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JP7705380B2 - 脂肪族ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents
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JP7705380B2 - 脂肪族ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脂肪族ポリエステル繊維の製造方法、脂肪族ポリエステル繊維及びマルチフィラメントに関する。
近年、プラスチック廃棄物が、生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境への大きな負荷を与える原因となっている問題がある。この問題を解決できるものとして、生分解性プラスチックの開発が盛んになっている。
このような生分解性プラスチックの中でも植物由来の原料を使用して得られる生分解性プラスチックを燃焼させた際に出る二酸化炭素は、もともと空気中にあったもので、大気中の二酸化炭素は増加しない。このことをカーボンニュートラルと称し、二酸化炭素削減目標値を課した京都議定書の下、重要視され、積極的な使用が望まれている。
最近、生分解性及びカーボンニュートラルの観点から、植物由来の原料を炭素源として微生物産生される生分解性プラスチックとして、脂肪族ポリエステル系樹脂が注目されており、特にポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと称する場合がある)系樹脂、さらにはPHA系樹脂の中でもポリ(3-ヒドロキシブチレート)単独重合樹脂、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)共重合樹脂、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂(以下、P3HB3HHと称する場合がある)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)共重合樹脂、及びポリ乳酸等が注目されている。
しかしながら、前記PHA系樹脂は、結晶化速度が遅く、しかもガラス転移温度が室温より低い(約0~4℃)ことから、成形加工に際し、加熱溶融後、固化のための冷却時間を長くする必要があり、生産性が悪い。特に、PHAを用いて溶融紡糸法により繊維を製造しようとする際には、樹脂の固化が遅いことから、繊維同士の膠着やロールへの貼り付きが発生し、安定した繊維の製造が難しく、また得られる繊維の品質も低い物となってしまう。
3-ヒドロキシアルカノエート重合体の溶融紡糸技術の先行事例として、特許文献1には、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含有してなるポリエステル樹脂を、1,500m/分~7,000m/分の引取り速度で紡糸する溶融紡糸法が記載されている。また、この方法により、紡糸性及び生産性を向上させ、引張強度を高めることができることが記載されている。
別の先行事例として、特許文献2には、ポリヒドロキシアルカノエートと結晶核剤と滑剤とを含有する生分解性脂肪族ポリエステル系繊維の溶融紡糸法として、紡糸時に130℃以上190℃以下の温度で紡糸ダイスから溶融物が押出されて原糸が得られ、300m/分以上4,000m/分以下の引き取り速度で第一の引き取りロールにより原糸が引き取られ、連続して、600m/分以上7,000m/分以下の引き取り速度で第二の引き取りロールに原糸が引き取られることで、延伸紡糸する方法が記載されている。また、この方法により、ポリヒドロキシアルカノエートの結晶化の速度が改善され、サクション性を改善し、繊維の紡糸性及び生産性を向上させ、引張強度を高めることができることが記載されている。
また、別の先行事例として、特許文献3には、PHAを特定の紡糸条件下で繊維化し、更に、延伸工程では生産時の使用エネルギーに無駄がない温度領域にて延伸をおこない、更に、熱処理工程で緩和することにより優れた機械物性が発現することが記載されている。
国際公開第2015/029316号 国際公開第2017/122679号 国際公開第2012/133231号
しかしながら、特許文献1及び2に開示される溶融紡糸法では、十分な引張強度を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含有する脂肪族ポリエステル繊維は、得られない。また、特許文献3に開示される方法は、繊維化した後、延伸し、さらに熱処理が必要であり、繊維の製造に長時間を要し、生産性が悪い。
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する脂肪族ポリエステル繊維の生産性を向上させ、引張強度を高めることを目的とする。
本開示の第一は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する脂肪族ポリエステル繊維の製造方法であって、(i)前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び前記結晶核剤を含有する樹脂組成物を、前記樹脂組成物の融点以上熱分解温度以下に加熱し、紡糸ノズルから吐出する工程、(ii)紡糸ノズルから吐出した前記樹脂組成物を延伸ロールで延伸する工程、及び(iii)前記延伸した樹脂組成物を巻取ロールで巻取る工程を有し、前記延伸ロールが、第一ロール及び第二ロールを含む2以上のロールからなり、前記樹脂組成物の総延伸倍率(前記巻取ロール速度(m/min)/前記紡糸ノズル流速(m/min))が250以上であって、前記巻取ロール速度が500~1500m/minである、脂肪族ポリエステル繊維の製造方法に関する。
前記脂肪族ポリエステル繊維の製造方法において、前記第一ロール速度(m/min)に対する前記巻取ロール速度(m/min)の比が1.5以上であることが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル繊維の製造方法において、前記紡糸ノズル流速(m/min)に対する前記第一ロール速度(m/min)の比が55以上であることが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル繊維の製造方法において、前記紡糸ノズルから吐出し、前記延伸ロールに接触する前において、前記樹脂組成物に、前記樹脂組成物のガラス転移温度以上結晶化温度以下の温度の気流をあてることが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル繊維の製造方法において、前記(ii)延伸する工程において、前記樹脂組成物の温度を40~100℃にすることが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル繊維の製造方法において、前記巻取ロール速度が、前記延伸ロールを構成する2以上のロールのうち最大速度のロール速度に対し、2~15%低いことが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル繊維の製造方法において、前記紡糸ノズルから前記巻取ロールまで1分以内に前記樹脂組成物を搬送することが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル繊維の製造方法において、前記紡糸ノズルが15個以上の吐出孔を有することが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル繊維の製造方法において、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含み、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を構成する総モノマー単位のうち、3-ヒドロキシヘキサノエートの割合が3~15mol%であることが好ましい。
本開示の第二は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する脂肪族ポリエステル繊維であって、単繊維の繊度が1~20dtexであり、単繊維の引張強度が1.5cN/dtex以上である、脂肪族ポリエステル繊維に関する。
前記脂肪族ポリエステル繊維において、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含み、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を構成する総モノマー単位のうち、3-ヒドロキシヘキサノエートの割合が3~15mol%であることが好ましい。
本開示の第三は、前記脂肪族ポリエステル繊維を15本以上含む、マルチフィラメントに関する。
本発明によれば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する脂肪族ポリエステル繊維の生産性を向上させ、引張強度を高めることができる。
本開示の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法に用いる製造装置の一例を示す概念図である。
[脂肪族ポリエステル繊維の製造方法]
本開示の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する脂肪族ポリエステル繊維の製造方法であって、
(i)前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び前記結晶核剤を含有する樹脂組成物を、前記樹脂組成物の融点以上熱分解温度以下に加熱し、紡糸ノズルから吐出する工程、
(ii)紡糸ノズルから吐出した前記樹脂組成物を延伸ロールで延伸する工程、及び
(iii)前記延伸した樹脂組成物を巻取ロールで巻取る工程を有し、
前記延伸ロールが、第一ロール及び第二ロールを含む2以上のロールからなり、前記樹脂組成物の総延伸倍率(前記巻取ロール速度(m/min)/前記紡糸ノズル流速(m/min))が250以上であって、前記巻取ロール速度が500~1500m/minである。
(i)ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する樹脂組成物を、前記樹脂組成物の融点以上熱分解温度以下に加熱し、紡糸ノズルから吐出する工程について、以下詳述する。
本開示において、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂とは、その樹脂を構成するモノマー単位として3-ヒドロキシブチレートを含む脂肪族ポリエステルである。
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)等のポリ(3-ヒドロキシブチレート)を含む樹脂;及び3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとからなる共重合樹脂を含む樹脂が挙げられる。
3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとからなる共重合樹脂としては、例えば、P3HB3HH〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)〕、PHBV〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)〕、P3HB4HB〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)〕、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、及びポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)等が挙げられる。これらのうち、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が好ましい。得られる脂肪族ポリエステル繊維が生分解性に優れるだけでなく、実用上十分な成形加工性を有し、引張強度及び柔軟性に優れるためである。
3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとからなる共重合樹脂を含む樹脂は、その樹脂を構成する総モノマー単位のうち、3-ヒドロキシヘキサノエートの割合が0.5~15mol%であることが好ましく、1.5~15mol%であることがより好ましく、3~15mol%であることがさらに好ましく、3~8mol%であることが最も好ましい。得られる脂肪族ポリエステル繊維が、引張強度及び柔軟性に優れるためである。
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量Mwは、50,000~3,000,000が好ましく、100,000~1,500,000がより好ましく、200,000~1,000,000がさらに好ましい。重量平均分子量Mwが低すぎると、得られる脂肪族ポリエステル繊維の引張強度が低下する傾向となり、重量平均分子量Mwが高すぎると加工性が低下し成形が困難になる場合があるためである。
重量平均分子量Mwは、クロロホルム溶離液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定する。前記GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
本開示において結晶核剤とは、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂よりも融点が高く、その樹脂の結晶化を促進する効果を有する化合物である。その化合物は、特に限定されるものではない。結晶核剤としては、例えば、無機物(窒化ホウ素、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、及び金属リン酸塩など);天然物由来の糖アルコール化合物(ペンタエリスリトール、エリスリトール、ガラクチトール、マンニトール、及びアラビトール等);ポリビニルアルコール;キチン;キトサン;ポリエチレンオキシド;脂肪族カルボン酸塩;脂肪族アルコール;脂肪族カルボン酸エステル;ジカルボン酸誘導体(ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、及びジブチルセバケート);C=OとNH、S及びOから選ばれる官能基とを分子内に有する環状化合物(インジゴ、キナクリドン、及びキナクリドンマゼンタなど);ソルビトール系誘導体(ビスベンジリデンソルビトール、及びビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトールなど);窒素含有ヘテロ芳香族核(ピリジン環、トリアジン環、及びイミダゾール環など)を含む化合物(ピリジン、トリアジン、及びイミダゾールなど);リン酸エステル化合物;高級脂肪酸のビスアミド;高級脂肪酸の金属塩;並びに分岐状ポリ乳酸等が例示できる。また、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、P3HB3HHである場合、P3HB3HHよりも融点が高いポリ(3-ヒドロキシブチレート)を用いることもできる。
これらのうち、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化速度の改善効果、並びにポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂との相溶性及び親和性の観点から、糖アルコール化合物、ポリビニルアルコール、キチン、及びキトサンが好ましく、ペンタエリスリトールがより好ましい。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する樹脂組成物における、結晶核剤の含有量は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対し、0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。また、その含有量は、12重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、8重量部以下がさらに好ましく、5重量部以下が最も好ましい。結晶核剤の含有量が少なすぎると、結晶核剤としての効果が不十分な場合があり、結晶核剤の含有量が多すぎると、樹脂組成物の加熱時の粘度が低下してしまう場合がある。
また、前記樹脂組成物は、必要に応じ、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤以外の任意成分として、公知の添加剤を含有してよい。公知の添加剤としては、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等の安定剤;染料及び顔料等の着色剤;可塑剤;滑剤;無機充填剤;有機充填剤;並びに帯電防止剤等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、アジピン酸エステル系可塑剤、アセチル化モノグリセライド系可塑剤、及びポリグリセリン脂肪酸エステル系可塑剤等が挙げられる。また、二酸化炭素及び窒素等の超臨界流体の可塑化作用を利用することもできる。
滑剤としては、特に限定されないが、例えば、ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、及びオレイン酸アミド等の脂肪酸アミドが挙げられる。
前記樹脂組成物を、前記樹脂組成物の融点以上熱分解温度以下に加熱する際、その加熱温度は、樹脂組成物の種類によって適宜調整すればよいが、前記樹脂組成物の融点+5℃以上が好ましく、融点+10℃以上がより好ましい。また、その加熱温度は、樹脂組成物の熱分解温度未満が好ましく、熱分解温度-5℃以下がより好ましい。
本開示において、融点は、示差走査熱量測定(DSC)法により測定される。具体的には、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分で測定し、得られる吸熱ピークを融点とする。
本開示において、熱分解温度とは、熱重量測定法(TG)より測定される重量減少開始温度である。具体的には、熱重量計を用い、昇温速度10℃/分で測定し、重量減少開始時点の温度を熱分解温度とする。
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する樹脂組成物は、165℃、5kgfで測定されるメルトフローレート(以下、MFRと称する場合がある)が0.1~100g/10minであることが好ましく、0.5~80g/10minであることがより好ましく、1.0~60g/10minであることがさらに好ましい。
メルトフローレートの測定方法は、JIS K7210-2:2014に準じて165℃、5kg荷重で測定した値である。
紡糸ノズルは、樹脂組成物が吐出する吐出孔が備えられるところ、吐出孔の形状、大きさ、及び孔数は特に限定されない。吐出孔の大きさとしては、例えば、吐出孔の形状が円形の場合、直径Φ0.1mm~3.0mmが好ましい。また、吐出孔の孔数は、吐出孔の大きさにもよるが、例えば、15個以上であってよく、1000個以下であってよい。
紡糸ノズル流速、つまり紡糸ノズルから樹脂組成物が吐出する速度は、0.05m/min~6.0m/minが好ましく、0.1m/min~6.0m/minがより好ましく、0.5m/min~6.0m/minがさらに好ましい。
また、紡糸ノズルからの吐出量は、0.10g/min/hole以上が好ましく、0.15g/min/hole以上がより好ましい。また、その吐出量は、1.0g/min/hole未満が好ましく、0.90g/min/hole以下がより好ましい。
前記紡糸ノズルから吐出し、前記延伸ロールに接触する前において、前記樹脂組成物に、前記樹脂組成物のガラス転移温度以上結晶化温度以下の温度の気流をあてて、急冷することが好ましい。このような急冷によって、前記樹脂組成物の冷却固化を促進することができ、前記延伸ロール間での速度差等によって与えられる延伸ひずみがより効果的に反映される。その結果、得られる脂肪族ポリエステル繊維の引張強度をより高めることができる。
本開示において、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)法により測定される。具体的には、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分で測定し、得られるDSC曲線の変曲点の温度をガラス転移温度とする。
また、結晶化温度とは、示差走査熱量測定(DSC)法により測定される。具体的には、示差走査熱量計を用い、降温速度10℃/分で測定し、得られるDSC曲線の放熱ピークを結晶化温度とする。
紡糸ノズルから吐出した前記樹脂組成物にあてる気流の温度は、前記樹脂組成物のガラス転移温度以上結晶化温度以下であればよく、前記樹脂組成物の種類によって適宜調整すればよい。前記気流の温度は、前記樹脂組成物の結晶化温度未満が好ましく、結晶化温度-20℃以下がより好ましく、結晶化温度-40℃以下がさらに好ましい。
前記気流の速度は、特に限定されるものではないが、0.1m/s以上5m/s以下が好ましく、0.1m/s以上3m/s以下がより好ましい。前記気流の速度が0.1m/s未満であると、得られる冷却効果が小さくなりすぎ、5m/sを超えると、紡糸ノズルから吐出した前記樹脂組成物が気流で揺れることにより、吐出した前記樹脂組成物同士の融着及び/又は糸切れ等が生じ、紡糸安定性の低下につながる場合があるためである。
前記気流の種類も、特に限定されないが、空気;窒素ガス及びアルゴンガス等の不活性ガス等が好ましい。
(ii)紡糸ノズルから吐出した前記樹脂組成物を延伸ロールで延伸する工程、及び(iii)前記延伸した樹脂組成物を巻取ロールで巻取る工程について、以下詳述する。
紡糸ノズルから吐出した前記樹脂組成物は、まず、第一ロールによって引き取られた後、第一ロール及び第二ロールを含む2以上のロールにより延伸される。
前記延伸ロールは、第一ロール及び第二ロールを含んでいればよく、前記延伸ロールの数は特に限定されるものではなく、繊維の調温効率や延伸倍率等を考慮して、適宜選択すればよい。前記延伸ロールの数は、3以上であってよく、4以上であってよく、5以上であってよい。また、前記延伸ロールの数は、本発明の目的の範囲内であれば、特に上限はないが、設備費及び製造装置を大きくしすぎない観点からは、10以下であってよい。
また、前記延伸ロールのうち各延伸ロールは、1のロールにより構成されるだけでなく、同一速度の2以上のロールを一組とするロールにより構成されてよい。延伸される繊維の温度を均一にすることができ、より省スペースで長い繊維を製造することができる。
前記紡糸ノズル流速(m/min)に対する前記第一ロール速度(m/min)の比(以下、NDRと称する場合がある)は、55以上が好ましく、100以上がより好ましく、150以上がさらに好ましく、200以上が特に好ましい。NDRを大きくすることにより、前記樹脂組成物の分子鎖の整列を促進でき、また、前記樹脂組成物の径が小さくなるので冷却固化を促進できるためである。また、NDRは、繊維の破断が生じない限り上限はないが、1000以下であってよい。
前記第一ロール速度(m/min)に対する前記巻取ロール速度(m/min)の比は、1.5以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、1.8以上がさらに好ましい。より優れた引張強度の脂肪族ポリエステル繊維が得られるためである。また、その比は、繊維の破断が生じない限り上限はないが、30以下であってよい。
(ii)紡糸ノズルから吐出した前記樹脂組成物を延伸ロールで延伸する工程においては、前記樹脂組成物の温度を40~100℃にすることが好ましく、50~80℃にすることがより好ましい。前記樹脂組成物の結晶化速度を速くでき、脂肪族ポリエステル繊維の生産性及び引張強度をより向上できるためである。なお、前記樹脂組成物の温度調整は、延伸ロール表面等の固体;浴槽及び液滴等の液体;並びに気流等の気体等、前記樹脂組成物に接触する物体の温度の調整によって行えばよい。
前記延伸した樹脂組成物は巻取ロールで巻き取るところ、前記樹脂組成物の総延伸倍率は250以上である。前記総延伸倍率は、270以上が好ましく、300以上がより好ましく、330以上がさらに好ましく、340以上がより好ましい。また、総延伸倍率は、所望の繊度の繊維が安定的に得られる限り上限はないが、2000以下であってよい。
なお、総延伸倍率は、前記巻取ロール速度(m/min)/前記紡糸ノズル流速(m/min)で定義される。
前記巻取ロール速度は500~1500m/minであるところ、その範囲で紡糸ノズル流速、及び他のロールの速度等を考慮し、適宜調整すればよい。
前記巻取ロール速度は、前記延伸ロールを構成する2以上のロールのうち最大速度のロール速度に対し、2~15%低いことが好ましく、3~15%低いことがより好ましく、3~12%低いことがさらに好ましい。得られる脂肪族ポリエステル繊維に残留応力が残りにくくなり、乾熱収縮が生じにくくなるためである。なお、前記「%」をもって示す比率、つまり(前記最大速度のロール速度-前記巻取ロール速度)/前記巻取ロール速度×100を「緩和率(%)」と言い換えることができる。
前記樹脂組成物を搬送する時間は、前記紡糸ノズルから前記巻取ロールまで1分以内が好ましく、50秒以内が好ましく、40秒以内がより好ましく、30秒以内がさらに好ましい。また、その時間は、1秒以上であってよい。本開示の製造方法によれば、短時間で生産性よく、引張強度が高い脂肪族ポリエステル繊維を製造することができる。
[脂肪族ポリエステル繊維]
本開示の脂肪族ポリエステル繊維は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する脂肪族ポリエステル繊維であって、単繊維の繊度が1~20dtexであり、単繊維の引張強度が1.5cN/dtex以上である。
本開示の脂肪族ポリエステル繊維における、結晶核剤の含有量は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対し、0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。また、その含有量は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対し、12重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、8重量部以下がさらに好ましく、5重量部以下が最も好ましい。
また、脂肪族ポリエステル繊維に含まれる結晶核剤の粒子径は、その繊維の断面の最小対角線長さに対し、3分の1以下であることが好ましい。繊維の引張強度により優れるためである。
結晶核剤の粒子径は、レーザー回折法を用いてD50(メディアン径)として求められる。
本開示の脂肪族ポリエステル繊維の単繊維の繊度は、1.5dtex以上であってよく、2dtex以上であってよい。また、その繊度は、15dtex以下であってよく、10dtex以下であってよい。
単繊維の繊度とは、糸の太さのことであり、単位長さあたりの質量として定義される。10,000mあたりの質量(g)を単位(dtex)で表す。具体的には、オートバイブロスコープ法により測定する。
本開示の脂肪族ポリエステル繊維の単繊維の引張強度は、1.6cN/dtex以上が好ましく、1.7cN/dtex以上がより好ましく、1.8cN/dtex以上がさらに好ましく、1.9cN/dtex以上が最も好ましい。その引張強度は、用途によって求められる柔軟性及び強靭性を損なわない範囲であれば特に限定されないが、10cN/dtex以下であってよい。本開示の脂肪族ポリエステル繊維は、細いにもかかわらず、引張強度に優れる。
単繊維の引張強度の測定は、JIS L 1015:2010 化学繊維ステープル試験方法に基づき、初期長20mm、速度20mm/minにて測定する。
[マルチフィラメント]
本開示の脂肪族ポリエステル繊維は、マルチフィラメントを構成してよい。マルチフィラメントを構成する場合、マルチフィラメントを構成する前記脂肪族ポリエステル繊維の本数及び繊度は、求める特性に応じて決定すればよいが、前記脂肪族ポリエステル繊維を15本以上含むことが好ましく、20本以上含むことがより好ましく、30本以上含むことがさらに好ましい。また、前記脂肪族ポリエステル繊維を1000本以下含んでよい。マルチフィラメントの総繊度が同じであれば、マルチフィラメントを構成する繊維の本数が多くなる程、柔軟性やしなやかさが高くなる一方で、耐久性が低下しやすいという傾向を有する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
(実施例1)
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂として、(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂(3-ヒドロキシヘキサノエートの割合=6mol%、Mw=55万、MFR(165℃、5kg)=3g/10min)100重量部、結晶核剤として、ペンタエリスリトール「ノイライザーP」(日本合成化学社製)1重量部、滑剤として、エルカ酸アミド0.5重量部及びベヘン酸アミド0.5重量部の割合でドライブレンドし、押出機を用いて、150℃で溶融混練してペレット化し、樹脂組成物を得た。
得られたペレット(樹脂組成物)のガラス転移温度は2℃、結晶化温度は80℃、融点は142℃、熱分解温度は180℃であった。
得られたペレットを用いて、脂肪族ポリエステル繊維を製造する工程について、図1を参照して説明する。得られたペレットを、スクリュー径25mmの1軸押出機(図示しない)で溶融し、ギアポンプで流量を調整し、溶融紡糸温度170℃で、表1に記載の条件の紡糸ノズル1(吐出孔の形状:円形)から、14℃、1.0m/sの空気(クエンチエア)を吹き付ける第一の空間(第一のクエンチングファーム)2に押出し;13℃、1.0m/sの空気(クエンチエア)を吹き付ける第二の空間(第二のクエンチングファーム)3に送り;表1に記載の条件の第一ロール4にて引取り;第二ロール5(896m/min、70℃)、第三ロール6(1050m/min、70℃)、第四ロール7(1050m/min、70℃)、及び第五ロール8(1010m/min、34℃/36℃)を順に通し、巻取ロール9(1000m/min)にて、巻取って、脂肪族ポリエステル繊維10を得た。なお、紡糸ノズルから巻取ロールまで樹脂組成物を搬送する時間は、30秒以内であった。
この時、第一ロール4、第二ロール5、第三ロール6、及び第四ロール7は、いずれも同一速度・同一温度の2つのロールを一組として構成した。第五ロール8は、同一速度の2つのロールを一組として構成した。また、NDR=第一ロール速度/紡糸ノズル流速であり、緩和率(%)=(最大速度のロール速度-巻取ロール速度)/巻取ロール速度×100であり、総延伸倍率=巻取ロール速度/紡糸ノズル流速である。なお、本開示において、常温とは、5~35℃の範囲に含まれる温度をいう。
得られた脂肪族ポリエステル繊維の単繊度、繊維径、及び引張強度は以下の方法で測定した。結果は表1に示す。
(単繊度)
サーチ社オートバイブロ式繊度測定機DENIER COMPUTER DC-11を用い、試料長50mmにて測定した。
(繊維径)
紡糸ノズルの吐出孔の形状が円形であり、得られる繊維の断面形状も円形であることから、予め測定した単繊度と脂肪族ポリエステル繊維の比重から求めた断面積より算出した(断面形状は真円として算出した)。
(引張強度)
島津製作所の引張測定装置オートグラフAG-Iを用いて、以下の条件で引張強度を測定した。すなわち、得られた脂肪族ポリエステル繊維をサンプルとして、各サンプルの初期長を20mmとし、定格容量5Nのロードセルを用い、20mm/minの速度で測定した。また、予め測定した単繊度に基づき、単繊度あたりの引張強度(cN/dtex)を算出した。
(実施例2~9、比較例1~4)
各条件を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ脂肪族ポリエステル繊維を得た。なお、紡糸ノズルから巻取ロールまで樹脂組成物を搬送する時間は、30秒以内であった。
得られた脂肪族ポリエステル繊維の各物性を測定した結果は、表1に示す。
Figure 0007705380000001
表1に示すとおり、総延伸倍率が250未満又は巻取ロール速度が500m/min未満である比較例1~4の脂肪族ポリエステル繊維は、いずれも引張強度が低い。これに対し、実施例の脂肪族ポリエステル繊維は、同じ樹脂組成物を用いて製造したにもかかわらず、優れた引張強度を有する。
1 紡糸ノズル
2 第一のクエンチングファーム
3 第二のクエンチングファーム
4 第一ロール
5 第二ロール
6 第三ロール
7 第四ロール
8 第五ロール
9 巻取ロール
10 脂肪族ポリエステル繊維

Claims (9)

  1. ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び結晶核剤を含有する脂肪族ポリエステル繊維の製造方法であって、
    (i)前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂及び前記結晶核剤を含有する樹脂組成物を、前記樹脂組成物の融点以上熱分解温度以下に加熱し、紡糸ノズルから吐出する工程、
    (ii)紡糸ノズルから吐出した前記樹脂組成物を延伸ロールで延伸する工程、及び
    (iii)前記延伸した樹脂組成物を巻取ロールで巻取る工程を有し、
    前記延伸ロールが、第一ロール及び第二ロールを含む2以上のロールからなり、前記樹脂組成物の総延伸倍率(前記巻取ロール速度(m/min)/前記紡糸ノズル流速(m/min))が250以上であって、
    前記巻取ロール速度が500~1500m/minである、脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
  2. 前記第一ロール速度(m/min)に対する前記巻取ロール速度(m/min)の比が1.5以上である、請求項1に記載の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
  3. 前記紡糸ノズル流速(m/min)に対する前記第一ロール速度(m/min)の比が55以上である、請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
  4. 前記紡糸ノズルから吐出し、前記延伸ロールに接触する前において、前記樹脂組成物に、前記樹脂組成物のガラス転移温度以上結晶化温度以下の温度の気流をあてる、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
  5. 前記(ii)延伸する工程において、前記樹脂組成物の温度を40~100℃にする、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
  6. 前記巻取ロール速度が、前記延伸ロールを構成する2以上のロールのうち最大速度のロール速度に対し、2~15%低い、請求項1~5のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
  7. 前記紡糸ノズルから前記巻取ロールまで1分以内に前記樹脂組成物を搬送する、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
  8. 前記紡糸ノズルが15個以上の吐出孔を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
  9. 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含み、
    前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を構成する総モノマー単位のうち、3-ヒドロキシヘキサノエートの割合が3~15mol%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の脂肪族ポリエステル繊維の製造方法。
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