JP7689817B2 - 熱伝導率に優れる熱間工具鋼 - Google Patents
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Description
まず、特許文献1にはCuを含有しないダイカスト金型用鋼が提案されている。もっとも、言及のないCuは不可避不純物の範囲に留まっているので、不完全焼入れ相であるベイナイトが形成しやすく、靱性が不足する問題がある。
C:0.35超~0.70%、
Si:0.01~1.20%、
Mn:0.01~1.50%、
Cr:0.40~4.00%、
Cu:0.05~3.50%、
MoとWのうちの1種類または2種類であって、Mo:3.00%以下、W:6.00%以下で、かつ、Mo+5/6・W:1.50%以上、Mo+1/2・W:3.00%以下であり、
V:0.10超~0.55%、
を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼である。
高熱伝導率とは:焼入焼戻し後の室温での熱伝導率が25.0W/m・K以上、
高硬度とは:焼入焼戻し後の室温での硬さが48.0HRC以上、
高靱性とは:焼入焼戻し後の室温でのシャルピー衝撃値が20J/cm2以上、
高軟化抵抗性とは:焼入焼戻し後に600℃で100h保持後の室温での硬さが32.0HRC以上のことをいう。
Cは、固溶することでマトリックスを強化し、また、炭化物を形成すること析出強化を促す元素である。ところで、Cが0.35%以下と少ない場合には、十分な焼入焼戻硬さが得られない。一方、Cが0.70%を超えて過多となると、偏析を助長し、靭性を低下させる。そこでCは0.35%超から0.70%以下とし、望ましくは、Cは0.55%超から0.70%以下とする。
Siは、製鋼時の脱酸剤として必要な元素である。ところで、Siが0.01%より少ないと、製鋼時に十分に脱酸されない。一方、Siは1.20%より多過ぎると、炭化物を形成することなくマトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Siは0.01%以上1.20%以下とする。なお、Siは0.05%以上であるときは、マトリックスに固溶することで硬さを向上させる効果がある。そこで、望ましくは、Siは0.05%以上1.00%以下とする。
Mnは、製鋼時の脱酸剤として必要な元素である。ところで、Mnが0.01%より少ないと、十分に脱酸されない。一方、Mnが1.50%より多すぎると、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Mnは0.01%以上1.50%以下とし、望ましくはMnは0.05%以上0.92%未満とし、より望ましくはMnは0.10%以上0.50%未満とする。
Crは、焼入れ性を向上させ、ベイナイト形成による靱性の低下を抑制するのに必要な元素である。ところで、Crが0.40%より少ないと、十分な靭性が得られない。一方、Crが4.00%より過多であると、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。また、Crが多すぎると、焼戻し時に高温で粗大化しやすいM6C炭化物やM23C6炭化物が析出し、軟化抵抗性が低下する。そこで、Crは0.40%以上4.00%以下とし、望ましくは、Crは0.45%以上2.60%未満とし、より望ましくは、Crは0.50%以上2.10%未満とする。
Cuは、焼入れ性を向上させ、ベイナイト形成による靱性の低下を抑制するために必要な元素である。ところで、Cuは0.05%より少ないと、十分な靭性が得られない。一方、Cuは3.50%より多過ぎると、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Cuは0.05%以上3.50%以下とし、望ましくは、Cuは0.10%以上3.00%以下とする。
Mo:3.00%以下、
W:6.00%以下
Mo+5/6・W:1.50%以上、
Mo+1/2・W:3.00%以下であること
MoとWは、焼戻し時の二次硬化を促進し、焼入焼戻し硬さを高めるために必用な元素である。MoやWは、多すぎると、マトリックスに残存するMoやWが増加し、熱伝導率を低下させる。そこで、Mo+1/2・Wが3.00%以下であって、Mo:3.00%以下、W:6.00%以下とする。
他方、MoやWが少なすぎると、十分な焼入焼戻し硬さがえられない。そこで、Mo、Wは1種又は2種を含有するものとし、Mo+5/6・W:1.50%以上とする。
Vは、焼戻し時の二次硬化を促進し、焼入焼戻し硬さを高める元素である。ところが、Vが0.10%以下であると、十分な焼入焼戻し硬さが得られない。一方、Vが0.55%より多すぎると、マトリックスに残存するVが増加し、熱伝導率を低下させる。そこで、Vは0.10超から0.55%以下とし、望ましくは、Vは0.25%以上0.45%未満とする。
Niは、必ずしも添加する必要はない元素であるが、Crと同様に、焼入れ性を向上させ、ベイナイト形成による靱性の低下を抑制する元素である。ところで、Niは2.99%より多く含有されると、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Niは2.99%以下とし、望ましくは、Niは0.01%以上2.00%以下とする。
Nは、必ずしも添加する必要はないが、Cと同様に焼入焼戻硬さを大きくするのに有効な元素である。ところで、Nが0.040%より過剰に添加されると、製錬の際に時間を要するので、製錬時のコストの上昇を招く。そこで、Nは0.001%以上0.040%以下とし、望ましくは、Nは0.001%以上0.030%以下とする。
Alは、必ずしも添加する必要はないが、マトリクスに固溶して硬さを向上する元素である。ところで、Alが0.001%未満であると、マトリックスに固溶して硬さが向上されない。一方、Alが0.300%より多いと、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Alは0.001以上0.300%以下とし、望ましくは、Alは0.005%以上0.150%以下とする。
焼入焼戻し状態での組織:マルテンサイト単相
焼入焼戻し後の組織に不完全焼入れ相であるベイナイトが存在すると、靭性が大幅に低下するので、ホットスタンピング・ダイカスト金型として使われた際には、十分な金型寿命が得られなくなる。そこで、本願ではマルテンサイト単相であることが望ましい。
焼入焼戻しされた状態の熱間工具鋼中にM6C炭化物やM23C6炭化物が存在すると、M6C炭化物やM23C6炭化物は高温で粗大化しやすい炭化物であることから、鋼材の軟化抵抗性が低下する。
そこで、焼入焼戻しされた状態の熱間工具鋼における炭化物の種類を、M3C炭化物、M7C3炭化物、M2C炭化物、MC炭化物のいずれか1種類、いずれか2種類、いずれか3種類、あるいは4種類であることが望ましい。
これらの化学成分のNo.1~83の発明鋼ならびに比較鋼は、それぞれ、真空誘導溶解炉にて溶製して、得られた各No.の100kgの鋼塊を、それぞれ幅65mmで高さ30mmのブロックに熱間鍛伸により鍛伸材とした。次いで、これらの各No.の鍛伸材を870℃で焼なましを行った後、それらの表面と中心との中間位置から、直径16mmで長さ160mmの丸棒をそれぞれ採取した。
さらに、これらの各丸棒を1030℃に保持して均熱化した後、空冷によって焼入れを行ない、次いで570~670℃で2回の焼戻しを行った。その後、焼入焼戻しされた状態の各鋼材の組織、析出炭化物種を観察し、また表4~表6に示す各種の特性についての調査を実施した。
これら比較鋼の特性については、表6の各No.67~83に示すとおり、熱伝導率、硬度、軟化抵抗性、靭性のいずれかの特性が本願の熱間工具鋼よりも劣るものとなった。
No.67では、表3に示すように、Cが0.32%で規定より少なく、表6に示すように、焼入れ焼戻し硬さが44.3HRCで規定より低い。
No.68では、表3に示すように、Cが0.73%で規定より多く、表6に示すように、シャルピー衝撃値が14.1J/cm2で規定より低い。
No.69では、表3に示すように、Siが1.28%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.6W/m・Kで規定より低い。
No.70では、表3に示すように、Mnが1.57%で規定より多い。表6に示すように、熱伝導率が24.3W/m・Kで規定より低い。
No.71では、表3に示すように、Crが0.31%で規定より少なく、また、組織がマルテンサイトとベイナイトの混合組織であった。表6に示すように、シャルピー衝撃値が14.6J/cm2で規定より低い。
No.72では、表3に示すように、Crが4.28%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が24.1W/m・Kで規定より低い。
No.73では、表3に示すように、Crが4.85%で規定より多く、また炭化物種にM3C炭化物、M7C3炭化物、M2C炭化物、MC炭化物以外も含まれていた。表6に示すように、熱伝導率が23.4W/m・Kで規定より低く、また高温保持後の硬さも31.1HRCと低い。
No.74では、表3に示すように、Cuが0.03%で規定より少なく、また、組織がマルテンサイトとベイナイトの混合組織であった。表6に示すように、シャルピー衝撃値が14.0J/cm2で規定より低い。
No.75では、Cuが3.62%で規定よりやや多く、表6に示すように、熱伝導率が23.4W/m・Kで規定より低い。
No.76では、表3に示すように、Moが3.12%で規定より多く、Mo+1/2・Wも3.12%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.1W/m・Kで規定より低い。
No.77では、表3に示すように、Wが6.21%で規定より多く、さらにMo+1/2・Wが3.11%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が24.9W/m・Kで規定より低い。
No.78では、表3に示すように、Mo+1/2・Wが3.24%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.1W/m・Kで規定より低い。
No.79では、表3に示すように、Mo+5/6・Wが1.45%で規定より少なく、表6に示すように、焼入れ焼戻し硬さが43.4HRCで規定より低い。
No.80では、表3に示すように、Vが0.09%で規定より少なく、表6に示すように、焼入れ焼戻し硬さが46.7HRCで規定より低い。
No.81では、表3に示すように、Vが0.59%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が24.3W/m・Kで規定より低い。
No.82では、表3に示すように、Niが3.14%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.5W/m・Kで規定より低い。
No.83では、表3に示すように、Alが0.325%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.7W/m・Kで規定より低い。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.35超~0.70%、
Si:0.01~1.20%、
Mn:0.01~1.50%、
Cr:0.40~3.30%
Cu:0.29~3.50%
MoとWのうちの1種類または2種類であって、Mo:3.00%以下、W:6.00%以下で、かつ、Mo+5/6・W:1.50%以上、Mo+1/2・W:3.00%以下であり、
V:0.10超~0.55%、
を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。 - 請求項1に記載の化学成分に加えて、質量%でNi:0.01~2.99%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。
- 請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の化学成分に加えて、質量%でN:0.001~0.040%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化学成分に加えて、質量%でAl:0.001~0.300%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化学成分に加えて、残部:Feおよび不可避的不純物からなる、マルテンサイト単相組織であることを特徴とする熱間工具鋼。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化学成分に加えて、残部:Feおよび不可避的不純物からなる熱間工具鋼であって、炭化物の種類がM3C、M7C3、M2C、MCのいずれか1~4種からなることを特徴とする熱間工具鋼。
- 請求項5に記載の熱間工具鋼であって、さらに炭化物の種類がM3C、M7C3、M2C、MCのいずれか1~4種からなることを特徴とする熱間工具鋼。
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