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JP7696142B2 - エンジンの筒内状態量予測装置及び筒内状態量予測方法 - Google Patents
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エンジンの筒内状態量予測装置及び筒内状態量予測方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 令和3年8月6日 ウェブサイト「https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/14680874211036838」における公開
本発明は、エンジンの筒内状態量予測装置及び筒内状態量予測方法に関する。
従来、エンジンの燃費の向上や排気ガス性能の向上を目的として、エンジンの燃焼などを的確にコントロールすべく、エンジンの筒内の燃焼状態を精度良く予測するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、圧縮自己着火式エンジンに関して、線形パラメータモデルを用いて筒内(燃焼室内)の状態量を推定することで、演算負荷の抑制と推定精度向上を図った技術が開示されている。
特開2018-200026号公報
近年では、低排出ガスで高い熱効率を実現するエンジンとして、予混合圧縮着火(HCCI:Homogeneous-Charge Compression Ignition)燃焼を行うものが注目されている。HCCI燃焼のような圧縮着火燃焼では、燃焼反応が筒内状態量やガス組成に強く影響される一方、火花点火エンジンにおける点火プラグやディーゼルエンジンにおける燃料噴射装置のように燃焼開始を直接制御する手段がないため、燃焼制御が難しい。そこで、排気ガス再循環(EGR)を利用して、所望の燃焼反応が得られるように筒内状態を制御することが行われている。EGRを効率的に利用するには、例えば吸気行程において吸気バルブと共に排気バルブも開くいわゆる排気バルブの二度開きを行うことにより、一度シリンダから排出された排気ガスをシリンダ内に引き戻ことが考えられる(内部EGR)。
エンジン回転数及び負荷が時々刻々と変化するエンジン運転中においてエンジンの圧縮着火燃焼を適切に制御するためには、エンジン制御モデルに基づきリアルタイムでエンジンの筒内状態量を予測し、その予測に基づきエンジンの制御を行うことが望ましい。しかしながら、上述した特許文献1のような従来の技術では、燃焼過程のモデル化に重点が置かれている一方、吸排気行程における筒内圧力を一定と仮定するなど、シリンダ内のガス交換が十分考慮されているとは言えない。したがって、例えば排気バルブの二度開きを行う場合、吸排気行程においてシリンダ内に流入する内部EGRに影響を受ける筒内状態量を短時間の計算で高精度に予測することができず、エンジン制御モデルに基づく圧縮着火燃焼の制御を行うことが難しいという課題がある。
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、吸排気行程におけるエンジンの筒内状態量を短時間の計算で高精度に予測することができるエンジンの筒内状態量予測装置及び筒内状態量予測方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、所定の運転条件において、排気行程において排気バルブが開き、吸気行程において排気バルブと吸気バルブの両方が同時に開くことにより筒内にEGRを導入するエンジンの筒内状態量予測装置であって、エンジンに取り付けられ、エンジンの筒内状態量に関する物理量を計測し、計測信号を出力するように構成されたセンサと、センサから計測信号を受信し、当該計測信号に基づきエンジンの筒内状態量を算出するプロセッサと、を備え、プロセッサは、計測信号に基づき、エンジンの燃焼行程終了時における筒内状態量を設定し、燃焼行程終了時における筒内状態量に基づき、エンジンの排気行程の終了時期を含む複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出し、排気行程の終了時期における筒内状態量に基づき、吸気行程の開始時期から終了時期までの筒内状態量を所定の計算ステップ幅で連続的に算出するように構成されている。
このように構成された本発明では、プロセッサは、排気行程については複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出するので、排気バルブが開くだけでありシリンダに対するガスの出入りが比較的単純な排気行程については、計算精度を確保しつつ計算負荷を大きく低減することができる。また、プロセッサは、吸気行程については筒内状態量を連続的に算出するので、排気バルブと吸気バルブの両方が同時に開くためシリンダに対するガスの出入りが比較的複雑な吸気行程については、連続的な計算により所望の計算精度を得る事ができる。したがって、吸排気行程におけるエンジンの筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
本発明において、好ましくは、離散点は、排気行程において排気バルブが開いた後、エンジンのシリンダと排気ポートとの圧力差が0に達したブローダウン終了時期と、ブローダウン終了時期の後、シリンダと排気ポートとの圧力差が増大し始める圧力上昇開始時期とを含む。
このように構成された本発明においては、プロセッサは、排気行程における離散点を、シリンダと排気ポートとの圧力差が0の時期に設定するので、排気ポート圧に基づきシリンダの筒内圧を推定することができ、離散的な計算でも高精度で筒内状態量を予測することができる。
本発明において、好ましくは、プロセッサは、エンジンのエンジン回転数が低い程、又は、エンジンのバルブリフト量が大きい程、計算ステップ幅を小さく設定し、計算ステップ幅が所定の閾値より大きい場合、エンジンの吸気バルブ及び排気バルブを通過するガスの流れを定常流れと仮定した定常流量計算式を用いて、吸気行程における筒内状態量を算出し、計算ステップ幅が所定の閾値以下の場合、エンジンの吸気バルブ及び排気バルブを通過するガスの流れを非定常流れと仮定した非定常流量計算式を用いて、吸気行程における筒内状態量を算出する。
このように構成された本発明においては、相対的にバルブリフトが小さい場合又はエンジン回転数が高い場合、即ちエンジンの吸気ポート及び排気ポートの圧力とシリンダの筒内圧との圧力差が相対的に大きい場合には、定常流量計算式により低い計算負荷で精度よく筒内状態量を予測することができる。また、相対的にバルブリフトが大きい場合又はエンジン回転数が低い場合、即ち吸気ポート及び排気ポートの圧力とシリンダの筒内圧との圧力差が相対的に小さく、定常流量計算式では所望の計算精度が得られない場合でも、非定常流量計算式を用いることにより精度よく筒内状態量を予測できる。したがって、吸排気行程におけるエンジンの筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
本発明において、好ましくは、プロセッサは、エンジンが予混合圧縮着火燃焼を行う運転条件において、エンジンの排気行程及び吸気行程における筒内状態量を算出する。
このように構成された本発明においては、予混合圧縮着火燃焼を適切に制御するために、予混合圧縮着火燃焼に大きな影響を与える吸排気行程における筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
他の観点では、本発明は、所定の運転条件において、排気行程において排気バルブが開き、吸気行程において排気バルブと吸気バルブの両方が同時に開くことにより筒内にEGRを導入するエンジンの筒内状態量予測方法であって、エンジンに取り付けられたセンサに、エンジンの筒内状態量に関する物理量を計測し、計測信号を出力させるステップと、プロセッサに、センサから計測信号を受信し、当該計測信号に基づきエンジンの筒内状態量を算出させるステップと、を有し、プロセッサに筒内状態量を算出させるステップは、計測信号に基づき、エンジンの燃焼行程終了時における筒内状態量を設定するステップと、燃焼行程終了時における筒内状態量に基づき、エンジンの排気行程の終了時期を含む複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出するステップと、排気行程の終了時期における筒内状態量に基づき、吸気行程の開始時期から終了時期までの筒内状態量を所定の計算ステップ幅で連続的に算出するステップと、を含む。
本発明のエンジンの筒内状態量予測装置及びエンジンの筒内状態量予測方法によれば、吸排気行程におけるエンジンの筒内状態量を短時間の計算で高精度に予測することができる。
本発明の実施形態によるエンジンシステムの概略構成図である。 本発明の実施形態によるエンジンシステムの機能構成を示すブロック図である。 エンジンがHCCI運転を行うときの吸気バルブ及び排気バルブのバルブプロフィールの一例を示す図である。 本発明の実施形態によるエンジンの筒内状態量予測処理のフローチャートである。 排気行程における筒内及び排気ポートの圧力プロフィールの一例を示す図である。 排気ポートの圧力脈動の一例を示す図である。 排気通路における気柱共鳴モデルの概略図である。 本発明の実施形態による筒内状態予測処理において適用される計算ステップ幅を示すマップである。 定常流量計算による各バルブの質量流量率の計算結果を例示する図である。 定常流量計算と非定常流量計算とによる各バルブの質量流量率の計算結果を例示する図である。 本発明の実施形態による筒内状態予測処理の計算結果を例示する図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの筒内状態量予測装置及び筒内状態量予測方法について説明する。
<システム構成>
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態によるエンジンの筒内状態量予測装置の構成を説明する。図1は、本実施形態による筒内状態量予測装置を適用したエンジンシステムの概略構成図であり、図2は、本実施形態によるエンジンシステムの機能構成を示すブロック図である。
エンジンシステムEは、例えば車両に搭載されている。エンジンシステムEは、エンジン1と、エンジン1を制御する演算装置及び制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)10とを備えている。
エンジン1は、4ストロークエンジンであり、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返す。エンジン1は、少なくとも一部の運転領域において、HCCI燃焼を行うように構成されてもよい。
エンジン1は、シリンダブロック12と、シリンダヘッド13とを備えている。シリンダヘッド13は、シリンダブロック12の上に載置される。シリンダブロック12には、複数(例えば4つ)のシリンダ11が形成されている。
各シリンダ11には、ピストン3が内挿されている。ピストン3は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン3、シリンダ11及びシリンダヘッド13により、燃焼室17が形成される。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、吸気ポート18が形成されている。吸気ポート18は、シリンダ11内に連通している。
吸気ポート18には、吸気バルブ21が配設されている。吸気バルブ21は、吸気ポート18を開閉する。吸気バルブ21のバルブタイミング及び/又はバルブリフトは、吸気S-VT(Sequential-Valve Timing)231や吸気CVVL(Continuously Variable Valve Lift)232により可変となっている。吸気S-VT231は、吸気カムシャフトの、クランクシャフト15に対する回転位相を、所定の角度範囲内で連続的に変更する。吸気CVVL232は、吸気バルブ21のリフト量を、所定の範囲内で連続的に変更できる。
また、シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、排気ポート19が形成されている。排気ポート19は、シリンダ11内に連通している。
排気ポート19には、排気バルブ22が配設されている。排気バルブ22は、排気ポート19を開閉する。排気バルブ22のバルブタイミング及び/又はバルブリフトは、排気S-VT241や排気VVL(Variable Valve Lift)242により可変となっている。排気S-VT241は、排気カムシャフトの、クランクシャフト15に対する回転位相を、所定の角度範囲内で連続的に変更する。排気VVL242は、図示は省略するが、排気バルブ22を開閉するカムを切り替え可能に構成されている。例えば、排気VVL242は、第1のカムと、第2のカムと、第1のカムと第2のカムとを切り替える切り替え機構と、を有している。第1のカムは、排気行程において、排気バルブ22を開閉するよう構成されている。第2のカムは、排気行程において、排気バルブ22を開閉すると共に、吸気行程において、排気バルブ22を再び開閉するよう構成されている。尚、第2のカムは、排気行程において、排気バルブ22を開けた後、排気バルブ22の開弁を、吸気行程まで維持するよう構成されてもよい。排気VVL242は、排気バルブ22を、第1のカムと第2のカムとのいずれか一方によって開閉することにより、排気バルブ22のリフトを変更できる。
吸気S-VT231、吸気CVVL232、排気S-VT241、及び、排気VVL242は、吸気バルブ21及び排気バルブ22の開閉を制御することによって、シリンダ11内への空気の導入量、及び、既燃ガスの導入量(内部EGRの量)を調節する。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、インジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、シリンダ11の中に燃料を直接噴射する。インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。燃料供給システム61は、燃料を貯留するよう構成された燃料タンク63と、燃料タンク63とインジェクタ6とを互いに連結する燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが設けられている。燃料ポンプ65は、コモンレール64に燃料を圧送する。コモンレール64は、燃料ポンプ65から圧送された燃料を、高い燃料圧力で蓄える。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64に蓄えられていた燃料が、インジェクタ6の噴口からシリンダ11の中に噴射される。尚、燃料供給システム61の構成は、前記の構成に限定されない。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、第1点火プラグ251及び第2点火プラグ252が取り付けられている。第1点火プラグ251及び第2点火プラグ252はそれぞれ、シリンダ11の中の混合気に強制的に点火をする。尚、点火プラグは、一つでもよい。
エンジン1の一側面には吸気通路40が接続されている。吸気通路40は、各シリンダ11の吸気ポート18に連通している。シリンダ11に導入される空気は、吸気通路40を流れる。吸気通路40の上流端部には、エアクリーナ41が配設されている。エアクリーナ41は、空気を濾過する。吸気通路40の下流端近傍には、サージタンク42が配設されている。サージタンク42よりも下流の吸気通路40は、シリンダ11毎に分岐する独立吸気通路を構成している。独立吸気通路の下流端が、各シリンダ11の吸気ポート18に接続されている。
吸気通路40におけるエアクリーナ41とサージタンク42との間には、スロットル弁43が配設されている。スロットル弁43は、弁の開度を調節することによって、シリンダ11の中への空気の導入量を調節する。
エンジン1の他側面には、排気通路50が接続されている。排気通路50は、各シリンダ11の排気ポート19に連通している。排気通路50は、シリンダ11から排出された排気ガスが流れる通路である。排気通路50の上流部分は、詳細な図示は省略するが、シリンダ11毎に分岐する独立排気通路を構成している。独立排気通路の上流端が、各シリンダ11の排気ポート19に接続され、独立排気通路の下流端が、排気管集合部に接続されている。
排気通路50には、複数の触媒コンバータを有する排気ガス浄化システムが配設されている。上流の触媒コンバータは、例えば三元触媒511と、GPF(Gasoline Particulate Filter)512とを有している。下流の触媒コンバータは、三元触媒513を有している。尚、排気ガス浄化システムは、図例の構成に限定されず、例えば、GPFは省略してもよい。また、触媒コンバータは、三元触媒を有するものに限定されない。さらに、三元触媒及びGPFの並び順は、適宜変更してもよい。
吸気通路40と排気通路50との間には、EGR通路52が接続されている。EGR通路52は、排気ガスの一部を吸気通路40に還流させるための通路である。EGR通路52の上流端は、排気通路50における上流の触媒コンバータと下流の触媒コンバータとの間に接続されている。EGR通路52の下流端は、吸気通路40におけるスロットル弁43とサージタンク42との間に接続されている。
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラ53が配設されている。EGRクーラ53は、排気ガスを冷却する。EGR通路52にはまた、EGR弁54が配設されている。EGR弁54は、EGR通路52を流れる排気ガスの流量を調節する。EGR弁54の開度が調節されると、外部EGRガスの還流量が調節される。
エンジンシステムEは、図2に示すように、エンジン1を制御する演算装置及び制御装置としてのECU10を備えている。ECU10は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラである。ECU10は、1つ以上のCPU(プロセッサ)101、各種プログラムを記憶するメモリ102(ROM、RAMなど)、及び電気信号の入出力をするI/F回路103などを備えたコンピュータにより構成される。なお、ECU10は、本発明における「エンジンの筒内状態量予測装置」の一例に相当する。
ECU10には、図1及び図2に示すように、各種のセンサSW1~SW14が通信可能に接続されている。センサSW1~SW14は、信号をECU10へ出力する。エアフローセンサSW1は、吸気通路40におけるエアクリーナ41の下流に配置され、吸気通路40を流れる空気の流量を計測する。吸気温度センサSW2は、吸気通路40におけるエアクリーナ41の下流に配置され、吸気通路40を流れる空気の温度を計測する。吸気圧センサSW3は、サージタンク42に取り付けられ、シリンダ11に導入される空気の圧力を計測する。筒内圧センサSW4は、各シリンダ11のシリンダヘッド13に取り付けられ、各シリンダ11内の圧力を計測する。水温センサSW5は、エンジン1に取り付けられ、冷却水の温度を計測する。排気温度センサSW6は、排気通路50に配置され、排気通路50を流れる排気ガスの温度を計測する。排気圧センサSW7は、排気通路50に取り付けられ、シリンダ11から排出された排気ガスの圧力を計測する。クランク角センサSW8は、エンジン1に取り付けられ、クランクシャフト15の回転角を計測する。アクセル開度センサSW9は、アクセルペダル機構に取り付けられ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測する。吸気カム角センサSW10は、エンジン1に取り付けられ、吸気カムシャフトの回転角を計測する。排気カム角センサSW11は、エンジン1に取り付けられ、排気カムシャフトの回転角を計測する。吸気カムリフトセンサSW12は、エンジン1に取り付けられ、吸気バルブ21のリフト量を計測する。リニアO2センサSW13は、排気通路50に取り付けられ、排気ガス中の酸素濃度を計測する。燃圧センサSW14は、コモンレール64に取り付けられ、インジェクタ6を通じてシリンダ11内へ噴射される燃料の圧力を計測する。
ECU10は、これらのセンサSW1~SW14から入力された信号に基づき、シリンダ11の筒内状態量を含むエンジン1の運転状態を予測、推定、判断し、各デバイスの制御量を演算する。ECU10は、演算した制御量に係る電気信号を、インジェクタ6、第1点火プラグ251、第2点火プラグ252、吸気S-VT231、吸気CVVL232、排気S-VT241、排気VVL242、燃料供給システム61、スロットル弁43、及びEGR弁54に出力する。
<吸排気行程における筒内状態量予測>
次に、本実施形態によるECU10が実行する、エンジン1の吸排気行程におけるシリンダ11の筒内状態量予測について説明する。図3は、エンジン1がHCCI運転を行うときの吸気バルブ21及び排気バルブ22のバルブプロフィールの一例を示す図である。図3において、横軸はクランク角を示し、左側の縦軸は圧力、右側の縦軸はバルブリフトを示す。本実施形態においては、燃焼行程の上死点をクランク角0[deg]としている。
図3に示すように、本実施形態では、排気バルブ22の開時期(EVO)から吸気バルブ21の閉時期(IVC)までを吸排気行程と定義し、IVCから次のEVOまでを燃焼行程と定義している。また、吸排気行程において、EVOから、排気バルブ22のバルブリフトが一度増大してから減少し、再度増大を開始する(即ち二度開きを開始する)時期(EVO2)までを排気行程と定義し、EVO2からIVCまでを吸気行程と定義する。吸気行程では吸気バルブ21が開くと共に排気バルブ22も二度開きを行うので、排気行程で排出された排気ガスが再び排気バルブ22を通ってシリンダ11内に導入される。
本実施形態においてECU10が吸排気行程の筒内状態量予測に用いるモデルは、排気行程の離散モデルと、吸気行程の連続モデルとによって構成されている。離散モデルでは、排気行程の間に設定された離散点についてのみ筒内状態量を計算する。一方、連続モデルでは、所定の計算ステップ幅(例えばクランク角1[deg])で筒内状態量を計算する。これは、排気行程では排気バルブ22のみが開いているので、シリンダ11に対するガスの出入りが比較的単純であり、離散点のみの計算でも必要な計算精度を得られるのに対し、吸気行程では吸気バルブ21及び排気バルブ22の両方が同時に開くので、シリンダ11に対するガスの出入りが複雑であり、所望の計算精度を得るためには筒内状態量の変化を連続的に計算する必要があるからである。
図4は、本実施形態によるECU10が実行する筒内状態量予測処理のフローチャートである。筒内状態量予測処理は、例えば、エンジン1の各シリンダ11の燃焼サイクル毎に、燃焼行程の終了後且つ吸排気行程の終了前に実行される。
まず、ステップS1において、ECU10は、センサSW1~SW14から各種情報を取得する。
次に、ステップS2において、ECU10は、EVOにおけるシリンダ11の筒内状態量を設定する。具体的には、ECU10は、今サイクルの吸排気行程における筒内状態量を予測するための初期条件として、EVOにおけるエンジン回転数、吸気圧、排気圧、筒内圧、筒内温度、酸素質量分率を設定する。これらの数値は、例えば、ステップS1で取得したセンサ情報や、燃焼行程における筒内状態量を推定するための既知のモデルにより推定されたEVOにおける筒内状態量に基づいて、ECU10が設定する。
次に、ステップS3において、ECU10は、離散モデルを用いて、排気行程の間に設定された複数の離散点のみにおける筒内状態量を計算する。
図5は、排気行程における筒内及び排気ポートの圧力プロフィールの一例を示す図である。この図5の圧力プロフィールは、筒内の燃焼反応やガスの流れを詳細に数値解析するシミュレーションツールを用いて得られたものであり、シミュレーションツールによる計算結果は実機を用いた実験により検証されている。図5に示すように、排気行程は、EVO及びEVO2に加えて2つの離散点を設定することにより、以下の3つのサブプロセスに分割される。
(a)ブローダウンプロセス(EVO~EOB)
EVO後にシリンダ11から高圧・高温の排気ガスが流出するプロセスを、本実施形態ではブローダウンプロセスと呼ぶ。シリンダ11と排気ポート19との圧力差がほぼゼロとなるときがブローダウン終了(EOB)である。このプロセスはシリンダ11の壁からの熱損失があると仮定する。
(b)小圧力差排気プロセス(EOB~SPR)
ブローダウンプロセスの後、圧力差はほぼゼロのまま維持され、その後圧力が上昇し始める。ブローダウンプロセス後圧力上昇開始(SPR)までの期間を、小圧力差排気プロセスと呼ぶ。圧力上昇開始(SPR)とは、ピストン3の上昇に伴い、筒内圧が排気ポート圧よりも高い圧力に上昇し始める時期のことをいう。このプロセスはシリンダ11の壁からの熱損失があると仮定する。
(c)圧力上昇排気プロセス(SPR~EVO2)
筒内圧が上昇した後、ピストン3が上死点に到達すると(EVO2)、圧力差は再び小さくなる。このSPRからEVO2までの期間を圧力上昇排気プロセスと呼ぶ。このプロセスもシリンダ11の壁からの熱損失があると仮定する。
上記のEOB及びSPRでは、シリンダ11と排気ポート19との圧力差がほぼゼロなので、排気ポート圧から筒内圧を推定できる。そこで、EVO及びEVO2に加えてこれらEOB及びSPRを離散点としている。ECU10は、各離散点EOB、SPR及びEVO2における排気ポート圧を求め、その排気ポート圧に基づき、筒内状態量として筒内圧、筒内温度及び筒内質量を計算する。
図6は、排気ポート19の圧力脈動の一例を示す図である。排気工程では、高圧・高温の排気ガスが排気バルブ22から流出するので、大きい脈動が発生する。そこで、シリンダ11からの排気ガスの流出を計算するために、排気通路50における気柱共鳴をモデル化した。図7は、排気通路における気柱共鳴モデルの概略図である。
図7に示すように、本実施形態の気柱共鳴モデルでは、排気通路50の一方の端(シリンダ11側)を自由端とし、他方の端(具体的には排気管集合部側)を圧力一定の固定端としている。
基本振動、3倍振動及び5倍振動を考慮すると、排気ポート19の圧力Pexpは、EVOからの経過時間tの関数として以下の式(1)で表される。
ここで、Pexhは排気圧(例えば排気管集合部の圧力であり、本実施形態では一定)、ΔPn、fn、φnは、それぞれ、n次モードの振幅、周波数、位相を表す。
気柱の共振周波数は、以下の式(2)で表される。
ここで,ΔTnは、EVOからの温度降下と、特に排気方向の温度勾配を考慮するために必要な項を示す。ΔTnは、温度降下に影響を与える3つの変数、即ちEVOからEVO2までの時間tEVO-EVO2、EVOでの筒内温度TEVO、及びEVOでの筒内圧PEVOの1次関数として以下のように記述した。
位相は、エンジン回転数Ne、TEVO、PEVOの3つのパラメータの関数として以下のように推定される。
これらのパラメータは、排気ガスの速度とエネルギーを考慮して選択されている。
各モードの振幅は、以下の式(5)で表される。
ここで、rnは振幅比、ΔPtotalは全振幅である。振幅比とは、基本波又は5倍振動の振幅と、3倍振動の振幅との比である。r1及びr3は以下のように算出される。
全振幅の定義は、排気行程における|Pexp-Pexh|の最大値であり、以下のように予測される。
なお、上記式(3)、(4)、(6)、(7)において、α、β、γ、δは、排気行程における(Pexp-Pexh)のFFT処理結果を用いて校正した値を使用することができる。
上述した気柱共鳴モデルを用いて算出した排気ポート圧に基づき、各離散点EOB、SPR及びEVO2における筒内圧、筒内温度及び筒内質量を以下のように求めることができる。
EOBの筒内圧PEOBは、
ここで、ΔPEOBは例えば予め設定された値であり、例えば1kPaである。また、EOBの時期を表すθEOBは、エンジン回転数及びEVO時の筒内圧に応じた値を予めシミュレーションツールを用いて求めておき、ルックアップテーブルとしてメモリに記憶しておいてもよく、あるいはエンジン回転数及びEVO時の筒内圧に基づきECU10が算出してもよい。
EOBの筒内温度TEOBは、断熱過程に基づく温度TEOB_adから、シリンダ壁からの熱損失による温度低下分ΔTEOBを差し引いて以下のように算出される。
ここで、ΔTEOBは、Woschniの式(12)で与えられる熱伝達率hを用いて、以下のように計算できる。

ここで、d、P、T、Cmは、シリンダ径(m)、筒内圧(kPa)、筒内温度(K)、サイクル平均ピストン速度(m/s)であるが、計算の簡略化のためEVOとEOBとにおけるこれらの値の平均値を用いることができる。
EOBの筒内質量mEOBは、理想気体の状態方程式により
SPRの筒内圧PSPRは、
ここで、SPRの時期を表すθSPRは、排気バルブ22のリフト量及び排気ポートの開口面積に基づき算出される筒内圧と排気ポート圧と差ΔPSPRが、予め設定された値、例えば1kPaとなる時期として、ベルヌーイの式等を用いて算出することができる。また、ΔPSPRは上記のように予め設定された値であり、例えば1kPaである。
SPRの筒内温度TSPRは、断熱過程に基づく温度TSPR_adから、シリンダ壁からの熱損失による温度低下分ΔTSPRを差し引いて以下のように算出される。

SPRの筒内質量mSPRは、理想気体の状態方程式により
EVO2の筒内圧PEVO2は、
ここで、EVO2の時期を表すθEVO2は、エンジン回転数や負荷に基づいてECU10が予め設定した値である。また、ΔPEVO2は、エンジン回転数や排気バルブ22のリフト量に応じて変化する値であり、例えば予めシミュレーションツールを用いて求めておき、ルックアップテーブルとしてメモリに記憶しておいてもよく、あるいはエンジン回転数及び排気バルブ22のリフト量に基づきECU10が算出してもよい。
EVO2の筒内温度TEVO2は、断熱過程に基づく温度TEVO2_adから、シリンダ壁からの熱損失による温度低下分ΔTEVO2を差し引いて以下のように算出される。

EVO2の筒内質量mEVO2は、理想気体の状態方程式により
さらに、ECU10は、EVO2における筒内EGR率EGREVO2及び吸気ポート18へのEGR流出質量mEGR,inp_EVO2も算出する。
EVO2までの間に吸気バルブ21から筒内に流入するガスが多いほど、ΔEGREVO2は大きくなる。したがって、ΔEGREVO2は式(25)で表される。
inflowは、IVOからEVO2までにおいて、算出された排気ポート圧Pexpが吸気ポート圧Pint(ステップS2で一定値として設定)を下回っている期間である。tinflowを補正するために、エンジン回転数Neが考慮される。エンジン回転数が高い場合、筒内圧が排気ポート圧を上回るので、tinflowを短くする必要がある。
EVO2における吸気ポート18へのEGR流出質量mEGR,inp_EVO2は、式(26)により算出される。
ΔmIVO-EVO2はIVOからEVO2までのシリンダ11内の質量の絶対変化量であり、max(Liv)は1サイクル中の吸気バルブ21の最大リフト量である。吸気バルブ21のリフト量の増加に伴いIVOが進角すると、吸気バルブ21の開弁期間が長く、開弁面積が大きくなるので、シリンダ11からのガス流出量が多くなる。また、エンジン回転数が高い場合には、筒内圧が吸気ポート圧よりも高くなるので、EGRガスの流出量が多くなるが、流出比率はΔmIVO-EVO2が大きいほど小さくなる傾向にある。これらの影響を考慮したのが式(26)である。
IVOがEVO2よりもSPRに近い場合には式(27)を、EVO2に近い場合には式(28)を用いて、mIVOを求める。
図4に戻り、ステップS3において離散モデルを用いて排気行程の複数の離散点のみにおける筒内状態量を計算した後、ステップS4において、ECU10は、吸気行程の筒内状態量を計算するための計算ステップ幅を決定する。
図8は、本発明の実施形態による筒内状態予測処理において、吸気行程の筒内状態量を連続モデルを用いて計算する際に適用される計算ステップ幅を示すマップである。このマップにおいて、横軸は最大吸気バルブリフトを表し、縦軸はエンジン回転数を表している。
最大吸気バルブリフトが大きい程、あるいはエンジン回転数が低い程、吸気行程における吸気ポート18及び排気ポート19の圧力とシリンダ11の筒内圧との圧力差は小さくなる。この場合、吸気ポート18及び排気ポート19の圧力とシリンダ11の筒内圧との圧力差のみに基づきシリンダ11に対するガスの流れ方向を決定する定常流量計算式では、わずかな圧力変動に応じてガスの流れ方向が変化してしまい、精度よく流量を計算することができない。したがって、最大吸気バルブリフトが大きい程、あるいはエンジン回転数が低い程、計算ステップ幅を小さくし、非定常流れを考慮に入れた非定常流量計算式によりガスの流量を計算することが望ましい。
そこで、図8に示すように、本実施形態では、ECU10は、最大吸気バルブリフトが大きい程、あるいはエンジン回転数が低い程、計算ステップ幅を小さく設定する。
次に、ステップS5において、ECU10は、ステップS4で決定した計算ステップ幅が閾値以下か否かを判定する。例えば、閾値は3[deg]である。
ステップS5の判定の結果、計算ステップ幅が閾値より大きい場合(ステップS5:NO)、ステップS6に進み、ECU10は、吸気行程における吸気バルブ21及び排気バルブ22の質量流量率の算出に用いる計算式として、定常流量計算式を選択する。
吸気バルブ21及び排気バルブ22を通過するガスの流れが定常等エントロピー流れであると仮定すると、質量流量は以下の式で表される。
ここで、添え字のupとdownは、それぞれ上流と下流を意味する。また、kは計算ステップ、Cdは吐出係数、Aはバルブの開口面積、Lはバルブリフトである。図9は、この式(29)により各バルブの質量流量率を計算した結果を例示する図である。この図9において、上段のグラフは各ポート圧及び筒内圧を示し、中段のグラフは排気バルブ22の質量流量率を示し、下段のグラフは吸気バルブ21の質量流量率を示す。また、図9の左側のグラフは、相対的にバルブリフトが小さくエンジン回転数が高い場合を示し、右側のグラフは、相対的にバルブリフトが大きくエンジン回転数が低い場合を示している。また、図9の上段のグラフにおいて、実線は筒内圧、点線は排気ポート19の圧力、一点鎖線は吸気ポート18の圧力を示す。また、図9の中段及び下段のグラフにおいて、点線はシミュレーションツールによる数値解析結果を示し、実線は本実施形態による定常流量計算式による計算結果を示す。
図9の左側のグラフに示すように、バルブリフトが小さく、あるいはエンジン回転数が高い場合には、吸気ポート18及び排気ポート19の圧力とシリンダ11の筒内圧との圧力差が大きくなるので、上記定常流計算式(29)でも精度よく質量流量率を計算することができる。しかし、バルブリフトが大きく、あるいはエンジン回転数が低い場合には、吸気ポート18及び排気ポート19の圧力とシリンダ11の筒内圧との圧力差が小さくなるので、計算上流れの方向が頻繁に変わってしまい、図9の右側のグラフに示すように質量流量率の計算結果が振動してしまう。そこで、上述したように、計算ステップ幅が閾値より大きい場合にのみ、ECU10は、吸気行程における吸気バルブ21及び排気バルブ22の質量流量率の算出に用いる計算式として、定常流量計算式を選択する。
一方、ステップS5の判定の結果、計算ステップ幅が閾値以下である場合(ステップS5:YES)には、ステップS7に進み、ECU10は、吸気行程における吸気バルブ21及び排気バルブ22の質量流量率の算出に用いる計算式として、非定常流量計算式を選択する。
非定常流量計算式としては、EGRバルブの流量計算を行うためにKiwanらがNavier-Stokes方程式から導出した以下の非定常オリフィス流れ方程式を用いることができる。
ここで、添え字cylとportは、それぞれシリンダと吸気ポートまたは排気ポートを表し、ATは吸気バルブ又は排気バルブの開口面積である。本実施形態の連続モデルでは、バルブリフト量Lのべき乗関数を用いて、各バルブ及び各流れ方向におけるKの値は以下のように近似される。
なお、係数α14~17及びβ14~17は、例えばシミュレーションツールを用いた詳細な数値解析結果に基づき予め設定することができる。
上記式(30)を離散して変形すると、
ここで、右辺のステップk+1の質量流量率を、以下の予測値に置換する。
ここで、Δθは計算ステップ幅、mk+1,steadyは定常流量計算式(29)を用いて計算したステップk+1の質量流量率である。
以上から、ステップk+1の質量流量率は、下記式で求めることができる。
図10は、定常流量計算と非定常流量計算とによる各バルブの質量流量率の計算結果を例示する図である。この図10において、上段のグラフは排気バルブ22の質量流量率を示し、下段のグラフは吸気バルブ21の質量流量率を示す。また、図10の左側のグラフは、定常流量計算式による計算結果を示し、右側のグラフは、非定常流量計算式による計算結果を示している。また、図10において、点線はシミュレーションツールによる数値解析結果を示し、実線は本実施形態による定常流量計算式及び非定常流量計算式による計算結果を示す。
上述したように、バルブリフトが大きく、あるいはエンジン回転数が低い場合、図10の左側のグラフに示すように、定常流量計算式(29)を用いて各バルブの質量流量率を求めると、計算結果が振動してしまう。これに対し、非定常流量計算式(37)を用いると、図10の右側のグラフに示すように、精度良く質量流量率を計算することができる。そこで、上述したように、計算ステップ幅が閾値以下の場合には、ECU10は、吸気行程における吸気バルブ21及び排気バルブ22の質量流量率の算出に用いる計算式として、非定常流量計算式を選択する。
図4に戻り、ステップS6又はS7において、吸気行程における吸気バルブ21及び排気バルブ22の質量流量率の算出に用いる計算式を選択した後、ステップS8に進み、ECU10は、ステップS6又はS7において選択した計算式により、計算ステップkにおける質量流量率を計算する。
次に、ステップS9において、ステップS8で計算した質量流量率に基づき、次の計算ステップk+1における筒内状態量を計算する。
まず、筒内質量mcyl,k+1は以下のように算出される。
ここで、dmex,k、dmin,kは、現在の計算ステップから次の計算ステップまでに排気バルブ22及び吸気バルブ21を通って流入する質量を表し、ステップS8で計算した質量流量率と計算ステップ幅に基づき算出される。また、dmfuel,kは、現在の計算ステップから次の計算ステップまでにおけるシリンダ11内の燃料質量の増加量である。
計算ステップkにおける筒内EGR率EGRkは、排気ポート19におけるEGR率は1であり、EVO2のときの吸気ポート18における流出ガスのEGR率がEGREVO2に等しいと仮定して、以下のように算出される。
ここで、分子の第1項はEVO2における残留ガスと吸気ポート18への流出ガスを表し、第2項は排気ポート19からの再流入ガスを表す。
計算ステップk+1における筒内温度Tcyl,k+1は、エネルギー保存則を用いて
ここで、dHex,kとdHin,kは、それぞれ排気ポート19と吸気ポート18からの流入エンタルピー値である。シリンダ11の壁面からの熱損失Qloss,kはWoschniの式を用いて推定できる。
計算ステップk+1での筒内圧は、理想気体の状態方程式により
IVCにおける筒内の酸素質量分率xO2,IVCは以下のように求められる。
ここで、xO2,airは吸気中のO2の質量分率であり、xfuel,IVCはIVCにおける燃料の質量分率である。EGRガスの酸素質量分率は、EVOにおける筒内ガスの酸素質量分率xO2,EVOと等しいと仮定する。
次に、ステップS10において、ECU10は、IVCの筒内状態量まで算出したか否かを判定する。その結果、IVCの筒内状態量まで算出していない場合(ステップS10
:NO)、ステップS11に進み、吸気行程の筒内状態量の計算ステップを1つ進める(つまり計算ステップkにk+1を代入する)。そして、ステップS8に戻り、IVCの筒内状態量を算出するまでステップS8からS11を繰り返す。
ステップS10において、IVCの筒内状態量まで算出した場合、ステップS12に進み、ECU10は、算出したIVCの筒内状態量を出力する。即ち、ここで算出したIVCの筒内状態量に基づき、ECU10は、エンジン1の各デバイスの制御量を演算する。
ステップS12の後、ECU10は筒内状態量予測処理を終了する。
<作用効果>
次に、上述した実施形態によるエンジンの筒内状態量予測装置及び筒内状態量予測方法の作用効果について説明する。
図11は、本実施形態による筒内状態予測処理の計算結果を例示する図である。図11において、左側のグラフは相対的にバルブリフトが小さくエンジン回転数が高い場合を示し、右側のグラフは相対的にバルブリフトが大きくエンジン回転数が低い場合を示している。また、図11は、最上段から順に、筒内圧、筒内温度、筒内質量及び筒内EGR率を示している。また、図11の各グラフにおける実線はシミュレーションツールによる数値解析結果を示し、点は本実施形態の筒内状態量予測処理により算出した筒内状態量を示している。
この図11に示すように、本実施形態の筒内状態量予測処理によれば、排気行程においては、離散モデルを用いた低負荷の計算であっても、設定した各離散点において筒内状態量を精度よく予測することができている。また、吸気行程においては、相対的にバルブリフトが小さくエンジン回転数が高い場合、即ち吸気ポート18及び排気ポート19の圧力とシリンダ11の筒内圧との圧力差が相対的に大きい場合には、定常流量計算式により低い計算負荷で精度よく筒内状態量を予測できている。また、相対的にバルブリフトが大きくエンジン回転数が低い場合、即ち吸気ポート18及び排気ポート19の圧力とシリンダ11の筒内圧との圧力差が相対的に小さい場合においても、非定常流量計算式を用いることにより精度よく筒内状態量を予測できている。
このように、本実施形態によれば、ECU10は、排気行程については複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出するので、排気バルブ22が開くだけでありシリンダ11に対するガスの出入りが比較的単純な排気行程については、計算精度を確保しつつ計算負荷を大きく低減することができる。また、ECU10は、吸気行程については筒内状態量を連続的に算出するので、排気バルブ22と吸気バルブ21の両方が同時に開くためシリンダ11に対するガスの出入りが比較的複雑な吸気行程については、連続的な計算により所望の計算精度を得る事ができる。したがって、吸排気行程におけるエンジン1の筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
また、ECU10は、排気行程における離散点を、シリンダ11と排気ポート19との圧力差が0の時期に設定するので、排気ポート圧に基づきシリンダ11の筒内圧を推定することができ、離散的な計算でも高精度で筒内状態量を予測することができる。
また、相対的にバルブリフトが小さい場合又はエンジン回転数が高い場合、即ちエンジンの吸気ポート18及び排気ポート19の圧力とシリンダ11の筒内圧との圧力差が相対的に大きい場合には、ECU10は、定常流量計算式により低い計算負荷で精度よく筒内状態量を予測することができる。また、相対的にバルブリフトが大きい場合又はエンジン回転数が低い場合、即ち吸気ポート18及び排気ポート19の圧力とシリンダ11の筒内圧との圧力差が相対的に小さく、定常流量計算式では所望の計算精度が得られない場合でも、ECU10は、非定常流量計算式を用いることにより精度よく筒内状態量を予測できる。したがって、吸排気行程におけるエンジン1の筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
また、ECU10は、HCCI燃焼を適切に制御するために、HCCI燃焼に大きな影響を与える吸排気行程における筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
1 エンジン
10 ECU(コントローラ)
11 シリンダ
18 吸気ポート
19 排気ポート
21 吸気バルブ
22 排気バルブ
E エンジンシステム
SW2 吸気温度センサ
SW3 吸気圧センサ
SW4 筒内圧センサ
SW5 水温センサ
SW6 排気温度センサ
SW7 排気圧センサ
SW8 クランク角センサ
SW13 リニアO2センサ

Claims (5)

  1. 所定の運転条件において、排気行程において排気バルブが開き、吸気行程において排気バルブと吸気バルブの両方が同時に開くことにより筒内にEGRを導入するエンジンの筒内状態量予測装置であって、
    前記エンジンに取り付けられ、前記エンジンの筒内状態量に関する物理量を計測し、計測信号を出力するように構成されたセンサと、
    前記センサから前記計測信号を受信し、当該計測信号に基づき前記エンジンの筒内状態量を算出するプロセッサと、を備え、
    前記プロセッサは、
    前記計測信号に基づき、前記エンジンの燃焼行程終了時における筒内状態量を設定し、
    前記燃焼行程終了時における筒内状態量に基づき、前記エンジンの排気行程の終了時期を含む複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出し、
    前記排気行程の終了時期における筒内状態量に基づき、前記吸気行程の開始時期から終了時期までの筒内状態量を所定の計算ステップ幅で連続的に算出するように構成されている、
    エンジンの筒内状態量予測装置。
  2. 前記離散点は、前記排気行程において前記排気バルブが開いた後、前記エンジンのシリンダと排気ポートとの圧力差が0に達したブローダウン終了時期と、前記ブローダウン終了時期の後、前記シリンダと前記排気ポートとの圧力差が増大し始める圧力上昇開始時期とを含む、請求項1に記載のエンジンの筒内状態量予測装置。
  3. 前記プロセッサは、
    前記エンジンのエンジン回転数が低い程、又は、前記エンジンのバルブリフト量が大きい程、前記計算ステップ幅を小さく設定し、
    前記計算ステップ幅が所定の閾値より大きい場合、前記エンジンの吸気バルブ及び排気バルブを通過するガスの流れを定常流れと仮定した定常流量計算式を用いて、前記吸気行程における前記筒内状態量を算出し、
    前記計算ステップ幅が所定の閾値以下の場合、前記エンジンの吸気バルブ及び排気バルブを通過するガスの流れを非定常流れと仮定した非定常流量計算式を用いて、前記吸気行程における前記筒内状態量を算出する、
    請求項1又は2に記載のエンジンの筒内状態量予測装置。
  4. 前記プロセッサは、前記エンジンが予混合圧縮着火燃焼を行う運転条件において、前記エンジンの排気行程及び吸気行程における筒内状態量を算出する、請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンの筒内状態量予測装置。
  5. 所定の運転条件において、排気行程において排気バルブが開き、吸気行程において排気バルブと吸気バルブの両方が同時に開くことにより筒内にEGRを導入するエンジンの筒内状態量予測方法であって、
    前記エンジンに取り付けられたセンサに、前記エンジンの筒内状態量に関する物理量を計測し、計測信号を出力させるステップと、
    プロセッサに、前記センサから前記計測信号を受信し、当該計測信号に基づき前記エンジンの筒内状態量を算出させるステップと、を有し、
    前記プロセッサに前記筒内状態量を算出させるステップは、
    前記計測信号に基づき、前記エンジンの燃焼行程終了時における筒内状態量を設定するステップと、
    前記燃焼行程終了時における筒内状態量に基づき、前記エンジンの排気行程の終了時期を含む複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出するステップと、
    前記排気行程の終了時期における筒内状態量に基づき、前記吸気行程の開始時期から終了時期までの筒内状態量を所定の計算ステップ幅で連続的に算出するステップと、を含む、
    エンジンの筒内状態量予測方法。
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