(第1実施形態)
本明細書において、「鉱石原料」とは、塊鉱石、焼結鉱、ペレット、含炭塊成鉱及びその他の塊成鉱をいい、「鉱石原料充填層」とは、一種の鉱石原料のみからなる層をいう。また、「鉱石層」とは、炉内に形成され、鉱石原料の少なくともいずれかを含む層をいい、コークス、フェロコークス、又は副原料を含んでいても良い。鉱石層は、鉱石原料充填層を含む概念である。炉内において、鉱石層及びコークス層は、炉高方向において交互に形成される。
本明細書において、「高温性状」とは、鉱石原料又は鉱石層の還元率、収縮率及び圧力損失の温度依存性である。「高温性状評価指標」とは、高温性状から求められる指標であり、具体的には、融着開始温度Ts,Ts*や融着開始時還元率Rs,Rs*をいう。
融着開始温度Ts及び融着開始時還元率Rsは、それぞれ、粒度を所定範囲内に揃えた単一種類の鉱石原料を用いた所定の高温性状試験において、鉱石原料が軟化収縮して鉱石原料充填層の圧力損失が所定値まで上昇したときの温度及び還元率として定義され、鉱石原料の高温性状評価指標として用いられる。すなわち、融着開始温度Ts及び融着開始時還元率Rsは、単一種類の鉱石原料を対象とした高温性状試験で得られる高温性状評価指標である。ここで、圧力損失の所定値としては、例えば、200mmH2Oとすることができる。
また、融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*は、それぞれ、鉱石層に含まれる鉱石原料が軟化収縮して鉱石層の圧力損失が所定値まで上昇したときの温度及び還元率として定義され、鉱石層の高温性状評価指標として用いられる。すなわち、融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*は、実際の高炉内における鉱石層を対象とした高温性状評価指標である。ここで、圧力損失の所定値としては、例えば、50kPa/mとすることができる。融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*は、鉱石層全体での高温性状評価指標として用いられても良いし、鉱石層内の分布として用いられても良い。
以下、本発明の一実施形態として、鉱石層の融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*を導出する方法について説明する。
(融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*の導出の概要)
上述したように、融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*は、鉱石層に含まれる鉱石原料が軟化収縮して鉱石層の圧力損失が所定値まで上昇したときの温度及び還元率である。融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*を導出するためには、「1.鉱石原料の還元挙動」、「2.鉱石層の収縮挙動」、及び「3.鉱石層の収縮に伴う圧力損失の上昇」を予測する必要がある。鉱石原料の還元挙動とは、後述する還元率の経時変化であり、鉱石層の収縮挙動とは、後述する収縮率の経時変化であり、鉱石層の収縮に伴う圧力損失の上昇とは、後述する圧力損失の経時変化である。本実施形態では、図1に示す通り、一層の鉱石層に着目し、所定の数学モデルにおいて、鉱石層が高炉内を降下する過程での温度の経時変化、還元ガスの圧力、組成及び流量の経時変化、並びに鉱石層にかかる荷重(鉛直応力)の経時変化を入力条件とし、鉱石層に含まれる鉱石原料の還元率、鉱石層の収縮率及び鉱石層で生じる圧力損失を算出(出力)する。
具体的な計算手法としては、図2に示す通り、まず、初期条件(温度、還元ガス及び荷重)を数学モデルに入力し(ステップS101)、鉱石層の還元率(ステップS102)、鉱石層の収縮率(ステップS103)及び、鉱石層の圧力損失(ステップS104)を算出する。ステップS102~S104の詳細については、後述する。
次に、ステップS104で算出された圧力損失が所定値に到達しているか否かを判別し(ステップS105)、圧力損失が所定値に到達していなければ、所定の時間間隔Δt(例えば5秒)が経過した後の条件(温度、還元ガス及び荷重)を数学モデルに入力する(ステップS106)。ここでの入力条件は、時間間隔Δtの間に鉱石層が炉内を降下したときの鉱石層の位置(炉内高さ)に応じた条件となる。
時間間隔Δt(例えば5秒)が経過した後の条件(温度、還元ガス及び荷重)を数学モデルに入力した後、鉱石層の還元率(ステップS102)、鉱石層の収縮率(ステップS103)及び、鉱石層の圧力損失(ステップS104)を再び算出する。そして、ステップS104で算出された圧力損失が所定値に到達するまで、ステップS106からステップS104までの処理を繰り返す。圧力損失が所定値に到達したときには、融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*が特定される(ステップS107)。ここで、融着開始温度Ts*は、所定値に到達した圧力損失を算出したときの温度(ステップS106の入力条件)であり、融着開始時還元率Rs*は、所定値に到達した圧力損失を算出したときの還元率(ステップS102の算出値)である。
(鉱石層の還元率の算出;ステップS102)
図2に示すステップS102(還元率の算出)においては、鉱石層の下部から還元ガス(CO,CO2,H2,H2O,N2)を吹き込んだときの鉱石層内の還元率分布及び還元ガスの組成変化が一次元の非定常反応速度(鉱石原料の還元反応速度及びコークスのガス化反応速度)の解析によって算出される。
鉱石原料の還元反応速度は、3界面未反応核モデルに基づくものであり、還元反応速度式を含む詳細は、例えば非特許文献4に記載されている。ここで、モデル計算で用いられる鉱石原料と同様の化学組成を有する鉱石原料について、還元試験を別途行い、この還元試験の結果を再現できるように、還元反応速度式に含まれる反応速度パラメータを調整することができる。コークスのガス化反応速度式の詳細は、例えば非特許文献5に記載されている。ここで、モデル計算で用いられるコークスと同様の化学組成を有するコークスについて、ガス化反応試験を別途行い、このガス化反応試験の結果を再現できるように、ガス化反応速度式に含まれる反応速度パラメータを調整することができる。
鉱石層の還元率の算出において、鉱石層内の還元率分布を把握する場合には、鉱石層に含まれる原料(各種の鉱石原料、コークス、フェロコークス及び副原料)の混合状態や粒度分布を考慮することができる。具体的には、鉱石層を炉高方向において所定数の計算セル(例えば、高さ1mmの計算セル)に分割し、各計算セルにおいて、鉱石層に含まれる各原料の体積割合及び粒度を設定する。初期空隙率は、鉱石層が軟化収縮する前における鉱石層の空隙率であり、計算セル毎に設定することができる。
鉱石層の下部から吹き込まれる還元ガスは、鉱石層に含まれる各原料の体積割合に応じた流量で流通すると仮定して、各相での還元反応及びガス化反応による還元ガスの濃度変化を解く。還元反応速度解析における鉱石層の昇温条件及び還元ガス(混合ガス)の圧力、組成及び流量の温度依存性は、実際の高炉操業時の条件を模擬して、すなわち、鉱石層が降下する経路に沿った条件になるよう適宜設定すればよい。
なお、鉱石層内の還元率分布を求める方法は、一次元の非定常反応速度解析に限定されるものではなく、例えば、2次元又は3次元の非定常反応速度解析を行っても良い。また、鉱石原料の還元反応速度を求める方法は、3界面未反応核モデルに限定されるものではなく、例えば、多段反応帯モデルやグレインモデル等を採用することができる。さらにまた、一次元の非定常反応速度解析や3界面未反応核モデルにおいて、上述した反応速度式(還元反応速度式やガス化反応速度式)の代わりに、公知の文献に開示された化学反応速度式を適宜用いることができる。
鉱石層の収縮率を精度良く算出する上では、上述したように、鉱石層を所定数の計算セルに分割し、炉高方向における還元率分布を把握することが好ましい。ただし、鉱石層を所定数の計算セルに分割することなく、鉱石層全体(鉱石層一層)において、各原料の体積割合及び粒度を設定して、鉱石層全体の還元率(いわゆる平均的な還元率)を算出してもよい。この場合には、既存の高温性状試験の結果と比較し易いという利点がある。
(鉱石層の収縮率の算出;ステップS103)
図2に示すステップS103において、鉱石層の収縮率は、鉱石層の収縮速度を時間で積分することによって算出される。鉱石層の収縮速度は、鉱石層の収縮挙動の支配因子が互いに異なる2つの温度領域に分けて導出することができる。以下、具体的に説明する。
図3には、鉱石層の収縮速度及び温度の関係を示す。図3において、収縮速度は、境界温度において最大値を示す。境界温度よりも低い第1温度領域や、境界温度よりも高い第2温度領域では、収縮速度が最大値よりも低下する。このため、第1温度領域及び第2温度領域のそれぞれにおいて、鉱石層の収縮速度を導出することができる。
第1温度領域では、下記式(1),(2)に基づいて、鉱石層の収縮速度を導出することができる。
上記式(1)において、左辺はi番目の計算セルの収縮速度[s-1]、Sriはi番目の計算セルの全体の平均収縮率[-]、tは時間[s]、Wは鉱石層にかかる荷重[Pa]、ηは鉱石層に含まれる鉱石原料の見かけの軟化粘度[Pa・s]である。見かけの軟化粘度ηは、上記式(2)から求められる。上記式(2)において、η0は定数[Pa・s]、c1は係数[K]、Tは鉱石層の温度[K]である。見かけの軟化粘度ηは、例えば荷重軟化試験により求められ、定数η0及び係数c1は、上記式(2)を用いて見かけの軟化粘度ηにより求められる。
第1温度領域において、鉱石層の収縮速度(dSri/dt)は、鉱石層にかかる荷重Wに比例し、見かけの軟化粘度η(鉱石原料の収縮抵抗)に反比例する。上記式(1),(2)から分かる通り、第1温度領域における鉱石層の収縮速度は、鉱石層にかかる荷重W及び鉱石層の温度T(すなわち、図2に示すS101,S106での入力条件)により求められる。
第2温度領域では、下記式(3)~(6)に基づいて、鉱石層の収縮速度を導出することができる。
上記式(3)において、左辺はi番目の計算セルの収縮速度[s-1]、Sriはi番目の計算セルの全体の平均収縮率[-]、tは時間[s]、βは係数[-]、MSPは鉱石原料の質量[kg]、V0.SPは収縮前の鉱石層の体積(初期体積)[m3]、Vliqは鉱石原料1kg当たりの融液の体積[m3/kg]である。
融液の体積Vliqは、上記式(4)により求められる。上記式(4)において、c2は係数[m3/(kg・K)]、c3及びc4は係数[m3/kg]、Tは鉱石層の温度[K]、Riはi番目の計算セルの還元率[-]である。係数c2,c3,c4は、鉱石原料の種類毎に、鉱石原料の組成に基づき熱力学平衡計算(例えば、Factsage)によって予め求めておくことができる。
上記式(3)に示す係数βは、上記式(5)により求められる。上記式(5)において、c5及びc6は係数[-]、XFeは金属鉄の体積割合[-]である。金属鉄の体積割合XFeは、上記式(6)により求められる。上記式(6)において、VFeは金属鉄の体積[m3]、V0.SPは収縮前の鉱石層の体積[m3]、Sriはi番目の計算セルの全体の平均収縮率[-]である。係数c5,c6は、高温性状評価試験によって予め求めておくことができる。
上記式(3)から分かる通り、第2温度領域において、鉱石層の収縮速度(dSri/dt)は、融液の生成速度(dVliq/dt)に比例する。また、係数βは、鉱石層に占める金属鉄の体積割合XFeの増加に伴い、減少する。第2温度領域では、融液の生成による収縮促進及び生成した金属鉄による収縮抑制効果が、鉱石層の収縮速度を決める主な支配因子である。上記式(3)~(6)から分かる通り、第2温度領域における鉱石層の収縮速度は、鉱石層の温度Tと還元率Riにより求められ、この還元率Riとしては、図2に示すステップS102で算出される還元率が用いられる。
定数η0及び係数c1~c6は、鉱石原料の組成や気孔構造等の性状に対して決定される。定数η0及び係数c1~c6は、鉱石原料の種類が変更されない限り変化せず、鉱石原料の充填条件や還元ガス条件の変更によっては変化しない。また、鉱石層において、複数種類の鉱石原料が混合されている場合には、鉱石原料の種類ごとに収縮速度を求め、鉱石層内に占める各鉱石原料の体積割合で加重平均することにより、鉱石層全体の収縮速度を求めることができる。
鉱石層の収縮率は、上記式(1)~(6)により導出される鉱石層の収縮速度を時間積分した値として表される。鉱石層全体の平均収縮率Srは、下記式(7)により求められる。下記式(7)において、L0は鉱石層の初期層厚[m]、Liはi番目(i=1~n)の計算セルの層厚[m]である。初期層厚L0は、鉱石層が軟化収縮する前における鉱石層の層厚である。層厚Liは、下記式(8)により求められる。下記式(8)において、L0,iはi番目の計算セルの初期層厚[m]、Sriはi番目の計算セルの平均収縮率[-]である。
図2に示すステップS102において、鉱石層内の炉高方向における還元率分布を求めた場合には、図2に示すステップS103において、鉱石層内の炉高方向における収縮率分布を求めることができる。一方、図2に示すステップS102において、鉱石層全体の平均還元率を求めた場合には、図2に示すステップS103において、鉱石層全体の収縮率を求めることができる。
(鉱石層の圧力損失の算出;ステップS104)
鉱石層の圧力損失は、図2に示すステップS103で求めた鉱石層全体の平均収縮率Srを用いて算出することができる。具体的には、下記式(9)により鉱石層の圧力損失を算出することができる。下記式(9)は、圧力損失の計算に用いられるErgun式である。
上記式(9)において、ΔP/ΔLは鉱石層の圧力損失[Pa/m]、εは鉱石層の空隙率[-]、dは鉱石層に含まれる各原料の粒径[m]、φは鉱石層に含まれる各原料の形状係数[-]である。形状係数φと粒径dを乗算した値φdは、各原料の有効径を示す。μは還元ガスの粘度[Pa・s]、Uは還元ガスの空塔流速[m/s]、ρは還元ガスの密度[kg/m3]である。なお、圧力損失の計算式は上記式(9)に限定されず、公知の計算式を適宜採用することができる。
上記式(9)に示す空隙率εは、下記式(10)により求められる。
上記式(10)において、ε0は初期空隙率[-]、αは係数[-]、Srは鉱石層の収縮率[-]である。係数αは、鉱石層が収縮したときにおいて、鉱石層の体積減少量に対する空隙の体積減少量を示す値であり、鉱石原料の閉気孔量や軟化溶融性に依存する。なお、ここでの空隙とは、還元ガスの流通において、鉱石層の通気抵抗に直接寄与する空隙を意味し、例えば鉱石原料粒子内部の閉気孔は含まれない。
上記式(9)に示すように、圧力損失ΔP/ΔLは、空隙率εの関数として表すことができ、上記式(10)に示すように、空隙率εは、収縮率Srの関数として表すことができる。したがって、収縮率Srを導出すれば、上記式(9),(10)から圧力損失ΔP/ΔLを求めることができる。
図2に示すステップS103において、鉱石層内の炉高方向における収縮率分布を求めた場合には、図2に示すステップS104において、鉱石層内の炉高方向における圧力損失ΔP/ΔLの分布を求めることができる。一方、図2に示すステップS103において、鉱石層全体の収縮率を求めた場合には、図2に示すステップS104において、鉱石層全体の圧力損失ΔP/ΔLを求めることができる。
上記式(10)に示す係数αは、鉱石原料(例えば、焼結鉱)又は鉱石層を対象としたX線CT画像の解析結果に基づいて特定することができる。なお、係数αを特定する方法は、X線CT画像の解析を利用した方法に限るものではない。
図4には、X線CT画像を用いた画像解析方法の概要を示す。坩堝100には、鉱石原料101が充填されており、鉱石原料の上方及び下方のそれぞれには、混合層102及びコークス層103が積層されている。X線CT撮影を行うことにより坩堝100の水平方向の断面画像104aが得られるが、この断面画像104aを取得する領域は、鉱石原料101だけが存在する領域(解析対象領域という)AAとする。
解析対象領域AAにおいて、坩堝100の高さ方向における等間隔の位置で所定枚数の断面画像104aを抽出し、各断面画像104aを用いて、空隙率及び見かけの粒径を求める。まずは、断面画像104aを二値化することにより二値化画像104bを生成し、二値化画像104bに対してマスキング処理を行うことにより、2つの抽出画像104c,104dを生成する。抽出画像104cは、二値化画像104bから鉱石原料の粒子のみを抽出した画像であり、抽出画像104dは、二値化画像104bから坩堝100の内部空間を抽出した画像である。
抽出画像104c,104dについて、黒色部の画素数、白色部の画素数及び白色部の周囲の画素数をカウントし、下記式(11)に基づいて、鉱石原料層の空隙率を求める。
上記式(11)において、εは空隙率[-]、SVoidは空隙領域の画素数[pixel]、SAは坩堝100の外部に位置する領域の画素数[pixel]、SBは坩堝100の内部に位置する領域の画素数[pixel]である。
収縮率Srが異なる複数の鉱石原料層に対して上述した画像解析を行うことにより、各鉱石原料層について空隙率εを求め、この空隙率εに基づいて上記式(10)を満たす係数αを求める。これにより、係数α及び収縮率Srの関係(一次関数)を規定することができる。上述したように収縮率Srを導出すれば、係数α及び収縮率Srの関係(一次関数)に基づいて、係数αを求めることができる。なお、簡易的に空隙率εを求める場合には、係数αを鉱石原料の種類に応じた固定値としてもよい。
上述した説明では、上記式(9)に示す空隙率εを収縮率Srの関数(上記式(10))として規定したが、これに加えて、上記式(9)に示す粒径dを収縮率Srの関数として規定することもできる。この場合には、上述した画像解析を行うことにより、収縮率Srが異なる複数の鉱石原料層について、粒子の見かけの粒径dcをそれぞれ求める。これにより、収縮率Sr及び粒径dcの相関関係が求められるため、この相関関係を用いれば、上述したように導出した収縮率Srに基づいて、上記式(9)に示す粒径dを求めることができる。
粒径dcは、下記式(12)~(14)により算出することができる。
上記式(12)~(14)において、dcは見かけの粒径[m]、SSolidは、粒子が存在する領域の面積[m2]、LSolidは粒子の周囲の長さ[m]である。Dは坩堝100の内径[m]、S’Solidは、粒子が存在する領域の画素数[pixel]、SBは上記式(11)で説明した画素数[pixel]である。L’Solidは粒子の周囲を構成する画素数[pixel]、L0は坩堝100の周囲を構成する画素数[pixel]である。
なお、圧力損失を求める方法は、上述した方法に限るものではない。例えば、非特許文献6に開示された圧力損失の計算式において、慣性項の係数を収縮率の関数として規定し、収縮率に基づいて圧力損失を求めることができる。また、非特許文献7に開示された圧力損失の計算式(収縮率Srを含む)を用いて、圧力損失を求めることができる。
(高温性状評価指標の特定;ステップS107)
図2に示すステップS107では、ステップS102で求めた還元率及びステップS104で求めた圧力損失を用いて、鉱石層の高温性状評価指標である融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*を特定する。
上述したように、融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*は、鉱石層に含まれる鉱石原料が軟化収縮して鉱石層の圧力損失が所定値まで上昇したときの温度及び還元率をそれぞれ示す。したがって、ステップS104で求めた圧力損失が所定値を示したときの温度(入力条件)が融着開始温度Ts*となる。また、ステップS104で求めた圧力損失が所定値を示したときの還元率(ステップS102で算出した還元率)が融着開始時還元率Rs*となる。上述した圧力損失の所定値は、例えば50[kPa/m]とすることができる。
本実施形態では、鉱石層の高温性状評価指標である融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*を導出する方法について説明したが、鉱石原料の高温性状評価指標である融着開始温度Ts及び融着開始時還元率Rsの導出にも適用することができる。融着開始温度Ts及び融着開始時還元率Rsを導出する場合には、鉱石層を一種の鉱石原料のみからなる鉱石原料充填層とし、図1に示す入力条件を高温性状試験の試験条件(例えば非特許文献1に記載の所定の試験条件)とすればよい。
非特許文献1に記載の試験条件では、下部炉については、昇温速度を10℃/minとし、1700℃に到達した後に、この温度に保持している。上部炉については、1000℃までは昇温速度を10℃/minとし、1000℃以上では昇温速度を5℃/minとしている。還元ガスについては、800℃まではN2を導入し、800℃以上では還元ガス(CO29.4vol%-H23.6vol%-N267.0vol%)を導入している。還元ガスの流量は34Nl/minで一定とし、標準空塔速度を10cm/sとしている。荷重としては、800℃以上で0.098MPaを印加している。なお、高温性状試験の試験条件は非特許文献1に記載のものに限定されず、対象とする高炉の操業条件等に応じて適宜設定すればよい。
具体的には、図2に示すステップS102(還元率の算出)においては、鉱石原料充填層について、上述した試験条件の昇温パターン及び還元ガス条件に基づいて還元反応速度解析を行うことができる。ここで、還元率は、鉱石原料充填層の層高方向における還元率分布又は、鉱石原料充填層全体の還元率(平均還元率)として求められる。
図2に示すステップS103(収縮率の算出)においては、鉱石原料充填層について、上述した試験条件の昇温パターン(温度に応じた昇温速度)及び荷重パターン(温度に応じて印加する荷重)に基づいて収縮率を導出することができる。ここで、鉱石原料充填層の層高方向における還元率分布を求めた場合には、鉱石原料充填層の層高方向における収縮率分布を求めることができる。また、鉱石原料充填層全体の還元率(平均還元率)を求めた場合には、鉱石原料充填層全体の収縮率(平均収縮率)を求めることができる。
図2に示すステップS104(圧力損失の算出)においては、鉱石原料充填層について、上述した試験条件の還元ガス条件に基づいて圧力損失を導出することができる。ここで、上記式(9)に示すφdは鉱石原料の有効径であり、上記式(10)に示す係数αは、鉱石原料充填層についてX線CT画像解析を行い求めることができる。一方、鉱石原料充填層の層高方向における収縮率分布を求めた場合には、鉱石原料充填層の層高方向における圧力損失の分布を求めることができる。また、鉱石原料充填層全体の収縮率(平均収縮率)を求めた場合には、鉱石原料充填層全体の圧力損失(平均圧力損失)を求めることができる。
図2に示すステップS107(高温性状評価指標の特定)においては、ステップS104で求めた圧力損失が所定値を示したときの温度(試験条件の昇温パターン)が融着開始温度Tsとして特定される。また、ステップS104で求めた圧力損失が所定値を示したときの平均還元率(第1ステップで求まる)が融着開始時還元率Rsとして求められる。所定の圧力損失は、例えば200mmH2Oとすることができる。
実施形態によれば、上述した数学モデルを用いることにより、高温性状評価指標を測定する試験を行わなくても、融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*を導出したり、融着開始温度Ts及び融着開始時還元率Rsを導出したりすることができる。
なお、図2で説明した処理(いわゆる機能)は、プログラムによって実現可能である。具体的には、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムを補助記憶装置に格納しておき、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出されたプログラムを制御部が実行することにより、各機能を動作させることができる。各機能は、1つの制御装置で動作させることもできるし、互いに接続された複数の制御装置によって動作させることもできる。
上述したプログラムは、コンピュータで読取可能な記録媒体に記録された状態において、コンピュータに提供することも可能である。記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
(第2実施形態)
第1実施形態で説明したように融着開始時還元率Rs*を導出すれば、この融着開始時還元率Rs*に基づいて高炉の操業を行うことができる。具体的には、融着開始時還元率Rs*を後述する下限値Rs*
minと対比し、融着開始時還元率Rs*が下限値Rs*
min以上となるように高炉の操業を行えば、高炉を安定操業することができる。
まず、第1実施形態によって導出した融着開始時還元率Rs*は、複数種類の鉱石原料の融着開始時還元率Rsの加重平均値Rsav及び炉内滞留時間tresと相関があることが分かった。すなわち、融着開始時還元率Rs*は、下記式(15)に示すように、加重平均値Rsav及び炉内滞留時間tresの関数として表すことができる。下記式(15)によれば、加重平均値Rsav及び炉内滞留時間tresに基づいて、融着開始時還元率Rs*を導出できることにもなる。
上記式(15)において、Rs*は融着開始時還元率[-]、Rsavは加重平均値[%]、γは係数[%/h]、tresは炉内滞留時間[h]、tres,0は炉内滞留時間の基準時間[h]である。基準時間tres,0は、任意に設定することができ、例えば、8.0[h]とすることができる。
係数γは、融着開始時還元率Rs*に対する炉内滞留時間tresの影響度を示し、融着開始時還元率Rs*及び炉内滞留時間tresの相関関係から決めることができる。具体的には、融着開始時還元率Rs*及び炉内滞留時間tresの相関関係は、一次関数として表すことができ、この一次関数の傾き(正の値)が係数γとなる。例えば、後述するように、係数γは2.76[%/h]とすることができる。
上記式(15)に示す加重平均値Rsavは、下記式(16)で表される。
上記式(16)において、Rsavは加重平均値[%]、iは鉱石原料の種類、Rsiは種類iの鉱石原料の融着開始時還元率[%]、MiRは全種類の鉱石原料に対する種類iの鉱石原料の配合比率[質量%]である。
加重平均値Rsavは、上記式(16)から理解できるように、配合比率MiRや融着開始時還元率Rsiを変化させることで調整できる。配合比率MiRは、各鉱石原料の配合量を変更することにより変化させることができる。また、融着開始時還元率Rsiは、鉱石原料の種類を変更することにより変化させることができる。この点に基づいて、鉱石原料の配合を設計することにより、配合設計後の加重平均値Rsavを把握することができる。
上記式(15)に示す炉内滞留時間tresは、下記式(17)で表される。
上記式(17)において、tresは炉内滞留時間[h]、P0は出銑比[t/d/m3]、ORは鉱石比[kg/t]、CRはコークス比[kg/t]、ρоreは鉱石層の見かけ密度[kg/m3]、εоreは鉱石層の空隙率[-]、ρcоkeはコークス層の見かけ密度[kg/m3]、εcоkeはコークス層の空隙率[-]である。
上記式(15)によれば、加重平均値Rsav及び炉内滞留時間tresのいずれか一方を調整したり、加重平均値Rsav及び炉内滞留時間tresの両方を調整したりすることにより、融着開始時還元率Rs*を調整することができ、融着開始時還元率Rs*を下限値Rs*
min以上とすることができる。加重平均値Rsav及び炉内滞留時間tresの両方を調整するようにすれば、加重平均値Rsav及び炉内滞留時間tresの一方を調整するだけでは、融着開始時還元率Rs*が下限値Rs*
min以上となるように十分に調整できない場合に対応することができる。例えば、加重平均値Rsavだけで調整しきれない場合には、炉内滞留時間tresも調整することができ、炉内滞留時間tresだけで調整しきれない場合には、加重平均値Rsavも調整することができる。ここで、上記式(16)によれば、複数種類の鉱石原料の配合を設計することにより、加重平均値Rsavを調整することができる。
また、上記式(17)に示すように、炉内滞留時間tresは、出銑比P0、鉱石比OR、コークス比CR、鉱石層及びコークス層の見かけ密度ρоre,ρcоke、鉱石層及びコークス層の空隙率εоre,εcоkeに依存するが、実際の高炉操業を考慮すると、調整が容易なパラメータは、出銑比P0及びコークス比CRとなる。したがって、出銑比P0及びコークス比CRの少なくとも一方を調整することにより、炉内滞留時間tresを調整することができる。
本実施形態では、鉱石原料の種類毎に、融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRを設定しているが、塊鉱石やペレットなどの各種類の鉱石原料には複数の銘柄が存在し、種類が同じ鉱石原料(塊鉱石やペレット)であっても、異なる銘柄同士で融着開始時還元率Rsが異なることがある。このため、本実施形態の配合設計において、塊鉱石及びペレットのうち少なくとも1種類の鉱石原料として、複数の銘柄の鉱石原料を用いる場合、当該種類の鉱石原料の融着開始時還元率Rs及び配合比率MRとして、銘柄毎に設定した融着開始時還元率Rs及び配合比率MRをそれぞれ用いることが好ましい。
具体的には、例えば、鉱石原料として焼結鉱、塊鉱石及びペレットを用いる場合であって、塊鉱石として、銘柄aの塊鉱石と銘柄bの塊鉱石を用いる場合、銘柄aの塊鉱石と銘柄bの塊鉱石のそれぞれで設定された融着開始時還元率Rs及び配合比率MRが上記式(16)における融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRとなる。すなわち、上記式(16)に示す添え字iは、鉱石原料の種類を区別するだけでなく、1つの種類に属する複数の銘柄を区別するものとして定義される。
また、例えば、鉱石原料として焼結鉱、塊鉱石及びペレットを用いる場合であって、ペレットとして、銘柄aのペレットと銘柄bのペレットを用いる場合、銘柄aのペレットと銘柄bのペレットのそれぞれで設定された融着開始時還元率Rs及び配合比率MRが上記式(16)における融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRとなる。すなわち、上記式(16)に示す添え字iは、鉱石原料の種類を区別するだけでなく、1つの種類に属する複数の銘柄を区別するものとして定義される。
なお、銘柄としては、鉱石原料の産地(鉱山)や製造者の社名を付けたものなどがある。また、銘柄ごとに設定される配合比率MRは、全種類及び全銘柄(種類毎)の鉱石原料100質量%に対する各銘柄の鉱石原料の質量割合であって、全銘柄の塊鉱石に対する各銘柄の塊鉱石の質量割合(つまり、塊鉱石100質量%に対する各銘柄の塊鉱石の質量割合)や、全銘柄のペレットに対する各銘柄のペレットの質量割合(つまり、ペレット100質量%に対する各銘柄のペレットの質量割合)ではない。
同様に、焼結鉱には、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる複数の焼結鉱が存在し、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる焼結鉱同士で融着開始時還元率Rsが異なることがある。焼結原料が異なる場合としては、焼結原料自体の成分や粒度が異なる場合や、焼結原料の配合比率が異なる場合がある。焼結原料が異なると、例えば焼結鉱の成分が異なることになるため、融着開始時還元率Rsが異なることがある。一方、焼成条件としては、例えば、燃料比がある。焼成条件が異なると、焼結鉱の気孔構造等が異なることになるため、融着開始時還元率Rsが異なることがある。
このため、本実施形態の配合設計方法において、焼結鉱として、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる複数の焼結鉱を用いる場合、上記式(16)に示す融着開始時還元率Rsi及び配合比率MiRとして、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる焼結鉱毎に設定した融着開始時還元率Rs及び配合比率MRをそれぞれ用いることが好ましい。また、焼結原料及び/又は焼成条件の異なる焼結鉱毎に設定する配合比率MRは、全種類の鉱石原料100質量%に対して焼結原料・焼成条件の異なる各焼結鉱の質量割合であって、焼結原料・焼成条件の異なる全焼結鉱に対して焼結原料・焼成条件の異なる各焼結鉱の質量割合ではない。
(下限値Rs*
min)
上述した下限値Rs*
minは、コークス比CR及び炉下部の圧力損失(通気抵抗)のうちの少なくとも1つのパラメータに基づいて決められる。ここで、炉下部圧力損失は、図2に示すステップS104で求めることができる。
まず、コークス比CRから下限値Rs*
minを決める方法について説明する。
融着開始時還元率Rs*及びコークス比CRの相関関係を予め決めておけば、コークス比CRの目標値を特定することにより、このコークス比CR(目標値)に対応する融着開始時還元率Rs*を下限値Rs*
minとして決めることができる。融着開始時還元率Rs*及びコークス比CRの相関関係は、以下に説明する方法によって決めることができる。
融着開始時還元率Rs*及びコークス比CRを座標軸とした座標系において、高炉の操業実績をプロットし、安定操業が行われた際の高炉の操業実績がプロットされた領域(以下、「安定操業領域」という)と、安定操業が行われなかった際の高炉の操業実績がプロットされた領域(以下、「不安定操業領域」という)とを特定する。そして、安定操業領域及び不安定操業領域を区画する境界線を、融着開始時還元率Rs*及びコークス比CRの相関関係として規定することができる。ここでいう「区画」は、安定操業領域及び不安定操業領域を厳密に区画することを意味するものではなく、安定操業領域及び不安定操業領域を大まかに区画できるものであればよい。
安定操業領域及び不安定操業領域の境界線は、例えば以下の手順で作成することができる。安定操業が行われた操業実績のうち、最もコークス比CRの低い値をとる操業実績を融着開始時還元率Rs*ごとに抽出する。次に、抽出した操業実績及び融着開始時還元率Rs*に基づいて近似式を作成し、これを境界線とする。
一方、コークス比CR、出銑比P0及び加重平均値Rsavの相関関係を予め求めておけば、上述したようにコークス比CR(目標値)を決めることにより、このコークス比CR(目標値)に対応した出銑比P0及び加重平均値Rsavの組み合わせを特定することができる。コークス比CR、出銑比P0及び加重平均値Rsavの相関関係としては、例えば、図5に示す相関関係が用いられる。図5に示す各曲線は、コークス比CR毎の出銑比P0及び加重平均値Rsavの関係を示す。コークス比CR(目標値)に対応した出銑比P0及び加重平均値Rsavの組み合わせを特定する場合には、図5において、コークス比CR(目標値)の曲線よりも下方に位置する領域に含まれるように、出銑比P0及び加重平均値Rsavの組み合わせを特定すればよい。これにより、上述したように、炉内滞留時間tresを調整することができる。
次に、炉下部圧力損失から下限値Rs*
minを決める方法について説明する。
融着開始時還元率Rs*及び炉下部の圧力損失の相関関係を予め決めておけば、炉下部圧力損失の目標値を特定することにより、この炉下部圧力損失(目標値)に対応する融着開始時還元率Rs*を下限値Rs*
minとして決めることができる。融着開始時還元率Rs*及び炉下部圧力損失の相関関係は、以下に説明する方法によって決めることができる。
融着開始時還元率Rs*及び炉下部圧力損失を座標軸とした座標系において、高炉の操業実績をプロットし、上述したように安定操業領域及び不安定操業領域を特定する。そして、安定操業領域及び不安定操業領域を区画する境界線を、融着開始時還元率Rs*及び炉下部圧力損失の相関関係として規定することができる。
なお、安定操業領域及び不安定操業領域の境界線は、例えば以下の手順で作成することができる。安定操業が行われた操業実績のうち、最も炉下部圧力損失の小さい値をとる操業実績を融着開始時還元率Rs*ごとに抽出する。次に、抽出した操業実績及び融着開始時還元率Rs*に基づいて近似式を作成し、これを境界線とする。また、上述したように安定操業領域及び不安定操業領域を厳密に区画する必要は無いため、安定操業領域の特定においては、安定操業が行われたすべての操業実績がプロットされた領域としなくてもよい。安定操業領域及び不安定操業領域を大まかに区画する上では、例えば、安定操業が行われたすべての操業実績のうち、90%以上の操業実績がプロットされた領域を安定操業領域とみなすことができる。
(実施例1)
第1実施形態における数学モデルの妥当性を検証するため、焼結鉱の軟化過程における還元、層収縮及び圧力損失上昇挙動について、高温性状試験による実験値とモデルによる計算値を比較した。
(高温性状試験条件)
コークス120g及び焼結鉱1272gを内径φ72mmの坩堝に充填した。温度パターンは、高炉内反応を模擬し、いずれの試験条件でも図6に示すように設定した。充填層にかかる荷重は、図7に示すように、200~800℃ではいずれの条件も36kPa、軟化・融着が想定される950℃より高温の領域では98kPaとした。還元ガス条件は、図8A~図8Cに示す3パターンを設定した。各還元ガス条件において、CO及びH2の濃度は異なるが、CO/CO2比及び総ガス流量(30NL/min)はいずれの試験も同様とした。
(計算条件)
坩堝内のコークス層及び焼結鉱層を計算領域とした。計算セルの初期高さが1mmとなるよう計算領域を分割した。上述した高温性状試験条件と同様の試料充填方法、温度、荷重、還元ガス条件を入力条件とした。鉱石原料層の収縮挙動の導出に必要な定数(上記式(2),(4),(5))は鉱石原料の種類によって異なり、おおよそ以下の値の範囲をとる。
η0=6×10-17 ~ 3×103 [Pa・s]
c1=2×104 ~ 8×104 [K]
c2=5×10-8 ~ 1×10-6 [m3/(kg・K)]
c3=-1×10-4 ~ 0 [m3/kg]
c4=-6×10-5 ~ -1×10-3 [m3/kg]
c5=-40 ~ 0 [-]
c6=0.8 ~ 20 [-]
焼結鉱層の初期空隙率はX線CT画像の解析結果に基づき、0.40と設定した。コークスのガス化反応の速度パラメータは、あらかじめコークス単味でのガス化反応実験を実施し、排ガス組成及びコークスの反応率が実測値と合うようフィッティングして求めた。還元反応及びガス化反応の反応速度パラメータの設定方法については、後述する。
図9には、焼結鉱を対象としたX線CT画像の解析結果に基づき、焼結鉱層の収縮率と空隙率の関係を示す。図9において、丸印は、X線CT画像の解析結果に基づく実測値を示し、実線は上記式(9),(10)による計算値を示す。ここで、上記式(10)に示す係数αは、下記式(18)~(19)に示す通り、収縮率Srの関数で表した。
収縮率Srの上昇に伴い、係数αの値は減少した。これは、焼結鉱の軟化過程の初期では、焼結鉱層の収縮に対して焼結鉱層の空隙が優先的に減少し、融液の生成が顕著になる後期では、焼結鉱内の気孔の減少割合が増えるためと考えられる。
図10には、焼結鉱層の収縮率と見かけの粒径の関係を示す。図10において、丸印はX線CT画像の解析結果に基づく実測値を示し、実線は下記式(20)による計算値を示す。
上記式(20)において、軟化収縮前の粒径(φd)0を(1-Sr)の平方根で除した値は、焼結鉱層の収縮に伴う焼結鉱粒子のつぶれを考慮した見かけの粒径に相当する。また、見かけの粒径の実測値を再現できるよう係数(1+7.2Sr3)を乗じた。この係数は、焼結鉱粒子同士の融着に起因する見かけの粒径が増加する影響を表現している。
(計算値と実験値の比較)
還元ガス中のH2濃度が焼結鉱層全体の還元率(平均還元率)に及ぼす影響を図11~13に示し、還元ガス中のH2濃度が焼結鉱層全体の収縮率に及ぼす影響を図14~16に示し、還元ガス中のH2濃度が焼結鉱層全体の圧力損失に及ぼす影響を図17~19に示す。図11~13において、平均還元率(実験値)に対して平均還元率(計算値)が一致するように、CO及びH2による還元反応の反応速度パラメータ、並びに、CO2及びH2Oによるコークスのガス化反応及びガスシフト反応の反応速度パラメータをフィッティングした。
図14~図16に示すように、焼結鉱層の収縮率について、計算値は実験値とほぼ一致しており、数学モデルの妥当性を確認できた。また、図17~図19に示すように、焼結鉱層の圧力損失について、計算値は実験値とほぼ一致しており、数学モデルの妥当性を確認できた。還元ガス中のH2濃度の増加(0%→10%→15%)に伴い還元率は上昇し、焼結鉱層の収縮が抑制され、焼結鉱層での圧力損失は低下した。焼結鉱層の収縮の抑制は、主に還元率の上昇による焼結鉱層中の金属鉄割合XFe(上記式(6))の増加に起因すると考えられる。
図20には、各H2濃度(0,10,15%)において、融着開始温度Ts*に関する実験値及び計算値を示し、図21には、各H2濃度(0,10,15%)において、融着開始時還元率Rs*に関する実験値及び計算値を示す。融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*について、実験値及び計算値には若干の乖離があるものの、H2濃度の増加に伴い融着開始温度Ts*及び融着開始時還元率Rs*が上昇する傾向は表せており、高温性状評価指標を導出する方法としては精度があることが理解できる。
(実施例2)
融着開始時還元率Rs*に対する炉内滞留時間tresの影響を評価した。ここで、ボッシュガス原単位(銑鉄量当たりのボッシュガス供給量)が一定であるとの仮定では、炉内滞留時間tresの変化に応じて昇温速度及びガス流速を変化させることにより、融着開始時還元率Rs*に対する炉内滞留時間tresの影響を評価できる。炉内滞留時間tresが増加するほど、昇温速度及びガス流速が減少する。
本実施例では、ボッシュガス原単位を一定とし、ボッシュガス流量及び炉内滞留時間tresを下記表1に示すように異ならせて融着開始時還元率Rs*を求めた。
鉱石原料としては焼結鉱のみを用い、焼結鉱層の見かけ密度を3450kg/m3、焼結鉱粒子の粒径を20mmとし、焼結鉱層の空隙率を40%と仮定した。還元ガスの組成については、上記表1に示す条件1~3のいずれでも、図22に示すように、温度に応じてCO/(CO+CO2)変化させた。図22において、実線は設定値を示し、点線はFe-FeO平衡、FeO-Fe3O4平衡及びFe-Fe3O4平衡となるCO組成を示し、一点鎖線はブドワー反応の平衡線を示す。本実施例では、実高炉を想定しており、図22の実線に示すように、1100℃以上でCO分圧が上昇してFe-FeO平衡線上から外れ、CO/(CO+CO2)がFe相の安定領域側にシフトする条件を設定している。
温度に依らず、還元ガス中のN2濃度を54%とし、CO濃度及びCO2濃度の和を46%とした。還元ガスのガス流速は、上記表1に示すボッシュガス流量を高炉の炉腹断面積で除した値とし、図23に示すように設定した。昇温パターンは、ボッシュガス原単位が一定となるように、ボッシュガス流量の減少に伴い炉内滞留時間tresを長くし、図24に示すように設定した。ここで、炉内滞留時間tresが8.0hであるとき、1600℃に到達するまでの時間が6.0hであると仮定し、昇温速度を設定した。焼結鉱層にかかる荷重(鉛直応力)は、上記表1に示す条件1~3のいずれにおいても、200~800℃の温度範囲では36kPaとし、800℃以上の温度範囲では98kPaとした。
上述した条件において、焼結鉱層の還元率及び圧力損失を求めた。図25には、焼結鉱層の還元率の温度依存性を示し、図26には、焼結鉱層の圧力損失の温度依存性を示す。図25に示すように、1200℃以上の温度範囲では、上記表1に示す条件1,2,3の順で炉内滞留時間tresが増加するほど、還元率が上昇する傾向がある。一方、図26に示すように、上記表1に示す条件1,2,3の順で炉内滞留時間tresが増加することに伴い、焼結鉱層で生じる圧力損失が低下した。焼結鉱層の圧力損失が50kPa/mに到達したときの条件1,3の温度差は15℃であった。すなわち、炉内滞留時間tresが8.0(条件1)から9.5(条件3)に増加することに伴い、融着開始温度Ts*が15℃上昇した。
本実施例では、焼結鉱層の圧力損失が50kPa/mであるときの還元率を融着開始時還元率Rs*と定義した。図27には、融着開始時還元率Rs*及び炉内滞留時間tres(条件1~3)の関係を示す。図27によれば、炉内滞留時間tresが1h増加することに応じて、融着開始時還元率Rs*が2.76%上昇した。そして、図27に示す結果は、焼結鉱の軟化融着以前の還元時間を長くすることにより、融着開始時還元率Rs*が上昇することを意味している。
本実施例によれば、上記式(15)は下記式(23)として表される。下記式(23)に示すように、上記式(15)に示す係数γは2.76であり、上記式(15)に示す基準時間tres,0は8.0hである。
図28には、高炉Aの所定の操業期間において、加重平均値(融着開始時還元率Rsの加重平均値)Rsav、融着開始時還元率Rs*及びコークス比CRの関係を示す。図28に示すように、コークス比CRに拘わらず、加重平均値Rsavは69%程度から大きく変化していないことが分かる。一方、融着開始時還元率Rs*は、68~73%の範囲内で大きく変化しており、融着開始時還元率Rs*の上昇に伴い、コークス比CRが低下していることが分かる。
図28に示す融着開始時還元率Rs*及びコークス比CRの関係に基づいて、上述した下限値Rs*
minを決めることができる。例えば、図28の実線で示すように、コークス比CRに応じて下限値Rs*
minを決めることができる。図28に示す例では、コークス比CRが280kg/tでの操業時の下限値Rs*
minは70%である。ここで、コークス比CRを10kg/tだけ増加させる場合には、下限値Rs*
minを4%だけ低下させればよく、コークス比CRを10kg/tだけ減少させる場合には、下限値Rs*
minを4%だけ上昇させればよい。
一方、高炉Bにおいて、コークス比CRを低下させたときに、融着開始時還元率Rs*が下限値Rs*
minを以上となるように、鉱石原料の配合を調整した。また、高炉Cにおいて、コークス比CRを低下させたときに、融着開始時還元率Rs*が下限値Rs*
minを以上となるように、操業条件(出銑比)を調整した。下表2には、各高炉B,Cにおいて、上述した調整前後のコークス比CR、出銑比P0、炉内滞留時間tres、加重平均値Rsav、融着開始時還元率Rs*及び下限値Rs*
minを示す。
高炉Bでは、コークス比CRを低下させたときの融着開始時還元率Rs*が下限値Rs*
minを上回るように、加重平均値Rsavを増加させた。具体的には、融着開始時還元率Rsiが高い焼結鉱の配合比率MiRを増加させた。一方、高炉Cでは、コークス比CRを低下させたときの融着開始時還元率Rs*が下限値Rs*
minを上回るように、出銑比を減少させた。上記表2に示すように、高炉B,Cのいずれにおいても、融着開始時還元率Rs*を下限値Rs*
min以上とすることができた。図29には、高炉B,Cにおいて、上述した調整前後における加重平均値Rsavおよび出銑比P0の変化を示す。
図30には、高炉Aの所定の操業期間において、加重平均値(融着開始時還元率Rsの加重平均値)Rsav、融着開始時還元率Rs*及び炉下部圧力損失の関係を示す。図30に示すように、炉下部圧力損失に拘わらず、加重平均値Rsavは68~69%程度から大きく変化していないことが分かる。一方、融着開始時還元率Rs*は、68~74%の範囲内で大きく変化しており、融着開始時還元率Rs*の上昇に伴い、炉下部圧力損失が低下していることが分かる。図30に示す融着開始時還元率Rs*及び炉下部圧力損失の関係に基づいて、上述した下限値Rs*
minを決めることができる。例えば、図30の実線で示すように、炉下部圧力損失に応じて下限値Rs*
minを決めることができる。