JP7706390B2 - 硬化性樹脂組成物、硬化物、回折光学素子、多層型回折光学素子及び酸化物ナノ粒子 - Google Patents
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Description
本発明は、また、上記硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物、回折光学素子および多層型回折光学素子に関する。
本発明は、また、上記硬化性樹脂組成物に用いられる酸化物ナノ粒子に関する。
また、特許文献2には、ITO粒子と近紫外光線吸収性有機化合物を含む樹脂組成物が記載されている。特許文献2によれば、この樹脂組成物を硬化することにより、得られる硬化物の近赤外波長域の屈折率を低くし、近紫外波長域の屈折率を高めて硬化物の屈折率の波長依存性を調整できるため、ITO粒子の配合量を抑えて所望の屈折率の波長依存性を実現し、これにより硬化物の近赤外波長域の透過率を高めても、所望の低屈折率かつ低アッベ数を実現できるとされる。
一方、電子基板検査、太陽電池検査等の種々の検査においては、およそ1.0~1.7μmの短波赤外波長域の光を利用した短波赤外イメージング技術が用いられる。そのため、適用されるレンズにも、多層型回折光学素子に用いた場合に近赤外から短波赤外波長域に亘る広い波長範囲において色収差低減作用を得ることができる、近屈折率層に用いられる回折光学素子として所望される屈折率の波長依存性を有し、かつ、この広い波長範囲において高透過率を示す回折光学素子が求められる。
本発明者らは、ITO粒子の添加により屈折率の波長依存性を調整して、多層型回折光学素子における低屈折率層に用いた場合に色収差低減作用を得ることができる回折光学素子を、上記の近赤外から短波赤外波長域の光を利用する光学系に適用する技術について検討を重ねた。その結果、特許文献1又は2に記載されたITO粒子では、近赤外から短波赤外波長域までの波長範囲全体に亘って高透過率を実現することが困難であることがわかってきた。そのため、近赤外から短波赤外波長域における所望の屈折率の波長依存性と高透過率とを実現する新たな技術が求められている。
〔1〕
インジウム及びセリウムを含む酸化物ナノ粒子と、1官能以上の(メタ)アクリレート化合物と、分散剤とを含む硬化性樹脂組成物。
〔2〕
上記酸化物ナノ粒子がジルコニウム、ハフニウム及び錫のうちの少なくとも1種の元素を含む、〔1〕に記載の硬化性樹脂組成物。
〔3〕
上記酸化物ナノ粒子が錫を含む、〔2〕に記載の硬化性樹脂組成物。
〔4〕
上記酸化物ナノ粒子のセリウム濃度が0.5~3.0at%である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔5〕
上記酸化物ナノ粒子中のジルコニウム、ハフニウム及び錫の合計濃度が0.1~2.0at%である、〔2〕又は〔3〕に記載の硬化性樹脂組成物。
〔6〕
上記硬化性樹脂組成物中における上記酸化物ナノ粒子の含有量が10~60質量%である、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔7〕
上記酸化物ナノ粒子の平均粒子径が16~30nmである、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔8〕
上記酸化物ナノ粒子の平均粒子径が20~30nmである、〔7〕に記載の硬化性樹脂組成物。
〔9〕
光ラジカル重合開始剤を含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
〔10〕
〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
〔11〕を硬化してなる
波長852nmにおける屈折率が1.500~1.650である、〔10〕に記載の硬化物。
〔12〕
波長1530nmにおける屈折率が1.300~1.550である、〔10〕又は〔11〕に記載の硬化物。
〔13〕
〔10〕~〔12〕のいずれか1つに記載の硬化物で形成された回折格子形状を有する面を含む、回折光学素子。
〔14〕
第1の回折光学素子と第2の回折光学素子とを含み、
上記の第1の回折光学素子が〔13〕に記載の回折光学素子であり、
上記の第1の回折光学素子における回折格子形状を有する面と上記第2の回折光学素子の回折格子形状を有する面とが対向している、多層型回折光学素子。
〔15〕
上記第2の回折光学素子の波長852nmにおける屈折率が1.550~1.700であり、かつ、この屈折率が、上記第1の回折光学素子の波長852nmにおける屈折率よりも大きい、〔14〕に記載の多層型回折光学素子。
〔16〕
上記の第1の回折光学素子における回折格子形状を有する面と上記の第2の回折光学素子における回折格子形状を有する面とが接している、〔14〕又は〔15〕に記載の多層型回折光学素子。
〔17〕
透明基板を含み、上記第1の回折光学素子、上記第2の回折光学素子、及び、上記透明基板がこの順で配置されている、〔14〕~〔16〕のいずれか1つに記載の多層型回折光学素子。
〔18〕
インジウム及びセリウムと、錫、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1種の元素とを含み、平均粒子径が16~30nmである、酸化物ナノ粒子。
〔19〕
〔18〕に記載の酸化物ナノ粒子からなる、屈折率の波長依存性を調整するためのレンズ用添加剤。
塩構造の場合、その塩の種類は1種類でもよく、2種類以上混在していてもよく、化合物中で塩型と遊離酸構造の基が混在していてもよく、また、塩構造の化合物と遊離酸構造化合物が混在していてもよい。
本発明において、特定の符号又は式で表示された置換基、連結基、構成単位等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は、複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい(「それぞれ独立に」の表現の有無にかかわらず、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい)。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成していてもよい。また、特段の断りがない限り、環、例えば脂環、芳香環、ヘテロ環は、さらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
本発明において、特段の断りがない限り、二重結合については、分子内にE型及びZ型が存在する場合、そのいずれであっても、またこれらの混合物であってもよい。
また、本発明において、特段の断りがない限り、化合物中に1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合、このような不斉炭素の立体化学についてはそれぞれ独立して(R)体又は(S)体のいずれかをとることができる。この結果、化合物は、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体の混合物であってもよく、ラセミ体であってもよい。
また、本発明において化合物の表示は、本発明の効果を損なわない範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。更に、置換又は無置換を明記していない化合物については、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい意味である。
本発明において置換又は無置換を明記していない置換基(連結基及び環についても同様)については、所望の効果を損なわない範囲で、その基に任意の置換基を有していてもよい意味であり、有していてもよい置換基の数についても特に制限されない。例えば、「アルキル基」という場合、無置換アルキル基と置換アルキル基の両方を含む意味である。同様に、例えば「アリール基」という場合には、無置換アリール基と置換アリール基の両方を含む意味である。
本発明において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、本発明ないし本明細書において特段の断りのない限りは、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基がさらに置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
本発明において、各成分は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物中における各成分の含有量の記載において、硬化性樹脂組成物が溶媒を含む場合には、各成分の含有量は、硬化性樹脂組成物から溶媒を除いた成分組成を基準とするものである。例えば、硬化性樹脂組成物が溶媒20質量部、成分A40質量部、成分B40質量部の計100質量部から構成される場合、この成分Aの組成物中の含有量は溶媒を除いた80質量部が基準になるため、50質量%となる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、3-メチルブチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、1-メチルヘプチル基、ノニル基、1-メチルオクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
また、本発明において、脂肪族炭化水素基(無置換)は、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましい。
また、本発明において、直鎖アルキレン基の例としては、上記アルキル基のうち、直鎖アルキル基から末端の炭素原子に結合する水素原子を1つ除いて得られる基が挙げられる。
本発明において、不飽和炭化水素環とは、炭素-炭素不飽和二重結合を有する炭化水素環のうち、芳香環でないものを意味する。不飽和炭化水素環の例としては、インデン、インダン、フルオレンが挙げられる。
本発明において、シクロアルキレン基は、シクロアルカンから、任意の水素原子を2つ除いて得られる2価の基を表す。シクロアルキレン基の例としては、シクロヘキシレン基が挙げられる。
また、本発明において、無置換の芳香族炭化水素環は、炭素数6~14の芳香族炭化水素環が好ましい。
本発明において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
また、本発明の硬化物は、多層型回折光学素子に用いた場合に、近赤外から短波赤外波長域に亘って色収差低減に寄与する所望の屈折率の波長依存性を示しながら、この波長範囲全体に亘って高い透過率を示す回折光学素子及び多層型回折光学素子の材料として好適に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、インジウム及びセリウムを含む酸化物ナノ粒子と、1官能以上の(メタ)アクリレート化合物と、分散剤とを少なくとも含む。
本発明の硬化性樹脂組成物とは、硬化性を有する組成物であって、硬化反応により硬化物(樹脂)を得ることができる組成物を意味する。
本発明の硬化性樹脂組成物はこれらの成分以外に他の成分を含んでいてもよい。以下各成分について説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、インジウム及びセリウムを含む酸化物ナノ粒子(以下、「ICO粒子(A)」とも称す。)を含有する。
本発明において、「インジウム及びセリウムを含む酸化物ナノ粒子」とは、インジウム及びセリウムを含む元素の酸化物により構成されるナノ粒子を意味する。
硬化性樹脂組成物中に含有される酸化インジウム錫粒子(ITO粒子)に代えて、ICO粒子(A)を使用することにより、特許文献1に記載のように、ITO粒子を添加した場合に生じていた短波赤外波長域(SWIR)における透過率の低下が抑制された硬化物を得ることができる。これは、ナノ粒子を構成する化合物をインジウム及びセリウムを含む酸化物とすることにより、ITO粒子を用いた場合と比べて、極大吸収を示す波長を維持しながら、吸収をより先鋭なものへと調整することができるため、SWIRに掛かるICO粒子(A)の吸収のすそ野における吸収がITO粒子と比べて低減され、SWIRにおける透過率が高まるものとを考えられる。
ICO粒子(A)は、インジウム及びセリウムに加えて、ICO粒子(A)の吸収をより先鋭なものとし、かつ、より良好な屈折率の波長依存性を実現する観点から、ジルコニウム、ハフニウム及び錫のうちの少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、錫を含むことがより好ましい。
本発明において、ICO粒子(A)の元素αの濃度(元素αは任意の元素αを示す。)とは、ICO粒子(A)を構成する金属元素中に占める元素αの割合(at%)を意味する。
ICO粒子(A)のセリウム濃度は、例えば、0.1~3.5at%とすることができ、屈折率の波長依存性をより良好なものとする観点から、0.5~3.0at%であることが好ましく、0.5~2.0at%であることがより好ましい。
ICO粒子(A)がジルコニウムを含む場合、ICO粒子(A)のジルコニウム濃度は、例えば、3.0at%以下とすることができ、2.0at%以下であることが好ましく、1.0at%以下であることがより好ましい。
ICO粒子(A)がハフニウムを含む場合、ICO粒子(A)のハフニウム濃度は、例えば、3.0at%以下とすることができ、2.0at%以下であることが好ましく、1.0at%以下であることがより好ましい。
ICO粒子(A)が錫を含む場合、ICO粒子(A)の錫濃度は、例えば、3.0at%以下とすることができ、2.0at%以下であることが好ましく、1.5at%以下であることがより好ましい。
ICO粒子(A)中のジルコニウム、ハフニウム及び錫の合計濃度(ICO粒子(A)を構成する金属元素中に占めるジルコニウム、ハフニウム及び錫の合計量の割合)は、例えば、0.1~3.0at%とすることができ、透過率をより向上させる観点から、0.1~2.0at%であることが好ましく、0.2~2.0at%であることがより好ましい。
本発明において、ICO粒子(A)とは、酸化インジウムに対して、セリウム、更には任意の元素をドープした酸化物である。ICO粒子(A)のインジウム濃度は、例えば、90.0~99.5at%とすることができ、92.0~99.0at%であることが好ましく、94.0~99.0at%であることがより好ましい。
ICO粒子(A)の平均粒子径は、例えば5~50nmとすることができ、透過率をより向上させる観点から、16~30nmが好ましく、20~30nmがより好ましい。上記上限値以下とすることにより、レイリー散乱による透過率の悪化を防止することができる。また、5nm以上で、技術的な困難性なく、ICO粒子(A)の製造が可能である。なかでも、平均粒子径を16nm以上(より好ましくは20nm以上)とすることにより、本発明の硬化性樹脂組成物を調製する際の組成物の固化が生じにくく、組成物中におけるICO粒子(A)の充填率を容易に上げることができ、屈折率の波長依存性をより良好なものとすることができる。
本発明に用いられるICO粒子(A)は、屈折率の波長依存性を調整するためのレンズ用添加剤として用いることができる。
ICO粒子(A)の元素αの濃度は、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)により測定することができる。
ICO粒子(A)の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy:TEM)により測定した一次粒子の円相当径を平均することで求めることができる。すなわち、TEMにより撮影した電子顕微鏡写真の1つの粒子について粒子の面積Sを測定し、この面積Sに相当する真円の直径(円相当径=2(S/π)0.5)を求める。本発明における平均粒子径は、無作為に抽出した500個の粒子について求めた円相当径の算術平均である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶媒中に分散した状態のICO粒子(A)を、後述の分散剤及び(メタ)アクリレート化合物と混合することにより、調製されることが好ましい。混合後、ICO粒子(A)の分散に用いた溶媒は留去等により硬化性樹脂組成物から除かれてもよく、除かれなくてもよいが、除かれることが好ましい。
炭素数6~20のモノカルボン酸としては、例えば、オレイン酸(炭素数18)、ステアリン酸(炭素数18)、パルミチン酸(炭素数16)、ミリスチン酸(炭素数14)又はデカン酸(炭素数10)が挙げられ、オレイン酸(炭素数18)が好ましい。
SP値の極性項の成分(δp)は、Hansen溶解度パラメーターにより算出される値である。Hansen溶解度パラメーターは、分子間の分散力エネルギー(δd)、分子間の極性エネルギー(δp)、及び分子間の水素結合性エネルギー(δh)により構成される。本発明において、Hansen溶解度パラメーターは、HSPiP(version 4.1.07)ソフトウェアを用いて算出されたものとする。
具体的には溶媒はトルエン(1.4)、キシレン(1.0)またはヘキサン(0)が好ましく、トルエンがより好ましい。なお、括弧内はδpの値であり、単位はMPa(1/2)である。
具体的には、炭素数6~20のモノカルボン酸とインジウム塩(例えば酢酸インジウム)とセリウム塩(例えばセリウムアセチルアセトナート)との混合溶液(以下、「混合溶液α」と称す。)を加熱混合することにより前駆体溶液(以下、「前駆体溶液β」と称す。)を調製し、この前駆体溶液βを、高温に加熱したアルコール(オレイルアルコールなどの長鎖アルコール)に滴下し、反応終了後に加熱を停止し、室温まで冷却する。
その後、遠心分離を行うか、又は、高分子の溶解度が低い貧溶媒(エタノールなどの低級アルコール)を加えることによって、粒子を沈降させたあと、上澄みを除去し、上記のトルエンなどの溶媒に再分散させることにより表面修飾されたICO粒子(A)の分散液を得ることができる。
なお、上記混合溶液α中には、目的とするICO粒子(A)の構成元素にあわせて、その他の化合物を添加してもよく、例えば、錫塩(例えば酢酸錫)、ジルコニウム塩(例えばジルコニウムアセチルアセトナート)、ハフニウム塩(例えばハフニウムアセチルアセトナート)を添加することができる。
また、上記混合溶液α中における各化合物の配合濃度は、目的とするICO粒子(A)の構成元素の含有割合にあわせて調整すればよい。なお、上記混合溶液α中における各元素の配合濃度に対して、得られるICO粒子(A)中の元素濃度が低くなるセリウム、ジルコニウム、ハフニウム等の元素については、この点を考慮して配合すればよい。
上記混合溶液αを加熱混合して上記前駆体溶液βを得る工程において、加熱混合を行う温度及び時間については、炭素数6~20のモノカルボン酸がインジウム、セリウム等に配位した前駆体(オレイン酸インジウム、オレイン酸セリウム等)が得られる限り特に制限されない。
上記混合溶液αを高温に加熱したアルコールへ滴下する工程において、アルコールの加熱温度、上記混合溶液αの滴下速度については、目的とするICO粒子(A)が得られる限り特に制限されない。
本発明の硬化性樹脂組成物は、ICO粒子(A)を組成物中に分散させるための分散剤を含有する。
上記分散剤としてはカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、あるいは両性界面活性剤を用いることが出来る。これらの分散剤を用いることにより、ICO粒子(A)を組成物中に分散させることができる。
アニオン系界面活性剤としては、酸性基として、カルボキシ基、ホスホノ基(-PO(OH)2)、ホスホノオキシ基(リン酸基、-OPO(OH)2)、ヒドロヒドロキシホスホリル基(-PH(O)(OH))、スルフィノ基(-SO(OH))、スルホ基(-SO2(OH))及びスルファニル基(-SH)のいずれか又はいずれかの塩を有することが好ましい。上記酸性基は、カルボキシ基、ホスホノ基及びホスホノオキシ基のいずれか又はいずれかの塩であることがより好ましく、カルボキシ基又はその塩であることがさらに好ましい。
このようなアニオン系界面活性剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸化合物、ヒドロキシステアリン酸化合物等のカルボン酸型、リン酸化合物等のリン酸型、アミドスルホン酸化合物等のスルホン酸型、ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸型、又は、ポリリン酸型のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸型又はベタイン型の両性界面活性剤が挙げられる。
上記分散剤における酸性基等のイオン性基が、ICO粒子(A)の表面に対して、イオン結合、共有結合、水素結合又は配位結合の少なくともいずれかの結合による吸着作用を示すことにより、分散剤として機能する。
これらの中でも、上記分散剤としては、アニオン系界面活性剤が好ましい。
また、上記分散剤としては、上述の酸性基をICO粒子(A)に吸着する吸着基として有する酸性ポリマー(以下、酸性ポリマーとも称す。)も、好ましく挙げられる。
酸性ポリマーが有する酸性基は、カルボキシ基又はその塩であることが好ましい。カルボキシ基を含む酸性ポリマーは、例えばホスホノ基又はホスホノオキシ基を有するリン酸系の分散剤と比べて、後述の(メタ)アクリレート化合物との相溶性が高い。そのため、カルボキシ基を有する酸性ポリマーが添加された硬化性樹脂組成物を硬化する際に相分離したり、白化したりしにくい。また、回折格子形状を形成する際に、樹脂と金型の密着性も良好であり、また硬化収縮も小さいため剥離面の粗さも生じにくい。さらに、例えばアミン塩型の基又は第4級アンモニウム塩型の基を有するアミン系の分散剤と比べて粘度の上昇が生じにくい。
上記(メタ)アクリレート構成単位としては、例えば、特開2012-107191号公報の段落0042に記載の(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を挙げることができ、下記一般式(P)で表される構成単位が好ましい。
RP2はアルキル基又は脂環式炭化水素基が好ましく、アルキル基が好ましい。このアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8がさらに好ましく、1~4が特に好ましく、1が最も好ましい。
RP1として採り得るメチル基並びにRP2として採り得るアルキル基及び脂環式炭化水素基は、硬化性樹脂組成物の粘度上昇を防止する観点から、置換基として上記酸性基を含まないことが好ましい。
上記酸性ポリマーは、ポリマー鎖の末端に上記酸性基を含む部位を有することがより好ましく、酸性ポリマーは、上記(メタ)アクリレート重合体骨格のいずれか1つの末端側にのみ酸性基を含む部位を有することがより好ましい。
酸性ポリマー1分子中に(メタ)アクリレート重合体骨格が2個以上含まれている場合、全ての(メタ)アクリレート重合体骨格が、(メタ)アクリレート重合体骨格の少なくともいずれか1つの末端側に酸性基を含む部位を有することが好ましく、全ての(メタ)アクリレート重合体骨格が、(メタ)アクリレート重合体骨格のいずれかの1つの末端側にのみ酸性基を含む部位を有することがより好ましい。
LLとして採り得るx+1価の連結基としては、x+1価の飽和脂肪酸炭化水素基(アルカンからx+1個の水素原子を除いた基)、x+1価の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素からx+1個の水素原子を除いた基)が挙げられる。また、これらの基と、-O-、-(C=O)-O-及び-(C=O)-NH-から選択される結合との組合せからなるx+1価の基が挙げられる。
LLとして採り得るx+1価の飽和脂肪酸炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、1~7がより好ましく、1~5がさらに好ましい。
LLは、x+1価の飽和脂肪酸炭化水素基又はx+1価の飽和脂肪酸炭化水素基と-O-との組み合わせからなる基が好ましい。
xは2~8の整数が好ましく、2~4の整数がより好ましく、2の整数がさらに好ましい。
酸性ポリマーの酸価が上記好ましい範囲となるように酸性ポリマーの分子量とカルボキシ基等の酸性基の数を調整することにより、硬化性樹脂組成物として適切な粘度と粒子分散性能とを両立させることができる。酸性ポリマーの酸価が2.0mgKOH/g以上であることにより、酸性ポリマーをICO粒子(A)に十分に吸着させ、分散させることができる。また、酸性ポリマーの酸価が100mgKOH/g未満であることにより、吸着性基の数及び分子サイズを調整し、硬化性樹脂組成物の粘度を適切な範囲へと調製することができる。
(R1-S-L2)n-L1-(L3-A-R2)m (1)
上記式中、R1は上記一般式(PA)における-LL-(AP)xと同義であり、Aは上記一般式(P)で表される(メタ)アクリレート重合体骨格を示す。
R2は水素原子又は酸性基を含まない置換基を示し、L1は単結合または(m+n)価の連結基を示し、L2及びL3は単結合又は2価の連結基を示す。
mは1~8の範囲の整数であり、nは1~9の範囲の整数である。ただし、m+nは2~6を満たす。
R2は水素原子であることが好ましい。
L1として採り得る(m+n)価の連結基としては、例えば、直鎖又は分岐のアルカンにおいて任意の(m+n)個の水素原子を除いて形成される基、および、以下の基が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、1官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含有する。1官能以上の(メタ)アクリレート化合物とは、官能基として(メタ)アクリロイル基を1つ以上有する化合物を意味し、本発明において、単に「(メタ)アクリレート化合物」とも称す。本発明の硬化性樹脂組成物は、ICO粒子(A)を分散剤によって(メタ)アクリレート化合物を含む媒体中に分散させることができ、本発明の硬化性樹脂組成物からは、(メタ)アクリレート化合物を構成成分として含む樹脂中にICO粒子(A)が分散された硬化物を得ることができる。
(メタ)アクリレート化合物は、1官能以上であればよく、官能基の数に特に制限はなく、例えば、8官能以下とすることができる。
1官能又は2官能の(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば、モノマー1(フェノキシエチルアクリレート)、モノマー2(ベンジルアクリレート)、モノマー3(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)及びモノマー4(ジシクロペンタニルアクリレート)を挙げることができる。また、M-1(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)、M-2(1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート)、M-3(ベンジルアクリレート)、M-4(イソボルニルメタクリレート)、M-5(ジシクロペンタニルメタクリレート)、M-6(ドデシルメタクリレート)、M-7(メタクリル酸2-エチルヘキシル)、M-8(2-ヒドロキシエチルアクリレート)、M-9(ヒドロキシプロピルアクリレート)及びM-10(4-ヒドロキシブチルアクリレート)を挙げることができる。
商業的に入手する場合は、例えば、ビスコート#192 PEA(上記モノマー1)(大阪有機化学工業社製)、ビスコート#160 BZA(上記モノマー2)(大阪有機化学工業社製)、ライトエステルBz(上記モノマー2)(共栄社化学社製)、A-DCP(上記モノマー3)(新中村化学工業社製)、FA-513AS(上記モノマー4)(日立化成工業社製)、A-HD-N(上記M-1)(新中村化学工業社製)、HD-N(上記M-2)(新中村化学工業社製)、FA-BZA(上記M-3)(日立化成工業社製)、ライトエステルIB-X(上記M-4)(共栄社化学社製)、FA-513M(上記M-5)(日立化成工業社製)、ライトエステルL(上記M-6)(共栄社化学社製)、2EHA(上記M-7)(東亞合成社製)、HEA(上記M-8)(大阪有機化学工業社製)、ライトエステルHOP-A(N)(上記M-9)(共栄社化学社製)、4-HBA(上記M-10)(大阪有機化学工業社製)を好ましく用いることができる。
(メタ)アクリレート化合物の分子量は100~500であることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、ICO粒子(A)、分散剤及び(メタ)アクリレート化合物の他に、さらにその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、例えば、下記重合開始剤が挙げられる。また、国際公開第2020/171197号の段落[0099]~[0108]に記載の重合体を含有していてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤として、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤から選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱ラジカル重合開始剤を含むことも好ましい。この熱ラジカル重合開始剤の作用によって、硬化性樹脂組成物を熱重合することにより、高い耐熱性を有する硬化物を成形することができる。
例えば、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウレート、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシル、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等を挙げることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤として通常用いられる化合物を、後述する光重合(光硬化)工程の条件にあわせて適宜用いることができ、具体的には以下の化合物を用いることができる。
例えば、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレート、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
なお、硬化性樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤の両方を含むことも好ましく、この場合、上記硬化性樹脂組成物中における光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤の合計含有量は、0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~1.0質量%であることがより好ましく、0.05~0.5質量%であることがさらに好ましい。
本発明の効果を奏する範囲内において、本発明の硬化性樹脂組成物は上述した成分以外のポリマー又はモノマー、分散剤、可塑剤、熱安定剤、離型剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物の粘度は、5000mPa・s以下であることが好ましく、3000mPa・s以下であることがより好ましく、2500mPa・s以下であることがさらに好ましく、2000mPa・s以下であることが特に好ましい。硬化性樹脂組成物の粘度を上記範囲内とすることにより、硬化物を成形する際のハンドリング性を高め、高品質な硬化物を形成することができる。なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、50mPa・s以上であることが好ましく、100mPa・s以上であることがより好ましく、200mPa・s以上であることがさらに好ましく、500mPa・s以上であることが特に好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物の用途は特に限定されないが、回折光学素子作製用材料として用いることが好ましい。特に、多層型回折光学素子における低屈折層及び高屈折率層のうち、低屈折率層(低屈折率かつ屈折率の波長分散の大きい回折光学素子)を作製するための材料として用いられ、優れた回折効率を与えることができる。
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物から形成されるものである。硬化物は(メタ)アクリレート化合物等の重合性の化合物が重合することにより得られるものである。なお、本発明の硬化物は未反応のモノマーを含んでいてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、近赤外から短波赤外波長域(およそ800~1600nm)に亘って透明であり、波長852nmにおける屈折率及び波長1530nmにおける屈折率は、後述の通りいずれも低い。
例えば、上記硬化物を6μmの厚みのシートとして形成した場合、波長852nmにおける透過率として90%以上の値を得ることができ、波長1650nmにおける透過率として40%以上の値を得ることができ、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。ここで、透過率は、分光光度計(例えば日本分光(株)製の分光光度計「V-670」)を用いて、測定した値を意味する。
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の波長1530nmにおける屈折率は1.300~1.550が好ましく、1.350~1.550がより好ましく、1.400~1.510がさらに好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の、波長852nmにおける屈折率から波長1530nmにおける屈折率を引いた値は0.010~0.100であることが好ましく、0.030~0.100であることがより好ましい。
本発明において、屈折率は、エリプソメトリーを用いて測定した値を意味し、例えば、後述の実施例に記載の方法を参照して測定することができる。
なお、本発明における屈折率は、測定した屈折率の小数第四位を四捨五入した値とする。
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を光照射により光硬化又は加熱により熱硬化することにより製造することができる。光硬化する場合には上述の光ラジカル重合開始剤を、熱硬化する場合には上述の熱ラジカル重合開始剤を、硬化性樹脂組成物中に含有させることがそれぞれ好ましい。
光硬化の条件については、後述の回折光学素子における光照射の記載を好ましく適用することができる。
熱硬化において、加熱温度は、例えば150℃以上とすることができ、160~270℃が好ましく、165~250℃がより好ましく、170~230℃がさらに好ましい。加熱時には、加熱とともに加圧を行ってもよい。加圧を行う際の圧力は、0.098MPa~9.8MPaが好ましく、0.294MPa~4.9MPaがより好ましく、0.294MPa~2.94MPaがさらに好ましい。
熱硬化の時間は、30~1000秒が好ましく、30~500秒がより好ましく、60~300秒がさらに好ましい。熱硬化(熱重合)時の雰囲気は、空気又は不活性ガス置換雰囲気であることが好ましく、酸素濃度1%以下になるまで窒素置換した雰囲気であることがより好ましい。
本発明の回折光学素子は、本発明の硬化物で形成された回折格子形状を有する面を含む回折光学素子であり、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して形成される。
本発明の回折光学素子は、最大厚みが2μm~100μmであることが好ましい。最大厚みは、より好ましくは2μm~50μmであり、さらに好ましくは2μm~30μmである。また回折光学素子が有する回折格子形状(周期構造)の段差(格子厚)は1μm~100μmであることが好ましく、1μm~50μmであることがより好ましい。さらに回折光学素子が有する回折格子形状のピッチは0.1mm~10mmの間であればよく、必要とされる光収差に応じて同一回折光学素子内で変化していることが好ましい。
硬化性樹脂組成物を回折格子形状に加工された表面を有する金型の上記表面と透明基板との間に挟み込む。この後、硬化性樹脂組成物を加圧し所望の範囲まで延伸させてもよい。挟み込んだ状態で、透明基板側から光照射し、硬化性樹脂組成物を硬化させる。その後、硬化物を金型から離型する。離型後、さらに、透明基板側とは反対側から光照射してもよい。
上記製造に用いられた透明基板はそのまま回折光学素子に含まれていてもよく、剥離されていてもよい。
窒化クロム処理としては、例えば金型表面に窒化クロム膜を製膜する方法を挙げることができる。金型表面に窒化クロム膜を製膜する方法としては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法とPVD(Physical Vapor Deposition)法とがある。CVD法は、クロムを含む原料ガスと窒素を含む原料ガスとを高温で反応させて基体表面に窒化クロム膜を形成する方法である。また、PVD法は、アーク放電を利用して基体表面に窒化クロム膜を形成する方法(アーク式真空蒸着法)である。このアーク式真空蒸着法は、真空容器内に例えばクロムよりなる陰極(蒸発源)を配置し、陰極と真空容器の壁面との間でトリガを介してアーク放電を起こさせ、陰極を蒸発させると同時にアークプラズマによる金属のイオン化を図り、基体に負の電圧をかけておき、かつ真空容器に反応ガス(例えば窒素ガス)を数10mTorr(1.33Pa)程度入れることにより、イオン化した金属と反応ガスを基体の表面で反応させて化合物の膜を作るという方法である。
本発明の多層型回折光学素子は、第1の回折光学素子と第2の回折光学素子とを含み、第1の回折光学素子が本発明の硬化物で形成された回折光学素子であり、第1の回折光学素子における回折格子形状を有する面と第2の回折光学素子における回折格子形状を有する面とが対向してなる。互いの回折格子形状を有する面は接していることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して形成された回折光学素子を第1の回折光学素子とし、さらに異なる材料により形成された第2の回折光学素子を互いの格子形状の面で対向するように重ねて多層型回折光学素子とすることが好ましい。このとき、互いの格子形状の面は接していることが好ましい。
第2の回折光学素子を第1の回折光学素子よりも高屈折率かつ屈折率の波長分散の小さい材料で形成することによりフレアの発生などを抑え、多層型回折光学素子の色収差低減作用を十分に利用することができる。
第2の回折光学素子の波長1530nmにおける屈折率(以下、「n1530」とも略す。)は1.550~1.700であることが好ましく、1.560~1.650であることがより好ましい。また、第2の回折光学素子の波長1530nmにおける屈折率は、多層型回折光学素子において同時に用いられる第1の回折光学素子の屈折率よりも大きい、すなわち、第2の回折光学素子の波長1530nmにおける屈折率>第1の回折光学素子の波長1530nmにおける屈折率を満たすものとする。
第2の回折光学素子の、波長852nmにおける屈折率から波長1530nmにおける屈折率を引いた値(以下、「n852-n1530」とも略す。)は0.010以下であることが好ましく、0.005以下であることがより好ましい。また、第2の回折光学素子のn852-n1530は、多層型回折光学素子において同時に用いられる第1の回折光学素子のn852-n1530よりも小さい、すなわち、[第2の回折光学素子のn852-n1530]<[第1の回折光学素子のn852-n1530]を満たすものとする。
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化して形成された回折光学素子の回折格子形状表面(上記離型後に得られる面)と透明基板との間に第2の回折光学素子を形成するための材料を挟み込む。この後、材料を加圧し所望の範囲まで延伸させてもよい。挟み込んだ状態で、透明基板側から光照射し、上記の材料を硬化させる。その後、硬化物を金型から離型する。
すなわち、本発明の多層型回折光学素子としては、第1の回折光学素子、第2の回折光学素子および透明基板がこの順で配置されてなることが好ましい。
上記製造に用いられた透明基板はそのまま多層型回折光学素子に含まれていてもよく、剥離されていてもよい。
多層型回折光学素子の1次光の回折効率が、上記の波長852nm及び1530nmにおいて高い回折効率を示すことにより、不要な回折光を十分に抑制することができ、色収差低減作用に優れた高性能レンズを実現することができる。
本発明の回折光学素子および多層型回折光学素子は、それぞれレンズとして使用することができる。
レンズの表面又は周囲には、レンズの使用環境又は用途に応じて膜又は部材を設けることができる。例えば、レンズの表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、ガラスレンズ又はプラスチックレンズに積層させた複合レンズにすることができる。さらにレンズの周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。
但し、これらの膜又は枠などは、レンズに付加される部材であり、本明細書中でいうレンズそのものとは区別される。
酸化物ナノ粒子及び分散剤について、以下の通り合成した。
(1)In-Ce-Sn-Oナノ粒子(ITCO-01)の合成
まず、フラスコ中に420mlのオレイン酸(富士フイルム和光純薬製)、57.508gの酢酸インジウム(Alfa Aesar社製)と、4.777gのセリウムアセチルアセトナート(SigmaAldrich社製)と、0.745gの酢酸スズ(IV)(Alfa Aesar社製)を投入し、窒素フロー中の環境下、160℃で2時間加熱する事によって、黄色透明のセリウム濃度5.2at%、錫濃度1at%の前駆体溶液Aを得た。調製した前駆体溶液Aをガスタイトシリンジに100ml程度詰めた。
続いて、別のフラスコにオレイルアルコール(富士フイルム和光純薬製)52mlを加え、窒素フロー中で290℃にて加熱した。加熱した溶媒中に、上記ガスタイトシリンジに充填された前駆体溶液Aをシリンジポンプを用いて1.4ml/minの速度で88ml滴下した。前駆体溶液Aの滴下が終了した後、加熱を停止し、室温に冷却した。
得られた反応溶液に対し、遠心分離を行い、上澄みを除去し、トルエンにより再分散させた後、エタノールの添加、遠心分離、上澄みの除去、トルエンによる再分散の一連の操作を3回繰り返し、オレイン酸配位のIn-Ce-Sn-Oナノ粒子(ITCO-01)のトルエン分散液68mlを得た。
上記ITCO粒子のTEM分析による平均粒子径は21nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Ce:Sn=97.6:1.0:1.4であった。
フラスコ中に420mlのオレイン酸と、60.451gの酢酸インジウムと、1.043gの酢酸スズ(IV)を投入し、窒素フロー中の環境下、160℃で2時間加熱する事によって黄色透明の錫濃度1.4at%の前駆体溶液Bを得た。調製した前駆体溶液Bをガスタイトシリンジに100ml程度詰めた。
上記(ITCO-01)の合成において、前駆体溶液Aに代えて前駆体溶液Bを用いた以外は同様にして、オレイン酸配位のIn-Sn-O(ITO-01)のトルエン分散液68mlを得た。
上記ITO粒子のTEM分析による平均粒子径は21nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Sn=98.6:1.4であった。
まず、フラスコ中に420mlのオレイン酸(富士フイルム和光純薬製)、58.121gの酢酸インジウム(Alfa Aesar社製)と、4.777gのセリウムアセチルアセトナート(SigmaAldrich社製)を投入し、窒素フロー中の環境下、160℃で2時間加熱する事によって黄色透明のセリウム濃度5.2at%の前駆体溶液Cを得た。調製した前駆体溶液Cをガスタイトシリンジに100ml程度詰めた。
上記(ITCO-01)の合成において、前駆体溶液Aに代えて前駆体溶液Cを用いた以外は同様にして、オレイン酸配位のIn-Ce-O(ICO-01)のトルエン分散液68mlを得た。
上記ICO粒子のTEM分析による平均粒子径は21nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Ce=98.8:1.2であった。
まず、フラスコ中に420mlのオレイン酸(富士フイルム和光純薬製)、53.339gの酢酸インジウム(Alfa Aesar社製)と、11.023gのセリウムアセチルアセトナート(SigmaAldrich社製)と、0.745gの酢酸スズ(IV)(Alfa Aesar社製)を投入し、窒素フロー中の環境下、160℃で2時間加熱する事によって黄色透明のセリウム濃度12at%、錫濃度1at%の前駆体溶液Dを得た。調製した前駆体溶液Dをガスタイトシリンジに100ml程度詰めた。
上記(ITCO-01)の合成において、前駆体溶液Aに代えて前駆体溶液Dを用いた以外は同様にして、オレイン酸配位のIn-Ce-Sn-Oナノ粒子(ITCO-02)のトルエン分散液68mlを得た。
上記ITCO粒子のTEM分析による平均粒子径は21nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Ce:Sn=95.3:3.4:1.3であった。
まず、フラスコ中に420mlのオレイン酸(富士フイルム和光純薬製)、58.183gの酢酸インジウム(Alfa Aesar社製)と、2.388gのセリウムアセチルアセトナート(SigmaAldrich社製)と、1.863gの酢酸スズ(IV)(Alfa Aesar社製)を投入し、窒素フロー中の環境下、160℃で2時間加熱する事によって黄色透明のセリウム濃度2.6at%、錫濃度2.5at%の前駆体溶液Eを得た。調製した前駆体溶液Eをガスタイトシリンジに100ml程度詰めた。
上記(ITCO-01)の合成において、前駆体溶液Aに代えて前駆体溶液Eを用いた以外は同様にして、オレイン酸配位のIn-Ce-Sn-Oナノ粒子(ITCO-03)のトルエン分散液68mlを得た。
上記ITCO粒子のTEM分析による平均粒子径は21nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Ce:Sn=96.9:0.7:2.4であった。
まず、フラスコ中に420mlのオレイン酸(富士フイルム和光純薬製)、56.895gの酢酸インジウム(Alfa Aesar社製)と、4.777gのセリウムアセチルアセトナート(SigmaAldrich社製)と、2.048gのジルコニウムアセチルアセトナート(Sigma Aldrich社製)を投入し、窒素フロー中の環境下、160℃で2時間加熱する事によって黄色透明のセリウム濃度5.2at%、ジルコニウム濃度2at%の前駆体溶液Fを得た。調製した前駆体溶液Fをガスタイトシリンジに100ml程度詰めた。
上記(ITCO-01)の合成において、前駆体溶液Aに代えて前駆体溶液Fを用いた以外は同様にして、オレイン酸配位のIn-Ce-Zr-Oナノ粒子(IZCO-01)のトルエン分散液68mlを得た。
上記IZCO粒子のTEM分析による平均粒子径は21nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Ce:Zr=98.6:1.1:0.3であった。
まず、フラスコ中に420mlのオレイン酸(富士フイルム和光純薬製)、55.669gの酢酸インジウム(Alfa Aesar社製)と、4.777gのセリウムアセチルアセトナート(SigmaAldrich社製)と、4.829gのハフニウムアセチルアセトナート(Alfa Aesar社製)を投入し、窒素フロー中の環境下、160℃で2時間加熱する事によって黄色透明のセリウム濃度5.2at%、ハフニウム濃度4at%の前駆体溶液Gを得た。調製した前駆体溶液Gをガスタイトシリンジに100ml程度詰めた。
上記(ITCO-01)の合成において、前駆体溶液Aに代えて前駆体溶液Gを用いた以外は同様にして、オレイン酸配位のIn-Ce-Hf-Oナノ粒子(IHCO-01)のトルエン分散液68mlを得た。
上記IHCO粒子のTEM分析による平均粒子径は21nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Ce:Hf=98.3:1.2:0.5であった。
上記(ITCO-01)の合成において、前駆体溶液Aの滴下量を88mlから9.5mlに変えた以外は同様にして、オレイン酸配位のIn-Ce-Sn-Oナノ粒子(ITCO-04)のトルエン分散液20mlを得た。
上記ITCO粒子のTEM分析による平均粒子径は14nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Ce:Sn=97.6:1.0:1.4であった。
上記(ITCO-01)の合成において、前駆体溶液Aの滴下量を88mlから134mlに、オレイルアルコールの量を52mlから79mlにそれぞれ変更し、前駆体溶液Aの滴下後に290℃で30分保持する工程を設けた点以外は同様にして、オレイン酸配位のIn-Ce-Sn-Oナノ粒子(ITCO-05)のトルエン分散液100mlを得た。
上記ITCO粒子のTEM分析による平均粒子径は31nmであった。また、ICP-MS分析により構成元素(金属元素)のモル比を測定したところ、In:Ce:Sn=97.6:1.0:1.4であった。
(固形分濃度評価方法)
得られた各酸化物ナノ粒子の分散液を10ml採取し、ホットプレート上のガラスシャーレ中で200℃で30分加熱し、加熱後の残渣の質量と、加熱前の分散液の質量から固形分濃度を算出した。
〔測定A:TEM分析〕
各酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、TEMとしてJFM-ARM300F2 GRAND(商品名、日本電子社製)を用い、前述のICO粒子(A)の平均粒子径の測定方法に基づき算出した。
〔測定B:ICP-MS分析〕
ICP-MSとしてAgilent 8900 トリプル四重極(商品名、アジレントテクノロジー社製)を用いて、粒子中における錫、セリウム、錫、ジルコニウム、ハフニウムの各濃度を測定した。
(分散剤(A-1)の合成)
メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)24.0gとメルカプトこはく酸(富士フイルム和光純薬社製)1.80gとをメチルエチルケトン28mLに溶解させ、窒素気流下で70℃に加熱した。この溶液に、重合開始剤(富士フイルム和光純薬社製、V-65)0.24gをメチルエチルケトン12mLに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに70℃で4.5時間反応させた。放冷後、反応液を、冷却した水200mLおよびメタノール600mLの混合液に対して滴下し、析出した粉体をろ取し、乾燥させることで、下記分散剤(A-1)を15g得た。なお、このポリマー分散剤(A-1)は、実質的に、片末端にカルボキシ基を有するポリマーにより構成される。
得られたポリマーの重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法による標準ポリスチレン換算で5900であり、分散度(Mw/Mn)は、1.70であった。また、得られたポリマー1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を測定して酸価を求めたところ、24mgKOH/gであった。
上記で調製した酸化物ナノ粒子のトルエン分散液は、予め固形分濃度が5質量%となるようにトルエンで希釈を行ったものを使用し、以下のようにして各硬化性樹脂組成物を調製した。
〔1.硬化性樹脂組成物1-1~1-9の調製〕
(ITCO-01)のトルエン分散液48.8g(固形分5%、ITCO粒子として2.44g)に、分散剤(A-1) 0.535g、および1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA、東京化成工業社製)2.02gを加え溶解させた。約70℃のウォーターバスで加熱しながら減圧吸引してトルエンを留去した。留去後得られた混合物に、IRGACURE 819(商品名、BASF社製、光ラジカル重合開始剤)を0.01g加え溶解させて、硬化性樹脂組成物1-1を調製した。
上記硬化性樹脂組成物1-1の調製において、下記表に記載の構成となるように酸化物ナノ粒子の種類を変更した以外は同様にして、硬化性樹脂組成物1-2~1-9を調製した。
酸化ジルコニウム分散液(商品名:SZR-K、堺化学工業社製)82.1gにFA-512AS(商品名、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成社製)22.3gを加え均一になるまで撹拌した。約70℃のウォーターバスで加熱しながら減圧吸引してメタノールおよびMEK(メチルエチルケトン)を留去した。留去後得られた混合物に、IRGACURE 651(商品名、光ラジカル重合開始剤、BASF社製)0.20gを加え溶解させて、硬化性樹脂組成物2を調製した。
硬化性樹脂組成物1-1を疎水化処理したガラス板で挟み込み、UV照射装置(商品名:EXECURE 3000、HOYA CANDEO OPTRONICS社製)を用い、積算光量1.0J/cm2、照度30mW/cm2の条件でUV(紫外線)照射した後、再度、積算光量1.0J/cm2、照度5mW/cm2の条件でUV照射し、硬化物を作製した。上記のようにして得られた硬化物の膜厚は6μmであった。
硬化性樹脂組成物1-1の硬化物の作製において、硬化性樹脂組成物1-1に代えて硬化性樹脂組成物1-2~1-9を用いた以外は同様にして、硬化性樹脂組成物1-2~1-9の硬化物をそれぞれ作製した。
硬化性樹脂組成物2を疎水化処理したガラス板で挟み込み、UV照射装置(商品名:EXECURE3000、HOYA CANDEO OPTRONICS社製)を用いて、積算光量2.0J/cm2、照度5mW/cm2の条件でUV照射し、硬化物を作製した。上記のようにして得られた硬化物の膜厚は6μmであった。
上記条件で作製した各硬化性樹脂組成物の硬化物について、分光光度計(商品名:V-670、日本分光社製)を用いて、波長400~1800nmの透過率を測定し、852nmにおける透過率%T852と1650nmにおける透過率%T1650に基づき、下記評価基準により硬化物の透過率を評価した。下記評価基準において、評価Aが最も良好であり、続いて、B、C、D及びEの順に優れ、Fが最も劣る。結果を表1に示す。
- 評価基準 -
A:%T852が90%以上、かつ、%T1650が60%以上
B:%T852が90%以上、かつ、%T1650が50%以上60%未満
C:%T852が90%以上、かつ、%T1650が40%以上50%未満
D:%T852が90%以上、かつ、%T1650が30%以上40%未満
E:%T852が90%以上、かつ、%T1650が30%未満
F:%T852が90%未満(%T1650の値は問わない)
上記硬化性樹脂組成物1-1~1-9の各硬化物と、上記硬化性樹脂組成物2の硬化物の波長852nmにおける屈折率n852及び1530nmにおける屈折率n1530を分光エリプソメトリーを用いて測定した。評価は硬化物のエリプソメトリーデータと透過率データを測定し、同時フィッティングをして行った。エリプソメトリーの詳細条件は以下の通りである。
入射角:50、60、70°
測定波長:210~1690nm
光学モデル:吸収及びクラマース・クロニッヒの関係を考慮した調和振動子モデル
硬化性樹脂組成物2の硬化物は、n852=1.608、n1530=1.605であった。硬化性樹脂組成物1-1~1-9の硬化物のn852及びn1530については、表1にまとめて示す。
硬化性樹脂組成物1-1~1-9の硬化物のn852はいずれも、硬化性樹脂組成物2の硬化物のn852よりも小さく、硬化性樹脂組成物1-1~1-9の硬化物のn1530はいずれも、硬化性樹脂組成物2の硬化物のn1530よりも小さかった。また、硬化性樹脂組成物1-1~1-9の硬化物におけるn852-n1530はいずれも、硬化性樹脂組成物2の硬化物におけるn852-n1530=0.003よりも大きかった。
下記表2に記載の組み合わせの樹脂組成物の硬化物を用い、特開2008-241734号公報の図2に示される回折光学素子において、第1の回折格子として、上記硬化性樹脂組成物1-1~1-11のいずれかの硬化物を用い、第2の回折格子として、上記硬化性樹脂組成物2の硬化物を用い、第1及び第2の回折格子の共通の格子厚を12μmとした場合の、多層型回折光学素子の色収差低減作用を評価した。
多層型回折光学素子の色収差低減作用は、特開2008-241734号公報の式23及び24を用い、上記評価2で測定した屈折率及び格子厚の値を用い、波長852nm及び波長1530nmにおける1次光の回折効率をそれぞれ算出し、下記評価基準により評価した。回折効率が大きいほど、レンズ内でのフレアの発生を抑え、色収差をより低減することができる。下記評価基準において、評価Aが最も良好であり、続いて、B+、B-、C+及びC-の順に優れ、Dが最も劣る。結果を表1に示す。
- 評価基準 -
A:波長852nmにおける回折効率が95%以上、波長1530nmにおける回折効率が95%以上であった。
B+:波長852nmにおける回折効率が95%以上、波長1530nmにおける回折効率が90%以上95%未満であった。
B-:波長852nmにおける回折効率が95%以上、波長1530nmにおける回折効率が85%以上90%未満であった。
C+:波長852nmにおける回折効率が85%以上95%未満、波長1530nmにおける回折効率が95%以上であった。
C-:波長852nmにおける回折効率が85%以上95%未満、波長1530nmにおける回折効率が85%以上95%未満であった。
D:波長852nmにおける回折効率及び波長1530nmにおける回折効率の少なくとも一方が85%未満であった。
表中における各成分は下記の通りである。
(酸化物ナノ粒子)
上記で調製した各酸化物ナノ粒子
(分散剤)
A-1:上記で作製した分散剤(A-1)
((メタ)アクリレート化合物)
HDDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート
(光ラジカル重合開始剤)
IRGACURE 819(Irgacure 819とも表記する):商品名、BASF社製
セリウム濃度(Ce濃度)、ジルコニウムと錫とハフニウムの合計濃度(Zr+Sn+Hf濃度)の単位はいずれもat%である。
酸化物ナノ粒子の平均粒子径の単位はnmである。
構成元素の欄には、ICP-MS分析により定性した金属元素を記載する。
酸化インジウム錫(ITO)ナノ粒子を含有する比較の硬化性樹脂組成物1-2から得られる硬化物は、1650nmにおける透過率が40%未満と低く、近赤外から短波赤外波長域に亘って、所望の屈折率の波長依存性を維持しつつ、高い透過率を実現することができなかった。
これに対して、インジウム及びセリウムを含む酸化物ナノ粒子と1官能以上の(メタ)アクリレート化合物と分散剤とを含有する本発明の硬化性樹脂組成物1-1及び1-3~1-9のいずれかから得られる硬化物は、近赤外から短波赤外領域に亘って、所望の屈折率の波長依存性を示し、多層型回折光学素子に用いた場合に近赤外から短波赤外波長域に亘って所望の色収差低減作用を得ることができた。しかも、近赤外から短波赤外領域に亘って、所望の屈折率の波長依存性を維持しつつ、高い透過率を実現することができ、ITOナノ粒子を用いた場合に比べて、短波赤外波長域における透過率に優れていた。
Claims (19)
- インジウム及びセリウムを含む酸化物ナノ粒子と、1官能以上の(メタ)アクリレート化合物と、分散剤とを含む硬化性樹脂組成物。
- 前記酸化物ナノ粒子が、ジルコニウム、ハフニウム及び錫のうちの少なくとも1種の元素を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記酸化物ナノ粒子が錫を含む、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記酸化物ナノ粒子のセリウム濃度が0.5~3.0at%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記酸化物ナノ粒子中のジルコニウム、ハフニウム及び錫の合計濃度が0.1~2.0at%である、請求項2又は3に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記硬化性樹脂組成物中における前記酸化物ナノ粒子の含有量が10~60質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記酸化物ナノ粒子の平均粒子径が16~30nmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記酸化物ナノ粒子の平均粒子径が20~30nmである、請求項7に記載の硬化性樹脂組成物。
- 光ラジカル重合開始剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
- 波長852nmにおける屈折率が1.500~1.650である、請求項10に記載の硬化物。
- 波長1530nmにおける屈折率が1.300~1.550である、請求項10又は11に記載の硬化物。
- 請求項10~12のいずれか1項に記載の硬化物で形成された回折格子形状を有する面を含む、回折光学素子。
- 第1の回折光学素子と第2の回折光学素子とを含み、
前記の第1の回折光学素子が請求項13に記載の回折光学素子であり、
前記の第1の回折光学素子における回折格子形状を有する面と前記第2の回折光学素子の回折格子形状を有する面とが対向している、多層型回折光学素子。 - 前記第2の回折光学素子の波長852nmにおける屈折率が1.550~1.700であり、かつ、該屈折率が、前記第1の回折光学素子の波長852nmにおける屈折率よりも大きい、請求項14に記載の多層型回折光学素子。
- 前記の第1の回折光学素子における回折格子形状を有する面と前記の第2の回折光学素子における回折格子形状を有する面とが接している、請求項14又は15に記載の多層型回折光学素子。
- 透明基板を含み、前記第1の回折光学素子、前記第2の回折光学素子、及び、前記透明基板がこの順で配置されている、請求項14~16のいずれか1項に記載の多層型回折光学素子。
- インジウム及びセリウムと、錫、ジルコニウム及びハフニウムのうちの少なくとも1種の元素とを含み、平均粒子径が16~30nmである、酸化物ナノ粒子。
- 請求項18に記載の酸化物ナノ粒子からなる、屈折率の波長依存性を調整するためのレンズ用添加剤。
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