JP7704066B2 - 黒鉛含有耐火物 - Google Patents
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Description
これらの精錬容器や搬送容器で内張りに使用される耐火物は、装入物による機械的衝撃、溶鋼や溶融スラグの撹拌による摩耗、溶融スラグによるスラグ浸食、操業中の急激な温度変化などが生じる非常に過酷な条件下で使用される。このため、安定した操業を行うためにも、そのような過酷な条件に耐えられる耐用性の高い耐火物を使用する必要がある。
また、特許文献2には、耐火物の表面の一部または全体に、耐火物よりも引張強度が高い繊維からなる一方向の束あるいは織物を耐熱性の接着剤で接着させることが記載されており、この技術により、従来よりも耐火物を高強度のまま長時間保持できるとともに、耐火物の引張強度を改善でき、亀裂発生や破壊を抑制でき、耐火物の寿命や信頼性を向上できるとしている。具体的には、鉄鋼の連続鋳造工程に使用されるロングノズル、浸漬ノズル、スライディングノズルといった内部を溶鋼が流通するノズルに対し、その外面を拘束する方向に繊維の束あるいは織物をフェノール樹脂により接着し、その表面に酸化防止下地層や酸化防止層を配置することが記載されている。これらのノズルでは、内部を溶鋼が流通するときに外面側へ熱膨張するのを前記繊維の束や織物で拘束し、ノズルを構成する耐火物に圧縮応力を生じさせ、亀裂の発生や破壊を抑制しているものと考えられる。
また、特許文献1に記載の技術は、高強度繊維束を樹脂やピッチなどで固化させた棒状または網状の固化体を耐火物内に配置するものであるため、炭素繊維束の単位面積当たりの重量が大きい場合には、耐火物原料を圧縮成型や流し込みにより成型または施工する際に、固化体が抵抗となって耐火物原料の均一な圧縮や流入が妨げられる結果、耐火物の強度や破壊エネルギーが低下し、耐火物の耐用性が低下するという問題がある。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
炭素繊維織物(B)は1m2あたりの質量が40~1300gであることを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[2]上記[1]の黒鉛含有耐火物において、炭素繊維織物(B)は、炭素繊維束(b)が耐火物本体(A)を構成する骨材の最大粒径超の間隔で2方向以上に編み込まれた織物であり、
炭素繊維束(b)は、繊維径が1~45μmの炭素繊維を束に纏めたものであって、1束あたりの炭素繊維の本数が1000~300000本であり、
耐火物稼働面と平行な耐火物断面における、炭素繊維織物(B)を構成する炭素繊維の存在密度が10~2000本/mm2であることを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの黒鉛含有耐火物において、炭素繊維織物(B)は、同じ方向に編み込まれた炭素繊維束(b)どうしの間隔が3mm超であることを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[5]上記[1]~[4]のいずれかの黒鉛含有耐火物において、炭素繊維織物(B)が1枚または積層した2枚以上の織物で構成されることを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[6]上記[1]~[5]のいずれかの黒鉛含有耐火物において、耐火物本体(A)の内部に、炭素繊維織物(B)が1層又は間隔をおいて2層以上埋設されることを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[8]上記[1]~[7]のいずれかの黒鉛含有耐火物において、炭素繊維織物(B)が耐火物本体(A)に対して接着剤成分を介して密着し、該接着剤成分は、有機樹脂、無機ゾル由来の無機微粒子、タールまたは/およびピッチ由来の有機物、有機糊由来の有機物の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[10]上記[1]~[8]のいずれかの黒鉛含有耐火物において、耐火物本体(A)は、アルミナ濃度が70質量%以上のアルミナ原料を10~95質量%含有することを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[11]上記[1]~[8]、[10]のいずれかの黒鉛含有耐火物において、耐火物本体(A)は、シリカ原料を1~50質量%含有することを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[12]上記[10]または[11]の黒鉛含有耐火物において、耐火物本体(A)は、炭化珪素濃度が80質量%以上の炭化珪素原料を1質量%以上含有することを特徴とする黒鉛含有耐火物。
[13]上記[1]~[12]のいずれかの黒鉛含有耐火物において、耐火物本体(A)は、使用済み耐火物を粉砕した耐火物屑を10~90質量%含有することを特徴とする黒鉛含有耐火物。
また、図2は、耐火物本体Aの内部に埋設される炭素繊維織物Bの一実施形態を模式的に示す平面図であり、この実施形態の炭素繊維織物Bは、炭素繊維束bを2方向(直交する2方向)に配向させて編み込んだものである。
炭素繊維織物Bは、炭素繊維束bを2方向以上に配向させて編み込んだものであり、その配向数は任意である。なお、炭素繊維束bの配向方向が1方向の場合には炭素繊維織物を形成できないため、炭素繊維織物を埋設した黒鉛含有耐火物が得られない。
炭素繊維織物Bは1m2あたりの質量が40~1300gである。ここで、1m2あたりの質量とは、後述するように炭素繊維織物Bが積層した複数枚の織物からなる場合には、積層した複数枚の合計の質量とする。炭素繊維織物Bの1m2あたりの質量が40g未満では、炭素繊維織物が薄過ぎるため亀裂進展抑制効果は向上せず、破壊エネルギーが上昇しない。一方、炭素繊維織物Bの1m2あたりの質量が1300gを超えると、炭素繊維織物が厚過ぎるため耐火物を圧縮成形する際に、スプリングバックと呼ばれる圧縮後の反発が発生したり、圧縮力の伝達が不均一になることにより、耐火物に内部欠陥が生じたり、性状が不均一になるなどの不良が生じて耐用性が低下する。また、圧縮成形ではなく流し込みにより耐火物を成形する場合でも、均一な流入が妨げられたり、炭素繊維織物に内包または付随する空隙が残存したりして耐用性が低下する。
なお、耐火物本体Aの内部に埋設される炭素繊維織物Bは、その端部が耐火物本体Aの表面に露出していてもよいし、露出していなくてもよい。また、後者の場合、耐火物の稼動面x側においては、炭素繊維織物Bの端部と稼動面x間の距離はなるべく小さいことが好ましいが、反稼動面y側においては、炭素繊維織物Bの端部と反稼動面y間の距離はある程度大きくてもよい。これは、使用終了時にも残存することが想定される耐火物の反稼働面y側の部分には、炭素繊維織物Bが埋設されている必要がないからである。
また、炭素繊維束bを構成する炭素繊維の繊維径が1μm未満、炭素繊維束bの1束あたりの炭素繊維の本数が1000本未満では、炭素繊維織物Bの1m2あたりの質量が40g未満となりやすく、一方、炭素繊維束bを構成する炭素繊維の繊維径が45μm超、炭素繊維束bの1束あたりの炭素繊維の本数が300000本超では、炭素繊維織物Bの1m2あたりの質量が1300g超となりやすい。
炭素繊維の存在密度(埋設密度)が10本/mm2未満では、耐火物原料と炭素繊維束bの接触面積が少な過ぎるため、耐火物原料と炭素繊維織物Bの密着性も高まらず、破壊エネルギーの大幅な上昇は望めない。また、炭素繊維の存在密度(埋設密度)が2000本/mm2超では、耐火物原料と炭素繊維束bの接触面積が大き過ぎるため、成形時に炭素繊維束bがスプリングバックを起こし易く、成形に支障をきたすおそれがある。
炭素繊維織物Bは1枚または積層した2枚以上の織物で構成され、炭素繊維織物Bを積層した2枚以上の織物で構成する場合の織物の枚数は任意である。また、炭素繊維織物Bは、耐火物本体Aの内部に1層又は間隔をおいて2層以上埋設することができ、2層以上埋設する場合の層数は任意である。炭素繊維織物Bの1層あたりの織物の枚数を増やしたり、炭素繊維織物Bの層数を増やすことにより、耐火物の亀裂の進展を抑制する効果がより向上する。
また、炭素繊維織物Bを耐火物本体Aの内部に2層以上埋設する場合、炭素繊維織物Bの層どうしの間隔が狭すぎると、成形時に炭素繊維織物Bを構成する炭素繊維束bがスプリングバックを生じ、成形体に亀裂が生じやすくなるので、炭素繊維束bのスプリングバックを抑えるために、炭素繊維織物Bの層どうしの間隔は10mm以上であることが好ましい。
したがって、製造時に炭素繊維織物に付着させる接着剤(粘着性付与剤)としては、例えば、有機樹脂(溶液)、無機ゾル、ピッチ、タール、有機糊などが挙げられる。具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、アルミナゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル、クロミアゾル、チタニアゾル、マグネシアゾル、カルシアゾル、イットリアゾル、ピッチ、タール、でんぷん糊などが挙げられ、これらの中から選ばれる1種以上を用いることができる。
耐火物本体Aの黒鉛含有量は1~80質量%であり、黒鉛含有量が1質量%未満では、熱応力による割れの発生を抑制できず、耐割れ性が大幅に低下してしまう。一方、黒鉛含有量が80質量%を超えると、耐火物本体Aの材質によって、耐溶損性、耐割れ性、破壊エネルギーといった特性に悪影響がでる場合がある。黒鉛(カーボン原料)としては、一般に鱗状黒鉛などが用いられる。
一般に、精錬工程において使用される転炉の内張り(羽口部を含む)には、マグネシアおよびカーボンを主成分とする耐火物であるマグネシア・カーボン質耐火物(マグネシア原料を骨材とした黒鉛含有耐火物)が使用される。耐火物本体Aがマグネシア・カーボン質耐火物の場合、耐火物本体Aは、マグネシア濃度が90質量%以上の高純度のマグネシア原料を20~99質量%含有することが好ましく、これにより熱スポーリングによる割れが抑制され、且つ転炉スラグの浸食にも耐えられる耐火物とすることができる。マグネシア原料の含有量が99質量%超では、割れを抑制できず耐割れ性が大幅に低下する。一方、マグネシア原料の含有量が20質量%未満では、転炉スラグの浸食に耐えられず、耐溶損性が大幅に低下する。
また、耐火物本体Aがアルミナ・炭化珪素・シリカ・カーボン質耐火物の場合、シリカ原料を1~50質量%含有することが好ましく、これにより高耐割れ性と高耐溶損性を両立できる。シリカ原料の含有量が1質量%未満では、膨張量が少なく微細亀裂が生成しないため、熱衝撃破壊抵抗も大きくならず耐割れ性が低下しやすい。一方、シリカ原料の含有量が50質量%を超えると耐溶損性が大幅に劣化する。
黒鉛含有耐火物は、製鉄容器からの放熱量を抑制しながら、耐用性を高くすることを目的として、さらに金属粉末原料を含有(配合)することができる。金属粉末原料としては、例えば、金属Si、金属Al、金属Al-Si、Al4SiC4、B4Cなどが挙げられ、これらの1種以上を含有させることができる。金属粉末原料の含有量は特に規定しないが、通常、1~5質量%程度が好ましい。金属粉末原料の含有量(配合量)が1質量%未満では、金属粉末原料を配合することによる耐用性の向上効果が十分に得られず、一方、5質量%を超えると、強度が高くなりすぎるため、実機で使用した際に亀裂が発生し易くなって煉瓦が割れ易くなり、実機での使用回数が低下するおそれがある。
このように耐火物屑を含有する場合、耐火物原料の残部は未使用の原料(バージン原料)である。
本発明の黒鉛含有耐火物には、プレス成形を経て製造される、いわゆる耐火物れんがのほかに、後述するように、鍋やタンディッシュなどの稼働面である施工部位において流し込みにより成形され、そのまま乾燥・固化させる耐火物なども含まれる。
図3は、本発明の黒鉛含有耐火物の製造工程の一例を示している。この製造工程では、耐火物原料に適量のバインダーを加えて混練し、その混練物を炭素繊維織物とともに型に充填してプレス成形を行い、耐火物成形品を得る。バインダーとしては、例えば、フェノールレジン(主剤)+ヘキサミン(硬化剤)、カーボンボンド、セラミックボンドなどが用いられる。
耐火物原料の混練物を炭素繊維織物とともに型に充填する方法としては、例えば、一定量の混練物を型に装入した後に炭素繊維織物を装入し、さらに一定量の混練物を型に装入する方法がある。したがって、この方法で図1のような複数層の炭素繊維織物が埋設された黒鉛含有耐火物を製造するには、型に一定量の混練物を装入した後、炭素繊維織物の装入とこれに続く一定量の混練物の装入を繰り返し行う。
また、炭素繊維織物に接着剤(粘着性付与剤)を付着させる場合には、例えば、接着剤を構成する樹脂(樹脂溶液)やゾルなどに炭素繊維織物を浸漬したり、接着剤を構成する樹脂(樹脂溶液)やゾルなどを炭素繊維織物に散布することにより、接着剤を炭素繊維織物に付着させ、この接着剤が付着したままの炭素繊維織物を、上記のような要領で混練物とともに型に装入する。
また、成形工程は、プレス成形以外の成形法で行ってもよい。プレス成形以外の成形法としては、例えば、流し込みによる成形があり、その1つに、鍋やタンディッシュなどの稼働面である施工部位に内枠を設置し、この内枠に不定形耐火物(耐火物原料)を流し込み、乾燥(乾燥工程)・固化させた後に内枠を除去する方法がある。また、施工部位に流し込むのではなく、耐火物形状の型枠内に不定形耐火物(耐火物原料)を流し込み、乾燥(乾燥工程)・固化させた後に型枠から取り出した耐火物を、施工部位まで運搬して施工する方法もあり、この方法は施工部位への耐火物施工の手間はかかるものの、型枠内に不定形耐火物を流し込む際の炭素繊維織物の埋設や固化時の温度管理が容易であるので望ましい。これらの流し込みによる成形法では、上述した内枠や型枠内に炭素繊維織物Bを配置した上で、内枠や型枠内に不定形耐火物(耐火物原料)を流し込み、乾燥(乾燥工程)・固化させる。
また、上述したような流し込みによる成形で得られる耐火物成形体については、施工部位に設置された内枠や他の場所に設置された型枠に保持された耐火物成形体を加熱バーナなどの加熱手段で加熱することにより、乾燥・固化させる。その後、内枠の除去や型枠からの取り出しが行われる。
本発明の黒鉛含有耐火物は、種々の設備や容器の耐火物として使用できるが、なかでも製鉄所内で使用される精錬容器や搬送容器の内張り耐火物として好適である。特に、非常に過酷な使用環境である転炉の内張り耐火物として好適であり、そのなかでも羽口部を構成する羽口煉瓦として特に好適である。
製造された黒鉛含有耐火物について、曲げ強度、破壊エネルギー、耐溶損性、耐割れ性を、それぞれ以下の方法で評価した。
曲げ強度については、図4(試験方法)に示すとおり、耐火物本体の内部に、その長手方向に沿って単層または複数層の炭素繊維織物を埋設した試験片(試験片サイズ:40mm×80mm×160mm)を用い、中心間距離を100mm、荷重印加速度を0.5mm/minとし、JIS R2213に記載された3点曲げ試験方法に準拠して測定した。
耐溶損性については、図6(試験方法)に示すとおり、高周波誘導炉を用いた内張り分け法で溶損量を測定し、その溶損量に基づき評価した。内張り分け法による試験では、試験温度を1650℃、温度保持時間を4時間として表2に示す組成の合成スラグを1時間毎に投入し、冷却後に稼働面の溶損量を測定した。そして、その溶損量から表1中の発明配合例1-3の溶損量を100とした溶損指数を求めた。試験片としては、図6(C)に示すように、スラグや溶鋼に接する面(耐火物稼動面)に垂直に炭素繊維織物が埋設されたものを用いた。なお、図6(A)は試験の実施状況を試験炉および筒状サンプルを縦断面した状態で模式的に示す説明図、図6(B)は図6(A)に示される筒状サンプルの平面図、図6(C)は図6(A),(B)に示す筒状サンプルを構成する試験片の1つを示す斜視図である。
表1の発明配合例1-1~発明配合例1-7に示す通り、黒鉛含有量を1~80質量%とした場合には耐溶損性と耐割れ性は良好であるが、比較配合例1-1に示す通り、黒鉛含有量を1質量%未満とした場合には耐割れ性が大幅に低下している。また、比較配合例1-2に示す通り、黒鉛含有量を80質量%超とした場合には耐溶損性が大幅に低下している。
また、発明配合例1-1~発明配合例1-7に示す通り、マグネシア・カーボン質原料の配合において、マグネシア原料(表1の場合にはマグネシア濃度100質量%)の含有量が20~99質量%であれば、耐溶損性と耐割れ性は良好である。以上のことから、黒鉛含有耐火物の耐溶損性と耐割れ性を両立させるためには、黒鉛含有量は1~80質量%とする必要があり、また、マグネシア・カーボン質原料の場合には、マグネシア原料の含有量を20~99質量%とすることが適当であることが分かる。
まず、表3の実施例は、耐火物本体の内部に埋設される炭素繊維織物について、炭素繊維束を構成する炭素繊維の繊維径、炭素繊維束の1束あたりの炭素繊維数(本数)、炭素繊維織物の1m2あたりの質量、耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度(埋設密度)が黒鉛含有耐火物の曲げ強度および破壊エネルギー・耐割れ性に及ぼす影響を調べたものである。
発明例2-1~発明例2-7が示す通り、炭素繊維束を構成する炭素繊維の繊維径が1~45μm、炭素繊維束の1束あたりの炭素繊維数(本数)が1000~300000本の場合に、炭素繊維織物1m2あたりの質量が40~1300g、耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が10~2000本/mm2となり、高い曲げ強度および破壊エネルギー・耐割れ性が得られている。
また、比較例2-2が示す通り、炭素繊維束を構成する炭素繊維の繊維径が45μm超、炭素繊維束の1束あたりの炭素繊維数(本数)が300000本超の場合、炭素繊維織物1m2あたりの質量が1300g超、耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が2000本/mm2超となり、炭素繊維織物を埋設させた状態で耐火物原料(マグネシア・カーボン質原料)を成形する際に、成形体の側面に亀裂が発生して炭素繊維織物がはみ出し、成形が困難であった。この要因としては、炭素繊維織物を構成する炭素繊維束が太過ぎたために、炭素繊維織物が分厚くなり、炭素繊維織物と耐火物原料との絡みが悪く、成形する際にスプリングバックが発生し易いことが挙げられる。さらに、比較例2-3が示す通り、炭素繊維束を1方向に配向させただけでは炭素繊維織物を形成することができないため、炭素繊維織物を埋設した黒鉛含有耐火物の製造は不可能であった。
この実施例では、炭素繊維の繊維径を7μm、1束あたりの炭素繊維数(本数)を75000本とした炭素繊維束が、それぞれ3mm、5mm、10mm、20mm、30mmの間隔で編み込まれた1m2あたりの質量が110~1120gの炭素繊維織物を用意し、これを耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が200~2000本/mm2となるようにマグネシア・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に埋設した。マグネシア・カーボン質耐火物は、表1の発明配合例1-3の組成を有するものを用いた。炭素繊維織物の埋設層数は1層とし、それを1枚の織物で構成した。事前に接着剤であるフェノール樹脂(樹脂溶液)に炭素繊維織物を浸漬し、このフェノール樹脂(樹脂溶液)が付着した炭素繊維織物を耐火物本体に埋設した。耐火物本体を構成する骨材(マグネシア)の最大粒径は5mm未満である。
一方、発明例3-1が示す通り、炭素繊維織物を構成する炭素繊維束どうしの間隔(編み込み間隔)を3mm以下とした場合、炭素繊維織物と耐火物原料との絡みが悪く、発明例3-2~発明例3-4よりも曲げ強度および破壊エネルギー・耐割れ性は低下している。
以上のことから、炭素繊維織物を構成する炭素繊維束どうしの間隔(編み込み間隔)を3mm超にすれば、炭素繊維織物と耐火物原料の絡みが良く、高い曲げ強度および破壊エネルギー・耐割れ性を有する黒鉛含有耐火物が得られることが分かった。
この実施例では、炭素繊維の繊維径を7μm、1束あたりの炭素繊維数(本数)を75000本とした炭素繊維束が10mmの間隔で編み込まれた1m2あたりの質量が335gの炭素繊維織物を用い、この炭素繊維織物を各種の接着剤(溶液)に浸漬し、この接着剤(溶液)が付着した炭素繊維織物を耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が610本/mm2となるようにマグネシア・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に埋設した。また、一部の発明例では、炭素繊維織物を接着剤(溶液)を付着させることなく、上記と同様の存在密度でマグネシア・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に埋設した。マグネシア・カーボン質耐火物は、表1の発明配合例1-3の組成を有するものを用いた。炭素繊維織物の埋設層数は1層とし、それを1枚の織物で構成した。耐火物本体を構成する骨材(マグネシア)の最大粒径は5mm未満である。
以上のことから、炭素繊維織物をフェノール樹脂などの接着剤を付着させた上で耐火物本体に埋設すると、高い曲げ強度および破壊エネルギー・耐割れ性を有する黒鉛含有耐火物が得られることが分かった。
この実施例では、炭素繊維の繊維径を7μm、1束あたりの炭素繊維数(本数)を75000本とした炭素繊維束が10mmの間隔で編み込まれた1m2あたりの質量が335~1050gの炭素繊維織物を用い、これを耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が610~1900本/mm2となるように、且つ炭素繊維織物1層あたりの織物の枚数と炭素繊維織物の埋設層数を変更してマグネシア・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に埋設した。マグネシア・カーボン質耐火物は、表1の発明配合例1-3の組成を有するものを用いた。事前に接着剤であるフェノール樹脂(樹脂溶液)に炭素繊維織物を浸漬し、このフェノール樹脂(樹脂溶液)が付着した炭素繊維織物を耐火物本体に埋設した。耐火物本体を構成する骨材(マグネシア)の最大粒径は5mm未満である。
以上のことから、炭素繊維織物1層あたりの織物の枚数を1枚以上とし、炭素繊維織物を1層以上埋設すれば、高い曲げ強度および破壊エネルギー・耐割れ性を有する黒鉛含有耐火物が得られることが分かった。
この実施例では、炭素繊維の繊維径を7μm、1束あたりの炭素繊維数(本数)を75000本とした炭素繊維束が10mmの間隔で編み込まれた1m2あたりの質量が44~513gの炭素繊維織物を用い、この炭素繊維織物を8mm、10mm、20mm、30mmの間隔でそれぞれマグネシア・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に3層または5層埋設し、プレス成形による成形体に亀裂が発生しているか否かを調べた。マグネシア・カーボン質耐火物は、表1の発明配合例1-3の組成を有するものを用いた。炭素繊維織物の各層は1枚または3枚の織物で構成し、耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度は71~925本/mm2とした。事前に接着剤であるフェノール樹脂(樹脂溶液)に炭素繊維織物を浸漬し、このフェノール樹脂(樹脂溶液)が付着した炭素繊維織物を耐火物本体に埋設した。耐火物本体を構成する骨材(マグネシア)の最大粒径は5mm未満である。
一方、発明例6-1および発明例6-4に示す通り、複数層の炭素繊維織物の層どうしの埋設間隔を10mm未満とした場合、プレス成形方向における炭素繊維織物の間隔が狭過ぎるため、成形時に炭素繊維束がスプリングバックを起したため、成形体に亀裂が発生した。
以上のことから、複数層の炭素繊維織物を間隔をおいて埋設する場合に、亀裂を発生させずに耐火物を成形するためには、炭素繊維織物の層どうしの埋設間隔を10mm以上とすることが好ましいことが分かった。
表8の実施例は、溶銑予備処理容器の内張りに使用するアルミナ・シリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物(アルミナ原料、炭化珪素原料、シリカ原料を骨材とした黒鉛含有耐火物)について、その組成が黒鉛含有耐火物の曲げ強度、破壊エネルギー・耐割れ性、および耐溶損性に及ぼす影響を調べたものである。
この実施例では、炭素繊維の繊維径を7μm、1束あたりの炭素繊維数(本数)を75000本とした炭素繊維束が10mmの間隔で編み込まれた1m2あたりの質量が335gの炭素繊維織物を用い、これを耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が610本/mm2となるようにアルミナ・シリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に埋設した。炭素繊維織物の埋設層数は1層とし、それを1枚の織物で構成した。事前に接着剤であるフェノール樹脂(樹脂溶液)に炭素繊維織物を浸漬し、このフェノール樹脂(樹脂溶液)が付着した炭素繊維織物を耐火物本体に埋設した。耐火物本体を構成する骨材(アルミナ原料、炭化珪素原料、シリカ原料)の最大粒径は5mm未満である。
これに対して、比較例7-1が示す通り、アルミナ原料の含有量が10質量%未満、シリカ原料の含有量が1質量%未満、黒鉛含有量が80質量%超の場合には、破壊エネルギー、耐溶損性がともに大幅に低下している。
また、比較例7-2が示す通り、アルミナ原料の含有量が95質量%超、シリカ原料の含有量が1質量%未満、黒鉛含有量が1質量%未満の場合、熱スポーリングによる亀裂の発生を抑制できず、破壊エネルギー・耐割れ性が大幅に低下している。
以上のことから、アルミナ・シリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物において、アルミナ原料の含有量を10~95質量%、シリカ原料の含有量を1~50質量%、黒鉛含有量を1~80質量%とすれば、高耐溶損性と高い破壊エネルギー・耐割れ性を両立できることが分かる。
この実施例では、炭素繊維の繊維径を7μm、1束あたりの炭素繊維数(本数)を75000本とした炭素繊維束が10mmの間隔で編み込まれた1m2あたりの質量が335gの炭素繊維織物を用い、これを耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が610本/mm2となるようにアルミナ・シリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に埋設した。炭素繊維織物の埋設層数は1層とし、それを1枚の織物で構成した。事前に接着剤であるフェノール樹脂(樹脂溶液)に炭素繊維織物を浸漬し、このフェノール樹脂(樹脂溶液)が付着した炭素繊維織物を耐火物本体に埋設した。耐火物本体を構成する骨材(アルミナ原料、炭化珪素原料、シリカ原料、使用済みのアルミナ・シリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物を粉砕した耐火物屑)の最大粒径は5mm未満である。
これに対して、比較例8-1が示す通り、耐火物屑含有量が90質量%超、シリカ原料の含有量が1質量%未満、黒鉛含有量が1質量%未満の場合、破壊エネルギー・耐割れ性および耐溶損性が大幅に低下している。
以上のことから、アルミナ・シリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物において、骨材原料の一部として使用済みのアルミナ・シリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物を粉砕して得られた耐火物屑を用いた黒鉛含有耐火物については、耐火物屑の含有量を10~90質量%、シリカ原料の含有量を1質量%以上、黒鉛含有量を1~80質量%とすれば、破壊エネルギー・耐割れ性を高く維持でき、さらに、バージン原料のみを使用した黒鉛含有耐火物と同程度の耐溶損性を有することが分かる。
この実施例では、炭素繊維の繊維径を7μm、1束あたりの炭素繊維数(本数)を75000本とした炭素繊維束が10mmの間隔で編み込まれた1m2あたりの質量が335gの炭素繊維織物を用い、これを耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が610本/mm2となるようにアルミナ・炭化珪素・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に埋設した。炭素繊維織物の埋設層数は1層とし、それを1枚の織物で構成した。事前に接着剤であるフェノール樹脂(樹脂溶液)に炭素繊維織物を浸漬し、このフェノール樹脂(樹脂溶液)が付着した炭素繊維織物を耐火物本体に埋設した。耐火物本体を構成する骨材(アルミナ原料、炭化珪素原料)の最大粒径は5mm未満である。
これに対して、比較例9-1が示す通り、アルミナ原料の含有量が10質量%未満、黒鉛含有量が80質量%超の場合、破壊エネルギー、耐溶損性が大幅に低下している。また、比較例9-2が示す通り、アルミナ原料の含有量が95質量%超、黒鉛含有量が1質量%未満の場合、破壊エネルギー・耐割れ性が大幅に低下している。
以上のことから、アルミナ・炭化珪素・カーボン質耐火物において、アルミナ原料の含有量を10~95質量%、黒鉛含有量を1~80質量%とすれば、高い破壊エネルギー・耐割れ性と耐溶損性が得られることが分かる。
この実施例では、炭素繊維の繊維径を7μm、1束あたりの炭素繊維数(本数)を75000本とした炭素繊維束が10mmの間隔で編み込まれた1m2あたりの質量が335gの炭素繊維織物を用い、これを耐火物稼働面と平行な耐火物断面における炭素繊維の存在密度が610本/mm2となるようにシリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物(耐火物本体)の内部に埋設した。炭素繊維織物の埋設層数は1層とし、それを1枚の織物で構成した。事前に接着剤であるフェノール樹脂(樹脂溶液)に炭素繊維織物を浸漬し、このフェノール樹脂(樹脂溶液)が付着した炭素繊維織物を耐火物本体に埋設した。耐火物本体を構成する骨材(シリカ原料、炭化珪素原料)の最大粒径は5mm未満である。
これに対して、比較例10-1が示す通り、シリカ原料の含有量を1質量%未満、黒鉛含有量を80質量%超とした場合、破壊エネルギー・耐割れ性が低下している。また、比較例10-2が示す通り、黒鉛含有量を80質量%超とした場合も破壊エネルギー・耐割れ性が低下している。
以上のことから、シリカ・炭化珪素・カーボン質耐火物において、シリカ原料の含有量を1~50質量%、黒鉛含有量を1~80質量%とすれば、高い曲げ強度および破壊エネルギー・耐割れ性と耐溶損性が得られることが分かる。
B 炭素繊維織物
b 炭素繊維束
x 耐火物稼動面
y 反稼動面
Claims (12)
- 黒鉛含有量が1~80質量%の耐火物本体(A)の内部に炭素繊維織物(B)が埋設された黒鉛含有耐火物であって、
炭素繊維織物(B)は1m2あたりの質量が40~1300gであり、
炭素繊維織物(B)が耐火物本体(A)に対して粘着性付与剤成分を介して密着し、該粘着性付与剤成分は、有機樹脂、無機ゾル由来の無機微粒子、タールまたは/およびピッチ由来の有機物、有機糊由来の有機物の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする黒鉛含有耐火物。 - 炭素繊維織物(B)は、炭素繊維束(b)が耐火物本体(A)を構成する骨材の最大粒径超の間隔で2方向以上に編み込まれた織物であり、
炭素繊維束(b)は、繊維径が1~45μmの炭素繊維を束に纏めたものであって、1束あたりの炭素繊維の本数が1000~300000本であり、
耐火物稼働面と平行な耐火物断面における、炭素繊維織物(B)を構成する炭素繊維の存在密度が10~2000本/mm2であることを特徴とする請求項1に記載の黒鉛含有耐火物。 - 耐火物本体(A)の内部に、耐火物稼動面と直交する方向に沿って炭素繊維織物(B)が埋設されたことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛含有耐火物。
- 炭素繊維織物(B)は、同じ方向に編み込まれた炭素繊維束(b)どうしの間隔が3mm超であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の黒鉛含有耐火物。
- 炭素繊維織物(B)が1枚または積層した2枚以上の織物で構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の黒鉛含有耐火物。
- 耐火物本体(A)の内部に、炭素繊維織物(B)が1層又は間隔をおいて2層以上埋設されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の黒鉛含有耐火物。
- 耐火物本体(A)の内部に埋設された2層以上の炭素繊維織物(B)どうしの間隔が10mm以上であることを特徴とする請求項6に記載の黒鉛含有耐火物。
- 耐火物本体(A)は、マグネシア濃度が90質量%以上のマグネシア原料を20~99質量%含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の黒鉛含有耐火物。
- 耐火物本体(A)は、アルミナ濃度が70質量%以上のアルミナ原料を10~95質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の黒鉛含有耐火物。
- 耐火物本体(A)は、シリカ原料を1~50質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の黒鉛含有耐火物。
- 耐火物本体(A)は、炭化珪素濃度が80質量%以上の炭化珪素原料を1質量%以上含有することを特徴とする請求項9または10に記載の黒鉛含有耐火物。
- 耐火物本体(A)は、使用済み耐火物を粉砕した耐火物屑を10~90質量%含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の黒鉛含有耐火物。
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