS12)の後に行ってもよい。
<予測方法>
次に、本実施形態に係る予測方法について説明する。本実施形態に係る予測方法は、図2(b)に示すような構成を有する予測装置2において、学習済みモデルM2により予測された、予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する方法である。
図8は、本実施形態に係る予測方法を説明するフローチャートである。図8に示すように、第1の取得部21により、量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数が取得される(第1の取得工程:ステップS21)。
次に、第2の取得部22により、量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数が取得される(第2の取得工程:ステップS22)。
次に、予測用データテーブル作成部24により、第1の説明変数及び第2の説明変数を含む予測用データテーブルが作成される(予測用データテーブルの作成工程:ステップS23)。予測用データテーブル作成部24は、図3に示すような、入力された第1の説明変数、第2の説明変数を含む予測用データテーブルを作成する。
次に、予測部23により、学習済みモデルM2に、予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、学習済みモデルM2により予測された、予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数が出力される(予測工程:ステップS24)。予測部23は、予測用データテーブルの作成工程(ステップS23)において予測用データテーブルに入力された第1の説明変数及び第2の説明変数を学習済みモデルM2に入力して、学習済みモデルM2から出力される、活性化エネルギーを含む目的変数を出力する。
次に、表示部25により、予測部23により出力された、活性化エネルギーを含む目的変数の情報が表示される(表示工程:ステップS25)。
なお、第1の説明変数の取得工程(ステップS21)は、第2の説明変数の取得工程(ステップS22)と同時に行ってもよいし、第2の説明変数の取得工程(ステップS22)の後に行ってもよい。
本実施形態の効果について説明する。本実施形態に係る学習装置1は、学習部14を備えることで、第1の説明変数及び第2の説明変数から高精度量子化学計算した時に算出される目的変数に近似した値を算出するように、モデルM1の機械学習を行うことができる。第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を求めるとき、一般に、高精度な計算条件を選択して高精度量子化学計算を行うと、目的変数を高精度に算出できるが、計算にかかる負担が大きく、計算結果を得るために高い計算コストを要する。学習装置1は、入力される第1の説明変数及び第2の説明変数から、化学反応の活性化エネルギーを簡便かつ低い計算コストで高精度に予測するように学習させることができる。
また、学習装置1は、計算に要する負担及び時間を抑えることができる。よって、学習装置1は、入力される第1の説明変数及び第2の説明変数から、化学反応の活性化エネルギーを簡便かつ低い計算コストで予測するように学習させることができる。
また、学習装置1では、第1の説明変数及び第2の説明変数は、目的変数よりも計算精度の低い量子化学計算によって算出できる。これにより、予測装置2は、目的変数を予測するのに必要な計算の負荷を軽減できる。
また、学習装置1は、表示部16を備えることができる。これにより、予測装置2は、使用者に対して、学習用データを生成するための情報と、モデルM1に関する情報を視覚的に提示できるので、使用者が学習用データ及びモデルM1に関する情報を容易に把握できる。
本実施形態に係る予測装置2は、学習済みモデルM2及び予測部23を備える。これにより、予測装置2は、第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を予測する際、第1の説明変数及び第2の説明変数から高精度量子化学計算で算出した場合に近似又は相当する目的変数を予測できる。よって、予測装置2は、化学反応の活性化エネルギーを高精度に予測できる。
また、予測装置2は、学習済みモデルM2及び予測部23を備えることで、高精度な計算機を使用して高精度量子化学計算を行う場合よりも、第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を簡易に予測できると共に、目的変数の計算に要する負担及び時間を抑えることができる。よって、予測装置2は、化学反応の活性化エネルギーを簡便かつ低い計算コストで予測できる。
ここで、活性化エネルギーは、化学反応が進行する際に必要なエネルギーであり、化学工業、製薬等の様々な分野において、化学反応の進行のし易さを見積もるための重要な要素である。一般に、化学反応の活性化エネルギーを求める方法には、実験的方法、計算科学的方法等がある。実験的方法では、例えば、反応中の物質の濃度変化を計測して速度定数を求める実験を異なる温度で複数回実施し、アレニウスプロットにおける直線の傾きから活性化エネルギーを求めることができる。しかし、実験に大きな労力を要する上、反応によっては直線が得られないため、活性化エネルギーが求められない場合もある。そのため、実験的方法では、活性化エネルギーを正しく確実に求めることは困難である。
計算科学的方法は、反応の遷移状態の構造を量子化学計算で求めることによって、例えば、図1に示すように、安定状態にある出発物質の自由エネルギーと遷移状態の自由エネルギーとの差から、活性化エネルギーを直接的に測定できる。しかし、量子化学計算を用いて直接的に活性化エネルギーを求める場合、遷移状態の構造を特定するのは困難であり、量子化学計算において遷移状態を計算することは容易でないため、活性化エネルギーの予測は困難である。そのため、量子化学計算により遷移状態の構造を探索する際、遷移状態において物質がどのような分子構造を有するかを予め推定して行われる。しかし、物質の分子構造が推定できなかったり、推定した分子構造が真の遷移状態の構造とかけ離れている場合は、正しく活性化エネルギーを予測できない。量子化学計算により遷移状態の構造を探索する際に技術者の勘や経験等に基づいて行われると、技術者によって算出される活性化エネルギーの値にばらつきが生じ易い。場合によっては、試行錯誤に多大な時間と労力を費やすことにもなり得る。また、信頼性の高い高精度の計算機を用いて高精度の計算を行って活性化エネルギーを算出する場合、計算に要する負担及び時間が増大する。特に反応系、生成系の分子サイズが大きくなるほど、莫大な計算時間やハイスペックな計算機が必要となり、時間と計算コストとのバランスが取り難い。そのため、現実的な計算時間、計算環境で計算を実行するために、計算精度を犠牲にすると、信頼性の低い計算結果しか得ることができない、その結果、事実上、取り扱うことができるのは、小さいサイズの分子に限定されてしまう。
予測装置2は、第1の説明変数及び第2の説明変数として、低精度量子化学計算によって得られる反応系及び生成系の各種情報を用いる。低精度量子化学計算によって得られる反応系及び生成系の各種情報は、反応系及び生成系の安定構造に関する情報であり、低精度量子化学計算により容易に安定して算出できる。予測装置2は、図1に示すように、低精度量子化学計算によって得られる第1の説明変数及び第2の説明変数を学習済みモデルM2に適用することで、高精度量子化学計算で遷移状態を求めた時に近似又は相当する活性化エネルギーΔGを予測できる。また、予測装置2は、従来の高精度量子化学計算よりも計算時間及び計算の負荷を軽減できる。
よって、予測装置2は、低精度量子化学計算と機械学習とを組み合わせることで、分子サイズの制約を受けることなく、簡便かつ低い計算コストで高精度に活性化エネルギーを予測できるため、比較的大きい分子サイズが大きい反応系についても高精度に目的変数を予測できる。したがって、予測装置2は、例えば、化学工業における材料や触媒等、分子サイズが比較的大きな反応系の活性化エネルギーを高速かつ高精度に予測することが可能となるため、研究開発のスピードアップに好適に用いることができる。
本実施形態に係る学習プログラムは、学習工程を含むことで、モデルM1の機械学習を行うことをコンピュータに実行させることができる。よって、本実施形態に係る学習プログラムを用いれば、入力された第1の説明変数及び第2の説明変数に基づいて、化学反応における活性化エネルギーを高精度に予測できるように学習させることができる。
また、本実施形態に係る学習プログラムは、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数及び生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を用いることで、高精度量子化学計算を用いる場合よりも、目的変数を簡易に予測できると共に、計算に要する負担及び時間を抑えることができる。よって、本実施形態に係る学習プログラムは、入力される第1の説明変数及び第2の説明変数から、化学反応の活性化エネルギーを簡便かつ低い計算コストで予測するように学習させることができる。
本実施形態に係る予測プログラムは、予測工程を含むことで、予測対象の目的変数を出力するようにコンピュータに実行させることができる。よって、本実施形態に係る予測プログラムを用いれば、第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を予測する際、第1の説明変数及び第2の説明変数から高精度量子化学計算で算出した場合に近似又は相当する目的変数を予測できる。よって、予測装置2は、化学反応の活性化エネルギーを高精度に予測できる。
また、本実施形態に係る予測プログラムは、予測工程を含むことで、第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を高精度な計算条件を選択して高精度量子化学計算を行わなくても、簡易に短時間で計算に要する負担及び時間を増大させることなく出力できるため、化学反応の活性化エネルギーを含む目的変数を簡便かつ低い計算コストで予測することをコンピュータに行わせることができる。
本実施形態に係る学習方法は、学習工程(ステップS13)を含むことで、モデルM1の機械学習を行うことができる。よって、本実施形態に係る学習方法は、入力された第1の説明変数及び第2の説明変数に基づいて、化学反応における活性化エネルギーを高精度に予測するように学習させることができる。
また、本実施形態に係る学習方法は、学習工程(ステップS13)を含むことで、高精度量子化学計算を用いる場合よりも、第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を簡易に予測できると共に、計算に要する負担及び時間を抑えることができる。よって、本実施形態に係る学習方法は、入力される第1の説明変数及び第2の説明変数から、化学反応の活性化エネルギーを簡便かつ低い計算コストで予測するように学習させることができる。
本実施形態に係る予測方法は、予測工程(ステップS23)を含むことで、予測対象の目的変数の予測値を出力できる。よって、本実施形態に係る予測方法は、第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を予測する際、第1の説明変数及び第2の説明変数から高精度量子化学計算で算出した場合に近似又は相当する目的変数を予測できる。よって、本実施形態に係る予測方法は、化学反応の活性化エネルギーを高精度に予測できる。
また、本実施形態に係る予測方法は、予測工程(ステップS23)を含むことで、第1の説明変数及び第2の説明変数から目的変数を高精度な計算条件を選択して高精度量子化学計算を行わなくても、簡易に短時間で目的変数の計算に要する負担及び時間を増大させることなく出力できるため、化学反応の活性化エネルギーを含む目的変数を簡便かつ低い計算コストで高精度に予測できる。
以下、実施例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
<実施例1>
[機械学習環境]
本実施例では、機械学習及び数値演算やデータ分析にAnaconda(登録商標)を使用した。
[対象とする反応]
本実施例では、共役ジエンにアルケンが付加して6員環構造を生じる有機化学反応である、ディールス・アルダー反応を取り扱う。ディールス・アルダー反応の一般式は、下記式(I)のように表される。なお、本実施例では、単純化のため、非環状化合物同士が反応する場合のみを考える。
Figure 0007669693000002
(式中、TSは遷移状態を表わし、X1~X4及びY1~Y4は、それぞれ独立に、-H、-NO2、-CN、-CF3、-SO2OH、-SO2CH3、-Ph、-CHO、-COOH、-COOCH3、-F、-Cl、-Br、-C(CH33、-CH3、-OCH3及び-OH等の置換基の何れかを表わす。)
[モデルの作成]
(学習用データの取得と学習用データテーブルの作成)
置換基X1~X4及びY1~Y4の組み合わせの異なるサンプル化合物について、量子化学計算から得られる情報を学習用データとするにあたり、本実施例では、表1~表3に示す、No.1~No.94の94パターンを取り扱った。目的変数である活性化エネルギーの値に分布を持たせる狙いで、電子供与性や電子求引性の多様な置換基17種(-H、-NO2、-CN、-CF3、-SO2OH、-SO2CH3、-Ph、-CHO、-COOH、-COOCH3、-F、-Cl、-Br、-C(CH33、-CH3、-OCH3、-OH)を組み合わせた化合物を対象とした。なお、計算コスト及び人的労力を抑えるため、分子サイズが大きくなるものや配向自由度が大きい置換基はできるだけ避けた。
Figure 0007669693000003
Figure 0007669693000004
Figure 0007669693000005
表1~表3に示す、No.1~No.94の94パターンについて、Gaussian16プログラムを用いてDFT法による構造最適化計算を実行した。第1の説明変数及び第2の説明変数向けと目的変数向けの計算条件と計算対象を表4に示す。第1の説明変数及び第2の説明変数の取得には、低精度基底3-21G、目的変数データ取得には、高精度基底6-311+G(2d,p)を用いた。
Figure 0007669693000006
出力された計算結果から、第1の説明変数及び第2の説明変数と目的変数となるデータを抽出した。目的変数である活性化エネルギーは、下記式(2)に従って算出した。
活性化エネルギー=遷移状態の自由エネルギー-(反応物1の自由エネルギー+反応物2の自由エネルギー) ・・・(2)
第1の説明変数及び第2の説明変数としては、表5に示す合計54種(反応物1及び反応物2に由来する27変数と、生成物由来の26変数と、生成系の安定化エネルギー1変数)のデータを抽出し、目的変数と共に学習用データテーブルを作成した。
Figure 0007669693000007
なお、炭素原子ラベルC1~C6の定義は、下記反応式(II)に従う。
Figure 0007669693000008
[学習用データのチェック]
作成した学習用データテーブルに格納されている目的変数の値の分布を図9に示す。図9に示すように、活性化エネルギーの範囲は、27kcal/mol~43kcal/molにわたっており、この範囲内では連続的にデータが存在しているため、概ね問題ないといえることが確認された。
また、第1の説明変数及び第2の説明変数と目的変数との相関係数を、相関係数の絶対値が大きい順に表6及び表7に示す。
Figure 0007669693000009
Figure 0007669693000010
表6及び表7より、反応物2(アルケン)由来のもの、生成物由来のもの及び生成系の安定化エネルギーが、比較的、目的変数と相関の強い説明変数であることが確認された。
(学習モデルの作成と予測精度の検証)
用意した学習用データについて、回帰分析と予測精度の検証を実施した。回帰手法にはベイジアンリッジ回帰を用い、精度検証方法にはリーブワンアウト交差検証を用いた。また、54種類の説明変数のうち目的変数との相関が弱いものを下位から順に除外していった場合に、最も予測精度(R2値で評価)の大きくなる、上位52種類の相関変数を用いた(即ち、下位2種類の相関変数を除いた)モデルを採用した。
作成した学習モデルにおける学習用データの予測検証した結果を図10に示す。図10に示すように、サンプルによって多少のばらつきはみられるものの、学習モデルの精度R値は0.834、MAE(平均絶対誤差)は1.1kcal/molとなっており、高精度量子化学計算で直接的に活性化エネルギーを求める場合と比べ、実施例1でも学習用データに関しては概ね遜色ない精度で活性化エネルギーを与えることが確認された。
[予測対象(未知物質)の活性化エネルギーの予測]
完成した学習済みモデルを用いて、学習データに含まれない、予測対象である未知物質が反応する場合の活性化エネルギーを予測した。予測結果を表8に示す。なお、表8には、予測対象として取り扱った予測対象A~Eの5つのパターンを示す。なお、表8中、1-Adは1-アダマンチル基(-C1015)、TBSはt-ブチルジメチルシリル基(-Si(CH32C(CH33)を表す)。
Figure 0007669693000011
5つの予測対象A~Eについて、低精度量子化学計算を実行した。計算条件と計算対象を表9に示す。出力された計算結果から、第1の説明変数及び第2の説明変数を抽出し、予測用データテーブルを作成した。
Figure 0007669693000012
作成した予測用データテーブルをインプットとして、学習済みモデルを用いて目的変数として活性化エネルギーの予測値を出力した。出力結果を表10に示す。
Figure 0007669693000013
<予測対象の予測結果の検証>
上記の予測結果について、実際に高精度量子化学計算によって活性化エネルギーを求めた結果と比較して、学習済みモデルを用いて予測した活性化エネルギーの予測値の予測精度の検証を行った。検証のための計算条件と計算対象を表11に示す。
Figure 0007669693000014
上記活性化エネルギーの予測値と得られた活性化エネルギーの計算値を表12に示す。また、予測値と計算値を学習用データと共にプロットした図を図11に示す。
Figure 0007669693000015
表12及び図11に示すように、本実施例で作成した学習済みモデルを用いて予測した活性化エネルギーの予測値は、未学習のデータでも、高精度量子化学計算で得られる計算値と概ね同じ結果を予測できたことが確認された。よって、予測対象である未知物質においても、未学習のデータを低精度量子化学計算して得られる第1の説明変数及び第2の説明変数を学習済みモデルに適用すれば、高精度量子化学計算で得られる活性化エネルギーに相当又は近似する活性化エネルギーを予測できるといえる。
また、量子化学計算で直接的に活性化エネルギーを求める際に問題となる計算コストについて、本実施例に係る予測装置手法との比較を行った。一般に計算時間は対象分子を構成する原子数や電子数、より厳密には各電子状態を表現する基底関数の数に依存する。本実施例においてデータを取得した5つの予測対象A~Eについて、その原子数、電子数、基底関数の数及び計算に要した時間(実績)を表13に示す。また、系の電子数に対する計算の所要時間をプロットした図を図12に示す。なお、所要時間とは、反応物1、反応物2及び生成物に対する構造の最適化に要した時間と、振動計算に要した時間との和である。計算機コア数は、いずれも16とした。
なお、比較例1として、反応系の自由エネルギー及び遷移状態の自由エネルギーを高精度量子化学計算により求めることで、活性化エネルギーを直接求める従来法を行った。比較例1では、所要時間は、反応物1、反応物2及び遷移状態に対する構造の最適化に要した時間と、振動計算に要した時間との和とした。
Figure 0007669693000016
表13及び図12に示すように、実施例1は、比較例1よりも、計算に要した時間が短かった。特に、分子サイズが大きくなるほど、計算に要した時間の短縮効果が大きかった。よって、従来の、高精度量子化学計算で直接的に活性化エネルギーを求める方法は、扱う系の分子サイズが大きくなるほど計算時間が多く必要であることが確認された。これに対し、本実施形態に係る予測装置は、低精度計算で算出した第1の説明変数及び第2の説明変数を学習済みモデルに当てはめるのみで足りるため、計算時間を格段に短くできることが確認された。また、分子サイズが大きくなっても、計算時間が長くなることが抑えられ、計算時間の短縮効果が顕著に得られることが確認された。
また、94パターンの学習用データと5つの予測対象A~Eにおける反応系の電子数の分布を図13に示す。図13に示すように、学習用データは、反応系の分子数が小さかったのに対し、予測対象A~Eは、反応系の分子数が殆ど大きかった。即ち、学習済みモデルを作成する際に取得するデータ群は比較的小さい分子サイズ領域に収まっているのに対し、予測対象A~Eは学習済みデータよりも分子サイズの大きい領域に分布していることがわかる。よって、本実施例で作成した学習済みモデルは、学習用データよりも分子サイズが大きい未学習領域に存在する予測対象の活性化エネルギーについても精度よく予測できるといえる。
よって、本実施例で作成した学習済みモデルを用いれば、学習用データの取得の際には、比較的計算コストの負担及び時間がかからない小さいサイズのサンプルを用いることで、高精度量子化学計算が難しい分子サイズが大きい領域に存在する反応系の活性化エネルギーを高精度に予測できるといえる。
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 学習装置
2 予測装置
11、21 第1の取得部
12、22 第2の取得部
13 第3の取得部
14 学習部
142 予測精度検証部
15 データテーブル作成部
16、25 表示部
23 予測部
24 予測用データテーブル作成部
M1 モデル
M2 学習済みモデル

Claims (9)

  1. 量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得部と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得部と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を取得する第3の取得部と、
    前記第1の説明変数及び前記第2の説明変数と、前記目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルの学習を行う学習部と、
    を有する学習装置。
  2. 前記第1の説明変数及び前記第2の説明変数は、前記目的変数よりも計算精度の低い量子化学計算によって算出される、請求項1に記載の学習装置。
  3. 前記モデルの学習において用いられる学習用データを生成するための情報と、学習が行われる前記モデルに関する情報とを表示する表示部を更に有する、請求項1又は2に記載の学習装置。
  4. 量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得部と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得部と、
    所定の反応系について予め算出された第1の説明変数及び第2の説明変数と、該所定の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数と、が対応付けられた学習用データを用いて学習された学習済みモデルと、
    予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、前記学習済みモデルにより予測された、該予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する予測部と、
    を有する予測装置。
  5. 前記学習済みモデルに入力される前記予測対象の反応系に関する情報、及び、前記予測対象の反応系を化学反応させることで生成される生成系に関する情報の選択を受け付ける受付部と、
    前記予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を表示する表示部と、
    を更に有する、請求項4に記載の予測装置。
  6. 量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を取得する第3の取得工程と、
    前記第1の説明変数及び前記第2の説明変数と、前記目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルの学習を行う学習工程と、
    をコンピュータに実行させる学習プログラム。
  7. 量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、
    所定の反応系について予め算出された第1の説明変数及び第2の説明変数と、該所定の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数と、が対応付けられた学習用データを用いて学習された学習済みモデルに、予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、前記学習済みモデルにより予測された、該予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する予測工程と、
    をコンピュータに実行させる予測プログラム。
  8. 量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を取得する第3の取得工程と、
    前記第1の説明変数及び前記第2の説明変数と、前記目的変数とが対応付けられた学習用データを用いて、モデルの学習を行う学習工程と、
    コンピュータが実行する学習方法。
  9. 量子化学計算によって算出された、反応系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第1の説明変数を取得する第1の取得工程と、
    量子化学計算によって算出された、前記反応系を化学反応させることで生成される生成系の構造パラメータ及び電子プロパティを含む第2の説明変数を取得する第2の取得工程と、
    所定の反応系について予め算出された第1の説明変数及び第2の説明変数と、該所定の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数と、が対応付けられた学習用データを用いて学習された学習済みモデルに、予測対象の反応系の第1の説明変数及び第2の説明変数を入力することで、前記学習済みモデルにより予測された、該予測対象の反応系の化学反応における活性化エネルギーを含む目的変数を出力する予測工程と、
    コンピュータが実行する予測方法。
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