以下、実施形態の電力変換装置、制御方法、及びプログラムを、図面を参照して説明する。以下では、実施形態の多端子HVDCシステム1が、四つの端子(後述する端子100-1~100-4)を持ち、端子のそれぞれが直流系統と接続されることによって、ループ状の直流系統が構成される場合を例示して説明する。それぞれの端子は、「電力変換装置」の一例である。また、多端子HVDCシステム1は「多端子直流送電システム」の一例である。また、実施形態を適用する上で、多端子HVDCシステム1は、四つの端子に限らず、少なくとも三以上の端子を備えていればよい。また、多端子HVDCシステム1の直流系統が、放射状、或いは網目状に構成されていてもよい。
図1は、実施形態の端子100が適用される多端子HVDCシステム1の構成の例を示すブロック図である。多端子HVDCシステム1は、例えば、交流側変電設備2(交流側変電設備2-1~2-4)と、端子100(端子100-1~100-4)と、直流系統200とを備える。
交流側変電設備2は、交流電源、及び交流送電線などを含む交流系統の一部を構成するものである。交流側変電設備2のそれぞれは、いずれかの端子100、及び直流系統200を介して互いに接続される。例えば、交流側変電設備2-1は、端子100-1、直流系統200における直流送電路203、204及び端子100-2を介して交流側変電設備2-2と接続される。交流側変電設備2-1は、端子100-1、直流系統200における直流送電路201、202、及び端子100-3を介して交流側変電設備2-3と接続される。交流側変電設備2-1は、直流系統200における直流送電路203、204及び端子100-2、直流系統200における直流送電路205、207、及び端子100-4を介して交流側変電設備2-4と接続される。
端子100は、多端子HVDCシステム1における直流系統と交流系統との境界に設置されるものである。多端子HVDCシステム1では、端子100のそれぞれが、互いに電力を他の端子100に供給する機能と、電力を他の端子100から受け取る機能とを有する。しかしながら、ある端子100には専ら発電設備が接続され、他の端子100には専ら需要家が接続されるなど、電力の流れは概ね一定であることが多い。
以下では、専ら交流側から受け取った交流電力を直流電力に変換し、直流系統200を介して他の端子100に電力を供給する端子100を「送電端」と称し、専ら直流系統200を介して他の端子100から電力を受け取り、交流電力に変換して交流側に供給する端子100を「受電端」と称することによって区別する場合がある。本実施形態では、端子100-1、100-2が「送電端」であり、端子100-3、100-4が「受電端」であるものとする。送電端は、「送電装置」の一例である。受電端は、「受電装置」の一例である。また、本明細書で説明する機能は、専ら送電装置に関するものである。
直流系統200は、例えば、直流送電路201~208を備える。直流送電路201~208は、直流電力を送電する。直流電力での送電は、交流電力での送電と比較して電力の損失を抑制できることから、特に大容量、且つ長距離の送電に適用される。直流送電路201~208は、ケーブル、架空送電線等の種類は問わない。なお、本実施形態では、直流送電路は、ある端子100の直流母線20と、別の端子100の直流母線20までの間を指している。例えば、直流送電路201は、直流母線20-1から直流母線20-3までの間を指している。直流送電路202は、直流母線21-1から直流母線21-3までの間を指している。直流送電路203は、直流母線20-1から直流母線20-2までの間を指している。直流送電路204は、直流母線21-1から直流母線21-2までの間を指している。直流送電路205は、直流母線20-2から直流母線20-4までの間を指している。直流送電路206は、直流母線21-2から直流母線21-4までの間を指している。直流送電路207は、直流母線20-4から直流母線20-3までの間を指している。直流送電路208は、直流母線21-4から直流母線21-3までの間を指している。直流送電路201~208は、「電気設備」の一例である。
端子100は、例えば、交直変換器10と、直流母線20、21と、電流検出器30~33と、リアクトル40~43と、直流遮断器50~53と、制御装置60とを備える。例えば、端子100-1は、交直変換器10-1と、直流母線20-1、21-1と、電流検出器30-1、31-1、32-1、33-1と、リアクトル40-1、41-2、42-1、43-1と、直流遮断器50-1、51-1、52-1、53-1と、制御装置60-1とを備える。電流検出器30~33と、リアクトル40~43と、直流遮断器50~53は、「電気設備」の一例である。リアクトル40~43は、「限流器」の一例である。
本実施形態では、直流母線20に接続された構成が正極に対応し、直流母線21に接続された構成が負極に対応するものとする。また、以下では、ハイフン以下の符号を適宜省略して説明する。
交直変換器10は、交流電力と直流電力とを相互に変換する変換器であって、例えば自励式電力変換器である。
直流母線20は、交直変換器10の直流側に接続される。直流母線20は、交直変換器10の一方側に接続され、正極性の直流電圧が印加されている。直流母線21は、交直変換器10の他方側に接続され、負極性の直流電圧が印加されている。
直流母線20は、電流検出器30、32、リアクトル40、42、及び直流遮断器50、52を介して、直流系統200と接続される。直流母線21は、電流検出器31、33、リアクトル41、43、及び直流遮断器51、53を介して、直流系統200と接続される。例えば、直流母線20-1は、電流検出器30-1、リアクトル40-1、及び直流遮断器50-1を介して、直流送電路201と接続される。直流母線20-1は、電流検出器32-1、リアクトル42-1、及び直流遮断器52-1を介して、直流送電路203と接続される。直流母線21-1は、電流検出器31-1、リアクトル41-1、及び直流遮断器51-1を介して、直流送電路202と接続される。直流母線21-1は、電流検出器33-1、リアクトル43-1、及び直流遮断器53-1を介して、直流送電路204と接続される。
電流検出器30、32は、直流母線20と直流系統200との間に接続される。電流検出器30、32は、直流母線20と直流系統200との間に流れる電流値を検出する。例えば、電流検出器30-1は、直流送電路201に流れる電流値を検出する。電流検出器32-1は、直流送電路203に流れる電流値を検出する。電流検出器30、32は、検出した電流値を制御装置60に出力する。電流検出器31、33は、直流母線21と直流系統200との間に接続される。電流検出器31、33は、直流母線21と直流系統200との間に流れる電流値を検出する。例えば、電流検出器31-1は、直流送電路202に流れる電流値を検出する。電流検出器33-1は、直流送電路204に流れる電流値を検出する。電流検出器31、33は、検出した電流値を制御装置60に出力する。
リアクトル40、42は、直流母線20と直流系統200との間に接続される。リアクトル40、42は、直流母線20と直流系統200との間に流れる電流の急峻な変化を抑制する。リアクトル41、43は、直流母線21と直流系統200との間に接続される。リアクトル41、43は、直流母線21と直流系統200との間に流れる電流の急峻な変化を抑制する。リアクトル40~43は、例えば、事故時に発生する、変化の激しい電流(例えば、落雷時に発生するサージ電流)を平滑化(限流)させる限流器として用いられる。リアクトル40~43は、直列リアクトル、等のいずれの種類のリアクトルでもよい。
直流遮断器50、52は、直流母線20と直流系統200との間に接続される。直流遮断器50、52は、制御装置60による制御に応じて、直流母線20と直流系統200との間を電気的に接続又は遮断する。直流遮断器51、53は、直流母線21と直流系統200との間に接続される。直流遮断器51、53は、制御装置60による制御に応じて、直流母線21と直流系統200との間を電気的に接続又は遮断する。
制御装置60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
制御装置60は、電流検出器30~33によって検出された電流値を取得する。例えば、制御装置60-1は、電流検出器30-1、31-1、32-1、33-1によって検出された電流値を取得する。
また、制御装置60は、直流遮断器50~53を制御する。例えば、制御装置60-1は、直流遮断器50-1、51-1、52-1、53-1を制御し、必要に応じて直流遮断器を遮断する。
また、制御装置60は、交直変換器10を制御する。例えば、制御装置60-1は、交直変換器10-1を制御し、必要に応じて交直変換器10-1の稼働を停止させる。
制御装置60は、電流検出器30~33から取得した電流値に基づいて、自端子における事故の発生を検知する。自端子とは、制御装置60が設けられている端子100である。例えば、制御装置60-1の自端子は、端子100-1である。制御装置60-2の自端子は、端子100-2である。自端子における事故とは、自端子が接続する直流母線20、21において発生した事故のことである。
例えば、制御装置60は、電流検出器30~33から取得した電流値の経時的変化に基づいて、自端子における事故の発生を検知し、検知した事故の発生個所(事故区間)を特定する。制御装置60は、事故の発生個所に応じて、自端子における直流遮断器50~53を開極する。これにより、事故の発生個所を直流系統200から除去する。制御装置60が、自端子おける事故を検知する方法、及び必要に応じて直流遮断器50~53を開極する方法は、従来の方法と同様な任意の方法であってよい。このため、その詳細な説明を省略する。
本実施形態においては、制御装置60は、他端子において事故が発生した場合において、自端子の交直変換器10を停止させるか否かを判定する。他端子は、制御装置60が設けられている端子100とは異なる端子100である。例えば、制御装置60-1の他端子は、端子100-2、100-3、100-4である。制御装置60-2の他端子は、端子100-1、100-3、100-4である。他端子において発生した事故とは、他端子が接続する直流母線20、21において発生した事故のことである。
このような、他端子において発生する事故においては、他端子における直流遮断器50~53が開極することにより、事故の発生個所が直流系統200から除去される。すなわち、他端子が解列する。この場合、事故の発生個所が除去されたことによる影響を受けない場合、自端子は電力の授受を継続してよいが、システム全体として電力授受のアンバランスが生じる場合には、自端子の交直変換器10を停止させて、自端子による電力授受を止める必要がある。
上述したように、多端子HVDCシステム1においては、多様な送電ルートが構築されている。このため、他端子において事故が発生した場合、自端子の交直変換器10を停止させる必要があるか否かを判定することは、事故の発生個所、直流送電路の接続状態、直流送電路に流れる電流の状況などが総合的に勘案される必要がある。その一方で、電力授受がアンバランスな状態が継続されてしまうと、多端子HVDCシステム1に含まれるいずれかの交直変換器10が過電圧の状態に至ることがあり、結果として交直変換器10が長時間の停止を余儀なくされる可能性がある。このため、なるべく速やかに自端子の交直変換器10を停止させる必要があるか否かを判定する必要がある。
この対策として、本実施形態の制御装置60は、他端子において事故が発生した場合、自端子に流れる直流電流、すなわち電流検出器30~33から取得した電流値の経時的変化に基づいて、交直変換器10の稼働を維持又は停止させる。これにより、上位の装置との通信時間や通信に係る信号処理による遅れを最小限として、自端子の交直変換器10を停止させる必要があるか否かを、速やかに判定することが可能である。
なお、ここでの上位の装置とは、多端子HVDCシステム1における複数の端子100の電力状態に関する情報を集約する装置であり、例えば中央制御装置である。上位の装置は、集約した情報を用いて事故の有無や事故の発生個所の検出し、必要に応じて直流遮断器50~53を開極する指令や、交直変換器10を停止させる指令などを出力することによって直流系統200を保護する機能を有する。
以下、一例として、端子100-3の直流母線20-3において事故が生じた場合において、制御装置60-1が行う処理を考える(図2参照)。また、事故が発生する前は端子100-1と端子100-2のそれぞれによって、1[pu]送電され、端子100-3と端子100-4のそれぞれによって1[pu]受電されていたものとする。また、端子100のそれぞれの電力容量は、定格1[pu]であることを前提とする。以下、直流事故が発生してから交直変換器10が緊急停止された後に、再起動されるまでの処理を、端子100-1、及び端子100-2で行われる処理を例示しつつ説明する。
また、以下では、電流検出器30~33で検出される直流電流の電流値を、自端子から他端子に向かう方向を正として、電流値Idcxと表記する。xには、接続元及び接続先の端子100のハイフン以下の数値が示される。例えば、電流検出器30-1によって検出される電流値は電流値Idc13と表記する。電流検出器32-1によって検出される電流値は電流値Idc12と表記する。電流検出器30-2によって検出される電流値は電流値Idc21と表記する。電流検出器32-2によって検出される電流値は電流値Idc24と表記する。電流検出器30-3によって検出される電流値は電流値Idc31と表記する。電流検出器32-3によって検出される電流値は電流値Idc34と表記する。電流検出器30-4によって検出される電流値は電流値Idc43と表記する。電流検出器32-4によって検出される電流値は電流値Idc42と表記する(図2参照)。
ここで、図2~図9を用いて、制御装置60が行う処理を説明する。図2は、実施形態の多端子HVDCシステム1の直流母線20に事故が発生した直後の状態を説明する図である。図3は、実施形態の制御装置60が行う処理の全体の流れを示すフローチャートである。図4、図5は、図3のフローチャートにおけるステップS110、S120の処理を説明する図である。図6は、実施形態の多端子HVDCシステム1の直流母線20に事故が発生した後、端子100-3が解列した状態を説明する図である。図7~図9は、図3のフローチャートにおけるステップS140、S160、及びS170の処理を説明する図である。
図3のステップS100において、制御装置60は、直流電流Idcxの時間変化率ΔIdcxを演算する。例えば、制御装置60は、電流検出器30~33によって検出された電流値を定期的(例えば、10[μs]~1[ms]毎)に取得し、今回取得した電流値と前回取得した電流値を用いて、時間変化率ΔIdcxを演算する。例えば、制御装置60-1は、正極側における直流電流の流れとして、直流電流Idc12の時間変化率ΔIdc12、及び直流電流Idc13の時間変化率ΔIdc13を演算する。
ステップS110において、制御装置60は、演算した時間変化率ΔIdcxを用いて、事故が発生したか否かを判定する。制御装置60が、演算した時間変化率ΔIdcxを用いて、事故が発生したか否かを判定する方法については、図4で詳しく説明する。
ステップS120において、制御装置60は、ステップS110において事故が発生したと判定した場合、解列する可能性のある端子100を判定する。ここでの解列する可能性のある端子100とは、事故の発生に伴い、端子100に設けられた直流遮断器50~53のいずれかが開極する可能性がある端子である。制御装置60が解列する可能性のある端子100を判定する方法については、図5で詳しく説明する。
ステップS130において、制御装置60は、ステップS120の判定結果に基づいて、解列する可能性がある端子100が他端子であるか否かを判定する。制御装置60は、解列する可能性がある端子100が他端子である場合、ステップS140に進む。制御装置60は、解列する可能性がある端子100が他端子でない場合、処理を終了させる。なお、制御装置60は、解列する可能性がある端子100が自端子である場合、従来の保護継電機能を用いて、必要に応じて自端子の直流遮断器50~53を開極する。
ステップS140において、制御装置60は、他端子が解列したか否かを判定する。制御装置60は、ステップS110において事故が検出された場合において、所定の時間が経過するまでの間の時間変化率ΔIdcxを用いて、他端子が解列したか否かを判定する。制御装置60が、他端子が解列したか否かを判定する方法については、図7で詳しく説明する。
ステップS150において、制御装置60は、ステップS140で他端子が解列したと判定した場合、解列した端子100が受電端か否かを判定する。多端子HVDCシステム1に含まれる複数の端子100のそれぞれが送電端であるか受電端であるかは、予め、例えば、多端子HVDCシステム1の構築時に決定される。制御装置60は、例えば、多端子HVDCシステム1に含まれる端子100のそれぞれが、送電端であるか受電端であるかを示す対応テーブルを予め記憶する。制御装置60は、解列したと判定した他端子を示す情報を用いて、当該対応テーブルを参照することにより、解列した端子100が受電端か否かを判定する。
ステップS160において、制御装置60は、自端子と、解列した他端子との間において、解列する可能性がある送電端がある場合、その送電端の電力状態を演算する。制御装置60が、送電端の電力状態を演算する方法については、図8で詳しく説明する。
ステップS170において、制御装置60は、ステップS160で演算した送電端の電力状態に基づいて、自端子の交直変換器10の稼働を停止させる否かを判定する。制御装置60が、自端子の交直変換器10を停止させるか否かを判定する方法については、図9で詳しく説明する。
ステップS180において、制御装置60は、自端子の交直変換器10を停止させると判定した場合、自端子の交直変換器10を停止(ゲートブロック)させる。ステップS190において、制御装置60は、再起動の指令を受信したか否かを判定する。再起動の指令は、例えば、中央演算装置などの上位の装置によって制御装置60に通知される。ステップS200において、制御装置60は、ステップS190で再起動の指令を受信した場合、再起動に係る処理(再起動処理)を行う。再起動に係る処理は、例えば、各種制御に用いる積分器のリセットや、再起動用の指令値(電力指令値)を設定する処理である。ステップS210において、制御装置60は、自端子の交直変換器10を稼働させる指令を行うことによって、デブロック(ゲートブロックの解除)を行う。そして、制御装置60は、電力指令値に基づいて、再起動後の交直変換器10の運転を行う。
このように処理を行うことにより、上位の装置などによる指令を待つことなく、制御装置60が自立的に安全にゲートブロックの動作を行うことができる。したがって、重故障によって交直変換器10が停止される場合と比較して、早急に再起動することができる。ここでの重故障とは、多端子HVDCシステム1における何れかの交直変換器10が過電圧の状態が続いた結果として交直変換器10が停止してしまうような、長時間の停止を伴う故障である。
図2には、端子100-3の直流母線20-3において事故が生じた直後に流れる事故電流の経路が示されている。端子100-3の直流母線20-3で事故が発生すると、事故点の電圧は、瞬間的に低下する。このため、直流系統200における各部から、事故点に向かって急峻に電流が流れ込む。本実施形態では、この事故点に向かって急峻に電流が流れ込む現象を捉えることによって、事故の発生を検知する。
図4には、図3におけるステップS110に示す処理の詳細な流れが示されている。ステップS111において、制御装置60は、ステップS100で演算した時間変化率ΔIdcxの絶対値を演算する。ステップS112において、制御装置60は、ステップS111で演算した絶対値と、予め設定された電流閾値ΔIlimとを比較する。電流閾値ΔIlimは、事故が発生していない通常運転時における直流電流の時間変化率よりも十分に大きな値に設定される。例えば、電流閾値ΔIlimは、0.5[A/μs]などに設定される。制御装置60は、絶対値|ΔIdcx|が、電流閾値ΔIlimよりも大きい場合、直流系統200のいずれかの箇所で直流事故が起きたと判定し、ステップS120に進む。一方、制御装置60は、絶対値|ΔIdcx|が、電流閾値ΔIlimよりも小さい場合、直流系統200のいずれかの箇所でも直流事故が起きていないと判定し、処理を終了させる。
図5には、図3におけるステップS120に示す処理の詳細が示されている。図5には、上段に判定式、下段に判定結果が示された判定テーブルが示されている。判定式は、解列する可能性がある端子を判定するための条件を数式で示すものである。ここでは、判定式は、時間変化率ΔIdcxの大きさに基づく判定を行う場合の条件が数式で示されている。判定結果は、判定条件に合致する場合において、解列する可能性がある端子が示されている。
事故が発生した後の時間変化率ΔIdcxは、下記の(式1)にて表される。(式1)におけるIdcxは今回取得した直流電流値である。Idcx_pは前回取得した直流電流値である。Δtは前回から今回までの時間である。ΔVIは、時間Δtの間に、インダクタンスLdcに印加される電圧を示す。Ldcは、自端子から他端子までの直流側のインダクタンスの合計値である。
ΔIdcx={(Idcx)-(Idcx_p)}/Δt
=ΔVI/Ldc …(式1)
(式1)におけるインダクタンスLdcには、リアクトル40~43や、直流送電路(直流送電路201~208のいずれか)のインピーダンスが主として含まれる。したがって、事故点が遠方にある場合、事故点が近傍の場合と比較して、インダクタンスLdcは大きくなる。その結果、事故点が遠方にある場合、時間変化率ΔIdcxは小さくなる。
この性質を利用して、制御装置60は、ステップS120に示す、解列する可能性がある端子、すなわち事故が発生した可能性がある端子を、ΔIdcxの大小関係を基に判定する。本実施形態では、当該判定を各端子で行う。すなわち、各端子は、他端子で検出された電流値を用いることなく、自端子で検出される電流値を用いて、判定を行う。例えば、制御装置60-1は、電流検出器30-1で検出される直流電流Idc13の時間変化率ΔIdc13を用いて判定を行う。
図5の例では、端子100-1から端子100-3に流れる直流電流Idc13の時間変化率ΔIdc13に基づいて、解列する可能性がある端子を判定する判定テーブルが示されている。時間変化率ΔIdc13の単位は、[A/us]である。
この例では、時間変化率ΔIdc13が-5.0[A/us]より小さい場合、解列する可能性がある端子が端子100-1(自端子)であることが示されている。これは、直流電流Idc13が、端子100-3から端子100-1に流れる方向に急激に増加した場合、事故点が端子100-1にあることを示している。すなわち、端子100-1の事故点に向かって電流が急峻に流れ込む場合に、時間変化率ΔIdc13が-5.0[A/us]より小さくなることを示している。
時間変化率ΔIdc13が-2.0[A/us]以上、かつ-0.5[A/us]より小さい場合、解列する可能性がある端子が端子100-2であることが示されている。これは、直流電流Idc13が、端子100-3から端子100-1に流れる方向にやや急激に増加した場合、事故点が端子100-2にあることを示している。すなわち、端子100-2の事故点に向かって電流が急峻に流れ込む場合に、時間変化率ΔIdc13が-2.0~-0.5[A/us]の範囲になることを示している。
時間変化率ΔIdc13が-0.2[A/us]以上、かつ-0.05[A/us]より小さい場合、解列する可能性がある端子が端子100-4であることが示されている。これは、直流電流Idc13が、端子100-3から端子100-1に流れる方向にやや増加した場合、事故点が端子100-4にあることを示している。すなわち、端子100-4の事故点に向かって電流が急峻に流れ込む場合に、時間変化率ΔIdc13が-0.2~-0.05[A/us]の範囲になることを示している。
時間変化率ΔIdc13が0.05[A/us]以上、かつ0.2[A/us]より小さい場合、解列する可能性がある端子が端子100-4であることが示されている。これは、直流電流Idc13が、端子100-1から端子100-3に流れる方向にやや増加した場合、事故点が端子100-4にあることを示している。すなわち、端子100-4の事故点に向かって電流が急峻に流れ込む場合に、時間変化率ΔIdc13が0.05~0.2[A/us]の範囲になることを示している。
時間変化率ΔIdc13が0.5[A/us]以上、かつ2.0[A/us]より小さい場合、解列する可能性がある端子が端子100-3であることが示されている。これは、直流電流Idc13が、端子100-1から端子100-3に流れる方向にやや急激に増加した場合、事故点が端子100-3にあることを示している。すなわち、端子100-3の事故点に向かって電流が急峻に流れ込む場合に、時間変化率ΔIdc13が0.5~2.0[A/us]の範囲になることを示している。
図6には、端子100-3の直流母線20-3において発生した事故に伴い、端子100-3の直流遮断器50-3、51-3、52-3、53-3が開極した後に流れる事故電流の経路が示されている。この場合において、直流遮断器50-1や、直流遮断器50-4が開極することによって、端子100-3が解列する場合もある。
図6に示す状態で、解列した端子(端子100-3)以外の端子(端子100-1、100-2、100-4)の運転が継続されると、送電端である端子100-1,100-2は、それぞれ1[pu]の電力の送電を維持する。一方、受電端である交直変換器10-4は、1[pu]の受電能力しかないにもかかわらず、2[pu]の電力を受電することとなり、定格容量を超過し、過電圧状態に至る可能性がある。
一方、事故点を有する端子100-3が解列すると、事故点への急峻な流れ込みが解消され、今まで流れていた方向への電流の流れが急峻に低減される。この性質を利用して、本実施形態では、電流の流れの急峻な変化を捉えることによって、他端子が解列したか否かを判定する。
図7には、図3におけるステップS140に示す処理の詳細な流れが示されている。ステップS141において、制御装置60は、時間変化率ΔIdcxと、時間変化率ΔIdcx_pとの極性が反転したか否かを判定する。時間変化率ΔIdcxは、今回取得された直流電流値Idcxを用いて演算された時間変化率である。時間変化率ΔIdcx_pは、前回取得された直流電流値Idcx_pを用いて演算された時間変化率である。制御装置60は、時間変化率ΔIdcx_pが正の値であった場合において、時間変化率ΔIdcxが負の値となった場合に極性が反転したと判定する。制御装置60は、時間変化率ΔIdcx_pが負の値であった場合において、時間変化率ΔIdcxが正の値となった場合に極性が反転したと判定する。制御装置60は、極性が反転していると判定した場合、ステップS150に処理を進める。
ステップS142において、制御装置60は、ステップS141で極性が反転していないと判定した場合、時間変化率ΔIdcxの値(現在値)を、時間変化率ΔIdcx_pとして記憶させる。ステップS143において、制御装置60は、変数T(タイマT)をカウントアップさせる。ステップS144において、制御装置60は、変数Tがタイマ閾値Tlimより大きいか否かを判定する。制御装置60は、変数Tがタイマ閾値Tlimより大きい場合に処理を終了させる。制御装置60は、変数Tがタイマ閾値Tlimより小さい場合、ステップS141に戻って、極性が反転していないかの判定を継続する。これによって制御装置60は、ステップS130で、解列する可能性がある端子100が他端子であると判定した後、所定のタイマ閾値Tlimが経過するまでの間に解列した端子100の有無を検知する。
図8には、図3におけるステップS160に示す処理の詳細な流れが示されている。ステップS161において、制御装置60は、自端子からみて事故電流が流れた方向に、自端子とは異なる他の送電端があるか否かを判定する。自端子からみて事故電流が流れた方向とは、ステップS110で事故が検出された直後における時間変化率ΔIdcxの方向である。
例えば、上述したように、端子100-3に事故が発生した場合、事故点に向かって電流が急峻に流れ込む。この場合、端子100-1から端子100-3に向かう方向に電流が増加すると考えられる。このとき、時間変化率ΔIdc13が正となる。また、時間変化率ΔIdc12は負となる。この場合、制御装置60-1は、自端子からみて事故電流が流れた方向が、端子100-3へ向かう方向であり、その方向に自端子とは異なる他の送電端は「ない」と判定する。
一方、端子100-3に事故が発生した場合、端子100-2から端子100-3に向かう方向に電流が増加すると考えられる。このとき、例えば、時間変化率ΔIdc21が正となる。この場合、制御装置60-2は、自端子からみて事故電流が流れた方向が、端子100-3へ向かう方向であり、その方向に自端子とは異なる他の送電端が「ある」と判定し、その他の送電端とは端子100-1であると判定する。
なお、本実施形態では、各端子における制御装置60に、多端子HVDCシステム1に含まれる複数の端子100のそれぞれの位置の関係を示す位置テーブルが、予め記憶されているものとする。制御装置60は、ステップS161で判定した事故電流が流れた方向に基づいて、位置テーブルを参照することによって、その方向に自端子とは異なる他の送電端があるか否かを判定する。
ステップS162において、制御装置60は、ステップS161で事故電流が流れた方向に自端子とは異なる他の送電端が「ある」と判定した場合、該当する送電端の送電電力値Psd[pu]を演算する。送電電力値Psdは、「送受電電力情報」の一例である。ここで、送電端における送電電力値は、事故が発生する前後において変化していないものとし、ここでは、端子100-1、100-2のそれぞれが1[pu]の直流電力を送電しているものとする。この場合、制御装置60-2は、自端子からみて事故電流が流れた方向に自端子とは異なる他の送電端が「ある」こと、及び、その送電端とは端子100-1であるから、送電電力値Psdは1[pu]と判定する。
ステップS163において、制御装置60は、ステップS161で事故電流が流れた方向に自端子とは異なる他の送電端が「ない」と判定した場合、送電電力値Psdは0(ゼロ)[pu]とする。例えば、制御装置60-1は、自端子からみて事故電流が流れた方向に自端子とは異なる他の送電端は「ない」ことから、送電電力値Psdは0(ゼロ)[pu]とする。
図8には、図3におけるステップS170に示す処理の詳細な流れが示されている。ステップS171において、制御装置60は、運転を継続するすべての送電端における送電電力の合計値Psc[pu]を演算する。合計値Pscは、「送受電電力情報」の一例である。ここで、運転を継続する送電端とは、多端子HVDCシステム1における全ての送電端から、解列する可能性がある送電端を除いた送電端である。解列する可能性がある送電端とは、ステップS161において、自端子と事故に伴って解列した端子との間にあると判定された送電端である。
例えば、制御装置60は、以下の(式2)を用いて、運転を継続しているすべての送電端における送電電力の合計値Psc[pu]を演算する。(式2)において、Pscは、事故が発生した後に運転を継続しているすべての送電端における送電電力の合計値である。Pssは、多端子HVDCシステム1における全ての送電端の送電電力(の指令値)の合計値である。指令値Pssは、「送受電電力情報」の一例である。Psdは、事故電流が流れた方向にある、自端子とは異なる他の送電端の送電電力の合計値である。
Psc=Pss-Psd …(式2)
ステップS172において、制御装置60は、運転を継続するすべての受電端における受電電力の合計値Prc[pu]を演算する。合計値Prcは、「送受電電力情報」の一例である。ここで、運転を継続する受電端とは、多端子HVDCシステム1における全ての受電端から、解列した受電端を除いた受電端である。解列した受電端とは、ステップS150において、解列した端子が受電端であると判定された端子である。
例えば、制御装置60は、以下の(式3)を用いて、運転を継続しているすべての受電端における受電電力の合計値Prc[pu]を演算する。(式3)において、Prcは、事故が発生した後に運転を継続しているすべての受電端における受電電力の合計値である。Prsは、多端子HVDCシステム1における全ての受電端の受電電力(の指令値)の合計値である。指令値Prsは、「送受電電力情報」の一例である。Prdは、事故電流に伴って解列した受電端の受電電力の合計値である。受電電力値Prdは、「送受電電力情報」の一例である。
Prc=Prs-Prd …(式3)
ステップS173において、制御装置60は、運転を継続する送電端における送電電力の合計値Pscと、受電端における受電電力の合計値Prcとを比較する。制御装置60は、送電電力の合計値Pscが受電電力の合計値Prcよりも大きい場合、自端子の交直変換器10を停止させると判定する。
例えば、多端子HVDCシステム1が、図6に示される状況にある場合、端子100-1において、送電電力の合計値Pscが2[pu]であり、受電電力の合計値Prcが1[pu]となる。すなわち、送電電力の合計値Pscが、受電電力の合計値Prcよりも過剰となる。このため、制御装置60-1は、自端子(端子100-1)の交直変換器10-1を停止させると判定する。
また、図6に示される状況で、端子100-2において、送電電力の合計値Pscが1[pu]であり、受電電力の合計値Prcが1[pu]となる。これは、ステップS162において、事故電流が流れた方向にある自端子とは異なる他の送電端の送電電力値Psdの合計値が、1[pu]となるためである。すなわち、端子100-2においては、送電電力の合計値Pscと、受電電力の合計値Prcとが同じ容量となる。このため、制御装置60-2は、自端子(端子100-2)の交直変換器10-2を停止させず、稼働を継続させると判定する。
このようにすることで、事故によって受電端が解列し、多端子HVDCシステム1において送電量が過剰になった場合であっても、解列した受電端との直流送電路の経路が短い送電端から順に、送電量が過剰な状態が解消されるまで、送電端の交直変換器10を停止させていくことができる。したがって、電力の授受がアンバランスな状態、例えば送電量が受電量よりも過剰な状態、が継続してしまうことを抑制し、健全な端子が重故障によって停止されてしまう事態を回避することができる。ここで、事故によって受電端が解列し、解列した受電端との直流送電路の経路が短い送電端から順に、その送電端の交直変換器10が停止される状態は、「解列後の状態」の一例である。
図10、図11は、実施形態の多端子HVDCシステム1における端子100のそれぞれに流れる電流の時系列変化の例を示す図である。図10、図11において、上から1番目に、端子100-1における直流電流Idc13、Idc12の時系列変化の例が示されている。上から2番目に、端子100-2における直流電流Idc21、Idc24の時系列変化の例が示されている。上から3番目に、端子100-3における直流電流Idc31、Idc34の時系列変化の例が示されている。上から4番目に、端子100-4における直流電流Idc43、Idc42の時系列変化の例が示されている。
図10には、事故が発生していない通常時の運転から、端子100-3における事故の発生、及び端子100-3の解列を経て、端子100-1の交直変換器10が(重故障によるものでなく)自発的に停止されるまでの、各端子を流れる電流値の時系列変化が模式的に示されている。
この例では、通常時において、端子100-1と100-2が、送電端として機能し、それぞれが1[pu]送電することが示されている。また、端子100-3と100-4が、受電端として機能し、それぞれが1[pu]受電することが示されている。
時刻T1において、端子100-3の直流母線20に事故が発生する。事故点に向かって急峻に電流が流れ込むことにより、直流電流Idc13が大きく増加すると共に、Idc12が大きく減少する。また、直流電流Idc21が増加すると共に、Idc24が減少する。また、直流電流Idc31、及びIdc34が大きく減少する。また、直流電流Idc43が大きく増加すると共に、Idc42が大きく減少する。
時刻T2において、端子100-3が解列する。これに伴い、事故点に向かって急峻に電流が流れ込む現象が解消される。したがって、直流電流Idc13の大きな増加は減少に変化すると共に、Idc12の大きな減少は増加に変化する。また、直流電流Idc21の増加は減少に変化すると共に、Idc24の減少が増加に変化する。また、直流電流Idc31と、Idc34が0(ゼロ)となる。また、直流電流Idc43の大きな増加が減少に変化すると共に、Idc42の大きな減少が増加に変化する。
時刻T3において、端子100-1の交直変換器10-1が停止される。これに伴い、直流電流Idc13と、Idc12は0(ゼロ)に漸近する。また、直流電流Idc21が0(ゼロ)[pu]付近まで減少した後に電力量が安定する共に、Idc24が1[pu]付近まで増加した後に安定する。また、直流電流Idc43が0[pu]付近まで減少した後に安定すると共に、Idc42が-1[pu]付近まで増加した後に安定する。このように、送電量が過剰の状態となる前に、速やかに端子100-1の交直変換器10-1が停止されることによって送電量が低減され、結果として端子100-2と端子100-4とで1[pu]の電力授受が継続される。
図11には、事故が発生していない通常時の運転から、端子100-3における事故の発生、及び端子100-3の解列を経て、端子100-1の交直変換器10が(重故障によるものでなく)自発的に停止されたが、電力の授受のアンバランスが解消されず、端子100-2の交直変換器10も(重故障によるものでなく)自発的に停止されるまでの、各端子を流れる電流値の時系列変化が模式的に示されている。
この例では、通常時において、端子100-1と100-2が、送電端として機能し、端子100-1が0.5[pu]を送電し、端子100-2が1[pu]を送電することが示されている。また、端子100-3と100-4が、受電端として機能し、端子100-3が1[pu]を受電し、端子100-4が0.5[pu]を受電することが示されている。
また、端子100-2から端子100-3に送電される送電電力0.5[pu]のうち、 0.25[pu]が端子100-1と端子100-2の間に設けられる直流送電路203を経由し、残る0.25[pu]が端子100-2、端子100-4、及び端子100-3の間に設けられる直流送電路205、207を経由するものとする。
時刻T4において、端子100-3の直流母線20に事故が発生する。事故点に向かって急峻に電流が流れ込むことにより、直流電流Idc13が大きく増加すると共に、Idc12が大きく減少する。また、直流電流Idc21が増加すると共に、Idc24が減少する。また、直流電流Idc31、及びIdc34が大きく減少する。また、直流電流Idc43が大きく増加すると共に、Idc42が大きく減少する。
時刻T5において、端子100-3が解列する。これに伴い、事故点に向かって急峻に電流が流れ込む現象が解消される。したがって、直流電流Idc13の大きな増加は減少に変化すると共に、Idc12の大きな減少は増加に変化する。また、直流電流Idc21の増加は減少に変化すると共に、Idc24の減少が増加に変化する。また、直流電流Idc31と、Idc34が0(ゼロ)となる。また、直流電流Idc43の大きな増加が減少に変化すると共に、Idc42の大きな減少が増加に変化する。端子100-1では、送電電力の合計値Pscが1.5[pu]、受電電力の合計値Prcが0.5[pu]となり、交直変換器10-1を停止させると判定され、ゲートブロックが実行される。端子100-2では、送電電力の合計値Pscが1.0[pu]、受電電力の合計値Prcが0.5[pu]となり、交直変換器10-2を停止させると判定され、ゲートブロックが実行される。
時刻T6において、端子100-1の交直変換器10-1が停止される。また、時刻T7において、端子100-2の交直変換器10-2が停止される。これに伴い、直流電流Idc13、Idc12、Idc21、Idc24が0(ゼロ)に漸近する。また、直流電流Idc43とIdc42も0(ゼロ)に漸近する。
なお、時刻T7において、事故が発生していない健全な端子100-4に0.5[pu]の受電能力があり、端子100-1が0.5[pu]の送電能力があり、重故障ではなく健全な状態にて停止されている状態である。このため、上位の装置などの指令に基づき、端子100-1を再起動させることによって、0.5[pu]の送電を再開させることも可能である。
以上説明したように、実施形態の端子100は、交直変換器10と、制御装置60とを備える。交直変換器10は、交流電力と直流電力とを互いに変換する。制御装置60は、交直変換器10を制御する。制御装置60は、他端子(他の電力変換装置)において事故が発生したことを検知した場合、自端子(自装置)の近傍の直流送電路(直流送電路201~208のいずれか)に流れる電流値と、近傍の直流送電路のインピーダンスから、事故区間を検出する。制御装置60は、近傍の直流送電路に流れる電流値の時系列変化に基づいて、他端子が直流系統200から解列したか否かを判定する。制御装置60は、他端子が解列したと判定した場合に、多端子HVDCシステム1の送受電電力情報と事故区間の算定結果を基に交直変換器10を停止させるか否かを決定する。
これにより、実施形態の端子100は、他端子に事故が発生した場合に、事故区間を特定すると共に、事故が発生した他端子が解列したか否かを判定することができる。したがって、事故点の端子100が解列した場合に、多端子HVDCシステム1の送受電電力の関係と、事故区間とを基に自端子の運転を継続しても電力の送受のアンバランスが生じないか否かを判定することができる。このため、自端子の変換器を停止させるか否かを決定することができる。
また、実施形態の端子100では、制御装置60は、前記電流値の単位時間当たりの変化率(ΔIdcx)の大小関係を基に前記事故区間を特定する。これにより、制御装置60は、近傍の直流送電路の電流の変化率(ΔIdcx)を監視するという、自端子内で閉じた処理で、(他端子の状況を上位の装置から取得することなく)事故が発生したか否かを検知することができ、事故が発生した場合には、自端子からどの程度離れた位置にある他端子に事故が発生したかを特定することが可能である。
また、実施形態の端子100では、制御装置60は、事故が発生した他端子が解列したと判定した場合に、多端子HVDCシステム1における送電電力の指令値(Pss)、多端子HVDCシステム1における受電電力の指令値(Prs)を用いて、解列後の状態(例えば、他端子が解列し、かつ自端子と他端子との間に接続される送電端の交直変換器10が停止された状態)における、多端子HVDCシステム1の全体の送電電力値(Pss-Psd)と受電電力値(Prs-Prd)を演算する。制御装置60は、当該演算した送電電力値(Pss-Psd)が受電電力値(Prs-Prd)より大きく、かつ自端子が送電側の端子である場合、(自端子の)交直変換器10を停止させることを決定する。これにより、実施形態の端子100では、解列後の状態に応じて、例えば事故が発生した他端子が解列し、端子と他端子との間に接続される送電端の送電をすべて停止させたが、システム全体の電力授受のアンバランスが解消されないと見込まれる場合に、自端子の交直変換器10を停止させると決定することができる。したがって、事故が発生した他端子が解列したことにより生じる電力授受のアンバランスを解消させることが可能となる。
上述した実施形態では、指令値(Pss、及びPrs)を用いて、多端子HVDCシステム1に含まれる送電端における送電電力の合計値、多端子HVDCシステム1に含まれる受電端における受電電力の合計値を特定する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。指令値を用いる代わりに、定期的に測定された電力値を用いるようにしてもよい。ここで、定期的に測定された電力値は、「送受電電力情報」の一例である。
この場合、例えば、各端子100の制御装置60は、自端子の交直変換器10によって送電(又は受電)される電力値を定期的に測定し、測定した電力値を、例えば、上位の装置などに通知する。上位の装置は、それぞれの制御装置60から受信した電力値を、他の制御装置60が参照可能な記憶領域に記憶させる。或いは、上位の装置は、それぞれの制御装置60から受信した電力値を、他の制御装置60に定期的に通知する。
端子100は、事故が発生した他端子が解列したと判定した場合に、多端子HVDCシステム1に含まれる送電端における送電電力の測定値(Pss_mという)、多端子HVDCシステム1に含まれる受電端における受電電力の測定値(Prs_mという)を用いて、解列後の状態(例えば、他端子が解列し、かつ自端子と他端子との間に接続される送電端の交直変換器10が停止された状態)における、多端子HVDCシステム1の全体の送電電力値(Pss_m-Psd)と受電電力値(Prs_m-Prd)を演算する。制御装置60は、当該演算した送電電力値(Pss_m-Psd)が受電電力値(Prs_m-Prd)より大きく、かつ自端子が送電側の端子である場合、(自端子の)交直変換器10を停止させることを決定する。これにより、上述した効果を同等の効果を奏する。また、指令値に代えて、定期的に測定された測定値を用いるため、電力授受のアンバランスが解消されるか否かを精度よく演算することが可能である。
なお、この場合において、制御装置60は、自端子と他端子との間に接続される送電端の送電電力Psdの合計値、及び事故が発生した他端子の受電電力値(Prd)を演算する際に、指令値を用いて演算してもよいし、測定値を用いて演算してもよい。定期的に電流値の測定が行われていることから、制御装置60は、事故が発生した場合、事故が発生する直前に測定された測定値を用いて、送電電力の合計値(Psd)、及び事故が発生した他端子の受電電力値(Prd)を演算することが可能である。事故が発生した後に上位の装置と通信を行う必要がないため、事故の検知、事故の発生に伴って交直変換器10を停止させるか否かを決定するために上位の装置と通信を行う必要はない。したがって、通信遅延などにより、決定が遅れることがない。したがって、事故の悪影響が健全な電気設備へ波及することを抑制できる。
また、実施形態の端子100では、制御装置60は、事故が発生した他端子が解列し、かつ(自端子の)交直変換器10を停止させた場合、解列後の状態における多端子HVDCシステム1の受電可能な電力量(例えば、解列した他端子における受電電力値(Prd)から、送電電力の電力値(Psc+Psc_j)を減算した値(Prd-{Psc+Psc_j})を超えない範囲にて前記交直変換器による送電電力の電力指令値を設定する。
Pscは、自端子と他端子との間に接続される送電端の送電電力の合計値である。Psc_jは、自端子の送電電力値である。制御装置60は、(自端子の)交直変換器10を再起動し、決定した電力指令値に基づいて、再起動させた交直変換器10を運転する。
これにより、実施形態の端子100では、送電電力が過多となる電力授受のアンバランスは解消されたが、受電電力が過多となっている場合に、交直変換器10を再起動させて送電を再開することができる。この場合において、再起動後に送電電力が過多とならない範囲に電力指令値を設定する。このため、交直変換器10を再起動させることで、システム全体が、送電電力が過多な状態としてしまうことがない。したがって、重故障により受電端を停止させてしまう事態を抑制することができる。
また、実施形態の端子100では、直流送電路(直流送電路201~208のいずれか)を流れる電流を限流させるリアクトル40~43を備える。リアクトル40~43は、「限流器」の一例である。制御装置60は、自装置の近傍の直流送電路に流れる電流値と、自装置のリアクトル40~43を含む直流送電路のインピーダンスから事故区間を算定する。これにより、制御装置60は、上述した効果と同様の効果を奏する。
また、実施形態の端子100では、(交流側に接続される)交流系統は、風力発電所又は交流側変電設備2が含まれる。これにより、実施形態の端子100では、風力発電所で発電された交流電力、又は交流側変電設備2から供給される交流電力を、直流電力に変換して、直流系統200に供給することが可能である。
(実施形態の変形例)
ここで、実施形態の変形例について説明する。本変形例では、端子100-3と100-4とが直接的に接続されない点において、上述した実施形態と相違する。図12は、本変形例の多端子HVDCシステム1Aの構成の例を示すブロック図である。各端子100の構成は、上述した実施形態と同等である。このため、その説明を省略する。本変形例では、端子100-1は、端子100-3に直流電力を送電すると共に、端子100-2を介して端子100-4に直流電力を送電する。端子100-2は、端子100-4に直流電力を送電すると共に、端子100-1を介して端子100-3に直流電力を送電する。
図13は、上述した実施形態の図3におけるステップS120に対応する処理の詳細を説明する図である。図13は、図5の判定テーブルに対応しており、上段に判定式、下段に判定結果が示されている。判定式及び判定結果は、図5における判定式及び判定結果と同様である。
本変形例において、自端子(端子100-1)と、端子100-2との関係、端子100-3との関係については、上述した実施形態と同様である。このため、図13における、解列する可能性がある端子が、端子100-1、100-2、100-3である場合における判定式と判定結果との関係は、図5と同様である。一方、自端子(端子100-1)と端子100-4の関係は上述した実施形態と異なる。このため、図13における、解列する可能性がある端子が、端子100-4である場合における判定式と判定結果との関係は、図5と異なる。
具体的に、時間変化率ΔIdc13が-0.5[A/us]以上、かつ-0.05[A/us]より小さい場合、解列する可能性がある端子が端子100-4であることが示されている。これは、直流電流Idc13が、端子100-1から端子100-3に流れる方向にやや減少した場合、(端子100-4に流れる電流が増加していると考えられることから)事故点が端子100-4にあることを示している。すなわち、端子100-4の事故点に向かって電流が流れ込む場合、時間変化率ΔIdc13が-0.5~-0.05[A/us]の範囲になることを示している。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、端子100では、制御装置60は、他端子において事故が発生したことを検知した場合、自端子の近傍の直流送電路(直流送電路201~208のいずれか)に流れる電流値と、近傍の直流送電路のインピーダンスから、事故区間を検出する。制御装置60は、近傍の直流送電路に流れる電流値の時系列変化に基づいて、他端子が直流系統200から解列したか否かを判定する。制御装置60は、他端子が解列したと判定した場合に、多端子HVDCシステム1の送受電電力情報と事故区間の算定結果を基に自端子の変換器を停止させるか否かを決定する。これにより、変換器が重故障により長時間停止される事態を回避して発電の機会損失を防ぐことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。