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JP7680657B2 - 鉄筋コンクリート梁 - Google Patents
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特許法第30条第2項適用 (刊行物1) ▲1▼ 開催日 令和3年2月4日~同2月5日 (発表日:令和3年2月5日) ▲2▼ 集会名、開催場所「国立大学法人東京工業大学環境・社会理工学院建築学系2020年度3月終了 修士論文発表会」 国立大学法人東京工業大学 大岡山キャンパス 緑ヶ丘ホール内 (東京都目黒区大岡山2丁目12番1号) ▲3▼ 公開者 益田 一毅 ▲4▼ 公開の内容 主筋の付着除去が逆対象曲げを受けるヒンジ位置保証型RC梁の力学的挙動に与える影響に関する研究
本発明は、梁構造に関し、特に鉄筋コンクリート造の梁構造に関する。
従来、鉄筋コンクリート造(以下、RC造と言う。)における梁部分は、地震等の外力によってひび割れ等の損傷を受ける場合がある。梁が損傷した場合においては、建物の継続的使用を図るべく、ひび割れ等の補修作業を行う必要があるが、損傷が梁の全長に渡って生じる場合には補修作業の長期化及びコスト増を招き、ひいては建物自体の建て替えを余儀なくされる。
特許文献1には、補修が困難となる柱と梁の接合部(以下、柱梁接合部)の損傷を抑制,制御すべく、梁の中央側に配置された第1の主筋と、当該第1の主筋と比べて大径又は高強度とされ、梁の端部側に配置された第2主筋とを設け、第1,第2の主筋同士を鉄筋継手によって連結することにより、梁の中央側に向けて所謂ヒンジリロケーションを図り、以って曲げ降伏ヒンジ近傍のひび割れが柱梁接合部に到達しないようにした構成が開示されている。
特開2020-143566号公報
しかしながら、上記特許文献の図面からも明らかなように、上記梁構造によれば柱梁接合部における損傷を抑制できるものの、ひび割れによる損傷の範囲が梁の略全域に及ぶため、継続的使用の可能性は向上するものの、損傷後の補修作業としては依然として困難が残る。また、一般に梁に生じるひび割れは、梁に配置された鉄筋のコンクリートへの応力伝達によって生じるため、例えば鉄筋一部をコンクリートに付着させず定着を弱めることにより、ひび割れの範囲を減少、或いは、発生範囲を制御する方策も考えられるが、定着力の減少によって履歴特性がエネルギー吸収性に乏しい所謂スリップ型に近づくため、地震等の外力に対する構造性能が一般的な梁と比べて低下する懸念がある。
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、一般に要求される梁の構造性能を担保しつつ、外力による損傷を抑制,制御可能な梁構造を提供する。
上記課題を解決するための本発明の構成として、柱間に接合され、複数の主筋を有する鉄筋コンクリート梁であって、複数の主筋のうちの少なくとも一部が、梁の長さ方向の中心から柱方向への所定範囲における主筋とコンクリートとが付着された中央定着部と、中央定着部以外の所定範囲における主筋とコンクリートとの付着が付着除去手段を介して除去された非定着部とを有し、中央定着部と非定着部との境界に定着板が設けられ、当該定着板は、梁の縦断面視上下の少なくとも二の主筋を挿通可能な開口を有する板状体である構成とした。
本構成によれば、梁の構造性能を担保しつつ、非定着部によってひび割れの発生を抑制,制御することができる。また、定着板の支圧抵抗により、定着性状を向上させることができる。
また、定着板は、非定着部を有する全ての主筋を挿通可能な開口を有する板状体であっても良い。
また、中央定着部及び非定着部を有する主筋が、梁の縦断面視おいて少なくとも角部に位置する構成であっても良い。
本構成によれば、コンクリート表面に生じるひび割れをより効果的に抑制,制御できる。
また、柱と前記梁の接合部から前記梁の中心に向けて所定寸法隔てた位置を想定ヒンジとして設定し、非定着部の柱側端部を想定ヒンジの位置とする構成であっても良い。
本構成によれば、柱と梁の接合部に損傷が生じることを抑制することができる。
また、付着除去手段は、主筋の外周に被着されたシース管であっても良い。
本発明の一実施形態に係る柱梁構造の概略横断面図である。 図1の柱梁構造のA―A断面図、B―B断面図、C―C断面図である。 鉄筋コンクリート梁の部分拡大図である。 定着鋼板の概要を示す断面図である。 解析対象の詳細及び解析モデルを示す図である。 解析対象となるモデルの諸元、及び解析パラメータを示す図である。 境界,載荷条件を示す概要図である。 R=±1/67rad除荷後変位ゼロまでのせん断力-部材角関係を示す図である。 最大耐力の解析値と曲げ終局強度時せん断力の計算値を示す図である。 各モデルのひび割れ状況を示す概要図である。 コンクリート及び鉄筋の材料特性を示す図である。 構造試験のセットアップを示す概要図である。 せん断力-部材角関係を示す図である。 観察のための領域分けを説明する図である。 ひび割れの測定方法等を説明する図である。 ひび割れのモデル化を説明する図である。 ひび割れ状況を示す概要図である。 ひび割れ本数の推移を示す図である。 最大ひび割れ幅の推移を示す図である。 残留ひび割れ面積率の分布を示す図である。
[全体構造について]
以下、図1,2を参照して、鉄筋コンクリート造の梁10を有する柱梁構造1について説明する。同図に示すように、柱梁構造1は、鉄筋コンクリート造の柱3A;3Bと、柱3A;3Bに対して接合され、柱3A;3B間に架設された同じく鉄筋コンクリート造の梁10とを備える。梁10は、柱3A;3B間に渡って延在する上端側主筋13と下端側主筋15とを備える。上端側主筋13及び下端側主筋15の両端部は、それぞれ柱3A;3Bを貫通して鎖線で示す他の梁12側に延在する。なお、梁10の構造物全体の位置によっては、柱3A;3B内において折り曲げ定着しても良い。なお、本明細書を通じて梁10内に配置される各主筋は、周囲にリブが形成された異形鉄筋であるものとする。
図2(a)に示すように、上端側主筋13は、梁10の最も上端面側において配列された複数の上端側主筋13A乃至13Dから構成される。また、下端側主筋15は、梁10の最も下端面側において配列された複数の下端側主筋15A乃至15Dから構成される。
梁10は、上端側主筋13及び下端側主筋15の他、柱3A;3B側においてそれぞれ柱3A;3B側に延長する端部上端側主筋17及び端部下端側主筋19とを備える。図2(b)に示すように、端部上端側主筋17は、上端側主筋13A乃至13Dの位置と対応する直下に配列された端部上端側主筋17A乃至17Dから構成される。また、端部下端側主筋19は、下端側主筋15A乃至15Dの位置と対応する直上に配列された端部下端側主筋19A乃至19Dから構成される。また、端部上端側主筋17及び端部下端側主筋19における柱3A;3B側の一端部は、上記上端側主筋13及び下端側主筋15と同様に、それぞれ柱3A;3Bを貫通して鎖線で示す他の梁12側に延在するか、柱3A;3B内において折り曲げ定着される。
また、端部上端側主筋17及び端部下端側主筋19における梁10側の他端部は、梁10の中心方向に延在すると共に、柱3A;3Bと梁10との接合面(仕口面10A;10B)から所定寸法離れた位置にて終端する。梁10内で終端する端部上端側主筋17及び端部下端側主筋19の他端部には、例えば、ねじ式、或いはグラウト注入式の機械式定着具が締結され、梁10側との定着が図られる。図2に示すように、梁10に配置された上端側主筋13及び下端側主筋15、端部上端側主筋17及び端部下端側主筋19は、梁10の全長に渡って所定間隔を有して配置された図1において不図示の肋筋(スタラップS)により巻回されている。
上記基本構造を有する柱梁構造1は、主に端部上端側主筋17及び端部下端側主筋19をカットオフすることにより、降伏ヒンジの発生位置(想定ヒンジ位置)を仕口面10A;10Bよりも梁10の中心側に向けて隔てた位置とした所謂ヒンジリロケーション構造であり、地震等の外力によって柱3A;3Bと梁10との接合部に損傷が生じ、修復が困難となる可能性が抑制された構造である。
[定着部及び非定着部について]
梁10の全長に渡って延長する上端側主筋13A乃至13D及び下端側主筋15A乃至15Dからなる8本の主筋のうち、断面縦長矩形状に形成された梁10の角部(本例では四隅)と最も近接する上端側主筋13A;D及び下端側主筋15A;15Dには、その延長方向に渡って定着部P1;P2;P3と非定着部Q1;Q2とが設けられる。以下、定着部Pと非定着部Qについて詳説する。
図1に示すように、定着部P1は、梁10の長さ方向(柱3A;3B間)の中心を含んで柱3A;3B方向に渡って所定寸法を有して延長する中央の区間(中央定着部)である。また、非定着部Q1;Q2は、定着部P1を挟んで定着部P1の端部から柱3A;3B方向に渡って所定寸法を有して延長する区間である。また、定着部P2;P3はそれぞれ非定着部Q1;Q2と隣接して柱3A;3B方向に渡って延長する区間(柱側定着部)である。
図2(a),(b)に示すように、定着部P1,P2,P3における上端側主筋13A;D及び下端側主筋15A;15Dの周面は、周囲のコンクリートと直接接しており、各主筋表面とコンクリートとの付着が確保された状態とされる。一方、図2(c)に示すように、定着部Pに隣接する非定着部Q1;Q2における上端側主筋13A;D及び下端側主筋15A;15Dの周面には、付着除去手段としてのシース管20が長さ方向に渡って被着されている。また、シース管20の柱3;3B側の端部は、前述の想定ヒンジ位置と一致しており、非定着部Q1;Q2は、定着部P1の端部から想定ヒンジ位置まで連続して延長する区間となる。上端側主筋13A;D及び下端側主筋15A;15Dの周面にシース管20が被着されたことにより、非定着部Q1;Q2においては、シース管20によって各主筋表面とコンクリートとの付着が除去された状態とされる。
即ち、本例における8本の主筋のうち、角部に位置する一部の主筋(上端側主筋13A;13D及び下端側主筋15A;15D)は、その長さ方向において、コンクリートとの付着が確保された区間(定着区間)と付着が除去された区間(非定着区間)とを有する。そして、このような構成によって、梁10は、その長さ方向において主筋とコンクリートとの定着されている(大となる)定着部P1,P2,P3と、これら各定着部Pよりもコンクリートとの定着がされていない(小となる)非定着部Q1;Q2とを有することとなる。
[他の形態について]
次に、図3,図4を参照して、定着部と非定着部とを有する梁10の他の形態について説明する。なお、同図において前述の実施形態と同一構成については同一符号を用い、説明を省略する。
図3は、梁10の定着部P1と非定着部Q1;Q2との境界を示す拡大断面図である。
同図に示すように、当該境界にはそれぞれ定着鋼板25が設けられている。図4に示すように、定着鋼板25は、梁10の断面の上下方向に延長する縦長矩形状(短冊状)であって、上下に対応する上端側主筋13A及び下端側主筋15Aをそれぞれ挿通可能な円孔を有する鋼板25Aと、同じく短冊状であって、上下に対応する上端側主筋13D及び下端側主筋15Dをそれぞれ挿通可能な円孔を有する鋼板25Bとから構成される。図3に示すように各鋼板25A;25Bは、上記各主筋を挿通した状態で定着部P1と非定着部Q1;Q2との境界位置において位置決めされ、定着部P1側から螺入される定着ナット26及び非定着部Q1;Q2側から螺入される定着ナット27により、上端側主筋13A及び下端側主筋15A間、上端側主筋13D及び下端側主筋15D間に掛け渡された状態で強固に固定される。
即ち、定着鋼板25は、前述の実施形態との比較において、コンクリートとの付着が除去された区間を有する上端側主筋13A;13D及び下端側主筋15A;15Dに対応するように設けられた定着部材であって、当該定着鋼板25によってコンクリートとの付着が確保される。
つまり、本例における定着部P1は、一方の定着鋼板25から他方の定着鋼板25までの区間となり、定着鋼板25;25間の主筋、及び両定着鋼板25;25のコンクリートへの定着によって、前述の実施形態に係る梁10よりも、定着部P1におけるコンクリートに対する定着が大となる形態である。
次に、上記各実施形態に係る梁10の有用性を示す解析結果について説明する。同解析は、非線形3次元有限要素解析であり、図5(a),(b)に解析対象の詳細及び解析モデルを示し、図6(a),(b)に解析対象となるモデルの諸元、及び解析パラメータを示す。
図5に示すように、本解析モデルは、超高層RC造構造物を対象として、実物大の1/2スケールを想定し、内法スパンを3050mmとした1スパンのRC梁部材とスタブから構成される。図6(a)に示すように、梁断面は、幅275mm、せい450mmである。梁際(仕口面)から450mmの位置を想定ヒンジ位置としており、当該位置までの主筋を4+4‐D19としている。また、想定ヒンジ位置にて2段筋(図1の端部上端側主筋17及び端部下端側主筋19に相当)をカットオフすると共に機械式定着としている。そして梁の中央部側を4-D19とすることでヒンジ位置を意図的に梁の中央部側に移動させている。なお、上記設計概念は、主筋を全長に渡って4+2-D19とした梁と同等の耐力となることを意図している。また、2段筋のカットオフ位置に肋筋を2組配置している。スラブは片側幅350mmとし、両側に取り付けている。
図6(b)に示すように、解析パラメータは、付着除去の対象となる鉄筋(「なし」,「四隅」,「全て」)、スパン中央部(図1の定着部P1に相当)の定着形式(「直線」,「鋼板」)及び、スラブの有無として計8モデルの解析を行った。付着除去の対象となる鉄筋は、付着を除去しない通常付着性状のBモデル、想定ヒンジ位置よりモーメントが小さい側において四隅の主筋を対象として付着を除去したDBCモデル、当該DBCモデルと同じ区間において、全ての主筋の付着を除去したDBAモデルの3つのパラメータとした。
また、スパン中央部の定着形式は、直線定着(主筋のみ)として付着特性を持たせたSAモデル、直線定着し、かつ、定着鋼板(主筋+鋼板)を介在させたPAモデルの2つのパラメータとした。ここで、直線定着長さは日本建築学会のRC規準13)を参考に必要定着長さを算出し、SAモデルにおける付着を除去しない区間(定着区間)を梁反曲点位置から左右それぞれ300mm(計600mm)とした。PAモデルでは、付着を除去しない区間(定着区間)を200mm(計400mm)とし、かつ、その両端に定着鋼板(PL12)を挿入し、反曲点近傍における主筋を定着する方法を採用した。スラブの有無については,スラブが付かない場合はN、付く場合はSを付すモデル名とした。
上記各モデルに対して、図7に示す境界,載荷条件による解析を行った。同図に示すように、梁の一方を加力側スタブとし、他方を鉛直変位拘束側スタブとした。加力側スタブでは、梁に逆対称曲げを生じさせるために回転を拘束すると共に、仮想線で示す中央奥行き方向の軸上の節点に強制変位δを付与する。また、鉛直変位拘束側スタブでは、鉛直変位を拘束する一方で水平変位を自由とする。また、加力は梁の内法スパン(3050mm)から算出した部材角Rに基づく変位制御とし、正負交番繰り返しで行った。詳細には、R=±1/1600,1/800,1/400,1/200,1/100radの強制変位を2サイクルずつ、R=±1/67radの強制変位を1サイクル行った。
図8は、全モデルで共通に解析できたR=+1/67rad除荷後変位ゼロまでのせん断力-部材角関係を示し、図9は、最大耐力の解析値と曲げ終局強度時せん断力の計算値を示す。図8中の破線部は、曲げ終局強度時せん断力の計算値Qu_calである。曲げ終局強度Muは日本建築学会のRC規準13)に示される略算式(式(1))を用いて計算した。また、スラブ付きのモデルでは,スラブが引張側となる上端引張時において引張鉄筋の断面積aの算定にスラブ筋の鉄筋を考慮することによって算出した。スラブなしモデルではQu_cal=190kN、スラブありモデルではQu_cal=205kNである。

式(1) Mu=0.9a σ

:引張鉄筋の断面積[mm],
σ:引張鉄筋の降伏強度[N/mm],
d:有効せい[mm]である。
全てのモデルにおいて、R=1/100radサイクルまでは、履歴特性がスリップ型とはならず、紡錘型の安定したループを描いた。また、図8に示すように、R=1/67radサイクルにおいて、四隅の主筋を対象として付着除去区間を有し、中央部を直線定着としたDBC-SA-Nモデル(図8(b))では、定着効果を発揮できず剛性,耐力ともに僅かな低下が見られたものの、さらに中央部を鋼板で定着したDBC-PA-N(同(c)),
DBC-PA-Sモデル(同(g))の最大耐力は計算値を大幅に上回った。
また、スラブが付かないNモデルの正側最大耐力を比較すると、通常付着性状のB-Nモデルの218kNとの比較において、全ての主筋を対象として付着除去区間を有し、中央部を直線定着としたDBA-SA-Nモデル(同(d))では158kNと約28%低下し、四隅の主筋を対象として付着除去区間を有し、中央部を直線定着としたDBC-SA-Nモデル(同(b))では193kNと約11%低下した。
全ての主筋に付着除去区間を有するDBAと、四隅の主筋に付着除去区間を有するDBCとの耐力低下割合の差異は、DBAでは全ての引張鉄筋の引張力がB-Nに比べて小さいが,DBCでは付着がある四隅以外の内側主筋の引張鉄筋がB-Nモデルと同様に降伏し引張力を負担するためであると考えられる。
B-Nモデルに比べて、全ての主筋を対象として付着除去区間を有し、中央部を鋼板で定着したDBA-PA-Nモデル(同(e))では204kNと約6%低下し、四隅の主筋を対象として付着除去区間を有し、中央部を鋼板で定着したDBC-PA-Nモデル(同(c))では209kNで約4%の低下と、耐力の低下が大幅に抑制された。これは、鋼板によりスパン中央部での定着効果をより大きくすることで、主筋の引張・圧縮の負担の切り替えが確保されたと考えられる。また、スラブ付きのSモデルを比較すると、付着除去による影響はほとんど見られず、いずれのモデルもほぼ同等の耐力であった。これは、スラブが取り付くことによって上端筋の負担する圧縮力が低減したためであると考えられる。
次に、図10を参照して各モデルにおけるひび割れ範囲について説明する。同図は、R=+1/100rad時の各モデルのひび割れ状況を示す図である。同図に示すように、ヒンジリロケーション構造を有する全モデルにおいて、柱際から想定ヒンジ位置までの区間にひび割れが大きく生じている。また、通常付着性状のBモデル(B-N,B-S)との比較において、付着除去区間を有する各モデルにあっては、想定ヒンジ位置よりもモーメントが小となる側(スパン中央方向)の範囲のひび割れが少なくなっており、損傷範囲の抑制が効果的になされていることが分かる。また、DBCモデルとDBAモデルとの比較、即ち、付着除去区間を有する主筋の対象を四隅とするか、全てとするかの違いによっては、ひび割れの損傷範囲に与える影響が少ないことが分かる。
つまり、梁断面において角部に位置する主筋は、内側の主筋に比べてコンクリートのかぶり厚さが小さく、コンクリートのひび割れが主筋からの応力伝達に起因することを考慮すると、コンクリート表面に近い四隅の主筋に付着除去区間を設けることは、梁の損傷抑制に極めて有効であると考えられる。
また、中央部における定着形式に着目すると、直線定着としたSAモデルでは、スパン中央にひび割れが生じていないが、鋼板定着としたPAモデルでは、鋼板の位置と略対応する表面に僅かな範囲のひび割れが生じている。また、スラブの有無によっては顕著な差異は認められず、スラブ上面においても損傷範囲の抑制効果が発現している。
以上の解析結果を踏まえると、四隅の主筋に付着除去区間を設けると共に、中央部を直線定着としたDBC-SA-Nモデル、及び、直線定着に加えて鋼板による定着を付与したDBC-PA-Nモデルが、耐力の優劣はあるものの構造性能、及び損傷を抑制、制御可能な梁構造としてバランスが優れていることが確認された。
次に、本願発明の梁部材の構造実験の結果を示す。本構造試験の試験体は、図5に示すように、内法スパンを3050mmとした1スパンのRC梁部材とスタブから構成される。図6(a)に示すように、梁断面は、幅275mm、せい450mmである。梁際(仕口面)から450mmの位置を想定ヒンジ位置としており、当該位置までの主筋を4+4‐D19としている。また、想定ヒンジ位置にて2段筋(図1の端部上端側主筋17及び端部下端側主筋19に相当)をカットオフすると共に機械式定着としている。そして、梁の中央部側を4-D19とすることでヒンジ位置を意図的に梁の中央部側に移動させている。なお、上記設計概念は、主筋を全長に渡って4+2-D19とした梁と同等の耐力となることを意図している。また、2段筋のカットオフ位置に肋筋を2組配置している。スラブは片側幅350mmとし、両側に取り付けている(解析パラメータのDBC-PA-Sモデルに相当)。
試験体に用いたコンクリートの材料特性を図11(a)に示す。呼び強度Fc50のコンクリートで圧縮強度58.6(N/mm2)、割裂強度2.8(N/mm2)、ヤング係数32800(N/mm2)とした。また、鉄筋の材料特性を図11(b)に示す。
図12は、構造試験のセットアップを示す。試験体は、鉛直変位拘束(右)側スタブを、治具を介して反力床に固定した。アクチュエータと加力(左)側スタブは加力梁を介して接合した。加力梁とパンタグラフとを接合することで面外拘束した。カウンターウェイトにより、加力梁に接合した平行クランク、加力治具、および試験体の自重を相殺した。アクチュエータにより鉛直方向に正負交番漸増載荷を行った。
正負交番漸増載荷は、梁内法スパンと加力(左)側スタブの鉛直変位から求めた部材角Rによる変位制御とし、加力サイクルは、R=±1/800、1/400、1/200、1/100、1/67、1/50radの変形角において2サイクル、R=+1/33radの変形角において1サイクルを行うものとした。
図13は、構造実験により得られたせん断力と部材角に関係を示す。R=1/33radまで耐力低下は見られず、履歴特性は紡錘型の安定したループを描いた。最大荷重は正側250KN、負側210KNと、負側では若干下回るも終局強度時せん断力の計算値と同等の結果が得られた。以上から、十分な構造性能を有していることが判明した。
次に、試験体の損傷状況の評価を図14乃至図20を用いて説明する。評価に当たり、構造実験中の試験体のひび割れ発生状況を目視にて観察するとともに、各ひび割れの最大幅を計測した。観察及び計測の結果を元に、ひび割れの発生位置、修復労力に関係するひび割れ本数、損傷の程度を示す最大ひび割れの幅、修復コストに関係するひび割れの面積に着目して損傷状況の評価を行った。
図14に示すように、試験体の観察を行うにあたり付着除去や中央定着の効果を確認するため、梁部材を梁の一端側端部から所定の寸法を定め、AからHまでの8つの領域(以下、観察領域という)に分けて行った。観察の項目としては、ひび割れの性状、及びひび割れ幅とし、試験体の梁側面及びスラブ上面の2面について行った。また、観察のタイミングとしては、各変形角サイクルの1回目のピーク時及び除荷時とし、カバーコンクリートが剥離し、ひび割れの評価が不可能となるサイクルまで行った。
図15は、ひび割れ幅の測定方法を示す。ひび割れの確認は、梁の場合は梁縁部、梁主筋、梁主筋位置から85mmの位置を横断するひび割れについて行い(図15(a)参照)、スラブ上面についてスラブ縁部、スラブ主筋、梁端部、梁主筋の位置を横断するひび割れについて行った。また、ひび割れの幅はクラックスケール(最小目盛0.03mm)を用いて、ひび割れに対して直行方向に計測した(図15(b)参照)。
前記ひび割れの面積は、図16(a)で示す実際のひび割れを、図16(b)で示すような平行四辺形のひび割れモデルに置換・モデル化し、連続的に変化するひび割れを「計測点におけるひび割れ幅×計測間隔」の平行四辺形のひび割れとして算出した。また、ひび割れ面積を前記AからHの8領域ごとに合計し、合計値を各領域の面積で除して算出したひび割れ面積率γAcrとして評価した。
図17は、R=1/100rad時のひび割れの状況を示す。梁側面については、R=1/800radサイクル途中にヒンジ想定位置(前記観察領域のABおよびGHの境界部分)に曲げひび割れが発生し、その後、変形が大きくなるのに伴って、ヒンジ想定位置から柱際方向へひび割れが発生する範囲が拡大した。ヒンジ想定位置に発生したひび割れのひび割れ幅は大きく、その他の範囲に発生したひび割れは微細なものであった。R=1/50radサイクルにおいて、ヒンジ想定位置周辺のカバーコンクリートが徐々に破壊され、剥離が発生し、その範囲が拡出していくことが観察できた。スラブ上面については、1/800radサイクル途中にヒンジ想定位置に曲げひび割れが発生し、その後変形が大きくなるのに伴って、ヒンジ想定位置から柱際方向へひび割れが発生する範囲が拡大した。ひび割れは一直線に貫通するものが大多数を占めていた。大変形時においてもヒンジ想定位置にひび割れが集中し、付着除去区間にはほとんどひび割れが生じず、ヒンジ想定位置以外の範囲に発生したひび割れは0.1mm未満の微細なものがほとんどであった。
図18は、梁側面及びスラブ面に発生したひび割れの本数を示す。縦軸を各サイクルで生じたひび割れの累積数、横軸を各サイクルとしている。梁側面では、R=-1/100rad時に41本、R=-1/67rad時に46本、R=-1/50時に47本であった。スラブ上面においては、R=-1/100radまでに17本発生した後は1/50rad時までひび割れは増加しなかった。梁側面、スラブ上面ともにそれぞれ梁主筋、スラブ主筋が降伏するサイクルまではひび割れ本数が徐々に増加していくものの、降伏後はヒンジ想定位置に生じたひび割れが大きくなるのみで、その他の範囲において新たなひび割れはほとんど生じなかった。
図19は、各加力サイクルのピーク時と除荷時の梁、スラブの最大ひび割れ幅の推移を示す。梁の除荷時残留最大ひび割れ幅はR=-1/200rad時に0.35mm、R=-1/100rad時に0.35mmであり、スラブ上面の除荷時残留最大ひび割れ幅はR=-1/200rad時に0.2mm、R=-1/100rad時に0.6mmであった。
また、日本建築学会の耐震性能評価指針において、小規模な補修で補修可能な損傷度の指標として、損傷度II:修復限界I(実大建築物で部材のひび割れ幅0.2~1.0mm以下)が示されており、試験体寸法を考慮すると、そのひび割れ幅の指標は1/2の値の0.5mm程度である。
梁の除荷時残留最大ひび割れ幅について、レベル2地震動に対する一般的な設計クライテリアであるR=1/100radにおいて、試験体の寸法効果を考慮して、上記指針に基づき評価すると、実大建物で部材のひび割れ幅0.2~1.0mmとする損傷度II:修復限界I(小規模な補修が必要)に該当する。したがって、本発明の梁部材を実建物に採用した場合、地震後においても小規模な補修で建築物を継続使用できることが判明した。
図20は、正側除荷時の梁側面、スラブ上面の前記観測領域ごとの残留ひび割れ面積率γAcrを示す。縦軸に各観測領域の残留ひび割れ面積率、横軸は図の上に示している領域を示す。梁側面、スラブ上面ともにヒンジ想定位置を含む領域(BおよびG)は、残留ひび割れ面積率が他領域と比較して顕著に大きくなるが、柱側の残留ひび割れ面積率は小さく、また、付着を除去した領域に関しては、残留ひび割れ面積率はほとんどない。このことから、本発明による梁部材によれば、地震による損傷について修復を行うべき箇所をヒンジ想定位置に限定することが可能となるため、修復コストを抑えられることとなる。
以上、本発明について、実施形態を通じて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
上記実施形態においては、梁10の断面形状を矩形状とし、その角部(四隅)に位置する鉄筋を対象として付着除去区間を設け、非定着部を形成したが、これと異なる角形状であっても良く、このような形状にあっては角形状の角部に最も近い主筋を対象として付着除去区間を設けて非定着部を形成することにより、損傷を抑制,制御することが可能である。また、上記実施形態においては、定着鋼板25を短冊状として断面視上下の主筋に対して掛け渡す構成としたが、各主筋に対応するように定着鋼板25を個別に設ける構成や、断面視左右の主筋に対して掛け渡す構成、或いは、付着除去区間を有する全ての主筋を挿通可能な孔を有するロの字型の定着鋼板を設けた構成等としても良い。
また、上記実施形態における梁10の全長に対する定着区間の長さは、RC構造計算規準における異形鉄筋による引張鉄筋の必要定着長さから設定可能であると思われる。

ここで、:付着割裂の基準となる強度
:仕口面における鉄筋の応力度
:異形鉄筋の呼び径
:コア内に定着する場合は1.0
:必要定着長さの補正係数(機械式定着具で0.7)

但し、上式は仕口への定着に関するものであり、梁10内部で定着する場合への適用性は不確実であるもののこれに準じる可能性が推認される。
また、上記実施形態における梁10の全長に対する付着除去区間の長さは、曲げひび割れ強度と、塑性ヒンジ発生時の梁の曲げモーメント分布から適宜決定すれば良い。曲げひび割れ発生モーメントは下式により与えられる。

ここで、:コンクリートの圧縮強度
:鉄筋を考慮した断面係数
N:軸力
D:部材せい
上式により算出した曲げひび割れ強度と、塑性ヒンジ発生時の梁の曲げモーメント分布を比較し、曲げモーメントが曲げひび割れ強度を超える箇所については主筋の付着除去を施すことが望ましいと考えられる。また、付着除去区間は、図1のように連続した区間でなくても良く、付着除去区間と定着区間とがより短い区間で例えば交互に形成されても良い。
以上を勘案して、梁10の中央部の必要定着長さと曲げひび割れ発生位置を適切に評価し、付着除去区間及び定着区間の長さを設定する必要がある。
1 柱梁構造,3A;3B 柱,10 梁,13 上端側主筋,15 下端側主筋,
P1;P2;P3 定着部,Q1;Q2 非定着部,25 定着鋼板

Claims (5)

  1. 柱間に接合され、複数の主筋を有する鉄筋コンクリート梁であって、
    前記複数の主筋のうちの少なくとも一部が、
    前記梁の長さ方向の中心から柱方向への所定範囲における前記主筋とコンクリートとが付着された中央定着部と、
    前記中央定着部以外の所定範囲における前記主筋とコンクリートとの付着が付着除去手段を介して除去された非定着部と、
    を有し、
    前記中央定着部と前記非定着部との境界に定着板が設けられ、
    前記定着板は、前記梁の縦断面視上下の少なくとも二の主筋を挿通可能な開口を有する板状体であることを特徴とする鉄筋コンクリート梁。
  2. 前記定着板は、前記非定着部を有する全ての主筋を挿通可能な開口を有する板状体であることを特徴とする請求項1記載の鉄筋コンクリート梁。
  3. 前記中央定着部及び前記非定着部を有する主筋が、前記梁の縦断面視おいて少なくとも角部に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の鉄筋コンクリート梁。
  4. 前記柱と前記梁の接合部から前記梁の中心に向けて所定寸法隔てた位置を想定ヒンジとして設定し、
    前記非定着部の柱側端部を前記想定ヒンジの位置とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の鉄筋コンクリート梁。
  5. 前記付着除去手段は、前記主筋の外周に被着されたシース管であることを特徴とする請求項1乃至請求項いずれかに記載の鉄筋コンクリート梁。
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