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JP7691104B2 - 被覆フォトクロミック微粒子の製造方法およびそれを用いた被覆フォトクロミック微粒子の製造装置 - Google Patents
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JP7691104B2 - 被覆フォトクロミック微粒子の製造方法およびそれを用いた被覆フォトクロミック微粒子の製造装置 - Google Patents

被覆フォトクロミック微粒子の製造方法およびそれを用いた被覆フォトクロミック微粒子の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、被覆フォトクロミック微粒子の製造方法およびそれを用いた被覆フォトクロミック微粒子の製造装置に関する。
フォトクロミック化合物(フォトクロミック色素ともいう)は、光照射によって着色または色調が変化し、熱または異なった波長の光によってそれらが元に戻るという性質を有し、例えば調光性レンズなどに広く用いられている。
一方、このようなフォトクロミック化合物を用いて光感応式のナノデバイスに利用することが提案されているが、実現が困難な状況にある。これは、フォトクロミック化合物を用いて例えば直径数ミリ程度のカプセルを製造することは可能であるが、直径数百ナノメートル程度の微細なカプセルや複合材を作ることが困難なためである。
フォトクロミック化合物の微粒化技術としては、例えば特許文献1~4が知られている。
特許文献1は、フォトクロミック色素を含むO/Wエマルションを形成させてから、エマルション内のフォトクロミック色素を重合させて微粒子化する方法を開示している。しかし、特許文献1の方法により得られた微粒子は、表面がポリマーでコーティングされていないため、フォトクロミック色素の種類によって安定性が失われるという欠点がある。
特許文献2は、フォトクロミック複合材料をゾル-ゲル法を通じて製造する方法を開示している。しかし、特許文献2の方法は、加水分解、凝縮および乾燥という複数の工程を経るため、所望の微粒子を得るまでに時間がかかるという点で工業的生産性に欠くものである。特許文献3については、ナノサイズの孔を有する透明重合体状プラスチック材料に一種以上の有機フォトクロミック着色剤分子を挿入し、フォトクロミックナノ複合材料を形成する方法を開示している。しかし、特許文献3の方法では、使用可能なフォトクロミック着色剤分子の種類が、有機フォトクロミック化合物に限定されており、選択性に乏しいという欠点があった。また、特許文献4については、フォトクロミック染料を含むナノエマルションを作製した後、化学的反応により表面をケイ酸塩などの高分子で被覆するという方法を記載している。しかし、特許文献4の方法では、使用した有機溶媒の乾燥に約2日の時間がかかるという点で工業的生産性に欠くものである。
特開2016-150961号公報 特表2012-515356号公報 特表2009-518696号公報 特開2007-154198号公報
本発明は、上記問題の解決を課題とし、その目的とするところは、使用するフォトクロミック化合物の種類に関わらず、所望のフォトクロミック微粒子を効率良く製造することのできる、被覆フォトクロミック微粒子の製造方法およびそれを用いた被覆フォトクロミック微粒子の製造装置を提供することにある。
本発明は、被覆フォトクロミック微粒子の製造方法であって、
フォトクロミック芯材粒子と高分子と極性溶媒と低極性有機溶媒との予備混合物に超音波を直接照射してO/Wエマルションを調製する工程、
閉塞された容器内において、該O/Wエマルションを超臨界流体と混合する工程、および
該閉塞された容器内を開放する工程、
を包含する、方法である。
1つの実施形態では、上記超臨界流体は超臨界二酸化炭素である。
1つの実施形態では、上記低極性有機溶媒はトルエンおよびヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒である。
1つの実施形態では、上記高分子は熱可塑性樹脂である。
さらなる実施形態では、上記熱可塑性樹脂はポリスチレンである。
1つの実施形態では、上記混合工程は35℃から55℃の温度で行われる。
1つの実施形態では、上記超音波の照射はホーン型超音波振動子によって行われる。
さらなる実施形態では、上記超音波は、上記予備混合物に対して一軸方向に照射される。
本発明はまた、被覆フォトクロミック微粒子の製造装置であって、
フォトクロミック芯材粒子と高分子と極性溶媒と低極性有機溶媒との予備混合物に超音波を直接照射してO/Wエマルションを調製するための超音波照射手段;および
該O/Wエマルションと超臨界流体とが混合される閉塞可能な容器;
を備える、装置である。
本発明によれば、フォトクロミック化合物からナノオーダーの微粒子を効率良く加工することができる。これにより、フォトクロミック微粒子の工業低生産性を高めることができる。
本発明の被覆フォトクロミック微粒子の製造方法を用いる当該被覆フォトクロミック微粒子の製造装置の一例を示す模式図である。 参考例1で使用した液状フォトクロミック材料の写真である。 参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)を、人工光(室内蛍光灯)の下に配置した際の状態を示す写真である。 参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)に、室内蛍光灯の下でUV光(波長302nm)を照射した際の状態を示す写真である。 参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)の電子顕微鏡写真である。 実施例1で得られた被覆フォトクロミック微粒子(E1)の電子顕微鏡写真である。 参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)と実施例1で得られた被覆フォトクロミック微粒子(E1)との粒度分布を比較するためのグラフであって、(a)は参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)の粒度分布を示すグラフであり、(b)は実施例1で得られた被覆フォトクロミック微粒子(E1)の粒度分布を示すグラフである。 実施例1の上蓋を開いて容器110内に存在していた反応液(実施例1の被覆フォトクロミック微粒子(E1)を含有する)のフォトクロミズムの有無を確認する写真であり、(a)はUV光の非照射下での当該反応液を含むサンプル瓶の写真であり、(b)はUV光の照射下での当該反応液を含むサンプル瓶の写真である。
(被覆フォトクロミック微粒子の製造方法)
本発明の被覆フォトクロミック微粒子の製造方法では、まず予備混合物からO/Wエマルションが調製される。
予備混合物は、フォトクロミック芯材粒子と高分子と極性溶媒と低極性有機溶媒とを含有する。
本発明におけるフォトクロミック芯材粒子は、被覆フォトクロミック微粒子のコア(芯)を構成し得る材料(芯材または芯物質)であって、フォトクロミック化合物を含有する固形物である。
フォトクロミック化合物には、光照射によって分子構造が変化した後、さらに別波長の光照射で元の構造に戻るP型化合物と、熱反応で元の構造に戻るT型化合物とに大別される。本発明におけるフォトクロミック芯材粒子は、P型またはT型のいずれのフォトクロミック化合物を含有していてもよい。フォトクロミック化合物としては、必ずしも限定されないが、例えば、アゾベンゼン系化合物、スピロピラン系化合物(例えば、ナフトピラン)、フルギド系化合物、フルギミド系化合物およびジアリールエテン系化合物が挙げられる。このようなフォトクロミック芯材粒子は、例えば種々のフォトクロミック化合物を含有する市販のフォトクロミック材料(モノマー)の硬化物を粉砕して得ることができる。
フォトクロミック芯材粒子の大きさ(平均粒子径)は必ずしも限定されないが、最終的に製造され得る被覆フォトクロミック微粒子の大きさ(平均粒子径)を上回るものであってよい。例えば1μm~500μm、好ましくは10μm~100μmの平均粒子径を有する。フォトクロミック芯材粒子の平均粒子径が1μmを下回るものは、それ自体がナノオーダーの微粒子となるため作製が困難である。フォトクロミック芯材粒子の平均粒子径が500μmを上回ると、フォトクロミック芯材粒子が油相に十分に溶解されず、得られる被覆フォトクロミック微粒子の平均粒子径にバラつきが生じる場合がある。フォトクロミック芯材粒子の形状もまた必ずしも限定されない。例えば、球状、楕円球状、円板状、鱗片状、柱状、多面体状、不規則立体形状、その他任意の立体的形状のいずれであってもよい。
後述の閉塞された容器に収容されるフォトクロミック芯材粒子の量(濃度)は、フォトクロミック芯材粒子の種類等によって変動するため必ずしも限定されないが、例えば、0.01(w/v)%~1(w/v)%である。閉塞された容器中にこのような範囲のフォトクロミック芯材粒子が収容されることにより、当該閉塞された容器中で被覆フォトクロミック微粒子が効率よく製造され得る。
予備混合物に含まれる高分子は、後述する超臨界流体と親和性を有し、その超臨界流体と界面を形成することができる樹脂である。このような高分子は、フォトクロミック芯材粒子に対してその表面の一部または全部を被覆し得る材料であり、好ましくは熱可塑性樹脂である。使用可能な熱可塑性樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ABS(アクリロニトリル・ブラジエン・スチレン)樹脂ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。後述の超臨界流体として使用され得る超臨界二酸化炭素との親和性が高く、得られる被覆フォトクロミック微粒子の平均粒子径が安定するとの理由からポリスチレンが好ましい。
予備混合物に含まれる高分子の含有量は、必ずしも限定されないが、上記フォトクロミック芯材粒子100質量部に対して、好ましくは10質量部~100質量部、より好ましくは40質量部~60質量部である。予備混合物に含まれる高分子の含有量が10質量部を下回ると、フォトクロミック芯材粒子に対して十分な被覆を形成することができず、被覆の間から当該芯材粒子を構成する成分が漏洩することにより使用するフォトクロミック色素の種類によっては安定性が失われる場合がある。予備混合物に含まれる高分子の含有量が100質量部を上回ると、フォトクロミック芯材粒子に対して高分子が過剰となり、工業的生産性を低下させる場合がある。
極性溶媒は水であり、当該水は、O/Wエマルションを調製するための水相として機能し得る。水の具体的な例としては超純水、純水、イオン交換水、蒸留水などが挙げられる。SFEE(Supercritical Fluid Extractions of Emulsion)法を用いた超臨界流体とのエマルション抽出を行うことを考慮すると、超純水を使用することが好ましい。
予備混合物に含まれる極性溶媒の含有量は、必ずしも限定されないが、上記フォトクロミック芯材粒子100質量部に対して、好ましくは5000質量部~(30000質量部、より好ましくは15000質量部~20000質量部である。予備混合物に含まれる極性溶媒の含有量が5000質量部を下回ると、添加した材料全てに亘ってO/Wエマルションを形成することが困難となり、工業的生産性を低下させる場合がある。予備混合物に含まれる極性溶媒の含有量が30000質量部を上回ると、調製されるO/Wエマルションの濃度が低くなり、被覆フォトクロミック微粒子を十分な収量で得ることが期待できない場合がある。
低極性有機溶媒は、非極性有機溶媒ともいわれ、極性溶媒である水よりも極性の低い有機溶媒を包含していう。低極性有機溶媒はO/Wエマルションを調製するための油相として機能し得るものであり、具体的な例としてはトルエン、ヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフランならびにそれらの組み合わせが挙げられる。超臨界流体との親和性が高く、SFEE(Superctitical Fluid Extractions of Emulsion)法での低極性有機溶媒抽出収率が高いとの理由からトルエンおよびヘキサンならびにそれらの組み合わせが好ましい。
予備混合物に含まれる低極性有機溶媒の含有量は、必ずしも限定されないが、上記フォトクロミック芯材粒子100質量部に対して、好ましくは(500質量部~3000質量部、より好ましくは1500質量部~2000質量部である。予備混合物に含まれる低極性有機溶媒の含有量が500質量部を下回ると、O/Wエマルションが形成されず、所望の被覆フォトクロミック微粒子を得ることが困難となる場合がある。予備混合物に含まれる低極性有機溶媒の含有量が3000質量部を上回ると、得られるO/Wエマルションに含まれる低極性有機溶媒量が過多となり、SFEE法での低極性有機溶媒抽出時間が長くなってしまい、工業的生産効率を悪くする場合がある。
なお、予備混合物には、少量の界面活性剤が含まれていていることが好ましい。予備混合物に含有される界面活性剤の含有量は特に限定されず、適切な量が当業者によって適宜選択され得る。
フォトクロミック芯材粒子、高分子、極性溶媒および低極性有機溶媒と、必要に応じて添加される界面活性剤とは、任意の順序で合された後、必要に応じて撹拌等が行われてもよく、行われなくてもよい。
O/Wエマルションの調製は、上記予備混合物に超音波を直接照射することにより行われる。
本発明において、O/Wエマルションは、例えば所定の容器内に予備混合物を添加し、これに超音波を直接照射して当該予備混合物の撹拌を促すことによって、油相と水相との界面でミセルの形成を促し、当該ミセルによって油相を包み込むことで調製することができる。すなわち、水中油滴型のエマルションが調製される。
超音波は、予備混合物と接触するように導入された超音波振動子の振動部分を通じて、上記予備混合物に対して直接照射される。ここで、本明細書中に用いられる用語「(超音波の)直接照射」とは、対象物(予備混合物)に対して超音波振動子から発せられる超音波を他の部材を介することなく、そのまま照射することを指して言う。本発明では、予備混合物に対して超音波を直接照射することにより、他の部材を介して超音波を照射する場合と比較して、例えば百分の1のオーダーにまで得られるO/Wエマルションを構成する粒子の粒径を小さくすることができる。
本発明においては、超音波は予備混合物に対して一軸方向に照射されることが好ましい。超音波が一軸方向に照射されることにより、予備混合物には当該照射に伴って対流(渦流)が促され、結果として予備混合物全体を効率良く撹拌することができる。こうした予備混合物の対流を容易に形成できるとの理由から、超音波振動子として、ホーン型超音波振動子を用いることが好ましい。
ホーン型超音波振動子では、ソリッドステートパワーサプライ(電源)によって、例えば20kHzに増幅した電気的エネルギーが、コンバーターによって一軸方向(縦方向)の機械的振動に変換され得、この変換された機械的振動が超音波振動としてホーンに伝達され得る。超音波振動は圧力波となり、溶液(流体)中の局所的な圧力低下による無数の極めて小さな気泡の連続的な形成および減衰(キャビテーション)を一軸方向に行うことができる。こうしたホーン型超音波振動子は、予備混合物の対流(すなわち、重力方向に基づく予備混合物の渦流)をより容易に発生させるために、閉塞された容器内で鉛直方向に沿って配置されていることが好ましい。
超音波の周波数は、好ましくは15kHz~25kHz、より好ましくは19kHz~21kHzであり、上記範囲内であることにより、O/Wエマルションの形成効率が一層向上し得る。超音波照射は、単回で行われてもよく、または適切なインターバルを空けて複数回に分かれて行われてもよい。
このようにして、上記予備混合物からO/Wエマルションが調製される。
次に、本発明では、 閉塞された容器内において、O/Wエマルションと超臨界流体とが混合される。
本発明における閉塞された容器は、O/Wエマルションおよび超臨界流体を閉塞状態で収容することができる容器であって、閉塞と開放とを繰り返し可能な容器(すなわち、開閉可能容器)であり、超臨界装置の高圧セル、耐圧セル、およびオートクレーブなどが挙げられる。閉塞された容器が収容可能な容量は特に限定されず、適切な容量を有する容器が当業者によって任意に選択され得る。
超臨界流体は、ある物質が超臨界状態で構成される流体であって、気体の拡散性と液体の溶解性とを兼ね備えるものを指していう。
ここで、本明細書中に用いられる用語「超臨界状態」とは、ある物質が臨界点以上の温度・圧力領域に置かれた状態をいう。これに対し、亜臨界状態とは、ある物質が臨界点近傍かつやや低い領域に置かれた状態をいう。液体状態とは、ある物質が超臨界または亜臨界よりも低い温度に置かれた状態をいう。これらの状態は、圧力または温度の制御によって変化され得る。高圧とは、大気圧よりも高圧(すなわち、0.1MPaを上回る)であり、物質が超臨界状態、亜臨界状態、もしくは液体状態となり得る高い圧力をいう。高圧は、流体として用いる物質の種類に依存し変動し得る。
超臨界流体は、臨界点および臨界圧力を超えた高密度の流体であり、好ましくは200kg/m~900kg/mの密度を有し、好ましくは10-5Pa・秒~10-4Pa・秒の粘度を有し、好ましくは10-8/秒~10-/秒の拡散係数を有し、および/または好ましくは10-3W/m・K~10-1W/m・Kの熱伝導度を有する流体である。
亜臨界流体は、臨界温度より低い温度域で蒸気圧曲線より高い圧力で液体状態にある流体であり、好ましくは500kg/m~1100kg/mの密度を有し、好ましくは10-4Pa・秒~10-3Pa・秒の粘度を有し、好ましくは10-10/秒~10-/秒の拡散係数を有し、および/または好ましくは0.08W/m・K~0.10W/m・Kの熱伝導度を有する流体である。
超臨界状態、亜臨界状態、または液体状態は、温度および圧力の制御によって変更され得る。このため本発明の製造方法の過程において、閉塞された容器内の流体は、超臨界状態、亜臨界状態、または液体状態になり得る。したがって、例えば、本明細書において「超臨界二酸化炭素が用いられている」場合でも、必ずしも亜臨界状態もしくは(特に高圧下の)液体状態の二酸化炭素の使用が除外されているわけではない。
超臨界流体は、単独物質または2種以上の物質の混合物であってもよい。超臨界流体を構成する物質としては、例えば、二酸化炭素、水、メタン、プロパン、窒素、およびアンモニア、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明において、超臨界流体は、化学的に不活性でありかつ毒性がないこと、密度等のコントロールが容易であること、常温常圧下では気体となって放出されるため除去等の後処理が容易であること等の理由から、好ましくは超臨界二酸化炭素である。超臨界二酸化炭素は、例えば、臨界温度(Tc:31.1℃)以上でかつ臨界圧力(Pc:7.38MPa)以上の圧力である二酸化炭素をいう。超臨界二酸化炭素は、比較的低温で取り扱うことができる。このため、超臨界二酸化炭素は、上記易熱変性芯材粒子のような熱に不安定な原料に対して有効であるという利点がある。
超臨界流体は、臨界温度を超えているため分子の熱運動が激しく、しかも密度を理想気体に近い希薄な状態から液体に相当する高密度な状態まで連続的に変化させることが可能である。そのため、超臨界流体は、密度に依存する物性(溶解力、拡散係数、熱伝導率、誘電率、イオン積など)を温度・圧力の微小変化により制御することができる。超臨界流体の密度は液体に近似しており、粘度や拡散係数に関しては気体に近似していることが分かる。溶媒の密度が大きいほど対象物質への溶解力が大きくなることから、超臨界流体は液体並みの溶解力を持っていると考えられる。一方、粘度や拡散係数については気体並みの大きな流動性を持ち合わせている。これらの物性から、超臨界流体は液体、気体双方の特徴を兼ね備えた機能性溶媒であるということができる。
上記O/Wエマルションと超臨界流体との混合は、例えば、閉塞された容器中に予め収容されたO/Wエマルションに対して超臨界流体を加えることによって行われ得る。超臨界流体との混合の際、O/Wエマルションに含まれるフォトクロミック芯材粒子および高分子は、例えば、それぞれ融解状態(融解液)であってもよく、あるいは溶媒に溶解された状態(溶液)であってもよい。
閉塞された容器における、O/Wエマルションと超臨界流体との混合は、好ましくは35℃~55℃、好ましくは38℃~42℃の温度下で行われる。当該混合の際に設定される温度が35℃を下回ると、O/Wエマルションと超臨界流体との均一な溶解が起こらずに、得られる被覆フォトクロミック微粒子の製造効率が低下する場合がある。当該混合の際に設定される温度が55℃を上回ると、内包するフォトクロミック芯材粒子や被覆のための高分子の種類によっては当該温度によってこれら固有の性質が変化する場合がある。
本発明において閉塞された容器内の混合は所定の時間をかけて行うことが好ましい。混合時間は、閉塞された容器の容量、上記O/Wエマルションに含まれるフォトクロミック芯材粒子および/または高分子の種類および量によって変動するため必ずしも限定されないが、例えば0.5時間~5時間である。
本発明においては、その後、閉塞された容器が開放される。
この開放によって容器内は減圧され、超臨界流体は容器外へ例えばノズルを通じて放出される。その際、容器内のフォトクロミック芯材粒子と高分子との混合物は大気圧近くまで急激に膨張し、融解または溶解状態のフォトクロミック芯材粒子および高分子の析出が促される。そして、フォトクロミック芯材粒子および高分子が析出する際に当該フォトクロミック芯材粒子の平均粒子径が低減した状態で当該フォトクロミック芯材粒子の表面に高分子が被膜として被覆される。
このようにして所望の被覆フォトクロミック微粒子を得ることができる。
(被覆フォトクロミック微粒子の製造装置)
本発明の被覆フォトクロミック微粒子の製造方法に使用され得る装置の例について説明する。
図1は、超臨界流体として超臨界二酸化炭素を用いる場合の被覆フォトクロミック微粒子の製造装置100を示す。この装置100では、二酸化炭素を高圧にして得られた超臨界二酸化炭素を提供するための昇圧部A1と、予備混合物からO/Wエマルションを調製する調製部A2と、閉塞可能な容器を閉塞した状態でO/Wエマルションおよび超臨界二酸化炭素を混合する混合部A3とで構成されている。昇圧部A1と混合部A2とはストップバルブ202を境にして区切られている。調製部A2と混合部A3とはストップバルブ206を境にして区切られている。
昇圧部A1において、液体二酸化炭素の昇圧用ポンプ105によって、二酸化炭素の昇圧がなされ得る。この昇圧用ポンプ105へ二酸化炭素を供給するボンベ101が備えられる。液体二酸化炭素の供給源として、液体二酸化炭素が充填されたサイフォン付きのボンベが使用され得る。
ボンベ101と昇圧用ポンプ105との間には、乾燥剤が充填された乾燥管102が設けられている。ボンベ101からの液体二酸化炭素がこの乾燥管102を通過することにより、液体二酸化炭素中の水分が除去される。
乾燥管102の下流に冷却ユニット103が設けられている。冷却ユニット103内には、例えば、エチレングリコールが充填されており、このエチレングリコールが約260Kに冷却されるようにされている。上記の乾燥管102の通過中に乾燥剤によって水分が除去された液体二酸化炭素は、冷却ユニット103のエチレングリコールによって冷却され、昇圧用ポンプ105に供給される。
また、冷却ユニット103と昇圧用ポンプ105との間には、フィルタ104が設けられている。フィルタ104によって、ゴミなどの不純物を除去し、昇圧用ポンプ105内に不純物が混入するのが防止され得る。
フィルタ104を通過した二酸化炭素が昇圧用ポンプ105に供給される。昇圧用ポンプ105のヘッド部分には、液体二酸化炭素の気化を防ぐために冷却器が装着されていてもよい(図示せず)。
昇圧部A1には、圧力調節弁201が設けられている。圧力調節弁201によって、昇圧部A1の系内を任意の圧力に設定し得る。また、昇圧部A1には圧力計106が設けられていてもよい。圧力計106によって昇圧部A1の系内の圧力を測定し得る。圧力計106には、上限接点出力端子が付いており、指定圧力で昇圧用ポンプ105の電源を切るように設定され得る。
昇圧部A1と混合部A3との間に配置されたストップバルブ202によって昇圧部A1から混合部A3への二酸化炭素の供給が調節され得る。さらに昇圧部A1と混合部A3との間には、安全性を確保するために、安全弁107が設けられていてもよい。
調製部A2は、予備混合物180を収容する予備容器182と、予備容器182内に配置された超音波振動子190と、予備混合物180から得られたO/Wエマルションを混合部A3に送給する管206とで構成されている。
予備容器182は、予備混合物180として、図示しない各貯留槽から供給されたフォトクロミック芯材粒子、高分子、極性溶媒、低極性有機溶媒および必要に応じて界面活性剤を収容する。図1において予備容器182は上方が開放されているが、本発明は特にこれに限定されない。予備容器182は閉塞容器であってもよい。
超音波振動子190は、ソリッドステートパワーサプライのような所定の電源184と電気的に接続されており、振動部分192が予備混合物180と接触するように予備容器182内に配置されている。図1において超音波振動子190の振動部分192は予備混合物180に対して、振動部分192が下方を向くように配置されている。このような配置において、超音波振動子190の振動部分192から発せられる超音波は、予備混合物180に対して下方の一軸方向に照射可能である。超音波が一軸方向に照射されることにより、予備容器182の予備混合物180には、図1に示すような鉛直方向に間で対流を生じ、例えば水平方向に撹拌した場合と比較してより小さいミセル径を有するO/Wエマルションを調製することができる。
調製されたO/Wエマルションは、ストップバルブ208を開放し、管206を通じて図示しない送液ポンプによって予備容器180から混合部A3に供給される。
混合部A3は、恒温水槽112内に設置されている。恒温水槽112内は、温度制御器(図示せず)によって水温を例えば±0.1℃まで制御可能であり、閉塞可能な容器110内を好ましくは35℃~55℃の任意の温度に設定することができる。恒温水槽112には、必要に応じて測温部116が設けられている。
閉塞可能な容器110は、例えば耐熱性および耐圧性を備えた高圧セルである。閉塞可能な容器110内に、上記調製部A2から得られたO/Wエマルションおよび上記昇圧部A1から得られた超臨界二酸化炭素(超臨界流体)が収容され、容器110を閉塞した状態でこれらの混合が行われる。閉塞可能な容器110にはこれらの混合を促すためのスターラー111が設けられていてもよい。
図1に示す閉塞可能な容器110への超臨界二酸化炭素の供給は、例えば以下のように行われる。ストップバルブ202から供給される液体二酸化炭素は、容器110に供給されるまでに恒温水槽112内で超臨界流体(超臨界二酸化炭素)に調製される。具体的には、ストップバルブ202から供給される液体二酸化炭素は、恒温水槽112内に設置した予備配管(プレヒーター)108、逆止弁109、およびストップバルブ203を介して超臨界二酸化炭素が調製され、閉塞可能な容器110に導入される。なお、閉塞可能な容器110内の圧力は圧力計113によって適宜モニターされている。
混合部A3では、上記O/Wエマルションおよび超臨界二酸化炭素(超臨界流体)が収容された状態で閉塞可能な容器110が閉塞され、その後所定時間をかけて混合が行われた後、ストップバルブ204によって容器110が再び開放される。これにより管205から二酸化炭素流体が排出され、容器110の内圧は大気圧にまで減圧可能である。この減圧によって容器110内の液状物の凝縮および二酸化炭素流体によるドライアイスの発生の回避のため、ストップバルブ204にはヒーター(図示せず)が設けられていてもよい。
ストップバルブ204を開放することにより、閉塞可能な容器110に収容されている二酸化炭素流体は、超臨界状態から常圧に戻った状態で管205から外部に排出される。その際、閉塞可能な容器110内で当該フォトクロミック芯材粒子の平均粒子径が低減した状態で高分子が当該フォトクロミック芯材粒子を包囲して被膜を形成し、被覆フォトクロミック微粒子が製造される。本発明により得られた被覆フォトクロミック微粒子は、上記O/Wエマルションの調製にあたり使用したフォトクロミック芯材粒子を下回る平均粒子径(例えば0.05μm~0.5μm)を有する。これにより、いわゆるナノオーダーのフォトクロミック微粒子を得ることができる。
本発明により得られた被覆フォトクロミック微粒子は、例えば光感応式のナノデバイス(具体的な例としては、ナノ量子ドット、ナノセンサー、ナノチューブ、バイオセンサーなどが挙げられる)の構成材料として有用である。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(参考例1:フォトクロミック芯材粒子の作製)
液状フォトクロミック材料(ナフトピランを含有する市販の調光レンズ材料)10gをビーカーに採り、その中に重合開始剤Irgacure184(98.0%、東京化成工業株式会社製)とIrgacure819(96.0%、東京化成工業株式会社製)をそれぞれ0.1gずつ加え、室温で24時間UV照射(波長302nm)して硬化させた。得られたフォトクロミック材料の硬化物を凍結粉砕機にかけ、固体粉末状のフォトクロミック芯材粒子(R1)を得た。
(実施例1:被覆フォトクロミック微粒子の作製)
水相として、ビーカーに9.5gの超純水および0.08gの界面活性剤(SIGMA-ALDRICH社製Tween80)を仕込んだ。また、油相として別のビーカーに、1.5gのトルエン(99.5%、富士フイルム和光純薬株式会社製)、0.025gのポリスチレン(Aldrich Chemical Company, Inc.製/重量平均分子量(Mw)200,000)、参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)0.05gを仕込んだ。次いで、水相に油相を加えた後、超音波照射を5分間行うことにより、O/Wエマルションを調製した。
その後、図1に示す製造装置100を用いて、被覆フォトクロミック微粒子を以下のようにして作製した。
ステンレススチール製の閉塞可能な容器110(50cc)、上記で得られたO/Wエマルションを、ストップバルブ208を空けて容器110内に入れ、当該容器110を閉塞して、予め反応温度(40℃)に制御された恒温槽112内に設置し、閉塞された容器110内が反応温度(40℃)となるまで静置した。次いで、ストップバルブ201,202,203を開け、容器110内に超臨界二酸化炭素を送液し、容器110内を高圧状態(10MPa)とした。この状態で、マグネチックスターラー111により容器110内を1時間撹拌した。その後、ストップバルブ204を開けて、容器110の減圧操作を行い、当該容器110内からストップバルブ204および管205を通じて二酸化炭素ガスを排出した。そして、容器110の上蓋を開き、容器100内の生成物を反応残渣の反応液とともに回収し、遠心分離および凍結乾燥することにより、固体粉末状の被覆フォトクロミック微粒子(E1)を得た。
(フォトクロミック芯材粒子(R1)のフォトクロミズム)
参考例1で使用した液状フォトクロミック材料の適量をシャーレ上に配置した。その際のシャーレの様子を図2に示す。また、参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)の適量を、人工光(室内蛍光灯)の下で別のシャーレ上に配置した。その際のシャーレの様子を図3に示す。さらに、このシャーレ上に配置したフォトクロミック芯材粒子(R1)に、室内蛍光灯の下でUV光(波長302nm)を照射した。その際のシャーレの様子を図4に示す。
図2~4に示すように、液状フォトクロミック材料(図2)は、上記操作を通じて明らかに固形粉末状になっていた(図3および4)。さらに、参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)は、自然光(図3)とUV光(図4)との下では、異なる色彩を呈しており、固形粉末状の形態を有していてもフォトクロミズムの性質が適切に保持されていることがわかる。
(フォトクロミック芯材粒子(R1)および被覆フォトクロミック微粒子(E1)の電子顕微鏡写真)
参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)および実施例1で得られた被覆フォトクロミック微粒子(E1)の各々の表面状態を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM6060)を用いて観察かつ測定した。得られた結果を図5および6に示す。
図5に示すように、参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)は表面の凹凸が大きい固体粒子の形態を有していた。これに対し、実施例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(E1)は滑らかな表面を有する粒子の形態を有していた。
(フォトクロミック芯材粒子(R1)および被覆フォトクロミック微粒子(E1)の粒度分布)
参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)および実施例1で得られた被覆フォトクロミック微粒子(E1)の各々の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製SALD-7500)を用いる動的光散乱(DLS)法により測定した。得られた結果を図7に示す。
図7の(a)に示すように、参考例1で得られたフォトクロミック芯材粒子(R1)は、概ね10μm~1000μmの範囲にかけて粒度が分布していたのに対し、実施例1で得られた被覆フォトクロミック微粒子(E1)は、0.1μm前後を中心とした粒度を有しかつ1μmに達するものは略観察されなかった。なお、これらの測定によって得られた参考例1のフォトクロミック芯材粒子(R1)の平均粒子径は71.295μmであったのに対し、実施例1の被覆フォトクロミック微粒子(E1)の平均粒子径は0.1532μmであった。このようにO/Wエマルションと超臨界流体との混合を通じて、得られる被覆フォトクロミック微粒子の平均粒子径は、明らかに混合前のものと比較してナノオーダーにまで微細化していたことがわかる。
(被覆フォトクロミック微粒子(E1)のフォトクロミズム)
実施例1の上蓋を開いて容器110内に存在していた反応液(実施例1の被覆フォトクロミック微粒子(E1)を含有する)をサンプル瓶に取り分け、サンプル瓶の側面からUV光(波長:302nm)を照射した。反応液が入った照射前のサンプル瓶の写真を図8の(a)に示し、UV光照射をした際の当該サンプル瓶の写真を図8の(b)に示す。
図8の(a)と(b)との比較から明らかなように、UV光を非照射の状態(図8の(a))から、UV光照射を行うとサンプル瓶内の反応液は黒みがって変色が観察された(図8の(b))。その後、UV光照射を止めると、黒みがかった反応液は再びものの状態(図8の(a))に戻っていたことを確認した。このことから、実施例1で得られた反応液に含まれていた被覆フォトクロミック微粒子(E1)はフォトクロミズムの性質を有していたことがわかる。
本発明は、例えば、電子・電気、自動車工業、繊維、化粧品、印刷等の種々の技術分野において有用である。
100 被覆フォトクロミック微粒子の製造装置
101 ボンベ
102 乾燥管
103 冷却ユニット
104 フィルタ
105 昇圧用ポンプ
106 圧力計
107 安全弁
108 予備配管(プレヒーター)
109 逆止弁
110 閉塞可能な容器
111 スターラー
112 恒温水槽
113 圧力計
116 測温部
180 予備混合物
182 予備容器
184 電源
190 超音波振動子
192 振動部分
201 圧力調節弁
202,203,204,208 ストップバルブ
205,206 管

Claims (9)

  1. 被覆フォトクロミック微粒子の製造方法であって、
    フォトクロミック芯材粒子と高分子と極性溶媒と低極性有機溶媒との予備混合物に超音波を直接照射してO/Wエマルションを調製する工程、
    閉塞された容器内において、該O/Wエマルションを超臨界流体と混合する工程、および
    該閉塞された容器内を開放する工程、
    を包含する、方法。
  2. 前記超臨界流体が超臨界二酸化炭素である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記低極性有機溶媒がトルエンおよびヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記高分子が熱可塑性樹脂である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂がポリスチレンである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記混合工程が35℃から55℃の温度で行われる、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記超音波の照射がホーン型超音波振動子によって行われる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記超音波が、前記予備混合物に対して一軸方向に照射される、請求項7に記載の方法。
  9. 被覆フォトクロミック微粒子の製造装置であって、
    フォトクロミック芯材粒子と高分子と極性溶媒と低極性有機溶媒との予備混合物に超音波を直接照射してO/Wエマルションを調製するための超音波照射手段;および
    該O/Wエマルションと超臨界流体とが混合される閉塞可能な容器;
    を備える、装置。
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