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JP7699243B2 - 二次電池の診断方法及び二次電池の診断プログラム - Google Patents
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JP7699243B2 - 二次電池の診断方法及び二次電池の診断プログラム - Google Patents

二次電池の診断方法及び二次電池の診断プログラム Download PDF

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Description

本発明は、二次電池の診断方法及び二次電池の診断プログラムに関する。
リチウムイオン電池等の二次電池は、充放電を繰り返すことによって次第に放電容量が低下する。そのため、適切な時期に二次電池の診断を行ってその劣化度を評価し、再使用が可能か判断したり、交換時期を判断したりすることが好ましい。また、診断後の二次電池を再使用するため、診断は非破壊で行えることが好ましい。
特開2017-97997号公報には、電池を構成する部材の特性値をパラメータとするモデル式を用いて、モデル式で表される電池の電圧値を実測データにフィッティングさせることで、部材の特性値を推定する二次電池の特性解析方法が記載されている。この特性解析方法では、実測データとして、定電流放電期間又は定電流充電期間のいずれかからなる動作期間と、動作期間に引き続いて設けられた休止期間とを含む充放電パターンを解析対象の電池に印加して得られたものを用いる。
また同公報には、実測データとのフィッティングによって推定される特性値として、正極活物質内におけるリチウムイオン拡散係数、負極活物質内におけるリチウムイオン拡散係数、電解液内におけるリチウムイオン拡散係数(電解液拡散係数)、正極活物質における界面抵抗、負極活物質における界面抵抗、及び電解液内でのリチウムイオン塩濃度等が記載されている。
特開2017-97997号公報
従来、二次電池の劣化度は、診断時点における放電容量の大きさや内部抵抗の大きさによって評価されている。しかし、本発明者らの調査によれば、診断時点における放電容量の大きさや内部抵抗の大きさが同程度であっても、その後にその二次電池を使用できる回数は必ずしも同程度にならないことが分かっている。具体的には、診断時点における放電容量の大きさや内部抵抗の大きさが同程度の二次電池であっても、その後、少ない回数の充放電で放電容量が急激に低下するものや、充放電を行っても放電容量があまり低下しないもの等が存在する。そのため、診断時点における放電容量の大きさや内部抵抗の大きさを測定するだけでは、二次電池の残寿命を正確に評価することはできない。
前掲の特開2017-97997号公報には、二次電池を分解せずに、二次電池を構成する部材の特性値を推定する方法が記載されている。しかし同公報には、これらの特性値から二次電池の残寿命を評価する具体的な方法は記載されていない。
本発明の課題は、二次電池を分解せずに、二次電池の残寿命を従来よりも正確に評価することができる二次電池の診断方法、及び二次電池の診断プログラムを提供することである。
本発明の一実施形態による二次電池の診断方法は、診断対象の二次電池の負荷特性を測定して得られるデータに基づいて、所定のモデル式を用いて、前記診断対象の二次電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む、前記診断対象の二次電池の診断時点における特性パラメータを推定する工程と、前記モデル式及び前記推定した特性パラメータに基づいて、電解液拡散係数を変化させたときの放電容量を求め、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程と、前記電解液拡散係数と放電容量との関係に基づいて、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程と、前記閾値Dthと前記診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める工程と、を備える。
本発明の一実施形態による二次電池の診断プログラムは、診断対象の二次電池の負荷特性を測定して得られるデータに基づいて、所定のモデル式を用いて、前記診断対象の二次電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む、前記診断対象の二次電池の診断時点における特性パラメータを推定する工程と、前記モデル式及び前記推定した特性パラメータに基づいて、電解液拡散係数を変化させたときの放電容量を求め、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程と、前記電解液拡散係数と放電容量との関係に基づいて、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程と、前記閾値Dthと前記診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める工程と、をコンピュータに実行させる。
本発明によれば、二次電池を分解せずに、二次電池の残寿命を従来よりも正確に評価することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態による二次電池の診断方法のフロー図である。 図2は、特性パラメータを推定する工程のより具体的な手順の一例を示すフロー図である。 図3は、電解液拡散係数と放電容量との関係の一例を示すグラフである。 図4は、閾値Dthの決定の仕方の一例を示す図である。 図5は、本発明の第2の実施形態による二次電池の診断方法における、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程のより具体的な手順を示すフロー図である。 図6は、図3で示した電解液拡散係数と放電容量との関係を式(1)でフィッティングしたグラフである。 図7は、本発明の第3の実施形態による二次電池の診断方法のフロー図である。 図8は、本発明の第4の実施形態による二次電池の診断方法のフロー図である。 図9は、診断によって得られたΔDと急落開始サイクル数との関係を示す図である。 図10は、Li析出が起こった二つのセル(セルNo.1及びセルNo.3)のサイクル数と放電容量との関係を示すグラフである。 図11は、サイクル数と電解液拡散係数との関係を示すグラフである。 図12は、図11の推定に用いた劣化セルのサイクル試験の結果を示す図である。 図13は、図11のグラフに、サイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係を追加したグラフである。
本発明者らは、二次電池の残寿命の評価にあたり、電解液拡散係数に着目した。二次電池は、サイクル劣化していく過程で、電解液の液量や液中の塩濃度が減少することによって、いわゆる「液枯れ」と呼ばれる状態に近づいていく。この際、電解液拡散係数の値が低下していくことが分かっている。診断時点における二次電池の電解液拡散係数の値Dnは、負荷特性の測定データと、この分野でよく知られたモデル式とを用いて、非破壊で推定することができる。また、電解液拡散係数と放電容量との関係は、前述のモデル式を用いたシミュレーションによって求めることができる。
電解液拡散係数と放電容量との関係から、二次電池が再使用に適さなくなるときの電解液拡散係数の値Dthを決定し、診断時点での電解液拡散係数の値Dnとの差分ΔD=Dn-Dthを求める。このΔDを、二次電池の残寿命の指標とすることができる。すなわち、ΔDが大きいほど、早期に液枯れを起こす可能性が低く、長期間使用できる可能性が高いと評価できる。反対に、ΔDが小さいほど、早期に液枯れを起こす可能性が高く、長期間使用できる可能性が低いと評価できる。このような液枯れによる放電容量の急落を予測する方法はこれまでに存在しなかった。本手法を用いることで、二次電池の残寿命を従来よりも正確に評価することができる。
[電解液拡散係数の閾値Dthの決定方法について]
本発明者らはさらに、上記の評価に用いる電解液拡散係数の閾値Dthの決定方法についても検討した。閾値Dthは、基本的には、二次電池の用途等に合わせて任意に決定することができる。一方、より確実に再使用できる寿命を評価する、という点についていえば、放電容量が急落し始める初期の段階の電解液拡散係数の値を閾値Dthと決定して、敢えて大きなマージンを確保することは妥当な考え方である。
電解液拡散係数と放電容量との関係は線形ではなく、電解液拡散係数が低下するほど放電容量の減少幅が大きくなるカーブを示す。電解液拡散係数Dと放電容量との関係は、下記の式(1)によって精度よく近似することができる。
放電容量=Amax-B×EXP(Dh/D) (1)
ここで、Amax(最大容量)、B(減少率)及びDh(減少係数)は、上記のシミュレーションによって求めた電解液拡散係数と放電容量との関係をフィッティングして得られるパラメータである。
放電容量が急落し始める初期の段階の電解液拡散係数の値を閾値Dthと決定する場合、閾値Dthを、上記の式(1)のDhの50~60%の値に設定することが考えられる。電解液拡散係数がDhの50~60%の値である時点は、放電容量の絶対値を見れば、まだまだ放電容量を維持しているといえる。一方、その後に放電容量が指数関数的に減少することに鑑みれば、この時点の電解液拡散係数の値を閾値Dthと策定することで、より確実に再使用できる寿命を評価することができる。例えば、診断時に用いたデータの計測誤差や、シミュレーションの誤差等が存在する場合であっても、より確実に再使用できる寿命を評価することができる。
また、放電容量が急落し始めることは、二次電池の内部で電解液の拡散性が不足し、すべての電極内活物質が反応に寄与できなくなり始めていることを示している。すべての電極内活物質が反応に寄与できなくなると、反応が局在化することで、Li析出の可能性が高くなる。すなわち、放電容量が急落し始める時点は、Li析出の可能性が高くなる時点ということができる。そのため、Li析出の可能性を考慮するという観点においても、閾値DthをDhの50~60%の値に決定することが好ましいといえる。
[ΔDとサイクル数との関係について]
二次電池の寿命は、使用条件(例えば、放電レート等)によって大きく変動する。そのため、上記のΔDによる残寿命の評価は、必ずしも、再使用に適さなくなるまでの具体的な充放電サイクル数を予測することまでを意味するものではない。
一方、本発明者らは、NCM、LCO、GC、SiOといった汎用の活物質を用いた二次電池において、これらの二次電池が一定の条件下でサイクル劣化する場合、電解液拡散係数がサイクル数に対して概ねリニアに減少することを見出した。そのため、二次電池が一定の条件下で使用されることが想定される場合には、電解液拡散係数とサイクル数との関係に基づいて、上述した差分ΔDがゼロになるサイクル数を予測することができる。
サイクル劣化の場合、定常劣化としてルート則にのった放電容量の減少が起こるため、その減少と、液拡散性低下による急落減少との両方が起こることを想定する必要がある。これまで、ルート則から外れる「急落」をサイクル「数」まで予測する方法は存在しなかった。本手法を用いることで、二次電池の残寿命を従来よりも正確に評価することができる。
本発明者らはさらに、予測の精度を上げるため、二次電池の劣化状況をより詳細に解析した。
上述した電解液拡散係数の閾値Dthは、診断時点における特性パラメータから電解液拡散係数と放電容量との関係を取得し、これに基づいて決定したものである。これは、電解液拡散係数以外の特性パラメータの変化を電解液拡散係数の変化に丸め込むことによって、一つのパラメータ(電解液拡散係数)によって残寿命を評価できるようにしたものである。このようにしても、二次電池の残寿命をある程度高い精度で評価することができる。もっとも、実際の二次電池では、サイクル劣化に伴って電解液拡散係数以外の特性パラメータも変化するため、診断時点の特性パラメータから求めた閾値Dthと実際の閾値との間にずれが生じている可能性がある。
本発明者らは、一定の条件下でサイクル充放電試験を行った二次電池に対して、サイクル数の異なる複数の時点で負荷特性の測定を行い、これらの負荷特性のデータから、上述した方法と同様に電解液拡散係数の閾値を求めた。その結果、電解液拡散係数の場合と同様に、電解液拡散係数の閾値もサイクル数に対して概ねリニアに変化することを見出した。このことを加味して、電解液拡散係数が閾値を下回る時点を予測することで、放電容量が急落を開始するサイクル数をより高精度に求めることができる。
本発明は、以上の知見に基づいて完成された。以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
[二次電池の診断方法]
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による二次電池の診断方法のフロー図である。この診断方法は、診断対象の二次電池(以下「対象電池」という。)の診断時点における特性パラメータを推定する工程(ステップS1)と、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程(ステップS2)と、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程(ステップS3)と、閾値Dthと診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める工程(ステップS4)と、を備えている。以下、各工程を詳述する。
[特性パラメータを推定する工程]
対象電池の診断時点における特性パラメータを推定する(ステップS1)。より具体的には、対象電池の負荷特性を測定して得られるデータに基づいて、所定のモデル式を用いて、対象電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む、対象電池の診断時点における特性パラメータを推定する。
この工程では、対象電池の負荷特性を測定して得られるデータを所定のモデル式を用いてフィッティングすることによって、対象電池の診断時点における特性パラメータを推定する。この解析(シミュレーション)は、流体解析が可能なコンピュータプログラムによって行うことができ、例えば、シーメンス社製のソフトウェアBattery Design Studioによって行うことができる。
モデル式は、この分野でよく知られたものを用いることができる。モデル式は例えば、Marc Doyle et al., "Modeling of Galvanostatic Charge and Discharge of the Lithium/Polymer/Insertion Cell", J. Electrochem. Soc., vol. 140, No. 6, June (1993)に記載されたものを用いることができる。
対象電池は、例えばリチウムイオン電池である。
対象電池の負荷特性を測定して得られるデータは例えば、対象電池を複数の放電レートで測定した放電カーブである。このデータは、非常に小さい放電レート(例えば、0.02C)で測定した放電カーブを含んでいることが好ましい。また、このデータは、1C以上の放電レートで測定した放電カーブを含んでいることが好ましい。このデータは、3水準以上の放電レートで測定した放電カーブを含んでいることが好ましく、4水準以上の放電レートで測定した放電カーブを含んでいることがより好ましい。対象電池の負荷特性を測定して得られるデータは、対象電池を複数の充電レートで測定した充電カーブであってもよい。
この工程で推定する特性パラメータ(対象電池の診断時点における特性パラメータ)は、少なくとも、対象電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む。特性パラメータは、その他に例えば、正負極活物質の固相内拡散係数、電解液伝導度等を含むことができる。特性パラメータの他の具体例は後述する。
図2は、特性パラメータを推定する工程(ステップS1)のより具体的な手順の一例を示すフロー図である。この例では、特性パラメータを推定する工程(ステップS1)は、対象電池の基本仕様を入力する工程(ステップS1-1)、対象電池の負荷特性を測定して得られるデータを入力する工程(ステップS1-2)、対象電池の静的なパラメータを推定する工程(ステップS1-3)、及び、対象電池の動的なパラメータを推定する工程(ステップS1-4)を含んでいる。
診断対象の二次電池の基本仕様を解析ソフトウェアに入力する(ステップS1-1)。入力する基本仕様は、これらに限定されないが、例えば以下のものを含むことができる。
・正負極の電極組成(構成材料、含有率、粒径等)
・正負極の電極厚み、密度、屈曲率(=多くの場合約1.5)
・正負極集電箔の材料、厚み、電気伝導率
・セパレータの厚み、空隙率
・電解液の組成(構成材料、含有率)
・上記構成材料の熱伝導率、熱容量(材料特有の基礎物性値)
・電極面積
診断は基本的に非破壊で行うため、診断時点での電解液の正確な組成情報は入手できない。そのため、診断対象の二次電池の一般的な情報(あるいは、新品電池の規格情報)を入手し、パラメータとして入力する。実際にシミュレーションを実施する際には何らかの値を入力しておく必要があるものの、電解液の組成そのものはシミュレーションの結果に大きな影響を与えない。電解液の組成情報の位置付けは、本実施形態の診断方法では参考程度である。
正負極の密度も、初度の状態から膨張によって変異していることが想定されるが、診断時点での正確な値は測定できない。そのため、初度の値(規格値等)、又は初度の値から予測される値を入力する。全く不明な場合は一般的な値を入力してもよい。必要に応じて、ステップS1-4で微調整を行ってもよい。
対象電池の負荷特性を測定して得られるデータを解析ソフトウェアに入力する(ステップS1-2)。対象電池の負荷特性を測定して得られるデータは、上述のとおり、対象電池を複数の放電レートで測定した放電カーブ等である。以下、「対象電池の負荷特性を測定して得られるデータ」を「実測データ」と呼ぶ場合がある。
実測データとモデル式とから、対象電池の静的なパラメータを推定する(ステップS1-3)。例えば、非常に小さい放電レートで測定した放電カーブの形状に合うように、対象電池の静的なパラメータを調整する。非常に小さい放電レート(例えば0.02C)で測定した放電カーブは、負荷が接続されていないときの電圧カーブ(OCVカーブ)と概ね一致すると見做すことができる。静的なパラメータは、これらに限定されないが、例えば以下のものを含むことができる。
・正負極活物質の単位重量当たり容量(使用後の電池は放電容量が減少している。)
・正負極活物質の各々の利用率(互いに全領域を使用しているわけではない。)
・対象電池使用範囲の最大電圧及び最小電圧
実測データとモデル式とから、対象電池の動的なパラメータを推定する(ステップS1-4)。例えば、実測データの測定条件と同等の電流値で対象電池を放電させるシミュレーションを実施し、このシミュレーションの結果と実測データとを照らし合わせながら、両者が一致するように動的なパラメータを調整する。このシミュレーションは例えば、上述したBattery Design Studioの放電カーブ予測を用いて行うことができる。動的なパラメータは、これらに限定されないが、例えば以下のものを含むことができる。
・電解液伝導度
・電解液拡散係数
・正負極活物質の固相内拡散係数
・対象電池の熱容量
シミュレーションの際の環境温度は、実測データ取得時の環境温度と一致するように設定することが好ましい。中型以上の製品電池、特に、ハイレートでの使用が想定される製品電池の場合には、発熱の影響を考慮することが好ましい。そのためには、少なくとも1Cで測定を行い、発熱の影響を受けた実測データとのフィッティングを行うことが好ましい。一方、対象電池が机上試験用の小型セル等であれば、発熱の影響は考慮しなくてもよい。
以上の工程により、対象電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む、対象電池の診断時点における特性パラメータを推定することができる。
[電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程]
ステップS1で使用したモデル式、及びステップS1で推定した特性パラメータに基づいて、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める(ステップS2)。より具体的には、ステップS1で推定した特性パラメータのうち、他の特性パラメータを一定として電解液拡散係数のみを変化させて放電シミュレーションを行い、放電容量を求める。放電シミュレーションの際の放電レートや環境温度は、リユース用途に応じて設定することが好ましい。例えば、平均1C程度で使用される用途が想定されるものであれば、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める際の放電レートも1Cを用いる。厳密にすべての環境を揃えることは困難であるため、平均的な値を用いてシミュレーションを行ってもよい。
図3は、電解液拡散係数と放電容量との関係の一例を示すグラフである。この例では、環境温度を45℃とし、放電レートを0.5Cとしたときの放電容量を、電解液拡散係数が4.8×10-6、4.0×10-6、2.95×10-6、1.85×10-6、1.48×10-6、及び1.1×10-6cm/secである場合の各々について求めた。
この例に示すように、一般的に電解液拡散係数が小さくなる程、放電容量は小さくなる。また、電解液拡散係数と放電容量との関係は線形ではなく、電解液拡散係数が低下するほど放電容量の減少幅が大きくなるようなカーブを示す傾向がある。
[電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程]
ステップS2で求めた電解液拡散係数と放電容量との関係に基づいて、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する(ステップS3)。より具体的には、ステップS2で求めた電解液拡散係数と放電容量との関係を参照して、対象電池が再使用に適さなくなるときの電解液拡散係数の値を閾値Dthと決定する。どのような場合に「再使用に適さない」と判断するかは、対象電池のリユース用途によって異なる。そのため、用途に合わせて、「再使用に適さない」と判断する基準を設定する。
例えば、放電容量が所定の許容値以下になったとき、再使用に適さないと判断するようにしてもよい。この場合、放電容量が所定の許容値以下になるときの電解液拡散係数を閾値Dthと決定する。例えば、図3の例において、放電容量の許容値を36.02mAhとした場合、閾値Dthは1.40×10-6cm/secとなる。
あるいは、放電容量が急落し始めたとき、再使用に適さないと判断するようにしてもよい。この場合、放電容量が急落し始めるときの電解液拡散係数を閾値Dthと決定する。例えば、放電容量の傾きが所定の大きさ以上になるときの電解液拡散係数を閾値Dthとしてもよい。また、図4に示すように、放電容量が急落を開始する前後の各カーブの接線が交わる点を閾値Dthとしてもよい。
[閾値Dthと診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める工程]
ステップS3で決定した閾値Dthと、ステップS1で推定した診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める(ステップS4)。例えば、Dn=2.22×10-6cm/sec、Dth=1.40×10-6cm/secであれば、ΔD=Dn-Dth=0.82×10-6cm/secとなる。
このΔDは、対象電池の残寿命の指標とすることができる。すなわち、ΔDが大きいほど対象電池を長期間使用できる可能性が高く、ΔDが小さいほど対象電池を長期間使用できる可能性が低いと評価できる。診断時点の放電容量が同程度であっても、ΔDは異なる場合がある。ΔDを用いることで、診断時点の放電容量の大きさによって残寿命を評価する従来の方法と比較して、対象電池の残寿命をより正確に評価することができる。
既述のとおり、二次電池の寿命は使用条件によって大きく変動するため、「残寿命の正確な評価」は、必ずしも、再使用に適さなくなるまでの具体的な充放電サイクル数を予測することまでを意味するものではない。もっとも、対象電池が一定の条件で使用され続けるような状況を仮定すれば、ΔDから対象電池の残寿命(充放電サイクル数)を予測することも可能である。例えば、予めΔDと残寿命との関係を測定しておき、このΔDと残寿命との関係に基づいて、対象電池の残寿命を予測するようにしてもよい。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態による二次電池の診断方法は、第1の実施形態と比較して、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程(ステップS3)が異なっている。図5は、本実施形態による二次電池の診断方法における、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程(ステップS3)のより具体的な手順を示すフロー図である。本実施形態では、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程(ステップS3)は、電解液拡散係数Dと放電容量との関係を下記の式(1)でフィッティングしてAmax、B及びDhを求める工程(ステップS3-1)と、Dhに基づいて閾値Dthを決定する工程(ステップS3-2)とを含んでいる。
放電容量=Amax-B×EXP(Dh/D) (1)
ステップS2で求めた電解液拡散係数Dと放電容量との関係を、上記の式(1)でフィッティングしてAmax、B及びDhを求める(ステップS3-1)。図6は、図3で示した電解液拡散係数と放電容量との関係を式(1)でフィッティングしたグラフである。図6の破線が、式(1)で計算される放電容量である。この例では、Amax=36.2mAh、B=0.034mAh、Dh=2.51×10-6cm/secとなる。図6に示すように、電解液拡散係数Dと放電容量との関係は、式(1)によって精度よく近似することができる。
ステップS3-1で求めたDhに基づいて、閾値Dthを決定する(ステップS3-2)。上記の式(1)において、Dhは放電容量の急落が開始するときの電解液拡散係数の値を特徴付けるパラメータであり、Dhを基準として閾値Dthを決定することは合理的である。
好ましくは、閾値DthをDhの50~60%の値に決定する。
例えば、図6の例において、閾値DthをDh(=2.51×10-6cm/sec)の56%の値にした場合、閾値Dthは1.40×10-6cm/secとなる。電解液拡散係数が1.40×10-6cm/secのときの放電容量は、式(1)から、約36.0mAhになると予測される。この値は、Amax(=36.2mAh)から1%以内の減少量であり、放電容量の絶対値を見れば、まだまだ放電容量を維持しているといえる。一方、その後に放電容量が指数関数的に減少することに鑑みれば、この時点の電解液拡散係数の値を閾値Dthと策定することで、より確実に再使用できる寿命を評価することができる。例えば、診断時に用いたデータの計測誤差や、シミュレーションの誤差等が存在する場合であっても、より確実に再使用できる寿命を評価することができる。
また、放電容量が急落し始めることは、二次電池の内部で電解液の拡散性が不足し、すべての電極内活物質が反応に寄与できなくなり始めていることを示している。すべての電極内活物質が反応に寄与できなくなると、反応が局在化することで、Li析出の可能性が高くなる。すなわち、放電容量が急落し始める時点は、Li析出の可能性が高くなる時点ということができる。そのため、Li析出の可能性を考慮するという観点においても、閾値DthをDhの50~60%の値に決定することが好ましいといえる。
閾値Dthを大きい値にするほど、対象電池の残寿命を短く評価することになる。そのため、閾値Dthを大きい値にすれば、残寿命を過大に見積もるリスクが減少する反面、残寿命を過小に見積もるリスクが増加する。反対に、閾値Dthを小さい値にすれば、残寿命を過小に見積るリスクが減少する反面、残寿命を過大に見積もるリスクが増加する。閾値Dthは、より好ましくはDhの54~58%の値である。
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態による二次電池の診断方法のフロー図である。この診断方法は、第1の実施形態による二次電池の診断方法が備える工程(図1)に加えて、予め取得しておいたサイクル数と電解液拡散係数との関係に基づいて、差分ΔDに対応するサイクル数を求める工程(ステップS5)をさらに備えている。
[差分ΔDに対応するサイクル数を求める工程]
予め取得しておいたサイクル数と電解液拡散係数との関係に基づいて、差分ΔDに対応するサイクル数を求める(ステップS5)。既述のとおり、二次電池の寿命は使用条件によって大きく変動するため、差分ΔDによる残寿命の評価は、必ずしも、再使用に適さなくなるまでの具体的な充放電サイクル数を予測することまでを意味するものではない。一方、二次電池が一定の条件下でサイクル劣化する場合、電解液拡散係数はサイクル数に対して概ねリニアに減少することが実験的に明らかになっている。そのため、対象電池が一定の条件下で使用されることが想定される場合には、予めサイクル数と電解液拡散係数との関係を取得しておき、サイクル数と電解液拡散係数との関係に基づいて上述した差分ΔDがゼロになるまでのサイクル数を予測することができる。
サイクル数と電解液拡散係数との関係は例えば、次のように取得することができる。
対象電池と同種類の二次電池に対して、一定の条件下で充放電サイクル試験を行って、この二次電池を劣化させる。ここで、「対象電池と同種類の二次電池」とは、正負極の材料や形状、電解液の種類や量等が対象電池と同等である二次電池を意味する。例えば対象電池が製品電池である場合、「対象電池と同種類の二次電池」とは、同一の型番を有する二次電池等を意味する。以下、この「対象電池と同種類の二次電池」を「測定用二次電池」という。
充放電サイクル試験の際の放電レートや環境温度等は、対象電池のリユース用途に応じて設定することが好ましい。例えば、平均1C程度で使用される用途が想定されるものであれば、充放電サイクル試験の際の放電レートも1Cを用いる。厳密にすべての環境を揃えることは困難であるため、平均的な値を用いて充放電サイクル試験を行ってもよい。
サイクル数と電解液拡散係数との関係がリニアであることから、充放電サイクル試験は測定用二次電池が十分に劣化するまで繰り返す必要はなく、適当なサイクル数まで行えばよい。
測定用二次電池に対して、サイクル数の異なる二以上の時点で負荷特性の測定を行い、これらの負荷特性のデータから、各々の時点での測定用二次電池の特性パラメータを推定する。この特性パラメータの推定は、対象電池の特性パラメータを推定する工程(ステップS1)と同様に行うことができる。
上述のとおり、二次電池が一定の条件下でサイクル劣化する場合、電解液拡散係数はサイクル数に対して概ねリニアに減少する。そのため、少なくとも二つの時点での電解液拡散係数が分かれば、サイクル数と電解液拡散係数との関係を取得することができる。例えば、サイクル数がn1のときの電解液拡散係数の値がD1、サイクル数がn2のときの電解液拡散係数の値がD2である場合、サイクル数に対する電解液拡散係数の傾きkは、k=(D2-D1)/(n2-n1)から求めることができる。もちろん、三以上の時点において電解液拡散係数を推定し、より誤差が小さくなるように傾きkを求めてもよい。
なお、二点目以降の特性パラメータを推定する際、一点目で推定した特性パラメータから、放電容量、電解液拡散係数及び電解液伝導度のみを変化させ、他の特性パラメータは一点目で推定した特性パラメータに固定してフィッティングをすることが好ましい。二点目以降の特性パラメータを推定する際にもすべての特性パラメータを変化させてフィッティングをしてもよいが、熟練した技術者以外が行うと、パラメータ数が多くなることで却って不正確なフィッティングとなる可能性があり、サイクル数と電解液拡散係数との関係が却って不正確になる場合がある。
測定用二次電池ではなく、対象電池そのものに対して充放電サイクル試験を行って、サイクル数と電解液拡散係数との関係を求めてもよい。
また、対象電池を使用に供してから所定のサイクル数の充放電を行った後に負荷特性の測定を行い、このときの負荷特性のデータを用いて、サイクル数と電解液拡散係数との関係を更新し、逐次、予測を修正するようにしてもよい。この場合、3Cや5C等の短時間で計測可能な負荷特性のみを取得するようにしてもよい。
取得したサイクル数と電解液拡散係数との関係に基づいて、差分ΔDに対応するサイクル数を求める。より具体的には、差分ΔDが0になるサイクル数を求める。差分ΔDが0になるサイクル数Nは、サイクル数に対する電解液拡散係数の傾きkを用いて、N=ΔD/|k|として求めることができる。これによって、対象電池が再使用に適さなくなる具体的なサイクル数を予測することができる。
[第4の実施形態]
図8は、本発明の第4の実施形態による二次電池の診断方法のフロー図である。この診断方法は、第3の実施形態による二次電池の診断方法が備える工程(図7)に加えて、予め取得しておいたサイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係に基づいて、サイクル数を補正する工程(ステップS6)をさらに備えている。
[サイクル数を補正する工程]
予め取得しておいたサイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係に基づいて、ステップS5で求めたサイクル数(差分ΔDに対応するサイクル数N)を補正する(ステップS6)。既述のとおり、電解液拡散係数の閾値は、サイクル数に対して概ねリニアに変化することが実験的に明らかになっている。このことを加味して、電解液拡散係数が閾値Dthを下回る時点を予測することで、対象電池が再使用に適さなくなる具体的なサイクル数をより高精度に予測することができる。
サイクル数と電解液拡散係数の閾値Dthとの関係は例えば、次のように取得することができる。
サイクル数と電解液拡散係数との関係を求めたときと同様に、測定用二次電池に対して、一定の条件下で充放電サイクル試験を行って、測定用二次電池を劣化させる。測定用二次電池に対して、サイクル数の異なる二以上の時点で負荷特性の測定を行い、これらの負荷特性のデータから、各々の時点での測定用二次電池の特性パラメータを推定する。負荷特性のデータや特性パラメータは、サイクル数と電解液拡散係数との関係を求めたときに取得したものを用いてもよい。
これらの特性パラメータを使用して、各々の時点において、電解液拡散係数と放電容量との関係を求め、さらに、各々の時点での電解液拡散係数の閾値を決定する。これらはそれぞれ、対象電池の電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程(ステップS2)及び対象電池の電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程(ステップS3)と同様に行うことができる。
二次電池が一定の条件下でサイクル劣化する場合、電解液拡散係数の閾値はサイクル数に対して概ねリニアに変化する。そのため、少なくとも二つの時点での電解液拡散係数の閾値が分かれば、サイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係を取得することができる。例えば、サイクル数がn1のときの電解液拡散係数の閾値がDth1、サイクル数がn2のときの電解液拡散係数の閾値がDth2である場合、サイクル数に対する電解液拡散係数の閾値の傾きkthは、kth=(Dth2-Dth1)/(n2-n1)から求めることができる。もちろん、三以上の時点において電解液拡散係数の閾値を決定し、より誤差が小さくなるように傾きkthを求めてもよい。
サイクル数と電解液拡散係数との関係を求めたときと同様に、測定用二次電池ではなく、対象電池そのものに対して充放電サイクル試験を行って、サイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係を求めてもよい。
取得したサイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係に基づいて、ステップS5で求めたサイクル数を補正する。電解液拡散係数がサイクル数に対して傾きkで変化する場合、診断時点からNサイクル後の電解液拡散係数D’は、D’=Dn+k×Nとなる。同様に電解液拡散係数の閾値がサイクル数に対して傾きkthで変化する場合、診断時点からNサイクル後の閾値Dth’は、Dth’=Dth+kth×Nとなる。D’とDth’とが等しくなるサイクル数Nは、N=(Dn-Dth)/(kth-k)として求めることができる。これによって、対象電池が再使用に適さなくなる具体的なサイクル数をより高精度に予測することができる。
[二次電池の診断プログラム等]
上述した二次電池の診断方法は、コンピュータプログラムとしても実現可能である。本発明の一実施形態による二次電池の診断プログラムは、診断対象の二次電池の負荷特性を測定して得られるデータに基づいて、所定のモデル式を用いて、診断対象の二次電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む、診断対象の二次電池の診断時点における特性パラメータを推定する工程と、モデル式及び推定した特性パラメータに基づいて、電解液拡散係数を変化させたときの放電容量を求め、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程と、電解液拡散係数と放電容量との関係に基づいて、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程と、閾値Dthと診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める工程と、をコンピュータに実行させる。本実施形態によっても、診断時点の放電容量の大きさによって残寿命を評価する従来の方法と比較して、対象電池の残寿命をより正確に評価することができる。
上記では、第1の実施形態による二次電池の診断方法に対応する態様のコンピュータプログラムを説明したが、第2~第4の実施形態による二次電池の診断方法も、コンピュータプログラムとして実現可能である。
上述した二次電池の電極の診断方法は、上記のコンピュータプログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体としても実現可能である。
上述した二次電池の診断方法は、コンピュータシステムとしても実現可能である。本発明の一実施形態による二次電池の診断システムは、メモリとプロセッサとを備え、プロセッサは、メモリのプログラムにしたがって、診断対象の二次電池の負荷特性を測定して得られるデータに基づいて、所定のモデル式を用いて、診断対象の二次電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む、診断対象の二次電池の診断時点における特性パラメータを推定する工程と、モデル式及び推定した特性パラメータに基づいて、電解液拡散係数を変化させたときの放電容量を求め、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程と、電解液拡散係数と放電容量との関係に基づいて、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程と、閾値Dthと診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める工程と、を実行する。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
定格容量が5Ahの中型ラミネート型セル、及び定格容量が36mAhの小型ラミネート型セルをそれぞれ複数作製した。
[中型ラミネート型セル]
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO:93質量部、導電助剤であるカーボンブラック:3質量部、及びバインダであるPVDF:4質量部を、溶媒であるNMPを用いて均一になるように混合して正極合剤含有スラリーを調製した。この正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥した後、ローラープレス機により加圧成形し、正極合剤含有スラリーが塗布されていない正極集電体の一部がタブ部となるよう打ち抜くことにより、正極を作製した。
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛:97.5質量部と、バインダであるカルボキシメチルセルロース:1.5質量部と、スチレンブタジエンゴム:1質量部とを混合し、適量の水を添加して十分に混合し、負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを、厚みが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥した後、ローラープレス機により加圧成形し、負極合剤含有スラリーが塗布されていない負極集電体の一部がタブ部となるよう打ち抜くことにより、負極を作製した。
<電池の作製>
前記正極7枚と、前記負極8枚を、ポリエチレン層を中間層とし、2つのポリプロピレン層を外層とした三層構造の18μmの厚みを有するポリオレフィン微多孔フィルムセパレータを介して交互に積層し、積層電極体を形成した。
次に、積層電極体の正極のタブ部同士、負極のタブ部同士を溶接し、それぞれにリードを接続した後、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとを1:1:1の体積比で混合した溶液にLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた後、さらにビニレンカーボネートを1質量%となる量で溶解させて調製した非水電解液とともにアルミニウムラミネートフィルムからなる外装体内に封入し、定格容量が5Ahの非水電解液二次電池を作製した。
[小型ラミネート型セル]
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO:94質量部、導電助剤であるカーボンブラック:4質量部、及びバインダであるPVDF:2質量部を、溶媒であるNMPを用いて均一になるように混合して正極合剤含有スラリーを調製した。この正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥した後、ローラープレス機により加圧成形し、正極合剤含有スラリーが塗布されていない正極集電体の一部がタブ部となるよう打ち抜くことにより、正極を作製した。
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛:94.5質量部及び表面を炭素で被覆したSiO粒子(D50:5.0μm)3質量部と、バインダであるカルボキシメチルセルロース:1.5質量部及びスチレンブタジエンゴム:1質量部とを混合し、適量の水を添加して十分に混合し、負極合剤含有スラリーを調製した。この負極合剤含有スラリーを、厚みが10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥した後、ローラープレス機により加圧成形し、負極合剤含有スラリーが塗布されていない負極集電体の一部がタブ部となるよう打ち抜くことにより、負極を作製した。
<電池の作製>
前記正極と、前記負極を、ポリエチレン層を中間層とし、2つのポリプロピレン層を外層とした三層構造の12μmの厚みを有するポリオレフィン微多孔フィルムセパレータを介して積層し、積層電極体を形成した。
次に、積層電極体の正極のタブ部及び負極のタブ部に、それぞれリードを接続した後、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを3:7の体積比で混合した溶液にLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた後、さらにビニレンカーボネートを1質量%となる量で溶解させて調製した非水電解液とともにアルミニウムラミネートフィルムからなる外装体内に封入し、定格容量が36mAhの非水電解液二次電池を作製した。
[劣化セルの作製]
定格容量が5Ahの中型ラミネート型セルに対して、充放電レートや環境温度等が異なる複数の条件で充放電サイクル試験を行い、放電容量を4.8Ahまで低下させた劣化セルを複数作製した。定格容量が36mAhの小型ラミネート型セルに対しても同様に、充放電レートや環境温度等が異なる複数の条件で充放電サイクル試験を行い、放電容量を35mAhまで低下させた劣化セルを複数作製した。
[負荷特性の測定]
これらの劣化セルの負荷特性を測定した。具体的には、0.02C、0.2C、0.5C、及び1Cの放電レートで放電カーブを測定した。
[二次電池の診断]
これらの劣化セルを対象電池として、実施形態で説明した二次電池の診断方法を実施した。解析(シミュレーション)は、シーメンス社製のソフトウェアBattery Design Studioによって行った。基本仕様のうち、溶媒比率や塩濃度は作製時と同じ値を入力した(診断時点での値は測定できないため。)。
診断時点における特性パラメータを推定した後、推定した特性パラメータに基づいて、電解液拡散係数を変化させながら、環境温度45℃、放電レート0.5Cでの放電容量を求め、電解液拡散係数と放電容量との関係を取得した。放電容量が急落を開始する前後の各カーブの接線が交わる点を閾値Dthとして、閾値Dthと診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求めた。
[残寿命の測定]
これらの劣化セルに対して、同等の条件で充放電サイクル試験を実施し、放電容量が急落するまでの充放電サイクル数(急落開始サイクル数)を測定した。診断によって得られたΔDと急落開始サイクル数との関係を図9に示す。なお、図9では、充放電サイクル試験で後述するLi析出が起こったセルのデータは除いている。
図9に示すように、診断時点の放電容量が同等(4.8Ah又は35mAh)であっても、ΔDには差異が認められた。また、ΔDに応じて急落開始サイクル数も変化していることが分かり、この診断方法の妥当性が確認できた。
[式(1)を用いた閾値Dthの設定]
図10は、Li析出が起こった二つのセル(セルNo.1及びセルNo.3)のサイクル数と放電容量との関係を示すグラフである。実線は実測データであり、破線はシミュレーションによる予測値である。
シミュレーションによる予測値は、具体的には次のように算出した。
充放電サイクル試験の途中で劣化セルの負荷特性を測定し、Dnを推定したのと同じ方法によって充放電サイクル試験の途中における電解液拡散係数Dmを推定した。電解液拡散係数がサイクル数に対してリニアに減少すると仮定し、Nサイクル後の電解液拡散係数DNを下記の式(2)で表されるものとした。式(2)から得られるDNを式(1)のDに代入して、Nサイクル後の放電容量C(N)を求めた。Nサイクル後の放電容量C(N)を初度の放電容量C(0)で除算し、Nサイクル後の容量維持率q(N)=C(N)/C(0)を求めた。
DN=(Dm-Dn)/m×N+Dn (2)
ここで、mは、Dmを推定したときのサイクル数である。
サイクル劣化の場合、液拡散性低下による放電容量の減少に加えて、定常劣化としてルート則に則った放電容量の減少が起こる。実測データのうちの放電容量の急落が起こる前のデータを下記の式(3)でフィッティングして、ルート則に則った場合のNサイクル後の放電容量R(N)を求めた。この放電容量R(N)に、上述した容量維持率q(N)を乗じたものをシミュレーションによる予測値とした。
R(N)=C(0)-r×N1/2 (3)
ここで、rはフィッティングによって求められるパラメータである。
シミュレーションによる予測値は、Li析出が起こらなかった場合の放電容量の変化に相当する。実測データでは、Li析出によって、予測値よりも早い時点で放電容量の急落が起こっている。
図10の三角のマークは、電解液拡散係数がDhの56%の値になる時点を示している。実測データでは、電解液拡散係数がDhの56%の値になる時点を過ぎた後、さほど間を置かずに放電容量が安定しなくなり、Li析出が起こり始めている。
Li析出が起こらないセルであれば、より長く使用可能ではあるが、Li析出の可能性までを考慮するのであれば、電解液拡散係数の閾値DthをDhの50~60%の値に設定することが望ましいといえる。
[サイクル数と電解液拡散係数との関係]
放電容量が4.8Ahの劣化セルについて、充放電サイクル試験の途中で100サイクル毎に負荷特性を測定し、Dnを推定したのと同じ方法によって各時点における電解液拡散係数を推定した。図11は、サイクル数と電解液拡散係数との関係を示すグラフである。一点鎖線は電解液拡散係数の閾値Dthを示す。
図11に示すように、電解液拡散係数は、サイクル数に対して概ねリニアに減少していることが分かる。また、図11では、700サイクルの時点でΔD=0.3×10-6cm/secしかなく、この後、電解液拡散係数の変化を外挿すると、約800サイクルの当たりから急落し始める、すなわちルート則から外れ始めると予測できる。
図12は、図11の推定に用いた劣化セルのサイクル試験の結果を示す図である。実線は実測値であり、破線はルート則にのったサイクルカーブを示す線である。図12に示すように、約900サイクル以降からルート則からの解離が始まり、やや予測誤差はあるものの、実際に急落減少が起こることが確認された。
従来、ルート則から外れる「急落」を、サイクル「数」まで予測するような方法はなく、本手法は全く新しい手法である。さらに、予測されたサイクル数は、約1000サイクルの最終寿命に対して100サイクル程度しか解離しておらず、概ね予測が妥当なものであるといえる。
[サイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係]
次に、400サイクル及び700サイクルの時点で推定した特性パラメータから電解液拡散係数と放電容量との関係を求め、さらに400サイクル及び700サイクルの時点での電解液拡散係数の閾値を求めた。図13は、図11のグラフに、サイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係を追加したグラフである。図中の白抜きのマークが電解液拡散係数の閾値である。
図13に示すように、電解液拡散係数の閾値も、電解液拡散係数と同様に、サイクル数に対して概ねリニアに減少していることが分かる。電解液拡散係数の変化を外挿した直線と、電解液拡散係数の閾値の変化を外挿した直線とは、約900サイクルの時点で交わると予測できる。これは、図12でルート則から外れ始めるサイクル数とよく一致している。この予測結果は、実測のサイクル容量減少を非常に精度よく再現できていることが確認され、有効であると認められる。
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。

Claims (15)

  1. 診断対象の二次電池の負荷特性を測定して得られるデータに基づいて、所定のモデル式を用いて、前記診断対象の二次電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む、前記診断対象の二次電池の診断時点における特性パラメータを推定する工程と、
    前記モデル式及び前記推定した特性パラメータに基づいて、電解液拡散係数を変化させたときの放電容量を求め、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程と、
    前記電解液拡散係数と放電容量との関係に基づいて、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程と、
    前記閾値Dthと前記診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める工程と、を備える、二次電池の診断方法。
  2. 請求項1に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記閾値Dthを決定する工程は、放電容量が所定の許容値以下になるときの電解液拡散係数を前記閾値Dthと決定する工程である、二次電池の診断方法。
  3. 請求項1に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記閾値Dthを決定する工程は、放電容量が急落し始めるときの電解液拡散係数を前記閾値Dthと決定する工程である、二次電池の診断方法。
  4. 請求項1に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記閾値Dthを決定する工程は、
    前記電解液拡散係数Dと放電容量との関係を下記の式(1)でフィッティングしてAmax、B及びDhを求める工程と、
    前記Dhに基づいて前記閾値Dthを決定する工程と、を含む、二次電池の診断方法。
    放電容量=Amax-B×EXP(Dh/D) (1)
  5. 請求項4に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記閾値Dthを前記Dhの50~60%の値に設定する、二次電池の診断方法。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の診断方法であって、
    予め測定した前記差分ΔDと残寿命との関係に基づいて、前記診断対象の二次電池の残寿命を予測する工程をさらに備える、二次電池の診断方法。
  7. 請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の診断方法であって、
    予め取得しておいたサイクル数と電解液拡散係数との関係に基づいて、前記差分ΔDに対応するサイクル数を求める工程をさらに備える、二次電池の診断方法。
  8. 請求項7に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記サイクル数と電解液拡散係数との関係を直線で近似して、前記差分ΔDに対応するサイクル数を求める、二次電池の診断方法。
  9. 請求項7に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記サイクル数と電解液拡散係数との関係は、前記診断対象の二次電池と同種類の二次電池について得られたデータから取得したものである、二次電池の診断方法。
  10. 請求項7に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記サイクル数と電解液拡散係数との関係は、前記診断対象の二次電池について得られたデータから取得したものである、二次電池の診断方法。
  11. 請求項7に記載の二次電池の診断方法であって、
    予め取得しておいたサイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係に基づいて、前記差分ΔDに対応するサイクル数を補正する工程をさらに備える、二次電池の診断方法。
  12. 請求項11に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記サイクル数と電解液拡散係数の閾値との関係を直線で近似して、前記差分ΔDに対応するサイクル数を補正する、二次電池の診断方法。
  13. 請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記負荷特性を測定して得られるデータは、前記診断対象の二次電池を複数の放電レートで測定した放電カーブを含む、二次電池の診断方法。
  14. 請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の診断方法であって、
    前記診断対象の二次電池は、リチウムイオン電池である、二次電池の診断方法。
  15. 診断対象の二次電池の負荷特性を測定して得られるデータに基づいて、所定のモデル式を用いて、前記診断対象の二次電池の診断時点における電解液拡散係数Dnを含む、前記診断対象の二次電池の診断時点における特性パラメータを推定する工程と、
    前記モデル式及び前記推定した特性パラメータに基づいて、電解液拡散係数を変化させたときの放電容量を求め、電解液拡散係数と放電容量との関係を求める工程と、
    前記電解液拡散係数と放電容量との関係に基づいて、電解液拡散係数の閾値Dthを決定する工程と、
    前記閾値Dthと前記診断時点における電解液拡散係数Dnとの差分ΔDを求める工程と、をコンピュータに実行させる、二次電池の診断プログラム。
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