JP7696142B2 - エンジンの筒内状態量予測装置及び筒内状態量予測方法 - Google Patents
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Description
このように構成された本発明では、プロセッサは、排気行程については複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出するので、排気バルブが開くだけでありシリンダに対するガスの出入りが比較的単純な排気行程については、計算精度を確保しつつ計算負荷を大きく低減することができる。また、プロセッサは、吸気行程については筒内状態量を連続的に算出するので、排気バルブと吸気バルブの両方が同時に開くためシリンダに対するガスの出入りが比較的複雑な吸気行程については、連続的な計算により所望の計算精度を得る事ができる。したがって、吸排気行程におけるエンジンの筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
このように構成された本発明においては、プロセッサは、排気行程における離散点を、シリンダと排気ポートとの圧力差が0の時期に設定するので、排気ポート圧に基づきシリンダの筒内圧を推定することができ、離散的な計算でも高精度で筒内状態量を予測することができる。
このように構成された本発明においては、相対的にバルブリフトが小さい場合又はエンジン回転数が高い場合、即ちエンジンの吸気ポート及び排気ポートの圧力とシリンダの筒内圧との圧力差が相対的に大きい場合には、定常流量計算式により低い計算負荷で精度よく筒内状態量を予測することができる。また、相対的にバルブリフトが大きい場合又はエンジン回転数が低い場合、即ち吸気ポート及び排気ポートの圧力とシリンダの筒内圧との圧力差が相対的に小さく、定常流量計算式では所望の計算精度が得られない場合でも、非定常流量計算式を用いることにより精度よく筒内状態量を予測できる。したがって、吸排気行程におけるエンジンの筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
このように構成された本発明においては、予混合圧縮着火燃焼を適切に制御するために、予混合圧縮着火燃焼に大きな影響を与える吸排気行程における筒内状態量を、短時間の計算で高精度に予測することができる。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態によるエンジンの筒内状態量予測装置の構成を説明する。図1は、本実施形態による筒内状態量予測装置を適用したエンジンシステムの概略構成図であり、図2は、本実施形態によるエンジンシステムの機能構成を示すブロック図である。
次に、本実施形態によるECU10が実行する、エンジン1の吸排気行程におけるシリンダ11の筒内状態量予測について説明する。図3は、エンジン1がHCCI運転を行うときの吸気バルブ21及び排気バルブ22のバルブプロフィールの一例を示す図である。図3において、横軸はクランク角を示し、左側の縦軸は圧力、右側の縦軸はバルブリフトを示す。本実施形態においては、燃焼行程の上死点をクランク角0[deg]としている。
EVO後にシリンダ11から高圧・高温の排気ガスが流出するプロセスを、本実施形態ではブローダウンプロセスと呼ぶ。シリンダ11と排気ポート19との圧力差がほぼゼロとなるときがブローダウン終了(EOB)である。このプロセスはシリンダ11の壁からの熱損失があると仮定する。
ブローダウンプロセスの後、圧力差はほぼゼロのまま維持され、その後圧力が上昇し始める。ブローダウンプロセス後圧力上昇開始(SPR)までの期間を、小圧力差排気プロセスと呼ぶ。圧力上昇開始(SPR)とは、ピストン3の上昇に伴い、筒内圧が排気ポート圧よりも高い圧力に上昇し始める時期のことをいう。このプロセスはシリンダ11の壁からの熱損失があると仮定する。
筒内圧が上昇した後、ピストン3が上死点に到達すると(EVO2)、圧力差は再び小さくなる。このSPRからEVO2までの期間を圧力上昇排気プロセスと呼ぶ。このプロセスもシリンダ11の壁からの熱損失があると仮定する。
ここで、Pexhは排気圧(例えば排気管集合部の圧力であり、本実施形態では一定)、ΔPn、fn、φnは、それぞれ、n次モードの振幅、周波数、位相を表す。
これらのパラメータは、排気ガスの速度とエネルギーを考慮して選択されている。
ここで、rnは振幅比、ΔPtotalは全振幅である。振幅比とは、基本波又は5倍振動の振幅と、3倍振動の振幅との比である。r1及びr3は以下のように算出される。
なお、上記式(3)、(4)、(6)、(7)において、α、β、γ、δは、排気行程における(Pexp-Pexh)のFFT処理結果を用いて校正した値を使用することができる。
ここで、ΔPEOBは例えば予め設定された値であり、例えば1kPaである。また、EOBの時期を表すθEOBは、エンジン回転数及びEVO時の筒内圧に応じた値を予めシミュレーションツールを用いて求めておき、ルックアップテーブルとしてメモリに記憶しておいてもよく、あるいはエンジン回転数及びEVO時の筒内圧に基づきECU10が算出してもよい。
ここで、ΔTEOBは、Woschniの式(12)で与えられる熱伝達率hを用いて、以下のように計算できる。
ここで、d、P、T、Cmは、シリンダ径(m)、筒内圧(kPa)、筒内温度(K)、サイクル平均ピストン速度(m/s)であるが、計算の簡略化のためEVOとEOBとにおけるこれらの値の平均値を用いることができる。
ここで、SPRの時期を表すθSPRは、排気バルブ22のリフト量及び排気ポートの開口面積に基づき算出される筒内圧と排気ポート圧と差ΔPSPRが、予め設定された値、例えば1kPaとなる時期として、ベルヌーイの式等を用いて算出することができる。また、ΔPSPRは上記のように予め設定された値であり、例えば1kPaである。
ここで、EVO2の時期を表すθEVO2は、エンジン回転数や負荷に基づいてECU10が予め設定した値である。また、ΔPEVO2は、エンジン回転数や排気バルブ22のリフト量に応じて変化する値であり、例えば予めシミュレーションツールを用いて求めておき、ルックアップテーブルとしてメモリに記憶しておいてもよく、あるいはエンジン回転数及び排気バルブ22のリフト量に基づきECU10が算出してもよい。
EVO2までの間に吸気バルブ21から筒内に流入するガスが多いほど、ΔEGREVO2は大きくなる。したがって、ΔEGREVO2は式(25)で表される。
tinflowは、IVOからEVO2までにおいて、算出された排気ポート圧Pexpが吸気ポート圧Pint(ステップS2で一定値として設定)を下回っている期間である。tinflowを補正するために、エンジン回転数Neが考慮される。エンジン回転数が高い場合、筒内圧が排気ポート圧を上回るので、tinflowを短くする必要がある。
ΔmIVO-EVO2はIVOからEVO2までのシリンダ11内の質量の絶対変化量であり、max(Liv)は1サイクル中の吸気バルブ21の最大リフト量である。吸気バルブ21のリフト量の増加に伴いIVOが進角すると、吸気バルブ21の開弁期間が長く、開弁面積が大きくなるので、シリンダ11からのガス流出量が多くなる。また、エンジン回転数が高い場合には、筒内圧が吸気ポート圧よりも高くなるので、EGRガスの流出量が多くなるが、流出比率はΔmIVO-EVO2が大きいほど小さくなる傾向にある。これらの影響を考慮したのが式(26)である。
ここで、添え字のupとdownは、それぞれ上流と下流を意味する。また、kは計算ステップ、Cdは吐出係数、Aはバルブの開口面積、Lはバルブリフトである。図9は、この式(29)により各バルブの質量流量率を計算した結果を例示する図である。この図9において、上段のグラフは各ポート圧及び筒内圧を示し、中段のグラフは排気バルブ22の質量流量率を示し、下段のグラフは吸気バルブ21の質量流量率を示す。また、図9の左側のグラフは、相対的にバルブリフトが小さくエンジン回転数が高い場合を示し、右側のグラフは、相対的にバルブリフトが大きくエンジン回転数が低い場合を示している。また、図9の上段のグラフにおいて、実線は筒内圧、点線は排気ポート19の圧力、一点鎖線は吸気ポート18の圧力を示す。また、図9の中段及び下段のグラフにおいて、点線はシミュレーションツールによる数値解析結果を示し、実線は本実施形態による定常流量計算式による計算結果を示す。
なお、係数α14~17及びβ14~17は、例えばシミュレーションツールを用いた詳細な数値解析結果に基づき予め設定することができる。
ここで、右辺のステップk+1の質量流量率を、以下の予測値に置換する。
ここで、Δθは計算ステップ幅、mk+1,steadyは定常流量計算式(29)を用いて計算したステップk+1の質量流量率である。
ここで、dmex,k、dmin,kは、現在の計算ステップから次の計算ステップまでに排気バルブ22及び吸気バルブ21を通って流入する質量を表し、ステップS8で計算した質量流量率と計算ステップ幅に基づき算出される。また、dmfuel,kは、現在の計算ステップから次の計算ステップまでにおけるシリンダ11内の燃料質量の増加量である。
ここで、分子の第1項はEVO2における残留ガスと吸気ポート18への流出ガスを表し、第2項は排気ポート19からの再流入ガスを表す。
ここで、dHex,kとdHin,kは、それぞれ排気ポート19と吸気ポート18からの流入エンタルピー値である。シリンダ11の壁面からの熱損失Qloss,kはWoschniの式を用いて推定できる。
ここで、xO2,airは吸気中のO2の質量分率であり、xfuel,IVCはIVCにおける燃料の質量分率である。EGRガスの酸素質量分率は、EVOにおける筒内ガスの酸素質量分率xO2,EVOと等しいと仮定する。
:NO)、ステップS11に進み、吸気行程の筒内状態量の計算ステップを1つ進める(つまり計算ステップkにk+1を代入する)。そして、ステップS8に戻り、IVCの筒内状態量を算出するまでステップS8からS11を繰り返す。
次に、上述した実施形態によるエンジンの筒内状態量予測装置及び筒内状態量予測方法の作用効果について説明する。
10 ECU(コントローラ)
11 シリンダ
18 吸気ポート
19 排気ポート
21 吸気バルブ
22 排気バルブ
E エンジンシステム
SW2 吸気温度センサ
SW3 吸気圧センサ
SW4 筒内圧センサ
SW5 水温センサ
SW6 排気温度センサ
SW7 排気圧センサ
SW8 クランク角センサ
SW13 リニアO2センサ
Claims (5)
- 所定の運転条件において、排気行程において排気バルブが開き、吸気行程において排気バルブと吸気バルブの両方が同時に開くことにより筒内にEGRを導入するエンジンの筒内状態量予測装置であって、
前記エンジンに取り付けられ、前記エンジンの筒内状態量に関する物理量を計測し、計測信号を出力するように構成されたセンサと、
前記センサから前記計測信号を受信し、当該計測信号に基づき前記エンジンの筒内状態量を算出するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記計測信号に基づき、前記エンジンの燃焼行程終了時における筒内状態量を設定し、
前記燃焼行程終了時における筒内状態量に基づき、前記エンジンの排気行程の終了時期を含む複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出し、
前記排気行程の終了時期における筒内状態量に基づき、前記吸気行程の開始時期から終了時期までの筒内状態量を所定の計算ステップ幅で連続的に算出するように構成されている、
エンジンの筒内状態量予測装置。 - 前記離散点は、前記排気行程において前記排気バルブが開いた後、前記エンジンのシリンダと排気ポートとの圧力差が0に達したブローダウン終了時期と、前記ブローダウン終了時期の後、前記シリンダと前記排気ポートとの圧力差が増大し始める圧力上昇開始時期とを含む、請求項1に記載のエンジンの筒内状態量予測装置。
- 前記プロセッサは、
前記エンジンのエンジン回転数が低い程、又は、前記エンジンのバルブリフト量が大きい程、前記計算ステップ幅を小さく設定し、
前記計算ステップ幅が所定の閾値より大きい場合、前記エンジンの吸気バルブ及び排気バルブを通過するガスの流れを定常流れと仮定した定常流量計算式を用いて、前記吸気行程における前記筒内状態量を算出し、
前記計算ステップ幅が所定の閾値以下の場合、前記エンジンの吸気バルブ及び排気バルブを通過するガスの流れを非定常流れと仮定した非定常流量計算式を用いて、前記吸気行程における前記筒内状態量を算出する、
請求項1又は2に記載のエンジンの筒内状態量予測装置。 - 前記プロセッサは、前記エンジンが予混合圧縮着火燃焼を行う運転条件において、前記エンジンの排気行程及び吸気行程における筒内状態量を算出する、請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンの筒内状態量予測装置。
- 所定の運転条件において、排気行程において排気バルブが開き、吸気行程において排気バルブと吸気バルブの両方が同時に開くことにより筒内にEGRを導入するエンジンの筒内状態量予測方法であって、
前記エンジンに取り付けられたセンサに、前記エンジンの筒内状態量に関する物理量を計測し、計測信号を出力させるステップと、
プロセッサに、前記センサから前記計測信号を受信し、当該計測信号に基づき前記エンジンの筒内状態量を算出させるステップと、を有し、
前記プロセッサに前記筒内状態量を算出させるステップは、
前記計測信号に基づき、前記エンジンの燃焼行程終了時における筒内状態量を設定するステップと、
前記燃焼行程終了時における筒内状態量に基づき、前記エンジンの排気行程の終了時期を含む複数の離散点のみにおける筒内状態量を算出するステップと、
前記排気行程の終了時期における筒内状態量に基づき、前記吸気行程の開始時期から終了時期までの筒内状態量を所定の計算ステップ幅で連続的に算出するステップと、を含む、
エンジンの筒内状態量予測方法。
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